(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089731
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プレキャスト腰壁設置工法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
E04B2/56 603E
E04B2/56 642D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205099
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】福田 博之
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FB03
2E002HA03
2E002HB02
2E002JA02
2E002JB02
2E002JB04
2E002MA03
2E002MA05
(57)【要約】
【課題】プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができ、また、床や土間等において支持用スペースを必要としないプレキャスト腰壁設置工法を提供する。
【解決手段】基礎2の天端には、プレキャスト腰壁1を支持する支持部位が、当該基礎2の延設方向に二列で存在している。そして、プレキャスト腰壁1の下面側を、屋外側の一列の上記支持部位で支持するとともに、屋内側の一列の上記支持部位上で自立補助部材である水平板部13を介してプレキャスト腰壁1と基礎2とを連結し、プレキャスト腰壁1を基礎2上で自立させる。また、プレキャスト腰壁1の下部、水平板部13、およびプレキャスト腰壁1と基礎2の相互定着用の定着鉄筋部をコンクリート100で埋める増打ちを行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎の天端に、プレキャスト腰壁を支持する支持部位が、当該基礎の延設方向に少なくとも二列で存在しており、上記プレキャスト腰壁の下面側を、屋外側の列の上記支持部位上で支持するとともに、屋内側の列の上記支持部位上で自立補助部材を介して上記プレキャスト腰壁と上記基礎とを連結し、上記プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる工程と、上記プレキャスト腰壁の下部、上記自立補助部材、および上記プレキャスト腰壁と上記基礎の相互定着用の定着鉄筋部をコンクリートで埋める増打ち工程と、を含むことを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記屋外側の列の上記支持部位に螺子部材を点在させ、各螺子部材によって、上記プレキャスト腰壁の高さ調整を行うことを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項3】
請求項2に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記螺子部材は、上記プレキャスト腰壁の下面側に埋設されたインサートナットに螺合するボルトであることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項4】
請求項2に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記螺子部材は、上記基礎の天端から鉛直方向に突出するボルトに螺合されて上記プレキャスト腰壁の下面側に当接するナットであることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項5】
請求項1に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記自立補助部材は、上記プレキャスト腰壁の屋内側面から屋内方向に突出する水平板部から成り、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端側から鉛直方向に突出するボルトを、上記水平板部に形成された孔部に通し、上記水平板部の上下側で上記ボルトに螺合させた上下のナットによって上記水平板部を上記基礎の天端側に連結し、当該プレキャスト腰壁を自立させることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項6】
請求項5に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記プレキャスト腰壁と当該プレキャスト腰壁の近傍に設けた足場とを連結し、上記増打ちをする以前に、上記上下のナットの仮締め状態で、上記足場により反力を取って上記プレキャスト腰壁の通りおよび出入りを調整し、この調整の後に、上記上下のナットを本締めし、上記増打ちをすることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に穴をあけてアンカーナットを装着し、このアンカーナットに上記ボルトを装着するか、または上記穴にアンカーボルトを装着することを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記基礎の作製時に、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端から上記ボルトを突出させておくことを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項9】
請求項1に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記自立補助部材は、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に固定される筒状部材であり、この筒状部材に差し込んだ棒状部材と上記プレキャスト腰壁とを連結部材により連結することで、当該プレキャスト腰壁を自立させることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項10】
請求項9に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記増打ちをする以前に、上記棒状部材により反力を取って上記連結部材により上記プレキャスト腰壁の通りおよび出入りを調整し、この調整の後に、上記増打ちをすることを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に穴をあけてアンカーナットまたはアンカーボルトを装着し、上記アンカーナットまたはアンカーボルトに上記筒状部材を螺着することを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【請求項12】
請求項9または請求項10に記載のプレキャスト腰壁設置工法において、上記基礎の作製時に、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端にアンカーナットまたはアンカーボルトを設けておき、上記アンカーナットまたはアンカーボルトに上記筒状部材を螺着することを特徴とするプレキャスト腰壁設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレキャスト腰壁を基礎上に取り付けるプレキャスト腰壁設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の支柱間にプレキャストコンクリート製の腰壁を配置して取付ける取付け方法が開示されている。この取付け方法では、複数の支柱の配列方向に設けられた基礎の上面であって、支柱より外側の上面に、支柱の配列方向に沿った嵌合溝を形成し、腰壁の下面には、上記嵌合溝に嵌合する嵌合突部を形成し、腰壁の下部の内側面にはフックを突設し、腰壁の上部と支柱には、これらを接合するボルト接合手段を有し、腰壁を、その下端の嵌合突部を上記嵌合溝に嵌合して立設し、その後、腰壁の上部を支柱に上記ボルト接合手段により仮止め保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレキャスト腰壁の取付け方法は、プレキャスト腰壁の上部を柱にボルト接合手段により仮止め保持するため、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができず、建物の構築手順が限定されて、効率的な建物の構築が行えない欠点がある。なお、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置する方法として、プレキャスト腰壁を支えるサポート材の基部を1階床、土間或いは土間施工前地盤に差し込んだアンカーや単管で固定することが考えられるが、上記サポート材の基部用のスペースを確保する必要が生じる。
【0005】
この発明は、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置することができ、また、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを必要としないプレキャスト腰壁設置工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のプレキャスト腰壁設置工法は、基礎の天端に、プレキャスト腰壁を支持する支持部位が、当該基礎の延設方向に少なくとも二列で存在しており、上記プレキャスト腰壁の下面側を、屋外側の列の上記支持部位上で支持するとともに、屋内側の列の上記支持部位上で自立補助部材を介して上記プレキャスト腰壁と上記基礎とを連結し、上記プレキャスト腰壁を上記基礎上で自立させる工程と、上記プレキャスト腰壁の下部、上記自立補助部材、および上記プレキャスト腰壁と上記基礎の相互定着用の定着鉄筋部をコンクリートで埋める増打ち工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
上記の設置工法であれば、プレキャスト腰壁を柱により保持する必要は無いので、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置して建物構築を効率化することが可能となる。また、上記プレキャスト腰壁は上記基礎上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要も生じない。
【0008】
上記の設置工法において、上記屋外側の列の上記支持部位に螺子部材を点在させ、各螺子部材によって、上記プレキャスト腰壁の高さ調整を行うこととしてもよい。
【0009】
上記の設置工法において、上記螺子部材は、上記プレキャスト腰壁の下面側に埋設されたインサートナットに螺合するボルトであってもよい。或いは、上記螺子部材は、上記基礎の天端から鉛直方向に突出するボルトに螺合されて上記プレキャスト腰壁の下面側に当接するナットであってもよい。
【0010】
上記の設置工法において、上記自立補助部材は、上記プレキャスト腰壁の屋内側面から屋内方向に突出する水平板部から成り、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端側から鉛直方向に突出するボルトを、上記水平板部に形成された孔部に通し、上記水平板部の上下側で上記ボルトに螺合させた上下の両ナットによって上記水平板部を上記基礎の天端側に連結し、当該プレキャスト腰壁を自立させてもよい。
【0011】
上記の設置工法において、上記プレキャスト腰壁と当該プレキャスト腰壁の近傍に設けた足場とを連結し、上記増打ちをする以前に、上記上下のナットの仮締め状態で、上記足場により反力を取って上記プレキャスト腰壁の通りおよび出入りを調整し、この調整の後に、上記上下のナットを本締めし、上記増打ちをしてもよい。
【0012】
上記の設置工法において、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に穴をあけてアンカーナットを装着し、このアンカーナットに上記ボルトを装着するか、または上記穴にアンカーボルトを装着してもよい。或いは、上記基礎の作製時に、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端から上記ボルトを突出させておいてもよい。
【0013】
上記の設置工法において、上記自立補助部材は、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に固定される筒状部材であり、この筒状部材に差し込んだ棒状部材と上記プレキャスト腰壁とを連結部材により連結することで、当該プレキャスト腰壁を自立させてもよい。
【0014】
上記の設置工法において、上記増打ちをする以前に、上記棒状部材により反力を取って上記連結部材により上記プレキャスト腰壁の通りおよび出入りを調整し、この調整の後に、上記増打ちをしてもよい。
【0015】
上記の設置工法において、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端に穴をあけてアンカーナットまたはアンカーボルトを装着し、上記アンカーナットまたはアンカーボルトに上記筒状部材を螺着してもよい。或いは、上記基礎の作製時に、上記屋内側の列の上記支持部位上で上記基礎の天端にアンカーナットまたはアンカーボルトを設けておき、上記アンカーナットまたはアンカーボルトに上記筒状部材を螺着してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、プレキャスト腰壁を柱よりも先に設置する効率的な建物構築が可能となり、また、上記プレキャスト腰壁は上記基礎上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要も生じないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の設置工法で用いる一般部のプレキャスト腰壁を示した図であって、同図(A)は平面説明図、同図(B)は正面説明図である。
【
図2】同図(A)は、実施形態の設置工法の途中工程を示した説明図であり、同図(B)は同図(A)の一部を拡大した図である。
【
図3】実施形態の設置工法で用いる柱部のプレキャスト腰壁を示した図であって、同図(A)は平面説明図、同図(B)は正面説明図である。
【
図4】実施形態の設置工法の柱部における途中工程を示した説明図である。
【
図5】実施形態の設置工法のプレキャスト腰壁を自立させる工程を示した説明図である。
【
図6】実施形態の設置工法のプレキャスト腰壁の通りおよび出入りを調整する工程を示した説明図である。
【
図7】同図(A)は、実施形態の設置工法の一般部の増し打ちを示した説明図であり、同図(B)は、実施形態の設置工法の柱部の増し打ちを示した説明図である。
【
図8】同図(A)は、他の実施形態の設置工法の途中工程を示した説明図であり、同図(B)は、筒状部材の平面図であり、同図(C)は、筒状部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、添付する説明図においては、プレキャスト腰壁および基礎の輪郭は二点鎖線で、内部の鉄筋は実線で示している。
【0019】
図1(A),(B)および
図2(A),(B)に示すように、この実施形態の施工方法で用いるプレキャスト腰壁1は、内部に網目状に鉄筋11を有している。また、プレキャスト腰壁1は、基部側が鉄筋11に接続され、先端側が屋内方向に突出する下段側の水平突出筋11aと、同じく基部側が鉄筋11に接続され、先端側が屋内方向に突出する上段側の水平突出筋11bとを有する。水平突出筋11aおよび水平突出筋11bの先端には、基礎2側の鉄筋部21に定着されるU字曲げ部が位置している。水平突出筋11a、水平突出筋11b、鉄筋部21は、プレキャスト腰壁1と基礎2の相互定着用の定着鉄筋部をなす。
【0020】
また、プレキャスト腰壁1の下面部には、当該プレキャスト腰壁1の延設方向に間隔をおいて複数(例えば、プレキャスト腰壁1が4mサイズで2個)の高さ調整部12が設けられている。この高さ調整部12は、プレキャスト腰壁1の下面部に埋め込まれたインサートナット12aと、インサートナット12aに螺合された頭部付きの螺子部材12bとからなる。インサートナット12aへの螺子部材12bのねじ込み量を調整することで、プレキャスト腰壁1の高さ調整が可能となる。
【0021】
さらに、プレキャスト腰壁1の下部側には、当該プレキャスト腰壁1の延設方向に間隔をおいて複数(例えば、プレキャスト腰壁1が4mサイズで4個)のアングル部材の鉛直板部が埋め込まれる一方、上記アングル部材の水平板部13は、自立補助部材としてプレキャスト腰壁1の屋内側面から屋内方向に突出している。各水平板部13には、鉛直方向に孔部13aが形成されている。
【0022】
基礎2の天端には、プレキャスト腰壁1を支持する支持部位が、当該基礎2の延設方向に二列で存在しており、屋外側の一列の上記支持部位上で上記のプレキャスト腰壁1の下面側を支持し、屋内側の一列の上記支持部位上でプレキャスト腰壁1の自立補助が行われる。
【0023】
この実施形態では、上記屋外側の一列の上記支持部位上に、上記のインサートナット12aおよび螺子部材12bが位置するとともに、上記屋内側の一列の上記支持部位上に孔部13aおよび後述のボルト24が位置する。
【0024】
ここで、プレキャスト腰壁1の基礎2上への設置は、プレキャスト腰壁1の下面側を、上記屋外側の一列の上記支持部位において螺子部材12bで支持するとともに、上記屋内側の一列の上記支持部位において自立補助部材である水平板部13を基礎2の天端側に連結することで行われる。
【0025】
また、この実施形態では、上記屋内側の一列の上記支持部位上で、基礎2の天端から鉛直方向にボルト24を突出させており、各ボルト24を各孔部13aに通して、水平板部13の上下側でボルト24に螺合させた上下のナットによって水平板部13を基礎2の天端側に締結する。
【0026】
なお、
図3(A),(B)および
図4に示すように、柱3が支持される基礎2の柱支持部22には、例えば、上面から突出するアンカーボルトの先端ボルト部22aが配置されており、柱3の柱脚部31に形成された貫通孔に上記先端ボルト部22aが通され、ナット締結によって、柱3が柱支持部22に固定される。プレキャスト腰壁1は、柱3よりも屋外側に配置される。また、柱3の横に配置されるプレキャスト腰壁1の端面の下側角部には、上記柱支持部22と干渉しないように切欠きが形成されている。
【0027】
また、この施工例では、
図5に示すように、上記屋内側の一列の上記支持部位上で、後施工で基礎2の天端にドリルで穴をあけ、この穴にアンカーナット23を装着し、このアンカーナット23に、ボルト24をねじ込む。
【0028】
そして、図示しないクレーン等によって、プレキャスト腰壁1を吊り上げて、基礎2の天端側に載せ置く。この載せ置く作業において、各ボルト24を各孔部13aに通して、水平板部13の上下側でボルト24に螺合させた上下のナットによって水平板部13を基礎2の天端側に連結する。このとき、上記上下のナットは仮締めしておく。また、高さ調整部12において、インサートナット12aへの螺子部材12bのねじ込み量を調整することで、プレキャスト腰壁1の高さを調整する。
【0029】
さらに、柱3が建てられた後、
図6に示すように、プレキャスト腰壁1の近傍に組まれる外装工事用足場90と当該プレキャスト腰壁1の上部に固定した固定具91とを、例えば、外パイプ内に内パイプを可動に備えて間隔調整が行える連結部材92で連結し、上記上下のナットの仮締め状態で、外装工事用足場90により反力を取ってプレキャスト腰壁1の通りおよび出入りを調整し、この調整後に、上記上下のナットを本締めする。
【0030】
次に、
図7(A),(B)に示すように、プレキャスト腰壁1の下部、上記自立補助部材である水平板部13、およびプレキャスト腰壁1と基礎2の相互定着用の上記定着鉄筋部(水平突出筋11a、水平突出筋11b、鉄筋部21)をコンクリート100で埋める増打ちを行う。
【0031】
かかる施工方法であれば、プレキャスト腰壁1を柱3により保持する必要は無いので、プレキャスト腰壁1を柱3よりも先に設置して建物構築の効率化が可能となる。また、プレキャスト腰壁1は基礎2上で自立するので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要も生じない。
【0032】
また、上記の例では、高さ調整部12は、プレキャスト腰壁1の下面部に埋め込まれたインサートナット12aと、インサートナット12aに螺合された頭部付きの螺子部材12bとからなり、この高さ調整の機構のために基礎2に対して後施工の穴あけ等は行わないので、プレキャスト腰壁の設置施工の効率化を図ることができる。
【0033】
もちろん、プレキャスト腰壁1の高さ調整の機構のために基礎2にボルトを存在させておく工法を用いてもよい。例えば、後施工で基礎2の天端にドリルで穴をあけ、この穴にアンカーナットを装着し、このアンカーナットに、ボルトをねじ込み、このボルトにナットを螺合させる。一方、プレキャスト腰壁1の下面には上記ボルトが入る穴を形成しておく。プレキャスト腰壁1の設置に際して、上記ボルトを上記穴に入れて上記ナットでプレキャスト腰壁1を受け止めることができる。上記ナットを回すことで、プレキャスト腰壁1の高さを調整することができる。
【0034】
また、上記の例では、上記屋内側の一列の上記支持部位上で、後施工で基礎2の天端にドリルで穴をあけ、この穴にアンカーナット23を装着し、このアンカーナット23に、ボルト24をねじ込む工法としたが、これに限らず、上記穴にアンカーボルトを打ち込む工法としてもよい。また、このような穴を後施工で形成する工法に限らない。例えば、基礎2の作製時に、上記屋内側の一列の上記支持部位上で基礎2の天端からボルトを突出させておいてもよい。
【0035】
(実施形態2)
以下、この発明の一態様に係る他の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、実施形態1で示した部材と同様の部材には、同一の符号を付記してその説明を省略する。また、以下では、実施形態1と異なる施工部分を主に述べており、ここで特に述べていない工程については、実施形態1と共通する。
【0036】
図8(A)に示すように、この実施形態の施工方法においては、プレキャスト腰壁1Aを用いる。このプレキャスト腰壁1Aは、水平板部13を備えていない。また、上記屋内側の一列の上記支持部位上で、基礎2の天端の位置に、自立補助部材として、円筒形の筒状部材5を固定する。
【0037】
この例では、上記屋内側の一列の上記支持部位上で基礎2の天端に後施工で穴をあけ、この穴にアンカーナット23を埋め込む。筒状部材5は、
図8(B),(C)に示すように、四角形の底板の中心から下方に突出するボルト部51を有している。このボルト部51をアンカーナット23にねじ込む。また、筒状部材5の上端は、増し打ちされるコンクリートの高さよりも低い位置にある。
【0038】
次に、筒状部材5に単管等からなる棒状部材52を差し込む。さらに、この差し込んだ棒状部材52とプレキャスト腰壁1Aとを連結部材53により連結し、プレキャスト腰壁1Aを基礎2の天端上で自立させる。連結部材53の配置高さは、増し打ちされるコンクリートの高さよりも高い位置にある。連結部材53は、例えば、外パイプ内に可動内パイプを備えて間隔調整が行えるとともに、一方の側に単管クランプを、他方の側にプレキャスト腰壁1Aの内側縦面に埋め込まれたインサートナットに螺合する螺子部を有する。
【0039】
次に、棒状部材52により反力を取ってプレキャスト腰壁1Aの通りおよび出入りを、連結部材53の上記間隔調整によって調整する。
【0040】
次に、プレキャスト腰壁1Aの下部、上記自立補助部材である筒状部材5、およびプレキャスト腰壁1Aと基礎2の相互定着用の上記定着鉄筋部を、コンクリート100で埋める増打ちを行う。なお、樹脂製のいわゆるさや管ブーツを筒状部材5に装填した状態で棒状部材52を差し込んでおくと、増打ち後に簡単に棒状部材52を取り外すことができる。
【0041】
かかる施工方法でも、プレキャスト腰壁1Aを柱3により保持する必要は無く、プレキャスト腰壁1Aを柱3よりも先に設置して建物構築の効率化が可能となる。また、プレキャスト腰壁1Aは基礎2上で自立できるので、床や土間等においてプレキャスト腰壁の支持用スペースを確保する必要もない。
【0042】
なお、上記の例では、基礎2に後施工でアンカーナット23を埋め込んだが、これに限らない。例えば、筒状部材5の底板に雌螺子部を形成するか、筒状部材5の底板に形成した穴位置に合わせてナットを溶接しておく。そして、基礎2に後施工でアンカーボルト(ボルト付きアンカー)を埋め込み、このアンカーボルトに筒状部材5の上記雌螺子部または上記ナットを螺合させてもよい。
【0043】
或いは、基礎2の作製時に、上記屋内側の一列の上記支持部位上で基礎2の天端にアンカーナットまたはアンカーボルトを設けておき、上記アンカーナットまたはアンカーボルトに筒状部材5を螺着してもよい。
【0044】
なお、上記の例では、上記支持部位は2列であったが、これに限らず、例えば3列とし、屋内側の2列のアンカーナット23で水平板部(自立補助部)13を支持してもよいし、また、屋内側の1列のアンカーナット23で水平板部(自立補助部)13を支持するとともに、他の屋内側の1列のアンカーナット23で棒状部材52を支持するようにしてもよい。
【0045】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 :プレキャスト腰壁
1A :プレキャスト腰壁
2 :基礎
3 :柱
5 :筒状部材(自立補助部)
11 :鉄筋
11a :水平突出筋
11b :水平突出筋
12 :高さ調整部
12a :インサートナット
12b :螺子部材
13 :水平板部(自立補助部)
13a :孔部
21 :鉄筋部
22 :柱支持部
22a :先端ボルト部
23 :アンカーナット
24 :ボルト
31 :柱脚部
51 :ボルト部
52 :棒状部材
53 :連結部材
90 :外装工事用足場
91 :固定具
92 :連結部材
100 :コンクリート