(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008974
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】光硬化プロセスのためのマクロマー及び組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/91 20060101AFI20240112BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20240112BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C08G63/91
C08G63/64
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184529
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2020557931の分割
【原出願日】2019-04-05
(31)【優先権主張番号】62/660,146
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516228958
【氏名又は名称】ポリ-メッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン マイケル アーロン
(72)【発明者】
【氏名】サイニー プラブジョット
(57)【要約】
【課題】積層印刷技法、特にマクロマーを光重合して製造物品を形成する光造形法(SLA)などの積層印刷に有用な、化合物及び組成物が提供される。
【解決手段】代表的化合物は、多軸中央コア(CC)と、該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含み、アームのうちの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は、炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーのフリーラジカル重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーのフリーラジカル重合生成物である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームと、を含む光重合性化合物であって、前記アームの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されたモノマーからの開環重合生成物である、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の光重合性化合物を1つ以上と、光重合開始剤と、を含む、光硬化性組成物。
【請求項3】
中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む光反応性多軸マクロマーであって、前記アームのうちの少なくとも1つは、光反応性官能基(Q)と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つから形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つから形成される残基を含む、
光反応性多軸マクロマー。
【請求項4】
請求項3に記載のマクロマーを1つ以上と、光重合開始剤と、を含む、光硬化性組成物。
【請求項5】
CC-[A-B-Q]2、CC-[A-B-Q]3、CC-[A-B-Q]4、CC-[B-A-Q]2、CC-[B-A-Q]3、CC-[B-A-Q]4の群から選択される構造を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式CC-[A-B-Q]nの化合物を更に含み、nは1である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
CC-Q、CC-A-Q、及びCC-B-Qから選択される式の化合物を少なくとも1つ更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
Q-A、Q-B及びQ-CCから選択される式の化合物を少なくとも1つ更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
Qは、チオール基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Qは、ビニル基、例えば、アクリレート基又はメタクリレート基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
ブロックAは、TMC及び/又はCAPの重合生成物である残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
ブロックAの残基の少なくとも90%は、TMC又はCAPの重合生成物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
マクロマーは、TMCから形成された残基を2~45個含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
ブロックAは、102~2500g/モルの分子量を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
各Aブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
各Bブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
40,000g/モル未満の分子量を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
室温で50,000mPa・s未満の粘度を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
PEG-ジアクリレート(PEG-DA)のような反応性希釈剤を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
本明細書に開示される光重合性組成物、例えば請求項1に記載の組成物を、ある時間にわたって光に暴露することを含む、物品を光造形印刷する方法。
【請求項21】
a)i.少なくとも1つの光重合性マクロマー成分と;
iii.少なくとも1つの光重合開始剤成分と;
を含む光重合性組成物を、ある時間にわたって光に暴露する工程と、
b)前記マクロマー成分の重合形態を含む印刷物品を形成する工程と;
を含む、物品を光重合印刷する方法であって、
前記光重合性マクロマー成分は、中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる複数のアームと、を含み、前記アームの全て又は実質的に全てが光重合性基(Q)で終端し;各アームはグループA及びグループBと表記される2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成されて;領域A及び領域Bをそれぞれ前記アーム内にもたらし、ここで領域Aは、炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、領域Bは、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表す、
方法。
【請求項22】
多軸中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含む化合物であって、前記アームのうちの少なくとも1つは末端ヒドロキシ基を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーからの開環重合生成物である、化合物。
【請求項23】
中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む多軸マクロマーであって、前記アームのうちの少なくとも1つは、末端ヒドロキシ基と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つから形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つから形成される残基を含む、
多軸マクロマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年4月19日出願の米国特許仮出願第62/660,146号の利益を主張し、該出願の全体を参照によりあらゆる目的で本願に援用する。
本発明は、マクロマーを光重合して製造物品を形成する光造形法(SLA)などの光硬化プロセス、及び関連方法において有用な化合物及び組成物全般に関する。
【背景技術】
【0002】
光造形法(SLA)は、3次元(3-D)物体を作製するための比較的十分に開発された積層印刷技法である。光造形法では、紫外(UV)又は可視光などの光を使用して液体材料を光重合して、高い正確度及び精密度で、設計した構造(3次元物品など)を作る。薄い連続する層を、例えばスライスCAD(コンピュータ支援設計)モデルの指示の下、UV又は可視光によって光架橋する。
SLAは、一般に樹脂又はインク配合物と呼ばれることもある液体光架橋性ポリマー組成物を使用する。SLAによって製造された物品の巨視的特性及び分解プロファイルは、ポリマー化学及び加工技法に一部が依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-033844号公報
【特許文献2】特開2003-246851号公報
【特許文献3】特開2012-139542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光造形法(SLA)のような光硬化プロセスに有用な化合物及び組成物を提供し、該プロセスでは、マクロマーが光重合されて、例えば、固体表面又は製造物品を形成する。
「背景技術」の節で議論された主題は全て、必ずしも従来技術とは限らず、単に「背景技術」の節での議論の結果を受けて従来技術とみなされるべきではない。同様に、「背景技術」の節で議論された、又はかかる主題に関連する、従来技術における問題のいかなる認識も、従来技術であると明示されない限り従来技術として扱われるべきではない。代わりに、「背景技術」の節におけるいかなる主題の議論も、特定の問題に対する発明者のアプローチの一部として扱われるべきであり、それ自体も発明的であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に述べると、一態様では、本開示は、光硬化プロセスにおいて有用な化合物及び組成物を提供する。光硬化プロセスは、医療機器及びコーティングなどの物品の製造に有用である。例示的な光硬化プロセスは光造形法(SLA)であり、これは、マクロマーが光重合されて製造物品を形成する、積層造形プロセスである。別の例示的な光硬化プロセスはコーティングプロセスであり、該プロセスによって、本開示の化合物及び/又は組成物は表面上に配置され、その後化学線で硬化(すなわち、光重合又は光硬化)されて、表面上に固体コーティングをもたらす。これらの光重合/光硬化生成物は、本明細書で一般に物品、コーティング、フィルム、材料などと呼ばれ得る。従って、物品を調製することによって本開示を例示するとき、コーティング又はその他の材料を同様に調製できることが理解されるべきである。一態様では、物品、コーティングなどは、生分解性である。
【0006】
一態様では、本開示は、生分解性ポリマー材料を提供する。該材料を使用して、寿命が限られた物品を製造でき、その結果、一定期間後に、生分解性材料から形成された物品はもはや存在しない。例えば、該材料は、医療機器などのデバイス上のコーティングであってもよく、このコーティングは、一定期間後に分解する。別の例では、材料を使用して医療機器(例えば組織修復用メッシュ)を作製することで、ある時間の後、物品は一部又は全部が存在せず、組織修復が達成される。本開示によると、一態様では、光造形法は、例えば本明細書に開示される化合物及び組成物を使用して、かかる材料及び物品を調製するために使用できる。本開示は、生命体と接触する、SLA製物品などの光重合材料に関する懸念、例えば、製造物品の安全性及び効力に関する懸念、特にその生体適合性及び細胞毒性に対処する。
一態様では、本明細書に開示されるのは、3D印刷などの光重合プロセスのための方法及び組成物、並びにかかる光重合物品の製造及び使用のための方法及び組成物である。例えば、本開示は、物品を光重合印刷する方法であって、a)本明細書に開示される少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を含む光重合性組成物を;任意選択で1つ以上の他の成分、例えば、少なくとも1つの光重合開始剤成分及び/又は上記組成物中に懸濁された光反射材料を含む少なくとも1つの光反射材料成分と共に、ある時間にわたって光に暴露する工程と;光重合性マクロマー成分(複数可)の重合生成物(すなわち、重合マクロマー)を含む印刷物品を形成する工程と、を含む、方法を提供する。
一態様では、本明細書に開示されるのは、光重合プロセス、例えばコーティングプロセスなどのフィルム形成プロセスのための方法及び組成物、並びにかかる光重合材料の製造及び使用のための方法及び組成物である。例えば、本開示は、a)本開示の光重合性化合物及び/又は組成物を表面に適用する工程と、b)本明細書に開示される少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を含む光重合性化合物及び/又は組成物を;任意で1つ以上の他の成分、例えば、少なくとも1つの光重合開始剤成分及び/又は上記組成物中に懸濁された光反射材料を含む少なくとも1つの光反射材料成分と共に、ある時間にわたって光に暴露する工程と;光重合性マクロマー成分(複数可)の重合生成物(すなわち、重合マクロマー)を含む固体コーティングを形成する工程と、を含む、物品を光重合コーティングする方法を提供する。
他の態様では、本開示は、マクロマーの重合生成物(これはプレポリマーと呼ばれることもある)を提供し、該マクロマーは、例えば、本明細書に開示される1つ以上の方法によって重合されている。更に、本開示は、本明細書に開示される光重合性化合物又は組成物から、任意で本明細書に開示される1つ以上の方法によって製造される物品を提供し、該物品はポリマー物品と呼ばれることもある。光重合マクロマー又は光重合物品は、無毒の物品であり得る。更に、物品は、生分解性光重合マクロマーを、任意で無毒量の光重合開始剤との混和物中に含み得る。一態様では、ポリマー物品は、生理学的条件下で、全体的又は部分的に生分解性である。しかしながら、別の態様では、ポリマー物品は、生理学的条件下で生分解性ではない。
【0007】
本明細書に記載の少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を;任意で、希釈剤、光重合開始剤、着色剤、及び/又は光反射材成分などの1つ以上の他の成分と組み合わせて含む、光重合性組成物も本開示で提供される。例えば、本明細書で提供されるのは、少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を、任意で、希釈剤、光重合開始剤、着色剤、及び/又は光反射材成分などの1つ以上の他の成分と組み合わせて含む、光造形用光重合性組成物である。
本開示は更に、本明細書に開示される少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を、任意で、希釈剤、光重合開始剤、着色剤、及び/又は光反射材成分などの1つ以上の他の成分と組み合わせて含む、連続液界面製造用光重合性組成物を提供する。本開示は更に、本明細書に開示される少なくとも1つの光重合性マクロマー成分を含む、光重合性インク組成物を提供する。インク組成物は、任意で、希釈剤、光重合開始剤、着色剤、及び/又は光反射材成分などの1つ以上の他の成分も含有し得る。
更に、本開示は、多軸中央コア(CC)と該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含む、本明細書でマクロマーとも呼ばれる光重合性化合物であって、アームのうちの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(本明細書でT、又はTMCとも呼ばれる)及びε-カプロラクトン(本明細書でカプロラクトン、又はC、又はCAPとも呼ばれる)から選択されるモノマーの重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーの重合生成物である、光重合性化合物を提供する。マクロマーは、本明細書に開示される組成物及び方法において、光重合性マクロマー成分であってもよく、光重合されて物品を提供してもよい。
【0008】
更に、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、二官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。ヒドロキシ基は、末端基とも呼ばれ得る。この場合、中央コアは二官能性コアであり、これらの2つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基の両方が、モノマーと反応してアームを形成している。これらの化合物を使用して、例えば、本明細書に開示される方法及び組成物に有用な光重合性マクロマーを形成できる。
本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、三官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物も提供する。この場合、中央コアは三官能性コアであり、これらの3つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基のうち3つ全てが、モノマーと反応してアームを形成している。これらの化合物を使用して、例えば、本明細書に開示される方法及び組成物に有用な光重合性マクロマーを形成できる。
本開示は、更に、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、四官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3又は4本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは四官能性コアであり、これらの4つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基のうち4つ全てが、モノマーと反応してアームを形成している。これらの化合物を使用して、例えば、本明細書に開示される方法及び組成物に有用な光重合性マクロマーを形成できる。
任意で、本開示の組成物のいずれかは、硬化される前に、有効量の光重合開始剤、すなわち、光重合開始剤を活性化するのに適した選択波長の光を送達する非天然光源から放出される放射に組成物が暴露されたときに、光重合性化合物の重合を達成するのに有効な量の光重合開始剤を含有し得る。
【0009】
一態様では、本開示は、積層印刷としても知られる3D印刷の方法、例えば、光造形法を提供し、該方法は、光重合性化合物と光重合開始剤とを有する本明細書に開示される重合性組成物を用意する工程と、該組成物を溶融状態まで加熱する工程と、溶融状態の組成物を所望の形状に堆積させる工程と、重合性組成物中の光重合性化合物を重合するために、該所望の形状を、光重合開始剤を活性化するのに有効な光に暴露する工程と、を含む。
【0010】
本開示の上記の特徴及び追加の特徴並びにそれらの特徴を得る方法が明らかになり、開示は、以下のより詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。本明細書に開示されている全ての参照文献は、各々が個別に組み込まれるかのように、その全体が参照により援用される。
この「発明の概要」は、以下の「発明を実施するための形態」で更に詳細に記載される特定の概念を簡素化した形で紹介するために設けられている。特に明示されない限り、この「発明の概要」は、特許請求される主題の重要な又は必須の特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定することを意図するものでもない。
1つ以上の実施形態の詳細を、以下の説明に記載する。1つの例示的実施形態に関連して例示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。従って、本明細書に記載の様々な実施形態のいずれかを組み合わせて、更なる実施形態を提供できる。実施形態の態様は、本明細書で識別された様々な特許、出願及び/又は出版物の概念を用いて更なる実施形態を提供するために必要であれば、変更できる。他の特徴、目的及び利点は、本明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0011】
本開示の例示的特徴、その特徴及び様々な利点は、添付図面及び以下の様々な実施形態の詳細な説明から明らかであろう。非限定的及び非排他的な実施形態を、添付図面を参照して記載し、図中、特記のない限り、様々な図を通して、同様のラベル又は参照番号は同様の部品を指す。図中の要素の大きさ及び相対位置は、必ずしも正確な縮尺で描かれているとは限らない。例えば、図面の可読性を改善するために、様々な実施形態の形状が選択され、拡大され、配置される。描かれた要素の特定の形状は、図の認識を容易にするために選択されたものである。1つ以上の実施形態を、以下に、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A-1D:三軸BCPEポリマー(それぞれBCPE4、BCPE6、BCPE9、及びBCPE11)のプロトンNMRスペクトルを示す。メタクリレート基のプロトンのピークを標識:高磁場側TMC/カプロラクトン関連(矢印)及び低磁場側グリコリド関連(アスタリスク)のメタクリレート末端アルケニルプロトン
【
図2】
図2A-2D:直鎖BCPEポリマー(それぞれBCPE5、BCPE7、BCPE10、及びBCPE12)のプロトンNMRスペクトルを示す。メタクリレート基のプロトンのピーク:高磁場側TMC/カプロラクトン関連(矢印)及び低磁場側グリコリド関連(アスタリスク)のメタクリレート末端アルケニルプロトン
【
図3】本開示のBCPE4-BCPE7光重合ポリマーフィルムの時間と強度変化率の関係を示す。
【
図4】本開示のBCPE4-BCPE7光重合ポリマーフィルムの時間と含水率の関係を示す。
【
図5】本開示のBCPE4-BCPE7光重合ポリマーフィルムの時間と質量損失の関係を示す。
【
図6】本開示の光重合ポリマーフィルムの質量損失率に対するグリコリド濃度の影響を示す。
【
図7】光硬化条件を増して暴露した後の本開示のチオ―ル化ポリマーの動粘度の増加及び分子量の増加を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の本開示の好ましい実施形態の詳細な説明及び本明細書に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0014】
簡単に述べると、一態様では、本開示は、積層印刷、特にマクロマーを光重合して製造物品を形成する光造形法(SLA)などの積層印刷に有用な化合物及び組成物を提供する。代表的化合物は、多軸中央コア(CC)と、該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含み、アームのうちの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は、炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーのフリーラジカル重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーのフリーラジカル重合生成物である。
一態様では、本開示は、重合性組成物を提供する。組成物は、本明細書でマクロマー又は光重合性マクロマー又は光重合性マクロマー成分とも呼ばれる光重合性化合物を1つ以上含む。一実施形態では、光重合性化合物は、化合物1モル当たり1モルの光反応性基が存在するという点で、一官能性である。一実施形態では、光重合性化合物は、多官能性、例えば、二官能、三官能、四官能、及び/又は五官能性である。6~18の反応性部位(すなわち、本明細書に記載のQ基)を有する、より高官能性の材料が、本開示で更に想到される。加えて、組成物は、比較的低分子量の種及び/又は比較的高分子量の種を含み得る。一態様では、マクロマーは、本明細書で光反応性基又光硬化性基と呼ばれることもある光重合性基などの反応性基を含んでもよい。一実施形態では、光反応性基は、アリル又はビニル系反応性基、例えばアクリレート(メタクリレートを含む)の不飽和官能基、又はその他のアリル及びビニル系反応性基である。一実施形態では、光反応性基はチオール(-SH)基である。実施形態では、マクロマーは、典型的には250,000Da未満、又は200,000Da未満、又は150,000Da未満、又は100,000Da未満、又は50,000Da未満、又は25,000Da未満、又は20,000Da未満、又は15,000Da未満、又は10,000Da未満、又は9,000Da未満、又は8,000Da未満、又は7,000Da未満、又は6,000Da未満、又は5,000Da未満の分子量を有するであろう。
【0015】
一実施形態では、本開示は、中央コアと、該中央コアから延びる複数の(例えば2~4本の)アームと、を含む化合物であって、各アームはヒドロキシ基で終わる(すなわち、終端する)、化合物を提供する。化合物は、式CC-[アーム]nで表すことができ、ここでCCは中央コアを表し、nは、2~18、又は2~14、又は2~8、又は2~6、又は2~4の範囲内の数から選択される。各アームは、2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成され、該2つのグループはグループA及びグループBと表示される。従って、より具体的には、本開示の化合物において、CC-[アーム]nは、CC-[(A)p-(B)q-OH]n、又はCC-[(B)q-(A)p-OH]nのいずれかとして表記でき、式中、(A)p-(B)q及び(B)q-(A)pの各々はアームを表す。任意で、アームの末端官能基が示され、例示的な末端官能基はヒドロキシである。上記式において、Aは、炭酸トリメチレン(T又はTMC)及びカプロラクトン(C又はCAP)を含み、かつ任意でこれらからのみ選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、pは、重合生成物Aを形成するために重合されたモノマーの数を表し、pは1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。上記式において、Bは、グリコリド(G又はGLY)、ラクチド(L又はLAC)及びp-ジオキサノン(D又はDOX)を含み、かつ任意でこれらからのみ選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、qは、重合生成物Bを形成するために重合されたモノマーの数を表し、qは1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。
例えば、式CC-[アーム]nの化合物が三官能性中央コアから形成され、Aは、Bの付加の前にCCに付加される場合、式CC-[アーム]nの化合物は、CC-[(A)p-(B)q-OH]3と表記できる。この例で、Aが2つのTsと1つのCの重合によって形成される場合、pは3となり、AはTTT、TTC、TCT、TCC、CCC、CCT、CTC、及びCTTから、各アーム内で独立して選択される。この例を続けて、Bが1つのGの重合によって形成される場合、qは1となり、BはGとなる。この例では、各アームは、TTTG、TTCG、TCTG、TCCG、CCCG、CCTG、CTCG、及びCTTGから選択される化学式を有する。この本開示の例示的化合物は、CC-[アーム]3(式中、各アームは独立して、TTTG-OH、TTCG-OH、TCTG-OH、TCCG-OH、CCCG-OH、CCTG-OH、CTCG-OH、及びCTTG-OHから選択される)として、あるいは、CC-[(T,T,C)-(G)-OH]3又はCC-[(T,T,C)3-(G)1-OH]3のいずれかとして表記できる。
【0016】
一態様では、本開示は、各々CC-[アーム]nで記載される複数の化合物を含む組成物も提供する。例えば、一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は中央コアを含み、各化合物は中央コアから延びる2本のアームを有し、各アームはヒドロキシ基で終端し、その結果各化合物は式CC-[アーム]2によって表すことができる、組成物も提供する。別の選択肢として、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は中央コアを含み、各化合物は中央コアから延びる3本のアームを有し、各アームはヒドロキシ基で終端し、その結果各化合物は式CC-[アーム]3によって表すことができる、組成物を提供する。更なる選択肢として、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は中央コアを含み、各化合物は中央コアから延びる4本のアームを有し、各アームはヒドロキシ基で終端し、その結果各化合物は式CC-[アーム]4によって表すことができる、組成物を提供する。組成物において、複数の化合物の各々は、同じ数のアームを有し、各々はCC-[(A)-(B)]n及びCC-[(B)-(A)]nから選択される同じ順序のA基とB基とを有する。従って、6つの別個の実施形態(a)~(f)において、本開示は、(a)複数の式CC-[(A)-(B)]2の化合物を含む組成物;(b)複数の式CC-[(A)-(B)]3の化合物を含む組成物;(c)複数の式CC-[(A)-(B)]4の化合物を含む組成物;(d)複数の式CC-[(B)-(A)]2の化合物を含む組成物;(e)複数の式CC-[(B)-(A)]3の化合物を含む組成物;及び(f)式CC-[(B)-(A)]4の化合物を含む組成物を提供する。
【0017】
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、二官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは二官能性コアであり、これらの2つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基の両方が、モノマーと反応してアームを形成している。
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、三官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは三官能性コアであり、これらの3つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基のうち3つ全てが、モノマーと反応してアームを形成している。
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、四官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3又は4本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは四官能性コアであり、これらの4つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基のうち4つ全てが、モノマーと反応してアームを形成している。
【0018】
複数の化合物の各アームは、式(A)-(B)によって表すことができる。あるいは、複数の化合物の各アームは、式(B)-(A)によって表すことができる。組成物が、中央コアとグループAのモノマーとを反応させた後、該反応生成物をグループBから選択されたモノマー(複数可)と反応させることによって調製される場合、組成物中の化合物は式CC-[(A)-(B)]を有することとなる。しかし、組成物が、中央コアとグループBのモノマーとを反応させた後、該反応生成物をグループAから選択されたモノマー(複数可)と反応させることによって調製される場合、組成物中の化合物は式CC-[(B)-(A)]を有することとなる。
【0019】
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、二官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは二官能性コアであり、これらの2つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基の両方が、モノマーと反応してアームを形成し、従って、化合物は一般に、CC-[(A)-(B)]1及びCC-[(A)-(B)]2(式中、CCは二官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。あるいは、グループBのモノマーがグループAのモノマーの反応の前にCCと反応した場合、該組成物の化合物は、一般的に、CC-[(B)-(A)]1及びCC-[(B)-(A)]2(式中、CCは二官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、三官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは三官能性コアであり、これらの3つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基の3つ全てが、モノマーと反応してアームを形成し、従って、化合物は一般にCC-[(A)-(B)]1及びCC-[(A)-(B)]2及びCC-[(A)-(B)]3(式中、CCは三官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。あるいは、グループBのモノマーがグループAのモノマーの反応の前にCCと反応した場合、該組成物の化合物は、一般的に、CC-[(B)-(A)]1及びCC-[(B)-(A)]2及びCC-[(B)-(A)]3(式中、CCは三官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。
一実施形態では、本開示は、複数の化合物を含む組成物であって、複数の化合物の各々は、四官能性中央コアと、該中央コアから延びる1又は2又は3又は4本のアームとを含み、各アームはヒドロキシ基で終端する、組成物を提供する。この場合、中央コアは四官能性コアであり、これらの4つの官能基のうちの少なくとも1つ、最大で中央コアのこれらの官能基の4つ全てが、モノマーと反応してアームを形成し、従って、化合物は一般にCC-[(A)-(B)]1及びCC-[(A)-(B)]2及びCC-[(A)-(B)]3及びCC-[(A)-(B)]4(式中、CCは四官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。あるいは、グループBのモノマーがグループAのモノマーの反応の前にCCと反応した場合、該組成物の化合物は、一般的に、CC-[(B)-(A)]1及びCC-[(B)-(A)]2及びCC-[(B)-(A)]3及びCC-[(B)-(A)]4(式中、CCは四官能性コアである)の1つ以上によって表すことができる。
一態様では、本開示は、本明細書に記載のマルチアーム化合物であって、アームがQ基で終端し、Q基が光重合性である、マルチアーム化合物を提供する。一実施形態では、例示的なQ基は、光重合性であるチオール基を含有し得る。一実施形態では、例示的なQ基は、光重合性である炭素-炭素二重結合を含有し、例えば、Q基は、各々光重合性炭素-炭素二重結合を有するアクリレート又はメタクリレート基に存在するようなビニル基を含み得る。例えば、光重合性チオール又は炭素-炭素二重結合などの光重合性成分を含有するQ基は、末端ヒドロキシ基と好適な試薬との反応によって本明細書に記載のマルチアーム化合物に導入できる。ヒドロキシ基をチオール含有基又は炭素-炭素二重結合含有基に変換する方法は、一般的に知られており、本開示の化合物の調製に使用されてもよく、その例を本明細書に示す。Q基は、光反応性基、特にQ含有マクロマーの重合を可能にする光反応性基、を含有し、Q基は、光反応性基の光反応性に影響する追加原子(例えば、本明細書に例証するように炭素-炭素二重結合に隣接したカルボニル基)、及び/又は光反応性基をマクロマーに導入するために使用される追加原子も含有してもよく、例えば、本明細書に例証するように、チオール基の導入にコハク酸エステルを使用してもよい。
【0020】
例えば、ヒドロキシ基を、光重合性炭素-炭素二重結合を含有するQ基に変換するために、末端ヒドロキシ基を有するマルチアーム化合物を、反応性アクリレート又はメタクリレート化合物、例えば、無水メタクリル酸、無水アクリル酸、塩化メタクリロイル、又は塩化アクリロイルなどと反応させてもよい。
例えば、ヒドロキシ基を、光重合性チオール基を含有するQ基に変換するために、本明細書に開示する末端ヒドロキシ基を有するマルチアーム化合物にエステル化反応を起こしてもよい。エステル化の1つの方法は、化学量論量のマクロマー及びメルカプトカルボキシル酸化合物をカルボジイミド(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)及び触媒(例えば、ジメチルアミノピリジン)の存在下で添加することである。メルカプトカルボキシル酸の例としては、限定するものではないが、以下の化合物が挙げられる:3-メルカプトプロピオン酸、チオ乳酸、チオグリコール酸、メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプト安息香酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプトオクタン酸、及びn-アセチルシステイン。例えば、本明細書に開示される末端ヒドロキシ基を有するマルチアーム化合物をチオ乳酸と反応させてもよく、この場合、得られるQ基は、マルチアーム化合物の末端酸素に結合した式-C(=O)-CH2-SHを有する。
【0021】
チオール官能化マクロマーを形成する別の例示的方法は、最初にヒドロキシ末端マクロマーを改質して末端カルボン酸基を形成することであある。その一例は、ヒドロキシ末端マクロマーを無水コハク酸と反応させることである。末端カルボン酸基を有するマクロマーは、エステル化によってメルカプトアルコールと反応でき、又はメルカプトアミンと反応してアミド結合を形成できる。メルカプトアルコールのいくつかの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:メルカプトプロパノール、メルカプトヘキサノール、メルカプトオクタノール、及びメルカプトウンデカノール。メルカプトアミンのいくつかの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:システイン、グルタチオン、6-アミノ-1-ヘキサンチオール塩酸塩、8-アミノ-1-オクタンチオール塩酸塩、及び16-アミノ-1-ヘキサデカンチオール塩酸塩。例えば、本明細書に開示される末端ヒドロキシ基を有するマルチアーム化合物は、無水コハク酸と反応して中間体を形成し、これが次にシステインと反応して末端チオール基を導入する。この場合、得られるQ基は、マルチアーム化合物の末端炭素に結合した式-C(=O)CH2CH2C(=O)NH-C(COOH)-CH2SHを有する。
チオール官能化マクロマーを形成する更に別の方法は、末端ヒドロキシ基を有するマクロマーを、ペンダントチオ―ル基を有するラクトンモノマーと反応させることである。これは、第3工程の開環重合で起こる。
【0022】
一態様では、本開示は、上で識別した光重合性化合物を、任意で1つ以上の追加成分と組み合わせて含有する組成物を提供する。上に識別した光重合性化合物は、中央コアと、Q末端基を有する1つ以上のアームとを含む。一態様では、組成物中に存在するマクロマーは、全て同じ中央コアを含有する。例えば、組成物のマクロマー成分の全てが、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールから調製される。しかし、一態様では、本開示の組成物はマクロマー成分の混合物を含有し、例えば、マクロマー成分の一部は三軸で、例えば、トリメチロールプロパンから生成し、同じ組成物の他のマクロマー成分は四軸で、例えば、ペンタエリスリトールから生成する。
【0023】
一態様では、本開示は、上で識別した複数の化合物を含む組成物を提供し、複数の化合物の各々は、A基及びB基の形成に使用された同じ識別情報の(ただし同じ数ではない)モノマーを組み込んでいる。複数の化合物は、アームに存在するモノマー単位の数が互いに異なり、より具体的には、A基に存在する重合モノマー単位の数、及び/又はB基に存在する重合モノマー単位の数が異なる。例えば、A基は炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)から選択されるモノマーから形成されるが、アーム内のT由来単位の数とC由来単位の数とは、化合物のアーム間で異なっていてもよく、かつ組成物中に存在する複数の化合物内の異なる化合物のアーム間で異なっていてもよい。同様に、B基は、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)から選択されるモノマーから形成されるが、アーム内のG由来単位の数とL由来単位の数とD由来単位の数とは、化合物のアーム間で異なっていてもよく、かつ組成物中に存在する複数の化合物内の異なる化合物のアーム間で異なっていてもよい。
例えば、組成物が、各々が式CC-[アーム]nで表される複数の化合物を含み、各アームが(B)-(A)ではなく(A)-(B)と書かれる場合、組成物は、各々式CC-[(A)-(B)]2を有する複数の化合物を含む。複数の化合物の数は、A基及びB基を形成するために使用されるモノマー単位の数が異なる。従って、複数の化合物の各々が式CC-[(A)p-(B)q]2で表される場合、pとqの合計は2であってもよく(この場合p及びqは各々1である)、又は合計は3であってもよい(この場合pとqのうちの一方は1であり、pとqのうちの他方は2である)、又は合計は4であってもよい(この場合p及びqは各々2である、又はpとqのうちの一方は1であり、pとqのうちの他方は3である)。
例えば、式CC-[アーム]nの化合物が三官能性中央コアから形成され、Aは、Bの付加の前にCCに付加される場合、式CC-[アーム]nの化合物は、CC-[(A)p-(B)q-OH]3と表記できる。この例で、Aが2つのTと1つのCとの重合によって形成される場合、pは3であり、AはTTT、TTC、TCT、TCC、CCC、CCT、CTC、及びCTTから、各アーム内で独立して選択される。この例を続けて、BがGの重合によって形成される場合、qは1となり、BはGとなる。この例では、各アームは、TTTG、TTCG、TCTG、TCCG、CCCG、CCTG、CTCG、及びCTTGから選択される化学式を有する。この本開示の例示的化合物は、CC-[アーム]3(式中、各アームは独立して、TTTG-OH、TTCG-OH、TCTG-OH、TCCG-OH、CCCG-OH、CCTG-OH、CTCG-OH、及びCTTG-OHから選択される)として、あるいは、CC-[(T,T,C)-(G)-OH]3又はCC-[(T,T,C)3-(G)1-OH]3のいずれかとして表記できる。
【0024】
前述のように、各アームは、2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成され、該2つのグループはグループA及びグループBと表示される。従って、より具体的には、本開示の化合物において、CC-[アーム]nは、CC-[(A)p-(B)q-OH]n、又はCC-[(B)q-(A)p]nのいずれかとして書くことができ、式中、(A)p-(B)q及び(B)q-(A)pの各々はアームを表す。上記式において、Aは、炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)を含み、かつ任意でこれらからのみ選択される1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、pは、重合生成物Aを形成するために重合されたモノマーの数を表し、1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。上記式において、Bは、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)を含み、かつ任意でこれらから選択される1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、qは、重合生成物Bを形成するために重合されたモノマーの数を表し、1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。
【0025】
ヒドロキシ末端基を有する、すなわち、ヒドロキシ基で終端するアームを有する、本開示の化合物は、対応する光重合性化合物、及びかかる光重合性化合物を含有する組成物の調製に有用である。ヒドロキシ末端基は、当該技術分野において既知であり、本明細書に例証される技法によって光重合性基へと変換され得る。これらの光重合性基は、本明細書において略記「Q」で表される。
【0026】
一実施形態では、本開示は、中央コアと、該中央コアから延びる複数の(例えば2~4本の)アームと、を含む化合物であって、各アームは重合性基(Q)で終端する、化合物を提供する。化合物は、式CC-[アーム-Q]nで表すことができ、ここでCCは中央コアを表し、nは、2~18、又は2~14、又は2~8、又は2~6、又は2~4の範囲内の数から選択される。各アームは、2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成され、該2つのグループはグループA及びグループBと表示される。従って、より具体的には、本開示の化合物において、CC-[アーム]nは、CC-[(A)p-(B)q-Q]n、又はCC-[(B)q-(A)p-Q]nのいずれかとして表記でき、式中、(A)p-(B)q及び(B)q-(A)pの各々はアームを表す。任意で、アームの末端官能基が示されてもよく、ここでQは一般的に光反応性基末端官能基を表す。上記式において、Aは、炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)を含み、かつ任意でこれらからのみ選択される1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、pは、重合生成物Aを形成するために重合されたモノマーの数を表し、pは1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。上記式において、Bは、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)を含み、かつ任意でこれらからのみ選択される1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、qは、重合生成物Bを形成するために重合されたモノマーの数を表し、qは1~40、又は1~30、又は1~20、又は1~10から選択される。
【0027】
実施形態では、本開示は、光重合性化合物と、かかる化合物を含有する組成物と、を提供し、ここで化合物は、次のうちの1つで記載される:化合物は、構造CC-[A-B-Q]nであるか又は該構造を含み、nは2である;化合物は、構造CC-[A-B-Q]nであるか又は該構造を含み、nは3である;化合物は、構造CC-[A-B-Q]nであるか又は該構造を含み、nは4である;化合物は、構造CC-[B-A-Q]nであるか又は該構造を含み、nは2である;化合物は、構造CC-[B-A-Q]nであるか又は該構造を含み、nは3である;化合物は、構造CC-[B-A-Q]nであるか又は該構造を含み、nは4である。
任意で、化合物は、4本のアームを有し、分子量が40,000g/モル未満、又は20,000g/モル未満であり、室温で固体である。任意で、化合物は、3本のアームを有し、分子量が15,000g/モル未満であり、室温で液体である。任意で、化合物は、2本のアームを有し、分子量が5,000g/モル未満であり、室温で液体である。
【0028】
一実施形態では、本開示の光重合性化合物は、比較的短いアーム、例えば、1~10個のモノマー残基/アームを有する。モノマー残基は、本明細書で使用するとき、モノマーの重合生成物、すなわち、モノマーがポリマーに組み込まれた後にモノマーが有する構造を指し、従って該ポリマー中のモノマー残基を提供する。一実施形態では、本開示の化合物を積層印刷に使用するとき、これらの化合物は流体状態である必要があり:化合物自体が流体であるか又は化合物が溶媒及び/若しくは希釈剤に溶解されて流体組成物を提供するかのいずれかである。アームが長すぎる場合、化合物を含有する組成物は、組成物が化合物を希釈するための多くの溶媒又は希釈剤を含有しない限り、通常は粘度が高すぎてSLAのような積層印刷で有用とならない。その場合、積層印刷プロセスは、望ましくない大量の溶媒の利用を必要とし得る。有利には、アームが比較的短い場合、化合物自体は積層印刷プロセスの適用温度において流体となり得、適用温度は室温よりも高くてもよく、その結果、溶融状態を達成するために化合物を加熱しなければならない、又は化合物を比較的高い濃度で溶媒に溶解し、なおも低粘度溶液をもたらしてもよい。
【0029】
任意の実施形態では、本開示の化合物及びかかる化合物を含有する組成物を、化合物のA領域(ブロックとも呼ばれる)を特徴づける以下の特徴のうちの1つ以上によって記載できる:炭酸トリメチレン(TMC又はT)から形成される残基を含むブロックA、すなわち、TMCの重合生成物又は残基であるブロックA、を有する;カプロラクトン(CAP又はC)から形成される残基を含むブロックAを有する;TMC及びCAPから形成される残基を含むブロックAを有する;ブロックAの残基の少なくとも90%は、TMC又はCAPから形成される残基である;化合物は、TMCから形成される残基を1~45、又は2~45個含む;化合物は、TMCから形成される残基を1~15又は2~15個含む;化合物は、TMCから形成される残基を1~10又は2~10個含む;領域Aは、102~2500g/モルの分子量を有する;領域Aは、102~1000g/モルの分子量を有する;領域Aは、102~900g/モルの分子量を有する;各A領域は、2~45個のモノマー残基を含む;各A領域は、2~15個のモノマー残基を含む;各A領域は、2~10個のモノマー残基を含む。
任意の実施形態では、本開示の化合物及びかかる化合物を含有する組成物を、化合物のBブロック(領域とも呼ばれる)を特徴づける以下の特徴のうちの1つ以上によって記載できる:各Bブロックは、1~45又は2~45個のモノマー残基;各Bブロックは、1~15又は2~15個のモノマー残基を含む;各Bブロックは、1~10又は2~10個のモノマー残基を含む。
【0030】
化合物は更にまた、又は別の方法として、以下のうちの1つ以上によって記載できる:化合物は、40,000g/モル未満の分子量を有する;化合物は、25,000g/モル未満の分子量を有する;化合物は、10,000g/モル未満の分子量を有する。
本開示の光重合性組成物は、任意で、室温で50,000mPa・s未満の粘度を有する;又は室温で30,000mPa・s未満の粘度を有する;又は室温で20,000mPa・s未満の粘度を有することによって説明できる。
組成物は、希釈剤を含有してもよい。希釈剤は、反応性でも非反応性でもよい。反応性希釈剤は、光(UV又は可視光)に暴露されたときに光重合反応を起こすが、非反応性希釈剤は、かかる光暴露に対して不活性である。代表的な反応性希釈剤は、PEG-ジアクリレート(PEG-DA又はPEGDA)である。
【0031】
以下は、番号付与した本開示の例示的実施形態である。
1)多軸中央コア(CC)と、該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含む光重合性化合物であって、アームのうちの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、(B)は、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーからの開環重合生成物である、光重合性化合物。
2)実施形態1の光重合性化合物を1つ以上含み、任意で光重合開始剤も含有する、光硬化性組成物。
3)中央コア(CC)と、中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む光反応性多軸マクロマー化合物であって、アームのうちの少なくとも1つは、光反応性官能基(Q)と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つ、すなわち1つ又は両方、から形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つ、すなわち、1つ、2つ、又は3つ全て、から形成される残基を含む、多軸マクロマー化合物。
4)実施形態3のマクロマー化合物を1つ以上含む、光反応性組成物。
5)中央コア(CC)は式(A)-(B)の1つ以上のアームの(A)に結合し、(B)はヒドロキシ末端基を有する、実施形態1の光重合性化合物のプレポリマー化合物。
6)中央コア(CC)は式(B)-(A)の1つ以上のアームの(B)に結合し、(A)はヒドロキシ末端基を有する、実施形態1の光重合性化合物のプレポリマー化合物。
7)(A)及び(B)の各々は、少なくとも1個であるが10個を超えないモノマー残基を含む、実施形態1~6の化合物及び組成物。
8)(A)及び(B)の各々は、少なくとも1個であるが8個を超えないモノマー残基を含む、実施形態1~6の化合物及び組成物。
9)(A)及び(B)の各々は、少なくとも1個であるが6個を超えないモノマー残基を含む、実施形態1~6の化合物及び組成物。
10)(A)及び(B)の各々は、少なくとも1個であるが4個を超えないモノマー残基を含む、実施形態1~6の化合物及び組成物。
11)化合物は、5,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
12)中央コアと(A)及び(B)領域を有するアームとを有する化合物の少なくとも90質量%は、5,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
13)化合物は、4,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
14)中央コアと(A)及び(B)領域を有するアームとを有する化合物の少なくとも90質量%は、4,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
15)化合物は、3,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
16)中央コアと(A)及び(B)領域を有するアームとを有する化合物の少なくとも90質量%は、3,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~10の化合物及び組成物。
【0032】
光重合性Q基を有する本明細書に記載の光重合性化合物、及びかかる化合物を含む本開示の組成物は、任意で光重合開始剤の存在下、更に任意で他の成分の存在下、適切な波長の光に十分に暴露すると重合を起こす。適切な波長、暴露時間、並びに硬化剤の識別情報及び量は、従来技術と同様に、化合物及び組成物中のQ基の識別情報及び量を考慮して選択される。光重合は、時として、放射線硬化と呼ばれ、この場合、光重合開始剤は硬化剤と呼ばれ得る。
光重合開始剤は、放射に暴露したときに反応性種を生成する有機(炭素含有)分子を指す。一実施形態では、光重合開始剤は、例えば、カチオン性又はアニオン性反応性種ではなく、ラジカル反応性種を生成する。光重合開始剤は、光硬化性コーティング、接着剤及び歯科修復に使用されるフォトポリマーの調製のための周知の成分である。
光重合開始剤が光反応性ポリマーを上手く硬化するためには、光重合開始剤の吸収帯が硬化に使用した光源の発光スペクトルと重なることが必要である。任意で、本明細書で開示される光重合性組成物は、約10nm~約770nm、又は約100nm~約770nm、又は約200nm~約770nmの光の波長、及び上記範囲の間の全ての波長を吸収する、少なくとも1つの光重合開始剤を含む。一態様では、光重合開始剤成分は、300nm以上、最大約770nmの光の波長を吸収する光重合開始剤を含む。一態様では、光重合開始剤成分は、365nm以上、最大約770nmの光の波長を吸収する光重合開始剤を含む。一態様では、光重合開始剤成分は、375nm以上、最大約770nmの光の波長を吸収する光重合開始剤を含む。一態様では、光重合開始剤成分は、400nm以上、最大約770nmの光の波長を吸収する光重合開始剤を含む。波長の選択は、光重合開始剤の識別情報に依存する。市販の光重合開始剤の供給業者は、特定の光重合開始剤について、適切な波長を表示している。
【0033】
フリーラジカルを生成する光重合開始剤を使用して、本開示によるポリマー硬化を達成してもよい。これらの光重合開始剤を、チオール含有ポリマー並びにアクリレート及び/又はメタクリレート官能を有する二重結合含有ポリマーを硬化するために使用できる。フリーラジカル発生光重合開始剤には、I型及びII型光重合開始剤と表記される2つの種類があり、これを本開示に従って使用できる。
I型光重合開始剤は単分子フリーラジカル生成剤であり;UV-可視光を吸収すると、開始剤の構造内の特定の結合が均一開裂してフリーラジカルを発生する。均一開裂は、電子の結合対が均一に分裂してフリーラジカル生成物になる。いくつかの一般的な分類のI型光重合開始剤における均一開裂の例は:ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシ-アセトフェノン、α-ヒドロキシ-アルキルフェノン、アシルホスフィンオキシドである。例示的な市販のI型光重合開始剤は、例えば、BASF、BASF SE(Ludwigshafen,Germany)から入手でき、限定するものではないが、Irgacure(商標)369、Irgacure(商標)379、Irgacure(商標)907、Darocur(商標)1173、Irgacure(商標)184、Irgacure(商標)2959、Darocur(商標)4265、Irgacure(商標)2022、Irgacure(商標)500、Irgacure(商標)819、Irgacure(商標)819-DW、Irgacure(商標)2100、Lucirin(商標)TPO、Lucirin(商標)TPO-L、Irgacure(商標)651、Darocur(商標)BP、Irgacure(商標)250、Irgacure(商標)270、Irgacure(商標)290、Irgacure(商標)784、Darocur(商標)MBF、及びIrgacure(商標)754、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸マグネシウム、及びフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウムなどである。
II型光重合開始剤は、光重合開始剤に加えて、官能基の水素が容易に引き抜かれる共開始剤(通常はアルコール又はアミン)を必要とする。II型光重合開始剤によるUV~可視光の吸収は、光重合開始剤の励起電子状態を生じ、これは共開始剤から水素を引き抜き、プロセス内で結合電子対を分裂する。ベンゾフェノン、チオキサントン、及びベンゾフェノン型の光重合開始剤は、最も一般的なII型光重合開始剤である。いくつかの一般的なII型光重合開始剤の更なる例としては、リボフラビン、エオシンY、及びカンファーキノンが挙げられる。フリーラジカルが生成した後の重合機構は、任意のフリーラジカル重合プロセスと同様である。
一態様では、本開示の組成物中の光重合開始剤成分は、I型光重合開始剤を含む。一態様では、本開示の組成物中の光重合開始剤成分は、II型光重合開始剤を含む。一態様では、I型光重合開始剤とII型光重合開始剤との組合せが本開示の光重合組成物中に存在する。
【0034】
本明細書に開示される光重合性化合物及び組成物のいずれかにおいて、Qは、炭素-炭素二重結合、例えばビニル基であってもよい。例示的なビニル基は、アクリレート基及びメタクリレート基である。更なる態様において、1つ以上のQ基を有する光重合性化合物は、例として、300~450nm、又は300~425nm、又は350~450nm、又は350~425nm、又は365~405nmの波長を有する光に暴露したときに光重合を起こす。一実施形態では、化合物及び組成物は、UV放射に暴露したときに光重合を起こす。
本明細書に記載の光重合性化合物及び組成物のいずれかにおいて、Qはチオール基であってもよい。更なる態様において、1つ以上のQ基を有する光重合性化合物は、例として、300~450nm、又は300~425nm、又は350~450nm、又は350~425nm、又は365~405nmの波長を有する光に暴露したときに光重合を起こす。一実施形態では、化合物及び組成物は、UV放射に暴露したときに光重合を起こす。
【0035】
一般に、光重合開始剤を用いたチオールフリーラジカル重合で必要な光重合開始剤の濃度は、Q基が光重合性炭素-炭素二重結合を有する場合に必要な濃度よりもはるかに高い。チオール基がある場合、光重合開始剤はチオール基を開始できるが、2つのチオール基が重合できるのは、2つのチイルラジカルが出逢ったときだけである。更に、2つのチイルラジカルが結合することはラジカル基が終端することであり、そのため高濃度の光重合開始剤が必要である。光重合性基が炭素-炭素二重結合である、又は炭素-炭素二重結合(例えば、ビニル基)を含む場合、1つのフリーラジカルが開始し、終端の前に多数のビニル基を成長し得る。従って、光重合がチオール基を介して進む場合、比較的高密度のチオール基を有することが有益である。チオール末端基の濃度が低いほど、チイルラジカル生成の確率と、2つのチイルラジカルが結合して重合が起こる確率の両方が低くなる。この観点から、低分子量(すなわち、好ましくは<5000Da、より好ましくは<3000Da、更により好ましくは<2000Da)のマルチアームチオール化合物が、本開示の光重合プロセスに好ましい。
【0036】
本明細書に記載の光重合性組成物のいずれかにおいて、式-(A)-(B)-Q又は-(B)-(A)-Qの単一のアームのみを有する化合物がいくらかの量、典型的には少量で存在し得る。一実施形態では、この単アーム化合物は、Q基を有する化合物の総質量の20質量%未満を提供する。他の実施形態では、単アーム化合物は、Q基を有する化合物の総質量の15質量%未満、又は10質量%未満、又は5質量%未満、又は4質量%未満、又は3質量%未満、又は2質量%未満を提供する。これらの化合物において、中央コアは、二官能性中央コア(二官能性開始剤)、又は三官能性中央コア(三官能性開始剤)、又は四官能性中央コア(四官能性開始剤)のいずれかから誘導され得る。
本明細書に記載の光重合性組成物のいずれかにおいて、式CC-Q、CC-A-Q、及びCC-B-Qを含む化合物から選択される化合物(複数可)がいくらかの量で存在し得る。式CC-Qを有する化合物は、光重合性基Qに直接結合した中央コアを有することとなる。式CC-A-Qを有する化合物は、グループAからのモノマー残基から形成されたアームを有するが、グループBからのアームは有さず、このアームはQ基で終端し、中央コアCCに結合している。式CC-B-Qを有する化合物は、グループBからのモノマー残基から形成されたアームを有するが、グループAからのアームは有さず、このアームはQ基で終端し、中央コアCCに結合している。これらの化合物において、中央コアは、二官能性中央コア(二官能性開始剤)、又は三官能性中央コア(三官能性開始剤)、又は四官能性中央コア(四官能性開始剤)のいずれかから誘導され得る。
本明細書に記載の光重合性組成物のいずれかにおいて、アームの一部はQ末端基で終端するが他のアームはヒドロキシ末端基で終端する、1つ以上の化合物がいくらかの量で存在し得る。かかる化合物は、ヒドロキシ末端基から対応する反応性Q基への不完全変換がある場合に生じ得る。この種類の例示的な化合物は、式{[(B)q-(A)p]n-}m-CC-{[(A)p-(B)q-Q]}rと記載することができ、これはアームのうちの「m」本がヒドロキシ末端基で終端し、アームのうちの「r」本がQ末端基で終端し、mとrの合計は中央コア(CC)の官能価である、化合物を表記する。例えば、中央コアが二官能性であるとき、mは1であってもよく、rは1であってもよい。別の例として、中央コアが三官能性であるとき、mは1であってもよく、rは2であってもよい。更に別の例では、中央コアが三官能性であるとき、mは2であってもよく、rは1であってもよい。対応する状況は、式{[(A)q-(B)p]n-}m-CC-{[(B)p-(A)q-Q]}rの化合物で起こり得る。
【0037】
光重合開始剤に加えて、染料などの着色剤を、本明細書に記載の光重合性印刷配合物に添加してもよい。染料の添加により、配合物を所望の色に調節するという目的を達成できる。ただし、無毒かつ生体適合性を有する配合物用の染料は、典型的には2質量%以下の濃度で使用される(例えば、重合成組成物及び染料の使用の教示に関して本明細書に援用される国際出願PCT/US2016/059910号明細書参照)。吸収性デバイスの場合、大部分の吸収性縫合糸製品のD&Cバイオレット添加剤に示されるように、ほとんどの染料は、FDAによって、含有量が0.1~0.3質量%に規制されている。高い染料濃度と、高い光重合開始剤濃度との組み合わせは、3D光印刷可能な組成物、特に、得られた光印刷物品に、明らかな毒性をもたらす。
【0038】
一態様では、本開示は、光造形法(SLA)インク組成物を提供する。該組成物は、本明細書に開示される光重合性化合物を含み、光重合性マクロマーとも呼ばれる。任意で、インク組成物は、少なくとも1つの光重合開始剤成分を、典型的には重合性マクロマーの総質量を基準にして2質量%未満、又は1.5質量%未満、又は1質量%未満、又は0.9質量%未満、又は0.8質量%未満、又は0.7質量%未満、又は0.6質量%未満、又は0.5質量%未満、又は0.25質量%未満、又は0.1質量%未満の総濃度で含む。
同じく任意で、SLAインク組成物は、組成物中に懸濁された光反射材を含む少なくとも1つの光反射材成分を含有し、該光反射材成分は、光反射材を含まない組成物の光線量と比較して、組成物の光線量を調節する。本明細書に開示されるこの実施形態及び他の実施形態に好適な光反射材は、米国仮特許出願第62/653584号明細書(発明の名称「Methods and Compositions for Photopolymerizable Additive Manufacturing」、2018年4月6日出願、出願人Poly-Med,Inc、発明者M.A.Vaughn及びP.Saini)に開示されている。
インク組成物のその他の任意成分は、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、溶媒、安定剤、チキソトロピー材料、着色剤、トレーサー材料、及び導電性材料である。例えば、添加剤は染料であってもよい。本開示のSLAインクを用いて作製された印刷物品は、染料が存在することで着色されていてもよく、又は蛍光、放射性、可撓性、剛直性、柔軟性、破砕性、又はこれらの組合せであるがこれらに限定されない、物品の少なくとも一部が有する特性などの任意の所望の特性を有してもよい。
【0039】
本明細書に開示される光重合性組成物は、所望の成分を、典型的には撹拌しながら組み合わせて、均質な組成物を達成することによって作製される。所望の組成物は、ホモジナイザーを用いて混合されてもよい。例えば、本明細書に開示される光重合性組成物は、光重合性マクロマー及び光重合開始剤などの上記で識別されたような成分を組み合わせることによって調製され得る。任意で、所望の成分は、懸濁を補助するための分散剤を含んでもよい。列挙した成分は、任意で、混合の前に加熱されてもよい。列挙した成分は、任意で、気泡を除去するために真空下に置かれてもよい。
【0040】
本明細書に開示される方法は、光重合性組成物を使用して、物品、特に無毒かつ生分解性の物品を製造する方法を含む。例えば、本明細書に開示される組成物を、光重合性又は光硬化性インク又は樹脂として、3D印刷法に使用できる。例えば、本明細書に開示される組成物を、光重合性又は光硬化性インク又は樹脂として、光造形(SLA)3D印刷法に使用できる。
本開示は、本明細書に開示される少なくとも1つの光重合性マクロマー化合物を含む光重合性組成物と;典型的には総濃度が1.0質量%未満の少なくとも1つの光重合開始剤成分とを、ある時間にわたって光に暴露することを含む、物品のSLA印刷の方法を提供する。本明細書に開示される光重合性組成物のいずれかを、物品をSLA印刷する方法に使用できる。例えば、光重合性組成物は、反応性希釈剤又は非反応性希釈剤を含んでもよい。反応性希釈剤は、重合反応に関与する希釈剤であり、例えば、反応性希釈剤は、例えばマクロマーと重合する。本開示の光重合性組成物は、安定剤、例えば、フリーラジカル安定剤を含んでもよい。
本開示に従ってSLAによって物品を印刷する方法は、印刷物品を硬化することを含む二次硬化工程を含んでもよい。二次硬化工程は、印刷物品の少なくとも一部が第2の重合反応を起こすように、印刷物品の少なくとも一部を暴露することを含む。例えば、物品の一部を、第1の重合工程で使用した波長と同じ又は異なる波長の放射に暴露してもよく、光重合開始剤は、第1の重合工程で反応した光重合開始剤と同じでも異なっていてもよく、活性化されて、重合されていない又は部分的に重合された反応性基に重合反応を起こさせ、重合させる。二次硬化工程は、印刷物品の特性を変更し得る。例えば、印刷物品は、初期印刷工程後、全体が柔軟かつしなやかである。印刷物品の外面を、異なる波長放射を用いて二次硬化工程に暴露した後、印刷物品の外面は、硬く、柔軟ではない。
【0041】
本開示に従ってSLAによって物品を印刷する方法は、印刷物品の前処理及び/又は後処理を含んでもよい。例えば、印刷物品を、印刷後、二次硬化工程の前、二次印刷工程の後、又はこれらの工程の各々の後に、すすぎ処理を実施してもよい。
印刷物品は、SLA 3D印刷期間が完了した後に得られる物品である。印刷物品は、構造体又は構造体の一部でもよい。印刷物品は、表面に印刷されたコーティングのような、フィルムの形態であってもよい。本明細書で使用するとき、印刷という用語は、ポリマー組成物を表面に接触させて、ポリマー組成物を更に重合させることを意味するために使用される。印刷は、ポリマー組成物を表面に接触させた後、UV及び/又は可視光に暴露して、更なる重合を起こすことを含み得る。ポリマー組成物が接触する表面は、ポリマー組成物の重合層を含む任意の表面であってもよい。
印刷物品は、残存量の光重合性組成物の成分を含んでも含まなくてもよい。例えば、印刷物品は、希釈剤又は光重合希釈剤、又は光重合開始剤を含んでもよい。一態様では、印刷物品又は光重合性組成物は、添加剤を有してもよい。添加剤は、チキソトロピー材料、着色剤、トレーサー材料又は導電性材料を含んでもよい。例えば、添加剤は染料であってもよい。印刷物品は、染料が存在することで着色されていてもよく、又は蛍光、放射性、可撓性、剛直性、柔軟性、破砕性、又はこれらの組合せであるがこれらに限定されない、物品の少なくとも一部が有する特性などの任意の特性を有してもよい。
【0042】
物品をSLA印刷する方法は、光重合反応を起こしてオリゴマー及び/又はポリマーを形成できる官能基を有するモノマー又はマクロマーのような、重合を起こすことができるモノマー又はマクロマーを含む光重合性組成物を含み得る。一態様では、マクロマー及びモノマーは、エチレン性不飽和脂肪族又は芳香族の反応性基又は末端基を含み得る。開示されたマクロマー及びモノマーは、本明細書に開示された方法において機能する。
物品をSLA印刷する方法は、光重合性組成物を約10nm~約770nmの光波長で光重合することを含む。本明細書で使用するとき、UV放射は約10~400nmの波長を有し、可視放射は390~770nmの波長を有する。一態様では、光反射材成分を含む光重合性組成物は、同じ重合条件下で、光反射材成分を含まない光重合性組成物よりも短い暴露時間で光重合する。
【0043】
SLAによって印刷するためのデバイスにおいてSLAを用いて物品を印刷する方法は、光重合開始剤成分を含む光重合性組成物を含む。光重合開始剤成分は、1つ以上の光重合開始剤を含んでもよく、他の材料、例えば、希釈剤、賦形剤、阻害剤、又はその他の溶液も含んでもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の約0.05質量%~約5.0質量%の濃度であってもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の0.50質量%未満の濃度であってもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の0.25質量%であってもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の0.25質量%未満であってもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の0.10質量%であってもよい。一態様では、光重合開始剤成分は、光重合性組成物の0.10質量%未満であってもよい。
SLAによって印刷するためのデバイスにおいてSLAを用いて物品を印刷する方法は、約10nm~約770nmの波長で光を吸収する光重合開始剤成分を少なくとも1つ含む光重合性組成物を含む。一態様では、光重合開始剤は、300nm以上の光の波長を吸収する。一態様では、光重合開始剤は、365nm以上の光の波長を吸収する。一態様では、光重合開始剤は、375nm以上の光の波長を吸収する。一態様では、光重合開始剤は、400nm以上の光の波長を吸収する。SLAによって印刷するためのデバイスにおいてSLAを用いて物品を印刷する方法は、I型、II型、カチオン性光重合開始剤又はこれらの組み合せである光重合開始剤を少なくとも1つ含む光重合性組成物を含む。
SLAによって印刷するためのデバイスにおいてSLAを用いて物品を印刷する方法は、光重合開始剤成分を含む光重合性組成物を150μm未満の深さで光重合又は硬化することを含む。一態様では、本明細書に開示される方法は、光重合性組成物を、約5μm~約50μmの深さ、及びこれらの間の全ての深さにおいて光重合又は硬化することを含む。
SLAによって印刷するためのデバイスにおいてSLAを用いて物品を印刷する方法は、生理学的条件において吸収可能な光反射材を含む光反射材成分を含む光重合性組成物を含む。一態様では、光反射材成分は、生体器官に対して生体適合性を有する光反射材を含む。一態様では、光反射材成分は、光重合性マクロマー、希釈剤、光反射材、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを用いて重合される光反射材を含む。
【0044】
本開示は、本明細書に開示される方法によって組成物を重合したときに、本明細書に開示される組成物から形成される、ポリマー物品を含む。
本開示は、本明細書に開示される方法によって、本明細書に開示される組成物から作製される物品(本明細書で印刷物品とも呼ばれる)を含む。一態様では、物品は、医療機器であってもよい。一態様では、物品は、医療機器の一部であってもよい。一態様では、物品は、多孔質であってもよい。一態様では、物品は、生理学的条件下で生分解性であってもよい。一態様では、生分解性物品は、約3日~約5年の分解時間を有し得る。一態様では、物品は、生分解性でなくてもよい。一態様では、物品の一部分は生分解性であってもよく、第2の部分は生分解性でなくてもよく、又は物品の第1の部分若しくは残りの部分とは異なる分解時間を有してもよい。
【0045】
物品は薬剤溶出性であってもよく、例えば、物品の全部又は一部は、光重合性組成物に含まれていた生物活性剤を溶出し得る。かかる生物活性剤の例としては、限定するものではないが、線維化誘発剤、抗真菌剤、抗微生物剤及び抗生物質、抗炎症剤、抗瘢痕剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、消毒剤、麻酔剤、酸化防止剤、細胞/組織成長促進因子、抗悪性腫瘍薬、抗癌剤、ECM組込みを支持する薬剤が挙げられる。
線維化誘発剤の例としては、限定するものではないが、タルカムパウダー、金属ベリリウム及びその酸化物、銅、絹、シリカ、結晶質ケイ酸塩、タルク、石英ダスト、及びエタノール;フィブロネクチン、コラーゲン、フィブリン、又はフィブリノーゲンから選択される細胞外マトリックスの成分;ポリリジン、ポリ(エチレン-co-ビニルアセテート)、キトサン、N-カルボキシブチルキトサン、RGDタンパク質からなる群から選択されるポリマー;塩化ビニル又は塩化ビニルポリマー;シアノアクリレート及び架橋ポリ(エチレングリコール)-メチル化コラーゲンからなる群から選択される接着剤;炎症性サイトカイン(例えば、TGFβ、PDGF、VEGF、bFGF、TNFα、NGF、GM-CSF、IGF-a、IL-1、IL-1β、IL-8、IL-6、及び成長ホルモン);結合組織成長因子(CTGF);骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、又はBMP-7);レプチン、及びブレオマイシン、又はこれらの類縁体又は誘導体が挙げられる。任意で、デバイスは、細胞増殖を刺激する増殖剤を追加的に含んでもよい。増殖剤の例としては、デキサメタゾン、イソトレチノイン(13-cisレチノイン酸)、17-β-エストラジオール、エストラジオール、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3、ジエチルスチルベストロール(diethylstibesterol)、シクロスポリンA、L-NAME、all-transレチノイン酸(ATRA)並びにこれらの類似体及び誘導体が挙げられる(米国特許出願公開第2006/0240063号明細書を参照のこと。この明細書の全体が参照により援用される)。抗真菌剤の例としては、ポリエン抗真菌剤、アゾール抗真菌剤、及びエキノキャンディンが挙げられるが、これらに限定されない。抗微生物剤及び抗生物質の例としては、エリスロマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、トブラマイシン、クリンダマイシン、及びマイトマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。抗炎症剤の例としては、非ステロイド系抗炎症剤、例えばケトロラク、ナプロキセン、ジクロフェナクナトリウム及びフルルビプロフェンが挙げられるが、これらに限定されない。抗瘢痕剤の例としては、タキサンなどの細胞周期阻害剤、シロリムス(serolimus)又はバイオリムスなどの免疫調節剤が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、米国特許出願公開第2005/0149158号明細書の段落64~363並びに全部を参照のこと。この明細書の全体が参照により援用される)。免疫抑制剤の例としては、グルココルチコイド、アルキル化剤、代謝拮抗剤、及びイムノフィリンに作用する薬剤、例えばシクロスポリン及びタクロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。免疫刺激剤の例としては、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、トール様受容体(TLR)作動薬、サイトカイン受容体作動薬、CD40作動薬、Fc受容体作動薬、CpG含有免疫刺激性核酸、補体受容体作動薬、又はアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。消毒剤の例としては、例えばクロルヘキシジン及びヨウ化チベゾニウムが挙げられるが、これらに限定されない。麻酔剤の例としては、リドカイン、メピバカイン、ピロカイン、ブピバカイン、プリロカイン(prilocalne)、及びエチドカインが挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤の例としては、抗酸化ビタミン、カロテノイド、及びフラボノイドが挙げられるが、これらに限定されない。細胞発育促進因子の例としては、上皮成長因子、ヒト血小板由来TGF-β、内皮細胞増殖因子、胸腺細胞活性化因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、フィブロネクチン又はラミニンが挙げられるが、これらに限定されない。抗悪性腫瘍剤/抗癌剤の例としては、パクリタキセル、カルボプラチン、ミコナゾール、レフルナミド(leflunamide)、及びシプロフロキサシンが挙げられるが、これらに限定されない。ECM組込みを支持する薬剤の例としては、ゲンタマイシンが挙げられるが、これに限定されない。
【0046】
本開示の物品は、所望の効果を得るための生物活性剤の混合物を含有してもよい。従って、例えば、抗菌性物質と抗炎症剤を単一物品中で組み合わせて、併用効果をもたらし得る。
加えて、本開示は、以下の番号付与した例示的実施形態を提供する。
1.
a)i.少なくとも1つの光重合性マクロマー成分と;
iii.少なくとも1つの光重合開始剤成分と;
を含む光重合性組成物を、ある時間にわたって光に暴露する工程と、
b)マクロマー成分の重合形態を含む印刷物品を形成する工程と;
を含む、物品を光重合印刷する方法であって、
上記光重合性マクロマー成分は、中央コア(CC)と、中央コアから延びる複数のアームを含み、アームの全て又は実質的に全てが光重合性基(Q)で終端し;各アームはグループA及びグループBと表記される2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成され;それぞれ領域A及び領域Bをアーム内にもたらし、ここで領域Aは、炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、領域Bは、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表す、
方法。
2.光重合性マクロマー化合物は、式CC-[アーム-Q]nで表され(式中、CCは中央コアを表し、nは2~18の範囲の数から選択される)、各アームは、2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成され、該2つのグループはグループA及びグループBと表示され、式CC-[(A)p-(B)q-Q]n、又はCC-[(B)q-(A)p)-Q]nのマクロマー(式中、(A)p-(B)q及び(B)q-(A)pの各々はアームを表し、pは1~40から選択され、qは1~40から選択される)を提供する、実施形態1の方法。
3.光重合性マクロマー成分は、式CC-[(A)p-(B)q-Q]nによって記載される、実施形態2の方法。
4.光重合性マクロマー成分は、式CC-[(B)q-(A)p-Q]nによって記載される、実施形態2の方法。
5.光重合性組成物は、二軸である第1の光重合性マクロマー成分と、多軸であるが二軸ではない、例えば、三軸及び四軸である第2の光重合性マクロマー成分と、を含む、実施形態2の方法。
6.光重合性組成物は、三軸である第1の光重合性マクロマー成分と、多軸であるが三軸ではない、例えば、二軸及び四軸である、第2の光重合性マクロマー成分と、を含む、実施形態2の方法。
7.光重合性組成物は、四軸である第1の光重合性マクロマー成分と、多軸であるが四軸ではない、例えば、二軸及び三軸である、第2の光重合性マクロマー成分と、を含む、実施形態2の方法。
8.光が光重合性組成物と接触する組成物の表面における重合速度を、光反射材成分を含まない同じ光重合性組成物と比べて増すための光反射材成分を更に含む、実施形態1~7のいずれかの方法。
9.光重合開始剤成分は、総濃度が1質量%未満である、実施形態1~8のいずれかの方法。
10.光重合性組成物は、反応性希釈剤を更に含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
11.光重合性組成物は、非反応性希釈剤を更に含む、実施形態1~10のいずれかの方法。
12.光重合性組成物は、安定剤を更に含み、該安定剤は任意でフリーラジカル安定剤である、実施形態1~11のいずれかの方法。
13.印刷物品を硬化することを含む2次硬化工程を更に含む、実施形態1~12のいずれかの方法。
14.光重合に使用される光波長が10nm~700nmである、実施形態1~13のいずれかの方法。
15.印刷物品は、生分解性であり、印刷物品に暴露した対象に対して無毒である、実施形態1~14のいずれかの方法。
16.実施形態1~15のいずれかの方法によって形成されたポリマー。
17.実施形態1~15のいずれかの方法によって製造された物品。
18.物品は、医療機器である、実施形態17の物品。
19.物品は、医療機器の少なくとも一部である、実施形態17の物品。
20.物品は、多孔質である、実施形態17の物品。
21.物品は、生理学的条件下で生分解性である、実施形態17の物品。
22.物品は、生理学的条件下で約3日~約5年の期間内に完全に分解する、実施形態17の物品。
23.物品は、生分解性ではない、実施形態17の物品。
24.物品は、薬剤溶出性である、実施形態17の物品。
【0047】
本発明は、本明細書で広く一般的に記載されている。包括的開示に含まれる、より狭義の種又は下位の分類も、それぞれ本発明の一部を形成する。これは、削除された部分が本明細書で特に列挙されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の主題をその種類から除くという条件又は否定的な限定を有する包括的な記載を含むことは理解される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「1つの」、「ある」、「該」(「a」「an」及び「the」)は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数形を含み、「X及び/又はY」は、「X」又は「Y」、又は「X」及び「Y」の両方を意味し、名詞後の「複数可」は、その名詞の複数形と単数形の両方を含む。更に、本発明の特徴又は様態がマーカッシュ群の形式で記載される場合、本発明は、マーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素の下位概念を包含し、当該項目に関して記載されることは、意図するところであり、かつ当業者に理解されるであろう。また、出願人は、マーカッシュ群の任意の個々の要素及び任意の下位概念の要素に特に言及する出願又は請求の範囲を改訂する権利を留保する。
【0048】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、限定するためのものではない。化学品は、商業的供給源、例えば、MilliporeSigma(St.Louis,MO,USA)から入手した。
【実施例0049】
実施例1
式CC-[アーム-OH]として一般的に記載される本開示の化合物の調製
表1は、本開示による一般式CC-[アーム-OH]の化合物を有する又は含むものとして一般的に記載されるBCPE1~BCPE16として個別に標識した16のプレポリマーを識別している。アーム-OHという用語は、ヒドロキシ基(OH)で終端する、すなわち、ヒドロキシ末端基を有する、アームを指す。
プレポリマーが、式CC-[(A)-(B)]を含む化合物を含む場合、すなわち、中央コアの近位にある(隣接する)グループAからのモノマー(炭酸トリメチレン及びε-カプロラクトンのうちの任意の1つ以上)の残基と、中央コアの遠位にある(最も離れている)グループBからのモノマー(グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの1つ以上)の残基と、からアームが形成されている場合、かかるプレポリマーは、官能化中央コア(本明細書で開始剤とも呼ばれる)を、グループAからの1つ以上のモノマーと反応させ、続いてその反応生成物(本明細書でプレポリマー前駆体と呼ばれる)をグループBからの1つ以上のモノマーと反応させることによって調製され得る。その結果、中央コアは1つ以上のアームに結合し、各アームはヒドロキシ末端であり、式-(A)-(B)-OHを有する。かかるプレポリマーの調製を、下の実施例1Aに例証する。ここで中央コアは三官能性であり、官能化中央コア/開始剤はトリメチロールプロパンによって提供される。
【0050】
実施例1A-三軸BCPE6プレポリマーの調製
炭酸トリメチレン(1.4モル)とε-カプロラクトン(1.4モル)とを、開始剤としてトリメチロールプロパン(0.6モル)、触媒としてオクタン酸スズ(7.0×10-5モル)を用い、130℃で72時間共重合して、プレポリマー前駆体を得た。グリコリド(1.1モル)と追加のオクタン酸スズ(2.1×10-4モル)とを、上記プレポリマー前駆体と160℃で3時間化合して、プレポリマー前駆体の末端にポリグリコリドグラフトを有するプレポリマーを得た。このようにして得られた非晶質液体プレポリマーを、脱揮し、1H NMR分光法、流体測定(剪断速度105s-1における粘度17,300mPa・s)、示差走査熱量計(Tg=-45℃)及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1884Da、PDI=1.80)によって特性評価した。
プレポリマーが式CC-[(B)-(A)]を含む化合物を含む場合、すなわち、グループB(グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノン)からのモノマーの残基が中央コアの近位にあり(隣接し)、グループA(炭酸トリメチレン及びカプロラクトン)からのモノマーの残基が中央コアの遠位にある(最も離れている)場合、かかるプレポリマーは、官能化中央コアをグループBからの1つ以上のモノマーと反応させ、続いてその反応生成物をグループAからの1つ以上のモノマーと反応させることによって調製できる。その結果、中央コアは1つ以上のアームに結合し、各アームはヒドロキシ末端であり、式-(B)-(A)-OHを有する。かかるプレポリマーの調製を、下の実施例1Bに例証する。ここで中央コアは三官能性であり、官能化中央コアはトリメチロールプロパンによって提供される。
【0051】
実施例1B-三軸BCPE4プレポリマーの調製
第1工程では、グリコリド(1.1モル)を、開始剤としてトリメチロールプロパン(0.6モル)、触媒としてオクタン酸スズ(7×10-5モル)を用い、160℃で3時間重合して、プレポリマー前駆体を得た。第1工程の完了後、等モル量の炭酸トリメチレン(1.4モル)とε-カプロラクトン(1.4モル)との混合物を、オクタン酸スズ(2×10-4モル)を更に追加し、130℃で72時間反応させることによって、プレポリマー前駆体の末端に共重合した。得られた非晶質液体プレポリマーを、脱揮し、1H NMR分光法、流体測定(剪断速度105s-1における粘度17,300mPa・s)、示差走査熱量計(Tg=-45℃)及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1909Da、PDI=1.83)によって特性評価した。
実施例1A及び1Bに概説した手順に従って、追加のポリエステルプレポリマーを、表1に示すように合成した。全ての直鎖サンプルは、二官能性開始剤として1,3-プロパンジオールを用いて合成し、全ての三官能性プレポリマーは、トリメチロールプロパンを用いて調製し、4アームのブロックコポリエステル組成物は、四官能性開始剤としてペンタエリスリトールで開始した。表1において、M/Iは、表1に示すコポリエステルの各々について、アームの調製に使用したモノマーの総モル数(M)を開始剤(官能化中央コアとも呼ばれる)のモル数(I)で除算した値を表す。同じく表1において、M/Cは、表1に示すコポリエステルプレポリマーの各々について、アームの調製に使用したモノマーの総モル数(M)を触媒のモル数(C)で除算した値を表す。表1のプレポリマーの各々はB領域を含有し、これは中央コアに対して近位(この場合、B領域の位置はプレポリマーの中央であると識別される)又は中央コアに対して遠位(この場合、B領域の位置は、プレポリマーの末端であると識別され、この場合B領域はヒドロキシ基で終端する)のいずれかであり得る。
【0052】
実施例1に示すように調製した、選択されたプレポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で得られた選択された分子量の結果を、表2に示す。表2において、Mnは数平均分子量を表し、Mwは質量平均分子量を表し、PDIは多分散性(すなわち、Mw/Mn)を表し、Daはダルトンを表す。
【0053】
【0054】
実施例2
式CC-[アーム-Q]として一般的に記載される本開示のメタクリル化化合物の調製
表3は、本開示による一般式CC-[アーム-Q]の化合物を有する又は含むものとして一般的に記載されるBCPE4Q~BCPE7Q及びBCPE9Q~BCPE12として個別に標識した8つのQ-官能化プレポリマーを識別している。アーム-Qという表記は、アクリレート又はメタクリレート基のような光反応性基(Q)で終端するアームを指す。
表3のメタクリル化プレポリマーは、対応する表1のプレポリマーから調製される。すなわち、BCPE4QはBCPE4から調製され、BCPE5QはBCPE5から調製されるなどである。
【0055】
BCPE6のメタクリル化によるBCPE6Qの形成
BCPE6プレポリマー(0.131モル)を、3-tert-2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(6.724×10-4モル)の存在下、過剰な無水メタクリル酸と、120℃で24時間反応させた。残留無水メタクリル酸及びメタクリル酸副生成物を、ロータリーエバポレーターを用いて、硬化ポリマーから除去した。得られた非晶質液体ポリマーを、1H NMR分光法、流体測定(剪断速度105s-1における粘度16,400mPa・s)、示差走査熱量計(Tg=-38℃)及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=2162Da、PDI=1.75)によって特性評価した。各BCPE配合物を、上に概説した手順に従ってメタクリル化した。組成及び分子量の結果の概要を表3に示し、動粘度を表4に報告する。表3で、BCPE5Qについて、TMCの欄の40.15は、BCPE5Qの作製に使用したTMCに1,3-プロパンジオールを加えた総モル%である。
【0056】
【0057】
メタクリル化BCPE配合物のブロック構造解析
メタクリル化BCPEポリマーのプロトンNMRスペクトルは、JEOL-300MHz NMR分光計を用いて、重水素化ジクロロメタン(20mg/ml)溶液で測定し、JEOL Deltaソフトウェアを用いて分析した。三軸BCPEプレポリマーのスペクトルを
図1A、1B、1C及び1Dに示し、直鎖BCPEプレポリマーのスペクトルを
図2A、2B、2C及び2Dに示す。メタクリレート基のアルケニルプロトンに関連するピークは、スペクトルの5.5~6.3ppmのδ値に現れている。メタクリレート基に隣接するモノマー残基に応じて、プロトンピークの位置はわずかに移動する。グリコリド残基に隣接する(本明細書で、グリコリド関連の、とも呼ばれる)メタクリレート基は、TMC又はカプロラクトン残基のいずれかに隣接する(本明細書でTMC又はカプロラクン関連の、とも呼ばれる)対応するメタクリレートよりも更に低磁場に現れる。
グリコリド関連のメタクリレート基のプロトンのピーク面積、従ってグリコリド残基の隣のメタクリレート基の数は、グリコリド残基の末端グラフトを有するBCPE6Q及びBCPE7Qの方が、グリコリド残基中央ブロックを有するBCPE4Q及びBCPE5Qと比べて高い。グリコリド関連のメタクリレートピークの面積は、プレポリマー中のグリコリド残基の増加に伴って漸進的に増加するが、TMC及びカプロラクトンに関連するメタクリレートのピークは、ポリマー中のグリコリド残基の比率が50%以上になると、無視できるレベルまで消失している。
【0058】
実施例3
BCPE6Qの光重合によるフィルムの調製
15gのメタクリル化BCPE6(BCPE6Q)を秤り取り、0.5質量%の2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(すなわち、Irgacrure(登録商標)TPO-L)と混合した。この混合物を、0.75mmのフィルム厚を可能にするシムを有する2枚のUV透過シートの間に流し込んだ。Blak-ray(商標)B-100を使用して、365nm 100W光源を成形型から約13mmに5分間適用して、架橋フィルムBCPE6Xを得た。
本質的に同じ光重合手順に従って、BCPE1Q、BCPE4Q、BCPE5Q、BCPE7Q、BCPE9Q、及びBCPE10Qを出発材料として用いて、対応する架橋フィルムBCPE1X、BCPE4X、BCPE5X、BCPE7X、BCPE9X、及びBCPE10Xを得た。
得られた架橋ポリマーフィルムの特性を、示差走査熱量計(Tg=-13℃)及び機械的試験によって評価した。各BCPEフィルムを、ASTM D882に従って試験した。簡単に述べると、薄いフィルムを、長さ75mm、幅7.5mmに切断した。サンプルを、室温(約21℃)にて、MTS Synergie 200電気機械式機械的試験機の固定グリップの間で試験した。試験のゲージ長さは25.4mmであり、クロスヘッド速度は2.5mm/分であった。選択した配合物の結果を表5に示す。
【表5】
【0059】
実施例4
重合3DPフィルムの促進分解
実施例3に記載の条件下で製造したフィルムを、75mm(長さ)×7.5mm(幅)×0.75mm(厚さ)の寸法の長方形に切断した。各サンプルを秤量し、機械的特性を、実施例3に概説するように評価した。次いで、サンプルを15mlの0.1Mリン酸緩衝液中に、pH7.4で置いた。この長方形のサンプルを、50℃で、1、3、7、14、21、及び56日の時点までコンディショニングした。各時点で、試験片の水分を拭き取り、秤量した。その後、サンプルを、一定質量に達するまで真空下で乾燥した。各試験片の乾燥質量を測定し、無傷のサンプルを、実施例3に記載のように機械的特性について分析した。
図3~6に、選択した配合物の強度損失、質量損失、及び含水量の結果を報告する。
BCPE4XとBCPE6X~BCPE9Xとの間でグリコリド由来組成物が増加した結果、フィルムの圧縮弾性率が増加し、これは材料のガラス転移温度の移動に起因する可能性がある。
直鎖プレポリマーから調製されたフィルムのグループ内では、グリコリド由来の末端グラフトを有するBCPE7Xの弾性率は、グリコリド由来の中央ブロックを有するBCPE5Xよりも優位に高い。直鎖プレポリマーからのフィルムについても、BCPE7X(末端領域がグリコリド由来)フィルムは、BCPE5X(中央領域がグリコリド由来)フィルムと比較して、14日間まで強度損失が速かった。しかし、BCPE5X(中央領域がグリコリド由来)フィルムは、最後の試験可能な時点である21日において、強度損失がより高かった。
三軸プレポリマーから調製されたフィルムのグループ内で、グリコリド由来の末端グラフトを有するBCPE6Xの弾性率は、グリコリド由来の中央ブロックを有するBCPE4Xよりも優位に大きくない。BCPE6X(末端領域がグリコリド由来)フィルムは、BCPE4X(中央領域がグリコリド由来)フィルムよりも強度損失が速かったことも注目すべきである。BCPE6Xフィルムは7日で不安定になったのに対し、BCPE4Xフィルムは更に7日間の耐久性があった。
BCPE4XとBCPE6Xフィルムの質量損失と含水量を比較すると、BCPE4Xは、56日間の質量損失がBCPE6Xよりも大きかった。質量損失が大きいことで、そのサンプルの含水量が大きいと予想されたが、この場合には該当しなかった。カプロラクトン/TMCが厳密に末端グラフト上で反応した場合、より低い膨潤で、すなわちより低い含水量で、より大きな質量損失が予想外に達成される。いずれの配合物でも、早期の分解はグリコリド繰り返し単位で起こっている可能性がある。実施例2に記載のように、TMC/カプロラクトン末端グラフトが使用されるとき、メタクリレート基のすぐ隣にあるTMC/カプロラクトンの量がより多くなる。この場合、ポリマー主鎖の親水性は、グリコリド由来残基がメタクリレート基の隣にある場合と比べて低くなる。同じ結果は、それぞれ直鎖プレポリマーのBCPE5及びBCPE7から得られるフィルムBCPE5XとBCPE7Xとを比較したときにも観察された。モノマー残基のブロック構造又は位置は、得られた特性に直接的な影響を有することは明らかである。比較的高速吸収性のモノマー残基(例えば、グリコリド由来)がプレポリマーアームの末端に位置していた場合、対応する架橋ポリマーは、グリコリド残基が中央ブロックの形成に用いられた場合と比較して、より速い強度損失プロファイルを有すると予想される。比較的高速吸収性のモノマー残基(例えば、グリコリド残基)がプレポリマーの中央に位置している場合、より高い質量損失で、より低い含水量が観察され、これは有利となり得る。
【0060】
実施例5
式CC-[アーム-Q]として一般的に記載される本開示のチオ―ル化化合物の調製
機械的撹拌機と添加漏斗を備え付けた500mLの3つ口丸底フラスコに、BCPE6(51.3g;0.0665モル;表1参照)、チオ乳酸(17.243mL;20.623g;0.1943モル)及びジクロロメタン(DCM)(200mL)を、窒素雰囲気下で仕込んだ。反応容器の内容物を200rpmで撹拌し、氷浴を用いて反応容器を冷却した。別に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(44.5g、0.2157モル)を200mLのDCMに溶解した。次いで、DCM溶液中のDCCを、添加漏斗を用いて30分かけて反応容器に滴下した。DCC/DCM溶液の添加が完了した後、氷浴を取り除いた。4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.366g;0.0193モル)を、粉末漏斗を用いて反応容器に添加した。反応混合物を、窒素環境下、室温で72時間撹拌し続けた。DCMが反応中に蒸発したため、DCMを補充した。72時間後、反応混合物を吸引濾過した。濾液を2×100mLの0.25M HCl及び1×100mLの脱イオン(DI)水で洗った。抽出した有機相を活性モレキュラーシーブ(3オングストローム)で18時間乾燥し、その後吸引濾過した。溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、液体ポリマー生成物を得た(BCPE6-TLA)。このようにして得られた非晶質液体ポリマーを、1H NMR分光法、流体測定(剪断速度99s-1における粘度7690)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(Mn=1952Da、PDI=1.62)によって特性評価した。
【0061】
実施例6
本開示のチオ―ル化ポリマーの光重合
実施例5から得たチオ―ル化BCPE6ポリマー(BCPE6-TLA)を10%(w/w)のフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)光重合開始剤と混合し、Dymax Bluewave 200 UV Light-Curing Spot Lamp Systemを用いて、強度60mW/cm2のUV光に0~30秒間暴露した。光暴露したサンプルを、流動測定及びゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分析した。分析により、ポリマー/BAPO混合物がUV光に暴露する時間が増えるにつれて、粘度と分子量の両方が増加する傾向が明らかになった。
【0062】
実施例7
式CC-[アーム-Q]として一般的に記載される本開示のチオ―ル化化合物の調製
ヒドロキシ基を有するポリマーは、ヒドロキシ基をカルボン酸基で置換する部分で封止できる。その後、カルボン酸基を、結合に用いた置換基の官能単位に応じてアミド又はエステル結合を介してチオ―ル含有部分で置換できる。例えば、BCPEプレポリマー(例えば表1参照)のヒドロキシ末端基を無水コハク酸と反応させてスクシネート中間体(BCPE-SA)を形成でき、これが次にシステイン中に存在するアミン基と反応して、末端遊離チオール基を有する生成物(BCPE6-SA-Cys)を与える。このアプローチを、本実施例によって例示する。
第1部-BCPE6-SAの形成:250mLの3つ口丸底フラスコにBCPE6(48.9g;0.0633モル、表1)を仕込んだ。この系を、真空下(<66.7Pa(0.5torr))で40℃に18時間おいて、プレポリマーを乾燥した。18時間後、系を窒素でパージし、反応容器に無水コハク酸(19.0g;0.1900モル)を添加した。反応混合物を、50rpm、120℃で24時間撹拌した。こうして得られたポリマーを室温まで冷却し、ロータリーエバポレーターで脱揮して、室温で18時間、更には110℃で24時間、残留モノマーを除去した。得られた透明な非晶質ポリマー生成物の構造を、1H NMRを用いて確認した。
第2部-BCPE6-SA-Cysの形成:100mLの2つ口フラスコにBCPE6-SA(10.1g;0.0093モル)、L-システイン(3.39g;0.0280モル)及びジクロロメタン(DCM)(30mL)を仕込んだ。反応物質を、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌した。別に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(6.35g、0.0307モル)を10mLのDCMに溶解した。反応容器の周囲に氷浴を置き、DCC/DCM溶液を滴下により添加した。DCC/DCM溶液の添加が完了した後、氷浴を除去し、反応物質を窒素雰囲気下、室温で72時間撹拌した。72時間後、反応混合物を50mLのDCMで希釈し、吸引濾過した。濾液を2×50mLの0.25M HCl及び1×50mLのDI水で洗った。抽出した有機相を活性モレキュラーシーブ(3オングストローム)で18時間乾燥し、その後吸引濾過した。溶媒を真空下、ロータリーエバポレーターで除去して、蝋状のポリマー生成物(BCPE6-SA-Cys)を得た。その構造を1H NMR分光法で確認した。
【0063】
実施例8
SLA配合物物品の印刷
3次元物体を、直方体のSolidworks(登録商標)コンピュータプログラム(Solidworks Corp.)を用いて作製した。3次元物体ファイルを、STLファイルに変換した。この印刷に使用した配合物は、41.6質量%のBCPE5、41.6質量%のPEGDA、0.2質量%のIrgacure(登録商標)TPO-L、及び16.6質量%のポリグリコリド微粒子であった。この配合物を、B9 Creator v1.2 SLAプリンタのインクベッドに添加した。物体を、最初の2層については6秒、その後の層については3秒の暴露時間で、層厚30μmで印刷した。SLAプリンタの光の強度は、UVA検出器で測定したときに3mW/cm2であった。
【0064】
明細書で開示される全ての参照文献は、特許出願及び非特許文献を含めて、各々が個別に組み込まれたかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。更に、本明細書において具体的に定めがない限り、本明細書で使用する用語には、関連する技術分野で知られているようなその従来の意味が与えられていると理解されたい。
【0065】
本明細書の全体を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「ある実施形態(an embodiment)」及びその変形への言及は、その実施形態と関連して記載される特有の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の全体を通して様々な場所における語句「一実施形態では」又は「ある実施形態では」の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を指すとは限らない。更に、特有の特徴、構造、又は特性は、任意の好適な手法で、1つ以上の実施形態と組合せられ得る。
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「1つの」、「ある」、「該」(「a」「an」及び「the」)は、文脈による別段の明確な指示がない限り、複数の、すなわち1つ以上の、指示内容を含む。例えば、「ある」マクロマーは「1つ以上の」マクロマーを表し、これは「少なくとも1つの」マクロマーとも表される。接続語「及び」及び「又は」は、総じて、内容及び文脈が場合に応じて包括的又は排他的に明示しない限り、「及び/又は」を含めた最も広い意味で用いられる。選択肢(例えば、「又は」)の使用は、選択肢のいずれか1つ、両方又はその任意の組み合わせを意味すると理解すべきである。加えて、本明細書で「及び/又は」として言及される「及び」及び「又は」の構成内容は、関連する項目若しくは概念の全てを含む実施形態と、関連する項目若しくは概念の全てよりも少ない項目若しくは概念を含む1つ以上の他の代替的実施形態と、を包含することを意図する。
文脈が特に要求しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」(comprise)という語並びに「包含する」及び「有する」などのその同義語及び変形、並びに「含むこと」などのその変形は、オープンで、包括的な意味、例えば、「含むが、これらに限定されない」と解釈するものとする。用語「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、指定された材料若しくは工程、又は特許請求された発明の基本的かつ新規特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。
何かが、2つ以上の指定された選択肢「から選択される」とき、それは、指定された選択肢のうち1つ又は2つ又は全部を選択することを表し、つまり、例えば、あるモノマー(ここで、上記のように「ある」モノマーは、少なくとも1つのモノマーを表す)がTMCとCAPとから選択される場合、開示はTMC若しくはCAP又はCAPとTMCとの組み合わせを選択する。更に、化合物若しくは組成物又は方法などが、記載された特徴を有する場合、その特徴は、追加の特徴によって補完されてもよい。例えば、記載された特徴を有する方法において、記載された特徴がTMC及びCAPからモノマーを選択することである場合、選択されたモノマー(複数可)は必然的にTMC及びCAPのうちの少なくとも1つを含むが、1つ以上のその他のモノマー、すなわち記載されていないモノマーも含み得る。
【0066】
本書で使用するあらゆる見出しは、読み手にとって読み易くするために利用しているにすぎず、本発明又は特許請求の範囲をいかなる形でも限定するものとして解釈すべきではない。従って、本明細書に提示される見出し及び要約は、単に便宜上のものであり、実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
本明細書で値の範囲を示している場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、並びにその範囲内の任意の他の定められた又は介在する値は、文脈において明確にそうでないと示していない限り下限の単位の10分の1まで、本開示及び特許請求の範囲に含まれると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立してこの小範囲に含まれてもよく、定められた範囲内で明確に除外される任意の限界が適用されて包含される。定められた範囲がこれらの限界の一方又は両方を含む場合、これらの限界の一方又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
例えば、本明細書で示された、任意の濃度範囲、百分率範囲、比率範囲または整数範囲は、特記のない限り、列挙範囲内の任意の整数、及び適切な場合にはその分数(整数の10の1及び100分の一など)の値を含むと理解すべきである。また、ポリマーのサブユニット、サイズ又は厚さなどの、任意の物理的特徴に関連して本明細書で列挙する任意の数の範囲は、特記のない限り、列挙範囲内の任意の整数を含むと理解すべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特記のない限り、表示された範囲、値又は構造の±20%を意味する。
【0067】
本明細書で参照した及び/又は出願データシートに列挙した米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許出版物は全て、その参照によりその全体が本明細書に援用される。このような文書は、例えば出版物に記載されている、本発明に関連して使用される可能性がある材料及び方法の説明及び開示を行う目的で参照により援用され得る。上記で、及び本文全体を通じて言及した出版物は、本出願の出願日前におけるこれらの開示を示す目的で提供するものにすぎない。本明細書の全ての記載は、あらゆる引用文献に先行する権利が先行発明を理由として本発明者らに与えられていないことを認めるものであると解釈すべきではない。
本明細書において参照又は記載された全ての特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、並びに他の文献及び資料は、本発明の属する分野における当業者の技術レベルを示し、このような参照された文献及び資料の各々は、参照によりその全体が個別に組み込まれた場合又はその全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度で、参照により組み込まれる。出願人は、任意のこのような特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、及び他の参照される資料又は文献から、任意及び全ての資料及び情報を本明細書に物理的に組み込む権利を留保する。
更に、本特許の記述説明部分は全ての特許請求の範囲を包含する。更に、全ての特許請求の範囲は、全ての当初の特許請求の範囲並びに任意の及び全ての優先権書類からの全ての特許請求の範囲を含めて、その全体が参照により本明細書の記述説明に組み込まれる。また、出願人は任意の及び全てのそのような特許請求の範囲を本出願の記述説明部分又は任意の他の部分に物理的に組み入れる権利を留保する。それゆえ、例えば、いかなる場合であっても、本特許は、請求項の表現が本特許の記述説明部分中に厳密にその通りの言葉で記載されていないという主張にもとづいて、根拠なく、その請求項に対する記述説明が与えられていないとは解釈されない。
【0068】
以下は、本開示によって提供されるいくつかの追加の例示的実施形態である:
1)多軸中央コア(CC)と、該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームと、を含む光重合性化合物であって、アームの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーからの開環重合生成物である、光重合性組成物。
2)実施形態1の光重合性化合物を1つ以上含み、任意で光重合開始剤を更に含む、光硬化性組成物。
3)中央コア(CC)と、中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む光反応性多軸マクロマーであって、アームのうちの少なくとも1つは、光反応性官能基(Q)と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つから形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つから形成される残基を含む、ブロックコポリマーと、
4)実施形態3のマクロマーを1つ以上含み、任意で光重合開始剤を更に含む、光硬化性組成物。
5)中央コア(CC)は式(A)-(B)の1つ以上のアームの(A)に結合し、(B)はヒドロキシ末端基を含む、実施形態1の光重合性化合物のプレポリマー。
6)中央コア(CC)は式(B)-(A)の1つ以上のアームの(B)に結合し、(A)はヒドロキシ末端基を有する、実施形態1の光重合性化合物のプレポリマー。従って、プレポリマーは、多軸中央コア(CC)と、該中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含み、アームのうちの少なくとも1つはヒドロキシ末端基(すなわち、中央コアから最も遠いアームの端部にヒドロキシ基)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーからの開環重合生成物である。
7)UV放射に暴露したときに反応性である、実施形態1の化合物。
8)構造CC-[A-B-Q]2を含む、実施形態1の化合物。
9)構造CC-[A-B-Q]3を含む、実施形態1の化合物。
10)構造CC-[A-B-Q]4を含む、実施形態1の化合物。
11)構造CC-[B-A-Q]2を含む、実施形態1の化合物。
12)構造CC-[B-A-Q]3を含む、実施形態1の化合物。
13)構造CC-[B-A-Q]4を含む、実施形態1の化合物。
14)マクロマーは、4本のアームを有し、分子量が40,000g/モル未満であり、室温で固体である、実施形態1~7のいずれかの組成物。
15)マクロマーは、3本のアームを有し、分子量が5,000g/モル未満であり、室温で液体である、実施形態1~7のいずれかの組成物。
16)マクロマーは、2本のアームを有し、分子量が5,000g/モル未満であり、室温で液体である、実施形態1~7のいずれかの組成物。
17)CC-[A-B-Q]nを更に含み、nは1である、実施形態1~16のいずれかの組成物。
18)CC-Q、CC-A-Q、及びCC-B-Qのうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態1~16のいずれかの組成物。
19)Q-A、Q-B及びQ-CCのうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態1~16のいずれかの組成物。
20)Qは、チオール基を含む、実施形態1~19のいずれかの組成物。
21)Qは、ビニル基を含む、実施形態1~19のいずれかの組成物。
22)ビニル基は、アクリレート基又はメタクリレート基である、実施形態21の組成物。
23)ブロックAは、TMCから形成された残基を含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
24)ブロックAは、CAPから形成された残基を含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
25)ブロックAは、TMC及びCAPの両方から形成された残基を含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
26)ブロックAの残基の少なくとも90%は、TMC又はCAPから形成されている、実施形態1~22のいずれかの組成物。
27)マクロマーは、TMCから形成された残基を2~45個含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
28)マクロマーは、TMCから形成された残基を2~15個含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
29)マクロマーは、TMCから形成された残基を2~10個含む、実施形態1~22のいずれかの組成物。
30)ブロックAは、102~2500g/モルの分子量を有する、実施形態1~26のいずれかの組成物。
31)ブロックAは、102~1000g/モルの分子量を有する、実施形態1~26のいずれかの組成物。
32)ブロックAは、102~900g/モルの分子量を有する、実施形態1~26のいずれかの組成物。
33)各Aブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、実施形態1~26のいずれかの組成物。
34)各Aブロックは、2~15個のモノマー残基を含む、実施形態1~26のいずれかの組成物。
35)各Aブロックは、2~10個のモノマー残基を含む、実施形態1~26のいずれかの組成物。
36)各Bブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、実施形態1~35のいずれかの組成物。
37)各Bブロックは、2~15個のモノマー残基を含む、実施形態1~35のいずれかの組成物。
38)各Bブロックは、2~15個のモノマー残基を含む、実施形態1~35いずれかの組成物。
39)ブロックコポリマーは、40,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~36いずれかの組成物。
40)ブロックコポリマーは、25,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~36いずれかの組成物。
41)ブロックコポリマーは、10,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1~36いずれかの組成物。
42)室温で50,000mPa・s未満の粘度を有する、実施形態1~41のいずれかの組成物。
43)室温で30,000mPa・s未満の粘度を有する、実施形態1~41のいずれかの組成物。
44)室温で20,000mPa・s未満の粘度を有する、実施形態1~41のいずれか組成物。
45)光重合開始剤を更に含む、実施形態1~44のいずれかの組成物。
46)PEG-ジアクリレート(PEG-DA)のような反応性希釈剤を更に含む、実施形態1~45のいずれかの組成物。
【0069】
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。特許請求の範囲は法律に従って解釈される。しかし、任意の特許請求の範囲又はその一部の解釈が容易である又は難解であるという主張又は認識にもかかわらず、特許をもたらす出願(単数又は複数)の手続の間に任意の特許請求の範囲又はその一部を修正又は補正することは、いかなる場合であっても、先行技術の一部を形成しない本特許の任意の及び全ての等価物に対する権利が放棄されたと解釈されない。
特許は、本明細書に具体的及び/又は明示的に開示された特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されると解釈してはならない。いかなる場合も、審査官又は特許商標庁の任意のその他の役員又は職員による陳述が詳細であり、出願人による応答書面に明示的に採用した資格又は留保のない限り、特許は、かかる陳述によって制限されると解釈されない。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するとみなされるべきではなく、全ての可能な実施形態を、かかる特許請求の範囲内の等価物の全範囲と共に包含するとみなされるべきである。従って、特許請求の範囲は開示によって制限されない。
多軸中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームと、を含む光重合性化合物であって、前記アームの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されたモノマーからの開環重合生成物である、化合物。
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。特許請求の範囲は法律に従って解釈される。しかし、任意の特許請求の範囲又はその一部の解釈が容易である又は難解であるという主張又は認識にもかかわらず、特許をもたらす出願(単数又は複数)の手続の間に任意の特許請求の範囲又はその一部を修正又は補正することは、いかなる場合であっても、先行技術の一部を形成しない本特許の任意の及び全ての等価物に対する権利が放棄されたと解釈されない。
特許は、本明細書に具体的及び/又は明示的に開示された特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されると解釈してはならない。いかなる場合も、審査官又は特許商標庁の任意のその他の役員又は職員による陳述が詳細であり、出願人による応答書面に明示的に採用した資格又は留保のない限り、特許は、かかる陳述によって制限されると解釈されない。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するとみなされるべきではなく、全ての可能な実施形態を、かかる特許請求の範囲内の等価物の全範囲と共に包含するとみなされるべきである。従って、特許請求の範囲は開示によって制限されない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕多軸中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームと、を含む光重合性化合物であって、前記アームの少なくとも1つは光反応性官能基(Q)を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されたモノマーからの開環重合生成物である、化合物。
〔2〕前記〔1〕に記載の光重合性化合物を1つ以上と、光重合開始剤と、を含む、光硬化性組成物。
〔3〕中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む光反応性多軸マクロマーであって、前記アームのうちの少なくとも1つは、光反応性官能基(Q)と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つから形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つから形成される残基を含む、
光反応性多軸マクロマー。
〔4〕前記〔3〕に記載のマクロマーを1つ以上と、光重合開始剤と、を含む、光硬化性組成物。
〔5〕CC-[A-B-Q]
2
、CC-[A-B-Q]
3
、CC-[A-B-Q]
4
、CC-[B-A-Q]
2
、CC-[B-A-Q]
3
、CC-[B-A-Q]
4
の群から選択される構造を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔6〕式CC-[A-B-Q]nの化合物を更に含み、nは1である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔7〕CC-Q、CC-A-Q、及びCC-B-Qから選択される式の化合物を少なくとも1つ更に含む、前記〔2〕に記載の組成物。
〔8〕Q-A、Q-B及びQ-CCから選択される式の化合物を少なくとも1つ更に含む、前記〔2〕に記載の組成物。
〔9〕Qは、チオール基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔10〕Qは、ビニル基、例えば、アクリレート基又はメタクリレート基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔11〕ブロックAは、TMC及び/又はCAPの重合生成物である残基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔12〕ブロックAの残基の少なくとも90%は、TMC又はCAPの重合生成物である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔13〕マクロマーは、TMCから形成された残基を2~45個含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔14〕ブロックAは、102~2500g/モルの分子量を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔15〕各Aブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔16〕各Bブロックは、2~45個のモノマー残基を含む、前記〔1〕に記載の化合物。
〔17〕40,000g/モル未満の分子量を有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔18〕室温で50,000mPa・s未満の粘度を有する、前記〔2〕に記載の組成物。
〔19〕PEG-ジアクリレート(PEG-DA)のような反応性希釈剤を更に含む、前記〔2〕に記載の組成物。
〔20〕本明細書に開示される光重合性組成物、例えば前記〔1〕に記載の組成物を、ある時間にわたって光に暴露することを含む、物品を光造形印刷する方法。
〔21〕a)i.少なくとも1つの光重合性マクロマー成分と;
iii.少なくとも1つの光重合開始剤成分と;
を含む光重合性組成物を、ある時間にわたって光に暴露する工程と、
b)前記マクロマー成分の重合形態を含む印刷物品を形成する工程と;
を含む、物品を光重合印刷する方法であって、
前記光重合性マクロマー成分は、中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる複数のアームと、を含み、前記アームの全て又は実質的に全てが光重合性基(Q)で終端し;各アームはグループA及びグループBと表記される2つのグループから選択されるモノマーの重合によって形成されて;領域A及び領域Bをそれぞれ前記アーム内にもたらし、ここで領域Aは、炭酸トリメチレン(T)及びカプロラクトン(C)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表し、領域Bは、グリコリド(G)、ラクチド(L)及びp-ジオキサノン(D)を含み、かつ任意でこれらのみから選択される、1つ以上のモノマーの重合生成物を表す、
方法。
〔22〕多軸中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる式(A)-(B)又は(B)-(A)の2~4本のアームとを含む化合物であって、前記アームのうちの少なくとも1つは末端ヒドロキシ基を含み、(A)は炭酸トリメチレン(T)及びε-カプロラクトン(C)から選択されるモノマーからの開環重合生成物であり、一方で(B)はグリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンから選択されるモノマーからの開環重合生成物である、化合物。
〔23〕中央コア(CC)と、前記中央コアから延びる2~4本のアームと、を含む多軸マクロマーであって、前記アームのうちの少なくとも1つは、末端ヒドロキシ基と、ブロックAとブロックBとを含むブロックコポリマーと、を含み;
a.ブロックAは、炭酸トリメチレン(TMC)及びε-カプロラクトン(CAP)のうちの少なくとも1つから形成される残基を含み;かつ
b.ブロックBは、グリコリド、ラクチド及びp-ジオキサノンのうちの少なくとも1つから形成される残基を含む、
多軸マクロマー。