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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089742
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱応動式自動弁
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/10 20060101AFI20240627BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16T1/10
F16K31/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205122
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB02
3H057BB04
3H057CC07
3H057DD04
3H057EE02
3H057FA12
3H057FC02
3H057HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ドレン等の排出対象流体の流入量に応じて弁の開度を変化させ、蒸気等の移送流体の流出を抑制する。
【解決手段】弁室2には、周辺温度に反応して膨張又は収縮する第1開閉器4及び第2開閉器6が鉛直方向に沿って配置されており、連結棒8によって接続されている。連結棒8の下端部81は、第1開閉器4が揺動可能なように支持する。弁室2に蒸気が充満している場合、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方は膨張状態にあり、第1開閉器4の弁体4aは弁口20を閉塞している。室2に比較的少ないドレンが流入した場合、下部に位置する第1開閉器4のみが収縮状態に変化して弁口20を半開状態にするため、ドレン排出直後の蒸気漏れを抑えることができる。弁室2に多量のドレンが流入した場合、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方が収縮状態に変化して弁口20を大きく開放し、多量のドレンを迅速に排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに温度が異なる移送流体及び排出対象流体が流入する流入部、流入した当該移送流体又は当該排出対象流体が滞留する弁室空間、及び当該弁室空間を外部に開放して当該排出流体を排出する弁口部、を有する本体部、
前記弁室空間に位置し、前記移送流体と前記排出対象流体との温度差に反応して開放動作又は閉塞動作を行う基本開閉手段であって、当該開放動作又は当該閉塞動作に従って前記弁口部を開放又は閉塞する弁体部を有する基本開閉手段、
前記弁室空間に位置し、前記移送流体と前記排出対象流体との温度差に反応して開放動作又は閉塞動作を行う補助開閉手段、
前記補助開閉手段と前記基本開閉手段とを連結する連結手段であって、前記補助開閉手段と前記基本開閉手段との間に所定の離隔距離を生じさせる連結手段
を備えた熱応動式自動弁。
【請求項2】
請求項1に係る熱応動式自動弁において、
前記補助開閉手段と前記基本開閉手段とは、鉛直方向に対応する方向に配置されており、
前記補助開閉手段の開放動作は、前記基本開閉手段を鉛直方向に引き上げることによって前記弁体部の開放を補助する
ことを特徴とする熱応動式自動弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る熱応動式自動弁において、
前記連結手段は、補助接続部及び基本接続部を有しており、当該補助接続部が前記補助開閉手段に接続され、当該基本接続部が前記基本開閉手段に接続されることによって、前記補助開閉手段と前記基本開閉手段とを連結し、
前記補助接続部又は前記基本接続部のいずれか一方又は双方は、前記補助開閉手段又は前記基本開閉手段のいずれか一方又は双方が揺動可能なように、前記補助開閉手段又は前記基本開閉手段に接続されている
ことを特徴とする熱応動式自動弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る熱応動式自動弁は、流入する流体の温度に応じて開閉する自動弁の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱応動式自動弁としては、たとえば熱応動式スチームトラップがある。スチームトラップは、蒸気を移送する配管系統に接続され、蒸気が凝縮して発生するドレン(凝縮水)を適宜、配管系統外に自動的に排出する装置であり、熱応動式スチームトラップは蒸気とドレンの温度差を利用して開閉する自動弁である。
【0003】
従来の熱応動式スチームトラップとして、後記特許文献1に開示されているものがある。この従来の熱応動式スチームトラップには、弁ケーシング内の弁室3に2つの温度制御機素8、9が上下に並べて配置されている。温度制御機素8、9の内部空間である収容室13a、13bには、それぞれ膨張媒体15a、15bが封入されており、周辺温度に反応して膨張又は収縮し、各々、ダイヤフラム14a、14bを変形させる。
【0004】
下側の温度制御機素9の下面には栓部材12bが固定されている。この栓部材12bは弁部18として機能し、温度制御機素9の作動に従って上下動して、弁部18が弁座部材6に形成されている導出路7を開閉する。なお、温度制御機素8、9はコイルスプリング19によって常時、上方向に付勢されており、温度制御機素8、9の膨張媒体15a、15bの収縮時には、熱応動式スチームトラップを開弁状態に維持する。
【0005】
弁室3に温度が低いドレンが流入した場合、膨張媒体15a、15bは収縮し、ダイヤフラム14a、14bがそれぞれ壁部材11a、11b側に変位する。これによって、コイルスプリング19の付勢を受け、弁部18は弁座部材6から離座して導出路7を開放して開弁する。そして、ドレンの排出によって弁室3に高温の蒸気が流入した場合、膨脹媒体15a、15bが膨張してコイルスプリング19を圧縮しながら弁部18が弁座部材6に着座し、導出路7を閉塞して閉弁する。
【0006】
このように、2つの温度制御機素8、9が同時に作動することによって、2つの膨脹媒体(温度制御機素8、9)の膨脹又は収縮によるダイヤフラム14a、14bの変位の総和が、弁座部材6に形成された導出路7に対する弁部18の変位となる。このため、開弁時には弁部18と弁座部材6との間に充分な排出流路を形成することができ、多量のドレンの素早い排出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-139694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、弁室3にドレンが流入した場合、2つの温度制御機素8、9が同時に収縮するため、ドレンの流入量の多少にかかわらず弁部18と弁座部材6との間が大きく開くことになる。ドレン排出完了の直後に弁室3に高圧の蒸気が流入してきた場合、温度制御機素8、9が温度変化に反応して閉弁するまでの間、蒸気が弁座部材6の導出路7から流出してしまう虞がある。
【0009】
そこで本願に係る熱応動式自動弁は、ドレン等の排出対象流体の流入量に応じて開弁の開度を段階的に変化させることが可能であり、蒸気等の移送流体の外部流出を抑えることが可能な熱応動式自動弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係る熱応動式自動弁は、
互いに温度が異なる移送流体及び排出対象流体が流入する流入部、流入した当該移送流体又は当該排出対象流体が滞留する弁室空間、及び当該弁室空間を外部に開放して当該排出流体を排出する弁口部、を有する本体部、
前記弁室空間に位置し、前記移送流体と前記排出対象流体との温度差に反応して開放動作又は閉塞動作を行う基本開閉手段であって、当該開放動作又は当該閉塞動作に従って前記弁口部を開放又は閉塞する弁体部を有する基本開閉手段、
前記弁室空間に位置し、前記移送流体と前記排出対象流体との温度差に反応して開放動作又は閉塞動作を行う補助開閉手段、
前記補助開閉手段と前記基本開閉手段とを連結する連結手段であって、前記補助開閉手段と前記基本開閉手段との間に所定の離隔距離を生じさせる連結手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る熱応動式自動弁においては、補助開閉手段と基本開閉手段との間に所定の離隔距離を生じさせる連結手段を備えている。このため、補助開閉手段と基本開閉手段との反応タイミングを異ならせることができ、排出対象流体の流入量に基づく温度差に応じて開弁の開度を段階的に変化させることできる。これにより、閉弁動作時における移送流体の外部流出を抑制することができる。
【0012】
また、本願に係る熱応動式自動弁においては、補助開閉手段と基本開閉手段とは、鉛直方向に対応する方向に配置されており、補助開閉手段の開放動作は、基本開閉手段を鉛直方向に引き上げることによって弁体部の開放を補助する。
【0013】
例えば、弁室空間に流入して滞留する排出対象流体の滞留量が比較的多い場合は、基本開閉手段及び補助開閉手段の双方が反応し、弁口部は比較的大きい度合いで開放される。これに対して、弁室空間に流入して滞留する排出対象流体の滞留量が比較的少ない場合は、基本開閉手段のみが反応し、弁口部は比較的小さい度合いで開放される。すなわち、排出対象流体の滞留量が比較的多い場合は弁口部を大きく開放して排出対象流体を迅速に排出する一方、排出対象流体の滞留量が比較的少ない場合は弁口部を小さく開放するため、排出後の移送流体の外部流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る熱応動式自動弁の第1の実施形態である熱応動式スチームトラップ1を示す一部断面図であり、全開状態を示す一部断面図である。
図2図1に示す熱応動式スチームトラップ1の平面図である。
図3図1に示す熱応動式スチームトラップ1の第1開閉器4の断面図である。
図4図1に示す熱応動式スチームトラップ1の全閉状態を示す一部断面図である。
図5図1に示す熱応動式スチームトラップ1の半開状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る熱応動式自動弁の下記の要素に対応している。
【0016】
弁室2・・・弁室空間
第1開閉器4・・・基本開閉手段
第2開閉器6・・・補助開閉手段
連結棒8・・・連結手段
第1ケーシング11及び第2ケーシング12・・・本体部
流入口14・・・流入部
弁口20・・・弁口部
弁体4a・・・弁体部
下端部81・・・基本接続部
上端部82・・・補助接続部
間隔S8・・・離隔距離
蒸気・・・移送流体
ドレン・・・排出対象流体
【0017】
[第1の実施形態]
本願に係る熱応動式自動弁の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、熱応動式自動弁の一例として熱応動式スチームトラップを掲げる。産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレンが滞留し、蒸気の移送効率が低下してしまう。
【0018】
このような事態を回避するために、配管には随所に多数のスチームトラップが設けられる。スチームトラップはドレンの流入を受けて自動的に開弁してドレンを適宜、配管系統の外部に排出すると共に、蒸気が流入したときは蒸気の漏洩を防止するため自動的に閉弁する自動弁である。スチームトラップには様々な種類があるが、熱応動式スチームトラップは、蒸気とドレンの温度差を利用して開閉する自動弁である。
【0019】
(熱応動式スチームトラップ1の全体構成の説明)
図1は本実施形態における熱応動式スチームトラップ1の一部断面図であり、図2は平面図である。図1は、図2に示すI―I方向の矢視断面図として表されている。熱応動式スチームトラップ1は、下部ケーシング11及び上部ケーシング12から構成される本体を備えている。下部ケーシング11と上部ケーシング12とはガスケット18を挟んで固定具(図示せず)によって固定されている。
【0020】
そして、上部ケーシング12の内部には、上下方向に開放された円筒形状の弁室2が形成されており、上部の開口部が流入口14として構成される。流入口14の内径は弁室2の内径よりも大きく形成されており、流入口14と弁室2との接続部分には段部が形成される。また、下部ケーシング11の内部には、上下方向に開放された円筒形状の上部開口16、排出路21及び流出口15が形成されている。上部開口16は、上部ケーシング12内の弁室2に連通している。また、流出口15の内径は下方に向けて漸次大きくなるように内面はテーパー状に構成されている。
【0021】
そして、下部ケーシング11の排出路21の内径は上部開口16の内径よりも十分に小さく形成されている。これによって、下部ケーシング11の上部開口16と排出路21との接続部分には、軸線L1に直行する水平面に沿って平坦な段部が形成される。そして、排出路21の上部の開口が弁口20として構成され、弁口20周辺部が弁座31として機能する。
【0022】
流入口14、弁室2、上部開口16、排出路21及び流出口15の各中心線は、軸線L1に沿って同軸上に配置されている。なお、軸線L1は、鉛直方向(矢印91、92方向)に対応して形成される仮想線である。蒸気移送の配管の主管には支管が連通して設けられており(図示せず)、この支管に流入口14が接続され、ここから蒸気やドレンが上方から下方(矢印91方向)に向けて弁室2に流入する。
【0023】
弁室2と流入口14との接続部分の段部には、第2開閉器6が配置されて完全に固定されている。すなわち、流入口14の内周面には、図2に示すように等間隔に位置する3か所に突起61、62、63が設けられており、これら突起61、62、63が第2開閉器6の側部に当接し、軸線L1に直交する水平方向への第2開閉器6の移動が阻止されて固定される。
【0024】
また、流入口14の内周面には、水平方向に嵌め込み溝14a(図1)が形成されている。そして、この嵌め込み溝14aに略V字形に湾曲した弾性金属バー71が圧縮された状態で嵌め込まれており、弾性金属バー71は第2開閉器6の上面に当接している。弾性金属バー71が第2開閉器6の上面に当接することによって、軸線L1に沿った鉛直方向への第2開閉器6の移動が阻止されて固定される。なお熱応動式スチームトラップ1の全体断面図において、第2開閉器6は断面ではなく側面図として表されている。
【0025】
第2開閉器6は、周辺温度に反応して膨張又は収縮する変形機器であり、周辺温度が所定の膨張基準温度aを越えたとき膨張して膨張状態になり、所定の収縮基準温度bを下回ったとき収縮して収縮状態になる。膨張基準温度aの値は収縮基準温度bの値よりも大きな値として設定されている。そして、膨張基準温度aは弁室2に流入する蒸気の温度より低く、収縮基準温度bは弁室2に流入するドレンや初期エアーの温度よりも高い。
【0026】
第2開閉器6の下面からは弁体6aが下方に向けて突出しており、第2開閉器6が膨張状態になったとき弁体6aは矢印91方向に下降移動し、第2開閉器6が収縮状態になったとき弁体6aは矢印92方向に上昇移動する。なお、図2に示すように、流入口14の内周面に設けられた突起61、62、63の間には隙間66、67、68が形成されており、これら隙間66、67、68が流路として機能し、流入口14から流入した蒸気やドレンは隙間66、67、68を通過して弁室2に流入する。
【0027】
第2開閉器6の弁体6aの下面には、円柱形状の連結棒8の上端部82が固定されている。そして、下部ケーシング11に形成された弁座31近傍には第1開閉器4が配置されている。連結棒8の下端部81はこの第1開閉器4に接続され、第1開閉器4を支持している。連結棒8によって、第1開閉器4と第2開閉器6との間には、連結棒8の長さに対応した間隔S8が形成される。本実施形態では、この間隔S8は弁室2の内径とほぼ同様の長さに設定されている。なお熱応動式スチームトラップ1の全体断面図において、第1開閉器4は断面ではなく側面図として表されている。
【0028】
第1開閉器4は第1ケーシング11及び第2ケーシング12に対しては固定されておらず、連結棒8の下端部81によってのみ支持されて弁室2内に配置されている。そして、連結棒8の下端部81には、後述するように第1開閉器4に固定されている鋼球9が圧入されており、連結棒8は第1開閉器4を揺動可能に支持している。
【0029】
この第1開閉器4も第2開閉器6と同様、周辺温度に反応して膨張状態又は収縮状態に変位する変形機器であり、周辺温度が所定の膨張基準温度aを越えたとき膨張状態となり、所定の収縮基準温度bを下回ったとき収縮状態となる。第1開閉器4の下面からは弁体4aが下方に向けて突出しており、第1開閉器4が膨張したとき弁体4aは矢印91方向に下降移動し、第1開閉器4が収縮したとき弁体4aは矢印92方向に上昇移動する。
【0030】
そして、第1開閉器4の弁体4aの下面は弁口20に対向して近接している。すなわち、弁体4aが矢印91方向に下降移動した場合、弁体4aの下面は弁座31に着座して弁口20を閉塞する。これに対して、弁体4aが矢印92方向に上昇移動した場合、弁体4aの下面は弁座31から離座し弁口20を開放する。
【0031】
前述のように第1開閉器4と第2開閉器6とは連結棒8によって連結されているため、第2開閉器6(補助開閉手段)の開放動作は、第1開閉器4(基本開閉手段)を鉛直方向に引き上げることによって弁体4a(弁体部)の開放を補助することになる。ここで、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方が収縮状態になり、弁体4a及び弁体6aが鉛直方向に上昇移動した場合、収縮による弁体4a及び弁体6aの変位量の総和が、弁口20に対する弁体4aの変位量になる。このため、弁体4aは弁座31から大きく離れ、弁口20の開度は大きくなる(図1、全開状態)。なお、第1開閉器4のみが収縮状態になり第2開閉器6が膨張状態を維持する場合、弁体4aの変位量のみが弁口20に対する弁体4aの変位量になる。このため、弁口20の開度は全開状態に比べて半減する(図5、半開状態)。
【0032】
なお、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方が膨張状態になり、弁体4a及び弁体6aが鉛直方向に下降移動した場合、弁体4aが弁座31に着座して弁口20を閉塞するように(図4、全閉状態)、予め第1開閉器4及び第2開閉器6の配置や連結棒8の長さが設定されている。
【0033】
(第1開閉器4及び第2開閉器6の詳細な構成の説明)
図3は、第1開閉器4の詳細を示す断面図である。第1開閉器4は、略円盤形状を有する上面プレート41及び下面プレート42によって本体を構成し、内部に内部空間49を形成する。内部空間49には、上側ダイヤフラム51及び下側ダイヤフラム52が上下方向に二重に重畳して配置されている。
【0034】
上側ダイヤフラム51及び下側ダイヤフラム52は縁周を上面プレート41及び下面プレート42によって挟み込まれている。上面プレート41と下面プレート42とは、上側ダイヤフラム51及び下側ダイヤフラム52を挟みこんだ状態で縁周が溶接によって固定されている。
【0035】
上側ダイヤフラム51及び下側ダイヤフラム52は、可撓性を有する略円盤形状のシート状部材であり、平板ではなく波型形状が同心円状に複数形成されている部材である。この可撓性と波型形状とによって、上側ダイヤフラム51及び下側ダイヤフラム52はそれぞれ中央部分が軸線L1方向に変形可能になっている。
【0036】
上側ダイヤフラム51と上面プレート41との間には密閉された液室59が形成されており、この液室59に膨張液体50が封入されている。この膨張液体50は、水や水よりも沸点の低い液体、又はそれらの混合物で構成され、所定の膨張基準温度aを越えると気化して液室59を膨張させ、収縮基準温度bを下回ると液化して液室59を収縮させる。なお、上面プレート41には、上側ダイヤフラム51に向けて突出するストッパー45が設けられており、上側ダイヤフラム51の上側への変形を規制する。
【0037】
上面プレート41の中心には注入開口48が貫通して形成されており、ここから膨張液体50が注入される。膨張液体50の注入後、注入開口48は鋼球9によって溶接で固定され、膨張液体50は密封される。上面プレート41の中央に固定された鋼球9は、連結棒8の下端部81に形成された支持凹部8aに圧入されている。
【0038】
支持凹部8aの凹み空間は、連結棒8の下端部81の下面を開口するように形成されており、内径85の長さは鋼球9の直径よりもやや小さく構成されている。そして、内周面には水平方向に凹む環状溝8bが形成されている。このため、鋼球9を連結棒8の支持凹部8aに圧入すると、鋼球9の最大外周部分が支持凹部8a内の環状溝8bに嵌まり込み、鋼球9の球形状に沿って第1開閉器4は揺動可能に支持される。
【0039】
なお、本実施形態では支持凹部8aの内周面に環状溝8bを形成することによって第1開閉器4を揺動可能に支持したが、環状溝8bを形成せず支持凹部8aの内周面を、鋼球9の外周面に沿うように湾曲させることもできる。支持凹部8aの内周面を湾曲させることによって、第1開閉器4は鋼球9の球形状に沿って揺動可能に支持される。
【0040】
下側ダイヤフラム52は、上側ダイヤフラム51との間に介在空間57を形成する。下側ダイヤフラム52の中心部には中心孔が設けられており、この中心孔部分に弁体4aが取り付けられている。下面プレート42の中央には中央開口43が形成されており、この中央開口43から弁体4aの下面が下側に向けて突出している。なお、下面プレート42には、弁室2(図1)と内部空間49とを連通させる周囲開口44が4か所に形成されている。
【0041】
弁体4a には軸線L1方向に貫通する貫通路46が形成されている。また、弁体4aは、介在空間57内に位置するコンタクト部54との間で下側ダイヤフラム52を挟み込んでいる。弁体4aとコンタクト部54とは、下側ダイヤフラム52を挟み込んだ状態で溶接によって固定されている。
【0042】
なお、コンタクト部54にも軸線L1方向に貫通する中心孔が形成されており、弁体4aの貫通路46、下側ダイヤフラム52の中心孔及びコンタクト部54の中心孔を通じて、介在空間57と弁室2(図1)とは連通している。
【0043】
以上のように、第1開閉器4は、上側ダイヤフラム51と下側ダイヤフラム52とが重畳して配置されるダイヤフラムの二重構造を備えている。これは、第1開閉器4の動作に従い繰り返し変形するダイヤフラムの破損を防止するために、液室59に膨張液体50を密封するための上側ダイヤフラム51と、弁体4aが固定される下側ダイヤフラム52とを別に設けたものである。
【0044】
なお、ダイヤフラムの二重構造を採用していることによって、弁室2内に流入する蒸気やドレンの温度が膨張液体50に伝達されにくくなるおそれがある。このため、弁体4aの貫通路46、下側ダイヤフラム52の中心孔及びコンタクト部54の中心孔を設け、弁室2の蒸気やドレンが介在空間57に入り込むように構成している。これによって、介在空間57に入り込んだ蒸気やドレンの温度が膨張液体50に伝達され易くなる。なお、第2開閉器6も第1開閉器4と同様の構成を備えており、周辺温度に反応して膨張状態又は収縮状態に変位して弁体6aが上下動作を行うようになっている。
【0045】
(熱応動式スチームトラップ1の動作の説明)
続いて、熱応動式スチームトラップ1の動作を説明する。配管系統が蒸気の移送を開始する初期段階においては、熱応動式スチームトラップ1の弁室2を含む配管系統には初期エアーが充満している。このため、熱応動式スチームトラップ1の第1開閉器4及び第2開閉器6の周辺温度は低温で収縮基準温度bを下回っているため、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方は収縮状態にある。
【0046】
これによって、第1開閉器4の弁体4aは弁座31から大きく離れて間隔S2を生じさせ、弁口20は全開状態(図1)になっている。したがって、配管系統の蒸気移送が開始されたとき、その移送圧を受けて初期エアーは全開状態の弁口20から迅速に流出し、流出口15を通じて排出される。
【0047】
初期エアーの排出後、流入口14から高温の蒸気が弁室2に流入する。これによって、第1開閉器4及び第2開閉器6の周辺温度は高温になり膨張基準温度aを越えるため、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方は膨張状態になる。このため、第1開閉器4の弁体4aは弁座31に着座して間隔S0は消滅状態になり、弁口20は全閉状態(図4)になる。こうして熱応動式スチームトラップ1は閉弁するため、蒸気の弁口20からの漏洩が確実に防止される。
【0048】
ここで、第1開閉器4と第2開閉器6とを連結している連結棒8は、所定の長さを有するバー形状であり、第1開閉器4と第2開閉器6との間に間隔S8を生じさせているため、上部位置で固定された第2開閉器6が膨張状態に変化する際、連結棒8にぶれが生じて連結棒8の下端部81に支持された第1開閉器4が水平方向から斜め方向へずれることがある。この点、本実施形態においては、前述のように連結棒8は第1開閉器4を揺動可能に支持しているため、第1開閉器4の弁体4aが弁座31に着座する際、第1開閉器4が揺動して斜め方向へのずれが吸収され、第1開閉器4の弁体4aは弁座31に密着して確実に弁口20を閉塞することができる。
【0049】
次に、蒸気移送の継続によって蒸気の一部が液化し、配管系統にドレンが発生する。このドレンは流入口14から弁室2に流入する。このとき、弁口20は第1開閉器4の弁体4aによって閉塞されているため、弁室2にはドレンが滞留することになる。
【0050】
ここで、第1開閉器4と第2開閉器6との間には、連結棒8の介在によって鉛直方向に沿って間隔S8が形成されている。このため、弁室2に流入するドレン量が比較的少ない場合は、弁室2の下方に配置されている第1開閉器4のみがドレンに水没することになる。流入するドレンは比較的低温であるため、第1開閉器4は収縮基準温度bを下回り、第1開閉器4は収縮状態になって、弁体4aは弁座31から離座して弁口20を開放する。
【0051】
このとき、弁室2の上部に位置する第2開閉器6は蒸気に晒されたままであり、膨張状態にあるため、弁口20の開度は全開状態の間隔S2(図1)に比較して約半分の間隔S1であり半開状態(図5)に留まる。そして、ドレンは配管内の高圧を受けて勢いよく半開状態の弁口20の間隔S1から流出し、流出口15を通じて排出される。ドレン排出後は弁室2全体に蒸気が充満し、第1開閉器4は膨張状態に変化して弁口20を閉塞するが、ドレン排出から弁口20の閉塞までには時間差が生じる。この間、蒸気は弁口20から流出するが、本実施形態では弁室2に滞留するドレン量が比較的少ない場合、弁口20は半開状態であるため、ドレン排出直後の蒸気の流出を抑えることができる。
【0052】
このように、熱応動式スチームトラップ1は開弁及び閉弁を繰り返して弁室2に流入したドレンを適宜排出するが、ドレンの発生状況等によって弁室2には多量のドレンが一気に流入することがある。この場合、弁室2に滞留するドレンの水位は高くなり、弁室2の上部に位置する第2開閉器6も比較的低温のドレンの影響を受け、収縮基準温度bを下回り、第1開閉器4及び第2開閉器6の双方が収縮状態になる。
【0053】
これによって、第2開閉器6の弁体6aが矢印92方向へ上昇移動し、この上昇が連結棒8を介して第1開閉器4に伝わって第1開閉器4自体が上昇移動すると同時に、第1開閉器4の弁体4aも矢印92方向へ上昇移動する。こうして、第1開閉器4の弁体4aと第2開閉器6の弁体6aの変位量の総和で弁口20の開度は大きく全開状態(図1)の間隔S2になり、多量のドレンは弁口20から迅速に流出し、流出口15を通じて排出される。
【0054】
以上のように、内部に封入されている膨張液体の膨張又は収縮を利用して作動する開閉器は、その構造上、変位量がそれ程大きくないが、本実施形態では第1開閉器4の弁体4aと第2開閉器6の弁体6aの変位量の総和をもって弁口20を開放することができる。このため、弁口20を大きく開放することができ、初期エアーや多量のドレンを迅速に排出することができる。
【0055】
また、第1開閉器4と第2開閉器6とを連結棒8で連結し、鉛直方向に沿って配置された2つの第1開閉器4と第2開閉器6との間に間隔S8を生じさせることができるため、弁室2に滞留するドレン量に応じて弁口20の開度が変化するように調整することができる。さらに、連結棒8が第1開閉器4を揺動可能に支持していることによって、第1開閉器4の弁体4aは弁座31に密着して着座し、確実に弁口20を閉塞することができる。
【0056】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、流入部、弁室空間、弁口部、本体部、基本開閉手段、補助開閉手段、離隔距離、連結手段、基本接続部及び補助接続部のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0057】
たとえば前述の実施形態においては、基本開閉手段及び補助開閉手段として、周辺温度に反応して膨張又は収縮する変形機器である第1開閉器4及び第2開閉器6を例示したが、周辺温度に反応して開放動作又は閉塞動作を行うものであれば他の機器を用いることもできる。
【0058】
さらに、前述の実施形態においては、連結手段として棒形状の連結棒8を例示したが、連結棒8よりも長く又は短いものを連結手段として採用してもよい。また、棒形状以外の形状を備えたものを連結手段として採用してもよい。
【0059】
また、前述の実施形態においては、2つの第1開閉器4及び第2開閉器6を配置する例を示したが、3つ以上の開閉手段を鉛直方向に配置し、各々の間隔に所定の離隔距離が生じるように連結手段で連結してもよい。これによって、弁口部の開放の度合いを3段階以上に設定することができる。
【0060】
また、前述の実施形態においては、連結棒8(連結手段)の上端部82が第2開閉器6(補助開閉手段)に固定され、下端部81が第1開閉器4(基本開閉手段)を揺動可能に支持する例を示したが、逆に連結手段の上端部を補助開閉手段に揺動可能に接続し、下端部を基本開閉手段に固定する構成を採用してもよい。また、連結手段の上端部及び下端部の双方を、それぞれ補助開閉手段及び基本開閉手段に揺動可能に接続することもできる。
【符号の説明】
【0061】
2:弁室 4:第1開閉器 6:第2開閉器 8:連結棒 11:第1ケーシング
12:第2ケーシング 14:流入口 20:弁口 81:下端部 82:上端部
S8:間隔

図1
図2
図3
図4
図5