(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089745
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20240627BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/06
A61K8/27
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/44
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/63
A61K8/46
A61K8/55
A61Q1/14
A61Q19/00
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205126
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】398039945
【氏名又は名称】ニベア花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107607
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 実
(72)【発明者】
【氏名】梅村 聡
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC212
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC552
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC852
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB05
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB25
4C083BB33
4C083BB44
4C083BB46
4C083BB48
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】
無機粉体を含有しつつも経時安定性に優れ、化粧料として塗布時にきしみ感を抑制し、みずみずしい使用感を付与することができる水中油型乳化組成物を提供する。
【解決手段】
成分(A)、(B)及び(C):
(A)屈折率1.6以上の原料無機粉体を、シリコーン、脂肪酸、シリカ及びアミノ酸から選ばれる1種以上で表面処理してなる無機粉体 1質量%以上
(B)30℃での粘度が200mPa・s以上であり、分子内に1つ以上のエステル又は/及びアミド結合を有する液状ないしペースト状の油剤
(C)アニオン性界面活性剤
を含有し、水相に分散した油滴の15%以上95%以下が成分(A)を含まないものである、水中油型乳化組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、(B)及び(C):
(A)屈折率1.6以上の原料無機粉体を、シリコーン、脂肪酸、シリカ及びアミノ酸から選ばれる1種以上で表面処理してなる無機粉体 1質量%以上
(B)30℃での粘度が200mPa・s以上であり、分子内に1つ以上のエステル又は/及びアミド結合を有する液状ないしペースト状の油剤
(C)アニオン性界面活性剤
を含有し、
水相に分散した油滴の15%以上95%以下が成分(A)を含まないものである、
水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(B)が、アシルアミノ酸エステル、ダイマー酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、脂肪酸のフィトステロールエステル及び脂肪酸のコレステロールエステルから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(C)がアシルアミノ酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシル乳酸塩及びアルキルリン酸エステルから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
さらに成分(D)アニオン性ポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
日焼け止め化粧料、スキンケア化粧料又はメイクアップ化粧料である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型乳化組成物において、化粧料として紫外線防御効果、メイクアップ効果等を付与すべく粉体を含有させる際の経時安定性や感触を向上させるために様々な提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、煙霧シリカに、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、疎水化セルロースとを組み合わせて配合することにより、経時安定性に優れ、塗布時にみずみずしい使用感を付与することができる水中油型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無機粉体を含有しつつも経時安定性に優れ、化粧料として塗布時にきしみ感を抑制し、みずみずしい使用感を付与することができる水中油型乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、特定の油剤と、アニオン性界面活性剤とを用いて、油滴の一部のみが無機粉体を含有し、他の油滴は無機粉体を含有しない水中油型乳化組成物とすることで、所望の効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の構成によって把握される。
[1]成分(A)、(B)及び(C):
(A)屈折率1.6以上の原料無機粉体を、シリコーン、脂肪酸、シリカ及びアミノ酸から選ばれる1種以上で表面処理してなる無機粉体 1質量%以上
(B)30℃での粘度が200mPa・s以上であり、分子内に1つ以上のエステル又は/及びアミド結合を有する液状ないしペースト状の油剤
(C)アニオン性界面活性剤
を含有し、
水相に分散した油滴の15%以上95%以下が成分(A)を含まないものである、
水中油型乳化組成物。
【0008】
[2]成分(B)が、アシルアミノ酸エステル、ダイマー酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、脂肪酸のフィトステロールエステル及び脂肪酸のコレステロールエステルから選ばれる1種以上である[1]に記載の水中油型乳化組成物。
【0009】
[3]成分(C)がアシルアミノ酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシル乳酸塩及びアルキルリン酸エステルから選ばれる1種以上である[1]又は[2]に記載の水中油型乳化組成物。
【0010】
[4]さらに成分(D)アニオン性ポリマーを含有する[1]~[3]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物。
【0011】
[5]日焼け止め化粧料、スキンケア化粧料又はメイクアップ化粧料である[1]~[4]のいずれか1つに記載の水中油型乳化組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経時安定性に優れた水中油型乳化組成物を提供できる。
本発明によれば、塗布時に化粧料として塗布時にきしみ感を抑制し、みずみずしい使用感を付与することができる水中油型乳化組成物を提供できる。
本発明によれば、紫外線防御性粉体を用いることで、高い紫外線防御効果を発現することができる水中油型乳化組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の水中油型乳化組成物の一例(実施例2で得られた水中油型乳化組成物)について、光学顕微鏡で観察される無機粉体の分散状態を示す、図面に代わる写真である。写真中の黒色部分が、一部の油滴に偏在する無機粉体(酸化チタン)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお本明細書において、成分の含有量は、水中油型乳化組成物の全質量を基準とする値である。
【0015】
本発明の水中油型乳化組成物は、成分(A)無機粉体、(B)油剤及び(C)アニオン性界面活性剤を含有する。
【0016】
<成分(A)無機粉体>
本発明に用いられる成分(A)の無機粉体は、屈折率1.6以上の原料無機粉体を、表面処理して得られる。好ましい原料無機粉体は、金属酸化物の粉体である。好ましい金属酸化物の例として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化セリウム、酸化スズ及び水酸化アルミニウムが挙げられる。表面処理は、原料無機粉体を、シリコーン、脂肪酸、シリカ及びアミノ酸から選ばれる1種以上の表面処理剤を用いて、常法に従って行うことができる。ここでシリコーンはシランを包含する意味である。
なお本発明の水中油型乳化組成物を日焼け止め化粧料とする場合、成分(A)としては特に、表面処理酸化チタン及び表面処理酸化亜鉛が好ましく、シリコーン処理酸化チタン、シリコーン処理酸化亜鉛、アミノ酸処理酸化チタン、及びアミノ酸処理酸化亜鉛が特に好ましい。
【0017】
成分(A)の含有量は、無機粉体の効果を十分に発現させる観点から、1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。無機粉体の含有量の上限は特に限定されないが、水中油型乳化組成物としての経時安定性や良好な使用感を確保する観点から、20質量%以下が好ましい。
【0018】
<成分(B)油剤>
本発明に用いられる成分(B)の油剤は液状ないしペースト状であって、その粘度は30℃で測定して200mPa・s以上であり、500mPa・s以上が好ましく、800mPa・s以上がより好ましい。油剤の粘度の上限は特に限定されない。粘度の測定はB型粘度計を用いて行うことができる。具体的には、測定対象を30℃に保管後、2号ローターを用い、回転速度30rpmにて60秒間回転させた後の値が採用される。
【0019】
成分(B)は、その分子内に1つ以上のエステル又は/及びアミド結合を有する構造を備える。成分(B)は通常、その分子に乳化性能を付与する官能基を含まない。
【0020】
成分(B)は、自重と等量以上の水を保持できる、すなわち、抱水力が100%以上である油剤であることが好ましい。ここで抱水力(%)の測定は、英国薬局方(BP)「ラノリン含水価測定法」に準じて行うことができる。
【0021】
成分(B)の油剤は、水中油型乳化組成物の油滴中で成分(A)の無機粉体と共存することで、無機粉体に対するコーティング成分として作用すると考えられる。すなわち、油剤が無機粉体に十分に吸着することで、無機粉体の分散安定性を向上させる分散剤としての機能を発現できると考えられる。その結果、水中油型乳化組成物を皮膚に塗布した際に、無機粉体に由来するきしみ感を抑制できる。また、成分(B)が皮膚に移行することで高い保湿感を付与できると考えられる。
【0022】
成分(B)の油剤の好ましい例として、アシルアミノ酸エステル、ダイマー酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、脂肪酸のフィトステロールエステル及び脂肪酸のコレステロールエステルが挙げられる。
【0023】
アシルアミノ酸エステルにおけるアシル基の炭素数は、好ましくは10~30であり、より好ましくは12~18である。アシル基は、飽和でも不飽和でもよく、混合脂肪酸を由来としてもよい。アシルアミノ酸エステルは、アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは12~18である。具体例としては、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ミリストイルメチルアラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)等が挙げられる。
【0024】
ダイマー酸エステルとしては、ダイマージリノール酸のエステル体が好ましい。ダイマー酸又はダイマージリノール酸のエステル部分としては、ベヘニル、イソステアリル、ステアリル、セチル及びフィトステリルから選ばれる1種又は2種以上の部分を含むことが好ましく、これらの選択肢から選ばれる2種以上の部分を含むことがより好ましい。具体例としては、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)等が挙げられる。
【0025】
ペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、ジペンタエリスリトールのエステル体が好ましい。脂肪酸エステルの脂肪酸部分としては、ベヘン酸、エチルヘキサン酸、ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ロジン酸から選ばれる1種又は2種以上の部分を含むことが好ましく、これらの選択肢から選ばれる2種以上の部分を含むことがより好ましい。具体例としては、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸)ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸のフィトステロールエステル及び脂肪酸のコレステロールエステルの脂肪酸部分としては、それぞれ、炭素数16~22の脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸、ヒマワリ種子油脂肪酸、マカデミアナッツ油脂肪酸等を用いることができる。具体例としては、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル等が挙げられる。
【0027】
成分(B)の含有量は、水中油型乳化組成物の油滴中で成分(A)を安定に分散させ、かつきしみ感を抑制させる観点から、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。水中油型乳化組成物としての経時安定性や良好な使用感を確保する観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
<成分(C)アニオン性界面活性剤>
本発明に用いられる成分(C)のアニオン性界面活性剤は、水中油型乳化組成物の油滴を水相中に分散させる役割を果たす。なお本明細書において界面活性剤とは、界面活性能を有する単量体(モノマー)化合物を指す。使用できるアニオン性界面活性剤は特に限定されないが、好ましい例として、アシルアミノ酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシル乳酸塩及びアルキルリン酸エステルが挙げられる。アシルアミノ酸塩、アシルメチルタウリン塩及びアシル乳酸塩のアシル基は、炭素数12~24の脂肪酸より誘導されるものが好ましい。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩が好ましい。アルキルリン酸エステルのアルキル基は、炭素数12~24のアルコールから誘導されるものが好ましい。
【0029】
アシルアミノ酸塩としては、ステアロイルグルタミン酸Na、ステアロイルメチルアラニンNa、ジラウラミドグルタミドリシンNa(ジラウロイルグルタミン酸リシンNa)等が挙げられる。アシルメチルタウリン塩としては、ステアロイルメチルタウリンNa等が挙げられる。アシル乳酸塩としては、ステアロイルラクチレートNa等が挙げられる。アルキルリン酸エステルとしては、トリセテアレス-4リン酸等が挙げられる。
【0030】
成分(C)の含有量は、水中油型乳化組成物の油滴を水相中に安定に分散させる観点から、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。水中油型乳化組成物としての経時安定性や良好な使用感を確保する観点から、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
なお本発明の水中油型乳化組成物を調製する成分として、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、特に、公知の水中油型乳化組成物で使用例が多い非イオン性界面活性剤は特に必要とは想定されない。したがって、非イオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、0.8質量%未満が好ましく、0.6質量%未満がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物は、後述する所定の条件にて、連続する水相中に分散した油滴を観察したとき、15%以上95%以下の油滴が成分(A)を含まないものである。すなわち、成分(A)を含む第1の油滴と、成分(A)を含まない第2の油滴という、異なる種類の油滴が水相中に安定的に共存した組成物である。このような構成とすることで、第2の油滴が存しない場合と比べて、成分(A)の無機粉体に対して成分(B)の油剤をより効率よく吸着させることができる。また、無機粉体との相互作用を抑制したい別の成分(例えば、油溶性紫外線吸収剤、脂溶性ビタミン、抗酸化力のある天然油脂等)を第2の油滴に含ませることによって、各成分の効果を安定的に発揮させることができる。
【0032】
油滴を観察する具体的な条件は、次の通りである。
・光学顕微鏡を用い、組成物(約5μl)をガラスプレパラートに挟み込んで、400倍の倍率で乳化状態を確認する。
・油滴は円状ないし略円状の形状を示すが、成分(A)は可視光の透過を妨げるため、成分(A)を含まない油滴は全体が透明であるところ、成分(A)を含む油滴はその部分を、あるいはその部分を含む油滴全体を一様に、有色の又は黒い影として確認することができる。なお「略円状」とは楕円状に限らず、瓢箪状等も含む。
・ここで、5μm以上の油滴を計測対象として、成分(A)を含まない、すなわち全体が透明な乳化滴の総数(X)を、一視野あたりで確認される油滴の総数(Y)で除し、100を掛けた値を
「α:X/Y*100= 成分(A)を含まない油滴の割合(%)」と定義する。
【0033】
上記α値(成分(A)を含まない油滴の割合(%))は、第2の油滴を存在させることによる本発明の効果を享受する観点から、下限において15%以上であり、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。また、同様に本発明の効果を享受する観点から、上限において95%以下であり、90%以下が好ましい。
【0034】
<成分(D)アニオン性ポリマー>
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに成分(D)アニオン性ポリマーを含有してもよい。成分(D)は、水中油型の乳化状態をより安定化させる役割を果たしうる。使用できるアニオン性ポリマーは特に限定されないが、アクリル酸又はメタクリル酸を構成モノマーとして含む重合体、すなわちカルボキシビニルポリマーであって、さらにアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類又はアミド類を構成モノマーとして含む重合体が好ましい。具体的には、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が挙げられる。また、カルボキシル基を含む糖類及び糖類誘導体も、使用できるアニオン性ポリマーの他の例である。具体的には、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸誘導体等が好ましい。
【0035】
成分(D)を含有する場合の含有量は、水中油型乳化組成物としての経時安定性の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。水中油型乳化組成物としての良好な使用感を確保する観点から、0.6質量%以下が好ましく、0.45質量%以下がより好ましく、0.35質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
<成分(E)両親媒性ポリマー>
本発明の水中油型乳化組成物は、さらに成分(E)両親媒性ポリマー(成分(D)を除く)を含有してもよい。すなわち、本発明の一つの局面において、成分(E)は、第1の油滴中での成分(A)の分散状態をより安定化させる役割を果たしうる。使用できる両親媒性ポリマーは特に限定されないが、疎水化セルロース誘導体、及び水溶性ポリウレタンが好ましい。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0037】
成分(E)を含有する場合の含有量は、成分(A)の分散安定化作用の観点から、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましい。水中油型乳化組成物としての良好な使用感を確保する観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.45質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下がさらに好ましい。
【0038】
他の局面において、本発明の水中油型乳化組成物は、成分(E)を実質的に含有することなく、成分(A)の安定な分散状態を達成しうる点で特徴付けることもできる。ここで「実質的に含有することなく」とは、成分(E)の含有量が0.03質量%未満であることをいう。
【0039】
<他の油剤>
本発明に用いられる他の油剤は、成分(B)以外の油性成分であり、水中油型乳化組成物において油相(油滴)を形成する。他の油剤としては、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、エーテル油、フッ素油、油溶性紫外線吸収剤(以下、単に「紫外線吸収剤」ともいう。)等が挙げられる。安定性、使用性等の観点から、エステル油、炭化水素油及びシリコーン油を含むことが好ましい。
なお本発明においては、他の油剤として同一の油剤を用いて第1の油滴と第2の油滴とを調製し、これら異なる種類の油滴が水相中に安定的に共存した状態を実現することもできる。これにより、配合処方の簡潔化や、製造工程の効率化が可能となる。
【0040】
他の油剤の合計の含有量は、水中油型乳化系を形成し得る量であれば特に限定されないが、本発明の効果を十分に発現する観点から、1.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上30.0質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
なお油剤の一種である高級アルコール及び高級脂肪酸は、水中油型乳化組成物の油滴においてα-ゲル構造を形成して乳化系を安定化しうることが知られているが、本発明の効果を発現するにあたってα-ゲル構造の形成は必要とは想定されない。したがって、高級アルコール及び高級脂肪酸の含有量は特に限定されないが、0.3質量%未満が好ましく、0.2質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物を日焼け止め化粧料とする場合、他の油剤として、紫外線吸収剤を1種以上含むことが好ましい。使用できる紫外線吸収剤は特に限定されないが、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ホモメンチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジヒドロキシベンゾフェノン、オクトクリレン、4-tブチル-4’ -メトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、エチルヘキシルトリアゾン等が挙げられる。
【0043】
上述の通り、紫外線吸収剤は、成分(A)の無機粉体との相互作用を抑制するよう、第2の油滴に含まれることが好ましい。第1の油滴が成分(A)を含み、これとは別の油相を成す第2の油滴が紫外線吸収剤を含む構成とすることで、SPF(Sun Protection Factor)が向上し、紫外線防御効果に優れた化粧料を提供できる。
【0044】
紫外線吸収剤の含有量は特に限定されないが、日焼け止め化粧料として本発明の効果を十分に発現する観点から、0.1質量%以上30.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上25.0質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上20.0質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
<水性成分>
本発明に用いられる水性成分は、水中油型乳化組成物において水相を形成する。水性成分としては、水の他に、水溶性成分であれば特に限定はなく、1価アルコール類、グリセロール類等が挙げられる。
【0046】
<添加成分>
本発明の水中油型乳化組成物には、上記の各成分以外に、使用目的に応じて、かつ本発明の効果を阻害しない範囲で、デオドラント成分、賦活化成分、抗炎症成分、抗アレルギー成分、美白成分、ビタミン類、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料等、各種の添加成分を含有することができる。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の(i)~(iv)の工程を含む方法で製造することができる。
(i)配合成分のうち、成分(C)のアニオン性界面活性剤、水性成分、必要に応じて成分(D)のアニオン性ポリマー、及び必要に応じて水溶性の添加成分を混合して、水相を調製し、得られた水相を概ね等量となるように二分割する。(ii)成分(A)の無機粉体、成分(B)の油剤、及び必要に応じて成分(E)の両親媒性ポリマーを、紫外線吸収剤を除く他の油剤の一部と混合して、第1の油相を調製する。第1の油相を、二分割した水相の一方と混合して、第1の乳化物を調製する。(iii)必要に応じて油溶性紫外線吸収剤と混合され、かつ必要に応じて油溶性の添加成分と混合された、他の油剤の残部を、第2の油相として用意する。第2の油相を、二分割した水相の他方と混合して、第2の乳化物を調製する。(iv)第1の乳化物と第2の乳化物とを混合して、目的の水中油型乳化組成物とする。
【0048】
本発明の水中油型乳化組成物は、化粧料として、日焼け止め化粧料;乳液、美容液、化粧水、パック等のスキンケア化粧料;メイクアップ下地、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、アイライナー、マスカラ、口紅等のメイクアップ化粧料等に好適に用いることができる。
【実施例0049】
以下に、本発明の実施態様を具体的に例示する。
【0050】
(実施例1~5及び比較例2~4)
表1に示す成分組成の水中油型乳化組成物を以下の方法にて製造し、きしみ感のなさ、無機粉体を含まない乳化滴の割合、及び乳化状態の保存安定性を評価した。なお、使用した成分の30℃における粘度を例示すると、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)は1350mPa・s、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルは27mPa・sであった。結果を表1に併せて示す。
【0051】
(水中油型乳化組成物の製造方法:二段階乳化法)
(i)表1の「水性成分」欄に記載された成分を全て混合して、水相を調製し、得られた水相を概ね等量となるように二分割した。
(ii)(a)表1のその他油剤を混合し、概ね等量となるように二分割した。その他油剤の混合物の一方に、無機粉体、分散剤である油剤、及び必要に応じて両親媒性ポリマーを混合して、第1の油相を調製した。
(ii)(b)第1の油相を、二分割した水相の一方に添加し混合して、第1の乳化物を調製した。
(iii)(a)その他油剤の混合物の残部をそのまま、又は必要に応じて紫外線吸収剤を混合して、第2の油相として用意した。
(iii)(b)第2の油相を、二分割した水相の他方に添加し混合して、第2の乳化物を調製した。
(iv)第1の乳化物と第2の乳化物とを混合して、目的の水中油型乳化組成物とした。
【0052】
(きしみ感のなさの評価方法)
各例の水中油型乳化組成物について、訓練を受けたパネラー5名が各々、比較例3の組成物を対照として一方の腕へ、被験試料を他方の腕へ、直接塗布することにより、「きしみ感」について下記の基準により点数をつけた。パネラー間の平均点を算出し、四捨五入した整数値を評価結果とした。
5 比較例3の組成物と比べて、きしみ感はほとんど感じられず、非常に使用感が良い。
4 比較例3の組成物と比べて、きしみ感が感じられず、使用感が良い。
3 比較例3の組成物と同等のきしみ感と使用感である。
2 比較例3の組成物と比べて、ややきしみ感があり、使用感が悪い。
1 比較例3の組成物と比べて、きしみ感が強くあり、非常に使用感が悪い。
【0053】
(無機粉体を含まない乳化滴の割合の評価方法)
各例の水中油型乳化組成物について、本明細書にて前述した条件に従い、光学顕微鏡を用いた観察により「α」値を算定した。
【0054】
(保存安定性の評価方法)
各例の水中油型乳化組成物を、50℃で1週間保存し、外観を目視で観察すると共に、油滴の状態を光学顕微鏡(倍率400倍)により観察し、下記の基準で保存試験の結果を評価した。
A 外観の変化はみられず、さらに油滴の合一も確認されなかった。
B 外観に若干の変化(分離、離水)がみられる、あるいは油滴の合一が少しみられた。
C 外観に明らかな変化(分離、離水)がみられる、あるいは油滴の明らかな合一がみられた。
【0055】
(比較例1)
表1に示す組成の水中油型乳化組成物のうち比較例1については、以下の方法にて製造した。得られた組成物の評価は他の例と同じ条件にて行った。結果を表1に併せて示す。
【0056】
(水中油型乳化組成物の製造方法:一段階乳化法)
(i’)表1の「水性成分」欄に記載された成分を全て混合して、水相を調製した。
(ii’)表1の「油性成分」欄に記載された成分を全て混合して、油相を調製した。
(iii’)水相及び油相を必要に応じて加熱し、水相をホモジナイザーで攪拌しているところに、油相を添加し混合して、目的の水中油型乳化組成物とした。
【0057】
【0058】
表1の結果に示される通り、実施例1~5の組成物は使用感が良好であった。この結果は、これらの組成物が、比較的高い「α」値によって示されるように、無機粉体を含む第1の油滴と、無機粉体を含まない第2の油滴という、異なる種類の油滴が水相中に安定的に共存した組成物であることに由来すると考えられる。保存試験の結果が良好であったことも、これらの組成物の乳化状態が安定であることを裏付けている。
【0059】
他方、別法により一種類の油滴のみを含むように調製された比較例1は、成分組成が実施例1と同じであるにも関わらず、いずれの評価でも明らかに劣った結果であった。また、分散剤である油剤として本発明の条件に合致しない成分(ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3)を用いた比較例2、乳化剤(界面活性剤)として本発明の条件に合致しない成分(ステアリン酸PEG-40)を用いた比較例3、及び、乳化剤(界面活性剤)を用いていない比較例4は、それぞれ実施例1~5と同じ製造方法によって調製されたにも関わらず、いずれの評価でも明らかに劣った結果であり、異なる種類の油滴を水相中で安定的に維持できていないことが示唆された。
【0060】
(実施例6~9及び比較例5,6,8,9)
表2に示す成分組成の水中油型乳化組成物(いずれも日焼け止め化粧料に該当する。)を、前述の二段階乳化法にて製造し、きしみ感のなさ、無機粉体を含まない乳化滴の割合、及び乳化状態の保存安定性を評価した。さらに、以下の方法で、日焼け止め性能の指標としてSPF値を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0061】
(SPFの評価方法)
5cm×5cmのポリメチルメタクリレート(PMMA) 板上に、各例の日焼け止め化粧料を1.3mg/cm2に なるように1分間均一に塗布し、25℃で15分間乾燥させた。次に、SPFアナライザー(UV-2000S、Labsphere社製)にて、正方形のPMMA板の中央、頂点(4箇所)、及び四辺の中点(4箇所)の計9箇所で、SPF値を測定し、平均値を求めた。
【0062】
(比較例7)
表2に示す組成の水中油型乳化組成物のうち比較例7については、前述の一段階乳化法にて製造した。得られた組成物の評価は他の例と同じ条件にて行った。結果を表2に併せて示す。
【0063】
【0064】
表2の結果に示される通り、実施例6~9の組成物は使用感が良好で、比較的高い「α」値を示し、保存試験の結果も良好で、異なる種類の油滴が水相中に安定的に共存した組成物であることを支持した。これらの組成物はまた、比較的高いSPF値を示し、日焼け止め化粧料として好適なものと考えられた。
【0065】
他方、別法により一種類の油滴のみを含むように調製された比較例7は、成分組成が実施例8と同じであるにも関わらず、いずれの評価でも明らかに劣った結果であった。また、分散剤である油剤として本発明の条件に合致しない成分(PEG-10ジメチコン)を用いた比較例5及び9、やはり分散剤である油剤として本発明の条件に合致しない成分(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)を用いた比較例6、及び、分散剤である油剤を用いずかつ乳化剤(界面活性剤)としても本発明の条件に合致しない成分(ステアリン酸ポリグリセリル-10)のみを用いた比較例8は、それぞれ実施例6~9と同じ製造方法によって調製されたにも関わらず、いずれの評価でも明らかに劣った結果であり、異なる種類の油滴を水相中で安定的に維持できていないことが示唆された。
【0066】
以下に、本発明の水中油型乳化組成物を製造するための処方例を挙げる。表中の数値は全て「質量%」である。
(処方例1:BBクリーム)
【表3】
【0067】
【0068】