(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089763
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A47J37/12 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205156
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】592181440
【氏名又は名称】株式会社マルゼン
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】石川 智行
(72)【発明者】
【氏名】二村 慎也
【テーマコード(参考)】
4B059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AB02
4B059AD14
4B059AE03
4B059AE12
4B059BA18
(57)【要約】
【課題】間口が広くて、中大型厨房にも用いることのできるIH加熱フライヤーを提供する。
【解決手段】フライヤー1は、本体フレーム2と、フライ油を貯留する油槽10と、油槽底13の下に配設されたIHコイル20と、該コイルに風を当てる冷却機構9とを具備する。冷却機構が、本体フレーム2の底部周辺から空気を取り入れる空気取入れ口90と、コイル20の下に形成された空気通路93と、空気取入れ口90から前記空気通路93へ空気を流すファン91と、油槽10の奥側における間口幅中央部の油槽底13から空気を排気する排気口47とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体フレーム(2)と、
該本体フレームの上部に支持された、フライ油を貯留する油槽(10)と、
該油槽を加熱する、油槽底(13)の下に配設されたIHコイル(20)と、
該コイルに風を当てる冷却機構(9)と、
を具備し、
該冷却機構が、
前記本体フレーム(2)の底部周辺から空気を取り入れる空気取入れ口(90)と、
前記コイル(20)の下に形成された空気通路(93)と、
前記空気取入れ口(90)から前記空気通路(93)へ空気を流すファン(91)と、
前記油槽底(13)の奥側の間口幅中央部における前記空気通路(93)から空気を排気する排気口(47)と、
を有することを特徴とするフライヤー(1)。
【請求項2】
前記油槽(10)が、
平面視で比較的周辺部に配設された傾斜底面(13)と、
該傾斜底面の低い側に接続された、平面視で比較的中央部に配設されたカス貯め部(14)と、を有し、
前記該傾斜底面(13)の下面外側に前記IHコイル(20)が配設されており、
前記カス貯め部(14)の下部外側に空気通路(92)が配設されていることを特徴とする請求項1記載のフライヤー(1)。
【請求項3】
前記IHコイル(81)に給電するインバータ(85)が、前記油槽(10)の底(14c)の下に、空気通路(92)を隔てて配置されており、さらに、該インバータ冷却用のファン(99)を設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のフライヤー(1)。
【請求項4】
前記排気口(47)の左右の、奥側の整流板(46R・46L)の裏(奥)には、排気口の左右に出て排気筒(4)内に開口する空気流路(48)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフライヤー(1)。
【請求項5】
前記油槽底(13)の奥側における、整流板(46R・46L)とそれに対向するIHコイル(20)との間の間隔である空気流路(93)の高さが、
前記油槽底(13)の奥手前方向中央部の左右側部における、整流板(43R・43L)とそれに対向するIHコイル(20)との間の間隔である空気流路(93)の高さよりも、
狭いことを特徴とする請求項1又は2記載のフライヤー(1)。
【請求項6】
前記フライヤーが揚げ籠オートリフト機構(200)及び排気筒(104)を具備し、
該オートリフト機構の下に、前記空気流路(193)から前記排気筒(104)に冷却空気を排出する排気開口(147)が設けられていることを特徴とする請求項1記載のフライヤー(101)。
【請求項7】
前記排気開口(147)の左右における、前記オートリフト機構(200)から左右外側に外れた位置に、側部空気流路開口(148)が開口しており、
該開口(148)からは、前記空気流路(193)においてIHコイル奥中央部(120j)まで導かれて、その後左右に流れた冷却空気が、前記排気筒(104)に排出されることを特徴とする請求項6記載のフライヤー(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理店の業務用厨房などにおいて用いられる、様々な食材を油で揚げるフライヤーに関する。特には、間口(調理者に対向する辺)が広くて使い易いフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許5436463には、小型でコンビニの店舗に設置するのに適したフライヤーが開示されている。このフライヤーは、油槽底外面に電磁コイルを配設したIH加熱式であるので、油槽の清掃が楽である。また、油槽の最底部がクールゾーンとなっており揚げカスの酸化が抑制され油の持ちがよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許5436463のフライヤーの特長を維持しつつ、間口が広くて、中大型厨房にも用いることのできるIH加熱フライヤーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この「課題を解決するための手段」、及び、「特許請求の範囲」においては、添付図各部の参照符号を括弧書きして示すが、これは単に参考のためであって、権利範囲を添付図のものに限定する意図はない。
【0006】
本発明のフライヤー(1)は、 本体フレーム(2)と、 該本体フレームの上部に支持された、フライ油を貯留する油槽(10)と、 該油槽を加熱する、油槽底(13)の下に配設されたIHコイル(20)と、 該コイルに風を当てる冷却機構(9)と、 を具備し、 該冷却機構が、 前記本体フレーム(2)の底部周辺から空気を取り入れる空気取入れ口(90)と、 前記コイル(20)の下に形成された空気通路(93)と、 前記空気取入れ口(90)から前記空気通路(93)へ空気を流すファン(91)と、 前記油槽底(13)の奥側の間口幅中央部における前記空気通路(93)から空気を排気する排気口(47)と、を有することを特徴とする。
【0007】
油槽底誘導加熱タイプで間口の広いフライヤー(1)においては、奥側の幅中央部のIHコイル(20)の冷却が不十分となって、同部のコイルの温度が上がりやすい。なお、「間口」とは、調理人が立って食材を出し入れする側の辺、あるいはその幅のことである。調理人の立つ側を「手前」、その反対側を「奥」という。「間口幅中央部」とは、調理人から見て左右方向の中央部のことである。本発明のフライヤーにおいては、この奥側の間口幅中央部まで空気を送ってから排気することにより、同部のIHコイル(20)を十分に冷却できる。なお、IHコイルの許容温度は、一例で130℃である。
【0008】
冷却空気の取入れ口(90)は、本体フレーム(2)の底部周辺、例えば底面に設け、調理室の床近くの空気を取入れる。一般的にも厨房内には幾つもの熱機器が稼働し、輻射熱や排気熱が放出される環境上、フライヤーの本体下部付近にあるエアーの温度が比較的低い状態である。できるだけ温度の低い部位から冷却空気を取り入れることにより、IHコイルやインバータの冷却効果を高めることができる。排気口(47)の先には、フライヤー本体フレーム(2)の奥側において上方に延びて、空気を上方に排気する排気筒(4)を設けることが好ましい。
【0009】
本発明のフライヤー(1)においては、 前記油槽(10)が、 平面視で比較的周辺部に配設された傾斜底面(13)と、 該傾斜底面の低い側に接続された、平面視で比較的中央部に配設されたカス貯め部(14)と、を有し、 前記該傾斜底面(13)の下面外側に前記IHコイル(20)が配設されており、 前記カス貯め部(14)の下部外側に空気通路(92)が配設されているものとすることが好ましい。
【0010】
カス貯め部(14)は、IHコイル(20)よりも低くなるため、あまり加熱されないクールゾーンとなる。また、空気通路(92)を流れる冷却空気によって、カス貯め部(14)の下部は冷却される。これにより、カス貯め部(14)の底(内側)に溜まったフライ油や揚げカスの昇温を抑制して、油の酸化・変色・匂い付きを防止できる。結局、フライ油の寿命延長や揚げ物食品の品質向上に寄与できる。なお、「平面視で比較的周辺部に配設された傾斜底面(13)」とは、例えば、四角い油槽(10)の4辺あるいは3辺、又は2辺に近い部位である。
【0011】
本発明のフライヤー(1)においては、 前記IHコイル(20)に給電するインバータ(85)が、前記油槽(10)の底(14c)の下に、空気通路(92)を隔てて配置されており、さらに、該インバータ冷却用のファン(99)が設けられていることが好ましい。そうすると、インバータ(85)や冷却機構(9)が、油槽(10)の下方に収まり、フライヤー(1)の寸法がコンパクトになる。
【発明の効果】
【0012】
間口が広いフライヤーにおいて、冷却が不十分になりやすい奥側の幅中央部のIHコイル(20)も十分に冷却でき、特許5436463のフライヤーの特長を維持しつつ、間口が広くて、中大型厨房にも用いることのできるIHフライヤーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフライヤー1の全体構成を示す模式的な側面断面図である。
【
図3】
図1のフライヤー1の油槽10の底面、及び、IHコイル20、並びに、コイル冷却空気の流れを説明するための底面図である。
【
図4】
図1のフライヤー1における冷却空気流路の底面の構成を示す平面図である。
【
図5】他の実施の形態に係るフライヤー101(籠オートリフト付き)の全体構成を示す模式的な側面断面図である。
【
図6】
図5のフライヤー101の背面断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1;フライヤー、2;本体フレーム
2v;下部、2x;底下面
4;排気筒、4b;筒内、4x;板
10;油槽、10a;上半部、10b;中下部、10c;下部
11;側壁、11F;手前側板、11B;奥側板、11R・11L;左右側板
13;傾斜底面(油槽底)、
14;カス貯め部、14b; 底壁、14c;底、14d;側壁(側面)、
19;廃油口、19b;開閉弁
20;IHコイル、21;IHコイル支持板、22;コイルベース
40;空気路底板、41;手前平板、41b;円孔、
42・42R・42L;冷却風ガイド板、43R・43L;整流板、
44;開口、45R・45L;ファン開口、46・46R・46L;整流板、
47;排気口、48;空気流路
85;インバータ、86;インバータボックス、89;基板ボックス
9;冷却機構、90;空気取入れ口、
91;ファン、92・93;空気通路、
97;フィルター、99;ファン
101;フライヤー、102;フライヤー本体フレーム、104;排気筒、104x;内側の板
110;油槽、110a;上部
120;IHコイル
146;整流板、147;排気開口、148;側部空気流路開口
191;ファン、193;空気流路、199;ファン
200;籠オートリフト機構、201;リフトモータ、203;ロッド上下機構
204;案内部、205;昇降ロッド、206;タイバー、207;昇降バー
211;フライカゴ、213;籠本体、215;取っ手、216;フック
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。各図において矢印で示す各方向「上」・「下」は、地球重力に沿う方向である。「手前」は、前述のとおり、調理人が立って、食材を油槽10に投入したり、すくい上げたりする側である。「奥」は、調理人から見て、対向する遠い方向である。「左」・「右」は、調理人がフライヤー1に向かって見た左右の方向である。
【0016】
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るフライヤーの全体構造を説明する。
フライヤー1は、食品を揚げる油を貯留する油槽10と、油槽10を加熱する電磁誘導コイル20(平面配置は
図3参照)と、を有する。これらは、本体フレーム2に収容されている。
【0017】
本体フレーム2は左右方向(間口方向)に長い直方体状の箱体である。寸法例は、間口幅650mm、奥行き600mmである。本体フレーム2は、脚(図示されず)上に載っており、油槽10の上面の高さが一例で800mmである。本体フレーム2の手前面には、操作パネル(図示されず)が設けられている。
冷却機構9は、上記IHコイル20やインバータ85(インバータボックス86)に風を当てて冷却するものである。詳細は
図3や
図4を参照しつつ後述する。
【0018】
油槽10は、上半部10a、上下方向中央の中下部10b、下部10c(カス貯め部14)からなる。油槽上半部10aは、本体フレーム2の上面の大部分に広がる。油槽上半部10aの側壁11の手前側は、奥下がりの傾斜した手前側板11Fが手前壁を形成している。油槽上半部10aの奥側は、直立した奥側板11Bが奥壁を形成している。油槽上半部10aの左右側は、
図2に示すように、直立した左右側板11R・11Lが側壁を形成している。
【0019】
油槽10の中下部10bは、下中央に向かって傾斜した傾斜底板13(傾斜角θは一例で15~25°)により形成された四角錐台状である。傾斜底板13の下面には、IHコイル20が巻き付けられたコイルベース22が取り付けられている(
図3参照)。
【0020】
油槽10の下部10cは、直方体状のカス貯め部14となっている。カス貯め部14は、揚げカスや食品カスを集める部位である。カス貯め部14は、傾斜底板13の下端から連続して形成された、下方に延びるほぼ垂直な側壁14dと、底壁14bとを有する。底壁14bは少し傾斜しており、その最下部には、排油用の開口(
図3の符号19参照、開閉弁19b付き)が形成されている。
【0021】
油槽10の上半部側壁11及び傾斜底板13は、磁性材料で作製されている。磁性材料としては、例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430など)や、非磁性材料に磁性材料をコーティングしたものなどを使用できる。後者の例として、例えば、ニッケル系材料(例えば、NA-955(商品名)、関西特殊溶接棒製)を溶射した下地の上に鉄系材料(例えば、MG-50(商品名)、神戸製鋼社製)を溶接して中間層を形成し、その上にセラミック塗装を施したものが挙げられる。
一方、カス貯め部14(下部10c)の側壁・底壁は、非磁性材料で作製される。非磁性材料としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304、316など)を使用できる。
【0022】
図3に示すように、IHコイル20は、傾斜底板13の下面の、カス貯め部14の周囲を取り囲んで複数回周回するように巻き回されている。
図3のコイル20の周囲に示す帯状の部材22は、コイルベースである。コイル20の各辺の中央部においてコイル20を横断している部材21は、コイル支持板である。
【0023】
同コイルは銅より線(一例)からなり、コイル20の両端は、インバータ85に接続している。コイル20に電流を流すと磁力線が発生し、この磁力線が、傾斜底板13を通る際にうず電流が生じ、このうず電流が電気抵抗で熱に変わって同底板を加熱する(誘導加熱する)。加熱された傾斜底板13の上方の油は加熱され、油槽10の周囲を上方へ向かう。そして、温度の低い内側へ向かい、下方に沈む。つまり、油槽10の周囲から中心に向かい、中心付近で下方に向かった後、周囲に向かうという対流が生じる。このような対流が油槽10の四面で生じて、油槽内の油が加熱される(加熱される領域をホットゾーンという)。
【0024】
一方、油槽10の中央下部のカス貯め部14は、非磁性材料で作製されており、コイル20から発生した磁束による誘導加熱は起こらない。また、前述の対流は、油槽10の下部に区切られたカス貯め部14では、ほとんど起こらず、クールゾーンを形成する。さらに、後述するカス貯め部14の下部に当たる冷却風の冷却効果もある。これらの作用に伴い、例えば、ホットゾーンHの油の温度が180°の場合、クールゾーンCの油の温度は80~100°程度である。
【0025】
次に、油槽10の下方の構成の大要を、
図1・2を参照しつつ、説明する(コイル冷却機構の詳細については、
図3・
図4を参照しつつ後述する)。
本体フレーム2の底下面2xは平たい面である。この下面2xは、脚台(図示されず)の上に載っている。下面2xの左側部分は、帯状のフィルター97の付いた空気取入れ口90となっている。空気取入れ口90から、本体フレーム2の下部内に冷却空気が取り入れられる(ファン91・99の吸引力による)。
【0026】
本体フレーム2の下部2vの内部は、インバータボックス86や、基板BOX89(
図2)などの置かれた電装部となっている。インバータボックス86は、手前の左側に置かれている。インバータボックス86は、かなり広いものであって、空気取入れ口90の上方の相当の部分を覆っている。ただし、インバータボックス86の底はフレーム底面2xから、25mm程度浮いており、空気取入れ口90から入った風は、同ボックス86の底から周りを抜けて、上方に流れる。
【0027】
インバータボックス86奥部の上方には、カス貯め部14の底が、15mm程度の隙間(空気通路92)を隔てて存在する。カス貯め部14の手前側には、手前平板41が、本体下部2vの天井の形に張られている。手前平板41の左右には、
図4に分かり易く示すように、平面形状正方形のファン開口45R・45Lと、その上のファン91 R・91Lが配置されている。ファン91の風は、ファン開口45R・45L から上がって、IHコイル20(油槽10の底)の下面(空気通路93)を流れる。詳細は、
図4を参照しつつ後述する。なお、符号42R・42Lは、ファン91の手前上に張り出した冷却風ガイド板であって、
図1に示すように、下から当たった冷却風をIHコイル20(油槽10の底)の方に曲げる板である。
【0028】
カス貯め部14の底部は、手前平板41や左右側方の整流板43R・43L(
図2・
図4参照)の下に出ている。そして、カス貯め部14の底部の下面や側面には、冷却空気の流れが当たる(空気通路92を形成している)。すなわち、空気取入れ口90の奥側部分から吸い込まれた冷却空気は、本体フレーム2の手前側左右のIHコイル冷却ファン91に引かれて流れるが、この流れは、カス貯め部14の底部の下面や側面を通る。この冷却空気によってカス貯め部14の底14cや側面14dは冷却される。これにより、カス貯め部14の底(内側)に溜まったフライ油や揚げカスの昇温を一層抑制して、油の酸化・変色・匂い付きを防止できる。
【0029】
インバータボックス86の奥端には、インバータ冷却用のファン99が配置されている。このファン99は、インバータボックス86内に風を吹き込んで、同ボックス86の奥から手前方向に風を送る。この風でボックス86内のインバータ85(IGBTなどのパワー半導体素子を含む)を冷却する。インバータボックス86を通った風は、IHコイル20冷却ファン91、IHコイル20の下の冷却流路(
図3・
図4参照)を通って、排気筒4に入ってその天辺から排気される。
【0030】
図4を参照しつつ、
図1のフライヤー1における冷却空気流路の底面部の構成を説明する。
図4は、冷却空気流路の底面の構成を示す平面図である。この空気流路の底面は、本体フレーム2内において、油槽10の傾斜底板13や手前側板11Fの下方に、それらの板に対して間隔をおいて配設されている。
【0031】
空気路底板40は、下述する手前平板41や整流板43R・43L、整流板46R・46Lの総称であって、全体として長方形の、中央が下に窪んだ板である。中央の長方形の開口44には、油槽10のカス貯め部14の下半分程度が入り込む(
図1参照)。
同開口44の手前側は、手前平板41となっている。手前平板41の左右には、ファンの空気の通るファン開口45R・45Lが開けられている。このファン開口45R・45Lの上に、ファン91R・91L(
図2参照)が配置されている。ファン91の風は、白抜き太矢印で示すように、ファン開口45R・45Lから上がって、一部が手前中央方向へ流れ、大部分が次述する左右側方の整流板43R・43Lの上に沿って奥に流れる。
【0032】
手前平板41の左右中央には、円孔41bが、前奥方向に並んで3個、開けられている。この円孔41bは、コイル配線やセンサ配線を通す通路である。
【0033】
空気路底板40の開口44の左右(空気路底板40の奥手前方向中央部の左右両側の部分)は、左右側方の整流板43R・43Lとなっている。同整流板43R・43Lは、
図2に示すように、IHコイル20や油槽傾斜底板13と同様に外上がりの傾斜が付いており、幅もほぼ同じである。IHコイル20と整流板43との間は、30mmの間隔(高さ)の空気流路93(
図2参照)となっている。この間隔は、冷却空気がIHコイル20に沿って熱を奪いながら、スムーズに奥方向(白抜き太矢印参照)に流れるのに適した間隔である。
【0034】
空気路底板40の開口44の奥側(空気路底板40の奥方向斜面の左右両側の部分)は、奥側の整流板46R・46Lとなっている。同整流板46 R・46Lは、
図1に示すように、IHコイル20や油槽傾斜底板13と同様に外上がりの傾斜が付いている。IHコイル20と整流板46との間は、25mmの間隔(高さ)の空気流路93(
図1参照)となっている。この間隔は、冷えにくい奥側のコイルに対して、冷却空気流速を早めて熱伝達を促進し、より冷却効果を高めるのに適した間隔である。整流板46R・46Lの奥には、排気筒4の内側の板4xが存在する。
【0035】
左右側方の整流板43R・43Lの上に沿って奥方向に流れた風は、奥側の整流板46R・46Lに当たって中央方向に曲がり、奥中央部にまで至る。
【0036】
奥側の整流板46R・46Lの間(左右中央部)には、四角い排気口47が開いている。奥側の整流板46R・46Lの上方(空気路93)を、左右から中央に流れた空気は、排気口47から奥方向に抜けて、排気筒4に入る。このように、奥側に至った冷却空気を、奥側の左右中央部まで導いて排気筒4に排気することにより、別言すれば、奥側の左右側部からすぐに排気筒4に抜けさせないことにより、奥側左右中央部のIHコイル20を十分に冷却する。これが、本発明の重要なポイントの一つである。
【0037】
排気口47の左右の、奥側の整流板46R・46Lの裏(奥)には、排気口47の左右に出て、左右側部で排気筒4内に開口する空気流路48が形成されている。この空気流路48から、排気筒4の左右側部へも昇温した空気が、スムーズに排出される(排気口47で空気滞留が起きない)。
【0038】
図3を参照しつつ、
図4で説明した空気路底板40やファン91によって生起されるIHコイル20の冷却空気の流れについて説明する。
図3においては、太い白抜きの矢印によって、冷却空気のIHコイル20に沿う流れが示されている。
【0039】
手前左右のファン91R・91Lから出た冷却空気の風は、IHコイル20の手前側の左右コーナー辺り(符号20aの部分)に当たる。そこから、一部が手前中央方向へ流れ、手前側のコイル20bの下面を流れ、同コイル20bを冷却する。左右コーナー辺りのコイル20aに当たった風の他の部分は、左右側辺部のコイル20cの表面を流れる。
【0040】
次いで、風は、中央方向に曲がり、奥のコイル20gの下面を流れ、同コイル20gを冷却する。そして、奥中央部のコイル20jにまで至る。風は、奥中央部の排気口47から奥方向に抜けて、排気筒4に入る。このように、奥側に至った冷却空気を、奥側の左右中央部まで導いて排気筒4に排気することにより、別言すれば、奥側の左右側部からすぐに排気筒4に抜けさせないことにより、奥側左右中央部のIHコイル20jを十分に冷却する。
【0041】
コイル温度の上昇状況(冷却機構の冷却能力)を確認するため、油槽10内のフライ湯を水管通水で冷却しつつ、200℃加熱・コイル連続通電という過酷試験を行った。この過酷条件でも、奥側中央部コイル20jの温度が110℃程度以下にできることを確認した。
【0042】
図5・
図6を参照しつつ、フライカゴ211の自動昇降機構(オートリフト200)を備える他の実施形態について説明する。
図5は、他の実施の形態に係るフライヤー101(籠オートリフト)の全体構成を示す模式的な側面断面図である。
図6は、
図5のフライヤー101の背面断面図である。これらの図において、
図1~4の図面符号に100を足した符号で示されている部分・部位は、基本的に、同様の構造・作用を有する部分・部位である。
【0043】
以下、
図5・
図6の実施形態における特徴的な、フライカゴ211のオートリフト機構について構成・作用を説明する。
図5に示すフライカゴ211は、全体として低めの四角い箱状の籠本体213を有する。籠本体213は、底面と側面が網板からなる。籠本体213は、油槽110の上部110aの中に入って、フライ油にほぼ浸かる。籠本体213の上部には、調理人が手でつかんで持ちあげる取っ手215が出ている。フライカゴ211を持ちあげることにより、揚げた食物を全部持ちあげることができる。なお、ここまで説明した形態のフライカゴ211は、オートリフト式でないフライヤーでも使うものである。
【0044】
オートリフト式のフライヤー101で用いるフライカゴ211には、奥の部位に、オートリフト用のフック216が付いている。フック216は、籠本体213にしっかりと接続されており、上部に、オートリフトの昇降バー207で引っ掛けるフック部を有している。
【0045】
籠オートリフト機構200は、上記昇降バー207や、その昇降駆動ロッド205、ロッド上下機構203、同機構駆動用のリフトモータ201などを備えている。
図6に示すように、リフトモータ201やロッド上下機構203は、排気筒104の内側の板104xに固定されている。
【0046】
昇降ロッド205は、左右に二本設けられており、案内部204により上下方向にスライド自在に案内されている。左右二本の昇降ロッド205は、中部においてタイバー206によって、上部において昇降バー207によって横に連結されている。これらの昇降ロッド205・昇降バー207・タイバー206が、四角い枠組みとなって、モータ201・上下機構203により昇降される。それに伴って、昇降バー207に引っ掛けられている籠本体213が、自動的に昇降する。
【0047】
図5・
図6の実施形態のフライヤー101における、オートリフト機構200とIHコイル120の冷却機構との関係について説明する。
図5に見られるように、フライヤー本体フレーム102の手前側に配置されたファン191から吹き上がった冷却空気(風)は、IHコイル120の下の空気流路193を、奥方向に流れる。そして、風は、奥側の中央部のIHコイル120jの下に至り、整流板146を下に抜けて、空気流路193から出る。
【0048】
その後、冷却空気(風)はさらに下がり、排気筒104の下部の排気開口147から、排気筒104内の底に流れる。そして、排気筒104内を上がって、筒上部から排気される。この排気開口147は、
図6に示すように、排気筒の内側の板104xの最下部の中央部に開けられている。排気開口147の上には、揚げカゴのオートリフト機構200のモータ201やロッド上下機構203が、排気筒104の内側の板104xに固定されている。
【0049】
排気開口147から出た風は、リフトモータ201の下から左右を通って、排気筒104を上に昇る。排気筒手前側板104xの左右には、オートリフト機構200を外れた位置に側部空気流路開口148が開口している。この開口148は、
図4に示す側部空気流路48の排気筒104への出口である。この側部空気流路48の開口148からは、IHコイル20の奥中央部120jまで導かれて、その後左右に流れた冷却空気が、排気筒104に排出される。