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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089765
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01G31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205158
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】秋田 励紀
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NA13
2B314NA37
2B314PD06
2B314PD07
(57)【要約】
【課題】既存の栽培装置に容易に設置可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置10は、車輪を成す4本の車輪軸110a、110bと、フレーム120と、2つの昇降棚140と、昇降棚駆動部170とを主に備える。車輪軸110a、110bは、軌道23a、23cに対して移動可能に係合する。フレーム120は、4本の車輪軸110a、110bを支持する。2つの昇降棚140は、重力上方に向く載置面141を有し、重力方向に所定の間隔を開けて、フレーム120から昇降可能に吊り下げられる。昇降棚駆動部170は、フレーム120に取り付けられ、載置面141を水平に保持しながら、2つの昇降棚140を所定の間隔を保持したまま昇降させる。載置面141は、ベルトコンベアである。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段の育苗棚に水耕植物を出し入れするために用いられる搬送装置であって、
前記育苗棚の上方または前記育苗棚に設けられた軌道に対して移動可能に係合する車輪と、
前記車輪を支持するフレームと、
前記フレームから昇降可能に吊り下げられ、前記水耕植物を載置可能な載置面を有する昇降棚と、
前記フレームに取り付けられ、前記載置面を水平に保持しながら前記昇降棚を昇降させる昇降棚駆動部と、
を備える搬送装置。
【請求項2】
前記昇降棚駆動部は、前記フレームに取り付けられる昇降棚用モータと、所定の距離だけ離間して前記フレームに設けられる複数の巻枠とを備え、
前記複数の巻枠の外周面は同じ外径を有し、前記外周面に吊下線が巻回され、
前記複数の巻枠は前記昇降棚用モータにより回転されて、単位時間当たりに同じ長さの前記吊下線を出し入れ可能である、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記昇降棚用モータは、前記昇降棚用モータが回転していないときに前記巻枠の回転を防止するブレーキを備える、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記載置面は、昇降方向と交わる方向に移動可能である、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記昇降棚は複数であって、前記複数の昇降棚のうち、隣接する2つの昇降棚の載置面は、互いに反対方向に移動する、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記隣接する2つの昇降棚のうちの一方が、前記載置面を駆動可能な載置面用モータを備え、他方の昇降棚の載置面は、前記載置面用モータにより駆動される、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
隣接する2つの前記昇降棚は、前記載置面を駆動可能な載置面用モータを各々さらに備え、前記搬送装置は、隣接する2つの前記昇降棚に設けられた2つの前記載置面用モータを駆動するモータドライバをさらに備え、前記モータドライバは、隣接する2つの昇降棚の載置面を、互いに反対方向に移動させるように2つの前記載置面用モータを駆動する、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記昇降棚は、昇降方向と交わる方向に移動可能な載置面と、前記載置面を駆動可能な載置面用モータとを備え、隣接する2つの昇降棚の載置面が互いに反対方向に移動される、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記車輪は、前記搬送装置の移動方向に直交する方向に延びる軸であって、前記フレームの幅方向に突出する両端にフランジを備える、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記車輪に接続され、前記車輪を駆動する走行用モータをさらに備え、
前記フレームは、前記走行用モータを支持する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記車輪は、前記走行用モータから掛け回される伝達部材によって駆動される、請求項10に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕植物を搬送するために用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下に設置される、幼苗用単位植物栽培装置群105、トレイ入替え装置102、成苗用単位植物栽培装置群106、トレイ搬出装置112及びトレイ搬送コンベア140を備える総合植物栽培装置100が知られている。トレイ搬入装置101の搬入口135が地上に設けられる。図19を参照すると、地上で栽培トレイ38に苗を植えて、トレイ搬入装置101で栽培トレイ38を地下に下ろし、単位植物栽培装置1に栽培トレイ38を搬入して苗を成長させる。苗が成長したらトレイ搬出装置112で栽培トレイ38を排出し、トレイ搬送コンベア140に載せてトレイ搬入装置101側に移動させる。そして栽培トレイ38をトレイ搬入装置101に載置し、地上に運び出す(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-141082号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらのトレイ入替え装置、トレイ搬出装置、及びトレイ搬送コンベアは大掛かりな設備であり、既存の栽培装置にこれらを設けることは、多大な改修費のみならず、既存の栽培装置の使用停止を伴う改修期間も必要である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、既存の栽培装置に容易に設置可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明による搬送装置は、多段の育苗棚に水耕植物を出し入れするために用いられる搬送装置であって、育苗棚の上方または育苗棚に設けられた軌道に対して移動可能に係合する車輪と、車輪を支持するフレームと、フレームから昇降可能に吊り下げられ、水耕植物を載置可能な載置面を有する昇降棚と、フレームに取り付けられ、載置面を水平に保持しながら昇降棚を昇降させる昇降棚駆動部とを備える。
【0007】
昇降棚駆動部は、フレームに取り付けられる昇降棚用モータと、所定の距離だけ離間してフレームに設けられる複数の巻枠とを備え、複数の巻枠の外周面は同じ外径を有し、外周面に吊下線が巻回され、複数の巻枠は昇降棚用モータにより回転されて、単位時間当たりに同じ長さの吊下線を出し入れ可能であることが好ましい。
【0008】
昇降棚用モータは、昇降棚用モータが回転していないときに巻枠の回転を防止するブレーキを備えてもよい。
【0009】
載置面は、昇降方向と交わる方向に移動可能であることが好ましい。
【0010】
昇降棚は複数であって、複数の昇降棚のうち、隣接する2つの昇降棚の載置面は、互いに反対方向に移動することが好ましい。
【0011】
隣接する2つの昇降棚のうちの一方が、載置面を駆動可能な載置面用モータを備え、他方の昇降棚の載置面は、載置面用モータにより駆動されてもよい。
【0012】
隣接する2つの昇降棚は、載置面を駆動可能な載置面用モータを各々さらに備え、搬送装置は、隣接する2つの昇降棚に設けられた2つの載置面用モータを駆動するモータドライバをさらに備え、モータドライバは、隣接する2つの昇降棚の載置面を、互いに反対方向に移動させるように2つの載置面用モータを駆動してもよい。
【0013】
昇降棚は、昇降方向と交わる方向に移動可能な載置面と、載置面を駆動可能な載置面用モータとを備え、隣接する2つの昇降棚の載置面が互いに反対方向に移動されてもよい。
【0014】
車輪は、搬送装置の移動方向に直交する方向に延びる軸であって、フレームの幅方向に突出する両端にフランジを備えることが好ましい。
【0015】
搬送装置は、車輪に接続され、車輪を駆動する走行用モータをさらに備えてもよく、フレームは走行用モータを支持してもよい。
【0016】
車輪は、走行用モータから掛け回される伝達部材ベルトによって駆動されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の栽培装置に容易に設置可能な搬送装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】育苗棚を示す正面図である。
図2】育苗棚と、本発明の一実施形態である搬送装置の平面図である。
図3】育苗棚と搬送装置の左側面図である。
図4】搬送装置の平面図である。
図5】搬送装置の正面図である。
図6】搬送装置の左側面図である。
図7】育苗棚と搬送装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1から7を参照して、本発明の第1の実施形態による搬送装置10について説明する。搬送装置10は、水耕植物の種を播いてある播種箱を多段の育苗棚20に移動させるために用いられる。
【0020】
搬送装置10は、育苗棚20(20a~20d)に取り付けられるため、まず育苗棚20について説明する。育苗棚20a~20dは、複数であって、植物工場内の屋内の床面上に縦横を揃えて整列される。図1は、長手方向に並べられた2つの育苗棚20a、20bを示す。育苗棚20a、20bは、上下に延びる8本の柱21a~21hと、重力方向に所定の間隔を開けて柱21a~21hに各々取り付けられる7段の棚22a~22gとを有する。最上段の棚22aの外縁には、2つの育苗棚20a、20bに跨がるように、育苗棚20a、20bの長手方向に延びる軌道23aが取り付けられる。軌道23aは、L字断面を有する2つのアングル材を重ねて溶接して成るクランク型の断面形状を有し、クランク型の一外側面が育苗棚20a、20bに例えばボルト止めにより接続され、他方の外側面が、育苗棚20a、20bから所定の間隔を開けて鉛直上方に延びる(図3参照)。
【0021】
図2を参照すると、4つの育苗棚20a~20dが縦横に整列されている。軌道23aは、長手方向に並べられた育苗棚20aと育苗棚20bとに跨がるように設けられる。軌道23cは、長手方向に並べられた育苗棚20cと育苗棚20dとに跨がるように設けられる。軌道23(23a、23c)に跨がるように、搬送装置10が設けられる。
【0022】
図4~6を用いて、搬送装置10について詳細に説明する。
【0023】
搬送装置10は、車輪を成す4本の車輪軸110a、110bと、フレーム120と、2つの昇降棚140と、昇降棚駆動部170とを主に備える。図3を参照すると、車輪軸110a、110bは、軌道23a、23cに対して移動可能に係合する。フレーム120は、4本の車輪軸110a、110bを支持する。2つの昇降棚140は、重力上方に向く載置面141を有し、重力方向に所定の間隔を開けて、フレーム120から昇降可能に吊り下げられる。昇降棚駆動部170は、フレーム120に取り付けられ、載置面141を水平に保持しながら、2つの昇降棚140を所定の間隔を保持したまま昇降させる。載置面141は、ベルトコンベアであって、後述される。
【0024】
フレーム120は、金属から成る角管あるいはアングル材(以下、角管等という)を平面視長方形形状に形成して成る。フレーム120の長手方向中央において、フレーム120の幅方向に延びる2本の角管等が接続され、この2本の角管等の上方にコントローラボックス161と昇降棚用モータ162が取り付けられる。また、長手方向両端付近に、フレーム120の幅方向に延びる1本の角管等が各々接続され、この角管等とフレーム120の長手方向端辺との下方に走行部181が、上方に昇降棚駆動部170の一部が各々設けられる。
【0025】
まず、昇降棚駆動部170の構成について説明する。コントローラボックス161は、受信機と、AC-DCコンバータと、電磁開閉器とを主に備える。受信機は、搬送装置10の作業者が所持する送信機からの信号を受信して、AC-DCコンバータ及び電磁開閉器の動作を制御し、これにより昇降棚用モータ162の回転、停止、正回転、逆回転を制御する。AC-DCコンバータは、図示されない商用電源から受けた交流電源を直流電源に変換し、受信機に供給する。電磁開閉器は、受信機からの制御に応じて、昇降棚用モータ162に接続される三相交流電源のうち、二相を入れ替える。これにより、昇降棚用モータ162の正回転、逆回転が制御される。昇降棚用モータ162は、三相減速機付きモータから成り、受信機によって制御される図示されない電源から三相交流が印加され、正回転又は逆回転する。また、昇降棚用モータ162は、回転していないときに、後述される従動プーリ174a、174bの回転を防止する電磁ブレーキを備える。昇降棚用モータ162の出力軸には、出力ギア163が取り付けられ、駆動チェーン164を介して駆動ギア165に回転を伝達する。出力ギア163と駆動ギア165による減速比は、昇降棚140を昇降させるために大きな値であることが好ましい。駆動ギア165は、フレーム120の長手方向に延びる駆動軸166に固定されており、駆動ギア165が回転すると、駆動軸166もまた回転される。駆動軸166は、ベアリング167、172に支持され、昇降棚駆動部170に回転を伝達する。出力ギア163と駆動ギア165との回転伝達に駆動チェーン164を用いることにより、歯飛び及び回転伝達する部材の切断を低減できる。
【0026】
昇降棚駆動部170は、昇降棚用モータ162と、2つのベアリング172と、巻き上げ主動プーリ173と、巻枠を成す従動プーリ174a、174bと、従動軸175a、175bと、各々2つのベアリング176a、176bとを主に備える。巻き上げ主動プーリ173は、ベアリング172に支持されてフレーム120に回転可能に固定される。従動プーリ174aは、2つのベアリング176aに支持されてフレーム120に回転可能に固定され、従動プーリ174bは、2つのベアリング176bに支持されてフレーム120に回転可能に固定される。従動プーリ174aと従動プーリ174bとの外周面は、同じ外径を有する。
【0027】
巻き上げ主動プーリ173には、2本の吊下線177a、177bの一端が固定され、巻き上げ主動プーリ173に2本の吊下線177a、177bが各々巻回される。吊下線177a、177bの他端は、従動プーリ174a、174bに掛け回され、フレーム120の重力下方に延び、昇降棚140の長辺に固定される。吊下線177a、177bは、例えば金属、樹脂、又はこれらの組合せから成るワイヤ、ベルト、又はチェーンであり、コグドベルト又はチェーンが好適に用いられる。巻き上げ主動プーリ173に2本の吊下線177a、177bが各々巻回されることにより、巻き上げ主動プーリ173が回転するとき、単位時間当たりに同じ長さの吊下線177a、177bを出し入れ可能である。
【0028】
昇降棚用モータ162が正方向に回転すると、駆動軸166により巻き上げ主動プーリ173が正方向に回転し、吊下線177a、177bを巻き取る。巻き取られる吊下線177a、177bにより、従動プーリ174aと従動プーリ174bとが回転されて、昇降棚140が重力上方に引き上げられる。本実施形態では、吊下線177a、177bによる従動プーリ174a、174bの回転は、昇降棚用モータ162による回転と同等の意味を有する。昇降棚用モータ162が負方向に回転すると、駆動軸166により巻き上げ主動プーリ173が負方向に回転し、吊下線177a、177bを延ばし出す。延ばし出される吊下線177a、177bにより、昇降棚140が重力下方に下げられる。前述のように、従動プーリ174aと従動プーリ174bの外周面は、同じ外径を有するため、単位時間当たりに同じ長さの吊下線177a、177bを出し入れ可能である。巻き上げ主動プーリ173及び従動プーリ174a、174bが前記構成を備えるため、単位時間当たりに同じ長さの吊下線177a、177bを出し入れ可能となり、これにより、昇降棚140、すなわち載置面141は、昇降時に水平を維持できる。
【0029】
次に、走行部181について説明する。走行部181は、搬送装置10を育苗棚20の長手方向に行き来させる機能を有し、走行用モータ182と、従動ギア183a、183bと、6つのベアリング184a、184bと、車輪軸110a、110bとを主に備える。走行用モータ182は、フレーム120に支持される直流直巻モータであって、その回転軸に主動ギア185が取り付けられている。主動ギア185と2つの従動ギア183a、183bとの間には、伝達部材を成す駆動チェーン184が取り付けられ、主動ギア185の回転を2つの従動ギア183a、183bに伝達する。従動ギア183a、183bは、車輪軸110a、110bに各々固定され、これにより、従動ギア183a、183bが回転すると、車輪軸110a、110bもまた回転する。車輪軸110a、110bは、搬送装置10の移動方向に直交する方向に延びる円柱棒状の軸であって、その両端には径が拡大されたフランジ111a、111bが設けられる。いいかえると、車輪軸110a、110bは、フレーム120の幅方向に突出する両端にフランジ111a、111bを備える。図6を参照すると、フランジ111a、111bは、軌道23a、23cと育苗棚20a~20dとの間に位置する。これにより、搬送装置10が軌道23a、23cから脱輪することが防止される。車輪軸110aは、3つのベアリング184aに支持されてフレーム120に回転可能に固定され、車輪軸110bは、3つのベアリング184bに支持されてフレーム120に回転可能に固定される。
【0030】
走行用モータ182が正回転すると、従動ギア183a、183bもまた正回転し、従動ギア183a、183bにより車輪軸110a、110bが正回転する。これにより、搬送装置10が正方向に移動する。走行用モータ182が逆回転すると、従動ギア183a、183bもまた逆回転し、従動ギア183a、183bにより車輪軸110a、110bが逆回転する。これにより、搬送装置10が負方向に移動する。
【0031】
走行用モータ182に直流直巻モータを用いることにより、2つの走行部181の各々に設けられた走行用モータ182どうしを同期させることなく、略同じトルクと回転が得られ、これにより、搬送装置10が安定して移動可能となる。モータで車輪を駆動する一般的な構成では、モータに減速機を介して大径の車輪が取り付けられるが、本実施形態では、走行部181は、減速機を備えず、一般的な大径の車輪の代わりに小径の軸を用いる。小径の軸を車輪として用いることにより、減速機を省略できる。
【0032】
次に、図7を用いて昇降棚140(140a、140b)について説明する。昇降棚140a、140bは、載置面141(141a、141b)と、載置面用モータ142(142a、142b)とを各々主に備える。載置面141a、141bは、昇降棚140a、140bの長手方向に進退するベルトコンベアであって、載置面用モータ142a、142bによって各々駆動される。載置面用モータ142a、142bは、例えばステッピングモータであって、搬送装置10に設けられる図示されないモータドライバからの制御信号に応じて正方向又は負方向に回転し、載置面141を正方向又は負方向に移動させる。
【0033】
搬送装置10に設けられるモータドライバは、図示されない電源から電力を受けるとともに、搬送装置10の作業者が所持する送信機からの信号を受信して、その信号に応じて、昇降棚140a、140bに設けられる全ての載置面用モータ142a、142bの各々に制御信号を送信する。モータドライバは、載置面用モータ142bに送る制御信号を載置面用モータ142aとは逆位相で送ることにより、載置面用モータ142bを載置面用モータ142aとは反対方向に移動させ、これにより載置面141を正方向又は負方向に移動させる。
【0034】
モータドライバは、上方に位置する昇降棚140aの載置面141aが正方向に所定距離だけ移動するように載置面用モータ142aに制御信号を送信するとき、下方に隣接する昇降棚140bの載置面141bが負方向に所定距離だけ移動するように載置面用モータ142bに制御信号を送信する。また、上方に位置する載置面141aが負方向に所定距離だけ移動するように制御信号を送信するときは、下方に隣接する載置面141bが負方向に所定距離だけ移動するように制御信号を送信する。これにより、隣接する2つの昇降棚140の載置面141が、互いに反対方向に移動する。
【0035】
送信機は、例えば「送り」ボタン及び「戻し」ボタンを備える。作業者が「送り」ボタンを押と、モータドライバは、送信機からの信号を受信して、載置面用モータ142a、142bに制御信号を送信して駆動し、これにより、上方に位置する載置面141aを正方向に所定距離だけ移動させ、下方に隣接する載置面141bを負方向に所定距離だけ移動させる。作業者が「戻し」ボタンを押と、モータドライバは、送信機からの信号を受信して、同様にして、上方に位置する載置面141aを負方向に所定距離だけ移動させ、下方に隣接する載置面141bを正方向に所定距離だけ移動させる。
【0036】
昇降棚140の長辺には、昇降棚140の長手方向に所定の間隔を開けて、昇降棚140の重量バランスを確保できる位置に、吊下線177a、177bが取り付けられる。吊下線177a、177bにより、昇降棚140は重力方向に昇降移動する。載置面141は、この昇降方向と交わる方向、好適には直交方向に移動可能である。
【0037】
次に、図2、3、及び7を用いて、搬送装置10の使用方法について説明する。
【0038】
まず、搬送装置10の使用前の状況について説明する。育苗棚20a~20dの外に設置された発芽室内に、植物の種を播いてある播種箱を設置し、発芽させる。播種箱内には、水分を含んだ発泡ウレタンが設置されており、この発泡ウレタンに種が根を伸ばしている。播種箱は、平面視600mm×300mmの大きさであり、約2kgの重量である。また、載置面141a、141bは、例えば幅600mm、長さ6mであり、水切トレーは、例えば平面視1200mm×600mmの大きさである。載置面141a、141bには、5枚の水切トレーを載せることができる。搬送装置10の載置面141bに、水のみが入れられて播種箱が入れられていない5枚の水切トレーが載せられている。以下、作業者が、播種箱を搬送装置10を用いて育苗棚20a~20dに移動させる方法について説明する。
【0039】
はじめに、作業者が、搬送装置10の載置面141bから水切トレーを取り出し、載置面141aに載せる。作業者は、送信機を操作して、発芽室内に置かれた播種箱を載置面141aに移しやすい高さとなるように、載置面141a、141bを上下に移動させる。そして、発芽室に置かれた播種箱の2つを、水切トレー内に人力で移動させ、載置面141aの幅方向に2つの播種箱を並べて置く。この後、作業者は、自らが所持する送信機の「送り」ボタンを押す。モータドライバは、送信機からの信号を受信して、上方に位置する載置面141aを正方向に600mm移動させ、下方に隣接する載置面141bを負方向に600mm移動させる。ここで、正方向は、作業者から離れる方向をいい、負方向は作業者に近づく方向をいう。そうすると、水切トレー内の播種箱もまた600mm移動し、水切トレーの空いている部分が作業者の位置に移動する。次に、作業者は、発芽室に置かれた播種箱の2つを、さらに水切トレーに人力で移動させ、載置面141aの幅方向に2つの播種箱を並べて置く。この後、作業者は、自らが所持する送信機の「送り」ボタンを押す。そして、上方に位置する載置面141aを正方向に600mm移動させ、下方に隣接する載置面141bを負方向に600mm移動させる。そして、所定量の播種箱が入れられて一杯となった水切トレーを移動させ、空いている載置面141aに、載置面141bに載っている空の水切トレーを移す。そして、移動した水切トレー内に播種箱を載せる。これを繰り返すことにより、播種箱が搬送装置10に載せられる。
【0040】
次に、作業者は、送信機を操作して、発芽室から育苗棚20まで搬送装置10を軌道に沿って移動させる。そして、作業者は、送信機を操作して、載置面141aに置かれた播種箱を所望の育苗棚20に移しやすい高さとなるように、載置面141aを上下に移動させる。そして、載置面141aに置かれた播種箱の2つを、育苗棚20に人力で移動させる。この後、作業者は、自らが所持する送信機の「送り」ボタンを押す。モータドライバは、送信機からの信号を受信して、上方に位置する載置面141aを負方向に600mm移動させ、下方に隣接する載置面141bを正方向に600mm移動させる。そうすると、播種箱が作業者に近づくように600mm移動し、次の播種箱が作業者の位置に移動する。次に、作業者は、載置面141aに置かれた播種箱の2つを、さらに育苗棚20に人力で移動させる。この後、作業者は、自らが所持する送信機の「送り」ボタンを押す。そして、上方に位置する載置面141aを負方向に600mm移動させ、下方に隣接する載置面141bを正方向に600mm移動させる。そして、空になった水切トレーを載置面141bに移す。これを繰り返すことにより、播種箱が育苗棚20に載せられる。
【0041】
育苗棚20の高さが、人間の作業範囲を超えている場合、重力上下方向に昇降可能かつ水平方向に移動可能なリフター30に乗って作業することも可能である。
【0042】
本実施形態によれば、既存の育苗棚20に軌道23を取り付けるのみで、搬送装置10を使用可能となるため、既存の栽培装置に容易に設置可能な搬送装置を得る。
【0043】
また、載置面141が播種箱の大きさに合わせて移動するため、人力による播種箱の移動作業を最小限とすることができる。
【0044】
さらに、載置面141が常に水平を保つため、水切トレー内の水が零れることがない。
【0045】
図2では、軌道23a、23cは育苗棚20aと育苗棚20cに設けられているが、育苗棚20aの図2において下方に設けられる育苗棚20との間や、育苗棚20cの図2において上方に設けられる育苗棚20との間に軌道を設けてもよい。また、軌道23a、23cは、育苗棚20a、20bに接続されず、植物工場の天井から吊り下げられてもよい。育苗棚20a、20bの耐荷重にかかわらず、搬送装置10を設置できる。
【0046】
昇降棚用モータ162は電磁ブレーキを備えると説明したが、電磁ブレーキを設けずに、出力ギア163、駆動チェーン164、及び駆動ギア165の代わりにウォームギアを設け、ウォームギアによるセルフロック現象をブレーキとして用いてもよい。
【0047】
なお、載置面用モータ142は、昇降棚140の1つ1つに設けられなくてもよく、複数の昇降棚140のいずれか1つ、あるいは複数に設けられてもよい。この場合、図示されないベルト等の伝達装置によって、載置面用モータ142からの回転力が、載置面用モータ142を持たない昇降棚140に伝達され、その昇降棚140の載置面141が駆動される。例えば、隣接する2つの昇降棚140a、140bのうちの一方の昇降棚140aが、載置面141aを駆動可能な載置面用モータ142を備え、他方の昇降棚140bの載置面141bは、載置面用モータ142により駆動される。このとき、この伝達装置は、ベルトに限定されず、複数の平歯車の組み合わせ、シャフト、かさ歯車、冠歯車、ウォームギア、ラック&ピニオン、コグドベルト、チェーン、又はこれらの組合せ等であってもよい。
【0048】
なお、載置面141bを載置面141aとは平面視180度反転させて設置し、モータドライバが載置面用モータ142a、142bに同位相の制御信号を送ることにより、載置面用モータ142bを載置面用モータ142aとは反対方向に移動させてもよい。
【0049】
育苗棚20が有する棚の数は7段に限定されず、昇降棚140の数は2つに限定されない。
【0050】
走行用モータ182を設けずに、人力で搬送装置10を移動させてもよい。搬送装置10を軽量化及びコストダウンできる。育苗棚20が大荷重に耐えられないものであっても、軽量化された搬送装置10を設置できる。
【0051】
なお、載置面141の移動距離は、播種箱の大きさに応じて決定されることが好ましい。
【0052】
なお、本明細書および図中に示した各部材の大きさ、形状。及び数量は例示であって、これらの大きさ、形状、及び数量に限定されない。
【0053】
ここに付随する図面を参照して本発明の実施形態が説明されたが、記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく、変形が各部の構造と関係に施されることは、当業者にとって自明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7