(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089770
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240627BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/36
A61K8/60
A61K8/67
A61K8/41
A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205165
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智哉
(72)【発明者】
【氏名】園井 厚憲
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB172
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC521
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC811
4C083AC812
4C083AC862
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD661
4C083CC41
4C083EE01
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】油溶性成分を含有しつつも組成物の良好な安定性を確保する上、口腔内における歯面や歯茎、及び口腔内粘膜への油溶性成分の高い吸着性をも確保して、その持続性にも優れる口腔用組成物に関する。
【解決手段】次の成分(A)~(C):
(A)炭素数10以上22以下の炭化水素基を有する不飽和脂肪酸
(B)有機アミン、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、グリチルレチン酸、トコフェロール、チモール、及びメントールから選ばれる1種又は2種以上の油溶性成分
を含有し、成分(A)と成分(C)とのモル比((A)/(C))が0.05以上4以下であり、かつ25℃におけるpHが8.0以上9.6未満である口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)炭素数10以上22以下の炭化水素基を有する不飽和脂肪酸
(B)有機アミン、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、グリチルレチン酸、トコフェロール、チモール、及びメントールから選ばれる1種又は2種以上の油溶性成分
を含有し、成分(A)と成分(C)とのモル比((A)/(C))が0.05以上4以下であり、かつ25℃におけるpHが8.0以上9.6未満である口腔用組成物。
【請求項2】
成分(A)の含有量が、0.005質量%以上0.5質量%以下である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(B)が、アルカリ金属水酸化物、及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
ノニオン界面活性剤の含有量が、0.4質量%以下であるか、或いはノニオン界面活性剤を含有しない請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量とのモル比((B)/(A))が、0.2以上5.0以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプロピルメチルフェノールやグリチルレチン酸等の油溶性成分は、口腔用組成物に種々の作用をもたらし得ることで知られ、従来より種々の口腔用組成物に配合されている。そして、水への溶解性が低い油溶性成分を組成物中に良好に分散又は溶解させるにあたり、その多くはノニオン界面活性剤を併用している。
例えば、特許文献1には、トリクロサン等の油溶性成分とともに、塩化セチルピリジニウム、カルシウム塩及びノニオン界面活性剤を併用した液体口腔用組成物が開示されており、特許文献2には、β-グリチルレチン酸等の油溶性成分とともにノニオン界面活性剤、アルキル硫酸ナトリウムを併用した泡吐出容器入り液体口腔用組成物が開示されている。また、特許文献3には、イソプロピルメチルフェノールと、プロピレングリコール及び/又はグリセリン、特定のノニオン界面活性剤、並びに水溶性高分子化合物を含有するエタノール無配合液体口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-132169号公報
【特許文献2】特開2018―123086号公報
【特許文献3】特開2007-106728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の技術であっても、口腔内における歯面や歯茎、及び口腔内粘膜への油溶性成分の吸着性を高めつつ、組成物の安定性をも確保するには、依然として困難を伴う状況にあり、改善の余地が充分にある。
【0005】
したがって、本発明は、油溶性成分を含有しつつも組成物の良好な安定性を確保する上、口腔内における歯面や歯茎、及び口腔内粘膜への油溶性成分の高い吸着性をも確保して、その持続性にも優れる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のpH域のもと、特定の脂肪酸、特定の塩基性化合物、及び特定の油溶性成分を含有しつつ、かかる脂肪酸と油溶性成分とを特定のモル比で含有することにより、脂肪酸と塩基性化合物とによって、油溶性成分が良好に包埋されたベシクル様の会合体が形成されることを見出した。さらに、この形成されたベシクル様の会合体が、組成物の安定性を良好に保持しながら、歯面や歯茎、及び口腔内粘膜へと油溶性成分を効率的に送達し、送達先において油溶性成分を効果的かつ持続的に吸着させることができることを見出し、本発明を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)炭素数10以上22以下の炭化水素基を有する不飽和脂肪酸
(B)有機アミン、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物
(C)イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、グリチルレチン酸、トコフェロール、チモール、及びメントールから選ばれる1種又は2種以上の油溶性成分
を含有し、成分(A)と成分(C)とのモル比((A)/(C))が0.05以上4以下であり、かつ25℃におけるpHが8.0以上9.6未満である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によれば、油溶性成分を含有しつつも組成物の良好な安定性を確保することができる。また、油溶性成分を送達先である歯面や歯茎、及び口腔内粘膜(以下、「歯面等」とも称する)へと効率的に送達して吸着させ、かつその吸着を有効に持続させることができる。
したがって、油溶性成分による所望の効果を充分に享受しながら、良好な口腔内環境を長期にわたり保持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、「組成物の良好な安定性」とは、本発明の口腔用組成物が洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合には、析出物や濁り、及び分離が発生することなく、透明性が高いことを意味する。また、本発明の口腔用組成物が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合には、含有成分が分離することなく良好に分散又は溶解して均一性が高いことを意味する。
【0010】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、炭素数10以上22以下の炭化水素基を有する不飽和脂肪酸を含有する。成分(A)の脂肪酸が有する炭化水素基の炭素数は、後述する成分(C)の油溶性成分の、歯面等への吸着性やその持続性を高める観点、及び組成物の良好な安定性を確保する観点から、10以上であって、好ましくは12以上であり、より好ましくは14以上であり、さらに好ましくは18以上であり、22以下であって、好ましくは20以下である。かかる炭化水素基としては、直鎖炭化水素基、分岐鎖を有する炭化水素基が挙げられ、具体的には、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、歯面へのフッ化物イオンの吸着量や持続性を高める観点から、パルミトレイン酸、オレイン酸及びリノール酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
【0011】
成分(A)の含有量は、優れた安定性を保持しつつ、歯面等への成分(C)の送達及び吸着を効率的かつ持続的に行う観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.04質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、組成物の良好な安定性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下であり、より好ましくは0.02~0.4質量%であり、さらに好ましくは0.04~0.2質量%であり、よりさらに好ましくは0.05~0.1質量%である。
【0012】
また、成分(A)の含有量は、同様の観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.17~18mmol/Lであり、より好ましくは0.70~14mmol/Lであり、さらに好ましくは1.4~7.0mmol/Lであり、よりさらに好ましくは1.6~3.5mmol/Lであり、またさらに好ましくは1.8~2.145mmol/Lである。
【0013】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、有機アミン、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物を含有する。かかる成分(B)を含有することにより、組成物の良好な安定性を確保することができるとともに、後述する成分(C)を包埋しながら成分(A)とベシクル様の会合体を形成すると考えられる。そしてこのために、歯面等への成分(C)の効率的な送達及び吸着を促進し、かつ持続性の高い吸着を実現することができると考えられる。
【0014】
有機アミンとしては、具体的には、例えば、アルギニン、リシン、及びヒスチジンから選ばれる1種又は2種以上の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールから選ばれる1種又は2種以上のアルカノールアミン化合物が挙げられる。
【0015】
アルカリ金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化リチウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0016】
炭酸塩、重炭酸塩、及びセスキ炭酸塩としては、具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、及びセスキ炭酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0017】
なかでも成分(B)としては、成分(A)とともに、成分(C)を包埋しながらベシクル様の会合体を有効に形成して歯面等への効率的な送達を行う観点、及び組成物の良好な安定性を確保する観点から、アルカリ金属水酸化物、及び塩基性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上の塩基性化合物であるのが好ましく、水酸化カリウム、アルギニン、又はリシンがより好ましい。
【0018】
成分(B)の含有量は、成分(A)とともにベシクル様の会合体を効率的に形成する観点、及び組成物の良好な安定性を確保するから、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.006質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、成分(C)の歯面等への吸着を有効に持続させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.4質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.08質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.03質量%以下であり、またさらに好ましくは0.02質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上0.4質量%以下であり、より好ましくは0.006~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.01~0.08質量%であり、よりさらに好ましくは0.01~0.03質量%であり、またさらに好ましくは0.01~0.02質量%である。
【0019】
また、成分(B)の含有量は、同様の観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1~20mmol/Lであり、より好ましくは0.5~15mmol/Lであり、さらに好ましくは1~10mmol/Lであり、よりさらに好ましくは1.5~4.5mmol/Lであり、またさらに好ましくは2.3~2.5mmol/Lである。
【0020】
成分(B)の含有量と成分(A)の含有量とのモル比((B)/(A))は、成分(A)とともにベシクル様の会合体を効率的に形成させ、組成物の良好な安定性を確保しつつ、成分(C)の歯面等への送達及び吸着を良好に促進する観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、よりさらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(A)の含有量とのモル比((B)/(A))は、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.4~3であり、さらに好ましくは0.6~2であり、よりさらに好ましくは0.8~1.5である。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、イソプロピルメチルフェノール(c1)、トリクロサン(c2)、グリチルレチン酸(c3)、トコフェロール(c4)、チモール(c5)、及びメントール(c6)から選ばれる1種又は2種以上の油溶性成分を含有する。これら成分(C)は、各々口腔内において特有の作用をもたらす。
【0022】
成分(C)の含有量は、歯面等において効率的かつ持続的に吸着し、所望の作用を有効に発揮させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、合計で、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.015質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.02質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、組成物の良好な安定性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.2質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~1.0質量%であり、より好ましくは0.01~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.015~0.3質量%であり、よりさらに好ましくは0.02~0.2質量%である。
【0023】
また、成分(C)の含有量は、同様の観点から、本発明の口腔用組成物中に、合計で、好ましくは0.1~65mmol/Lであり、より好ましくは0.2~30mmol/Lであり、さらに好ましくは0.3~20mmol/Lであり、よりさらに好ましくは0.4~13mmol/Lであり、またさらに好ましくは1~7.5mmol/Lである。
【0024】
成分(C)がイソプロピルメチルフェノール(c1)を含む場合、かかる成分(c1)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。そして、成分(c1)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.02~0.1質量%である。
【0025】
成分(C)がトリクロサン(c2)を含む場合、かかる成分(c2)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.15質量%以下である。そして、成分(c2)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.02~0.15質量%である。
【0026】
成分(C)がグリチルレチン酸(c3)を含む場合、かかる成分(c3)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.45質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。そして、成分(c3)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01~0.5質量%であり、より好ましくは0.02~0.45質量%であり、さらに好ましくは0.05~0.3質量%である。
【0027】
成分(C)がトコフェロール(c4)を含む場合、かかる成分(c4)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.015質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.02質量%以下である。そして、成分(c4)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~0.1質量%であり、より好ましくは0.01~0.05質量%であり、さらに好ましくは0.015~0.02質量%である。
【0028】
成分(C)がチモール(c5)を含む場合、かかる成分(c5)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。そして、成分(c5)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.02~0.1質量%である。
【0029】
成分(C)がメントール(c6)を含む場合、かかる成分(c6)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。そして、成分(c6)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.005~0.5質量%であり、より好ましくは0.01~0.2質量%であり、さらに好ましくは0.02~0.1質量%である。
【0030】
成分(A)と成分(C)とのモル比((A)/(C))は、成分(C)を歯面等へ効率的かつ持続的に吸着させて所望の作用を有効に発揮させつつ、組成物の良好な安定性を確保する観点から、0.05以上であって、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.4以上であり、4以下であって、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1以下である。そして、成分(A)と成分(C)とのモル比((A)/(C))は、0.05以上4以下であって、好ましくは0.1~2であり、より好ましくは0.2~1.5であり、さらに好ましくは0.4~1である。
【0031】
成分(C)がイソプロピルメチルフェノール(c1)を含む場合、成分(A)と成分(c1)とのモル比((A)/(c1))は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
【0032】
成分(C)がトリクロサン(c2)を含む場合、成分(A)と成分(c2)とのモル比((A)/(c2))は、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.4以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2.5以下である。
【0033】
成分(C)がグリチルレチン酸(c3)を含む場合、成分(A)と成分(c3)とのモル比((A)/(c3))は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。
【0034】
成分(C)がトコフェロール(c4)を含む場合、成分(A)と成分(c4)とのモル比((A)/(c4))は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下である。
【0035】
成分(C)がチモール(c5)を含む場合、成分(A)と成分(c5)とのモル比((A)/(c5))は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
【0036】
成分(C)がメントール(c6)を含む場合、成分(A)と成分(c6)とのモル比((A)/(c6))は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。
【0037】
本発明の口腔用組成物は、水を含有する。本発明における水とは、口腔用組成物に配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる水を含有することにより、含有する上記各成分を良好に溶解又は分散させて、所望の効果を充分に発揮させることができる。
【0038】
具体的には、本発明の口腔用組成物が洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99.7質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下であり、さらに好ましくは99.4質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が洗口液や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは50~99.8質量%であり、より好ましくは70~99.5質量%であり、さらに好ましくは80~99.4質量%である。
さらに、本発明の口腔用組成物が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下である。また、本発明の口腔用組成物が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、好ましくは5~70質量%であり、より好ましくは10~65質量%である。
【0039】
本発明の口腔用組成物が練歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物である場合、その水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、歯磨組成物の水分量を、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業社製)を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0040】
本発明の口腔用組成物は、成分(C)の歯面等への効率的かつ持続的な送達及び吸着を行う観点から、ノニオン界面活性剤の含有を制限することが好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル;ポリオキシアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;イソステアリルグリセリルエーテル等のアルキルグリセリルエーテル;モノベヘン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等のアルキルグリコシドから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
好ましいノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0041】
ノニオン界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.4質量%以下であり、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、ノニオン界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0042】
本発明の口腔用組成物は、成分(A)以外のアニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤の含有を制限することが好ましい。
成分(A)以外のアニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、ラウリル硫酸又はその塩、ミリスチル硫酸又はその塩、パルミチル硫酸又はその塩、ステアリル硫酸又はその塩、オクチル硫酸又はその塩、カプリル硫酸又はその塩等のアルキル硫酸エステル又はその塩;アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、α-オレフィンスルホン酸又はその塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸又はその塩等のアルキルスルホン酸又はその塩;アシルグルタミン酸又はその塩、アシルサルコシン又はその塩等のアシルアミノ酸又はその塩;ラウリルメチルタウリン又はその塩等のN-メチル長鎖アシルタウリン又はその塩;モノアルキルリン酸又はその塩等のアルキルリン酸又はその塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド又はその塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル又はその塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸又はその塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルアミンオキシド;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0044】
成分(A)以外のアニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、合計で、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.25質量%未満であり、或いは本発明の口腔用組成物は、成分(A)以外のアニオン界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を含有しないのが好ましい。
【0045】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分のほか、例えば、pH調整剤;殺菌剤;糖アルコール;湿潤剤;増粘剤;研磨剤;保存剤;成分(C)以外の薬効成分やその他の有効成分;香料;色素等を適宜含有させることができる。
【0046】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(C)の歯面等への吸着性やその持続性を高める観点、及び組成物の良好な安定性を確保する観点から、8.0以上であって、好ましくは8.2以上であり、より好ましくは8.5以上であり、さらに好ましくは8.8以上であり、よりさらに好ましくは9.0以上であり、9.6未満であって、好ましくは9.5以下であり、より好ましくは9.4以下であり、さらに好ましくは9.3以下であり、よりさらに好ましくは9.2以下である。そして、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、8.0以上9.6未満であって、好ましくは8.2~9.5であり、より好ましくは8.5~9.4であり、さらに好ましくは8.8~9.3であり、よりさらに好ましくは9.0~9.2である。
なお、本発明の口腔用組成物のpHは、pH電極を用いて25℃で測定した値であり、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、組成物を希釈せずに測定した値を意味し、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、イオン交換水又は蒸留水からなる精製水により10質量%の濃度の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
【実施例0047】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0048】
[実施例1~15、比較例1~7]
表1に示す処方にしたがって、口腔用組成物を調製した。得られた各口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって各測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0049】
《pHの測定》
得られた各口腔用組成物20mlをpH/ION METER F53(HORIBA社製)を用いてpH(25℃)を測定した。
【0050】
《安定性の評価》
得られた各口腔用組成物を25℃の恒温器で30分間保存した後、外観を目視により確認し、下記基準にしたがって組成物の安定性を評価した。
A:均一で透明であった(白濁しておらず、析出物や沈殿物が確認されなかった)
B:概ね均一でやや白濁していた
C:白濁し、半透明であった
D:分離又は沈殿物が確認された
【0051】
《成分(C)の吸着量の測定》
成分(C)の種類に応じてHPLC測定条件を選定し、下記方法にしたがって吸着量を測定した。
なお、各口腔用組成物を調製した直後に「初期の吸着量」として吸着量を測定し、次いで口腔内に残存する口腔用組成物を水ですすいだ後、「すすぎ後の吸着量」として再度吸着量を測定した。
【0052】
シリコーンシート(500mm×500mm、厚さ0.1mm、タイガーズポリマー社製)上に、円柱管(横断面積7.07×10-4m2)を一方の開口端面をシリコーンシートの表面に密着させて載置させた。次に、試料とシリコーンシートとの接触面積が円柱管の内側横断面積と同じになるよう、各口腔用組成物1.0gを円柱管の他端開の口から円柱管内に投入して、円柱管の周面に包囲された円柱管内側のシリコーンシートの表面上に適用させ、組成物とシリコーンシートとを接触させたまま2分間放置した。その後、抽出液1.5mL(下記に示す移動相)を30秒間適用して成分(C)を回収し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記測定条件にしたがって成分(C)の定量(μmol/m2)を行い、「初期の吸着量」とした。
さらに、別途同条件で組成物と接触させたシリコーンシートを50mLビーカー内のイオン交換水50mLに30秒間浸漬した後、ビーカーから取り出して、抽出液1.5mL(下記に示す移動相)を30秒間適用して成分(C)を回収し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又はカスクロマトグラフィ(GC)により、下記測定条件にしたがって成分(C)の定量(μmol/m2)を行い、「すすぎ後の吸着量」とした。
【0053】
・イソプロピルメチルフェノールのHPLC測定条件
装置:HPLC Prominence-i(島津製作所社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:279nm)
カラム:L-column ODS(4.6×100mm、5μm)(一般財団法人化学物質評価研究機構製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水の混液(3:2)+0.1w/v% リン酸
流量:1.0mL/分
【0054】
・トリクロサンのHPLC測定条件
装置:HPLC Prominence-i(島津製作所社製)
検出器:紫外吸光光度法(測定波長:254nm)
カラム:LiChroCART 125-4 Superspher 100 RP-18(Merk社製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水の混液(70:30)+0.1w/v% リン酸
流量:1.0mL/分
【0055】
・β‐グリチルレチン酸のHPLC測定条件
装置:HPLC Prominence-i(島津製作所社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:250nm)
カラム:L-column ODS(4.6×100mm、5μm)(一般財団法人化学物質評価研究機構製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水の混液(3:1)+0.1w/v% リン酸
流量:1.0mL/分
【0056】
・トコフェロールのHPLC測定条件
装置:HPLC Prominence-i(島津製作所社製)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:L-column ODS(4.6×100mm、5μm)(一般財団法人化学物質評価研究機構製)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/水の混液(49:1)+0.1w/v% リン酸
流量:1.0mL/分
【0057】
・チモールのGC測定条件
装置:ガスクロマトグラフ6890N(アジレントテクノロジー社製)
カラム:DB―1MS―UI(内径 0.25mm、長さ 60m、膜厚 250μm)(アジレントテクノロジー社製)
カラム温度:100℃(1分)→[5℃/分昇温]→150℃(1分)→[30℃/分昇温]→260℃(5分)
注入口温度:250℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
【0058】
・メントールのGC測定条件
装置:ガスクロマトグラフ6890N(アジレントテクノロジー社製)
カラム:DB―1MS―UI(内径 0.25mm、長さ 60m、膜厚 250μm)(アジレントテクノロジー社製)
カラム温度:100℃(1分)→[5℃/分昇温]→150℃(1分)→[30℃/分昇温]→260℃(5分)
注入口温度:250℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
【0059】
《吸着の持続性の評価》
「初期の吸着量(質量%)」を基準としたときの「すすぎ後の吸着量(質量%)」が占める割合(%)の値を算出し、吸着の持続性の評価の指標とした。
かかる値が大きい程、成分(C)の歯面等への吸着の持続性が高いことを意味する。
【0060】
【0061】
本発明の口腔用組成物の処方例を表2に示す。
【0062】