IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジークエストの特許一覧

<>
  • 特開-感温センサー 図1
  • 特開-感温センサー 図2
  • 特開-感温センサー 図3
  • 特開-感温センサー 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089771
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】感温センサー
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/06 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G01K11/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205166
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】599140781
【氏名又は名称】株式会社ジークエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】荷口 みどり
(72)【発明者】
【氏名】小田代 健
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056UB01
(57)【要約】
【課題】
化学物質やワックスなどの融解現象を利用した従来の温度感知シールでは、設定温度超過の事実は、この温度感知シールの設置場所において、直接目視しなければ知ることが出来ず、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この従来の温度感知シールでは無理だった。
【手段】
一方の板にのみに表裏を貫通した透孔が形成されている一対の導電性金属板を、直鎖状炭化水素を主成分とするワックスを素材とし、任意の設定温度で融解する固形板状の融解物質を挟んだ状態で絶縁性の密閉容器の内部空間に位置させると共に、前記内部空間はその体積を、前記融解物質が融解した際の体積より小さくなる様に形成し、設定温度超過により、融解物質が融解した際の体積膨張に伴う密閉容器の内圧の上昇により、一対の導電性金属板を圧接させて両者を電気的に接続する様にした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の板にのみに表裏を貫通した透孔が形成されている一対の導電性金属板が、直鎖状炭化水素を主成分とするワックスを素材とし、任意の設定温度で融解する固形かつ板状の融解物質を挟んだ状態で絶縁性の密閉容器の内部空間に位置せしめられていると共に、前記内部空間はその体積が、前記融解物質が融解して液状化した際の体積より小さくなる様に形成されており、前記密閉容器の壁面を貫通して密閉容器外から前記一対の導電性金属板にそれぞれ導線が接続されており、設定温度超過により、それまで固形であった融解物質が融解して液状化する際の体積膨張現象に伴う密閉容器の内部空間の内圧の上昇により、一対の導電性金属板を外側方向から圧接させて両者を電気的に接続し、設定温度超過の事実を前記導線を介して電気信号として取り出せる様にしたことを特徴とした感温センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は感温センサー、詳しくは、温度管理を必要とする各種機器類に取り付け、あらかじめ設定された温度に達したとき、その事実を不可逆的に表示する感温センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種機器類の温度管理は、機器類の安定的な稼動の為に重要であることは言うまでもなく、あらかじめ設定された温度に達したとき、発色現象によってその事実を表示する温度感知シールを対象機器類に貼付して温度管理の用に供することは、従来から広く行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4789083号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在主流となっている温度感知シールは、あらかじめ設定された設定温度で融解して固体から液体に変化する化学物質やワックスなどの融解物質を浸み込ませたシート状の感温材と色紙とを重畳し、この融解物質の融解現象によって、それまで外部から遮蔽され見えなかった色紙の彩色面が透けて見える様にすることにより、設定温度超過の事実を不可逆的に表示するものであり、各種機器類の所望部位に簡単に貼付出来、狭いスペースにも適用可能で、電源等を必要とせず、安価であるので、あらゆる産業界において広く用いられている。
【0006】
しかし、この温度感知シールによる温度管理の場合、これを設置した場所において直接目視しなければ設定温度超過の事実を知ることが出来ず、遠隔地や高い場所、狭隘箇所、あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度管理は、この温度感知シールでは無理であった。
【0007】
設置個所の温度変化を電気的に感知し、電気信号に変え、外部に発出出来る様にするなら、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下にある場所などでの温度感知も可能となるが、その為には、発色現象を用いた上述の温度感知シールよりはるかに複雑な構造のものを必要とし、それに伴い製造コストも上昇するので、安価なことが大きなメリットである従来の温度感知シールの代替には到底なり得なかった。
【0008】
本発明者は、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも、低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が可能となる感温センサーを実現すべく鋭意研究を行った結果、従来の温度感知シールと同等の手軽さで設置出来、感知結果を離れた場所でも知ることが出来る画期的な感温センサーを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一方の板にのみに表裏を貫通した透孔が形成されている一対の導電性金属板が、直鎖状炭化水素を主成分とするワックスを素材とし、任意の設定温度で融解する固形かつ板状の融解物質を挟んだ状態で絶縁性の密閉容器の内部空間に位置せしめられていると共に、前記内部空間はその体積が、前記融解物質が融解して液状化した際の体積より小さくなる様に形成されており、前記密閉容器の壁面を貫通して密閉容器外から前記一対の導電性金属板にそれぞれ導線が接続されており、設定温度超過により、それまで固形であった融解物質が融解して液状化する際の体積膨張現象に伴う密閉容器の内部空間の内圧の上昇により、一対の導電性金属板を外側方向から圧接させて両者を電気的に接続する様にしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
導電性金属板を内蔵した密閉容器を温度測定しようとする機器類の所望部位に貼付したり、所望箇所に載置すると共に、導電性金属板に一端が接続された導線を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球などの表示手段を配置して使用に供するものであり、機器類の貼付部位や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、密閉容器内において導電性金属板に挟まれていた直鎖状炭化水素を主体とするワックスを素材とした固形状の融解物質は融解して液状化し、その体積を大きく膨張させ、内部空間内に充満し、内部空間の内圧を上昇させる。
その際、導電性金属板の一方にはその表裏を貫通した透孔が形成されているので、導電性金属板に挟まれていた融解物質は液状化と共に、この透孔を通って導電性金属板の外側に移動し、内圧の上昇と共に、外側方向から導電性金属板を押圧してこれを接合させ、両者を電気的に接続させる。
【0011】
従って、導電性金属板に接続されている導線が導通し、観測地点において電球の点灯などにより設定温度超過の事実を表示することが出来る。
【0012】
なお、密閉容器の設置個所の温度が設定温度超過後に設定温度以下に低下し、融解物質が再び固体に戻ったとしても、一対の導電性金属板の接合状態はそのまま維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
【0013】
この様に、この感温センサーにおいては、融解温度を自由に設定出来ると共に、融解による液状化に伴い体積を大きく膨張させるという直鎖状炭化水素を主成分としたワックスの特性を巧みに利用し、設置個所の設定温度超過の事実を正確、低コストで不可逆的に知ることが出来、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも、低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に係る感温センサーの一実施例の拡大側面断面図
図2】同じく、一部を切欠いて描いた拡大斜視図
図3】同じく、融解物質の融解が始まり融解物質が液状化した状態の拡大側面断面図
図4】同じく、融解物質の液状化が進み、密閉容器の内圧が高まり、一対の導電性金属板が接合された状態の拡大側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
一方の板にのみに表裏を貫通した透孔が形成されている一対の導電性金属板を、直鎖状炭化水素を主成分とするワックスを素材とし、任意の設定温度で融解する固形かつ板状の融解物質を挟んだ状態で絶縁性の密閉容器の内部空間に位置せしめると共に、前記内部空間はその体積が、前記融解物質が融解して液状化した際の体積より小さくなる様に形成し、設定温度超過により、それまで固形であった融解物質が融解して液状化する際の体積膨張現象に伴う密閉容器の内部空間の内圧の上昇により、一対の導電性金属板を外側方向から押圧して接合させ、両者を電気的に接続する様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例0016】
図1乃至図4を参照しながら、この発明に係る感温センサーの一実施例について説明する。
図1はこの発明に係る感温センサーの一実施例の拡大側面断面図、図2は一部を切欠いて描いたその拡大斜視図であり、図中1は合成樹脂などの絶縁性素材によって形成された中空の密閉容器であり、この実施例においては矩形板状の外観を呈しており、その内部空間2には、一対の導電性金属板3が任意の設定温度で融解して液状化する板状固形を呈した直鎖状炭化水素を主成分とするワックスからなる融解物質4を挟んだ状態で位置せしめられている。
この直鎖状炭化水素を主成分とするワックスは、原油から分離精製されるものであり、パラフィンワックスとも称されている。融解物質4としてこの直鎖状炭化水素を主成分とするワックスを用いることが肝要であり、このワックスは、精製処理やブレンドにより、コンマ以下のレベルまで融解温度(メルティングポイント)を正確に設定することが可能であると共に、融解による液状化に伴い体積を大きく膨張される特性があり、この実施例はこの連鎖状炭化水素を主成分とするワックスの特性を巧みに利用したものであり、密閉容器1の内部空間2の体積は、溶融物質4である直鎖状炭化水素を主成分とするワックスが融解により液状化して膨張した際の体積より小さく設定されている。
【0017】
この実施例は上記の通りの構成を有し、図1に示す状態のものを、温度測定しようとする機器類の所望部位に貼付したり、所望箇所に載置すると共に、導電性金属板3.3に一端が接続された導線9.9を所望の観測地点まで延設し、観測地点に電球9などの表示手段10を配置して使用に供するものであり、機器類の貼付部位や載置箇所があらかじめ設定された設定温度を超えると、図3に示す様に、密閉容器1内において導電性3.3に挟まれていた直鎖状炭化水素を主成分とするワックスからなる固形状の融解物質4は融解して液状化を開始し、その体積を大きく膨張させ、内部空間2内に充満し、内部空間2の内圧を上昇させる。
その際、導電性金属板3の一方には、その表裏を貫通した透孔5が形成されているので、導電性金属板3.3に挟まれていた融解物質4は液状化と共に、図3において矢印Aで示す様に、この透孔5を通って導電性金属板3の外側に移動し、内圧の上昇と共に、導電性金属板3.3は図4において矢印Bで示す様に、内側方向に押圧され、相互に密着し、両者は電気的に接続される。
【0018】
従って、導電性金属板3.3に接続されている導線7.7が導通し、図4に示す様に、観測地点に設置された表示体10としての電球9などが点灯し、設定温度超過の事実を表示する。
なお、密閉容器1の設置個所の温度が設定温度超過後に、設定温度以下に低下し、融解物質4が再び固体に戻ったとしても、一対の導電性金属板3.3の接合状態はそのまま維持されるので、設定温度超過の事実はそのまま不可逆的に表示され続ける。
【0019】
この様に、この実施例における感温センサーにおいては、融解温度を自由に設定出来ると共に、融解に伴い体積を大きく膨張させるという直鎖状炭化水素を主成分とするワックスの特性を巧みに利用し、設置個所の設定温度超過の事実を正確、低コストで不可逆的に知ることが出来、遠隔地や高い場所、狭隘箇所あるいは人体に有害な環境下など、従来の温度感知シールを用いることが困難な場所でも低コストかつ高精度で不可逆的な温度感知が実現出来るすぐれた効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
電力業界、食品製造業界、半導体製造業界、鉄道運送業界など、温度管理を必要とするあらゆる産業分野において大いに利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 密閉容器
2 内部空間
3 導電性金属板
4 融解物質
5 透孔
6 壁面
7 導線
8 電池
9 電球
10 表示手段
図1
図2
図3
図4