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特開2024-8978組織内の経路を閉鎖するシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008978
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】組織内の経路を閉鎖するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/06 20060101AFI20240112BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20240112BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20240112BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61L29/06
A61L29/12
A61L29/14 300
A61B17/00 500
A61M25/06 500
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184845
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2020538643の分割
【原出願日】2019-01-10
(31)【優先権主張番号】18151100.7
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520160657
【氏名又は名称】ザ プロボスト フェローズ スカラーズ アンド アザー メンバーズ オブ ボード オブ トリニティ カレッジ ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガレット ライアン
(72)【発明者】
【氏名】コルム マクガーヴィー
(57)【要約】
【課題】肺の封止に適する医療機器、システムおよび方法の提供が必要とされる。
【解決手段】低襲撃経皮処置を行うシステムであり、先端およびヒドロゲル捌け口(6)を含むヒドロゲル送達針(4)、および25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性において、少なくとも600Paの貯蔵弾性率(G’)およびtanδ(G”/G’)が0.1から0.6を示す注入可能な、ずり減粘性で自己回復性の粘弾性ヒドロゲルを含む医療機器である。このシステムはまたヒドロゲル送達針(4)を受けるための内腔構造を持つ同軸カニューレからなってもよく、ここで、ヒドロゲル送達針は、同軸カニューレを通したヒドロゲル送達針の進行深度をあらかじめ設定された同軸カニューレの最遠端に遠位である深度に制限できるように構成された調節可能な位置決め機構(8)を含む。
【選択図】図8-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル捌け口(6)を備えたヒドロゲル送達針(4)とヒドロゲル送達針(4)を受け入れるように構成された内腔を持つ同軸カニューレ(2)を含む医療機器、および
注入可能なヒドロゲルを含み、
注入可能なヒドロゲルが、針送達後に肺組織浸潤を防ぎ、肺組織を送達針から押し離すのに十分な剛性を示すように構成された粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルであることを特徴とする
低襲撃経皮処置中に形成された肺組織内の経路を閉鎖するシステム。
【請求項2】
注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルが25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性において、少なくとも400Paの貯蔵弾性率(G’)およびtanδ(G”/G’)が0.1から0.8を示す請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルの圧縮弾性率が肺組織の圧縮弾性率より大きい、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
ずり減粘化ヒドロゲルが少なくとも1週間の体内滞留時間を示すように構成された、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
ヒドロゲル捌け口(6)がヒドロゲル送達針(4)の先端(5)の近位に配置された、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
粘弾性ヒドロゲルが連続相ポリマーからなる連続相およびミクロン単位の不溶性ポリマー粒子からなる分散相から構成される、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が100ミクロンより小さい平均寸法である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
連続相ポリマーがヒアルロン酸(HA)またはその塩を含む請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が架橋されたゼラチンから形成される請求項6~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
粘弾性ヒドロゲルがミクロン単位の2~20%(w/v)の不溶性ポリマー粒子を含む請求項6~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
ヒドロゲル送達針(4)が貫通先端(5)を含む請求項6~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
ヒアルロン酸が架橋されておらず、ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が脱水加熱架橋されている請求項8~11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が架橋されたゼラチン粒子である請求項6~12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
システムがヒドロゲル送達針(4)と流体的に接続されるように構成されるシリンジ(15)をさらに含み、粘弾性ヒドロゲルがシリンジ(15)に提供される、請求項1~13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、医療機器の一部として測定尺度(20)を示されるように 、同軸カニューレ(2)を通してヒドロゲル送達針(4)の進行深度を制限するように構成される調整可能な位置決め機構(8)を含む、請求項1~14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
位置決め機構(8)がヒドロゲル送達針(4)に取り付けられた固定ハウジング(16)、固定ハウジング(16)に相対的にヒドロゲル送達針(4)に沿って軸方向に移動するように針に据え付けられた可動ハブ(17)を含み、最遠面(17A)が同軸カニューレルアーロック(2B)の近位面と接するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
測定尺度(20)に調整可能な位置決め機構(8)が備え付けられ、ヒドロゲル捌け口(6)の注射深度Pを示すように構成され、位置決め機構(8)の最遠面(17A)が同軸カニューレ(2B)の近位面と完全に接した場合、ヒドロゲル捌け口(6)が同軸カニューレ(2)の最遠端(2A)からP+Xの距離をおいて位置付けられている、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
システムがさらに同軸カニューレルアーロック(2B)に取り付けられ、同軸カニューレ(2)の内腔に挿入されるように構成された貫通性の遠位端を持つコア針(3)を含む、請求項1~17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
ヒドロゲル送達針(4)がX線不透過性またはX線透過性マーカー(32)を含む、請求項1~18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
X線不透過性またはX線透過性マーカーがヒドロゲル捌け口(6)の遠位に配置される請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
同軸カニューレ(2)の遠位部が同軸カニューレの側壁に作られた一つまたはそれ以上の開き口(2C)に対応する一つまたはそれ以上の開き口(2C)を含む、請求項1~20の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低襲撃経皮処置を安全に行えるシステムおよび医療機器に関する。さらに詳しくは、液体および/またはガスを失うリスクの無い、内部臓器、組織および空洞に到達するシステムおよび医療機器に関する。特に、経胸的に針を到達させる必要がある際に、気胸や血胸のリスクを防ぐか低減させる機器またはその機器の使用法を提供する。また、粘弾性ヒドロゲル栓を体内の臓器、組織または空間の目標深度に並置させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数々の外科的処置は、例えば、胸腔に到達するために胸壁を穿刺するように、器具を目標治療領域に到達させるために穿刺を必要とする。最も一般的な例は、特別な針を使ってがんの疑いのある組織からサンプルを得る、経胸腔針肺生検である。この処置は、模式的に図1A-1D(先行技術)に示すように、典型的にはCT(コンピューター断層撮影)誘導を利用して、画像下に放射線科医によって行われる。生検針が肺の外面を穿孔する際、空気が肺と胸壁の間の胸膜腔と呼ばれる空間に漏れることがある。空気が徐々に肺を胸壁から押し離し、肺虚脱をひき起こし、気胸と呼ばれる合併症をもたらす。もし、気胸が大きな場合、患者に強い痛みや苦悩をもたらす。 この気胸が解消されない場合には、患者の治療や観察のため入院が必要となり、胸膜腔から空気を抜き取るための胸腔ドレーンの外科的挿入をしばしば必要とする。気胸は、患者にかなりの痛みと病的状態をもたらし、担当医の不安とストレスを増加し、病院に不必要で多大なコストをもたらす。経胸腔針肺生検を受ける患者の約33%が気胸を起こし、その約3人に一人が胸腔ドレーンを必要とする。
【0003】
気胸を防ぐ方法は、罹患率と病院支出の両面から大きな関心が持たれている。数々の試みが科学雑誌に記述され、生検針が引き抜かれる際に生検針の経路を接着剤や栓で塞ぐことに焦点を置いている。その目的で、ゼラチンスポンジスラリー、フィブリン接着剤、自家血液、血清上澄みと自家血液の混合物、およびコラーゲンフォームといった数々の異なる物質が注入されている。これらの試みは効果がないことが証明されており、広く取り入れられていない。こうした効果のなさは、注入物質の物理的性質や注入部位の制御不能の結果かもしれない。肺の封止に適するような追加の文献がUS6,592,608Bおよび US6,790,185B1に概要されている。この技術は、サージカルスペシャリティ社(MA, USA www.biosentrysystem.com)のBioSentry(登録商標)として商業的に入手可能である。そのほかの肺や組織の封止に関連する出版物には、US2016120528A、US2006025815A、US2013338636A、US2006009801A、US6770070B、US2017232138A、US2002032463AおよびUS2009136589A(特許文献1~8)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US2016120528A
【特許文献2】US2006025815A
【特許文献3】US2013338636A
【特許文献4】US2006009801A
【特許文献5】US6770070B
【特許文献6】US2017232138A
【特許文献7】US2002032463A
【特許文献8】US2009136589A
【発明の概要】
【0005】
前述の少なくとも一つの問題を解決する医療機器、システムおよび方法の提供が必要とされる。こうした課題は、ここで公開される医療機器、システムおよび方法によって対処される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1A-1Dは、経胸腔針生検処置を説明し、どうのようにして気胸が起こるかを説明する一連の側面図(先行技術)である。
図2図2A-2Dは、送達機器およびヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法の形態を説明する一連の側面図である。
図3図3A-3Bは、送達機器の形態を説明する一連の側面図である。
図4図4A-4Fは、送達機器を使ったヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法の形態を説明する一連の側面図である。
図5図5A-5Bは、送達機器の形態を説明する一連の側面図である。
図6図6A-6Bは、送達機器の様々な形態を示す一連の側面図である。
図7図7A-7Bは、送達機器の異なる位置構成を説明する一連の側面図である。
図8-1】図8A-8Dは、送達機器を使ったヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法を説明する一連の側面図である。
図8-2】図8E-8Hは、送達機器を使ったヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法を説明する一連の側面図である。
図9図9は、ブタの胸膜腔近位の胸壁内での同軸カニューレを示すCTスキャンの一部である。
図10図10は、ブタの肺での送達針と注入されたヒドロゲル栓を示すCTスキャンの一部である。
図11図11A-11Bは、異なる形態の送達機器および胸膜腔に対するヒドロゲル栓の位置の側面図である。
図12図12A-12Cは、エタノール固定したヒドロゲル栓を含む肺組織試料の一連の画像である。
図13図13A1-13B2は、測定機器近位のカニューレ深度ガイドの付いた形態の送達機器を説明する一連の側面図である。
図14-1】図14A-14Dは、一形態の送達機器を使ってヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法を説明する一連の側面図である。
図14-2】図14E-14Hは、一形態の送達機器を使ってヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法を説明する一連の側面図である。
図15図15A-15Cは、ネジ付きの位置決め機構の付いた送達機器の一形態を説明する一連の側面図である。
図16図16は、電子位置決めおよび測定機能、および表示器の付いた一形態の送達機器の側面図である。
図17図17は、胸膜圧測定および表示機能の付いた一形態の送達機器の側面図である。
図18図18A-18Eは、ヒドロゲル栓の異なる特徴の効果を評価する一連の実験の仕様および結果である。
図19図19は、ヒアルロン酸ヒドロゲルの異なる濃度での粘性対せん断速度のグラフである。
図20図20は、肺組織に対するヒアルロン酸ヒドロゲルの異なる濃度での圧縮弾性率の棒グラフである。
図21図21A-21Cは、周波数依存性のヒアルロン酸ヒドロゲルの異なる濃度での動的粘弾特性を提示する一連のグラフである。
図22図22は、ひずみ依存性のヒアルロン酸ヒドロゲルの異なる濃度での動的粘弾特性を示すグラフである。
図23図23A-23Bは、段階的ひずみ速度を受けたヒアルロン酸ヒドロゲルの50mg/mlでの動的粘弾特性を示すグラフである。
図24図24A-24Cは、3D CADモデルを使って作成したヒドロゲル栓位置付けと体積分析の実験の仕様および結果である。
図25図25A-25Cは、生検処置後にヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法を説明する一連の側面図である。
図26図26A-26Cは、側方開口部を持つ同軸カニューレの付いた送達機器の一形態を示す一連の側面図である。
図27図27A-27Bは発射機構の付いた送達機器の一形態を示す一連の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、低襲撃経皮針アクセスおよび鍵穴手術を含む低襲撃経皮処置中に形成された組織内の経路を閉鎖する機器および方法を提供する。本発明は、診断または治療のために体内組織の経皮針アクセスを必要とする処置中の組織内の経路を閉鎖する機器および方法を提供する。本発明は、針生検、組織局在、位置合わせマーカーの設置を含む経皮針アクセスを必要とする処置、およびマイクロ波、ラジオ波焼灼術や、凍結切除を含む切除処置の際に液体および/またはガスの漏洩のリスクを低減する機器および方法の必要性にも対処する。特に、液体やガスの漏洩の傾向がある臓器としては、肺、肝臓および腎臓が含まれる。本発明は、診断または治療のための肝臓や腎臓へのアクセスの際に出血のリスクを低減する機器および方法の必要性に対処する。本発明は、経胸的針アクセスの必要がある際に、気胸や血胸のリスクを防ぐか低減させる機器および方法の必要性に対処する。
【0008】
どの局面に関しても、本発明の方法は、注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルを内臓胸膜の遠方の肺組織の標的位置に到達させる方法を任意に含む。粘弾性ヒドロゲルの物理的性質が肺組織への侵入を防ぎ、その代わりヒドロゲルが組織を送達針から押し離し、肺内の内臓胸膜に近いまたは接する送達針を取り囲む閉鎖された環状の閉塞栓を形成する。一般に、ヒドロゲル栓は送達された際には環状であるが、ヒドロゲル捌け口の形状、数および位置により、他の形状であってもよい。針の側方のヒドロゲル捌け口の使用が環状の閉塞栓の達成のために好ましい。組織浸潤を防ぐため、針の送達後に要求される硬さを示す場合に、粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルがこの目的に理想的であることが判明した。次に、同軸カニューレを送達針に沿って前進させ、閉塞栓を貫き、閉塞栓が同軸カニューレに対して気密なシールを形成する。続いて、肺生検針が同軸カニューレを通して、肺から空気が漏洩することなく疑われる病変から生検試料を取る。同軸カニューレを肺から引き抜く際、閉塞栓の粘弾性によって、カニューレが引き抜かれることにより形成される経路が素早く埋まり、内臓胸膜を圧迫し、胸膜の穴を塞ぐ。
【0009】
本発明の第一の局面によれば、先端(5)(一般に鋭利な先端)およびヒドロゲル捌け口(6)を備えるヒドロゲル送達針(4)を含む医療機器、および
注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルを含む
組織内の経路(例えば、低襲撃経皮処置中に形成された経路)を閉鎖するシステムが提供される。
【0010】
一例として、粘弾性ヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた貯蔵弾性率(G’)が少なくとも400Paを示す。
【0011】
一例として、粘弾性ヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性tanδ(G”/G’)が0.1から0.8を示す。
【0012】
一例として、粘弾性ヒドロゲルが少なくとも1、2または3週間の体内滞留時間を示すように構成される。これにより、組織の針経路が治る間、ゲルが組織に残り続く。一般に、1週間あれば十分であるが、少なくとも2週間の体内滞留時間が好ましい。架橋ポリマーから形成されたまたは架橋ポリマーを含むヒドロゲルが、体内滞留時間を向上する。例えば、4~5%非架橋性のヒアルロン酸と架橋されたゼラチン粒子(脱水加熱による架橋)含有する複合ヒドロゲルによって、肺針生検経路における少なくとも2週間の体内滞留時間が達成される。
【0013】
注入可能な粘弾性ヒドロゲル(以下、“粘弾性ヒドロゲル”、“ヒドロゲル”または“ゲル”)は、一般に組織の浸潤を制限するのに十分な特性を持ち組織を押しのけるように組織に併置されるヒドロゲルである。こうして、ヒドロゲルは組織または臓器内に独自の空間を形成することができる。これを達成するために、標的の注入部位に達した際に、その特性が存在していなければならない。典型的には、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた貯蔵弾性率(G’)が少なくとも400Pa(例えば800~6000 Pa)で動的粘弾性tanδ(G”/G’)が0.1から0.8を示す。
【0014】
組織対抗性の向上と針を囲む均一な栓の形成のために、粘弾性ヒドロゲルは、肺の実質組織と同等またはそれ以上の軸方向圧縮剛性を示すことが好ましく、これは、例えば、Zwick万能試験機を使い5N負荷セルおよび歪み速度3mm/minで測られる。好ましくは、粘弾性ヒドロゲルの圧縮弾性率は、200Paより大きく、より好ましくは400Paより大きく、さらに好ましくは800Paより大きい。
【0015】
任意にどの例でも、注入可能な粘弾性ヒドロゲルは、ずり減粘化ゲルである。例えば、粘弾性ヒドロゲルは、高いずり応力またはせん断率下(すなわち、針を通した注入時)では低い粘度を持ち、ずり応力を取り除く(すなわち、体内の標的部位に送達される)とより高い粘度を持つ(低いずり応力またはせん断率下)ように構成することができる。これにより、これらの部材が単一のヒドロゲル栓を送達部位で形成することが出来る。これらの性質を持つ材料は、’Shear-thinning hydrogels for biomedical applications’, Soft Matter. (2012) 8, 260, ‘Injectable matrices and scaffolds for drug delivery in tissue engineerinG’ Adv Drug Delv Rev (2007) 59, 263-272, および ‘Recent development and biomedical applications of self-healing hydrogels” Expert Opin Drug Deliv (2017) 23: 1-15に概要されている。典型的に、ずり減粘化粘弾性ヒドロゲルの貯蔵弾性率(G’)は周波数1Hzおよび歪み100%での動的粘弾性として200Paより小さく、好ましくは100Paより小さい。
【0016】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、自己回復性である。これは、古い結合が壊れた際に、ヒドロゲルが自発的に分子間に新しい結合を作る能力を意味する。
【0017】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ヒドロゲル生成ポリマー2~6%(w/v)を含む。特に、ポリマーがヒアルロナンである場合、この濃度が、肺用針での理想的な注入性と組織併置性を備えていることがわかった。
【0018】
任意にどの例でも、ヒドロゲル生成ポリマーは、グリコサミノグリカンである。任意にどの例でも、グリコサミノグリカンは、ヒアルロナンまたはその塩である。
【0019】
任意にどの例でも、ヒアルロナンは、分子量1000kDa(1MDa)を超える高分子ヒアルロナンである。
【0020】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、架橋されていない。
【0021】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、架橋されている。
【0022】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、コロイド状のヒドロゲルである。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、好ましくは生体液に不溶な生体適合性のあるポリマー粒子を水和して生成する。任意にどの例でも、ポリマー粒子の分解期間は好ましくは1年未満、より好ましくは6ヶ月未満、さらに好ましくは2ヶ月未満である。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、生物由来のポリマー、例えば、ゼラチン、コラーゲン、フィブリンまたはヒアルロン酸から構成される。任意にどの例でも、ポリマーは、架橋されている。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、約0.2~30%、15~28%または20~27%(w/v)のヒドロゲル生成ポリマーを含む。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性としての貯蔵弾性率(G’)が少なくとも400Pa、より好ましくは少なくとも800Pa、さらに好ましくは少なくとも1000Paである。
【0023】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、多相系であり、例えば、コロイド状のヒドロゲルが連続相のヒドロゲルに分散されてなる二相系である。任意にどの例でも、連続相のヒドロゲルは、ヒアルロナンヒドロゲルから生成されてよく、1~6%、好ましくは2~5%の濃度で存在して良い。任意にどの例でも、ヒアルロナンヒドロゲルは、架橋されていなくても、軽く架橋されていてもよい。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、0.2から30%、8から20%、8から15%、8から12%、または約10%(w/v)の濃度のヒドロゲル生成ポリマーとして存在できる。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、平均粒子径が<100μm(例えば、5~99、20~80または30~80ミクロン)である水和ポリマー粒子から生成される。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、水溶液に不溶性である。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、架橋されたポリマー粒子で生成される。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、平均粒子径(D50)約10~100、20~50、または30~40ミクロンの脱水加熱架橋(DHT)されたゼラチン粉末を含むゼラチンヒドロゲルである。任意にどの例でも、二相系ヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性としての貯蔵弾性率(G’)が少なくとも400Pa、より好ましくは少なくとも800Pa、さらに好ましくは少なくとも1000Paであり、tanδ(G”/G’)が0.1から0.6を示す。任意にどの例でも、二相系ヒドロゲルは、軸方向圧縮試験機で測られた軸方向圧縮剛性が肺の実質組織と同等またはそれ以上である。
【0024】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、脱気されており、すなわち空気および/またはガスが抜かれている。
【0025】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、治療剤を含む。
【0026】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、生分解性である。
【0027】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、2~6%、好ましくは3~5%(w/v)の高分子ヒアルロナンを含む。任意にどの例でも、ヒアルロナンヒドロゲルは、二相系ヒドロゲルを生成するために0.2から30%のコロイド状のヒドロゲルと組み合わせることができる。任意にどの例でも、コロイド状のヒドロゲルは、ヒドロゲル生成ポリマー粒子から構成される。任意にどの例でも、ヒドロゲル生成ポリマー粒子は、ゼラチン粒子、コラーゲン粒子またはヒアルロナン粒子である。
【0028】
任意にどの例でも、ここに記載されたヒドロゲルは、別々の成分から提供されてもよく、例えば、多数のシリンジであったり、シリンジを通して注入前に成分を混合する手段を含んでもよい。
【0029】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムや方法は、粘弾性ヒドロゲルを脱水または半脱水した粉体で提供し、粉体を適切な液体で再構成し粘弾性ヒドロゲルを生成する最初のステップを含む。
【0030】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、相互連結され、機械的に崩壊し可逆的に回復する細孔を持つヒドロゲルとして表現される微孔性のヒドロゲルである。ヒドロゲルが針とシリンジを使った注射によって送達されると、水が細孔から絞り出され、ヒドロゲルが崩壊し、針内の通過を可能にする。一旦ヒドロゲルが針を離れると、針壁による機械的制約が外され、ヒドロゲルは、体内でほぼすぐに原型に回復する。こうしたヒドロゲルは、泡沫のように振る舞い、ネットワークに永久的な損傷を与えることなく90%歪みまで圧縮することができる。
【0031】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ヒドロゲル送達針の近位端に流体的に接続されたシリンジに提供される。
【0032】
任意にどの例でも、シリンジは、200μLから5000μLの粘弾性ヒドロゲル、200μLから2000μLの粘弾性ヒドロゲル、または200μLから1000μLの粘弾性ヒドロゲルを含む。
【0033】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針の直径は、10~24ゲージ、好ましくは16~20ゲージの範囲である。これは、肺の診断的処置に使われる典型的な針の大きさの範囲である。肺、肝臓、腎臓切除と行った治療的処置を含む他の処置には、より大きな送達針(10~16ゲージ)を使っても良い。その他の医療処置には、20ゲージ以上または10ゲージ以上のより小さな針を使っても良い。
【0034】
任意にどの例でも、ヒドロゲル捌け口は、針の針先の近位の間隔に位置する。針のプロフィールに位置するヒドロゲル捌け口によって、針を取り囲む閉鎖された環状の閉塞栓を形成することができ、ヒドロゲルの粘弾特性によって、装置を取り外した際に、閉塞栓の中央の穴が塞がれ、環状の閉塞栓が再形成される。任意にどの例でも、ヒドロゲル捌け口は、針の先端から、好ましくは1から15mm以上、より好ましくは3~8mmの間隔で位置付けられる。
【0035】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は、針の側面に配置された複数のヒドロゲル捌け口を含む。ヒドロゲル捌け口は、針の円周に沿って放射状に配置されても良い。ヒドロゲル捌け口のプロフィールは、円形であることができ、その際、その直径は、ヒドロゲル送達針の直径に応じて0.3~1.5mmの範囲であることができる。ヒドロゲル捌け口のプロフィールは、また、延長された非円形であっても良い。
【0036】
任意にどの例でも、ヒドロゲル捌け口は、素材を十分に切削または侵食によって取り除いて送達針とヒドロゲル捌け口との間にX線不透過性のコントラストを与えた、送達針のX線透過領域で構成される。
【0037】
任意にどの例でも、同軸カニューレは、遠位端の近くの開口部からなる。この開口部は、カニューレの円周に沿って素材を十分に取り除いた、同軸カニューレのX線透過領域で構成される。
【0038】
任意にどの例でも、送達針と同軸カニューレの両方のX線透過領域は、送達針と同軸カニューレが係合した際に、整列する。これにより、X線誘導の際にX線透過領域の目印機能が提供され、この位置での粘弾性ヒドロゲルの注入を可能にする。
【0039】
任意にどの例でも、ヒドロゲル捌け口と同軸カニューレの開口部は、レーザーカットプロフィールまたはパターンを使って、ヒドロゲル材が意図する標的に流れるように経路を作るために、送達針の壁から一部の素材を取り除いて作られる。かなりの量の素材を取り除くと、機器のその部分にX線透過性を与え、CTまたは他の画像法による誘導下でヒドロゲル捌け口の視覚的フィードバックを可能にする。X線透過性(より少ないX線不透過性)は、レーザーカットパターンを使い針の構造的完全性を損なうことなく針壁からかなりの量の素材を取り除くことで達成される。円周上の三角形や冠動脈ステントに用いられる類似の構造を含むレーザーカットプロフィールによって、構造的安定性を維持することができる。代わりに、カットパターンの作成に材料侵食技術を用いても良い。
【0040】
任意にどの例でも、医療機器は、医療機器の一部となす測定尺度によって示すことによって、同軸カニューレを通してヒドロゲル送達針の進行深度を制限するように構成される調整可能な位置決め機構からなり、典型的に位置決め機構の一部を構成する。
【0041】
任意にどの例でも、位置決め機構は、ヒドロゲル送達針に取り付けられた固定ハウジング、固定ハウジングに相対的にヒドロゲル送達針に沿って軸方向に移動するように針に据え付けられた可動ハブを含み、最遠端が同軸カニューレルアーロックの近位面と接するように構成される。
【0042】
任意にどの例でも、目盛尺には、調整可能な位置決め機構が備え付けられ、ヒドロゲル捌け口の注射深度Pを示すように構成され、位置決め機構の最遠端が同軸カニューレの近位面と完全に接した場合、ヒドロゲル捌け口が同軸カニューレの最遠端からP+Xの距離をおいて位置付けられている。
【0043】
任意にどの例でも、位置決め機構は、送達針に対する同軸カニューレ挿入深度を示すように構成されたカニューレ深度ガイドを含み、この挿入深度で、カニューレの最遠端が送達針の上を越えてヒドロゲル捌け口を覆うように距離Y前進し、ここで、位置決め機構は、位置決め機構の調節によってあらかじめ設定されたヒドロゲル捌け口の挿入深度P+Xに比例してカニューレ深度ガイドに示されるあらかじめ設定されたカニューレ挿入深度Yを調節するように構成される。
【0044】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、一緒に動くように位置決め機構の固定ハウジングと軸方向に連結し、可動ハブの遠方に伸びるアームを含む。
【0045】
任意にどの例でも、送達針の針先の近位に目印が施され、ここで、目印と先端の距離(距離Hとして表される)は、同軸カニューレの長さと等しい(同軸カニューレの長さ=H)。送達針が同軸カニューレの内腔に挿入された際、この目印を使って同軸カニューレの遠位端が針先に隣接していることを示すことができる。
【0046】
任意にどの例でも、システムは、さらに同軸カニューレルアーロックに取り付けられ、同軸カニューレの内腔に挿入されるように構成された貫通性の遠位端を持つコア針を含む。
【0047】
任意にどの例でも、システムは、さらにヒドロゲル送達針と流体的に接続されるように構成されるシリンジからなり、粘弾性ヒドロゲルがシリンジに提供される。
【0048】
本発明の一つの局面によれば、物質を組織内の標的位置に送達するのに適した医療機器が提供され、この機器は、内腔を持つ同軸カニューレおよび同軸カニューレの内腔を通して進行するヒドロゲル送達針、遠位針先を含むヒドロゲル送達針、ヒドロゲル捌け口、および同軸カニューレの最遠端に相対してあらかじめ設定された針出口の挿入深度を軸方向に調節できるように定義されたヒドロゲル送達針に関連した位置決め機構を含む。
【0049】
任意にどの例でも、位置決め機構は、ヒドロゲル送達針に追加導入しても良い。
【0050】
任意にどの例でも、医療機器には、同軸カニューレの最遠端に相対した針出口の挿入深度を決定する手段を提供するように構成された測定尺度を含む測定器具が提供される。測定器具は、ものさし、スケール、カリパス、マイクロメーター、または他の機械的またはデジタル測定機構を含むことができる。
【0051】
任意にどの例でも、位置決め機構は、ヒドロゲル送達針に取り付けられた固定ハウジング、針の軸と固定ハウジングに沿って軸方向に移動するように、固定ハウジングに据え付けられた可動ハブを含み、最遠端が同軸カニューレの近位端と接するように構成され、固定ハウジングが、あらかじめ決められた針調整深度を定義できるように、可動ハブと協調して相対的軸方向移動するように構成される。
【0052】
任意にどの例でも、固定ハウジングおよび/または可動ハブは、ユーザーがあらかじめ設定された針挿入深度を調節できるように構成された測定尺度及び目盛りを含む。位置決め機構には、マイクロメーター目盛またはバーニヤ目盛が使われてもよく、目盛の一要素が固定ハウジングに備え付けられ、第二の目盛要素が可動ハブに備え付けられる。
【0053】
任意にどの例でも、固定ハウジングおよび可動ハブは、典型的にネジの嵌合によって同軸的に連結される。
【0054】
任意にどの例でも、位置決め機構は、固定ハウジングと可動ハブを一緒にロックできるように作動する止めネジ(機構)を含む。
【0055】
任意にどの例でも、位置決め機構は、送達針の近位端と関連しており、あらかじめ設定された送達針出口の挿入深度を同軸カニューレに相対して定義できるように軸方向に調節可能で、この挿入深度で、ヒドロゲル捌け口は、同軸カニューレの最遠端からあらかじめ設定された距離に位置し、ここで、位置決め機構は、針に対する同軸カニューレ挿入深度を示すように構成されたカニューレ深度ガイドからなり、この挿入深度で、カニューレの最遠端が送達針の上を越えてヒドロゲル捌け口を覆うように前進し、ここで、位置決め機構は、位置決め機構の調節によってあらかじめ設定されたヒドロゲル捌け口の挿入深度に比例してカニューレ深度ガイドに示されるあらかじめ設定されたカニューレ挿入深度を調節するように構成される。
【0056】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、一緒に動くように位置決め機構の固定ハウジングと軸方向に連結し、可動ハブの遠方に伸びるアームを含む。
【0057】
任意にどの例でも、可動ハブの遠方に伸びるアームの長さは、好ましくはカニューレ挿入深度に等しい。
【0058】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、あらかじめ設定されたカニューレ挿入深度に達した際に、送達針の上を越えたカニューレの遠方の軸方向移動をガイドするように構成される。
【0059】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、カニューレの近位端に接する最遠端および位置決め機構の可動ハブの近位に延長する近位端を持ち、軸方向に調節可能なカニューレ延長部材を含み、これにより、カニューレ延長部材の遠方の移動が針の上を越えたカニューレの遠方の移動を達成する。位置決め機構は、固定ハウジングと可動ハブを調節してあらかじめ設定された針挿入深度を定義した際、位置決め機構の可動ハブの近位端とカニューレ深度ガイドの近位端との間の距離は、好ましくはあらかじめ設定された針挿入深度に等しい。カニューレ延長部材は、針に相対した軸方向の移動のために針に同軸的に据え付けられ、固定ハウジングと位置決め機構の可動ハブの連結を収容できるように引き伸ばされたスロットを含む。
【0060】
任意にどの例でも、本発明は、肺の表面の末端部(内臓胸膜)にヒドロゲルを送達するためヒドロゲル送達針を正確に位置付けるように、例えばCTスキャン(コンピューター断層撮影)といった画像法を使用する。同軸カニューレは、その最遠端が壁側胸膜の近位に配置するように肋間筋に挿入することができる。同軸カニューレのコアが取り除かれた後、画像撮影し、カニューレの最遠端から肺表面(または胸膜腔)までの距離Pが判明する。すると、カニューレの挿入前に、調節可能な深度位置決め機構を備えたヒドロゲル送達針を調節することによって、ヒドロゲル捌け口がカニューレを通して完全に前進した際、ヒドロゲル捌け口がカニューレの最遠端から距離P+Xとなり、ここで距離Xは肺組織内から肺表面(内臓胸膜)までのあらかじめ設定された距離である。そして、ヒドロゲル送達針は、カニューレを通して完全に前進し、ヒドロゲルが、標的位に送達され、針の周りに閉鎖された環状の閉塞栓を形成する。そして、同軸カニューレを針に沿ってシールを越えて前進させ、好ましくは、ヒドロゲル捌け口が前進した位置を覆う。ヒドロゲル送達針の位置決め機構は、ユーザーがヒドロゲル捌け口覆うようにカニューレを針の上を越えてP+Xより大きな距離Yで前進させることができるようにカニューレ深度ガイドを備えても良い。位置決め機構は、針の前進時の正しい位置付けの調節がカニューレ深度ガイドを比例的に調節するように構成されても良い。
【0061】
任意にどの例でも、位置決め機構は、針をカニューレ内に完全に前進させた際に、針上のヒドロゲル捌け口をカニューレの最遠端から、好ましくは3から30mm、またはより好ましくは5から20mmの距離(P+X)に位置づけるように構成される。
【0062】
任意にどの例でも、機器は、同軸カニューレの、患者に相対した軸方向の位置を固定するように構成されたカニューレ深度ロックを含む。カニューレ深度ロックは患者の皮膚に隣接するように位置づけることができ、皮膚接着剤を使用して患者の皮膚に固定しても良い。同軸カニューレは、カニューレ深度ロックを通して挿入することができ、カニューレ深度ロックは、締め付けネジ、コレットまたは他の手段によってカニューレをロックし、同軸針がそれ以上患者に挿入されることを防ぐように固定する。
【0063】
任意にどの例でも、機器は、送達機器の軸方向位置を患者に相対して固定するためにカニューレ深度ロックと送達機器を連結するように構成されたロッキングアームを含む。ロッキングアームは、位置決め機構のどの部分に取り付けられてもよく、また取り外し可能であって良い。
【0064】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針の近位端は、ヒドロゲルのような物質を貯留するポンプやシリンジといった物質送達機器に取り付けるように構成されたルアーロックを含む。
【0065】
他の局面によれば、本発明による医療機器および同軸カニューレを通して前進するように構成されたコア生検針を含むシステムが提供される。
【0066】
任意にどの例でも、システムは、同軸カニューレを通して前進し、組織内生検経路の形成に使用されるように構成されたコア針を含む。コア針は、典型的に針先を持った単一の引き延ばされた棒から構成され、その近位端に取り付けられたオスルアーロックを含む。オスルアーロックは、同軸カニューレのメスルアーロックに取り付けられように構成される。オスとメスのルアーロックが取り付けられると、コア針の針先が同軸カニューレの最遠端から、典型的に1~6mmの距離で延長される。
【0067】
任意にどの例でも、システムは、ヒドロゲル送達針を通して注入に適した粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を含む。
【0068】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ずり減粘化ヒドロゲルである。
【0069】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ヒアルロナンヒドロゲルである。
【0070】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性の貯蔵弾性率(G’)が少なくとも400Pa、より好ましくは少なくとも800Pa、より好ましくは少なくとも1000 Paでtanδ(G”/G’)が0.1から0.6を示す。
【0071】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、約3~6%(w/v)のヒドロゲル生成ポリマーを含む。
【0072】
本発明は、患者の肺の内臓胸膜に隣接する肺の標的位置に粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を送達する方法を提供し、この方法は、以下のステップを含む:
同軸カニューレを同軸カニューレの最遠端が壁側胸膜の近位に配置するように患者の胸壁に挿入する;
患者の肺、胸壁および胸壁に配置された同軸カニューレを示す肺の一部の第一の画像を撮影する;
第一の画像を使って、同軸カニューレの最遠端から肺の標的経路までの距離Pを決定する;
ヒドロゲル捌け口、および同軸カニューレを通して完全に前進した際に針の挿入深度を調節するように構成された位置決め機構を含むヒドロゲル送達針を提供する;
ヒドロゲル送達針の位置決め機構を作動して、針が同軸カニューレを通して完全に前進した際にヒドロゲル捌け口がカニューレの最遠端から距離P+Xとなるように位置付けられるように針の挿入深度を調節する;および
ヒドロゲル栓を、針を通して標的位置に注入し、針を取り囲み任意に内臓胸膜と接する閉塞栓を生成する。
【0073】
任意にどの例でも、距離Pは同軸カニューレの最遠端から胸膜腔までの距離を測って決定される。胸膜腔は、肺と胸壁との境界として定義できる。肺内のあらかじめ設定された距離Xを測定距離Pに加えて、肺内の既知の注入深度を目標とすることができる。
【0074】
任意にどの例でも、方法は、同軸カニューレを、ヒドロゲル送達針を越え、シール栓を貫いて遠方に進行させるステップを含んで良い。
【0075】
任意にどの例でも、位置決め機構は、針に相対し、あらかじめ設定されたカニューレの挿入深度を示すように構成されたカニューレ深度ガイドからなり、この挿入深度で、カニューレの最遠端が送達針の上を越えてヒドロゲル捌け口を覆うように距離Xより大きく前進し、ここで、同軸カニューレを、ヒドロゲル送達針を越え、シール栓を貫いて遠方に進行させるステップは、カニューレ深度ガイドによって案内される。
【0076】
任意にどの例でも、方法は、針が壁側胸膜から1~15mmに位置するように同軸カニューレの胸壁への適切な挿入深度を決定するために、患者の胸壁を像影する最初のステップを含んでも良い。
【0077】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、粘弾性ヒドロゲルである。
【0078】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は、針の横に配置するヒドロゲル捌け口を含む。
【0079】
他の局面によれば、本発明は以下のステップを含む肺針生検を実施する方法を提供する:
患者の肺の内臓胸膜に隣接する肺の標的位置に粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を送達する;
同軸カニューレを、ヒドロゲル送達針を越え、シール栓を貫いて遠方に進行させる;
カニューレを通してヒドロゲル送達針を取り除く;
カニューレを通して生検針を肺内の生検部位まで進行させる;
生検針を作動し、生検部位の肺組織試料を採取する;
カニューレを通して生検針を取り除く;および
カニューレを引き抜くことによって内臓胸膜をシール栓で塞ぐ。
【0080】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針を取り除いた後、生検針を進行させる前に、方法は、コア針を同軸カニューレに挿入し、コア針と同軸カニューレを肺内の生検部位まで進行させ、そしてコア針を取り除くステップを含んで良い。
【0081】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針を取り除く前に、方法は、ヒドロゲル送達針を肺内の生検部位まで進行させ、それからヒドロゲル送達針を越えて同軸カニューレを肺内の生検部位まで進行させるステップを含んで良い。
【0082】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針を越えて同軸カニューレを肺内の生検部位まで遠方に進行させるステップは、カニューレ深度ガイドによって案内される。
【0083】
任意にどの局面でも、本発明は以下のステップを含む肺針生検処置を実施する方法を提供する:
肺の内臓胸膜に隣接する肺に、ヒドロゲル送達針から粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を注入し、針を取り囲み内臓胸膜に接するシール栓を生成する;
ヒドロゲル送達針に沿って同軸カニューレを閉鎖された環状のシール栓を貫いて進行させる;
カニューレを通してヒドロゲル送達針を取り除く;
カニューレを通して生検針を肺内の標的部位まで進行させる;
生検針を作動し、生検部位の肺組織試料を採取する;
カニューレを通して生検針を取り除く;および
カニューレを引き抜くことによって内臓胸膜をシール栓で塞ぎ気胸を防ぐ。
【0084】
他の局面によれば、本発明は以下のステップを含む肺結節局在化処置を実施する方法を提供する:
肺の内臓胸膜に隣接する肺に、ヒドロゲル送達針から粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を注入し、針を取り囲み内臓胸膜に接するシール栓を生成する;
ヒドロゲル送達針に沿って同軸カニューレを閉鎖された環状のシール栓を貫いて進行させる;
カニューレを通してヒドロゲル送達針を取り除く;
カニューレを通して組織染色送達針を肺内の標的部位まで進行させる;
組織染色針を作動し、標的部位の肺組織試料を採取する;
カニューレを通して組織染色針を取り除く;および
カニューレを引き抜くことによって内臓胸膜をシール栓で塞ぎ気胸を防ぐ。
【0085】
他の局面によれば、本発明は、粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を患者の肺の内臓胸膜に隣接する肺に送達し、内臓胸膜に接するシール栓を完全に肺内に生成することを含む方法を提供する。
【0086】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ずり減粘化ヒドロゲルである。
【0087】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ヒアルロナンヒドロゲルである。
【0088】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、分子量1000kDa以上の高分子ヒアルロナンヒドロゲルである。
【0089】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は針の最遠端に配置されたヒドロゲル捌け口を含む。
【0090】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は針の側面に配置されたヒドロゲル捌け口を含む。
【0091】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は針の側面に配置された複数のヒドロゲル捌け口を含む。
【0092】
任意にどの例でも、シール栓は、体積100から3000μlのヒドロゲル、体積100から1000μlのヒドロゲル、または体積200から900μlのヒドロゲルである。
【0093】
任意にどの例でも、本発明の方法は、体積100から3000μlのヒドロゲルを送達することを含む。任意にどの例でも、方法は、体積100から1000μlのヒドロゲルを送達することを含む。任意にどの例でも、方法は、体積200から900μlのヒドロゲルを送達することを含む。任意にどの例でも、方法は、体積200から500μlのヒドロゲルを送達することを含む。
【0094】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、針先および針先から離れて針の横に配置されたヒドロゲル捌け口を持つ針を通して肺に送達される。
【0095】
他の局面によれば、本発明は肺針生検処置中にシール栓を患者の肺に生成し気胸を防ぐための粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)の使用を提供し、ここで、シール栓は内臓胸膜に接する肺に送達される。
【0096】
任意にどの例でも、生検針は、針生検処置中にシール栓を貫通する。
【0097】
任意にどの例でも、同軸カニューレはシール栓を貫通し、生検針は、同軸カニューレを経由してシール栓を貫通する。
【0098】
任意にどの例でも、肺の標的位置は、内臓胸膜から0.2から6.0mm離れた位置にある。
任意にどの例でも、ヒドロゲル材の送達標的位置は、胸腔内である。この場合、ヒドロゲル捌け口は胸腔内部もしくは横切った位置に存在する。
【0099】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針は、横ではなく針の先端にヒドロゲル捌け口を持っても良い。また、ヒドロゲル捌け口は、針の先端および/または針の横にあっても良い。ここに記載される送達機器およびシステムは、肝臓や腎臓といった他の臓器への低襲撃経皮アクセスを必要とする処置中に出血を防ぐ効果的な解決策も提供する。これらの処置は一部または全ての臓器の診断または治療を含む。
【0100】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムおよび粘弾性ヒドロゲルは、外科的処置中に組織を分離するために使用することができる。これは、器具の組織への経路を生成するためにもしくは腫瘍切除や放射線治療といった望まれない刺激から組織を守るために必要である。この目的では、例えば、1~25mlといったより大きな体積の粘弾性ヒドロゲルが送達される。
【0101】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムおよび/または粘弾性ヒドロゲルは、組織や臓器の空隙を満たすために使用できる。
【0102】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムおよび/または粘弾性ヒドロゲルは、隣接する組織や臓器の癒着を防ぐために適用できる。
【0103】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムおよび/または粘弾性ヒドロゲルは、薬剤送達担体として適用できる。粘弾性ヒドロゲルに薬剤または生理活性のある他の物質を搭載し、これらは、体内に埋設後にヒドロゲルから徐々に拡散し、拡散速度はヒドロゲルの組成パラメーターを変えることで簡便に制御できる。
【0104】
任意にどの例でも、ここに記載されるシステムおよび/または粘弾性ヒドロゲルは、動脈や静脈を閉塞するための塞栓剤として使用できる。粘弾性ヒドロゲルを動脈や静脈に配置して、一時的または永久的に血流を閉塞する。この仕様では、ヒドロゲルは、例えば、動脈瘤、静脈瘤、静脈不全、静脈怒張および血管拡張症といった血管症の治療に使用される。
【0105】
代替例として、送達機器は、患者の肺、胸腔または他の臓器、空洞や管の標的位置への非粘弾性ヒドロゲルまたは他の物質の送達に使っても良い。これらの物質は、生体適合性ポリマー剤、粒子、球、小さな拡張バルーン、細胞を含む構造物、治療剤、化学療法剤および懸濁剤を含む。
【0106】
任意にどの例でも、ここに記載される機器および成分は、ポリマー、金属およびセラミックを含んだ生体適合性材料を使って生成される。ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ペバックス(登録商標)およびこれらのコポリマーを含む。金属は、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、コバルトクロムを含む。針およびカニューレは、柔軟性を与えるために完全にまた部分的に屈曲するレーザーカット部や編み組み部を含んでいても良い。また、針およびカニューレは、どちらも、カテーテルタイプの組立体のように、細長く柔軟であってよい。
【0107】
好ましい形態では、システムの組成またはシステム全体が臨床用として滅菌状態で提供できる。ヒドロゲルが充填されたシリンジは、無菌処方、混合、充填および梱包過程を通して調製できる。また、ヒドロゲル充填用シリンジは、最終的に、例えばオートクレーブによる熱または蒸気処理で滅菌しても良い。システムの滅菌には、エチレンオキシド、過酸化水素、γ線および電子ビームを含むその分野で公知の滅菌処理を行うことができる。
【0108】
任意にどの例でも、システムの組成は滅菌に適した梱包で提供され、これには、パウチ、ブリスターパック、袋、処置セット、桶、クラムシェル、スキン梱包、トレー(蓋を含む)、カートン、針鞘を含むが、これらに限定されない。システムの組成の全てが単一の梱包機器として構築できる。あるいは、異なる組成を収容した多数のパッケージを調製し別々に滅菌することができる。システムの組成は、コア針付きの同軸カニューレ、ヒドロゲル送達針、カニューレ深度ロック、ロッキングアーム、粘弾性ヒドロゲルを充填した一つまたはそれ以上のシリンジ、空のシリンジ、皮下注射針、メス、皮膚マーカー、X線不透過ガイド、はさみ、生検針、外科用ドレープ、消毒液、スワブ、スワブホルダー、スポンジ、生理食塩水および組織学試料容器を含むが、これらに限定されない。
【0109】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、ヒドロゲル送達針に追加導入できるように構成できる。これは、カニューレ深度ガイドが必要な時に装着し、必要でない時には取り外せるため、有用である。
【0110】
任意にどの例でも、カニューレ深度ガイドは、送達針を第二の位置で同軸カニューレに固定するように構成された係合またはロッキング特徴を含む。
【0111】
任意にどの例でも、ここに記載される方法は、針を体内に挿入する前にシリンジをゲル(または生理食塩水またな水)で洗い流す最初のステップを含む。シリンジは、体内に挿入する前にヒドロゲルで洗い流しても良い。
【0112】
任意にどの例でも、送達針の異なる針先は肺に挿入した際に出血を防ぐように設計され、例えば、ペンシルポイント型針または類似の非切削性の無傷針先プロフィールで出血を防ぐ。
【0113】
任意にどの例でも、針が肺内を進行する際に壁側及び内臓胸膜層の崩壊を最小限にするため、針先は、尖った傾斜プロフィールを持つように設計される。
【0114】
任意にどの例でも、送達針の先端は鈍くても良い。任意にどの例でも、ヒドロゲル捌け口は、鈍い先端から離れた位置にあっても良い。任意にどの例でも、送達針はバネで作動する鈍いコアと鋭い針先を組み合わせたベレス針先で構成されても良い。
【0115】
任意にどの例でも、送達針は単一の管腔である。任意にどの例でも、送達針は多腔型の管で構成される。多腔型の管は、単一管、もしくは別の管腔(たとえば、ステンレス鋼の針)内にある多数の個別の管から構成されていても良い。管は、異なる捌け口に接続されてもよい。例えば、一つの管腔が針先から離れた位置にある送達捌け口に接続され、これに対し、他の管腔は針先に直接接続されても良い。個々の送達管腔は、ヒドロゲルの送達、装置の送達、計測(圧力、温度、インピーダンス)、組織摘出(例えば、FNAまたはコア生検)に使用されて良い。管は、また、架橋剤、化学療法剤および細胞液(例えば、幹細胞)の送達に使用しても良い。
【0116】
任意にどの例でも、送達針は、単一管で構成されていても良い。単一管は、任意に組織貫通端を含んでいても良い。送達針は、任意に二つまたはそれ以上の管を結合させて構成され、これによって、遠方の管が組織貫通端を形成しても良い。送達針を含むために使用される多様な管は、例えば、ステンレス鋼またはポリマーといった放射線濃度対比素材から作ることができる。
【0117】
任意にどの例でも、送達針は、ガイドワイヤーを通過させる中央管腔を備えことができる。ガイドワイヤーは、体腔や管腔へのアクセスするために提供される。
【0118】
任意にどの例でも、送達針および同軸カニューレは、ポリテトラフルオリン化エチレンやシリコーン系の塗料による表面塗装や表面修飾によって無傷化または摩擦防止特性を付与することができる。任意にどの例でも、同軸カニューレは、体内組織への挿入の力を和らげるために、最遠端をフィレットカットや面取りカットして傾斜プロフィールを持たせることができる。
【0119】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針および同軸カニューレには、組織への挿入深度を監視し、また同軸カニューレの送達針に対する位置を決定するために、外部表面に外部目盛りを付けることができる。こうした深度目盛りはレーザーマーキング、インクパッド印刷や類似の方法で創作できる。目盛りの幅は、典型的に5~10mmである。
【0120】
任意にどの例でも、ここに記載される方法は、主要血管が穿刺されていないことを確証するために、吸引ステップを含む。この吸引ステップは、送達針が標的位置に挿入された時、ヒドロゲル栓が注入される前に行うことができる。これは、ヒドロゲルが血管系に入り込み肺塞栓を起こすことを制限するまたは防ぐために望ましい。暗い血の吸引は、主要血管の穿刺を指し示す。
【0121】
任意にどの例でも、ヒドロゲルが充填されたシリンジは、ヒドロゲル材を注入する前に吸引を必要とするように構成することができる。これは、後方への吸引作動を行わない限りシリンジプランジャーの前進作動が制限されるような機構をシリンジに内蔵することで達成できる。
【0122】
任意にどの例でも、ここに記載される方法は、吸引ステップを行うための追加の空のシリンジを含んでも良い。
【0123】
任意にどの例でも、機器は、送達機器に流体的に取り付けられた二方または三方医療用活栓を含む。ヒドロゲルの充填されたシリンジと吸引シリンジのいずれかまたは両方が医療用活栓を介して送達機器に取り付けられ、ヒドロゲルの充填されたシリンジと吸引シリンジの間で流体送達経路を変える、または制限することができる。これは、より迅速な吸引および注入ステップを可能にし、ヒドロゲル栓の注入前に肺内にかかる時間を減らすのに有利である。
【0124】
任意にどの例でも、シリンジは、送達性を向上させた人間工学的シリンジである。例として、US20090093787 A1‘人間工学的シリンジ’およびUS6616634 B2‘人間工学的シリンジ’に記載されている。システムは、また、シリンジに据え付けられる人間工学的シリンジアダプターを含む。例として、USD675317 S1‘人間工学的シリンジアダプター’に記載されている。シリンジは、粘弾性ヒドロゲルを高圧下で注入する機構を備えても良い。これは、シリンジ補助器の様態であってよい。
【0125】
任意にどの例でも、同軸針は、ゲルが同軸針に入るのを防ぐための内部シール/弁を持っても良い。
【0126】
任意にどの例でも、ヒドロゲル送達針を同軸針内のコア針として使用しても良い。
【0127】
任意にどの例でも、位置決め機構は、また、送達針を、同軸カニューレを通してあらかじめ設定された深度まで素早く前進させるために、例えば、ばね仕掛けの発射機構のような発射機構を含む。必要とされる距離は、貫通深度の設定距離であるか、標的注入位置に対する同軸カニューレの位置を考慮して調節できる。機器は、撮影した画像から取られた測定値を使って位置づけることができる。
【0128】
本発明のシステム、機器および方法は、より正確な位置決めのためのX線透過性のマーカーを持つコア付きの同軸針を使用しても良い。
【0129】
任意にどの例でも、位置決め機構を送達針へのロックおよびロック解除を可能とするため、ロックする特徴を位置決め機構に提供しても良い。この特徴によって、位置決め機構が送達針と独立させることができ、異なった長さの送達針を使用することができ、異なる長さの同軸カニューレと互換性を持つことができる。
【0130】
任意にどの例でも、送達機器は、引き延ばされた屈曲性の構成とすることができ、それにより、内視鏡に通すことができるようになり、内視鏡を介してあらかじめ設定された注入深度での注入を行うことができる。引き延ばされた部材は、送達機器の同軸カニューレと送達針要素の両方を含むことができる。
【0131】
任意にどの例でも、送達機器は、治療的効果をもたらすのに十分なエネルギーを標的位置に送達できる一つまたは多数のエネルギー送達要素を備えることができる。要素は、針の最遠端、または、針の最遠端の近位に位置することができる。送達されるエネルギーは、電気、ラジオ波、熱(加熱および冷却効果を含む)、マイクロ波、短波または音響エネルギーの形態であってよい。エネルギー送達機器は、制御およびフィードバック機能を含む電源に近位端で接続される。送達機器には、治療中に治療部位に冷却剤を提供する灌漑経路を組み入れることができる。この治療の典型的な適用は、がんの切除を含む。
【0132】
任意にどの例でも、送達機器は、局所および/または周囲組織からの電気的、化学的、光学的、音響、機械的および熱的パラメーターを含むフェードバックを提供するセンサーを備えることができる。センサーは、ヒドロゲル捌け口に近接して、あるいは遠位または近位に配置できる。
【0133】
他の局面によれば、本発明は以下のステップを含む肺処置(例えば、肺針生検または肺切除)を実施する方法を提供する:
同軸カニューレを肺に進行させ、ここで、同軸カニューレの遠方部には一つまたはそれ以上の開口部を側壁に持つ;
カニューレを通して肺処置針を肺内の処置部位まで進行させる;
肺処置針を作動し、処置部位で肺処置を行う;
カニューレを通して肺処置針を取り除く;
同軸カニューレを通してヒドロゲル送達針を前進させ、ここで、ヒドロゲル送達針の遠方部には、同軸カニューレの側壁に一つまたはそれ以上の開口部に対応する一つまたはそれ以上の開口部を側壁に持つ;
同軸カニューレの一つまたはそれ以上の開口部とヒドロゲル送達針を整列させる;
肺に、ヒドロゲル送達針の一つまたはそれ以上の捌け口および同軸カニューレの一つまたはそれ以上の捌け口から粘弾性ヒドロゲル(例えば、本発明の粘弾性ヒドロゲル)を注入し、同軸カニューレを取り囲み内臓胸膜に接するシール栓を生成する;および
シール栓を通して同軸カニューレおよびヒドロゲル送達針を引き抜く。
【0134】
一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは肺の内臓胸膜に隣接部に送達される。一つの形態によれば、肺処置針は生検針である。一つの形態によれば、肺処置針は組織切除プローブである。
【0135】
他の局面によれば、本発明は、連続相および分散ポリマー相を含む複合粘弾性ヒドロゲルを提供する。一つの形態によれば、分散相は、コロイド状ポリマーである。例としては、ゼラチンやコラーゲンを含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは2~20%のコロイド状ポリマーを含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは5~15%のコロイド状ポリマーを含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは8~12%のコロイド状ポリマーを含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは約10%のコロイド状ポリマーを含む。一つの形態によれば、コロイド状ポリマーはゼラチンまたはコラーゲンを含む。一つの形態によれば、連続相ポリマーは、ヒアルロン酸(またはその他のグリコサミノグリカン)を含む、または、構成される。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは約2~6%の連続相ポリマー(すなわちヒアルロン酸)を含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは約3~5%の連続相ポリマー(すなわちヒアルロン酸)を含む。一つの形態によれば、粘弾性ヒドロゲルは約4~5%の連続相ポリマー(すなわちヒアルロン酸)を含む。一つの形態によれば、連続相ポリマー(すなわちヒアルロン酸)は、架橋されていないか、軽度に架橋されている。
【0136】
一つの形態によれば、本発明は、2~6%のポリマー(すなわちヒアルロン酸)を含む連続相ポリマーおよび典型的に平均寸法100ミクロンより小さい架橋ポリマーマイクロビーズの形態の2~20%のコロイド状ポリマー(すなわちゼラチン)を含む分散相ポリマーを含む複合粘弾性ヒドロゲルを提供する。
【0137】
一つの形態によれば、本発明は、2~6%のヒアルロン酸を含む連続相ポリマーおよび 平均寸法100ミクロンより小さい架橋ポリマーマイクロビーズの形態の5~15%のコロイド状ポリマーを含む分散相ポリマーを含む複合粘弾性ヒドロゲルを提供する。
発明の詳細な説明
ここに記載される全ての出版物、特許、特許出願およびその他の参照文献は、個々の出版物、特許、特許出願が殊に個別に参照として組み入れられ、その内容全体が引用されたかのように、あらゆる目的で全て参照として組み入れられる。
【0138】
ここに公開される例示的な実施形態の示す高い効能は、送達されたヒドロゲルの特異の粘弾性による。ヒドロゲルは、流動性と弾性の両方の特性を持つ。弾性は可逆性の変形である、つまり、変形した物体は元の形に戻る。弾性固体の機械的特性は、応力を加えて変形の歪みを測って調べることができる。流動特性は流れに対する抵抗性(すなわち粘性)として定義され、液体に二つの表面の間でせん断力を加えた際、流動に対する抵抗性を求めることにより、測定できる。粘弾性によるゲルの物理特性は、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、tanδ(G”/G’)などといった動的粘弾特性によって表される。貯蔵弾性率は組成の剛性を特徴付け、組成の運動からのエネルギーの貯蔵を表す。粘性率は、粘性散逸として失われるエネルギーを表すため、損失弾性率としても知られる。tanδは、粘性率と弾性率の比、tanδ=G”/G’である。高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率は、高い弾性を示し、硬いゲルを意味する。逆に、高い損失弾性率と低い貯蔵弾性率は、粘性の高いゲルを意味する。
【0139】
ここに記載されるヒドロゲルが、例えば、気胸を防ぐために肺周辺で使用される生分解性のヒドロゲル栓といった生物医学材料として使われる時、ゲルのより大きな剛性と貯蔵弾性率は、組織間の密閉性と障壁効果を向上すると考えられる。また、特に、弾性が周囲の組織の弾性より大きい場合には、標的部位での延長された期間(滞留時間の増加)にも寄与する。ヒドロゲルの流動的性質は、高いtanδによるもので、これは、静止時に周辺組織との並置を向上する。この流動特性は、また、ヒドロゲルに自己修復性をもたらす。
【0140】
それ故、そのような用途のゲルは、粘性と弾性のバランスが良くとれていることが望ましい。もし、ヒドロゲルのゼロせん断粘度が高すぎて、ゲルが十分なずり減粘化性を示さない場合には、送達機器を通した標的部位への注入が困難になるかもしれない。ゲルは、液体の漏えいを防ぐ障壁を造るために周囲の組織に容易に併置されないかもしれない。また、一旦針を引き抜かれた際、ゲルが針経路に容易に流れ戻ることができないかもしれない。一方、tanδが0.8を超えると、ゲルは液体のように挙動し、周囲の組織に浸潤したり、針経路から排出されるかもしれない。つまり、ここに記載されるヒドロゲルが、肺生検用の粘性栓として最も適した物理化学的および流動学的特性を備えていると考えられる。
【0141】
故に、“粘弾性ヒドロゲル”という用語は、粘弾特性を示すヒドロゲルを指す。その貯蔵弾性率(G’)は、一般的に400Paより大きく、より好ましくは800Paより大きく、さらに好ましくは1000Paより大きい。粘弾性ヒドロゲルは、周波数1Hzの動的粘弾性のタンジェントデルタ(tanδ; G”/G’)で0.01から0.8、好ましくは0.1から0.5、より好ましくは0.2-0.5である。好ましくは、粘弾性ヒドロゲルは、25℃で周波数1Hzの動的粘弾性で200から6000 Pa、より好ましくは400から2000 Paの損失弾性率(G”)を示す。粘弾性ヒドロゲル、例えば、貯蔵弾性率(G’)や生体内滞留時間を増加させるといった 適切な特徴を付与するために、架橋されていないか、軽度に架橋されているか、強固に架橋されていてもよい。
【0142】
ここでヒドロゲルに適用される“ずり減粘化”という用語は、ずり応力がヒドロゲルにかかった時、貯蔵弾性率(G’)が減少し、tanδが増加して総体的な粘度が低下することを意味する。この特性は、ヒドロゲルに注入性を付与し、肺生検(17~20ゲージ)や肺切除(10~14ゲージ)といった低襲撃性処置に使用される細い針を通した注入を可能にする。ここに記載されるずり減粘化ヒドロゲルは、周波数1Hzおよび100%歪みの動的粘弾性で典型的に1~100 Pa、より好ましくは1~50 Paの貯蔵弾性率(G’)さらに、ここに記載されるヒドロゲルは、自己修復特性を持ち、ずり応力が取り除かれた際に、高い貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を保持する。
【0143】
ここに記載されるヒドロゲルは、ずり減粘化特性を持つ。つまり、ずり応力がかかると、貯蔵弾性率(G’)が減少し、tanδが増加し、総体的な粘度が低下する。この特性により、ゲルが肺生検といった低襲撃性処置に使用される細い針を通した注入を可能にする。ここに記載されるゲルは、周波数1Hzおよび100%歪みの動的粘弾性で100 Paより小さい、好ましくは50 Paより小さい貯蔵弾性率(G’)の物理特性を示す。さらに、ここに記載されるゲルは、素早い揺変回復特性を示し、高いせん断速度が取り除かれると、直ちに高い貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を保持する。
【0144】
動的粘弾性および動的粘性の測定は、以下の条件でティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製AR2000型のレオメーターを使って行われた。
測定方法:振動法、ひずみ制御
測定温度:25℃
形状:コーンプレート角度4°
測定形状:4cm
切断間隙:112μm
周波数:1 Hz
ここで使われる本発明の粘弾性ヒドロゲルに適用される“自己修復”という用語は、ヒドロゲルが再構成できる能力を指す。“自己修復”は、また、素材内の古い結合が破壊された時にヒドロゲルが自発的に新しい結合を作る能力を指す。例えば、粘弾性ヒドロゲルの環状のシール栓が送達針の周囲に送達された時、針が取り除かれると自己修復性の粘弾性ヒドロゲルが流れ戻り、典型的に単一体の結束した基質からなる非環状のシール栓を作る。
【0145】
任意にどの例でも、閉塞性のヒドロゲル栓は生体内環境と独立して経路の中央を通じて自己修復することができる。これは、ヒドロゲルが時間依存的な粘弾的流動機構によって経路を充填する能力を指す。
【0146】
任意にどの例でも、閉塞性のヒドロゲル栓は生体内環境に依存して経路の中央を通じて自己修復することができる。ヒドロゲル栓にかかる生体内環境からの応力が途切れのない栓に比べてより短い時間で自己修復する能力を向上させるかもしれない。
【0147】
任意にどの例でも、ヒドロゲルは、周囲環境からの影響無しに独自の重量下で自己修復できるべきである。これは、ヒドロゲルの単一の塊、例えば、約0.5mlのヒドロゲルを使って生成したヒドロゲルの球によって実証される。17ゲージの針を中央に通過させて引き抜いて円筒状の経路を作ることができる。円筒状の経路を中央に持つ球は、縁台の上に、円筒状の経路の軸が縁台と垂直になるように静置することができる。経路の大きさを経時的に測ることができる。ここに記載される本発明の粘弾性ヒドロゲル、特に2~6%のヒアルロン酸を含むヒドロゲルについて言うならば、以下のように観察された:最初は球体中の経路が可視されるが、時間が経つにつれ(ヒドロゲル組成によるが、1~15分)、ヒドロゲルの自己修復によって、この経路が塞がる。これは、ヒドロゲルの時間依存的流動の結果である。
【0148】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルの一部または全部がヒアルロナンヒドロゲルを含む。ヒアルロナンポリマーは、3次元基質を通して連続層を形成する。任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは高分子ヒアルロナンヒドロゲルである。任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ずり減粘化(ずり応力がかかると粘度が減少する)ヒドロゲルである。粘弾性ヒドロゲルを形成するために採用されるポリマー材料には、ヒアルロナン、特に高分子ヒアルロナンが含まれる。本発明での使用に適する他のヒドロゲル材は、‘Shear-thinning hydrogels for biomedical applications’, Soft Matter, (2012) 8, 260, ‘Injectable matrices and scaffolds for drug delivery in tissue engineerinG’ Adv Drug Deliv Rev (2007) 59, 263-272, および ‘Recent development and biomedical applications of self-healing hydrogels’ Expert Opin Drug Deliv (2017) 23: 1-15の総説論文に概要される。
【0149】
ここで使われる“ヒアルロナン”、“ヒアルロン酸”または“HA”は人間の細胞外基質の一部を形成するアニオン性非硫化グリコサミノグリカンを指し、繰り返される二糖 4)-β-d-GlcpA-(1→3)-β-d-GlcpNAc-(1→またはそのいずれかの塩からなる。ヒアルロナンは、ヒアルロン酸の共役塩基であるが、2つの用語は交換可能なように使われる。ヒアルロン酸の塩が使われる時、塩は一般にナトリウム塩であるが、カルシウム塩やカリウム塩も使用できる。ヒアルロン酸またはヒアルロナンは、バクテリアを含めたどのような起源からでも得られる。Streptococcus equi由来のヒアルロン酸ナトリウム塩は、シグマ・アルドリッチによって製品照会番号53747-1Gおよび53747-10Gとして販売される。微生物を使ったヒアルロン酸の製造は、Liu et al (Microb Cell Fact. 2011; 10:99) に記載される。用語は、また、ヒアルロン酸の誘導体、例えば、US2009/0281056およびUS2010/0197904に公開されるカチオン基で誘導されたヒアルロン酸やMenaa et al (J. Biotechnol Biomaterial S3:001 (2011)), Schante et al (Carbohydrate Polymers 85 (2011)), EP0138572、EP0216453、EP1095064、EP0702699、EP0341745、EP1313772およびEP1339753に公開される他の官能基化された誘導体を含む。
【0150】
ヒアルロン酸は、その分子量によって分類される:高分子(好ましくは>1000kDa (1MDa))、中分子(好ましくは250-1000kDa)、低分子(好ましくは10-250kDa)およびオリゴヒアルロン酸(好ましくは<10kDa)。ヒアルロン酸ヒドロゲル粘度への分子量の影響は以前に報告されている。最終的なゲルの剛性と粘度は分子量と溶液濃度の両方に依存する。異なる分子量のヒアルロン酸流動学的特性の研究において、Falconeら(J Biomed Mat Res, 76A, 4, pp.721-728)は、ヒアルロン酸の流動学的および結束特性において、高分子ヒアルロン酸が低分子ヒアルロン酸に比べて相当に結束性があることを見出した。高分子ヒアルロン酸ヒドロゲルの傷口での存在が瘢痕の低減につながることが証明されている。高分子ヒアルロン酸は、抗炎症性であり、血管新生の増強および免疫抑制の増強をもたらすことが示されている。Jiang らは、高分子ヒアルロン酸が肺損傷において上皮細胞死から守ることを見出した”Regulation of lung injury and repair by Toll-like receptors and hyaluronan” Nature Medicine (2005) 11, 11 1173-1179。さらに、高分子ヒアルロン酸の吸入は、細菌性鼻咽頭炎、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、喘息といった肺疾患の治療に適用されている。一部の実施例では、ヒドロゲルのヒアルロン酸組成は、架橋されておらず、他の治療薬を含まない。この使用に適する可能性のある特徴を持ったヒアルロン酸をベースとするヒドロゲルは、US9492474B2 ‘Compositions of hyaluronan with high elasticity and uses thereof’に記載される。この文献は、高濃度、高分子量ヒアルロン酸から構成されるElastovisc(商標)という材料を説明する。その意図する用途は、痛みの緩和と骨関節炎の治療の為の関節への注射である。
【0151】
ここで使われる‘ヒアルロナンヒドロゲル’という用語は、好ましくは、水分散媒中の3次元のヒアルロナンポリマーのネットワークを含む。ヒアルロナンポリマーは、3次元の基質の至る所で連続相を形成する。任意にどの例でも、ヒアルロナンポリマーは、架橋されていない。任意にどの例でも、ヒドロゲルは、架橋剤を使用していない。任意にどの例でも、基質は、ホモポリマーから形成され、典型的にヒアルロン酸ホモポリマーである。任意にどの例でも、ヒドロゲルは、実質的に他のポリマーを含まない単一ゲルシステムである。任意にどの例でも、ヒドロゲルは、pH調整されているか、緩衝液によって生理的環境のpHと合わせてある。任意にどの例でも、基質は軽度に架橋されている。この目的では、ヒアルロン酸を架橋することが知られているどの架橋剤でも使用できる。架橋剤は、エピクロロヒドリン、ジビニルスルフォン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ブタン、(または、1,4-ビス(グリシジルオキシ)ブタンまたは1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル=BDDE)、1,2-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)エチレン、1-(2,3-エポキシプロピル)-2,3-エポキシシクロヘキサンを含む。
【0152】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、少なくとも二つのヒドロゲルを均等に混合し均質のヒドロゲル混合物として分散した‘多成分系’のヒドロゲルから構成される。各ヒドロゲルが、ヒドロゲル混合物の全体を通して連続相を形成する。この構成は、二つ以上のヒドロゲルから構成される半相互侵入高分子(ヒドロゲル)ネットワークまたは相互侵入高分子(ヒドロゲル)ネットワークとも呼ばれる。例として、ヒアルロナンヒドロゲル(1~5%の濃度範囲)がメチルセルロースヒドロゲル(3~15%の濃度範囲)と混合できる。同様に、二つ以上のヒドロゲルを組み合わせて、単一の結束したネットワークを形成し、ここで、各ヒドロゲルがネットワーク全体の特性を向上させる。各ヒドロゲルの特性は、剛性や粘度の増加、注入性の向上(ずり減粘化)自己修復性の向上、ヒドロゲルの体内滞留(生分解)時間の延長、止血性の付与、抗菌特性の付与、抗炎症性の付与、抗凝固性の付与、凝固促進性の付与、着色および刻印性能(可視光およびX線検出)の付与、診断または治療効果の付与(例えば、化学療法)、過酷な熱(高温および低温)に対する抵抗性の付与、生体適合性の向上、およびヒドロゲル全体の調整と製造性の向上のために提供される。これら、一つ以上のヒドロゲルを架橋して、例えば、ヒドロゲルの生体内の滞留時間の増加といった特性の向上することができる。
【0153】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、“コロイド状ヒドロゲル”であり、これは、小さなヒドロゲルのサブユニットから構成される組成が組み合わさり、均質の結束した基質を形成することを指す。コロイド状ヒドロゲルにおいて、溶液または分散媒は典型的に水または食塩水であるが、他の生体適合性の液体であっても良い。コロイド状ヒドロゲルは、典型的に、例えば、ナノ粒子、ミクロ粒子、ミクロカプセル、ミクロ繊維、ミクロスフェアおよび/または破断された粒子など、ナノ規模のまたは微細化された生態適合性ポリマー粒子を水和して生成される。粒子はその形状および大きさにおいて均一であっても不規則であっても良い。ポリマーの例には、ゼラチン、コラーゲン(例えば、可溶性コラーゲン)、アルブミン、ヘモグロビン、デキストラン、フィブリノゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、カゼインといったタンパク質、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを含む。ポリマーは、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ハイランまたは硫酸コンドロイチン)、デンプン誘導体、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、キシラン、アガロース、アルギン酸塩、キトサンといった多糖類およびそれらの組み合わせを含む。さらに他の代替物として、ポリマーは、ポリエチレングリコール類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリアクリルアミド類、ポリビニルポリマー類、ポリラクチドグリコリド類、ポリカプロラクトン類、ポリオキシエチレン類といった非生物性のヒドロゲル生成ポリマー、それらの誘導体、および組み合わせを含む。これらの粒子は、物理的(加熱、冷却、照射)および科学的架橋を含む、この分野で知られる様々な手段で架橋できる。例として、架橋されたポリマーは、ゼラチンを高温で長時間脱水し不溶性とする脱水加熱架橋されたゼラチン粉末を含む。典型的に、この過程には100℃を超える温度を使い、乾燥熱または真空熱を使うことができる。脱水の進行によるゼラチン粉末の架橋の程度が、水の吸収による膨張の程度に影響する。任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、約0.2~30%、15~28%または20~25%(w/v)のヒドロゲル生成ポリマーを含む。
【0154】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、“二相性”ヒドロゲルであり、これは、コロイド状ヒドロゲルを連続相ヒドロゲルと(混合または混交によって)組み合わせて生成したヒドロゲルを指す。コロイド状ヒドロゲルは、連続ヒドロゲル相内に均等に分散された相を形成する。天然または合成の生分解性ポリマーを使って連続相を形成することができる。その一例は、グリコサミノグリカン類、例えば、ヒアルロナンおよびその誘導体である。ヒアルロナンは、好ましくは、粘弾特性、特にそのずり減粘化性および自己修復性を保持するために架橋されていないか軽度に架橋されている。任意にどの例でも、ヒアルロナンは、1~6%、好ましくは3~5%の濃度で提供される。任意にどの例でも、ヒアルロナンが、二相性ヒドロゲルの流動学的特性を支配する。先に述べたように、様々な生分解性のポリマー(コラーゲンとゼラチンがその二例である)がコロイド状ヒドロゲル相の生成に適している。コロイド状ヒドロゲル相を十分な量加えることで、ヒドロゲルの生体内での滞留時間を有利に増加することができる。これにより、組織の治癒に必要な期間が提供される。追加の利点は、増加した滞留時間によってビデオ胸腔鏡手術(VATS)に使用できるように、生検位置に長期刻印機能が付与される。適するポリマーは、水性環境で不溶なもので、ポリマーを慣用の方法で架橋して達成できる。例として脱水加熱架橋されたゼラチンが挙げられる。注意すべきことは、多すぎる量のコロイド状ヒドロゲル相を導入すると、組成の注入性や自己修復性を損なわれることである。任意にどの例でも、“二相性”ヒドロゲルは、0.2~30%、15~28%または20~25%(w/v)の濃度のコロイド状ヒドロゲルをヒドロゲル生成ポリマーに含む。
【0155】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、400Paより大きい、好ましくは600Paより大きい、より好ましくは800Paより大きい、さらに好ましくは1000Paより大きい貯蔵弾性率(G’) を示す。任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性のtanδ(G”/G’)が0.01から0.8、より好ましくは0.1から0.6を示す。
【0156】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは粉末として提供され、外科処置の前に、水、食塩水、自家血液、または自家プラズマといった生理学的に許容される液体で再構成される。低分子量PEGやグリセロールといった合成液体も使用できる。粉末は、いずれの適切な生体適合性ポリマーまたはポリマーの組み合わせから構成される。一例として、粉末をヒドロゲル送達針に供給しても良い。一例として、粉末はシリンジに供給され、それと共に適切な再構成液を第二のシリンジに供給することができる。一例として、粉末は1~500、10~100または30~40ミクロンの平均粒径を持つ。粉末は、その形状、形態および大きさの分布において均一であっても不規則であっても良く、製粉またはこの分野で知られる他の手段で生成される。ある例によると、粉末の水和は、例えば、コラーゲンやゼラチンのようなコラーゲン様の基材の場合には、粉末粒子の乾燥の度合いを変えることによって制御できる。
【0157】
任意にどの例でも、ここに記載されるヒドロゲルは別々の成分として、例えば多数のシリンジに供給し、シリンジを通して注入する前に成分を混合する手段を備えても良い。架橋剤を一つ以上のこれらの成分に供給し、ずり減粘化および自己修復性ヒドロゲルを達成するのに必要な材料特性を付与することができる。混合は、シリンジの内容物を往復運動させて達成できるが、ステティックミキサーを使ってその過程を短縮することができる。
【0158】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲル組成物は例えば、リン酸緩衝液または炭酸水素塩緩衝液といった生理的緩衝液中に供給される。ある例によると、組成のpHは、pH7とpH9の間であるかpH7.5とpH8.5の間である。ある例によると、組成のpHは、pH8.0である。ある例によると、組成のpHは、pH7.5である。ある例によると、組成のpHは、pH8.5である。必要であれば、(HClといった)酸や(NaOHといった)塩基を組成に加えて望ましいpHとすることができる。特定の例によれば、ここに記載されるヒアルロン酸ヒドロゲルは、本質的に1-2MDaの間の平均分子量を持つヒアルロン酸が50mg/mlの濃度(または約5%w/v)で存在し、平均分子量は1~2Mdaである。引用された値の中間の範囲も本発明の範疇にある。例えば、ここに記載される組成のヒアルロナン含量は約3%から約15%(w/v)の間、約3%から約10%(w/v)の間、約3.5%から約9%(w/v)の間、約4%から約8%(w/v)の間、または約5%から約7%(w/v)の間である。さらに、特定の体積中のヒアルロナンの量は、代替的な手段で表現することができる(たとえば、g/lまたはmol/l)。様々な手段で表される特定の体積中のヒアルロナンの量は、その分野の通常の能力を持った者によって換算できる。
【0159】
ここで使われる“閉塞栓”、“ヒドロゲル栓”または“ゲル栓”という用語は、単一体の粘弾性ヒドロゲルを意味し、例えば、肺の部位に針を通して送達するのに適したヒアルロン酸ヒドロゲルであり、針を取り囲む組織を押し離すのに十分な粘弾性を持ち、合体して単一の環状閉塞栓を針の周りに形成する。ゲルの粘弾特性と剛性が組織の浸潤を防ぎ、ゲルが正確に組織と対抗し効果的な密閉栓を針の周り、それに続いてカニューレの周りに形成させ、それにより、肺の空気が栓を越えて漏洩することを防ぐ。ヒドロゲルの粘弾挙動によって、カニューレを抜き取った際、環状栓が合体し、環状栓の穴を塞ぎ、同軸カニューレを抜き取った後に内臓胸膜に対して持ちこたえ、密閉する。
【0160】
任意にどの例でも、ヒドロゲル栓は、“制限膨張”挙動を示すべきであり、これは、生体内、例えば、気胸を防ぐために肺の表面下に置かれた時に、その容積が多大に増加すべきではないことを意味する。かなりの程度で膨張するヒドロゲル栓は、望まない生理学的または生物学的影響を与えるかもしれない。生体内でのヒドロゲルのある程度の膨張は、想定できるが,原組織を温存するためには、ヒドロゲル栓の膨張は制限されるべきである。膨張は、所定の大きさのヒドロゲルの球を生成して特徴づけられ、例えば、500μlのヒドロゲルを球状に丸め、このヒドロゲルの球を水性溶液に入れる。この500μlの体積は、最初は直径約10mmの球に等しい。水性溶液は、食塩水または体液を模倣した溶液で、生体内に見られる正しい酵素活性を含んでも良い。ヒドロゲルの球の大きさや形状および溶解を長時間にわたって観察する。膨張率は:
膨張率(%)= (Ws - Wd)/Wd x100
[Wd = ポリマーの重量;Ws = 膨張したポリマーの重量]
から求められる。
【0161】
好ましくは、膨張率は250%を超えるべきではなく、より好ましくは、150%を超えるべきではなく、さらに好ましくは130%を超えるべきではない。試料の劣化は、経時的なポリマーの乾燥重量を比べて求めることができる。乾燥重量は、試料を凍結乾燥して求められる。試料の劣化率は、残存するヒドロゲルの重量から割り出すことができる:
残存するヒドロゲル(%)= (W2 - W1)/W1 x100
[W1 = 元のポリマーの乾燥重量;W2=時間に依存したポリマーの乾燥重量]。
【0162】
熱応答性、ずり減粘性、形状記憶および生物学的特性の異なるポリマー材料を組み合わせて、この適応のために向上した複合ヒドロゲルを得ることができる。向上には、生体適合性の増加、注入性、粘度、劣化の変更、薬剤接続、組織接着、結束性、密閉能安定性、親水性が含まれる。ゼラチンおよびヒアルロン酸が二例として挙げられる。これらのポリマーと組み合わせることができる物質は、メチルセルロース、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボン酸を含む。
【0163】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、熱応答性物質から形成される。この目的に適した熱応答性ヒドロゲルの範囲は、先行のKlouda:‘Thermoresponsive hydrogels in biomedical applications: a seven year update’ Eur J Pharm Biopharm 2015 97(PtB) 339-49およびRuel-Gariepy: ‘In situ-forming hydrogels - review of temperature-sensitive systems’ Eur J Pharm Biopharm 2005 58 409-426 に記載される。特に注目されるのは、ポロキサマーと呼ばれる疎水性のポリプロピレン・オキシド(PPO)中央ブロックが二つの親水性ポリエチレン・オキシド(PEO)を脇に添えるに非イオン性三元ブロックコポリマーの一族である。食品医薬品局は、ポロキサマー407を異なる種類の製剤用の非活性材料に指定している。溶液濃度20%以上で、ポロキサマー407は、室温と体温の間で熱可逆性ゲル化を起こす。薬物送達用途として、ポロキサマー溶液へのヒアルロン酸の添加による熱応答性ヒドロゲルの生成は、Moyolら:‘A novel poloxamer/hyaluronic acid in situ forming hydrogel for drug delivery: rheological, mucoadhesive and in vitro release properties’ Eur J Pharm Biopharm 2008 70 199-206に記載される。
【0164】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ある量の熱応答性ヒドロゲルとある量のヒアルロン酸のようなずり減粘化ヒドロゲルを混合して生成でき、これにより最終的なヒドロゲルの剛性の増加し、生分解性および生体適合性に影響することができる。この添加は、追加の利益をもたらすが、ヒドロゲルを送達針を通して注入するために必要な注入力にはほとんど影響しない。
【0165】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、ゲルに適当な量含まれることができる添加物として言及される、造影剤を含むことができ、ヒドロゲルは周囲組織に対してコントラストを作ることができる。こうして、例えば、外科処置の際またはフォローアップの外科処置の際に、ヒドロゲル栓と注入部位を視覚的に識別および/または標的できる。識別は視覚的であるか、CTスキャン、超音波または蛍光透視といった誘導システムを介することができる。効果的な視覚コントラストを達成させるために様々な濃度でヒドロゲルに加えられる添加剤は、イオン性および非イオン性造影剤、メチレンブルー、インディゴカーミン、トルイジンブルー、リンファズリン、ヘモトキシリン、エオシン、インドシアニングリーン(ICG)、墨、また、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフィンといった炭素系粉末、酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムといったセラミック粉末を含む。ヒドロゲルは、また、検出可能なマーキング剤を含む。ここに記載されるヒドロゲルでの使用に適した検出可能なマーキング剤は、分光学、光化学、生化学、免疫化学、電気、光学または化学的手段によって検出できるいずれの組成を含む。発光標識、放射性同位体標識、酵素標識を含む多種多様な検出マーカーがこの分野で知られている。これらのマーキング剤は、ヒドロゲルと混合されるかヒドロゲル分子に化学的に共役している。
【0166】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、治療剤または生物学的活性のある薬剤から構成されることができる。ヒドロゲルに連結されるか埋め込まれても良い治療剤は、鎮痛剤、麻酔剤、抗真菌剤、抗生剤、抗炎症剤、駆虫薬、解毒剤、制吐剤、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗マラリア薬、抗菌剤、酸化防止剤、抗精神病薬、解熱剤、消毒剤、抗関節炎剤、抗結核剤、鎮咳剤、抗ウィルス剤、心作用剤、下剤、化学療法剤、着色または蛍光画像化剤、(ステロイドといった)コルチコイド、抗うつ剤、抑制剤、診断補助剤、利尿剤、酵素、去痰剤、ホルモン、催眠剤、ミネラル、栄養補給剤、副交感神経興奮剤、カリウム補給剤、放射線増感剤、放射性同位体、鎮静剤、刺激剤、交感神経興奮剤、精神安定剤、抗尿路感染剤、血管収縮剤、血管拡張剤、ビタミン、キサンチン誘導体などを含むが、これらに限定されない。任意にどの例でも、ここに記載されるヒドロゲルは、一つ以上の麻酔剤を含む。麻酔剤の例は、プロパラカイン、コカイン、プロカイン、テトラカイン、ヘキシルカイン、ブピバカイン、リドカイン、ベノキシネート、メピバカイン、プリロカイン、メキシレチン、バドカインおよびエチドカインが含まれるが、これらに限定されない。任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルは、さらに発泡剤、発泡安定剤、界面活性剤、増粘剤、希釈剤、潤滑剤、湿潤剤および可塑剤を含む。
【0167】
任意にどの例でも、粘弾性ヒドロゲルの一部または全部が“生分解性”であり、生体内で時間とともに分化されるように構成できる。粘弾性ヒドロゲルの異なる相あるいは成分が異なる速度で分解されるように構成することができる。生分解性物質は、好ましくは炎症あるいは免疫反応を起こさずに体内から排除される。ここに記載される粘弾性ヒドロゲルにおいて、完全な生分解に要する時間は1年未満、好ましくは1ヶ月未満、より好ましくは1週間未満そしてさらに好ましくは72時間未満である。早い分解期間のさらなる利益は、肺組織が正常に戻ることを可能にし、送達部位での過剰な瘢痕組織形成を防ぐことである。また、滞留時間および瘢痕組織形成の制限は、ヒドロゲル栓の送達が病変の疑われる肺のフォローアップの放射線分析と干渉しないことを保証する。非架橋のシステムは、架橋したシステムに比べてより速い生体内滞留期間をもたらす。ここに記載される高分子量(>1000kDa)および高濃度(40~60mg/ml)のヒアルロン酸ヒドロゲルは、分解期間が1週間未満であり、また72時間未満である。より長い分解時間は、架橋またはそのほかの手段で元来のヒアルロン酸の分子構造を修飾することで可能となる。より長い分解時間は、また、ヒアルロン酸ヒドロゲルを一つ以上のヒドロゲルまたはコロイド状ヒドロゲルと組み合わせ複合ヒドロゲルを形成して可能となる。他種のヒドロゲルが取り除かれる間に、一種のヒドロゲルが標的部位により長時間滞る。例えば、ヒアルロン酸ヒドロゲルは、架橋ポリマー(例えば、ヒアルロナン、ハイラン、コラーゲンまたはゼラチン)と組み合わせられ、複合ヒドロゲルを形成する。架橋ポリマーは、この分野で知られる様々な架橋方式を使って、1週間より長い、しばしば2週間より長い滞留時間を持つように構成することができる。埋設可能な前駆体の一部として使用される架橋剤は、アルデヒド類、ポリアルデヒド類、エステル類およびタンパク質の架橋に適する他の化学官能基を含む。 例えば、ポリマーを熱、低温、または放射線に晒すといった物理的架橋法を使用することもできる。結束性、剛性、機械的強度および障壁特性を向上するために架橋剤を添加できる。
【0168】
ここで使われる粘弾性ヒドロゲルの閉塞栓に適用される“生体内滞留時間”という用語は、0.1~1ml、好ましくは0.2~0.8ml、より好ましくは0.3~0.5mlの閉塞栓が生体の肺組織中で重大な構造的完全性を失うことなく存在する期間を意味する。生体内滞留時間は、内臓胸膜の穴が治癒するのに十分な期間であり、理想的には周囲の肺組織が治癒する期間である。ヒドロゲルの生体内滞留時間を概算する方法は以下に述べる通りである。治癒するのに十分である適切な生体内滞留時間を達成するために、ヒドロゲルはより長い滞留時間を持つある種の未修飾の材料(タンパク質を含む)から構成される。例として、コラーゲン、酸化セルロース、デンプン、細胞外基質(ECM)が挙げられる。ここに記載される架橋されたヒドロゲルは、2週間より長い生体内滞留時間を持つことが判った。任意に、ずり減粘化粘弾性ヒドロゲルは、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、理想的には少なくとも3週間の生体内滞留時間を持つことができる。
【0169】
任意にどの例でも、位置決め機構は、カニューレ内を完全に前進させた時(第一の調節)および針を越えて同軸カニューレの挿入深度を案内する時(引き続く第二の調節)に、同軸カニューレを通した送達針の挿入深度を調節可能であることができる。第一の移動で、閉塞栓を形成するための物質(ヒドロゲル)を肺に送達するために、針を組織内に位置付け、第二の調節で、カニューレを、閉塞栓を貫通してヒドロゲル捌け口を覆うように針を越えて、前進させる。位置決め機構は、あらかじめ設定された挿入深度Xを定義するように、あらかじめ調節することができる。あらかじめ設定された挿入深度Xは、一般的に肺組織の標的部位に針のヒドロゲル捌け口を位置づける深度であり、例えば、内臓胸膜のすぐ遠位である。位置決め機構は、一般に、ユーザーに同軸カニューレ挿入深度Yを表示するように構成されたカニューレ深度ガイドを含み、この深度で、カニューレの最遠端が閉塞栓を貫通している。位置決め機構は、ユーザーが針の挿入深度を調節した際、カニューレ深度ガイドも調節されるように構成される。任意にどの例でも、位置決め機構は、針に沿って第一の挿入深度を示す遠位置と、その第一の挿入深度よりも深い第二の挿入深度を示す近位置から軸方向に移動するように針に据え付けられた可動ハブを含む。位置決め機構は、ヒドロゲル送達針に取り付けられた固定ハウジング、針に沿って軸方向に移動するように針に据え付けられた可動ハブからなり、最遠端が同軸カニューレの近位面と接するように構成され、ここで固定ハウジングは、相対的な軸方向の移動によってあらかじめ設定された針調節深度を定義できるように可動ハブと共同するように構成されている。位置決め機構は、一緒に動くように位置決め機構の固定ハウジングと軸方向に連結し、可動ハブの遠方に伸びるアームから構成されるカニューレ深度ガイドを含む。可動ハブの遠方のアームの長さは、好ましくはカニューレ挿入深度等しい。一般に、カニューレは、最初に胸腔に近位の筋肉組織に挿入され、そして、肺の標的方向に沿ったカニューレの最遠端から胸腔までの距離Pを求めるために画像撮影する。次に、この距離Pを使って、針がカニューレに完全に挿入された際にヒドロゲル捌け口が標的位置である距離P+Xに配列するように位置決め機構の目盛尺20、16Aによって位置決め機構を調節する。この調節は、自動的にカニューレ深度ガイドも調節し、ユーザーに、カニューレ挿入深度Yを表示する。
【0170】
任意にどの例でも、ここに記載される処置は、例えば、CTスキャン、蛍光透視または超音波といった画像誘導を必要とする。ここに記載される方法は、処置を援助するために一つ以上の肺/肋間筋の画像撮影を含んでも良い。カニューレの最初の挿入深度を決定するために、最初に画像を撮影する。同軸カニューレが第一の位置にある時、望まれる針の軌道方向に沿ったカニューレの最遠端から意図する臓器までの距離Pを求めるために画像撮影する。ここに記載される方法は、カニューレが送達針の先端に位置するようにカニューレを標的臓器に前進させる距離を求めるために、肺の追加の画像を撮影しても良い。一般に、これらの画像は、介入放射線医または放射線技師の指導下に撮影される。
【0171】
例証
以下に、実施例を参照に本発明をより具体的に説明するが、これらは、単に模範であり、例示目的のためのものであり、独占権主張の範囲を記載する本発明をどのようにも限定するものではない。これらの例は、発明を実施するのに、現在考えられる最適な様式を構成する。
【0172】
経胸的針生検の結果起こる気胸の機構は、図1A-1D(先行技術)に図示される。図1Aは、胸腔Aの断面図であり、胸壁筋B、肋骨C、肺組織D、および胸壁の漿膜(壁側胸膜F)と肺の漿膜(内臓胸膜G)によって定義される胸膜腔Eを含む。肺生検処置の際(図1 B)、コア針Hおよび同軸カニューレIを皮膚Oと胸膜腔Eを通して疑われる肺小結節Jに向けて経皮的に進行させる。図1Cでは、コア針Hが引き抜かれ、生検針Kで置き換えられ、カニューレ2を通して進行させ、組織標本を疑われる肺小結節Jから得る。図1Dに図示されるように、生検針KとカニューレIの引き抜きは、肺組織Dに間隙Lを、また、内臓胸膜Gに穴L1を残す。胸壁Bの稠密な筋組織が針の引き抜きによって作られた間隙の周りで収縮する。しかし、生検針によって肺組織Dおよび内臓胸膜Gに作られた穴L、L1は完全には密閉されない。肺組織Dと胸膜腔Eの圧力勾配によって、空気が内臓胸膜Gに作られた穴L1を通って逃れ、胸膜腔Eに入り、気胸Mと呼ばれる空気の集まりを胸膜腔Eに作る。もし、かなりの大きさの血管が生検処置の際に穿刺されると、胸膜腔は、血液でも満たされ、血胸と呼ばれる症状となる。血胸の頻度は気胸ほど高くはない。血胸や気胸Mはかなりの大きさまで成長し、肺の部分的または完全な虚脱を起こし、呼吸困難をもたらし、治療を必要とする。
【0173】
図2A-2Eを参照にすると、先行技術の欠点を克服する方法が提示される。図2A-2Eには、粘弾性ヒドロゲル栓を肺の標的位置に送達する方法が表される。この例では、最遠端2Aおよびルアーロック2Bといった近位のコネクターを持つ同軸カニューレ2、コア針3、および遠位に組織貫通端5および貫通端5に近位の針の側面に配置されたヒドロゲル捌け口6を持つヒドロゲル送達針4を含む医療機器システムを使用する。システムは、また、ここに記載されるいずれの粘弾性ヒドロゲル材を充填した貯留容器15bの付いたシリンジ15を含む。シリンジはポンプ、プランジャー、送液機構または粘性のヒドロゲルの送達に適した要素のいずれかで置き換えられても良い。
【0174】
図2Aに示すように、コア針3とカニューレ2の構築体を患者の胸壁へ、構築体が胸壁Bに位置し肺Dを貫通しないし深さまで挿入する。同軸カニューレ2は、例えばコア針3といった貫通機器を受け入れる内腔を持った針機器を指し、ここで、構築されたコア針とカニューレ2は、皮膚表面を通した胸部への挿入に使われる。一般に、同軸カニューレは10から19ゲージの大きさである。追加の例では、同軸カニューレは、また、鞘、導入子、栓子/探り針構築体、ガイドカテーテル、套菅針、ポート装置またはこの分野で知られる他の誘導装置を指す。
【0175】
図2Bに示すように、コア針3がカニューレ2から抜き取られ、ヒドロゲル送達針4がカニューレ2を通して進行させる。ヒドロゲル送達針4は典型的に貫通先端および典型的に貫通先端5近位、例えば、貫通先端5から0.5~15mmの針の側面に配置されるヒドロゲル捌け口6を持つ。送達針4は、体内に挿入するように構成された最遠端および使用時に体外に位置する近位端を持つ。針は、一般的に、金属製であるが、位置決め(調節)機構は、プラスチック、ポリマーまたは金属製であって良い。針は、近位端がポリマー管からなり、針(またはポリマー管部)のポンプまたはシリンジ15への流動的な連結を容易にするルアーロックを含む。一般に、ヒドロゲル送達針4は、13から20ゲージである。ヒドロゲル送達針4は、ヒドロゲル捌け口6が胸膜腔Eおよび内臓胸膜Gから遠位の肺組織に位置される深度に挿入される。ヒドロゲル捌け口5(原文まま)の標的部位への位置決めは、CT誘導下、ヒドロゲル捌け口6から既知の距離X離れたところに位置する送達針上のX線不透過性またはX線透過性マーカー32を使って達成できる。X線透過性マーカー32を胸膜腔Eに重ねることによって、ヒドロゲル捌け口を胸膜腔Eから肺内の所定の距離Xに位置づけることができる。胸膜腔Eは、幅が約25μmの非常に薄い空間で、しばしば仮想空間とも呼ばれる。後述の図7に見られるように、胸膜腔Eは、CT誘導下、肺(暗い領域)と胸壁(明るい領域)の遷移部として識別できる。X線透過性マーカー32の胸膜腔Eの上への位置付けは、段階的なスキャンと針4の微調整のよって、または連続的蛍光透視誘導下の微調整によって達成できる。
【0176】
図2Cに示すように、ヒドロゲルを充填した貯留容器15B付きのシリンジ15がルアーロック12を介して送達針4に取り付けられる。あらかじめ決められた量の粘弾性ヒドロゲルがヒドロゲル捌け口6を介して肺に注入され、送達針4の周りに閉鎖された環状の粘弾性閉塞栓7を形成する。このステップに続いて、同軸カニューレ2を、送達針4を越えて閉塞栓7を貫通し疑われる肺小結節Jに向けて進行させる。ヒドロゲル送達針4を引き抜き、肺生検針Kを受け入れられるように、カニューレ2を取り囲むヒドロゲル閉塞栓7内に残す。次に、図2Dに示すように、カニューレ2を通して肺生検針Kを進行させ、肺生検を行う。生検が行われた後、肺生検針Kとカニューレ2の両方を引き抜く。図2Eに示すように、針が引き抜かれた後も、閉塞栓7は、肺組織のその位置に留まる。粘弾性ヒドロゲル材の物理特性によって、閉塞栓7は針の残した空間に再流入すると共に同軸カニューレ2によって内臓胸膜Gに残された穴L1を密閉する。これらのステップは、気胸を起こす可能性を減少させた肺生検の実施法を説明する。閉塞栓7の効能は、通気された肺組織Dの空気が内臓胸膜Gの穴L1から抜け出ることを防ぐ能力に依存する。
【0177】
いくつかの理由により、送達機器を上述のように位置づけるのが難しい場合がある。第一に、臨床医が蛍光透視誘導を利用できず、マーカーバンド32付きの送達針4を正確に位置付けできない。第二に、度重なるCTスキャンが患者に有害であり、針のマーカーバンド32の正確な位置付けが高い放射線量の暴露という結果になるかもしれない。さらに、ヒドロゲル栓の配置の遅れは、針が未保護のまま肺組織にある間、気胸の可能性につながる。粘弾性ヒドロゲルが効果的な密閉を達成できるように素早く、容易に、そして正確に肺への注入深度を狙うために、以下に説明する位置決め機構がヒドロゲル送達針4に備わっている。
【0178】
図3A-3Bおよび図4A-4Fを参照にすると、図示される医療機器では、先の実施形態に参照される部品には同じ参照番号が割り付けられる。図3Aは、一般に参照番号10で表される医療機器を示し、この機器は、遠位貫通先端5を持つ単一腔ヒドロゲル送達針4、貫通先端5の近位の針の側面に配置されたヒドロゲル捌け口6、ヒドロゲル捌け口6の近位の針に配置されたマーカーバンド32、送達針4に沿って配置される位置決め機構8、および送達針4の近位端に取り付けられたルアーロック12を含む。可視マーク32Aが貫通先端5の近位の送達針4に付けられ、ここで、可視マーク32A間の距離(Hで表される距離)は、同軸カニューレ2の長さに等しい。送達針4が同軸カニューレ2の内腔を通して挿入された際、この可視マーク32Aを使って、同軸カニューレ2の遠位端が貫通先端5に隣接していることを示すことができる。位置決め機構8の構成要素が説明目的で断面図として示され、これは、送達針4の軸に沿って自由に移動できる可動ハブ17を含む。可動ハブ17は、送達針4が通過する中央経路を含む単一部材である。ネジ山のついた止めネジ18が可動ハブ17の横に送達針4の軸と垂直に据え付けられ、可動ハブ17を通過して送達針4に到達する。ネジ山のついた止めネジ18の回転は、位置決め機構8の軸方向位置を送達針4に沿って選ばれた場所で固定する。また、医療機器10には、近位に位置するメスルアーロック2Bから最遠面2Aに通す中央腔を含む同軸カニューレ2が含まれる。同軸カニューレ2の内腔は、送達針4の中央経路を受け入れるように構成される。また、医療機器には、目盛り付きの測定尺20を含む測定機器19が含まれる。測定機器19は、ものさし、カリパス、マイクロメーター、または他の機械的またはデジタル測定機構を含むことができる。測定機器19の目的は、同軸カニューレ2を通して送達針4を進行させた時、および位置決め機構8の最遠位面17Aが同軸カニューレ2のルアーロック2Bに接する時に、ヒドロゲル捌け口6を同軸カニューレ2の最遠面2Aからあらかじめ決められた標的距離に位置付けることである。位置決め機構8は、ネジ山のついた止めネジ18によって標的距離に固定位することができる。同軸カニューレ2の全長は知られているため、測定機器19はこの長さを考慮して、ヒドロゲル捌け口の位置決め機構8の最遠位面17Aからの標的距離を設定することができる。使いやすさのために、測定機器19は送達針4および位置決めハブ8(原文まま)と係合でき、その係合を解除できるように構成される。(距離PおよびXの重要性が図4A-4Fでさらに概要される。)
図3Bは、図3Aに提示される特徴と概して同様の特徴を持った、一般に参照番号10で表される医療機器を示す。位置決め機構8は、いずれも送達針4の軸に沿って自由に移動できる二つの係合した部材(17、17B)から構成される。可動部材(17、17B)は説明目的で断面図として示され、送達針の通過のための中央内腔を持つ。部材(17、17B)は、ネジ山付きの係合機構36を持ち、相対する位置部材の回転が位置決め機構8を送達針4に固定し、その動きを制限するようなコレット型の組立体を含む。送達針は、マーカーバンドを持っていなくても良い。
【0179】
図4A-4Fを参照して、経胸生検処置における図3A-3Bの機器の使用を説明する。
【0180】
図4A: CT誘導といった画像法の下、コア針3納めた同軸カニューレ2を疑われる肺小結節Jに揃え、コア針3先端が胸膜腔Eに近位の胸筋B内に配置されるように定義された距離だけ胸壁に経皮的に進行させる。必要とされる針の進行距離は事前の胸壁のCTスキャンで決められる。
【0181】
図4B: 位置付けられ標的方向に揃ったら、コア針3は同軸カニューレ2から取り除かれ、カニューレ2の中央側面に沿った胸壁のCT画像を撮影する(図9参照)。CTスキャンソフトを使い、カニューレ最遠端2Aから胸膜腔Eまでの距離(P)を決定する。この距離は典型的に4~20mmの範囲である。CTスキャン上で識別できる場合には、距離Pは、カニューレ最遠端2Aから肺の表面(内臓胸膜G)までを測って求められる。
【0182】
図4C: (図3Aに示されるような)送達機器10の位置決め機構8は、可動ハブ17を送達針4に相対的に動かして同軸カニューレの外部で手動的に調節される。図3Aで説明される測定機器19を使って、位置決め機構8の最遠面17Aからヒドロゲル捌け口6までの距離が((同軸カニューレの長さ)+ P + X)と等しくなるように調節でき、ここで、Xは胸膜腔Eから遠位の肺組織内の望ましい注入深度である。位置決め機構8は、止めネジ18を使ってその位置を固定できる。一旦必要な注入深度が設定されると、同軸カニューレ2を通して、医療機器10のヒドロゲル送達針4を位置決め機構8の可動ハブ17の最遠面17Aが同軸カニューレ2の近位のルアーロック2Bに接するまで、完全に進行させることができる。この深度で、送達針4のヒドロゲル捌け口6がカニューレ最遠端2AからP+Xで計算される距離に位置付けられ、ここで、Xは胸膜腔Eから遠位の肺組織内の望ましい注入深度である。特にこの用途では、胸膜腔から遠位の肺組織内への注入深度は0.1~10 mm、好ましくは1~3mmからである。
【0183】
図4D: 高粘度ヒドロゲルの入ったシリンジ15が機器のルアーロック12に取り付けられ、ある量の高粘度ヒドロゲルが送達針4を通して注入され、ヒドロゲル捌け口6から押し出される。粘弾性ヒドロゲルは、針を取り囲み、肺組織を押し離し、針の周りに単一の環状の粘弾性閉塞栓7を形成する。CT誘導下に、送達針4と同軸カニューレ2はどちらも粘弾性閉塞栓7を貫いて肺小結節Jに向けてその近隣まで進行させる(図示されず)。
【0184】
図4E: 送達針4が同軸カニューレ2から取り除かれ、疑われる肺小結節Jの生検を行うためのコア生検針Kに置き換えられる。
【0185】
図4F: 生検針Kと同軸カニューレ2が患者から取り外され、粘弾性閉塞栓7が、機器10によって作られた内臓胸膜から遠位の穴L1を埋める。
【0186】
図5A-5B、図6A-6Bおよび図7A-7Bを参照にして、医療機器が図示され、先の実施形態に参照される部品には同じ参照番号が割り付けられる。図5Aは一般に参照番号10で表される医療機器を示し、この機器は、遠位貫通先端5を持つ単一腔ヒドロゲル送達針4、貫通先端5の近位の針の側面に配置されたヒドロゲル捌け口6、送達針4の近位端に配置される位置決め機構8、および送達針4の近位端にあるルアーロック12を含む。位置決め機構8は、送達針4の近位側、ちょうどルアーロック12の遠位に据え付けられる。位置決め機構8の構成要素が説明目的で断面として図示され、これは、送達針4に結合される固定ハウジング16および固定ハウジング16と係合し送達針4の軸に沿って自由に移動できるが回転や送達針4の軸と垂直方向の移動ができない可動ハブ17を含む(位置決め機構8の構成要素の詳細な説明は、以下図6A-6Bに提示される)。固定ハウジング16(および送達針4)に相対して可動ハブ17の位置を固定する、回転および締め付け可能なネジ山のついた止めネジ18が備え付けられる。可動ハブ17には固定ハウジング16の目盛り線または目盛り尺16 Aと揃う目盛り20が付けられる。(位置決め機構8の目盛り20、16 Aを位置付けることによって、図3Aで説明される外部測定機器19を省くことができる。)
図5Bは一般に参照番号10で表される医療機器を示し、この機器は、図5Aに提示される機器に追加の特徴を備える。この機器は、遠位貫通先端5を持つヒドロゲル送達針4、貫通先端5の近位の針の側面に配置されたヒドロゲル捌け口6、送達針4の近位端に配置される位置決め機構8、およびヒドロゲル送達シリンジ15 に取り付けられるように構成されたルアーロック12のようなコネクターとして終結する針の近位端への流動的に連結したポリマー管11を含む。送達針4は、同軸カニューレ2を通して進行されるように構成される。同軸カニューレは、典型的に、近位にルアーロック2Bを持った単一の内腔のステンレス鋼の管からなり、説明目的のために断面図として示される。送達機器10は、そこから同軸カニューレ2を挿入できるカニューレ深度ロック25を含む。カニューレ深度ロック25は、カニューレ2を固定し、患者の皮膚が最遠面に接してカニューレ2の軸方向移動を防ぐ多部品構築である。カニューレ深度ロック25は、カニューレ2を締め付けて、カニューレ深度ロック25に相対してその位置を固定するネジ山のついた止めネジ25Aを含むことができる。取り外し可能なロッキングアーム26が深度ロックに取り付けられ、深度ロック25に対する送達機器10の軸方向位置を固定するように構成される。ロッキングアーム26は、細長い棒または管の形状を取り、両端に円筒または球状の要素を持ち、カニューレ深度ロック25と位置決め機構8の両方に‘スナップフィット’嵌合することができる。これにより、構築体との結合および分離を可能とする。機器10は、また、送達針4とルアーロック12の中間に位置しこれらを連結するポリマー管11を含んでも良い。ポリマー管11は、編み組みまたは固形のポリマー管で、熱硬化して送達針4と角度をつけて、好ましくは送達針4と直角に方向付けられる。この特徴は、シリンジ15とルアーロック12の結合および分離、さらにまた、ヒドロゲル材を注入するためのシリンジ15の作動が、送達針4の軸に沿って直接力が加わらないようにすることができ、ヒドロゲル捌け口6注入深度を大きくずらすことがない。図5Bに示される位置決め機構8は、以下の特徴を持つ;固定ハウジング16がヒドロゲル送達針4に結合される、送達針4の軸に沿って固定ハウジング16に相対して移動するために可動ハブ17が送達針4に据え付けられる。可動ハブ17は、最遠面17Aが同軸カニューレ2の近位ルアーロック2Bに接するように構成される。可動ハブ17に相対した固定ハウジング16の軸方向に沿った移動は、ヒドロゲル捌け口6が同軸カニューレの最遠端2Aから伸びる距離を変える。可動ハブ17の表面には、固定ハウジング16の目盛り線16Aと揃う一連の測定目盛り20が付けられ、同軸カニューレ2の最遠端2Aに相対する望ましいヒドロゲル捌け口6深度を反映するように、ユーザーが位置決め機構8を調節することができる。可動ハブ17は、同軸カニューレ2の近位のメスルアーロック2Bとかみ合うことができる遠位に配置されたオスルアーロック38を含むことができる。
【0187】
図6A-6Bは、送達機器10の構成要素、特に、位置決め機構8とそれの送達針4との係合に関する分解組み立て図である。位置決め機構8の構成要素は、説明目的のために断面図として示される。位置決め機構8は、送達針4に結合される固定ハウジング16を含む。図6Aに示されるように、固定ハウジング16は、接着剤、ネジ、溶接、オーバーモールディングまたはその他の手段で送達針4に永久的に固定または結合される。固定ハウジング16は、好ましくは、射出形成された構成要素から構成される。可動ハブ17は、送達針4の軸に沿って固定ハウジング16に相対して自由に移動することができる。可動ハブ17は、送達針4が通過できるように貫通孔または経路を含む。これは、送達針4から偏っていても良い。可動ハブ17は、かみ合わせ機能を通して固定ハウジング16と重なるように摺動的に係合する。かみ合わせ機能は、‘T’字型の側断面を持つことができ、可動ハブ17の(送達針4の軸に沿った)軸方向以外の移動を防ぐ。かみ合わせ機能は、また、可動ハブ17の回転も防ぐ。この機構は、機能および形状においてノギスに類似する-可動ハブ17が、固定ハウジング16に相対して軸方向に摺動できる。固定ハウジング16と可動ハブ17の両方の目盛り線16A、20が重なり、揃うことで、可動ハブ17の最遠面17Aに関するヒドロゲル捌け口6の送達深度を表示することができる。固定ハウジング16または可動ハブ17のいずれかに据え付けられたロック機能18によって、可動ハブ17を固定ハウジング16に固定することができる。ロック機能18は、また、コレット型の機構または固定ハウジング16と可動ハブ17の動きを制限する他の手段を含むことが出来る。追加の例では、固定ハウジング16を送達針4に一時的に取り付けることが出来る。固定ハウジング16の送達針4への一時的な取り付けは、締め付けネジやコレットといった追加の機構によって達成できる。
【0188】
図6Bは、固定ハウジング16と可動ハブ17の両方が円筒または管状の構造で、送達針4の軸に沿って互いに係合するように構成された位置決め機構8の例を示す。どちらの構造も送達針4が通過する内腔を含む。ここでも、位置決め機構8の一部、すなわち、固定ハウジング16と可動ハブ17が説明目的のために断面図として示される。固定ハウジング16と可動ハブ17の両方がネジ山付きの係合機能36(正確に間隔をあけた一連の円周状の刻み目の形成)を持ち、ここで、固定ハウジング16に相対する可動ハブ17の回転が、相対的に送達針4に沿った部品の軸方向の動きをもたらす。固定ハウジング16に相対する可動ハブ17の回転が、ヒドロゲル捌け口6の可動ハブ17の最遠面17Aからの距離を変化させる。ネジ山付きの係合機能36は、両方の部材の内表面および外表面にどちらにでも位置することができるが、典型的には、それらの位置は、係合目的として両方の部材の反対側である。ネジ山付きの係合機能36のかみ合わせによって、この位置決め機構8は、送達針4の軸方向位置を保持するためのロック機能18を必要としなくても良いが、この構築にロック機能を含むことができる。固定ハウジング16と可動ハブ17の両方の目盛り線16A、20が重なり、揃うことで、可動ハブ17の最遠面17Aに関するヒドロゲル捌け口6の送達深度を表示することができる。
【0189】
図7A-7Bは、位置決め機構8の二つの異なる深度位置を示し、送達針ヒドロゲル捌け口6が同軸カニューレ2から伸びる距離を変えられるように、位置決め機構8が軸方向調節できるように構成されていることを示す。例えば、ヒドロゲル捌け口6が同軸カニューレの最遠端2Aから第一の距離P1+Xの間隔にある図7Aに示される第一の構成から、ヒドロゲル捌け口6が同軸カニューレの最遠端2Aから第二の距離P2+Xの間隔にある図7Bに示される第二の構成に移動させる、ここで、P2>P1である。Pの値がより大きい場合に、可動ハブ17が固定ハウジングとより大きく係合し、重なり合っていることが明らかである。位置決め機構8は、カニューレ深度ガイド21および遠位端にある必要に応じて深度マーク21Aを含むことができ、これが、カニューレの最遠端2Aが針先5のちょうど近位に位置するように送達針4を越えて同軸カニューレ2を進行させるべき深度を表示する。カニューレ深度ガイド21は、一緒に動くように固定ハウジング16に据え付けられる延長アーム21を含み、同軸カニューレの近位のメスルアーロック2Bから遠位に、図7Aでは距離Y1、図7Bでは距離Y2伸びる。カニューレ深度ガイド21の延長アームは、カニューレ2の近位のルアーロック2Bの外側に伸び、またそれよりも狭くなるように設計され、近位のルアーロック2Bおよびカニューレ2の取り扱いと進行に干渉しないようになっている。深度マーク21Aには、色対比マークのような視覚補助や深度標識能力を増加する延長アーム21の物理的窪みが含まれる。位置決め機構は、可動ハブ17に対する送達針4と固定ハウジング16の動きに比例してカニューレ深度ガイド21を調節するように構成される。したがって図7Aを参照にすると、カニューレ2を通して送達針4を距離P1だけ進行させるように位置決め機構8が調節された時、カニューレ深度ガイド21は、Y1の深度を示すように調節される。同様に、図7Bでは、カニューレ2を通して送達針4を距離P2-距離P1より大きい-だけ進行させるように位置決め機構8が調節された時、カニューレ深度ガイド21は、比例的にY1より大きいY2の深度を示すように調節される。
【0190】
図8A-8Hを参照にして、図5A-5B、図6A-6Bおよび図7A-7Bの機器の経胸腔針肺生検処置での使用を説明する。
【0191】
図8A:CT誘導下、コア針3を包含する同軸カニューレ2を疑われる肺小結節Jに揃え、コア針3先端が胸膜腔Eに近位の胸筋B内に配置されるように定義された距離だけ胸壁に経皮的に進行させる。針の進行距離は事前の胸壁のCTスキャンで決められる。位置付けられ、標的方向に揃えられると、カニューレ深度ロック25が患者の皮膚Oに接する位置までカニューレに沿って軸方向に動かされ、この位置で、カニューレ深度ロック25と一体のネジを締め付けて(図示されない)カニューレ2が固定される。もし、同軸カニューレ2と周辺組織の間に十分な牽引力がある場合には、深度ロック25の固定は必要でない。
【0192】
図8B:コア針3は同軸カニューレ2から取り除かれ、カニューレ2の中央側面に沿った胸壁のCT画像を撮影する(図9参照)。CTスキャンソフトを使い、カニューレ最遠端2Aから胸膜腔Eまでの距離(P)を決定する。この距離は典型的に4~20mmの範囲である。CTスキャン上で識別できる場合には、距離Pは、カニューレ最遠端2Aから肺の表面(内臓胸膜G)までを測って求められる。
【0193】
図8C: (図5Aに示されるような)送達機器10の位置決め機構8は、目盛り線16Aが目盛り尺20上で距離P(先に測定されたとおり)と揃うように、可動ハブ17を固定ハウジング16に相対的に手動で調節する。位置決め機構8は、固定が必要な場合には、ロック機能18を使いその位置を固定できる。同軸カニューレ2を通して、医療機器10のヒドロゲル送達針4を、位置決め機構8の可動ハブ17の最遠面17Aが同軸カニューレ2の近位のルアーロック2Bに接するまで、完全に進行させる。この深度で、送達針4のヒドロゲル捌け口6がカニューレ最遠端2AからP+Xで計算される距離に位置付けられ、ここで、Xは胸膜腔Eから遠位の肺組織内の望ましい注入深度である。特にこの用途では、胸膜腔から遠位の肺組織内への注入深度は0.1~10 mm、好ましくは1~3 mmからである。
【0194】
図8D: 取り外し可能なロッキングアーム26が位置決め機構のカニューレ深度ロック25と可動ハブ17の間の位置に固定され、それにより、送達針4の深度を固定する。粘弾性ヒドロゲルの入ったシリンジ15が機器のルアーロック12に取り付けられ、ある量の粘弾性ヒドロゲルが送達針4を通して注入され、ヒドロゲル捌け口6から押し出される。粘弾性ヒドロゲルは、針を取り囲み、肺組織を押し離し、針の周りに単一の環状の粘弾性閉塞栓7を形成する。
【0195】
図8E: カニューレ2を動かせるようにカニューレ深度ロック25を緩める。カニューレ2を、送達針4を越えて、カニューレ深度表示器21Aの示す深度まで進行させ、この位置でカニューレ最遠端2Aを、閉塞栓7を貫いて送達針4遠位先端5の直前まで、また、針のヒドロゲル捌け口を覆うように進行させる。この時点で、密閉された環状閉塞栓7がカニューレ2の周囲に密栓を形成する。
【0196】
図8F: ロッキングアーム26がカニューレ深度ロック25から切り離され、送達機器10をカニューレから引き戻す。これが、コア針3に置き換えられ、カニューレ2のルアーロック2Bに取り付けることができる。
【0197】
図8G: コア針3とカニューレ2を、閉塞栓7を貫いて疑われる肺小結節Jまで進行させる。このステップも、また、CT誘導下に行われる。コア針3がカニューレ2から取り除かれ、コア生検針K(または、穿刺吸引針)を、カニューレを通して進行させ、疑われる肺小結節Jの生検をカニューレ2を通して行う。
【0198】
図8H: 生検針Kと同軸カニューレ2が患者から取り外され、粘弾性閉塞栓7が、機器10によって作られた内臓胸膜から遠位の穴L1を埋める。
【0199】
図9は、胸壁内での同軸カニューレ2の意図する生検部位への整列を示すCTスキャン画像の部分断面図である。コア針は、先に図8Bで説明したように、平坦な縁が同軸カニューレ2の遠位先端2Aに見えるように同軸カニューレ2から取り除かれる。同軸カニューレ2の中央軸に垂直にCTスキャンを撮る。胸膜腔Eは、暗い領域=肺、および灰色の領域=胸壁の境界として容易に識別できる。CTスキャンソフトを使い、距離P-同軸カニューレ最遠先端から胸膜腔Eの中央までの距離-を決定することができる。同軸カニューレ2の遠位先端2Aの平坦な縁は、正確な距離Pの決定を可能にする。他の場合には、胸膜腔E間隙が増加し、物理的間隙(典型的に>0.5 mm)が黒い帯または肺の周りの空間によってより目立つ時には、肺の表面(内臓胸膜)を胸壁の表面(壁側胸膜)から識別できる。そのような場合には、肺の表面(臓器)までの距離Pを測ることがより適切である。肺の表面は内臓胸膜としても言及される。
【0200】
図10は、ブタの生体研究において、ヒドロゲル栓7を内臓胸膜Gの下の肺周辺に送達した生検前の18Gヒドロゲル送達針4を示すCTスキャン部分図である。ブタの重量は、約30 kgであり、粘性栓はおよそ500μlの平均分子量1.8~2MDaの水中ヒアルロン酸ナトリウム50 mg/mlから構成される。このヒドロゲル送達針4は、胸膜腔または肺の表面に対してヒドロゲル捌け口6の位置の識別を補助するためにX線透過領域とX線不透過性マーカーバンド32から構成される。
【0201】
図11Aは、ヒドロゲル栓7を送達した後の患者の体内でのヒドロゲル送達針4の詳細な概略図である。同軸カニューレ2の遠位先端2Aが胸壁Bの胸膜腔から距離Pに位置付けられる。典型的なPの距離は3~20mmである。
【0202】
他の実例や、他の外科処置において、例えば、異なる臓器を標的とする場合、Pは同軸カニューレの遠位先端からいずれかの組織界面、体腔、臓器または血管外表面までの距離を表す。
【0203】
送達針4は、同軸カニューレ2を通して肺組織Dに挿入される。ヒドロゲル捌け口6は胸膜腔Eから距離X遠位、または同軸カニューレの遠位先端2Aから距離P+Xに位置付けられる。Xの典型的な距離は0.1~6 mm、好ましくは1~4 mmである。
【0204】
ヒドロゲル捌け口6は、また、貫通針先端の立脚領域の近位側に相当する、針の貫通端5の近位側から距離Tに位置する。Tの典型的な距離は0.5~15 mm、好ましくは1~7 mmである。
【0205】
同軸カニューレ2の遠位先端2Aは針先端の立脚領域の近位側に相当する、針の先端5の近位側から距離Yに位置する。Yの全距離は、Y≒P+X+Tである。
【0206】
経胸的針アクセスを必要とする処置に関して、ヒドロゲル捌け口6が針先5から離れた位置に置くことでいくつかの利点がある。もし、ヒドロゲル捌け口6が傾斜先端を持つ慣用の針の末端にある場合、ヒドロゲル栓を正しい位置に送達するためには、針の鋭利な先が内臓胸膜および肺の周囲の非常に近くにくる。この時、鋭利な傾斜先端が、呼吸のために常に動いている内臓胸膜および肺組織を引き裂く可能性が高い。それ故に、鋭利な針先を内臓胸膜Eからある程度の距離を置いて位置付ける必要がある。加えて、ヒドロゲル捌け口6を遠位先端5から離れて持つことは、送達針4の周りに、均一で同心円状のゲル栓7シールを形成できる利点がある。
【0207】
図11Bは、ここに提示されたいずれの例を含むことができる他の例を示す。この例においては、ヒドロゲル捌け口6は、送達針4の遠位先端5に位置し、標準的な多傾斜研削または類似の方法で形成できる。この設定では、Y≒P+Xである。
【0208】
図12A-12Cは、経皮的生検処置の際ヒドロゲル栓の注入の後に切除し、エタノールで固定した肺組織切片の画像である。注入されたヒドロゲル栓は、500μlの水中ヒアルロン酸ナトリウム50 mg/mlからなり、ヒアルロン酸ナトリウムの平均分子量は1.8~2MDaである。ゲルは、可視化するために5%水性墨汁染色を使って形成される。図12Aは、肺表面下に見えるゲル栓(破線円で囲まれる)を示す。図12Bは、メスを使ってゲル栓の中央平面に沿って解剖した切片の画像である。図12Cは、解剖されたゲル栓の近接画像である。固定過程は、大部分のゲル栓をそのまま残した。ゲル栓が単一体の物質から形成されていることが明らかである。肺組織と栓の間に明確な境界があり、注入部位またはどの部位でも処置中および処置後に粘性ゲル材が肺組織に染み込まないことを表示する。
【0209】
図13A1-13B2は、本発明の追加の例による一般に参照番号70で表される医療機器を示し、先の図8A-8Hの実施形態で参照される部品には同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態は、図8A-8Hの実施形態に類似するが、最遠端31Aがカニューレの近位ルアーロック2Bに接するカニューレ延長部材31および位置決め機構8の固定ハウジング16の近位に伸びる近位端31Bを備えた代替のカニューレ深度ガイドを持つ。カニューレ延長部材31は、送達針4の中央部の通路を収容する中央スロットまたは内腔を持つ構造体である。これは、送達針と位置決め機構8に相対した軸方向移動のために、送達針4に同軸的に据え付けられる。カニューレ延長部材31は、また、固定ハウジング16と送達針4を連結する軸方向に延長されたスロットを含む。図13A1に示される第一の位置において、カニューレ延長部材の最遠端31Aは、可動ハブの最遠端17Aと同一線上にある。カニューレ延長部材の最遠端31Aのスナップフィットまたは干渉機能によって可動ハブの最遠端17Aを保持することができる。この位置では、カニューレ延長部材の近位端31Bは、固定ハウジング16から距離Y1の空間にある。図13A2に示される第二の位置において、カニューレ延長部材31は、カニューレ2を前方に推すように前進させる。最も前進した位置において、近位端31Bは、固定ハウジング16の最近端に接する。この位置で、カニューレの最遠端2Aは送達針4とヒドロゲル捌け口6を、その貫通遠位先端5を覆わない位置まで覆う。図13B1に示されるように、位置決め機構8は、可動ハブ17 に相対して固定ハウジング16移動によって調節され、送達針4を遠位に同軸カニューレ2を通して目盛り尺20に表示される距離P2まで動かす(ここでP2>P1)。P2の位置において、可動ハブ17とカニューレ延長部材の最遠端31Bの離隔は、距離Y2に比例して増加する(ここでY2>Y1)。図13B2に示される第二の位置において、カニューレ延長部材31は、カニューレ2を前方に推すように前進させる。最も前進した位置において、近位端31Bは、固定ハウジング16の最遠端に接する。この位置で、カニューレの最遠端2Aは送達針4とヒドロゲル捌け口6を、その貫通遠位先端5を覆わない位置まで覆う。図13A-13Bで説明した機構が、深度ガイドとして働き、ユーザーがカニューレ2を最遠端2Aが針先端5に位置しヒドロゲル捌け口6を覆う正しい位置まで、物理的にカニューレ2に触れることなく進行させることができる。
【0210】
図14A-14Hは、図13A-13Bの機器を使った方法を示すが、これは、図8A-8Hを参照とて説明した方法とほぼ同じである。処置の説明は次のとおりである。
【0211】
図14A:CT誘導下、コア針3を包含する同軸カニューレ2を疑われる肺小結節Jに揃え、針の先端が胸膜腔Eに近位の胸筋B内に配置されるように定義された距離だけ胸壁に経皮的に進行させる。
【0212】
図14B:コア針3は同軸カニューレ2から取り除かれ、カニューレ2の中心線縦断面に沿った胸壁のCT画像を撮影する。CTスキャンソフトを使い、カニューレ最遠端2Aから胸膜腔Eまでの距離(P)を決定する。
【0213】
図14C: (図13A1に示されるような)送達機器10の位置決め機構8は、目盛り線16Aが目盛り尺20上で距離P(先に測定されたとおり)と揃うように、可動ハブ17を固定ハウジング16に相対的に動かすことで調節する。同軸カニューレ2を通して、機器70のヒドロゲル送達針4を、可動ハブ17の最遠面17Aが同軸カニューレ2の近位のルアーロック2Bに接するまで、完全に進行させる。カニューレ延長部材31の最遠面31Aも近位のルアーロック2Bに接する。この深度で、送達針4のヒドロゲル捌け口6がカニューレの端からP+Xで計算される距離に位置付けられる。これは、胸膜腔Eの遠位の肺組織内の望ましいヒドロゲル捌け口6の注入深度に等しい。送達針4に付けられたX線不透過性マーカーバンド32の胸膜腔Eに対する位置を使って、必要であれば、ヒドロゲル捌け口6の最終深度を調節できる。これは、マーカーバンド32を胸膜腔Eと揃えることで達成される。
【0214】
図14D: ヒドロゲルの入ったシリンジ15が機器のルアーロック12に取り付けられ、ある量のヒドロゲルが送達針4を通して注入され、肺の胸膜腔Eから標的距離X遠位にあるヒドロゲル捌け口6から押し出される。粘弾性ヒドロゲルは、針を取り囲み、肺組織を押し離し、針の周りに単一の途切れのない環状の粘弾性閉塞栓7を形成する。
【0215】
図14E: CT誘導下、同軸カニューレ2および位置決め機構8付きの送達針4を含む医療機器10全体を一斉に疑われる肺小結節Jに向けて進行させる。貫通針先端5を肺小結節Jの近隣または内部に位置付ける。(この過程で、同軸カニューレ2のメスルアーロック2Bが位置決め機構8の遠位端のオスルアーロックと係合する機構を備えても良い-図示されていない。)
図14F: カニューレ延長部材31を、近位端31Bが位置決め機構8の固定ハウジング16の近位面に接するように前進させる。カニューレ延長部材31が位置決め機構8を通して延長するにつれ、その最遠端31Aがカニューレルアーロック2Bに接し、カニューレ2をあらかじめ設定された距離前方に推し進める。その結果、同軸カニューレ2の最遠先端2Aが送達針4の貫通針先端5の直前に位置付けられ、ヒドロゲル捌け口6が覆われる。この過程は、カニューレの最遠先端2Aが生検を行う肺小結節Jの近隣または内部に位置付けられるため、望ましい。これらの過程により、同軸カニューレ2の小結節J内での再位置付けを追加のCTスキャン測定することなく達成できる。
【0216】
図14G: 送達機器70が同軸カニューレ2から取り外され、肺小結節Jの生検を行うための生検針K(この場合、コア生検針)に置き換えられる。
【0217】
図14H: 生検針Kと同軸カニューレ2の両方が患者から取り外され、粘弾性閉塞栓7が、機器10によって残された内臓胸膜Gから遠位の穴L1を埋める。
【0218】
図15A-15Cは、本発明のどの実施形態にも組み込むことができる一般に参照番号40で表される一実施形態の医療機器を示し、先の図13A-13Bの実施形態で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態は、ここに記載されるどの機器でも使え、 位置決め機構8の固定ハウジング16と可動ハブ17がネジ山付き係合機能36を備え、可動ハブ17に相対する固定ハウジング16の回転がマイクロメーター機器に類似した部材の相対的な軸方向移動をもたらすことを除いては、図13A-13Bの実施形態に類似する。図15Aは、第一の位置にあるカニューレ延長部材31を持つ機器40の図であり、同軸カニューレ2の近位ルアーロック2Bが可動ハブの最遠面17Aに接する。カニューレ延長部材31の最遠面は、また、可動ハブの最遠端17Aと同一線上にある。目盛り尺20が可動ハブ17に付けられ、目盛り線16Aが固定ハウジング16に付けられる。同軸カニューレ2は断面図に示されていない。図15Bは、図15Aの機器40の断面図を示す。固定ハウジング16の内面と可動ハブ17の外面に配置されたネジ山付き係合機能36が見える。送達針4を位置決め機構8の固定ハウジング16に接し続けたままにさせるためにバネ39が備えられる。バネ39は、ネジ山機能の反動の解消にも役立つ。バネ39は、また、可動ハブ17に相対した固定ハウジング16の回転に打ち勝つ抵抗力として働く。図15Cは、カニューレ延長部材31が第二の位置にある機器40を示し、近位端31Bが固定ハウジング16の最遠端に接するようにカニューレ延長部材31を最も前進した位置に進行させることによって同軸カニューレ2が送達針4の貫通遠位先端5まで進行される。
【0219】
図16は、一般に参照番号50で表される追加の実施形態による医療機器を示し、先の図8A-8Hの実施形態で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態は、図8A-8Hの実施形態に類似するが、それに加えて、胸膜腔と胸壁に相対してヒドロゲル捌け口6を位置付けるための手段として周辺組織特性を検出および比較するために使われるデジタル深度計51およびセンサー52が組み入れられる。センサーによって測定された特性(パラメーター)は、電気的、化学的、光学的、音響、機械的および熱的特性であってよい。組織電気パラメーターは、生体インピーダンス、静電容量および抵抗性を含む。組織化学パラメーターは、pHレベル、血中濃度および温度を含む。光学特性は、X線透過性および光に対する応答を含む。機械特性は、剛性、追従性、強度および弾性を含む。熱的特性は、熱伝導率および温度を含む。ここで使われるセンサーは、組織のパラメーター検出するように構成されても良い。以下の用語を‘センサー’と互換的に使うことができる:‘変換器’、‘送信機’、‘スイッチ’、‘トランジスター’および‘アクチュエーター’。様々な種類のセンサーがここに説明される送達機器での使用に考えられる。センサーは、運転に外部電源を要しても要しなくても良い。センサーは、信号発出および検出モジュールを持った統合センサーであって良い。センサーは、針の円周上または針の軸方向に沿って、もしくは他の配置によって近隣に配置された別々の信号発出および検出モジュールを含んでいても良い。センサーは、電子センサーを含んでいてもよく、組織の電気特性、組織の機械特性または組織の化学特性を検出するように構成されても良い。センサーは、送達針4の外部にあってもよく、また、送達針4内に包含されてあっても良い。センサーは、圧力センサー、例えば、MEMSに基づいた圧力センサーからなってもよく、針が組織を貫いて標的部位へ向けて挿入される際に周囲の組織から針にかかる力を検出するように構成される。機器には、電子制御ユニットおよびユーザーインターフェース55が備えられてもよく、これらは、位置決め機構8の一部として、または位置決め機構の外部に位置し電子ケーブル54を介して取り付けられる。電子制御ユニットおよびユーザーインターフェース55は、電池式であっても、外部電源によって充電されても良い。臨床医に深度や組織特性を知らせるためにLED照明53や電子表示51がユーザーインターフェース55に備えられても良い。センサーは、標的部位で、例えば、悪性組織を健康な組織から識別するような診断目的に使用してもよい。図16に示されるデジタル深度計51および/またはセンサー52および追加の機能は、ここに開示されるどの実施形態にも任意に使用できる。センサー52は、また、治療的効果をもたらすために、加熱または冷却要素に置き換えおよび/または組み合わせることができる。例えば、ラジオ波、超音波、マイクロ波焼灼電極を送達針4に組み入れることができる。機器には、コイル電極、磁気電極といった他の要素、および他のエネルギー送達要素を含むとこができる。
【0220】
図17は、一般に参照番号60で表される追加の実施形態による医療機器を示し、先の図8A-8Hの実施形態で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態は、図8A-8Hの実施形態に類似するが、胸膜腔に相対するヒドロゲル捌け口6を位置付ける手段として、送達針4の最遠端に胸膜圧測定のための経路61および側方流通口63を含む。経路61は、送達針4の内部または外部のチューブの形態をとることができる。経路は、機器の近位端の圧力ゲージ62に取り付けられる。圧力ゲージ62は、機械的または電子的性質であり、位置決め機構8の内部または外部に位置する。これらの機能は、ここに記載されるいずれの機器およびシステムの実施形態に使用できる。
【0221】
いずれの理論にも捉われず、図18A-18Eは、ここに記載されるヒドロゲル栓シールの効果に望ましいと考えられる変数に関する体外研究結果を示す。図18Aは、実験構成を図示する。この研究には、図2Bに示したものと類似の様式の17G同軸針2を持った18Gヒドロゲル送達針4を用意した。肺82の表面内のヒドロゲル捌け口6を通した注入深度を決定するために、目に見える黒線83が18G送達針4の外表面にヒドロゲル捌け口6から既知の距離で刻印される。この線は、注射深度Xを目標とするために肺の表面と視覚的に揃えられる。成熟ブタ(80~120 kgのブタ)の肺82を地元の屠殺場から入手し、挿管チューブ81を通して11cmH2Oの陽圧換気につなげた。圧力はすべての研究で一定であった。全テストで、一定量のヒドロゲルを含んだ1 mlシリンジ15を使って、ヒドロゲル送達針4を通してヒドロゲル栓7を肺の表面下、距離Xに注入した。次に、ヒドロゲル送達針4および17G同軸カニューレ2の両方を同じ穴とヒドロゲル栓7を通して肺に同軸カニューレ2の最遠先端から30 mmの深度まで進行させる。次に、肺組織を室温で水浴84に入れ、水面下で針構築体を肺組織から引き抜いた。気泡の存在を記録した。肺から出る気泡が止まった時に、ヒドロゲルシールが働いたと判断された。結果は、100*((気泡なしの試験数)/(総試験数))と同等の効果百分率として図18B-18Eに示される。以下は、これらの個々の研究からの結果の記述である。各変数について、10試験が行われ、すべての試験が今後の分析のために記録された。
【0222】
図18Bは、異なるヒドロゲル濃度(これは、下記図19および図20に示されるゲル粘度と剛性に関わる)での有効度を示す。ヒドロゲルは、平均分子量1.8~2MDaのヒアルロン酸ナトリウム粉末を純水とさまざまな濃度;20 mg/ml、30 mg/ml、40 mg/ml、50 mg/ml、60 mg/ml、で混合して生成した。異なる濃度の効果を試験する間に、注入深度(肺の表面下2mm)、注入量(500μl)および注入速度(通常)はすべて一定とした。結果は、40 mg/mlより低い濃度では、ヒドロゲルシールは、肺からの空気の漏洩を防止効果が低かった。
【0223】
図18Cは、異なる注入量での有効度を示す。異なる注入量でのヒドロゲルの効果を試験する間に、ヒドロゲル濃度(60 mg/ml)、注入深度(肺の表面下1mm)および注入速度(通常)はすべて一定とした。結果は、300μlおよび500μlに比べて、100μlで著明な有効度の低下が見られた。より低い量の50μlで予備試験を行なったが、肺からの空気の漏洩防止にはすべて無効であった。
【0224】
図18Dは、異なる注入深度での有効度を示す。ヒドロゲルの肺への異なる注入深度の効果を試験する間に、ゲル量(300μl)、ゲル濃度(60 mg/ml)および注入速度(通常)はすべて一定とした。結果は、ゲル栓が内臓胸膜までの肺の周辺部位に近いほど最良の結果を達成した。肺の周辺部位からより深い注入深度≧4mmで行なった予備試験において、効果はさらに減少した。
【0225】
図18Eは、ヒドロゲルの肺への異なる注入速度での有効度を示す。ヒドロゲルの異なる注入速度の効果を試験する間に、ヒドロゲル量(500μl)、ゲル濃度(60 mg/ml)およびゲル深度(肺の表面下2mm)はすべて一定とした。おおよその注入速度は、遅い(6秒)、通常(3秒)および速い(<1秒)とした。最良の結果は通常の注入速度であったという結果に基づくと、注入速度と効果の関係は明確ではない。
【0226】
図19は、上記の図18A-18Eに概要された実験に使用されたゲルの粘度データを示す。ヒドロゲルは、平均分子量1.8~2MDaのヒアルロン酸ナトリウム粉末を純水とさまざまな濃度で混合して生成した。粘度の測定は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製AR2000型のレオメーターを使って、円錐平板形状4cm、コーンプレート角度4°、切断間隙112μmおよび測定温度25℃で行われた。結果は、ヒドロゲル濃度の増加に伴う粘度の増加を示した。ヒアルロン酸ヒドロゲルのゼロせん断粘度は、30 mg/mlの約1000Pa.sから60 mg/mlの約8000Pa.sまで変化した(1Pa.s=1000cP)。全てのゲルが増加したせん断速度でずり減粘特性を示し、全てのゲルがせん断速度10s-1で<50Pa.sの粘度を持っていた。
【0227】
図20は、図18A-18Eに提示した注入試験に使われたヒドロゲルの剛性を決定するための圧縮試験の結果を示す。増加する濃度のヒアルロン酸ヒドロゲルを前記のように調整した。ヒドロゲルは、ヒドロゲルをダイに押し付け5mm厚のシートとして形成し、コア生検パンチを使い、高さ5mm、直径6mmの円柱を作成した。結果を肺組織と比較するため、同等の高さ5mm、直径6mmの円柱状肺実質試料を豚の死体の肺周辺の肺実質から切り取った。肺組織とヒドロゲル円柱状試料の圧縮試験は、Zwick万能試験機を使い5N負荷セルおよび歪み速度3mm/minで測られた。結果から明らかなように、全てのゲルの圧縮剛性が、肺実質の圧縮剛性より大きい。肺組織の剛性は825±95Paであった。ヒドロゲルの剛性は、40 mg/mlの1075±125Paから60 mg/mlの3125±403Paまで変化した。30 mg/mlを含むヒアルロン酸ヒドロゲルでは直径6mmの円柱状試料が作成できなかったため、その結果は提示されない。
【0228】
図21A-21Cは、動的振動試験法によって測定したゲルの粘弾性特性を示す。使われた試験レオメーターは、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製AR2000型である。動的振動試験は、ひずみ制御下に円錐平板形状4cm、コーンプレート角度4°、切断間隙112μm、測定温度25℃および周波数範囲0.1~10 Hzで行われた。ゲルは、分子量1.8~2MDaのヒアルロン酸ナトリウム粉末を純水とさまざまな濃度;20 mg/ml、30 mg/ml、40 mg/ml、50 mg/ml、60 mg/ml、で混合して生成した。図21A-21Cに、動的粘弾性(貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、タンジェントデルタtanδ(G”/G’))を0.1~10 Hzの周波数範囲で提示する。ゲル濃度が増加するにつれ、G’およびG”の両方が明らかに増加する。全てのゲルで、tanδは、1Hzの周波数で0.2~0.6の範囲である。最低濃度のゲル30 mg/mlが1Hzで最高のtanδ約0.55を示す。同様の試験(結果は提示されていない)で、分析温度が37°Cに上昇されたが、ここに提示される分析温度25°Cでの値と変化がないか僅かな変化(<5%)を示すのみであった。
【0229】
図22は、動的振動試験を使って測定したヒドロゲルの歪み掃引データを示す。試験は、歪み制御下に円錐平板形状4cm、コーンプレート角度4°、切断間隙112μm、測定温度25℃、周波数1Hzおよび歪み範囲0.001~100%で行われた。30 mg/mlより高濃度のヒドロゲルは全て1%歪みまで比較的安定であった。全てのゲルがずり減粘化挙動を示し、全てのゲルが100%ひずみで100Paより小さい貯蔵弾性率G’を示した。同様の試験(結果は提示されていない)で、分析温度が37°Cに上昇されたが、ここに提示される分析温度25°Cでの値と変化がないか僅かな変化(<5%)を示すのみであった。
【0230】
図23A-23Bは、繰り返しせん断応力下でのゲルのずり減粘および回復の試験を示す。段階的ひずみ試験を、50 mg/mlヒアルロン酸ヒドロゲルを使い円錐平板形状4cm、コーンプレート角度4°、切断間隙112μm、測定温度25℃、周波数1Hzおよび段階的ひずみ率1%~100%~1%で、異なるひずみ率間の6秒遅れで行われた。G’が1%で1900 Paから100%で約20Paまで落ち、tanδが1%で約0.4から100%で約0.9まで増加した。これは、高い剪断応力が加わると剛性と粘度が有意に減少することを意味する。興味深いことに、ひずみ率が1%に戻ると、G’およびtanδの両方がほぼ完全に回復した。
【0231】
図24A-24Cは、SolidWorks(登録商標)を使って作成した3D-CADモデルを使って集められたヒドロゲルゲル栓の位置付けと体積データの分析を示す。分析は、肺の表面下へのゲル栓の送達に関する大きさと深度制約を示す。図24Aは、18G送達針4を通した粘性のヒドロゲル栓7の肺周辺、肺の内臓胸膜表面Gのすぐ下への送達を表す3D-CADモデルを示す。ゲル栓は、送達針4の周りに環状の球形プロフィールを形成するように送達針4の捌け口6を通して注入される。ヒドロゲル捌け口6の注入深度は、捌け口の肺表面Gからの距離として提示され、Xで表される。この分析では、ゲル栓7が充填され外側へ理想的な放射状に拡大し球形プロフィールを形成すると想定される。栓の中心直径はCφで表される。栓が拡大して内臓胸膜Gに接する時、内臓胸膜Gで円形のシールプロフィールを持つ球状断片を形成する。このシールプロフィールの直径は、Sφで表される。図24Bは、肺表面のシール直径と異なる注入体積および深度の関係を示す。肺の表面下1mmの浅い注入深度では、ほとんどのゲル材が肺の表面に存在する。例えば、注入体積500μl、深度1mmである場合、直径約11.4mmの栓シールを肺の表面に形成することができる。同様に、注入体積200μl、深度1mmでは、直径約8mmの栓シールを肺の表面に形成することができる。注入がより深くなるにつれ、より少ない物質が肺の表面に存在し、それにより、シールの効果が減少する。データが明らかに示すように、注入深度が肺の表面下5mmの場合、肺表面に幾らかのゲルが存在するには500μlより大きい体積が必要である。同様に、注入深度が肺の表面下4mmの場合、肺表面に幾らかのゲルが存在するには300μlを超えた体積が必要である。図24Cは、異なる注入深度および注入体積での栓の中心直径データを表す。直観的に注入体積が大きいほどゲル栓直径が大きくなる。より浅い深度では、同等のゲル栓中央直径を達成するのにより少ない注入体積を要する。12 mmのゲル栓直径を達成するには、注入深度1mmでは556μlが必要であるのに対し、注入深度5mmでは同等の直径を達成するのに873μlが必要である。肺組織は、通気された実質と肺の周辺部まで相互接続された経路から構成される。それゆえ、肺の周辺の密閉または閉塞されていないいずれの領域は気胸につながるかもしれない。シール栓の範囲や大きさも関連している。肺の周辺部に追加の物質があると、空気の漏洩に対してより強いシールを形成する。
【0232】
図25A-25Cは、本発明の他の実施形態に関わるシステムを使って肺生検処置を行う方法を図示し、先の本発明の実施形態で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態では、システムは、診断または治療処置を行う前または行った後に、粘弾性ヒドロゲルのシール栓を送達するための同軸送達システムを含む。図25Aを参照にすると、胸壁Bおよび肺組織Dにわたる同軸カニューレ2が示される。生検針は取り外されている。この場合のカニューレ2は開口部2Cを持ち、それは、単一開口部であっても多円周の開口部で構成されていても良く、カニューレ2の遠位先端の近位に位置する。開口部2Cは、チューブのこの位置のかなりの部材を断面に沿って取り除き蛍光透視誘導下で識別できるか、高密度物質を含むX線不透過性マーカーバンドをチューブの断面に備えるように設計されても良い。開口部の軸方向の長さは、約0.3~2 mmである。図25Bは、ヒドロゲル送達針4がカニューレ2に挿入され、カニューレ内の開口部2Cがヒドロゲル送達針4内のヒドロゲル捌け口6と揃うように調節された図を示す。ヒドロゲル送達針4は、同軸カニューレ2のメスルアーロック2Bと係合するオスルアーロック4Bまたは同様のコネクターを含んでも良い。次に肺のCT画像を撮影し、揃った開口部と胸膜腔Eの間の距離を決める。次に、開口部が肺組織の胸膜腔Eのすぐ遠位に位置するように、カニューレ2と針4を一緒に一定距離引き戻す(図25C)。次に、粘弾性ヒドロゲルを肺に注入するためにシリンジ15を作動させ、胸膜腔Eのすぐ遠位の肺組織内でカニューレの周りに環状のシール栓7を形成する。次に、針とカニューレを引き戻し、ヒドロゲルの自己回復性によって環状栓が一緒に流れ閉塞し、胸膜腔のすぐ遠位の針経路を埋める。
【0233】
図26Aから26Cは、一般に参照番号80で表される本発明の追加の実施形態による医療機器を示し、先の実施形態(図25Aから25Cを含む)で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。図26Bは、図26Aの断面図を示す。医療機器80は、近位ハブ2Bおよびカニューレ2の最遠先端の近位に位置する開口部2Cを持ったカニューレ2を含む。医療機器80は、また、最遠先端にヒドロゲル捌け口6を持った送達針4を含む。送達針4は、オスルアーロック4Bにその近位端で接続される。送達針4にオスルアーロック4Bを介して流動的に連結したポリマー管11がヒドロゲル送達シリンジに取り付けられるように構成されたルアーロック12のようなコネクターとして終結する。中心棒81がオスルアーロック4Bに接続し、送達針4の中心腔を通して、貫通先端5を形成する(または、と結合する)送達針4の遠位端を越えて延長する。中心棒81は、硬質プラスチックや複合材といったX線透過性の材料から構築されてもよい。図26C(断面図として示される)は、送達針4がカニューレ2を通して挿入された医療機器を示す。送達針構築体の貫通先端5がカニューレ2の最遠先端を越えて延長する。送達針4のヒドロゲル捌け口6は、カニューレ2の開口部2Cの近位に位置する。(CT誘導処置のような)X線画像誘導処置の際に、この医療機器の構成は、開口部2C にX線透過性をもたらし、臨床医が密閉ヒドロゲル栓の送達のための開口部2Cを位置付けることができるという利点がある。ヒドロゲル材が注入される時、ゲル材はヒドロゲル捌け口6から、それに続いて開口部2Cを通して押し出される。貫通先端5が主にカニューレ2の内腔を満たしているため、ゲル材がカニューレ2の先端を通過することが防がれる。
【0234】
図27A-27Bは、一般に参照番号90で表される本発明の追加の実施形態による医療機器を示し、先の実施形態(図8A-8Hを含む)で参照される部品には、同じ参照番号が割り付けられる。この実施形態は、図8A-8Hの実施形態に類似するが、追加として、送達針先5および側方流通口6を同軸カニューレの遠位先端を越えて設定された深度まで進行させるように設計された発射機構91をさらに組み込む。送達針に発射機構を備える利点は、肺や他の臓器の表面下に送達側方口6を位置付ける際に、例えば、肺胸膜といった臓器膜の突出の可能性を避けることである。突出は、送達針の遅い進行によって起こりうる膜の内側への陥没である。図8A-8Hに記載される実施形態と同様に、医療機器90は、送達針4に結合された固定ハウジング16を備える。固定ハウジング16はハンドル92の内部を自由に移動することができ、そして固定ハウジング16は、固定ハウジング16の近位面とハンドル92の内部近位面の間に圧縮状態で維持される圧縮バネ97によって前進した位置に保持される。圧縮バネ97は、固定ハウジングをハンドル92の前方に収容され、ハンドル92に組み込まれた位置決め機構8に対して押し付ける。位置決め機構8は、外部ネジ山95付きの前方回転ネジ94を含み、深度表示器93A付きの可動運搬体93の内部ネジ山と係合する親ネジ型の機構から構成される。ネジ94を回転させることによって、ユーザーは、可動運搬体93の位置をハンドル92に備えられた目盛り尺20に相対して移動することができる。この位置決め機構8が、効果的に発射機構91に可変深度設定機能を与え、発射時に針先と側方流出口が発射機構91(および同軸カニューレ2)の最遠面から延長する距離を変更することができる。図27Bに示されるように、発射機構91を係合するには、送達針4に結合しているルアーロック12を引くことにより送達針4を引き戻す。送達針4が完全に引き戻された位置にあり、バネ97が完全に圧縮された時、可動ハブ17の外向きの歯止め17Dがハンドル92の内向きの歯止め92Dが係合し、送達針4の前方への動きを防ぐ。この構成では、針は下処理されている。図27Bは、また、発射機構91の最遠面が同軸カニューレルアーロック2Bの最近面と接するように、同軸カニューレ2を通して進行した送達針4を示す。この構成では、送達針の針先5は、ちょうど同軸カニューレ2の最遠先端にあるか、同軸カニューレ2の最遠先端の近位にある。針を前方に発射するために、ボタン98が備えられ、それを押した際に、可動ハブ17とハンドル92の歯止め(92D、17D)の係合が外れる。
【0235】
図18A-18Eおよび図24A-24Cの両方に提示された結果に基づいて、理想的なヒドロゲルの送達は、肺の表面から約1mm下である。しかし、いくつかの理由により、ここに記載される送達機器を使ってこの深度を標的とするのが難しい場合がある。図9は、同軸カニューレの最遠先端から胸膜腔Eまでの距離Pの測定のCTスキャンを示す。Pの測定の誤差は、同軸カニューレの遠位先端の影の影響であるかもしれない。誤差は、また、CTスキャナーが同軸カニューレの軸に垂直ではなく角度でスキャンされたためかもしれない。この場合、Pはその値によって過小評価される。こうした理由から、1mmより大きい標的深度が好ましい。標的深度0.1~6 mm、好ましくは1~4mmが標的注入深度として適切であると考えられる。
【実施例0236】
実施例1:ヒアルロン酸および架橋されたゼラチンを含む二相性粘弾性ヒドロゲルを以下の方法で生成した。A型ブタ由来ゼラチン(300Bloom)を7%w/vで水に40°Cで完全に溶解し、一晩かけて4°Cで固めた。その後、得られたゲルを-40°Cで凍結し25°Cおよび0.1mbarの一定真空で乾燥することにより凍結乾燥した。次に、乾燥した組成を真空下(0.001mbar)、140°Cで24時間加熱し、架橋させた。次に、スポンジを粗く切断し、凍結粉砕装置(モデル:75 Spex SmplePrep, LLC)を使って微粉末に粉砕した。粉末は、125μmふるいを使ってふるい分けし、その結果得られた粉末は、マスターサイザー3000 レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical ltd.)を使って測定した粒度分布がDx10=7.4μm、Dx50=32.8μm、Dx90=95μmであった。脱水加熱架橋されたゼラチン粉末をヒアルロン酸ナトリウム粉末(分子量:1.8-2MDa)と混合し、混合粉末をリン酸緩衝生理食塩水で以下の濃度で水和した;ゼラチン:130mg/ml、ヒアルロン酸ナトリウム:35mg/ml。その結果得られたヒドロゲルをシリンジに充填した。ヒドロゲルを、図8A-8Fに概要されるCT誘導下経胸針生検処置の際の気胸の防止に使用した。この処置は、ブタモデルを使って行われた。生検処置中に、ヒドロゲルは針の周りに環状のシール栓を形成し、そして針が取り除かれた後には、ヒドロゲルは自己回復し、気胸を防止した。CTスキャン追跡で、ヒドロゲルは少なくとも1週間その部位に留まった。
【0237】
実施例2:ヒアルロン酸および架橋されたゼラチンを含む二相性粘弾性ヒドロゲルを以下の方法で生成した。A型ブタ由来ゼラチン粉(300Bloom)を凍結粉砕装置(モデル:75 Spex SmplePrep, LLC)を使って微粉末に粉砕した。粉末は、125μmふるいを使ってふるい分けし、その結果得られた粉末は、マスターサイザー3000レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical ltd.)を使って測定した粒度分布がDx10=5.4μm、Dx50=35.5μm、Dx90=90μmであった。その結果得られた微粉末を、真空条件下(0.001mbar)160°Cで24時間加熱処理し、架橋させた。脱水加熱架橋されたゼラチン粉末をヒアルロン酸ナトリウム粉末(分子量:1.8-2MDa)と混合し、混合粉末をリン酸緩衝生理食塩水で以下の濃度で水和した;ゼラチン:100mg/ml、ヒアルロン酸ナトリウム:45mg/ml。その結果得られたヒドロゲルをシリンジに充填した。ヒドロゲルを、図8A-8Fに同じように概要されるCT誘導下経胸針生検処置の際の気胸の防止に使用した。この処置は、ブタモデルを使って行われた。生検処置中に、ヒドロゲルは針の周りに環状のシール栓を形成し、そして針が取り除かれた後には、ヒドロゲルは自己回復し、気胸を防止した。
【0238】
上記の方法を使って、様々な濃度の二相性ゲルを流動学的および実験的に評価した。ヒドロゲルの動的粘弾特性および動的粘性の測定は、以下の条件でティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製AR2000型のレオメーターを使って行われた。
測定方法:振動法、ひずみ制御
測定温度:25℃
形状:コーンプレート角度4°
測定形状:4cm
切断間隙:112μm
周波数:1 Hz
【0239】
【表1】
【0240】
好ましい実施形態において、粘弾性ヒドロゲルは、経胸的針アクセスを必要とする処置を行う際に、肺の内臓胸膜のすぐ下に注入され、以下の特徴を持つことで、気胸を防ぐことができる:
1.ヒドロゲルは、シリンジのずり応力がかかる際、十分に低い粘度を持ち、ヒドロゲルを針、カテーテルまたは他の腔状機器を通して標的部位へ注入することができる。
【0241】
2.一旦針を出ると、ヒドロゲルは素早い揺変性回復により、肺組織の浸潤を防ぐのに十分な剛性を持つ。
【0242】
3.一旦針が取り去られると、粘性流動の要素によりゲルが流れ戻り、単一体を形成する。ゲルが流れ戻り、針によって残された肺組織及び内臓胸膜の空間を埋める。これは、好ましくは高いtanδに依存する十分な流動性によって達成される。
【0243】
4.ゲルは十分な剛性と貯蔵弾性率(G’)を持ち、肺から時期尚早に排出されず、治癒が起こるまで標的部位に残る。
【0244】
前述の記載は、本発明の現時点で好ましい実施形態の詳細である。これらの実施において、これらの記述を考慮して当業者による数々の修正や変更が想定される。これらの修正や変更もここに添付される請求項の範囲内に含まれるものと意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル捌け口(6)を備えたヒドロゲル送達針(4)とヒドロゲル送達針(4)を受け入れるように構成された内腔を持つ同軸カニューレ(2)を含む医療機器、および
注入可能なヒドロゲルを含み、
注入可能なヒドロゲルが、針送達後に肺組織浸潤を防ぐのに十分な粘弾性と剛性を示し、肺組織を送達針から押し離すのに十分な粘弾性を示すように構成されたヒアルロン酸(HA)で構成された粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルであることを特徴とする
低襲撃経皮処置中に形成された肺組織内の経路を閉鎖するシステム。
【請求項2】
注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルが25℃で1Hzおよび歪み率1%のレオメーターで測られた動的粘弾性において、少なくとも400Paの貯蔵弾性率(G’)およびtanδ(G”/G’)が0.1から0.8を示す請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
注入可能な粘弾性ずり減粘化ヒドロゲルの圧縮弾性率が肺組織の圧縮弾性率より大きい、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
ずり減粘化ヒドロゲルが少なくとも1週間の体内滞留時間を示すように構成された、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
ヒドロゲル捌け口(6)がヒドロゲル送達針(4)の先端(5)から1~15mmの位置に配置された、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
粘弾性ヒドロゲルが連続相ポリマーからなる連続相およびミクロン単位の不溶性ポリマー粒子からなる分散相から構成される、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が100ミクロンより小さい平均寸法である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
連続相ポリマーがヒアルロン酸(HA)またはその塩を含む請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が架橋されたゼラチンから形成される請求項6~8の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
粘弾性ヒドロゲルがミクロン単位の2~20%(w/v)の不溶性ポリマー粒子を含む請求項6~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
ヒドロゲル送達針(4)が貫通先端(5)を含む請求項6~9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
ヒアルロン酸が架橋されておらず、ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が脱水加熱架橋されている請求項8~11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
ミクロン単位の不溶性ポリマー粒子が架橋されたゼラチン粒子である請求項6~12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
システムがヒドロゲル送達針(4)と流体的に接続されるように構成されるシリンジ(15)をさらに含み、粘弾性ヒドロゲルがシリンジ(15)に提供される、請求項1~13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、医療機器の一部として測定尺度(20)を示されるように、同軸カニューレ(2)を通してヒドロゲル送達針(4)の進行深度を制限するように構成される調整可能な位置決め機構(8)を含む、請求項1~14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
位置決め機構(8)がヒドロゲル送達針(4)に取り付けられた固定ハウジング(16)、固定ハウジング(16)に相対的にヒドロゲル送達針(4)に沿って軸方向に移動するように針に据え付けられた可動ハブ(17)を含み、最遠面(17A)が同軸カニューレルアーロック(2B)の近位面と接するように構成された、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
測定尺度(20)に調整可能な位置決め機構(8)が備え付けられ、ヒドロゲル捌け口(6)の注射深度Pを示すように構成され、位置決め機構(8)の最遠面(17A)が同軸カニューレ(2B)の近位面と完全に接した場合、ヒドロゲル捌け口(6)が同軸カニューレ(2)の最遠端(2A)から30mm以上であるP+Xの距離をおいて位置付けられている、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
システムがさらに同軸カニューレルアーロック(2B)に取り付けられ、同軸カニューレ(2)の内腔に挿入されるように構成された貫通性の遠位端を持つコア針(3)を含む、請求項1~17の何れか一項に記載のシステム。
【請求項19】
ヒドロゲル送達針(4)がX線不透過性またはX線透過性マーカー(32)を含む、請求項1~18の何れか一項に記載のシステム。
【請求項20】
X線不透過性またはX線透過性マーカーがヒドロゲル捌け口(6)から0.1~10mm位置に配置される請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
同軸カニューレ(2)のルアーロック(12)からの遠位部が同軸カニューレの側壁に作られた一つまたはそれ以上の開き口(2C)に対応する一つまたはそれ以上の開き口(2C)を含む、請求項1~20の何れか一項に記載のシステム。
【外国語明細書】