(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089781
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240627BHJP
G09G 3/3266 20160101ALI20240627BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240627BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240627BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240627BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/3266
G09G3/20 624B
G09G3/20 680G
G09G3/20 622B
G09G3/20 622G
G09G3/20 622Q
G09G3/20 611E
G09G3/20 670E
G09G3/20 611A
G09G3/20 660U
G09G3/20 621M
G09F9/30 365
G09F9/30 338
H10K59/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205194
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】521515757
【氏名又は名称】厦門天馬顕示科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
【テーマコード(参考)】
3K107
5C080
5C094
5C380
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC31
3K107CC43
3K107EE04
3K107HH05
5C080AA06
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD06
5C080DD09
5C080DD12
5C080DD23
5C080DD26
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C094BA03
5C094BA27
5C094DA09
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB19
5C380AB21
5C380AB24
5C380AB34
5C380BA01
5C380BA08
5C380BA10
5C380BA12
5C380BA17
5C380BA39
5C380BB09
5C380CB01
5C380CB17
5C380CB26
5C380CB31
5C380CB37
5C380CC06
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC39
5C380CC65
5C380CD017
5C380CD026
5C380CD027
5C380CE19
5C380CF07
5C380CF51
5C380CF53
5C380DA02
5C380DA06
5C380DA32
5C380DA33
5C380EA16
(57)【要約】
【課題】表示品質を改善する。
【解決手段】複数の画素回路それぞれは、少なくとも第1走査信号と第2走査信号とにより制御される。第1走査信号は、画素回路へのデータ電圧書き込みを含むリフレッシュ動作のために画素回路のN型トランジスタをON/OFFする。第2走査信号は、画素回路の発光素子への発光電流の供給の有無を制御する。クランプスイッチ回路の出力は、第1走査信号線に接続される。クランプスイッチ回路は、第2走査信号を使用して、発光素子の発光期間における少なくとも一部の期間において第1走査信号線をローレベル電位に維持するように制御される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置であって、
複数の画素回路を含む表示領域と、
第1走査回路と、
第2走査回路と、
クランプスイッチ回路と、
を含み、
前記複数の画素回路それぞれは、少なくとも第1走査信号と第2走査信号とにより制御され、
前記第1走査回路は、前記第1走査信号を前記複数の画素回路の第1走査信号線それぞれに供給し、
前記第2走査回路は、前記第2走査信号を前記複数の画素回路の第2走査信号線それぞれに供給し、
前記第1走査信号は、前記画素回路へのデータ電圧書き込みを含むリフレッシュ動作のために前記画素回路のN型トランジスタをON/OFFする走査信号であり、
前記第2走査信号は、前記画素回路の発光素子への発光電流の供給の有無を制御する走査信号であり、
前記クランプスイッチ回路の出力は、前記第1走査信号線に接続され、
前記クランプスイッチ回路は、前記第2走査信号を使用して、前記発光素子の発光期間における少なくとも一部の期間において前記第1走査信号線をローレベル電位に維持するように制御される、
表示装置。
【請求項2】
請求項1の表示装置であって、
前記第1走査回路及び前記第2走査回路の全てのトランジスタは、P型トランジスタであり、
1フレーム期間において、前記第1走査信号のハイレベル電位の時間長は、ローレベル電位の時間長よりも短い、
表示装置。
【請求項3】
請求項2の表示装置であって、
リフレッシュ周期は、2フレーム期間以上である、
表示装置。
【請求項4】
請求項1の表示装置であって、
前記画素回路はP型薄膜トランジスタとN型トランジスタを含み、
前記第2走査信号は、前記画素回路に含まれるP型トランジスタのON/OFFを制御する、
表示装置。
【請求項5】
請求項1の表示装置であって、
前記第1走査信号がハイレベル電位である期間、前記クランプスイッチ回路の出力は、前記第1走査信号線と電気的に遮断されている、
表示装置。
【請求項6】
請求項1の表示装置であって、
前記クランプスイッチ回路は、
第1N型スイッチトランジスタと、
前記第1N型スイッチトランジスタのゲートとソースとの間の容量素子と、
を含み、
前記第1N型スイッチトランジスタのソースはローレベル電位線に接続され、
前記第1N型スイッチトランジスタのドレインは前記第1走査信号線に接続され、
前記容量素子は、前記少なくとも一部の期間において、前記第1N型スイッチトランジスタをON状態に維持する電圧を保持する、
表示装置。
【請求項7】
請求項6の表示装置であって、
前記第1N型スイッチトランジスタは、前記第1走査信号がハイレベル電位である期間、OFF状態に維持される、
表示装置。
【請求項8】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記第2走査信号は、前記画素回路に含まれるP型トランジスタのON/OFFを制御し、
前記クランプスイッチ回路は、第2N型スイッチトランジスタを含み、
前記第2N型スイッチトランジスタのゲートは、前記第2走査信号線に接続され、
前記第2N型スイッチトランジスタのソース/ドレインの一方は、前記第1N型スイッチトランジスタのゲート及び前記容量素子に接続されている、
表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置であって、
前記第2N型スイッチトランジスタの前記ソース/ドレインの他方は、前記第2N型スイッチトランジスタの前記ゲートの前記第2走査信号線より後段の前記第2走査信号線に接続されている、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置のように、自発光素子を含む表示装置が広く利用されている。これら表示装置は、データ信号を画素に書き込むための走査信号を順次出力する駆動回路を含む。データ書き込みのため、1又は複数の走査信号が使用され得る。
【0003】
同一基板上に低温ポリシリコン(LTPS)薄膜トランジスタ(TFT)と、酸化物半導体TFT、例えば、IGZO-TFTとを集積したLTPO(Low Temperature Polycrystalline Oxide)技術が、表示パネルへ適用されてきている。例えば、リーク電流が問題となる箇所には酸化物半導体TFTを適用し、駆動能力が必要な箇所にはLTPS-TFTを適用するといった、デバイス特性に合わせた設計が可能となる。
【0004】
LTPO技術は、OLEDの低消費電力化を進める技術として使用され得る。OLEDの低消費電力技術の一つは、データリフレッシュ周波数を、従来の60Hzから1Hz程度に低下させ、データリフレッシュに伴うデータドライバの消費電力を低減する。フレーム周波数低減のためには、OLEDの発光電流量を決定するデータ信号電圧を保持する画素内の保持容量素子Cstからの電荷リークを低減することが必要である。このため、Cstに接続されるスイッチTFTを、リーク電流が低いN型の酸化物半導体TFTで構成し、OLED素子の発光電流が通過するTFTを、駆動能力が高いP型のLTPS-TFTで構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0249901号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0168182号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
額縁を小さくするという要求から、画素行を順次選択する走査回路は、移動度の大きいP型のLTPS-TFTを利用することが好ましい。シフトレジスタ回路において、ほとんどの時間の間物理ローレベル電位(P型TFTの論理ONレベル)を維持する信号は作りにくく、そのため、物理ローレベル電位を維持できず、電位上昇を生じることがある。
【0007】
N型TFTを含む画素回路に対する走査信号をシフトとレジスタ回路のP型TFTで駆動する場合、そのP型TFTは、その論理ハイレベル電位を、ほぼ1フレーム期間、保持する必要がある。しかし、このP型TFTは、シフトレジスタ回路内の容量に蓄積した電荷を利用して駆動されるため、駆動周波数が低下すると蓄積電荷のリークによって、P型TFTからの出力電位が変動し得る。
【0008】
駆動周波数の低下により、フレーム期間中に、シフトレジスタ回路内のP型トランジスタに対する論理ハイレベル電位が低下すると(物理電位が上昇すると)、画素内のN型TFTに対する選択信号の物理電位が上昇する。シフトレジスタ内の論理ハイレベル電位の低下が一定値を超えると、画素内のN型TFTは、わずかにオン状態となる。つまり、保持容量素子Cstに接続されているN型TFTのリーク電流増大とこれに伴う画素回路内のCstの電荷損失が発生する。
【0009】
リークによりCstの電荷損失が生じると、発光電流(輝度)も変動するため、周波数の低いフリッカとして視認されるという問題が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の表示装置は、複数の画素回路を含む表示領域と、第1走査回路と、第2走査回路と、クランプスイッチ回路と、を含む。前記複数の画素回路それぞれは、少なくとも第1走査信号と第2走査信号とにより制御される。前記第1走査回路は、前記第1走査信号を前記複数の画素回路の第1走査信号線それぞれに供給する。前記第2走査回路は、前記第2走査信号を前記複数の画素回路の第2走査信号線それぞれに供給する。前記第1走査信号は、前記画素回路へのデータ電圧書き込みを含むリフレッシュ動作のために前記画素回路のN型トランジスタをON/OFFする走査信号である。前記第2走査信号は、前記画素回路の発光素子への発光電流の供給の有無を制御する走査信号である。前記クランプスイッチ回路の出力は、前記第1走査信号線に接続される。前記クランプスイッチ回路は、前記第2走査信号を使用して、前記発光素子の発光期間における少なくとも一部の期間において前記第1走査信号線をローレベル電位に維持するように制御される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、表示装置の表示品質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3A】クランプスイッチ回路に含まれる、クランプスイッチブロックの構成例を示す。
【
図3B】クランプスイッチ回路に含まれる、クランプスイッチブロックの他の構成例を示す。
【
図4】
図3Aに示すクランプスイッチブロックを制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図5】クランプスイッチ回路の全体構成及び他の回路との関係を模式的に示す。
【
図6】通常動作における、連続する2フレームでのクランプスイッチブロックを制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図7】低リフレッシュレート動作時の連続する2フレームでのクランプスイッチブロックを制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図8】クランプスイッチブロックの一部の断面構造を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図11のXII-XII´切断線における断面構造を模式的に示す。
【
図13】クランプスイッチ回路に含まれる、クランプスイッチブロックの構成例を示す。
【
図14】
図13に示すクランプスイッチブロックを制御する信号のタイミングチャートを示す。
【
図16】クランプスイッチ回路に含まれる、クランプスイッチブロックの構成例を示す。
【
図17】
図16に示すクランプスイッチブロックを制御する信号のタイミングチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0014】
[概観]
以下において、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置等のシフトレジスタに適用可能な回路構成を説明する。以下に開示する回路は、OLED表示装置と異なる自発光素子を含む表示装置に適用することができる。
【0015】
本明細書の一実施形態に係る画素回路は、低温ポリシリコン(LTPS)薄膜トランジスタ(TFT)と、酸化物半導体TFT、例えば、IGZO-TFTとを集積したLTPO技術を利用する。LTPOは、Low Temperature Polycrystalline Oxideを表す。当該回路は、例えば、PMOS型(単にP型とも呼ぶ)のLTPS-TFTとNMOS型(単にN型とも呼ぶ)の酸化物半導体を用いる。
【0016】
LTPO技術は、OLEDの低消費電力化を進める技術として使用される。OLEDの低消費電力技術の一つは、データリフレッシュ周波数を、従来の60Hzから1Hz程度に低下させ、データリフレッシュに伴うデータドライバの消費電力を低減する。データリフレッシュ周波数低減のためには、画素内の保持容量素子Cstからの電荷リークを低減することが必要である。このため、Cstに接続されるスイッチTFTを、リーク電流が低いN型の酸化物半導体TFTで構成し、OLED素子の発光電流が通過するTFTを、駆動能力が高いP型のLTPS-TFTで構成する。
【0017】
一方、額縁を小さくするという要求から、画素行を順次選択する走査回路は、移動度の大きいP型のLTPS-TFTを利用することが好ましい。画素回路で用いられるN型TFTの論理ローレベルは、P型TFTにとって論理ハイレベルである。ここで、TFTの論理ハイレベルは、当該TFTをONする電位レベルであり、論理ローレベルは当該TFTをOFFする電位レベルである。つまり、N型TFTの論理ローレベルは物理的なロー電位レベルであり、論理ハイレベルは物理的なハイ電位レベルである。一方、P型TFTの論理ローレベルは物理的なハイ電位レベルであり、論理ハイレベルは物理的なロー電位レベルである。
【0018】
N型TFTを含む画素回路に対する走査信号をシフトレジスタ回路のP型TFTで駆動する場合、そのP型TFTは、その論理ハイレベル電位を、ほぼ1フレーム期間、保持する必要がある。また、低データリフレッシュレート動作においては、複数フレーム期間の間、P型TFTは、その論理ハイレベル電位を維持することが必要である。低データリフレッシュレート動作は、通常動作における一定のフレームレートより低い周波数で画素回路にデータ信号を書き込む。
【0019】
しかし、このP型TFTは、シフトレジスタ回路内の容量に蓄積した電荷を利用して駆動されるため、駆動周波数が低下すると蓄積電荷のリークによって、P型TFTからの出力電位が変動し得る。
【0020】
駆動周波数の低下により、フレーム期間中に、シフトレジスタ回路内のP型トランジスタに対する論理ハイレベル電位が低下すると(物理電位が上昇すると)、画素内のN型TFTに対する選択信号の物理電位が上昇する。シフトレジスタ内の論理ハイレベル電位の低下が一定値を超えると、画素内のN型TFTは、わずかにオン状態となる。つまり、保持容量素子Cstに接続されているN型TFTのリーク電流増大とこれに伴う画素回路内のCstの電荷損失が発生する。
【0021】
リークによりCstの電荷損失が生じると、発光電流(輝度)も変動するため、周波数の低いフリッカとして視認されるという問題が発生し得る。特に、P型TFTだけを用いたシフトレジスタ回路では、ほとんどの時間物理ローレベル電位(P型TFTの論理ハイレベル)を維持する信号は作りにくい。特に周波数が低い場合、物理ローレベル電位を維持できず、画素回路のN型TFTに対するゲート信号の電位上昇を生じることがある。
【0022】
本明細書の一実形態は、所定期間において、画素回路内のN型TFTの走査線の電位をN型TFTの論理ローレベル(物理ロー電位レベル)に維持するための、クランプスイッチ回路を表示装置に実装する。所定期間は、発光期間における少なくとも一部を含む。画素回路は、N型TFT及びP型TFTを含むLTPO型画素回路であってよい。クランプスイッチ回路は、N型TFT及び容量素子を含む。N型TFTは、ON状態において、走査線に、電源線から物理ローレベル電位を与える。容量素子は、N型TFTをON状態に維持するゲート電圧を保持する。
【0023】
本明細書の一実形態は、クランプスイッチ回路のN型TFTのON/OFFを、画素回路の発光制御信号によって制御する。これにより、効率的な構成により表示品位の低下を抑制することができる。なお、本明細書の実施例の回路は、低フレームレート制御を行う又は行わない自発光型表示装置に適用できる。
【0024】
以下において、図面を参照して実施形態を具体的に説明する。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0025】
[全体構成]
図1は、本明細書の一実施形態の表示装置である、OLED表示装置1の構成例を模式的に示す。
図1における横方向はX軸方向であり、縦方向はX軸方向に垂直なY軸方向である。OLED表示装置1は、OLED素子(発光素子)が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板10と、有機発光素子を封止する封止構造部20とを含んで構成されている。
【0026】
TFT基板10の表示領域(画素回路アレイ)25の周囲に、SCAN-P走査回路31、SCAN-N走査回路32、EMIT-P走査回路33、クランプスイッチ回路34、画素回路アレイの保護回路35、デマルチプレクサ36、ドライバIC37が配置されている。ドライバIC37は、FPC(Flexible Printed Circuit)38を介して外部の装置と接続される。
【0027】
ドライバIC37は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。ドライバIC37は、走査回路31、33に電源及びタイミング信号(制御信号)を与え、クランプスイッチ回路34に電源を与える。さらに、ドライバIC37は、デマルチプレクサ36に、データ信号を与える。
【0028】
デマルチプレクサ36は、ドライバIC37の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ36は、ドライバIC37からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC37の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。
【0029】
表示領域25は、複数の画素回路を含み、各画素回路はOLED素子の発光を制御する。カラーOLED表示装置において、各OLED素子は、例えば、赤、青又は緑のいずれかの色を発光する。複数の画素回路は、画素回路アレイを構成する。
【0030】
後述するように、各画素回路は、駆動TFT(駆動トランジスタ)、駆動TFTの駆動電流を決める信号電圧を保持する保持容量、及びOLED素子への発光電流の供給の有無を制御する発光制御TFTを含む。データ線が伝送するデータ信号は、駆動トランジスタの閾値電圧Vthのために補正されて、保持容量に蓄積される。保持容量の電圧は、駆動TFTのゲート電圧(Vgs)を決定する。保持容量の補正された制御電圧が、駆動TFTのコンダクタンスをアナログ的に変化させ、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子に供給する。
【0031】
後述するように、本明細書の一実施形態において、画素回路は、N導電型のTFT(N型TFT)及びP導電型のTFT(P型TFT)を含む。N型TFTは例えば、酸化物半導体TFTであり、P型TFTは、例えば、低温ポリシリコンTFTである。なお、N型TFT及びP型TFTは、他の半導体材料で構成されてもよい。
【0032】
SCAN-P走査回路31及びSCAN-N走査回路32は、画素回路にデータ信号を書き込むための動作を各画素回路行にさせるため、走査信号を順次出力する。データ信号を書き込むための動作は、後述するように、特定ノード電位のリセット、駆動TFTの閾値補償、保持容量へのデータ信号の書き込み等を含み得る。
【0033】
SCAN-P走査回路31は、TFT基板100の走査線を駆動し、画素回路内のP型TFTに対する走査信号を順次出力する。SCAN-N走査回路32、TFT基板100の他の走査線を駆動し、画素回路内のP型TFTに対する走査信号を順次出力する。走査回路31、32は、同時に1又は複数の走査線に論理ハイレベルの信号(選択パルス)を出力し得る。論理ハイレベルの信号は、制御対象のトランジスタをONする信号であり、論理ローレベルの信号はOFFにする信号である。
【0034】
EMIT-P走査回路33は、画素回路行の発光の有無を制御する発光制御信号を順次出力する。発光制御信号は、画素回路の発光制御TFTのON/OFFを切り替える。本明細書の一実施形態において、発光制御TFTはP型TFTである。走査回路33は、同時に1又は複数の発光制御線に論理ハイレベルの信号(選択パルス)を出力し得る。
【0035】
クランプスイッチ回路34は、後に詳述するように、SCAN-N走査回路32が駆動する走査線を論理ローレベル、つまり、物理的ローレベル電位に維持するための回路である。これにより、SCAN-N走査回路32に駆動されるSCAN-N信号線の電位ドリフトを抑制し、それに起因するフリッカの発生を抑制する。
【0036】
[画素回路構成]
図2は、本明細書の一実施形態に係る画素回路200の構成例を示す。画素回路200は、駆動トランジスタの電流量を制御する制御電圧を保持する保持容量を含む。保持容量が保持する制御電圧は、駆動トランジスタの駆動電圧とも呼ぶ。保持容量は、ドライバIC37からデータ線により伝送されるデータ信号(電位)に応じた制御電圧を保持する。制御電圧は、データ信号に対して駆動TFTの閾値電圧Vthのための補正(Vth補正)を行った電圧であり、補正されたデータ電圧と呼ぶことがある。
【0037】
画素回路200は、ドライバIC37から供給されるデータ信号を補正し、その補正した信号によりOLED素子E1の発光を制御する。画素回路200は、ゲート、ソースおよびドレインを持った7つのトランジスタ(TFT)M1~M7を含む。本例において、トランジスタM1、M2、M3、M6、M7はP型TFTであり、トランジスタM4及びM5はN型TFTである。駆動トランジスタM3以外のトランジスタはスイッチトランジスタである。なお、少なくとも一部のトランジスタの導電型は逆の導電型であってもよい。
【0038】
画素回路200は、さらに、保持容量素子Cstを含む。保持容量素子Cstは、電源電位PVDDを与えるアノード電源と駆動トランジスタM3のゲート(ノードN1)との間で接続されている。駆動トランジスタM3のゲート-ソース間電圧を保持する。
【0039】
トランジスタM3は、OLED素子E1への発光電流量を制御する駆動トランジスタである。駆動トランジスタM3は、アノード電源からOLED素子E1に与える電流量を、保持容量素子Cstが保持する電圧に応じて制御する。OLED素子E1のカソードは、カソード電位PVEEを与えるカソード電源に接続されている。
【0040】
トランジスタM1及びM6は、OLED素子E1の発光の有無を制御する発光制御トランジスタである。トランジスタM1は、ソース/ドレインの一方がアノード電源に接続され、ソース/ドレインの他方に接続された駆動トランジスタM3への電流供給をON/OFFする。トランジスタM6は、ソース/ドレインの一方が駆動トランジスタM3のドレインに接続され、他方に接続されたOLED素子E1への電流供給をON/OFFする。トランジスタM1及びM6は、共に、EMIT-P走査回路33からゲートに入力される発光制御走査信号EMIT-Pにより制御される。ソース/ドレインは、ソースとドレインの総称である。ソース/ドレインは、トランジスタのチャネル領域を流されるキャリアの方向によって、ソース又はドレインとなり得る。
【0041】
トランジスタM7は、OLED素子E1のアノードへの基準電位(リセット電位)V-REFの供給のために動作する。トランジスタM7は、SCAN-P走査回路31からゲートに入力される選択信号SCAN-PによりONにされると、基準電源から一定の基準電位V-REFをOLED素子E1のアノードへ与える。基準電位V-REFは、例えば、グランド(GND)電位以下でよい。リセット電源のもう一端は、GNDに接続されている。
【0042】
トランジスタM5は、駆動トランジスタM3のゲートへの基準電位V-REFの供給の有無を制御する。トランジスタM5は、SCAN-N走査回路32からゲートに入力される選択信号SCAN-N1によりONにされると、ソース/ドレインの一方に接続された基準電源から一定の基準電位V-REFを駆動トランジスタM3のゲートに与える。基準電源のもう一端は、GNDに接続されている。なお、OLED素子E1のアノード電極への基準電位と駆動トランジスタM3のゲートへのリセット電位は異なっていてもよい。
【0043】
トランジスタM2は、データ信号を供給するための選択トランジスタである。トランジスタM2は、保持容量素子Cstへのデータ信号の伝送の有無を切り替える。トランジスタM2のゲート電圧は、SCAN-P走査回路31からゲートに入力される選択信号SCAN-Pにより制御される。選択トランジスタM2は、ONのとき、ドライバIC37からデータ線を介して供給されるデータ信号V-DATAを、保持容量素子Cstに与える。
【0044】
本例において、トランジスタM2のソース/ドレインは、データ線と駆動トランジスタM3のソース(ノードN2)との間に接続されている。トランジスタM4は、駆動トランジスタM3のドレインとゲートとの間に接続されている。トランジスタM4は、SCAN-N走査回路32から供給される選択信号SCAN-N2により制御される。トランジスタM4は、駆動トランジスタM3の閾値電圧Vthを補正するために動作する。トランジスタM4は、駆動トランジスタM3のゲートとドレインとの間の接続と切断とを切り替える。トランジスタM4がONであるとき、駆動トランジスタM3はダイオード接続状態のトランジスタを構成する。トランジスタM4がOFFであるとき、駆動トランジスタM3は通常状態である。
【0045】
データ線からのデータ信号V-DATAは、ONであるトランジスタM2、ダイオード接続状態の駆動トランジスタM3及びONであるトランジスタM4を介して、保持容量素子Cstに与えられる。この時、Vth補正が行われる。保持容量素子Cstは、駆動トランジスタM3のゲート-ソース間電圧を保持し、駆動トランジスタM3がOLED素子E1に与える電流量を制御する。上述のように、保持容量素子Cstは、駆動トランジスタM3の閾値電圧Vthに応じて補正された電圧を保持する。
【0046】
[クランプスイッチ回路の構成及び動作]
次に、クランプスイッチ回路34を説明する。
図3Aは、クランプスイッチ回路34に含まれる、クランプスイッチブロック341の構成例を示す。一つのクランプスイッチブロック341は、一つの画素回路行210の1又は複数のN型TFTのゲート電位を、論理ローレベルに維持すべき期間の少なくとも一部において、論理ローレベル、つまり、物理ローレベル電位を与える。
【0047】
以下においては、
図2を参照して説明した画素回路200の構成例を使用する。
図2を参照して説明したように、K番目の画素回路行の各画素回路200は、SCAN-N1(K)信号、SCAN-N2(K)、SCAN-P(K)、EMIT-P(K)信号で制御される。Kは自然数である。SCAN-N走査回路32は第1走査回路の例であり、EMIT-P走査回路33は第2走査回路の例である。
【0048】
発光制御走査信号線251は、EMIT-P(K)信号を伝送する、EMIT-P走査回路33が駆動するK行目の信号線である。EMIT-P(K)信号は、EMIT-P走査回路33のK行目の発光制御走査信号線251が伝送する発光制御信号(走査信号)である。
【0049】
走査線241は、SCAN-P(K)信号を伝送する、SCAN-P走査回路31が駆動するK番目の信号線である。SCAN-P(K)信号は、SCAN-P走査回路31のK行目の走査線241が伝送する選択信号(走査信号)である。
【0050】
走査線221は、SCAN-N1(K)信号を伝送する。SCAN-N1(K)信号は、K番目の画素行のSCAN-N1信号である。走査線221は、K番目のSCAN-N1信号線である。SCAN-N1(K)信号は、SCAN-N走査回路32が出力する選択信号(走査信号)である。SCAN-N1(K)信号は、一つ前の画素回路行のSCAN-N2(K-1)信号と一致する。従って、走査線221は、SCAN-N2(K-1)信号を(K-1)番目画素行に伝送する走査線と共に、SCAN-N走査回路32のK番目端子から分岐してよい。SCAN-N走査回路32が二つのシフトレジスタ回路を含み、走査信号SCAN-N1、SCAN-N2が別のシフトレジスタ回路の端子から出力されてもよい。
【0051】
走査線222は、SCAN-N2(K)信号を伝送する。SCAN-N2(K)信号は、K番目の画素行のSCAN-N2信号である。走査線222は、K番目のSCAN-N2信号線である。SCAN-N2(K)信号は、SCAN-N走査回路32が出力する選択信号(走査信号)である。SCAN-N2(K)信号は、一つ後の画素回路行のSCAN-N1(K+1)信号と一致する。従って、走査線222は、SCAN-N1(K+1)信号を(K+1)番目画素行に伝送する走査線と共に、SCAN-N走査回路32のK+1番目端子から分岐してよい。SCAN-N走査回路32が二つのシフトレジスタ回路を含み、走査信号SCAN-N1、SCAN-N2が別のシフトレジスタ回路の端子から出力されてもよい。
【0052】
クランプスイッチブロック341は、三つのN型トランジスタM11、M12、M13を含む。これらは薄膜トランジスタであって、画素回路のN型トランジスタと同一の半導体材料を利用できる。トランジスタM11、M12は、クランプスイッチトランジスタである。クランプスイッチブロック341は、さらに、容量素子CBを含む。トランジスタM11は第1N型スイッチトランジスタの例であり、トランジスタM12は第2N型スイッチトランジスタの例である。
【0053】
クランプスイッチトランジスタM11のドレインが、K行目のSCAN-N1信号線221に、接続されている。クランプスイッチトランジスタM11のゲートは、スイッチトランジスタM12を介して、(K+3)行目の発光制御走査信号線252に接続されている。クランプスイッチトランジスタM11のソースは、ローレベル電位VGLを与える、VGL電源線281に接続されている。
【0054】
クランプスイッチトランジスタM13のドレインが、K行目のSCAN-N2信号線222に、接続されている。クランプスイッチトランジスタM13のゲートは、スイッチトランジスタM12を介して、(K+3)行目の発光制御走査信号線252に接続されている。クランプスイッチトランジスタM13のソースは、ローレベル電位VGLを与える、VGL電源線281に接続されている。
【0055】
スイッチトランジスタM12のゲートは、K行目の発光制御走査信号線251に接続されている。つまり、スイッチトランジスタM12は、K行目の発光制御走査信号によってON/OFFされる。また、クランプスイッチトランジスタM11、M13は、スイッチトランジスタM12のソース/ドレインを介して与えられる(K+3)行目の発光制御走査信号及び容量素子CBの電圧によってON/OFF制御される。
【0056】
容量素子CBは、クランプスイッチトランジスタM11のゲートとソースとの間に接続され、かつ、クランプスイッチトランジスタM13のゲートとソースとの間に接続されている。容量素子CBは、クランプスイッチトランジスタM11、M13をON状態に維持するための電圧を保持する。
【0057】
図3Bは、クランプスイッチブロックの他の構成例を示す。
図3Aに示す構成例との相違を主に説明する。クランプスイッチブロック341Aは、K行目の画素回路行210Aのクランプスイッチブロックであり、クランプスイッチブロック341Bは、K+1行目の画素回路行210Bのクランプスイッチブロックである。クランプスイッチブロック341A、341Bにおいて、トランジスタM13は省略されている。
【0058】
SCAN-N1(K)信号は、一つ前の画素回路行のSCAN-N2(K-1)信号と一致する。従って、走査線221は、SCAN-N2(K-1)信号を(K-1)番目画素行に伝送する走査線と共に、SCAN-N走査回路32のK番目端子から分岐する。SCAN-N2(K)信号は、一つ後の画素回路行のSCAN-N1(K+1)信号と一致する。従って、走査線222は、SCAN-N1(K+1)信号を(K+1)番目画素行に伝送する走査線と共に、SCAN-N走査回路32のK+1番目端子から分岐する。
【0059】
図4は、
図3Aに示すクランプスイッチブロック341を制御する信号のタイミングチャートを示す。信号の高さは、物理電位レベルを示す。各信号のハイレベル電位はVGH、ハイレベル電位はVGLである。1フレーム期間において、走査信号SCAN-N1(K)、走査信号SCAN-N2(K)のハイレベル電位の時間長は、ローレベル電位の時間長よりも短い。
【0060】
時刻T1の前は発光期間である。時刻T1において、発光制御走査信号EMIT-P(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。これにより、画素回路200のトランジスタM1、M6がOFF状態に変化して、OLED素子E1の発光が停止する。また、走査信号SCAN-N1(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。これにより、画素回路200のトランジスタM5がONに変化して、駆動トランジスタM3のゲートに基準電位V-REFが与えられる。
【0061】
発光制御走査信号EMIT-P(K)の変化に応じて、クランプスイッチブロック341のスイッチトランジスタM12が、OFF状態からON状態に変化する。時刻T1において、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)はローレベル電位である。クランプスイッチトランジスタM11、M13のゲート電位(M11_VG(K)、M13_VG(K)、)は、VGH-Vthから、VGLに変化する。VGHはハイレベル電位であり、Vthは、スイッチトランジスタM12の閾値電圧であり、VGLはローレベル電位である。このため、クランプスイッチトランジスタM11、13は、ON状態からOFF状態に変化する。
【0062】
クランプスイッチトランジスタM11がON状態にあるとき、クランプスイッチ回路34の出力は、走査線221と導通している。クランプスイッチトランジスタM11がOFF状態にあるとき、クランプスイッチ回路34の出力は、走査線221から電気的に遮断されている。クランプスイッチトランジスタM13と走査線222に対して同様の説明が適用され得る。
【0063】
次に、時刻T2において、走査信号SCAN-N1(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。これにより、画素回路250のトランジスタM5がOFF状態に変化する。走査信号SCAN-N2(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。走査信号SCAN-P(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。これにより、画素回路200のトランジスタM4、M2がON状態に変化し、保持容量素子Cstに対して、閾値補正されたデータ電圧の書き込みが開始される。
【0064】
発光制御走査信号EMIT-P(K)はハイレベル電位、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)はローレベル電位のままである。そのため、トランジスタM11、M12、M13の状態は変化しない。
【0065】
次に、時刻T3において、走査信号SCAN-N2(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。走査信号SCAN-P(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。これにより、画素回路200のトランジスタM4、M2がOFF状態に変化し、保持容量素子Cstに対するデータ電圧の書き込みが終了する。
【0066】
発光制御走査信号EMIT-P(K)はハイレベル電位、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)はローレベル電位のままである。そのため、トランジスタM11、M12、M13の状態は変化しない。
【0067】
次に、時刻T4において、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)はローレベル電位からハイレベル電位に変化する。他の信号の電位は変化しない。発光制御走査信号EMIT-P(K+3)の変化に応じて、容量素子CBの両端に電圧(VGH-Vth-VGL)が蓄積される。クランプスイッチトランジスタM11、M13のゲート-ソース間電圧(M11_VG(K)、M13_VG(K)、)は、VGLからVGH-Vthに変化する。このため、クランプスイッチトランジスタM11、13は、OFF状態からON状態に変化する。
【0068】
これにより、SCAN-N1(K)走査線221及びSCAN-N2(K)走査線222は、それぞれ、ON状態のクランプスイッチトランジスタM11及びM13を介して、VGL電源線281に接続され、ローレベル電位VGLが与えられる。
【0069】
次に、時刻T5において、発光制御走査信号EMIT-P(K)は、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。これにより、画素回路200のトランジスタM1、M6がON状態に変化して、OLED素子E1が次のフレームのための発光を開始する。他の信号は変化しない。
【0070】
発光制御走査信号EMIT-P(K)の変化に応じて、クランプスイッチブロック341のスイッチトランジスタM12が、ON状態からOFF状態に変化する。容量素子CBが電圧を保持しているため、クランプスイッチトランジスタM11、M13はON状態のままである。その後、次のフレームの時刻T1まで、クランプスイッチトランジスタM11、M13はON状態に維持され、SCAN-N1(K)走査線221及びSCAN-N2(K)走査線222は、それぞれ、ON状態のクランプスイッチトランジスタM11及びM13を介して、VGL電源線281に接続され、ローレベル電位VGLに固定される。この結果、SCAN-N1(K)走査線221及びSCAN-N2(K)走査線222の電位が上昇することなく、画素回路200の誤動作を防ぐことができる。
【0071】
次に、時刻T6において、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)はハイレベル電位からローレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。時刻T6において、スイッチトランジスタM12はOFF状態にあるので、クランプスイッチトランジスタM11、M13に対する発光制御走査信号EMIT-P(K+3)の電位変化の影響はない。時刻T6より後において、次のフレームまで、全ての信号は変化することなく現状を維持する。
【0072】
図4に示す例において、時刻T1からT2、時刻T2からT3、時刻T3からT4の期間の長さは共通であって、データ電圧書き込み期間(1水平(1H)期間)に等しい。時刻T4からT5の期間は、データ電圧書き込み期間の2倍の期間であり、時刻T6からT6の期間は、データ電圧書き込み期間の3倍の期間である。
【0073】
走査信号SCAN-N1(K)又はSCAN-N2(K)の少なくとも一方が物理ハイレベル電位(論理ハイレベル)である、時刻T1から時刻T3の期間において、クランプスイッチトランジスタM11、M13は、OFF状態に維持される。これにより、画素回路200に対する適切なデータ信号の書き込みを阻害しないようにできる。
【0074】
図4を参照して説明した例において、クランプスイッチトランジスタM11、M13は、時刻T4から次のフレームの時刻T1までON状態に維持される。つまり、走査信号SCAN-N1(K)、SCAN-N2の走査線221、222は、VGL電源線281と導通し、ローレベル電位VGLがVGL電源線281から与えられる。このため、走査線221、222のローレベル電位がドリフトし、画素回路200内のN型TFTから電流がリークすることを効果的に防ぐことができる。
【0075】
図4を参照して説明した例は、K行目の画素回路行のクランプスイッチブロック341を、発光制御走査信号EMIT-P(K)、EMIT-P(K+3)で制御する。時刻T1からT3の期間において、クランプスイッチトランジスタM11、M13がOFF状態あるように、他の発光制御走査信号EMIT-Pを利用することができる。
【0076】
例えば、時刻T3以降にクランプスイッチトランジスタM11、M13をONする、発光制御走査信号EMIT-P(K)より後段の、他の発光制御走査信号EMIT-Pを利用することができる。発光制御走査信号EMIT-P(K+2)以降の任意の画素回路行の発光制御走査信号EMIT-P(K+S)信号であればよい。Sは2以上の整数である。誤動作防止の観点から、Sは3以上であってもよい。また、Sを小さくすることで、クランプスイッチトランジスタM11、M13のONの期間をより長くすることができる。発光制御走査信号EMIT-P(K)に代えて、発光制御走査信号EMIT-P(K)より前の発光制御信号EMITを使用してもよい。
【0077】
図4に示す例において、各フレーム期間の発光期間の開始から終了まで、クランプスイッチトランジスタM11、M13はON状態にある。上述のように、発光期間の一部において、クランプスイッチトランジスタM11、M13はOFF状態であり、他の一部においてON状態であってもよい。この点は、
図14又は
図17を参照して後述する他の例において同様である。
【0078】
図5は、クランプスイッチ回路34の全体構成及び他の回路との関係を模式的に示す。表示領域25は、複数の画素回路200を含む。画素回路行は、X方向に並ぶ複数の画素回路200で構成され、複数画素回路行がY方向に配列されている。
図5において、画素回路は破線矩形で示され、一つ画素回路が例として符号200で指示されている。
図5の構成例において、L個の画素回路行が存在する。Lは正の整数である。
【0079】
表示領域25の外の左側にSCAN-P走査回路31及びSCAN-N走査回路32が配置されている。表示領域25の外の右側にEMIT-P走査回路33及びクランプスイッチ回路34が配置されている。なお、走査回路31~33及びクランプスイッチ回路34は、他のレイアウトで配置されてもよい。
【0080】
クランプスイッチ回路34は、複数のクランプスイッチブロック341を含み、それぞれが異なる画素回路行のため、走査信号SCAN-N1、SCAN-N2を伝送する走査線の電位を、所定期間においてローレベル電位に維持する。
【0081】
各クランプスイッチブロック341は、
図3Aを参照して説明した回路構成を有する。
図4を参照して説明したように、各クランプスイッチブロック341は、対応する各画素回路行の走査信号SCAN-N1、SCAN-N2を伝送する走査線に、所定期間(例えば時刻T4から次のフレームの時刻T1まで)において、VGL電源線281からローレベル電位VGLを与える。
【0082】
図4を参照して説明した例において、連続する走査信号SCAN-P(K)、SCAN-P(K+1)の間には、例えば、1H期間のずれが存在する。連続する走査信号SCAN-N1(K)、SCAN-N1(K+1)の間には、例えば、1H期間のずれが存在する。連続する走査信号SCAN-N2(K)、SCAN-N2(K+1)の間には、例えば、1H期間のずれが存在する。連続する発光制御走査信号EMIT-P(K)、EMIT-P(K+1)の間には、例えば、1H期間のずれが存在する。
【0083】
次に、連続するフレーム期間における、クランプスイッチブロック341の動作を説明する。
図6は、通常動作における、連続する2フレームでの、クランプスイッチブロック341を制御する信号のタイミングチャートを示す。
図6が示す第1フレーム期間及びダ2フレーム期間のタイミングチャートは同一であり、
図4を参照して説明した通りである。
【0084】
フレームレートは、例えば、60Hzである。ここで、フレームレートは、外部から受信した映像データからフレーム画像データを生成する周波数であり、一定である。フレーム画像データは、不図示の制御回路又はドライバIC37で生成されてよい。
【0085】
通常動作において、OLED表示装置1は、フレーム画像データから画素回路200それぞれの発光輝度を決定し、画素回路それぞれにフレーム画像に対応するデータ信号を書き込む。OLED表示装置1は、フレームレートと同じ周波数で、画素回路200が保持するデータ電圧を書き換える。画素回路200のデータ電圧の書き換え周波数をリフレッシュレートと呼ぶ。つまり、通常動作において、リフレッシュレートはフレームレートに一致する。
【0086】
本明細書において、発光期間外において、画素回路が保持するデータ電圧を再度書き込むための動作をリフレッシュ動作と呼ぶ。リフレッシュ動作は、保持容量へのデータ電圧書き込みを含む。リフレッシュ動作は、さらに、データ電圧書き込み前のリセットや閾値電圧補償を含み得る。
図4を説明した画素回路動作において、時刻T1から時刻T3がリフレッシュ動作の期間である。
【0087】
図7は、低リフレッシュレート動作時の、連続する2フレームでの、クランプスイッチブロック341を制御する信号のタイミングチャートを示す。第1フレーム期間におけるタイミングチャートは、
図4を参照して説明した通りである。
【0088】
第2フレーム期間において、走査信号SCAN-N1(K)、SCAN-N2(K)、SCAN-P(K)はそれぞれ論理ローレベルに固定され変化しない。一方、発光制御走査信号、EMIT-P(K)、EMIT-P(K+3)の電位は、第1フレーム期間と同様に変化する。つまり、第1フレーム期間及び第2フレーム期間それぞれにおいて同一長さの発光期間が存在する。第1フレーム期間において、新たなデータ信号(データ電圧)が画素回路200に書き込まれるが、第2フレーム期間においては、新たなデータ信号は書き込まれず、画素回路200のOLED素子E1は、第1フレーム期間と同様の輝度で発光する。
【0089】
低リフレッシュレート動作においても、EMIT-P信号の周波数は低下しない。これにより、フリッカの発生を抑制できる。EMIT-P信号の周波数はフレームレートと同様に一定(60Hz)であり、SCAN-N1、SCAN-N2信号線は、フレームレートでローレベル電位にクランプされる。これによって、低フレームレート駆動時のローレベル変動を抑制できる。
【0090】
なお、
図6及び7を参照した説明は、後述するクランプスイッチブロック345、347のように、他の構成を有するクランプスイッチブロックが実装された表示装置に適用され得る。
【0091】
図8は、クランプスイッチブロック341の一部の断面構造を模式的に示す断面図である。ポリイミド層PI1、バッファ層BUF1及びポリイミド層PI2の積層は、フレキシブル絶縁基板を構成する。ポリイミド層PI2上に、バッファ層BUF2、下地絶縁C、層間絶縁層ILD1、ILD2が積層されている。これらは、有機又は無機絶縁材料で形成できる。
【0092】
層間絶縁層ILD2上に、第1金属層が形成されている。第1金属層は、スイッチトランジスタM11、M12のボトムゲート電極M11-BG、M12-BG、走査信号SCAN-N1を伝送する信号線の一部を構成する下層線SN1Bを含む。
【0093】
ゲート絶縁層GI1、GI2が、第1金属層を覆うように積層されている。酸化物半導体層OXが、ゲート絶縁層GI1上に形成されている。酸化物半導体層OXの一部は、スイッチトランジスタM11、M12のチャネル領域を構成する。酸化物半導体層OXの低抵抗化された一部が、スイッチトランジスタM11、M12のソース/ドレインを構成する。ボトムゲート電極M11-BGと酸化物半導体層OXのソース領域との間に、容量素子CBの一部が構成されている。
【0094】
ゲート絶縁層GI3が、酸化物半導体層OXを覆うように形成されている。ゲート絶縁層GI3の上に、第2金属層が形成されている。第2金属層は、スイッチトランジスタM11、M12のトップゲート電極M11―TG、M12―TG、走査信号SCAN-N1を伝送する信号線の一部を構成する上層線SN1Bを含む。トップゲート電極M11―TGと酸化物半導体層OXのソース領域との間に、容量素子CBの一部が構成されている。
【0095】
絶縁性の平坦化層PLN1が、第2金属層を覆うように形成されている。平坦化層PLN1上に、第3金属層が形成されている。第3金属層は、ローレベル電位VGLの電源線VGLL、発光制御走査信号EMIT-Pを伝送する信号線EMTPを含む。第3金属層は、さらに、トランジスタM11のドレインと走査信号SCAN-N1を伝送する信号線SN1T、SN1Bを相互接続する電極IEL11、トランジスタM12のソース/ドレインとトランジスタM11のゲートM11-TG、M11-BGとを相互接続する電極IEL12を含む。
【0096】
絶縁性のパッシベーション層PVが、第3金属層を覆うように形成され、さらに、その上に絶縁性の平坦化層PLN2が形成されている。
【0097】
図9は、SCAN-N1、SCAN-N2信号を生成するシフトレジスタブロック350の構成例を示す。複数のシフトレジスタブロック350を連結することで、シフトレジスタ回路を構成することができる。シフトレジスタブロック350は、走査回路31から33に組み込まれ得る。
図9に示すシフトレジスタブロック350の全てのトランジスタは、P型TFTである。これにより、回路サイズを小さくできる。
【0098】
シフトレジスタブロック350は、P型のスイッチトランジスタP1~P7と、容量素子C1~C3を含む。前段からの出力信号VIN、ローレベル電位VGL、ハイレベル電位VGH、クロック信号CKが、シフトレジスタブロック350に入力される。シフトレジスタブロック350は、入力された信号及び電源電位に応じて、出力信号OUTを出力する。
図9に示す例において、ローレベル電位VGLは-8V、ハイレベル電位VGHは8Vである。出力段は二つのトランジスタP6、P7を含み、容量素子C2はトランジスタP6のゲート-ソース間電圧を保持し、容量素子C1はトランジスタP7のゲート-ソース間電圧を保持する。
【0099】
[画素回路の他の構成例]
以下において、画素回路及び画素回路に応じたデバイス構造の一例を説明する。
図10は、画素回路250の例を示す。画素回路250は、
図3Aに示す画素回路200の構成要素に加えて、シールド電極SE及び容量素子Cdを含む。画素回路250の信号に応じた動作は、画素回路200と同様である。
【0100】
図11は、
図10に示す画素回路の平面構造を模式的に示し、
図12は、
図11のXII-XII´切断線における断面構造を模式的に示す。
図11において、配線M2Dはデータ線であり、配線M2Vは電源電位VDDを伝送する。配線VREは基準電位V-REFを伝送する。
【0101】
ゲート線S2P2は、トランジスタM7のゲート信号を伝送する。配線EMCは、トランジスタM1及びM6のゲートへの制御信号Emを伝送する。シールド電極SEは、容量素子Cdの一方電極を含み、容量電極CEは保持容量素子Cstの一方電極を含む。
【0102】
ゲート線S2P1は、トランジスタM2のゲート信号を伝送する。ゲート線S2NBは、トランジスタM4のボトムゲートのゲート信号を伝送し、ゲート線S2NTは、トランジスタM4のトップゲート電極のゲート信号を伝送する。ゲート線S1NBは、トランジスタM5のボトムゲート電極のゲート信号を伝送し、ゲート線S1NTは、トランジスタM5のトップゲート電極のゲート信号を伝送する。
【0103】
コンタクトホールCH1は、トランジスタM7のソース/ドレイン領域と配線VREとを相互接続する。コンタクトホールCH2は、トランジスタM7のソース/ドレイン領域とOLED素子E1のアノード電極とを相互接続する。コンタクトホールCH3は、トランジスタM4のソース/ドレイン領域とトランジスタM3又はM6のソース/ドレイン領域とを相互接続する。トランジスタM4の半導体層は酸化物半導体層OXであり、トランジスタM3及びM6の半導体層は低温ポリシリコン層PSである。コンタクトホールCH3は、酸化物半導体層と低温ポリシリコン層を相互接続する。
【0104】
コンタクトホールCH4は、トランジスタM4のソース/ドレイン領域とソース/ドレイン配線とを相互接続し、そのソース/ドレイン配線は、トランジスタM3のゲート電極に接続されている。コンタクトホールCH5は、トランジスタM5のソース/ドレイン領域と配線VREとを相互接続する。
【0105】
図12は、
図11のXII-XII´切断線における断面構造を模式的に示す。ポリイミド層PI1、バッファ層BUF1及びポリイミド層PI2の積層は、フレキシブル絶縁基板を構成する。バッファ層BUF2の上にシールド電極SEが積層されている。シールド電極SEを覆うように、下地絶縁層UCが積層されている。
【0106】
下地絶縁層UC上に、低温ポリシリコン層PSが積層され、それを覆うようにゲート絶縁層GI1が積層されている。ゲート絶縁層GI1上に、配線VRS、S2P2、EMC、VREが形成されている。これらは同一の金属層パターンに含まれる。配線VRS、S2P2、EMC、VREを覆うように、層間絶縁層ILD1が積層されている。
【0107】
層間絶縁層ILD1上に、容量電極CE、配線S2NB、S1NBが積層されている。これらは同一の金属層パターンに含まれる。容量電極CE、配線S2NB、S1NBを覆うように、層間絶縁層ILD2が積層されている。ゲート絶縁層GI2が、層間絶縁層ILD2上に積層されている。
【0108】
酸化物半導体層OXは、ゲート絶縁層GI2上に積層されている。酸化物半導体層OXを覆うように、ゲート絶縁層GI3が積層されている。ゲート絶縁層GI3上に、配線S2NT、S1NTが積層されている。配線S2NT、S1NTを覆うように、平坦化層PLN1が積層されている。
【0109】
コンタクトホールCH1、CH2は、絶縁層PL1N、GI3、GI2、ILD2、ILD1、及びGI1を貫通して、低温ポリシリコン層(の低抵抗領域)に接触している。コンタクトホールCH3は、絶縁層PL1N及びGI3を貫通して、酸化物半導体層OXの上面に接触している。コンタクトホールCH3は、さらに、酸化物半導体層OXを貫通し、その孔の端面に接触している。コンタクトホールCH3は、さらに、絶縁層GI2、ILD2、ILD1、及びGI1を貫通して、低温ポリシリコン層(の低抵抗領域)に接触している。
【0110】
コンタクトホールCH4、CH5は、縁層PL1N及びGI3を貫通して、酸化物半導体層OXの上面に接触している。パッシベーション層PVが、コンタクトホールCH1からCH5を覆うように積層され、さらに、平坦化層PNL2がパッシベーション層PV上に積層されている。
【0111】
[クランプスイッチブロックの他の構成例]
以下において、クランプスイッチブロックの他の構成例を説明する。
図13は、クランプスイッチ回路34に含まれる、クランプスイッチブロック345の構成例を示す。以下において、
図3A及び4を参照して説明したクランプスイッチブロック341との相違を主に説明する。画素回路は、
図2又は10を参照して説明した構成を有してよい。
【0112】
クランプスイッチブロック345は、クランプスイッチブロック341のスイッチトランジスタM12に代えて、N型TFTであるスイッチトランジスタM15を含み、さらに、N型TFTであるトランジスタM16を含む。
【0113】
スイッチトランジスタM15は、第2N型スイッチトランジスタの例である。トランジスタM15のゲートは、発光制御走査信号EMIT-P(K)を伝送する発光制御走査信号線251に接続され、発光制御走査信号EMIT-P(K)によるON/OFF制御される。トランジスタM15のソースはVGL電源線281に接続され、ドレインはクランプスイッチトランジスタM11、M13のゲートに接続されている。トランジスタM15がON状態の間、クランプスイッチトランジスタM11、M13のゲートは、VGL電源線281と導通する。
【0114】
トランジスタM16はダイオード接続されている、つまり、そのドレインとゲートが接続されて導通している。トランジスタM16のソースはトランジスタM15のドレインに接続され、ドレインは、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)を伝送する信号線255に接続されている。
【0115】
図14は、
図13に示すクランプスイッチブロック345を制御する信号のタイミングチャートを示す。以下の説明において、時刻T1からT3、T5は、
図4における時刻T1からT3、T5と同じである。時刻T1の前は発光期間である。画素回路200又は250の動作は、
図4を参照して説明した通りであり、ここでの説明を省略する。
【0116】
時刻T1において、発光制御走査信号EMIT-P(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。また、走査信号SCAN-N1(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。
【0117】
発光制御走査信号EMIT-P(K)の変化に応じて、クランプスイッチブロック345のスイッチトランジスタM15が、OFF状態からON状態に変化する。スイッチトランジスタM15がON状態となることで、クランプスイッチトランジスタM11、M13のゲート電位(M11_VG(K)、M13_VG(K)、)は、VGH-Vthから、VGLに変化する。このため、クランプスイッチトランジスタM11、13は、ON状態からOFF状態に変化する。Vthは、トランジスタM16の閾値電圧である。
【0118】
次に、時刻T2において、走査信号SCAN-N1(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。走査信号SCAN-N2(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。走査信号SCAN-P(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。発光制御走査信号EMIT-P(K)はハイレベル電位のままである。そのため、トランジスタM11、M13、M15の状態は変化しない。なお、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)はローレベル電位のままである。
【0119】
次に、時刻T3において、走査信号SCAN-N2(K)が、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。走査信号SCAN-P(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。発光制御走査信号EMIT-P(K)はハイレベル電位、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)はローレベル電位のままである。トランジスタM11、M12、M15の状態は変化しない。時刻T2からT3の期間において、画素回路200の保持容量素子Cstにデータ電圧が書き込まれる。
【0120】
次に、時刻T5において、発光制御走査信号EMIT-P(K)は、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。また、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)はローレベル電位から、ハイレベル電位に変化する。発光制御走査信号EMIT-P(K)の変化に応じてスイッチトランジスタM15が、ON状態からOFF状態に変化する。
【0121】
発光制御走査信号EMIT-P(K+5)の変化に応じて、容量素子CBの端子間に電圧(VGH-Vth-VGL)が蓄積される。クランプスイッチトランジスタM11、M13のゲート-ソース間電圧(M11_VG(K)、M13_VG(K)、)は、VGLからVGH-Vthに変化する。クランプスイッチトランジスタM11、13は、OFF状態からON状態に変化する。
【0122】
これにより、SCAN-N1(K)走査線221及びSCAN-N2(K)走査線222は、それぞれ、ON状態のクランプスイッチトランジスタM11及びM13を介して、VGL電源線281に接続され、ローレベル電位VGLが与えられる。この結果、SCAN-N1(K)走査線221及びSCAN-N2(K)走査線222の電位が上昇することなく、画素回路200の誤動作を防ぐことができる。
【0123】
次に、時刻T7において、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)はハイレベル電位からローレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。容量素子CBに保持されている電圧によって、クランプスイッチトランジスタM11及びM13はON状態に維持される。時刻T7より後において、次のフレームまで、全ての信号は変化することなく現状を維持する。時刻T5からT7の期間は、5Hの長さを有する。
【0124】
走査信号SCAN-N1(K)又はSCAN-N2(K)の少なくとも一方が物理ハイレベル電位(論理ハイレベル)である、時刻T1から時刻T3の期間において、クランプスイッチトランジスタM11、M13は、OFF状態に維持される。これにより、画素回路200に対する適切なデータ信号の書き込みを阻害しないようにできる。
【0125】
図14を参照して説明した例において、クランプスイッチトランジスタM11、M13は、時刻T5から次のフレームの時刻T1までON状態に維持される。つまり、走査信号SCAN-N1(K)、SCAN-N2の走査線221、222は、VGL電源線281と導通し、ローレベル電位VGLがVGL電源線281から与えられる。このため、走査線221、222のローレベル電位がドリフトし、画素回路200内のN型TFTから電流がリークすることを効果的に防ぐことができる。
【0126】
図14を参照して説明した例は、K行目の画素回路行のクランプスイッチブロック345を、発光制御走査信号EMIT-P(K)、EMIT-P(K+5)で制御する。時刻T1からT3の期間において、クランプスイッチトランジスタM11、M13がOFF状態であるように、他の発光制御走査信号EMIT-Pを利用することができる。
【0127】
例えば、時刻T5以降にクランプスイッチトランジスタM11、M13をONする他の発光制御走査信号EMIT-Pを利用することができる。つまり、発光制御走査信号EMIT-P(K+5)以降の任意の画素回路行の発光制御走査信号EMIT-P(K+m)信号であればよい。mは5以上の整数である。誤動作防止の観点から、mは6以上であってもよい。また、mを小さくすることで、クランプスイッチトランジスタM11、M13のONの期間をより長くすることができる。発光制御走査信号EMIT-P(K)に代えて、発光制御走査信号EMIT-P(K)より前の発光制御信号EMITを使用してもよい。
【0128】
[画素回路及びクランプスイッチ回路の他の構成例]
図15は、本明細書の一実施形態に係る画素回路280の構成例を示す。画素回路280は、トランジスタ(TFT)M21~M26を含む。トランジスタM23、M24、M26はN型TFTであり、他のトランジスタはP型TFTである。例えば、N型TFTは酸化物半導体TFTであり、P型TFTは、低温ポリシリコンTFTである。なお、少なくとも一部のトランジスタの導電型は逆の導電型であってもよい。
【0129】
トランジスタM21は、OLED素子E1への電流量を制御する駆動トランジスタである。駆動トランジスタM21のソースは、正電源電位PVDDを伝送する電源線に接続されている。駆動トランジスタM21は、電源線からOLED素子E1に与える電流量を、直列に接続された保持容量素子C21、C22が保持する電圧に応じて制御する。保持容量素子C21、C22は、書き込まれた電圧を、1リフレッシュ期間を通じて保持する。OLED素子E1のカソードは、電源電位PVEEが与えられる。
【0130】
容量素子C1及びC2は、電源電位PVDDを伝送する電源線と駆動トランジスタM21のゲートとの間において直列に接続されている。容量素子C21とC22の中間ノードにトランジスタM24のソース/ドレイン及びトランジスタM22のソース/ドレインが接続されている。保持容量素子C1、C2の直列合成容量は、駆動トランジスタM21のゲートとソースとの間の電圧を保持する。駆動トランジスタM21のソース電位はPVDDである。
【0131】
トランジスタM25はOLED素子E1への発光電流の供給及びそれによる発光のON/OFFを制御する、発光制御スイッチトランジスタである。トランジスタM25のソースが駆動トランジスタM21のドレインに接続されている。トランジスタM25のゲートは発光制御走査信号EMIT-Pを伝送する信号線に接続され、発光制御走査回路EMIT-P走査回路33からの発光制御走査信号EMIT-Pにより制御される。
【0132】
トランジスタM26は、OLED素子E1のアノードへのリセット電位V-RSTの供給のために動作する。トランジスタM26のソース/ドレインの一端はリセット電位V-RSTを伝送する電源線に接続され、他端はOLED素子E1のアノードに接続されている。リセット電位V-RSTは、例えばカソード電源電位PVEEと同電位でもよい。
【0133】
トランジスタM26のゲートは走査信号SCAN-Nにより制御される。トランジスタM26は、SCAN-P走査回路31からの走査信号SCAN-PによりONにされると、電源線により伝送されたリセット電位V-RSTを、OLED素子E1のアノードへ与える。
【0134】
トランジスタM23は、駆動トランジスタM21の閾値補正を行うための電圧を保持容量素子C21、C22に書き込むためのスイッチトランジスタであり、駆動トランジスタM21のゲート電位をリセットするためのトランジスタである。トランジスタM23のソース及びドレインは、駆動トランジスタM21のゲート及びドレインを接続する。そのため、トランジスタM23がONであるとき、駆動トランジスタM21はダイオード接続の状態にある。
【0135】
トランジスタM24は、駆動トランジスタM21の閾値補償を行うための電圧を保持容量素子C1、C2に書き込むために使われる。トランジスタP4は、保持容量素子C1、C2への基準電位V-REFの供給の有無を制御する。基準電位V-REFは、例えば、電源電位PVDDと同電位でもよい。トランジスタM24のソース/ドレインの一端は基準電位V-VREFを伝送する電源線に接続され、他端は容量素子2C1及びC22の中間ノードに接続されている。トランジスタM24のゲートは、SCAN-N走査回路32からの走査信号SCAN-Nにより制御される。
【0136】
トランジスタM23及びM24は、走査信号SCAN-Nにより制御される。これらがONの状態であり、かつ、トランジスタM25がON状態にある期間において、駆動トランジスタM21のゲート電位がリセットされる。その後、トランジスタM25がOFFされる。この状態で、保持容量素子C21、C22に閾値補正電圧が書き込まれる。
【0137】
トランジスタM22は、データ信号(データ電圧)を供給する画素回路を選択し、保持容量素子C21、C22にデータ信号V-DATAを書き込むためのスイッチトランジスタである。トランジスタM22のソース/ドレインの一端は、保持容量素子C21、C22に接続され、他端はデータ信号V-DATAを伝送するデータ線に接続されている。トランジスタM22のゲートは、SCAN-P走査回路31からの走査信号SCAN-Pにより制御される。
【0138】
図16は、クランプスイッチ回路34に含まれる、クランプスイッチブロック347の構成例を示す。以下において、
図3A及び4を参照して説明したクランプスイッチブロック341との相違を主に説明する。画素回路は、
図15を参照して説明した画素回路280の構成を有する。
【0139】
クランプスイッチブロック347は、クランプスイッチブロック341からクランプスイッチトランジスタM13を省略した構成を有する。また、トランジスタM12のゲートに対して、発光制御走査信号EMIT-P(K-1)が、発光制御走査信号EMIT-P(K)に代えて与えられる。発光制御走査信号EMIT-P(K-1)は、信号線257により伝送される。
【0140】
図17は、
図16に示すクランプスイッチブロック347を制御する信号のタイミングチャートを示す。信号の高さは、物理電位レベルを示す。各信号のハイレベル電位はVGH、ハイレベル電位はVGLである。1フレーム期間において、走査信号SCAN-N(K)のハイレベル電位の時間長は、ローレベル電位の時間長よりも短い。
【0141】
時刻T11の前は発光期間である。時刻T11において、発光制御走査信号EMIT-P(K-1)が、ローレベル電位からハイレベル電位に変化し、走査信号SCAN-N(K)が、ローレベル電位からハイレベル電位に変化する。発光制御走査信号EMIT-P(K)、EMIT-P(K+3)はローレベル電位のままであり、走査信号SCAN-P(K)はハイレベル電位のままである。
【0142】
時刻T11でK-1行目の画素のOLED素子E1の発光が停止する。時刻T11からT12は、画素回路280のリセット期間である。走査信号SCAN-N(K)の変化に応じて、画素回路280のトランジスタM23、M24、M26がON状態に変化する。トランジスタM22はOFFのままであり、トランジスタM25はONのままである。
【0143】
容量素子C21とC22との間の中間ノード電位は、基準電位V-REFに変化する。容量素子C22に保持された電荷が放電し、駆動トランジスタM21のゲート電位が初期化(リセット)される。また、OLED素子E1のアノード電位は、リセット電位V―RSTまで低下する。
【0144】
発光制御走査信号EMIT-P(K-1)の変化により、クランプスイッチブロック347のトランジスタM12が、OFF状態からON状態に変化する。クランプスイッチトランジスタM11のゲート電位(M11_VG(K))は、VGH-Vthから、VGLに変化する。VGHはハイレベル電位であり、Vthは、スイッチトランジスタM12の閾値電圧である。
【0145】
次に、時刻T12において、発光制御走査信号EMIT-P(K)が、ローレベル電位から、ハイレベル電位に変化し、K-1行目の画素のOLED素子E1の発光が停止する。他の信号の電位は一定であって変化しない。時刻T12からT13は、画素回路280のVth補正期間である。発光制御走査信号EMIT-P(K)の変化に応じて、画素回路280のトランジスタM25はOFF状態になる。時刻T2から時刻T3まで、この状態が維持される。時刻T2から時刻T3までは、駆動トランジスタPM2の閾値電圧補正期間である。駆動トランジスタM21のゲート-ソース間電圧が閾値電圧まで低下する。
【0146】
次に、時刻T13において、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)がローレベル電位からハイレベル電位に変化し、走査信号SCAN-N(K)がハイレベル電位からローレベル電位に変化する。発光制御走査信号EMIT-P(K)はハイレベル電位のままである。走査信号SCAN-N(K)の変化に応じて、画素回路280のトランジスタM23、M24、M26はOFF状態になる。
【0147】
発光制御走査信号EMIT-P(K+3)の変化に応じて、容量素子CBの端子間に電圧(VGH-Vth-VGL)が蓄積される。クランプスイッチトランジスタM11のゲート-ソース間電位(M11_VG(K))は、VGLからVGH-Vthに変化する。このため、クランプスイッチトランジスタM11は、OFF状態からON状態に変化する。
【0148】
次に、時刻T14において、走査信号SCAN-P(K)がハイレベル電位からローレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。画素回路280のトランジスタM22がON状態に変化する。時刻T14からT15はデータ電圧の書き込み期間である。容量素子C21とC22の中間ノードにデータ信号が印加される。時刻T11からT15はリフレッシュ動作の期間である。
【0149】
次に、時刻T15において、発光制御走査信号EMIT-P(K-1)は、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。走査信号SCAN-P(K)がローレベル電位からハイレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。走査信号SCAN-P(K)の変化に応じて、画素回路280のトランジスタM22がOFF状態に変化して、データ電圧書き込み期間が終了する。
【0150】
発光制御走査信号EMIT-P(K-1)の変化に応じて、クランプスイッチブロック347のスイッチトランジスタM12が、ON状態からOFF状態に変化する。容量素子CBが電圧を保持しているため、クランプスイッチトランジスタM11はON状態のままである。その後、次のフレームの時刻T11まで、クランプスイッチトランジスタM11はON状態に維持される。
【0151】
次に、時刻T16において、発光制御走査信号EMIT-P(K)は、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。トランジスタM25がON状態に変化する。時刻T16以降は発光期間である。
【0152】
次に、時刻T17において、発光制御走査信号EMIT-P(K+3)は、ハイレベル電位から、ローレベル電位に変化する。他の信号は変化しない。クランプスイッチブロック347のスイッチトランジスタM12はOFF状態にあるので、スイッチトランジスタM11の状態は維持される。
【0153】
図17に示す例において、時刻T11からT12、時刻T13からT14、時刻T14からT15、時刻T15からT16の期間の長さは共通であって、データ電圧書き込み期間(1H期間)に等しい。時刻T12からT13の期間は、データ電圧書き込み期間の3倍の期間であり、時刻T16からT17の期間は、データ電圧書き込み期間の3倍の期間である。
【0154】
走査信号SCAN-N(K)が物理ハイレベル電位(論理ハイレベル)である、時刻T11から時刻T13の期間において、クランプスイッチトランジスタM11は、OFF状態に維持される。これにより、画素回路280に対する適切なデータ信号の書き込みを阻害しないようにできる。
【0155】
図17を参照して説明した例において、クランプスイッチトランジスタM11は、時刻T13から次のフレームの時刻T11までON状態に維持される。つまり、走査信号SCAN-Nの走査線221は、VGL電源線281と導通し、ローレベル電位VGLがVGL電源線281から与えられる。このため、走査線221のローレベル電位がドリフトし、画素回路280内のN型TFTから電流がリークすることを効果的に防ぐことができる。
【0156】
図16、17を参照して説明した構成例は、クランプスイッチブロック347を、発光制御走査信号EMIT-P(K-1)、EMIT-P(K+3)で制御する。クランプスイッチトランジスタM11が時刻T11からT13の期間においてOFFであるように、他の発光制御走査信号EMIT-Pを使用してもよい。例えば、発光制御走査信号EMIT-P(K-1)より前又は発光制御走査信号EMIT-P(K+3)より後の発光制御走査信号EMIT-Pを利用してもよい。
【0157】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0158】
10 TFT基板
25 表示領域
31 SCAN-P走査回路
32 SCAN-N走査回路
33 EMIT-P走査回路
34 クランプスイッチ回路
37 ドライバIC
341、345、347 クランプスイッチブロック
M11、M13 クランプスイッチトランジスタ
M12、M15、M16 スイッチトランジスタ