(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089783
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物および硬化物の製造方法。
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240627BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240627BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240627BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240627BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240627BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L63/00
C08L77/00
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/01
C08G69/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205196
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光人
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB03
4J001DC10
4J001EB36
4J001EB71
4J001EC82
4J001EE44C
4J001EE83A
4J001GA12
4J001JA07
4J001JB01
4J002CD001
4J002CL042
4J002DE146
4J002DE147
4J002DJ016
4J002DK006
4J002DK007
4J002EJ027
4J002EJ028
4J002EJ047
4J002EJ048
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD148
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】無機フィラーの配合量が多くても混錬性に優れ、かつ接着性に優れる硬化物が得られる硬化性組成物、硬化物および硬化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の課題は、特定のポリアミド樹脂(A)と、特定のエポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方とを含む硬化性組成物であって、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対してポリアミド樹脂(A)を0.2~15質量%、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を80~95質量%含有する、硬化性組成物によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方とを含む硬化性組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)が、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造とを有し、
ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、前記ポリシロキサン構造を有する化合物を0.1~50質量%、前記ダイマー酸およびダイマージアミンを合計で30~99質量%含有し、
エポキシ樹脂(B)の軟化点または融点が50~120℃であり、
硬化性組成物の不揮発分100質量%に対してポリアミド樹脂(A)を0.2~15質量%、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を80~95質量%含有する、硬化性組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度が0~90℃である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との含有質量比(A):(B)が、5:95~50:50である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量が、1万~10万である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに硬化剤(E)を含み、
硬化剤(E)が、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物および金属キレートからなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらに25℃で液状のエポキシ化合物(F)を含む請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項7】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方は、二種類以上含む請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1~7いずれか記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項9】
ガラス転移温度が100~200℃である請求項8記載の硬化物。
【請求項10】
ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方とを含む硬化性組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)が、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造とを有し、
ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、前記ポリシロキサン構造を有する化合物を0.1~50質量%、前記ダイマー酸およびダイマージアミンを合計で30~99質量%含有し、
エポキシ樹脂(B)の軟化点または融点が50~120℃であり、
硬化性組成物の不揮発分100質量%に対してポリアミド樹脂(A)を0.2~15質量%、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を80~95質量%含有する硬化性組成物を、
熱溶融により成形し、熱硬化する工程を備える硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂と、エポキシ樹脂と、シリカフィラーおよび熱伝導性フィラーの少なくとも一方と、を含有する硬化性組成物に関する。また、前記硬化性組成物を熱溶融により成形し、硬化してなる硬化物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)は、電子部品の要の部材、例えばマイクロプロセッサ、トランジスタメモリとして、コンピューター、スマートフォン、フラットパネルディスプレイ等の様々な電子デバイスに搭載されている。ICを搭載したパッケージ或いはICを実装した実装基板には、封止材、接着剤、アンダーフィル剤、ポッティング材等の絶縁性樹脂が使用されている。
【0003】
特許文献1には、WL-CSP(ウエハーレベルチップサイズパッケージ)のモールドアンダーフィル材として、数平均分子量が特定範囲にあり、ポリブタジエン構造、ポリイソプレン構造、ポリカーボネート構造、(メタ)アクリレート構造およびポリシロキサン構造から選択される一つ以上の構造を有する高分子樹脂、無機充填剤、エポキシ樹脂、および硬化促進剤を含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、ブタジエン系ゴムおよびシリコーン系ゴムからなる群より選択される一種以上のエラストマー、エポキシ樹脂、硬化剤、並びに無機充填材を含有し、前記エラストマー成分の含有量が特定量含まれる封止用フィルムが提案されている。
さらに、特許文献3には、ダイマー酸またはダイマージアミンからなるダイマー構造、およびフェノール性水酸基単位を有する、側鎖に水酸基を有するポリアミドと、ラジカル重合性エポキシとの反応物であるラジカル重合性ポリアミドが開示されている。また、このラジカル重合性ポリアミドに、光重合開始剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリカフィラー、溶媒等を含有する樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4には、多塩基酸単量体とポリアミン単量体とを重合してなり、側鎖にフェノール性水酸基を有する、ダイマー構造を有するポリアミド(A)と、前記フェノール性水酸基と反応し得る3官能以上の化合物(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
さらに、文献5には、ポリアミドブロック(am)とポリシロキサン(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-057313号公報
【特許文献2】国際公開第2016/136741号
【特許文献3】特開2019-119886号公報
【特許文献4】国際公開第2016/001949号
【特許文献5】特開2022-73992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体パッケージの製造工程では、再配線層を形成するために加熱工程が複数ある。例えばファンアウトウエハーレベルパッケージ(FO-WLP)は、ピン数を増やすことのできるチップサイズパッケージとして注目されているが、このFO-WLPの代表的なFACE-DOWN型WLPの製造工程では、半導体チップをモールド用樹脂組成物で片面封止し、その後の再配線層の形成工程で繰り返し加熱する工程がある。このため、加熱時の発泡およびクラックを抑制できる樹脂組成物が求められている。
【0006】
電子部品や電子デバイスは、自動車、産業機械、船舶、航空機等に幅広く使用される。また、電子部品の軽薄短小化の流れを受けてICパッケージ等の電子部材も薄膜化が求められているが、薄膜化に伴い部材の反りが発生し、歩留まりが悪くなってしまう。そのため反りの影響を小さくすることを目的に、有機物よりも線膨張係数を小さい無機フィラー、特にシリカや熱伝導フィラーの配合量を多くする検討がされているが、組成物の無機フィラー配合量を多くすると混錬性が損なわれ、均一な組成物が得られにくいという課題があった。
このような状況により組成物の無機フィラー配合量が多くなる一方で、電子部品の高性能化の流れを受けて、製品の安定性を増すため接着力の高い、樹脂組成物が要求されている。しかしながら、無機フィラーを多量に配合した場合の組成物混錬性と高分子鎖の柔軟性が要求される接着力の両立は容易ではない。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、無機フィラーの配合量が多くても混錬性に優れ、かつ接着性に優れる硬化物が得られる硬化性組成物、硬化物および硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
[1]:ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方とを含む硬化性組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)が、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造とを有し、
ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、前記ポリシロキサン構造を有する化合物を0.1~50質量%、前記ダイマー酸およびダイマージアミンを合計で30~99質量%含有し、
エポキシ樹脂(B)の軟化点または融点が50~120℃であり、
硬化性組成物の不揮発分100質量%に対してポリアミド樹脂(A)を0.2~15質量%、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を80~95質量%含有する、硬化性組成物。
【0010】
[2]:ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度が0~90℃である、前記硬化性組成物。
【0011】
[3]:ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との含有質量比(A):(B)が、5:95~50:50である前記硬化性組成物。
【0012】
[4]:ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量が、1万~10万である前記硬化性組成物。
【0013】
[5]:さらに硬化剤(E)を含み、硬化剤(E)が、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物および金属キレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む前記硬化性組成物。
【0014】
[6]:さらに25℃で液状のエポキシ化合物(F)を含む前記硬化性組成物。
【0015】
[7]:シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方は、二種類以上含む前記硬化性組成物。
【0016】
[8]:前記硬化性組成物を熱溶融により成形し、硬化させてなる硬化物。
【0017】
[9]:ガラス転移温度が100~200℃である前記硬化物。
【0018】
[10]:ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方とを含む硬化性組成物であって、ポリアミド樹脂(A)が、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造とを有し、
ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、前記ポリシロキサン構造を有する化合物を0.1~50質量%、前記ダイマー酸およびダイマージアミンを合計で30~99質量%含有し、
エポキシ樹脂(B)の軟化点または融点が50~120℃であり、
硬化性組成物の不揮発分100質量%に対してポリアミド樹脂(A)を0.2~15質量%、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を80~95質量%含有する硬化性組成物を、
熱溶融により成形し、熱硬化する工程を備える硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無機フィラー配合量が多くても混錬性に優れ、かつ接着性に優れる硬化物が得られる硬化性組成物、硬化物およびその製造方法を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0021】
本明細書において、「Mw」および「Mn」は、順にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量および数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0022】
本実施形態に係る硬化性組成物は、熱硬化性を示す溶融成形用の組成物であり、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造を有するポリアミド樹脂(A)(以下、単に「ポリアミド樹脂(A)」ともいう)と、軟化点または融点が50~120℃であるエポキシ樹脂(B)(以下、単に「エポキシ樹脂(B)」ともいう)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)(以下、単に「熱伝導性フィラー(D)」ともいう)の少なくとも一方とを含む。ポリアミド樹脂(A)は、当該ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、前記ポリシロキサン構造を有する化合物を0.1~50質量%、前記ダイマー酸およびダイマージアミンを30~99質量%含有する。ポリアミド樹脂(A)を構成する単量体の仕込み比が、実質的に、ポリアミド樹脂(A)の単量体に由来する構成成分の割合となる。
【0023】
本明細書において「無溶剤型」とは、硬化性組成物100質量%中に含まれる溶剤が2質量%以下であることをいう。硬化性組成物の配合成分の合成時、或いは組成物の調製時に用いた溶剤が残存していてもよいが、極力除去されていることが好ましく、実質的に溶剤を含まない(不可避的に含まれる溶剤以外を含まない)ことがより好ましい。「溶融成形」とは、このような無溶剤型の硬化性組成物を溶融状態で流動させて別の形状の成形体に形成することをいう。なお、これらの無溶剤型の硬化性組成物の配合成分は、硬化性組成物の段階で一部が架橋(半硬化)されていてもよい。溶剤とは、常温常圧で液状であり、加熱、減圧で除去可能な低分子化合物である。また、硬化性組成物を構成する各成分を溶解、分散する目的で使用される。溶剤としてトルエン、酢酸エチル、エチルメチルケトンなどの有機低分子化合物が例示できる。
溶剤の含有率は、硬化性組成物の常温での減圧乾燥前後の質量の差を、含有される溶剤の質量とみなし、減圧乾燥前の硬化性組成物の質量に対して含有される溶剤の質量の百分率である。
【0024】
また、前記「別の形状の成形体」には、サイズの単なる変更や、接合対象の表面の凹凸を被覆する程度の微小変形であって、マクロ的には元の形状を維持している態様は本発明の溶融成形には含まないものとする。例えば、硬化性組成物がシートの場合、熱プレスにより厚みが単に薄くなる態様や、シートの厚み未満の厚さの配線等を前記シートにより被覆する態様は含まない。
【0025】
特定量のポリアミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方とを有する本硬化性組成物によれば、溶融成形して硬化した硬化物において以下の効果が得られる。即ち、その硬化物を例えばICパッケージ等の封止樹脂として用いたときに、半導体チップ、金属などに対する優れた接着性と、シリカフィラー(C)もしくは熱伝導性フィラー(D)などの無機フィラー配合量を高めることで、優れた低反り性を有することができ、結果的に歩留まりの高い硬化物を提供できる。以下、さらに詳細に説明する。
【0026】
≪硬化性組成物≫
<ポリアミド樹脂(A)>
ポリアミド樹脂はアミド基を含む繰り返し構造単位を含有する重合体であり、このうち、ポリシロキサン構造と、ダイマー酸およびダイマージアミンの少なくとも一方由来のダイマー構造とを有する樹脂をポリアミド樹脂(A)とする。ポリアミド樹脂(A)は、多塩基酸化合物とポリアミン化合物と必要に応じてその他モノマーとの重合体、或いはその重合体を変性した変性体である。ここで変性体とは、前記重合体の分子構造内の一部を変換(例えば、官能基の変換、他の化合物と置換、または他の化合物の付加)した誘導体をいう。ポリアミド樹脂へのポリシロキサン構造の導入は、ポリシロキサン構造を有する化合物を用いればよく、多塩基酸化合物および/またはポリアミン化合物が好適に用いられる。一方、ポリアミド樹脂へのダイマー構造の導入は、ダイマー構造を有する単量体を用いればよく、当該単量体として多塩基酸化合物であるダイマー酸およびポリアミン化合物であるダイマージアミンの少なくとも一方が用いられる。
【0027】
ポリアミド樹脂(A)は、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して0.2~15質量%含む。0.6~10質量%含むことが好ましく、0.7~6.0質量%含むことがより好ましい。0.2~15質量%含むこと混錬性と接着力をバランス良く発揮することができる。
【0028】
ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる全単量体100質量%中のポリシロキサン構造を有する化合物の合計仕込み率は、0.1~50質量%とする。ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる単量体の仕込み比は、ポリアミド樹脂(A)の単量体に由来する構成成分の割合と実質的に一致する。即ち、ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、ポリシロキサン構造の構成単位の割合は、実質的に0.1~50質量%となる。前記仕込み率を0.1~50質量%とすることにより、ポリシロキサン構造の効果を充分に発揮させることができる。ポリシロキサン構造を含有する化合物の合計含有率は、2~30質量%が好ましく5~20質量%がより好ましい。
【0029】
ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる全単量体100質量%中のダイマー酸およびダイマージアミンの合計仕込み率は、30~99質量%とする。ポリアミド樹脂(A)の重合に用いる単量体の仕込み比は、ポリアミド樹脂(A)の単量体に由来する構成成分の割合と実質的に一致する。即ち、ポリアミド樹脂(A)を構成する全単量体100質量%中、ダイマー酸およびダイマージアミン由来のダイマー構造の構成単位の割合は、実質的に30~99質量%となる。前記仕込み率を30~99質量%とすることにより、ダイマー構造の効果を充分に発揮させることができる。ダイマー酸およびダイマージアミンの合計含有率は、50~95質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましい。
なお、前記ダイマー構造の含有率は、重合体の場合には、ポリアミド樹脂(A)を合成する際に使用する全単量体の合計100質量%中の、ダイマー構造を有する単量体の含有率(質量%)より求めることができる。また、変性体の場合には、変性した後の構造を有する仮想の単量体とし、変性しない単量体については原料モノマーを用いて全単量体100質量%中の、ダイマー構造を有する単量体の含有率(質量%)から求めることができる。変性した後の構造を有する仮想の単量体の含有量は、重合体に対する反応率を考慮して求めることができる。例えば、重合体を得た後に単量体a由来の側基を変性する場合、「単量体aの仕込み量(モル)×側基の変性率/100×側基が変性された後の構造を有する仮想の単量体の分子量」により求まるモノマー量(質量)Xと、「単量体aの仕込み量(モル)×(1-側基の変性率/100)×単量体aの分子量」により求まるモノマー量(質量)Yを用い、その他単量体については前述の重合体の求め方と同様にしてダイマー構造の含有率を求めることができる。
【0030】
ダイマー構造は、炭化水素鎖や環構造を有する構造であり、配合されるエポキシ樹脂類に比較して低極性であるため、系外から吸湿を抑制できる。
溶融工程を経て固体状態とすることにより、ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とがミクロンレベルで相分離してミクロ相分離構造を形成しやすい。ポリアミド樹脂(A)のポリシロキサン構造およびダイマー構造部が柔軟性成分となり、ポリアミド樹脂(A)のアミド結合由来の水素結合と、エポキシ樹脂(B)と相溶しやすい部位とが、拘束成分となる。このようなポリアミド樹脂(A)と堅い成分であるエポキシ樹脂(B)を組み合わせ、熱溶融工程を経ることによりミクロ相分離構造が形成されると考えられる。溶融成形によってミクロ相分離構造を形成しやすい樹脂成分を硬化性組成物の樹脂成分として用いることにより、本硬化性組成物の硬化物の接着力を高められると考えられる。
【0031】
ポリアミド樹脂(A)は、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基と熱により架橋し得る官能基を有することが好ましい。官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、水酸基が例示できる。これらは、ポリアミド樹脂(A)の単量体由来の官能基であってもよいし、重合体を得た後、変性体として官能基を導入してもよい。官能基は、重合体の末端にある態様の他、側基、および/又は側鎖に有する態様がある。好適な例として、重合体末端にカルボキシ基またはアミノ基等の官能基を有する態様が例示できる。また、側基または側鎖にカルボキシ基、アミノ基、水酸基等の官能基の少なくともいずれかを有する態様が例示できる。
【0032】
ポリアミド樹脂(A)が水酸基を有する場合、フェノール性水酸基が好適である。フェノール性水酸基を有することで、エポキシ樹脂(B)との架橋構造を構築し、耐久性に優れた硬化物を得ることができる。フェノール性水酸基は、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物および/又はフェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いることにより容易に導入できる。このフェノール性水酸基の芳香環は、ポリアミド樹脂(A)の主鎖骨格に含まれる態様が好ましい。また、耐久性の観点からは、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物をポリアミド樹脂(A)の単量体として用いることが好ましい。
【0033】
ポリアミド樹脂(A)は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、イミド基を一部に有するポリアミドイミドであっても、エステル基を一部に有するポリアミドエステルであってもよい。
【0034】
[多塩基酸化合物]
多塩基酸化合物は、二塩基酸以上のカルボン酸である。多塩基酸化合物は、その一部が酸無水物であってもよい。多塩基酸化合物として、ポリシロキサン構造を有する多塩基酸化合物、ダイマー酸および、その他多塩基酸化合物が挙げられる。
【0035】
多塩基酸化合物にポリシロキサン構造を有する化合物を用いる場合、多塩基酸化合物100質量%中のポリシロキサン構造を有する多塩基酸化合物の含有比率は、0.1~50質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。多塩基酸化合物100質量%中のポリシロキサン構造を有する化合物の含有比率が0.1質量%~50質量%であると耐湿熱性が高まり、ポリシロキサン構造による無機フィラーへの濡れ性向上効果と応力緩和効果を充分に発現させ、より優れた混錬性と接着力が発現できる。
【0036】
ポリシロキサン構造を有する多塩基酸化合物の市販品は、例えば、信越化学社製の「X-22-162C」などが挙げられる。
【0037】
多塩基酸化合物にダイマー酸を用いる場合、多塩基酸化合物100質量%中のダイマー酸の含有比率は、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%以上がより好ましい。多塩基酸化合物100質量%中のダイマー酸の含有比率が60質量%以上であると耐湿熱性が高まり、ダイマー構造による応力緩和効果を充分に発現させ、より優れた接着力が発現できる。
【0038】
(ダイマー酸)
ダイマー酸はダイマー構造を有する多塩基酸化合物であり、脂肪酸の二量体(以下、脂肪酸二量体という)である。
【0039】
前記脂肪酸二量体は、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物がさらに好ましく、炭素数36~44の化合物が特に好ましい。脂肪酸二量体は、脂肪酸をディールス-アルダー反応させた分岐構造を有するジカルボン酸化合物が好ましい。前記分岐構造は、脂肪鎖または脂肪鎖と環構造を含むものが好ましく、脂肪鎖と環構造を含むものがより好ましい。前記環構造は、1または2以上の芳香環や脂環構造が好ましく、脂環構造がより好ましい。脂環構造は、環内に二重結合を1つ有する場合、二重結合を有さない場合などがある。
【0040】
ダイマー構造を有する多塩基酸化合物は、例えば、下記化学式(1)~(4)で示す構造が挙げられる。なお、ダイマー構造を有する多塩基酸化合物は、下記構造に限定されないことはいうまでもない。
【0041】
【0042】
脂肪酸は、例えば、炭素数10~30の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数10~24の不飽和脂肪酸がより好ましい。前記不飽和脂肪酸は、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を1以上有する。前記脂肪酸は、例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸およびこれらを精製したオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が挙げられる。
前記脂肪酸二量体を合成する際、脂肪酸二量体の他に、脂肪酸の三量体や場合によって四量体が生成する。そのため、ダイマー骨格を含む多塩基酸化合物は、主成分の脂肪酸二量体のみならず、脂肪酸の三量体等、場合によっては原料の脂肪酸を含む混合物である。脂肪酸二量体は、ダイマー酸100質量%中、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0043】
ダイマー酸は、原料に不飽和脂肪酸を使用しているため不飽和結合が残存する場合がある。かかる場合、水素添加(水添反応ともいう)を行い、不飽和結合数を抑制できる。これによりポリアミド樹脂(A)を合成する際の反応安定性が向上し、さらにポリアミド樹脂(A)を含有する硬化性組成物の硬化物の高温時の耐性が向上する。ダイマー酸は、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0044】
ダイマー酸の市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」、「プリポール1015」、「プリポール1017」、「プリポール1022」、「プリポール1025」、「プリポール1040」;BASFジャパン社製の「エンポール1008」、「エンポール1012」、「エンポール1016」、「エンポール1026」、「エンポール1028」、「エンポール1043」、「エンポール1061」、「エンポール1062」が挙げられる。これらの中でも炭素数36の「プリポール1009」を用いることにより、金属への密着性の高いポリアミド樹脂(A)が得やすい。また、炭素数44の「プリポール1004」を用いることにより、柔軟性が良好なポリアミド樹脂(A)が得やすい。
【0045】
(その他多塩基酸化合物)
その他多塩基酸化合物は、ダイマー酸以外の多塩基酸化合物であって、2官能以上の化合物である。多塩基酸化合物は、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0046】
二塩基酸化合物として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸;シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、チオりんご酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族二塩基酸;1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族二塩基酸が挙げられる。これらの中でも二塩基酸化合物として、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0047】
3官能以上の多塩基酸化合物は、例えば、トリメリット酸、水添トリメリット酸、ピロメリット酸、水添ピロメリット酸、トリメシン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。3官能以上の多塩基酸化合物を使用するとポリアミド樹脂(A)に分岐構造を導入できるため、硬化物の凝集力が高まり、接着力を向上させることができる。
【0048】
その他多塩基酸化合物の好適例として、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、フェノールと同様に芳香環に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基ともいう)を有し、酸性官能基を2以上有する化合物である。酸性官能基は、例えば、カルボキシ基が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物を用いることにより、硬化処理時に、ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の架橋構造の調整を容易に行うことができる。その結果、強固な架橋を形成できるため、硬化物の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0049】
フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、例えば、2-ヒドロキシイソフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸等のモノヒドロキシイソフタル酸;2,5-ジヒドロキシイソフタル酸、2,4-ジヒドロキシイソフタル酸、4,6-ジヒドロキシイソフタル酸等のジヒドロキシイソフタル酸;2-ヒドロキシテレフタル酸等のモノヒドロキシテレフタル酸;2,3-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ジヒドロキシテレフタル酸等のジヒドロキシテレフタル酸;3-ヒドロキシフタル酸、4-ヒドロキシフタル酸等のヒドロキシフタル酸;3,4-ジヒドロキシフタル酸、3,5-ジヒドロキシフタル酸、4,5-ジヒドロキシフタル酸、3,6-ジヒドロキシフタル酸等のジヒドロキシフタル酸が挙げられる。
これらの中でもフェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として、共重合性、入手の容易さなどの点で5-ヒドロキシイソフタル酸が好ましい。なお、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物は、上段で例示した化合物のカルボキシ基が酸無水物基を形成していてもよく、また、カルボキシ基がエステルを形成していてもよい。
【0050】
[ポリアミン化合物]
ポリアミン化合物は、アミノ基を2個以上有する化合物である。ポリアミン化合物の好適例として、ポリシロキサン構造を有するポリアミン、ダイマージアミンおよびその他ポリアミン化合物が挙げられる。
ポリアミン化合物にポリシロキサン構造を有する化合物を用いる場合、ポリアミン化合物100質量%中のポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物の含有比率は、0.1質量%~50質量%が好ましく、2質量%~30質量%がより好ましい。ポリアミン化合物100質量%中のポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物の含有比率が0.1質量%~50質量%であると耐湿熱性が高まり、ポリシロキサン構造による無機フィラーへの濡れ性向上効果と応力緩和効果を充分に発現させ、より優れた混錬性と接着力が発現できる。
【0051】
ポリアミン化合物にダイマージアミンを用いる場合、ポリアミン化合物100質量%中のダイマージアミンの含有比率は、30質量%~100質量%が好ましく、90質量%以下がより好ましい。ダイマージアミン100質量%中のダイマージアミンの含有比率を30質量%以上とすることにより、ダイマー構造による応力緩和性を充分に発現させ、より優れた接着性が実現できる。
【0052】
(ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物)
ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物は、ポリシロキサン構造とアミノ基を2つ以上有する化合物である。ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物のアミノ基は末端に位置しても良いし、側鎖にあっても良いし、その両方でも良い。
ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物の分子量は、200~20,000が好ましく、500~10,000がさらに好ましい。
ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物の分子量が200~20,000であることにより、ポリシロキサン構造による無機フィラーへの濡れ性向上効果と応力緩和効果を充分に発現させ、より優れた混錬性と接着力が発現できる。
ポリシロキサン構造を有するポリアミン化合物の市販品は、例えば、信越化学社製の「PAM-E」、「KF-8010」、「X-22-161A」、「X-22-161B」、「KF-8012」、「KF8008」、「X-22-1660B-3」、「X-22-9409」や、JNC社製の「サイラプレーン FM-3311」、「サイラプレーン FM-3321」、「サイラプレーン FM-3325」などが挙げられる。
【0053】
(ダイマージアミン)
ダイマージアミンは、ダイマー構造を有するアミノ基を2つ有する化合物であり、前述のダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化した化合物を使用できる。転化方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、さらに蒸留・精製を行う方法が挙げられる。
ダイマージアミンは、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物がさらに好ましく、入手しやすさの観点からは炭素数36~44の化合物がさらに好ましい。
【0054】
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」や、BASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。ダイマージアミンは、単独または二種類以上を併用して使用できる。
【0055】
(その他ポリアミン化合物)
その他ポリアミン化合物は、ダイマージアミンおよびポリシロキサン構造を有するポリアミン以外のポリアミン化合物であって、例えば、ジアミン化合物、3官能以上のポリアミン化合物が挙げられる。
【0056】
ジアミン化合物は、例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0057】
また、その他ポリアミン化合物としては、フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物が挙げられる。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いたポリアミド樹脂(A)は、耐久性の点で好ましい。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物を用いると、ポリアミド樹脂(A)にフェノール性水酸基を導入することができるために好ましい。フェノール性水酸基を導入することで、配合するエポキシ樹脂(B)と3次元架橋して、より強靭な硬化物を得ることが可能となる。
フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物は、アミノ基を複数有し、かつフェノール性水酸基を有する。フェノール性水酸基を有するポリアミン化合物は、例えば、下記一般式(1)で示すポリアミンが挙げられる。
【0058】
【0059】
式中R1は、直接結合、または炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、またはハロゲンを含む基を示す。前記基は、例えば、炭素数1~30の2価の炭化水素基またはハロゲン原子によって水素の一部若しくは全部が置換されている炭素数1~30の2価の炭化水素基、-(C=O)-、―SO2-、-O-、-S-、―NH-(C=O)-、-(C=O)-O-、下記一般式(2)で表される基および下記一般式(3)で示す基が挙げられる。
【0060】
【0061】
【化7】
式中、rおよびsはそれぞれ独立に1~20の整数を示し、R
2は水素原子またはメチル基を示す。
【0062】
一般式(1)で示すポリアミンは、例えば2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビスフェニルが挙げられる。
【0063】
アミノ基を3以上有し、フェノール性水酸基を有さないアミンは、例えば、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,4,4’-トリアミノジフェニルエーテルが挙げられる。
【0064】
これらの中でもその他ポリアミン化合物としては、耐湿熱性を高め、接着力がより向上する面でイソホロンジアミン、またはノルボルナンジアミンが好ましい。
【0065】
[ポリアミド樹脂(A)の製造方法]
ポリアミド樹脂(A)の製造は、例えば、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、および固相重合、並びにこれらを組み合わせて合成できる。これらの中でも溶液重合が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)の重合体は、上述した多塩基酸化合物と、ポリアミン化合物と、必要に応じてその他モノマーを使用し、触媒存在下あるいは非存在下において行うことができる。例えば、窒素充填したフラスコに、ポリシロキサン構造を有する化合物、ダイマー酸、その他酸モノマー、ダイマージアミン、その他アミン系モノマーおよびイオン交換水を所定量仕込み、20~100℃で撹拌することで均一溶解ないし分散する。その後、前記イオン交換水および反応により生ずる水を除去しながら230℃まで徐々に昇温し、230℃に到達次第15mmHg程度まで減圧を行い、その状態を1時間程度保持することでポリアミド樹脂(A)を得ることができる。減圧後の加熱温度は、例えば、150~300℃であり、加熱時間は1~24時間程度とすることができる。合成反応の促進のため、脱水あるいは脱アルコール反応を行うことが好ましく、高温による着色、分解反応を避けるために、減圧下、180~270℃で反応を行うことが好ましい。
【0066】
その他モノマーとして、ポリアミンに加えてモノアミンを併用してもよい。モノアミンは、反応停止剤として作用するため、ポリアミド樹脂(A)の分子量を調整し易い。また、ポリアミド樹脂(A)の主鎖末端の一部が、反応性官能基ではないため経時安定性が向上する。モノアミンとして、アニリン、ベンジルアミン、4-アミノフェノール、2-エチルヘキシルアミン、等が例示できる。
【0067】
<ポリアミド樹脂(A)の物性>
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は0~90℃であることが好ましく、10℃~70℃がより好ましく、20℃~60℃がさらに好ましい。Tgは、ポリアミド樹脂(A)を、動的粘弾性測定装置で測定した粘性項を弾性項で除した値(tanδ)が極大を示す温度である。
ポリアミド樹脂(A)のTgを0℃以上とすることにより、硬化性組成物を例えばシート状に成形した際に、シート同士のブロッキングの発生を効果的に抑制し、ハンドリング性を良好にすることができる。また、ポリアミド樹脂(A)のTgを90℃以下とすることにより、硬化性組成物の溶融物を形成する工程において、エポキシ樹脂(B)、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)との相溶性をより向上させ、均一な相分離構造が得やすくなる。
【0068】
ポリアミド樹脂(A)の重量平均分子量Mwは1万~10万であることが好ましく、1.5万~7.5万であることがより好ましい。Mwが1万以上であることで、硬化膜の耐久性が高まり、製品としての安定性が向上する。Mwが10万以下であることで被着体への濡れ性が向上し接着性がより良化する。
【0069】
ポリアミド樹脂(A)の酸価は、0.1~30mgKOH/gが好ましく、1~25mgKOH/gがより好ましく、2~20mgKOH/gがさらに好ましい。酸価を0.1~30mgKOH/gとすることにより、硬化物としたときに適度な架橋密度が得られ、半導体チップとの接着力がより向上する。
【0070】
<エポキシ樹脂(B)>
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有することにより熱硬化し得る熱硬化性樹脂であり、25℃で固体であって、軟化点または融点が50~120℃である樹脂がエポキシ樹脂(B)である。エポキシ樹脂(B)は、硬化処理により熱架橋する。なお、本発明における軟化点とはエポキシ樹脂が軟化する温度であり、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS K-2207に準拠)により測定した値である。
エポキシ樹脂の融点は、JIS K-7121に準拠し、DSC法により測定した値である。
【0071】
エポキシ樹脂(B)は、エポキシ樹脂(B)自身に水酸基等の反応性官能基を有していれば、エポキシ樹脂(B)単独で架橋構造を形成できる。単独架橋に加えて又は単独架橋に代えて、ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)を熱架橋する態様も好適である。ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の熱架橋による3次元架橋構造により、接着力に優れる。また、後述する硬化剤(E)とエポキシ樹脂(B)の間に架橋構造を形成する態様も好適である。これらの熱架橋の種類は、一種でも二種以上を併用してもよい。
【0072】
ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の含有質量比は、(A):(B)=5:95~50:50であることが好ましく、10:90~30:70がより好ましい。上記比率とすることで混錬性と接着力をバランス良く発揮することができる。
【0073】
エポキシ樹脂(B)の含有率は、硬化性組成物100質量%中、5~30質量%であることが好ましく、より好ましくは7~20質量%である。この範囲であることにより、接着力を高めることができる。
【0074】
エポキシ樹脂(B)は芳香環を含む繰り返し単位を有する態様が好ましい。また、その繰り返し単位に有する芳香環の少なくとも一部に置換基としてエポキシ基を含む有機基が含まれることが好ましい。エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量は、100~300g/eq.が好ましく、剛性を高めつつ、溶融成形時の樹脂成分のミクロ相分離を効果的に促進させ、硬化物としたときの発泡を抑制し、クラック耐性および耐湿熱性などの製品の安定性をより向上させる観点からは200g/eq.以上が好適である。より好ましくは220~320g/eq.であり、さらに好ましくは250~300g/eq.である。
【0075】
エポキシ樹脂(B)は、ポリアミド樹脂(A)との混練時の相溶性を高める観点からは、ナフタレン等の多環芳香族炭化水素よりも、ベンゼン環などの一つの環を有する単環芳香族炭化水素が好ましい。また、単環芳香族炭化水素を複数有する多芳香環エポキシ樹脂も好適である。さらに、溶融成形時にポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の相分離構造を効果的に形成させる観点から、繰り返し単位構造を含むエポキシ樹脂(B)が好適である。
エポキシ樹脂(B)は例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、後述する化学式(5)~(10)を挙げることができる。
【0076】
これらの中でも、耐湿熱性を高め、接着力をより良化する観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、が好適である。
【0077】
好適例として、以下の化学式(5)~(10)のエポキシ樹脂を例示できる。式中のnは整数であり、例えば、1~10が好適である。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0078】
エポキシ樹脂(B)は、二種類以上を併用してもよい。二種以上を併用することにより、接着力を調整しやすい。例えば、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、またはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。中でも、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とフェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、またはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を、質量比で2:8~8:2で組み合わせて使用すると、ポリアミド樹脂(A)と適切な相溶性を有して接着力が向上するため好ましい。また、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対し、ポリアミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)の合計含有量を9質量%以上とすることが好ましい。
【0079】
<シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)>
本実施形態の硬化性組成物は、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)(但し、シリカフィラーを除く)の少なくとも一方を含む。シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方を、前述したポリアミド樹脂(A)およびエポキシ樹脂(B)と組み合わせることにより、硬化物の機械的強度を高めることができる。
【0080】
シリカフィラー(C)は、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカフィラーが挙げられる。シリカフィラー(C)は、流動性に優れる点で溶融球状シリカが好ましい。
熱伝導性フィラー(D)は、20℃における熱伝導率が高い方が好ましく、15(W/m・K)以上のフィラーである。また、体積抵抗率は高い方が好ましく、10の6乗(Ω・cm)以上のフィラーである。熱伝導性フィラー(D)の好適例として、酸化アルミニウム、窒化アル・BR>~ニウム、窒化珪素、または窒化ホウ素、炭化ケイ素が挙げられる。この中でも、入手のしやすさから酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素が好ましい。窒化ホウ素の種類は特に限定されない。例えば、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、立方晶窒化ホウ素(c-BN)、ウルツ鉱型窒化ホウ素等が例示できる。これらの中でも、熱伝導性の観点から六方晶窒化ホウ素(h-BN)が好ましい。窒化ホウ素の形状は限定されないが鱗片状が好適であり、一次粒子であっても、一次粒子が凝集して形成された二次粒子であってもよい。熱伝導性フィラー(D)は、例えば、溶融破砕体、溶融球状体、結晶体、2次凝集体等が挙げられる。この中でも流動性に優れる点で溶融球状体が好ましい。
【0081】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、平均粒子径が1~50μmの範囲が好ましく、5~30μmがより好ましく、10~22μmがさらに好ましい。平均粒子径を1μm以上とすることにより硬化物の可撓性、柔軟性がより向上する。平均粒子径を50μm以下とすることによりに高充填し易いというメリットがある。なお、平均粒子径は、平均粒子径D50であり、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定する。
【0082】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、それぞれ独立にシランカップリング剤により処理(前処理)してもよい。シランカップリング剤により処理することにより、他の材料との親和性が向上し、シリカフィラー(C)および/または熱伝導性フィラー(D)の分散性がより向上する。
シランカップリング剤は、加水分解性基と反応性官能基を有する化合物である。加水分解性基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基;アセトキシ基;2-メトキシエトキシ基等が挙げられる。これらの中でも加水分解によって生じるアルコールなどの揮発成分を除去し易い面でメトキシ基が好ましい。
前記反応性官能基は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられるが、中でもエポキシ基が好ましい。
【0083】
シランカップリング剤は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。
優れた接着力を発現させる観点から、フェニルアミノシラン処理または/およびビニルシラン処理が好ましい。
【0084】
シランカップリング剤によりシリカフィラー(C)を処理する方法は、例えば、溶媒中でシリカフィラー(C)とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中でシリカフィラー(C)とシランカップリング剤を処理させる乾式法が挙げられる。シランカップリング剤の処理量は、未処理のシリカフィラー(C)100質量部に対して、シランカップリング剤を0.1~1質量部程度処理することが好ましい。
【0085】
シランカップリング剤により熱伝導性フィラー(D)を処理する方法およびその処理量は、上述したシリカフィラー(C)と同様である。
【0086】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対し、80~95質量%であり、好ましくは85~93質量%である。80質量%以上とすることにより、硬化物の反りの影響を小さくすることができる一方で、95質量%以下であることで、硬化性組成物の混錬性が確保されやすい。本硬化性組成物は、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)のうちのいずれか一方のみを含む態様、両者を含む態様がある。
【0087】
シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)は、それぞれ独立に、単一種類でも二種以上を併用してもよいが、接着力を向上させる観点からはシリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の少なくとも一方は二種類以上含むことが好ましい。
シリカフィラー(C)を二種類以上含む態様として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカおよび2次凝集シリカの中から任意の二種類以上を併用する態様がある。また、平均粒子径が異なる二種類以上を併用する態様、表面処理が異なる二種類以上のシリカフィラーを併用する態様が例示できる。
熱伝導性フィラー(D)を二種類以上含む態様として、溶融破砕体、溶融球状体、結晶体および二次凝集体から任意の二種類以上を併用する態様がある。また、平均粒子径が異なる二種類以上を併用する態様、表面処理が異なる二種類以上の熱伝導性フィラー(D)を併用する態様が例示できる。
シリカフィラー(C)と熱伝導性フィラー(D)を併用することにより、接着性に加え、熱伝導性をより好適に発揮させることができる。
【0088】
充填性を高める観点からは、平均粒子径が異なる溶融球状シリカを二種類以上組み合わせることが好ましい。具体的には、平均粒子径が0.2μm以上10μm未満と、10μm~100μmの二種類の溶融球状シリカを含むことが好ましく、それぞれのシリカフィラー(C)の含有比率(質量比)は5:95~95:5が好ましく、さらに好ましくは10:90~90:10である。5:95~95:5の範囲の含有比率で使用することで、充填性を高めやすい。
【0089】
熱伝導性フィラー(D)の場合も同様に、充填性を高める観点からは、平均粒子径が異なる二種類以上組み合わせることが好ましい。具体的には、平均粒子径が0.2μm以上10μm未満と、10μm~100μmの二種類の熱伝導性フィラーを含むことが好ましく、それぞれの熱伝導性フィラー(D)の含有比率(質量比)はシリカフィラー(C)と同様である。
【0090】
<その他フィラー(H)>
硬化性組成物には、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)以外のその他フィラー(H)を含有してもよい。その他フィラー(H)としては、難燃性フィラー、電磁遮蔽性フィラー等が例示できる。その他フィラー(H)として、例えば石英ガラス、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、フェライト等が挙げられる。その他フィラー(H)の好ましい平均粒子径D50および表面処理方法は、上述したシリカフィラー(C)と同様である。
電磁遮蔽性など他の性能を発現させる観点からは、シリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の合計とその他フィラーの含有比率(質量比)が50:50~90:10が好ましい。但し、シリカフィラー(C)、熱伝導性フィラー(D)およびその他フィラーとの合計が、硬化性組成物の不揮発分100質量%に対して95質量%を超えない範囲が好適である。
【0091】
<硬化剤(E)>
本発明の硬化性組成物は、さらに酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物および金属キレートからなる群より選択される少なくとも一種である硬化剤(E)を含むことが好ましい。硬化剤(E)は、高分子化合物でも低分子化合物でもよい。
【0092】
酸無水物基含有化合物は酸無水物基を有する化合物であり、イソシアネート化合物はイソシアネート基を含有する化合物であり、アジリジン化合物はアジリジン基を有する化合物であり、アミン化合物はアミノ基を有する化合物であり、フェノール化合物はヒドロキシ基が芳香族基(芳香環)に直結する構造を有する化合物をいう。キレート化合物は、多座配位子(キレート配位子)が金属イオンに配位して生じた錯体をいう。
【0093】
硬化剤(E)は、エポキシ基とより反応しやすい官能基を有する化合物、またはエポキシ基に対して触媒として作用するので、架橋を促進することができる。その結果、接着力や冷熱サイクル性をより効果的に改善することができる。
【0094】
硬化剤(E)は、エポキシ樹脂全量100質量部に対して、1~50質量部含むことが好ましく、3~30質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。ここでエポキシ樹脂全量とは、エポキシ樹脂(B)と、エポキシ樹脂(B)に該当しないエポキシ樹脂の合計をいう。エポキシ樹脂全量には、後述する液状エポキシ化合物(F)を含むものとする。
【0095】
酸無水物基含有化合物としては、例えば、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a、4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4-ビス(3、4-ジカルボキシフェノール)ベンゼン二酸無水物、P-フェニレンビス(トリメリテート無水物)4,4'―オキシジフタル酸無水物、1,1'-ビフェニル-2,3,3',4'―テトラカルボン酸2,3:3',4'―二無水物、ジシクロヘキシルー3,4,3',4'-テトラカルボン酸二無水物などの酸二無水物が例示できる。またスチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体などの共重合体、酸無水物変性ポリプロピレンなどの変性物を挙げることができる。
市販品としては、リカシッド(登録商標、新日本理化社製)、ザイボンド(登録商標、ポリスコープポリマーズ社製)、SMA(登録商標)レジン(クレイバリーUSA社製)、タフマー(登録商標、三井化学社製)が例示できる。
【0096】
イソシアネート化合物は特に制限されないが、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、イソシアネート基含有化合物は、複数種を併用してもよい。
【0097】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0098】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0099】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12-MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0100】
また、ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0101】
ブロック化イソシアネート化合物しては、前記イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基がε-カプロラクタムやメチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシム)等で保護されたブロック化イソシアネート基含有化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、前記イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基を、ε-カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたものなどが挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体は、本実施形態に使用した場合、保存安定性は勿論のこと、ポリイミドや銅等の接合材に対する接着強度や半田耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
【0102】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)ブチレート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-(2-メチル)アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)-2-メチルプロピオネート]、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ジフェニルメタン-4,4-ビス-N,N’-エチレンウレア、1,6-ヘキサメチレンビス-N,N’-エチレンウレア、2,4,6-(トリエチレンイミノ)-Syn-トリアジン、ビス[1-(2-エチル)アジリジニル]ベンゼン-1,3-カルボン酸アミドが挙げられる。
特に、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]は、硬化物の柔軟性を保持したまま耐熱性を向上できるため好適である。
【0103】
アミン化合物としては、ポリアミド樹脂(A)の単量体で例示したポリアミンを例示できる。
【0104】
フェノール化合物の種類は特に制限されないが、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂が好適である。このようなフェノール性樹脂として、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、キシリレン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂が挙げられる。
【0105】
金属キレートの具体例としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物が挙げられる。中心金属は、鉄、コバルト、インジウム、など種々の金属でもよい。
【0106】
<25℃で液状のエポキシ化合物(F)>
本発明の硬化性組成物は、任意成分として、さらに、25℃で液状である液状エポキシ化合物(F)(以下、液状エポキシ化合物(F)ともいう)を含有することができる。
液状エポキシ化合物(F)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール系エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル変性型エポキシ樹脂、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエーテル、脂環式系およびアルコール系等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂、並びに脂環式系およびアルコール系等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂が挙げられる。
25℃で液状エポキシ化合物(F)を用いることにより、本硬化性組成物の加工性を高めることができる。また、接着力をより効果的に高めることができる。
【0107】
本硬化性組成物の流動性を改善しやすい点からは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。具体例として、jER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学社製)、jER152(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学社製)などが挙げられる。
【0108】
液状エポキシ化合物(F)により、架橋密度を容易に調整することができる。また、硬化性組成物をシート状や顆粒状に成形する際にシリカフィラー(C)および熱伝導性フィラー(D)の結着剤として働き、成形が容易となる。
液状エポキシ化合物(F)を用いる場合には、エポキシ樹脂(B)と液状エポキシ化合物(F)の含有比率(質量比)は、エポキシ樹脂(B):液状エポキシ化合物(F)=50:50~95:5が好ましく、60:40~90:10がさらに好ましい。液状エポキシ化合物(F)の含有率は、硬化性組成物100質量%中、1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1~3質量%である。1質量%以上とすることにより、硬化性組成物の結着成分としての効果が良好となり、10質量部以下とすることにより、硬化性組成物の硬化後の硬化物の耐久性が良好となる。
【0109】
<離型剤(G)>
本発明の硬化性組成物は、さらに、離型剤(G)を用いることができる。特に、金型を使って成形する場合に離型剤(G)の添加が好ましい。離型剤(G)を用いることにより、熱成形装置の金型からの剥離性が向上する。離型剤(G)としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。天然ワックスとしては、カルバナワックス、キャンデリラワックスが挙げられる。合成ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリン、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックスが挙げられる。離型剤(G)を用いる場合、一種のみ用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
離型剤(G)を用いる場合、その含有率は、硬化性組成物の不揮発分100質量%中、例えば0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.3質量%である。
【0110】
<その他任意成分>
硬化性組成物は、さらに本発明の趣旨を逸脱しない範囲で添加剤を含むことができる。例えば、ポリアミド樹脂(A)に該当しないポリアミド樹脂や、エポキシ樹脂(B)および液状エポキシ化合物(F)に該当しないエポキシ樹脂を用いてもよい。好適な例として、軟化点50℃未満のエポキシ樹脂が例示できる。
【0111】
また、熱可塑性樹脂(エラストマー)を用いることができる。また、染料、顔料(例えば、カーボンブラック)、難燃剤、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤等が挙げられる。
【0112】
<硬化性組成物の製造方法>
硬化性組成物は、各配合成分を混練することにより得られる。例えば、各配合成分を混合した後に、実質的に溶剤を含まない状態で溶融混練することにより無溶剤型の硬化性組成物を得ることができる。このとき、シート状、顆粒状、ペレット状、粉末状、タブレット状などの所望の形状にしてもよい。また、配合した組成物を溶融混練した無定形状の固形物であってもよい。
【0113】
シート状の硬化性組成物は、例えば、実質的に無溶剤である硬化性組成物の成分を配合し、ロールやニーダーにより溶融混練して混練物をシート状にした後、冷却することにより得ることができる。溶融混練は、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機を用いることができる。混練条件として、温度は、上述の各成分の軟化点以上であることが好ましく、例えば30~150℃、エポキシ樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは40~140℃、さらに好ましくは60~120℃である。時間は、例えば1~30分間、好ましくは5~15分間である。
混練は、減圧条件下でおこなうことが好ましい、これにより、脱気できるとともに、混練物への気体の侵入を防止できる。減圧条件下の圧力は、好ましくは0.1kg/cm2以下、より好ましくは0.05kg/cm2以下である。減圧下の圧力の下限は特に限定されないが、例えば1×10-4kg/cm2以上である。
【0114】
混練物を塑性加工して硬化性組成物シートを形成する場合、溶融混練後の混練物は、冷却することなく高温状態のままで塑性加工することが好ましい。塑性加工方法としては特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、スクリューダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。成形機としては、Tダイスクリュー成形機、コンプレッションモールド成形機、カレンダー成形機が挙げられる。塑性加工温度としては、上述の各成分の軟化点以上が好ましく、エポキシ樹脂の熱硬化および成形性を考慮すると、例えば40~150℃、好ましくは50~140℃、さらに好ましくは70~130℃である。なお、シート状の硬化性組成物の表面に、保護フィルムを積層してもよい。また、シート状の硬化性組成物は、枚葉状、或いは巻き取り可能なロール状としてもよい。
【0115】
シートの厚みは用途に合わせて適宜調整可能であるが、50μm以上であることが好ましく、70μm以上がより好ましい。50μm以上とすることにより、例えば、ICチップやその周辺の配線層、絶縁層を併せて封止させる用途に用いた場合、被覆したい対象を完全に覆うことが容易となり、優れた硬化物とすることができる。
【0116】
また、得られたシート状の硬化性組成物を粉砕して粉末状、顆粒状にしてもよい。さらに、粉末、顆粒を圧縮打錠によりタブレット状にしてもよい。
【0117】
粉末状、顆粒状、タブレット状の硬化性組成物は、シートを経由せずに、ロールやニーダーにより溶融混練して混練物から直接製造してもよい。この方法は、例えばニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサー等、回分式混練機;二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等を用いて、製造することができる。
【0118】
具体的には、複数の小孔を有する円筒状外周部と円盤状の底面から構成される回転子の内側に、溶融混練された硬化性組成物を供給し、その硬化性組成物を、回転子を回転させて得られる遠心力によって小孔を通過させて得る方法;硬化性組成物の各原料成分をミキサーで予備混合後、ロール、ニーダー又は押出機等の混練機により加熱混練後、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って得る方法;硬化性組成物の各原料成分をミキサーで予備混合後、スクリュー先端部に小径を複数配置したダイを設置した押出機を用いて、加熱混練を行うとともに、ダイに配置された小孔からストランド状に押し出されてくる溶融樹脂をダイ面に略平行に摺動回転するカッターで切断して得る方法等が挙げられる。
【0119】
顆粒状とする場合には、粒度は70~500μmであることが好ましい。粒度を70~500μmとすることにより、粉体による汚染を抑制しつつ、硬化後の組成物の厚みを調整することが容易になる。粒度は顕微鏡観察による画像2値化法で、粒子の抽出や定量化をおこない、測定する。
【0120】
また、各配合成分を溶剤と共に混合してワニスを作製し、または、各原料成分を混練して得られた硬化性組成物を有機溶剤等に溶解又は分散してワニスを作製し、その後、ワニスを塗工・乾燥することによりシート状の硬化性組成物を得てもよい。塗布の方法としては、コンマコーターやダイコーターのような塗工機を用いた塗工による方法、ステンシル印刷やグラビア印刷のような印刷による方法等が挙げられる。
【0121】
また、前述と同様に、ワニス経由で製造したシート状の硬化性組成物をさらに顆粒状、粉末状に粉砕してもよい。さらには、顆粒状、粉末状からタブレット状(ペレット状)などの所望の形状に成形してもよい。また、ワニスを噴霧乾燥して、顆粒状、粉末状等に形成することもできる。
硬化性組成物の形状は用途により適宜選択することができる。例えば、金型充填性の観点からは、顆粒状、粉状が好ましく、生産性の観点からはシート状であることが好ましい。
【0122】
≪硬化物およびその製造方法≫
本実施形態の無溶剤型の熱硬化性を示す硬化性組成物を熱溶融成形し、硬化処理することにより硬化物が得られる。熱溶融成形と硬化処理は同時であっても、熱溶融成形後に硬化処理を行ってもよい。なお、ここでいう硬化物とは、さらに加熱しても実質的に硬化反応が進行しない程度に硬化された状態をいう。硬化性組成物を製造するときの溶融混練においては、その一部が硬化反応し得るが、さらに加熱すれば硬化し得る状態は、ここでいう硬化物には含まない。硬化性組成物を用いて、例えばICチップなどを封止する際に、熱を加え成形体が軟化・流動化する過程で、ポリアミド樹脂(A)に含まれるダイマー構造による応力緩和がおこるが、封止体の面方向・縦方向に応力が分散され、その結果、接着力低下の抑制効果が発揮される。溶融成形時に圧力を加えてもよい。
【0123】
溶剤を含む樹脂組成物を例えばICチップやその周辺の配線層、絶縁層に直接塗布、乾燥して硬化処理により硬化物を得る方法に比べ、無溶剤型の硬化性組成物を熱溶融させて成形し、熱処理によって硬化物を得る方法によれば、組成物中のポリアミド樹脂(A)が空気界面などに偏在するのを効果的に抑制できる。その結果、応力緩和性が充分に発揮でき、発泡を抑制し、クラック耐性に優れ、曲げ強度に優れた硬化物を得ることができる。また、本実施形態の無溶剤型の硬化性組成物によれば、組成物中のポリアミド樹脂(A)の均一分散を促進できるので、組成物内部に取り込まれる水分を減らすことが可能となり、硬化物の加湿後のハンダ耐熱性が向上する。
【0124】
熱硬化温度は150~230℃が好ましく、加熱時間は30~180分が好ましい。熱によって軟化点または融点が50~120℃であるエポキシ樹脂(B)が3次元架橋を形成し硬化物となる。熱溶融する際には熱に加えて、圧力を加えてもよい。熱と圧力を加えることで、軟化・流動化をより容易に行うことができる。また、ポリアミド樹脂(A)に含まれるポリシロキサン構造およびダイマー構造による応力緩和を促進させることができる。
【0125】
ポリアミド樹脂(A)が反応性官能基を有する場合、エポキシ樹脂(B)の3次元架橋に組み込まれる。同様に、液状エポキシ化合物(F)を含む場合、これらも架橋に組み込まれる。
【0126】
硬化物のガラス転移温度(Tg)は、100~200℃であることが好ましく、120~180℃であることがより好ましい。上記範囲とすることで硬化性組成物の接着力が向上する。
【0127】
本実施形態の硬化性組成物がシート状の場合、例えば、このシートを半導体チップ上に載置して熱圧着により溶融成形させ、硬化処理を行うことにより、半導体チップに封止樹脂として機能する硬化物を被覆させたICパッケージを得ることができる。また、本実施形態の硬化性組成物がタブレット状の場合、例えば、このタブレットを半導体チップがセットされた金型内に溶融流動させながら注入し、成形工程、硬化工程を経て硬化性組成物の硬化物を封止樹脂としたICパッケージを得ることができる。
【0128】
ところで、本発明のように無溶剤型の硬化性組成物を用いる方法の他に、溶剤を含むワニス状の硬化性組成物を半導体チップや電子部品上に直接塗布し、硬化させることにより硬化物を得る方法がある。直接塗工により製造できる点においてプロセス性に優れている。しかしながら、成形体を熱硬化する際に溶剤を含んでいるとボイドが発生する場合があり、信頼性が低下する場合がある。また、ボイドに起因して被着体と硬化物の間に剥がれが生じたりする場合がある。また、配向成分が空気界面などに偏在しやすく、組成物の均一性が低下しやすい。
【0129】
一方、本実施形態によれば、溶剤を含むワニスを、例えばICチップやその周辺の配線層、絶縁層に直接塗布・乾燥して硬化処理により硬化物を得る方法に比べて、ポリアミド樹脂(A)が空気界面などに偏在することを効果的に防止することができる。また、本実施形態に係る硬化性組成物によれば、硬化性組成物を熱溶融して成形し、硬化処理を行うプロセスを経て硬化物を得ることにより、接着性および耐湿熱性に優れる。これは、硬いエポキシ樹脂(B)相に柔軟なダイマー構造を有するポリアミド樹脂(A)相を有するミクロ相分離構造を熱溶融により促進させ、このミクロ相分離構造によって応力緩和する効果が得られることによると考えられる。また、このようにして得られたミクロ相分離構造は、熱架橋により安定化され、苛酷な冷熱条件においても構造の安定化を図ることができることによるものと考えられる。ミクロ相分離構造をより促進させる観点からは、無溶剤型の硬化性組成物を製造する際に、溶剤を含むワニスから製造するよりも、溶剤を用いずに各成分を配合して溶融混練し、必要に応じて成形する方法が好適である。溶媒の利用を最小限にできる点からも優れている。
【実施例0130】
本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例で「部」は「質量部」であり、「%」は「質量%」である。表中の配合量は、質量部である。
【0131】
<酸価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mL
を加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で
滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0132】
<アミン価の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解する。これに、別途0.20gのMethylOrangeを蒸溜水50mLに溶解した液と、0.28gのXyleneCyanolFFをメタノール50mLに溶解した液とを混合して調製した指示薬を2、3滴加え、30秒間保持する。その後、溶液が青灰色を呈するまで0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定する。アミン価は次式により求めた(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性塩酸溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性塩酸溶液の力価
【0133】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「GPC-101」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「KF-805L」(昭和電工社製:GPCカラム:8mmID×300mmサイズ)を直列に2本接続して用い、試料濃度1質量%、流量1.0mL/min、圧力3.8MPa、カラム温度40℃の条件で行い、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。データ解析はメーカー内蔵ソフトを使用して検量線および分子量、ピーク面積を算出し、保持時間17.9~30.0分の範囲を分析対象として重量平均分子量を求めた。
【0134】
<ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度の測定方法>
ポリアミド樹脂を不揮発分35%になるようシクロヘキサノンに溶解させ、ポリアミド樹脂ワニスを作製した。このワニスを耐熱性の離形フィルム上にドクターブレード10milで塗工し、130℃で10min乾燥させて、厚さ25μmのポリアミド樹脂のフィルムを得て、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/min
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0135】
<エポキシ樹脂(B)の軟化点の測定方法>
軟化点の測定は、JIS K-2207に準拠し、環球法により実施する。つまり、規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中に水平に支え、試料の中央に規定の球を置き、浴温を5℃/分の速度で上昇させ、球を包み込んだ試料が、環台の底板に触れたときの温度を軟化点とする。
【0136】
<エポキシ樹脂(B)の融点の測定方法>
融点の測定は、JIS K-7121に準拠し、DSC法により実施する。すなわち、示差走査熱量計(DSC-7:パーキンエルマージャパン社製)にて試料量:10mg、昇温速度:10℃/分で測定した。
【0137】
<ポリアミド樹脂の合成>
[ポリアミド樹脂(X-1)]
撹拌機、ディーンスターク装置を備えた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36のダイマージアミンとしてプリアミン1075を756.0g(1.415mol)、多塩基酸化合物として、イソフタル酸を244.0g(1.469mol)を仕込み撹拌した。発熱が収またところで徐々に加熱をおこない反応を進行させた。反応の進行にともない発生する水を系外に取出しながら、内温を230℃まで上げ、そのままの温度を保持し、4時間反応を続けた。次いで約2kPaの減圧化でそのままの温度で2時間保持し反応を完結させた。重量平均分子量3万、酸価11.4mgKOH/g、アミン価0.3mgKOH/g、Tg21℃のポリアミド樹脂(X-1)を得た。なお、ポリアミド樹脂(A)を構成するダイマージアミンおよびダイマー酸の合計の含有率は76質量%である。
【0138】
[ポリアミド樹脂(X-2、A-1~A-16)]
ポリアミド樹脂(X-1)と同様の方法で、表1の組成および仕込み質量部に従って合成を行い、ポリアミド樹脂を得た。その特性
値を表1に示す。
【0139】
[ポリアミド樹脂(A-17)]
撹拌機、ディーンスターク装置を備えた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36のダイマージアミンとしてプリアミン1075を663.0g(1.24mol)、ポリシロキサン骨格を有するアミン化合物として信越化学社製のX-22-161-Aを100.0g(0.064mol)、多塩基酸化合物として、イソフタル酸を225.6g(1.358mol)を仕込み撹拌した。発熱が収まったところで徐々に加熱をおこない反応を進行させた。反応の進行にともない発生する水を系外に取出しながら、内温を230℃まで上げ、そのままの温度を保持し、4時間反応を続けた。次いで約2kPaの減圧化でそのままの温度で2時間保持し反応を進行させた。その後、内温を180℃まで下げ、ベンジルアミン11.5g(0.107mol)を添加し、徐々に温度を240℃まで上げ、反応を完結させた。重量平均分子量3万、酸価0.5mgKOH/g、アミン価0.6mgKOH/g、Tg26℃のポリアミド樹脂(A-17)を得た。
【0140】
表1の略称の内容を以下に示す。
Si-acid:シロキサン骨格を有する多塩基酸化合物(酸価:24.4mgKOH/g「X-22-162C」信越化学工業社製)
Dacid:炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマー酸(ダイマー構造比率:95%以上、酸価:197mgKOH/g「プリポール1009」クローダジャパン社製)
IPA:イソフタル酸
5-HIP:5-ヒドロキシイソフタル酸
Si-amin-1:ポリシロキサン構造を有するジアミン、(アミン価:431.6mgKOH/g「PAM-E」信越化学工業社製)
Si-amin-2:ポリシロキサン構造を有するジアミン、(アミン価:71.9mgKOH/g「X-22-161-A」信越化学工業社製)
Si-amin-3:ポリシロキサン構造を有するジアミン、(アミン価:9.8mgKOH/g「KF-8008」信越化学工業社製)DA:炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマージアミン(ダイマー構造比率:95%以上、「プリアミン1075」クローダジャパン社製)
BzA:ベンジルアミン
【0141】
【0142】
[実施例1]
ポリアミド樹脂(A)として(A-1)を2.5部、エポキシ樹脂(B)として(B-2)を10部、シリカフィラー(C)として(C-1)を84.9部、硬化剤(E)として(E-1)を2.5部およびその他添加剤として(J-1)を0.1部配合し、混練機により100℃、10分間、減圧下(0.01kg/cm2)で溶融混練し、混練物を調製した。次いで、得られた混練物を、平板プレス法により、厚さ300μmのシート状の硬化性組成物を形成した。
【0143】
[実施例2~40]、[比較例1~5]
実施例1と同様の方法で表2~4の通り配合し、実施例1と同様の方法によりシート状の硬化性組成物を作製した。ただし、比較例1および比較例3は混錬性が悪くシート状の硬化性組成物を製造できなかった。
【0144】
実施例および比較例で使用した材料の詳細を下記に示す。
・エポキシ樹脂(B)
B-1:軟化点54℃、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、日本化薬社製、EPPN-501H、EPW(エポキシ当量)=167。
B-2:軟化点58℃、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬社製、NC-3000、EPW=275。
B-3:軟化点65℃、フェノール変性キシレン樹脂型エポキシ樹脂、三菱化学社製、YX7700、EPW=270。
B-4:軟化点73℃、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、日本化薬社製、XD-1000、EPW=253。
B-5:融点105℃、ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学社製、YX4000HK、EPW=185。
B-6:軟化点90℃、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、三菱化学社製、jER1031S、EPW=200。
B-7:軟化点80℃、ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製、HP-6000、EPW=250。
B-8:軟化点88℃、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製、NC-7000L、EPW=231。
【0145】
・シリカフィラー(C)
C-1:球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E5、平均粒子径D50:1.5μm、比表面積4m2/g)
C-2:溶融球状シリカ(デンカ社製、FB-105FC、平均粒子径D50:12μm)
C-3:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-25R、平均粒子径D50:0.5μm)
C-4:溶融球状シリカ(デンカ社製、FB-950FC、平均粒子径D50:22μm)
・熱伝導性フィラー(D)
D-1:溶融球状アルミナ(デンカ社製、DAW-01、平均粒子径D50:1.9μm)
D-2:溶融球状アルミナ(デンカ社製、DAW-10、平均粒子径D50:12μm)
D-3:窒化ホウ素(デンカ社製、MGP、平均粒子径D50:10μm)
【0146】
・硬化剤(E)
E-1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂、明和化成社製、MEH-7500
E-2:キシリレン型フェノール樹脂、明和化成社製、MEHC-7800-SS
【0147】
・25℃で液状の液状エポキシ化合物(F)
F-1:25℃において液状、ビスフェノールF型エポキシ化合物、jER806、三菱化学社製、EPW=160
【0148】
・その他添加剤:硬化触媒(イミダゾール)
J-1:イミダゾール化合物(2P4MZ、四国化成工業社製)
【0149】
【0150】
<混錬性の評価>
混練機により100℃、減圧下(0.01kg/cm2)で溶融混練する際の混錬性について、以下の評価基準で評価した。
3:混錬物調整時間が10分未満で組成物が混錬できる。
2:混錬物調整時間が、10分以上20分未満で組成物が混錬できる。
1:混錬物調整時に組成物が不均一で混錬できない。
【0151】
各実施例および比較例の硬化性組成物の硬化物について、硬化物のガラス転移温度(Tg)、接着性の評価結果を表5に示す。測定方法、評価基準は以下の通りである。
【0152】
<硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
実施例1で作製した300μmのシート状の硬化性組成物を耐熱性の離形フィルム上で180℃の温度で60分熱硬化させ、ガラス転移温度測定用のサンプルとした。動的粘弾性測定装置で-50~200℃の温度範囲でTanδの測定をおこない、ガラス転移温度を求めた。
動的粘弾性測定装置:DVA-200(アイティー計測制御社製)
昇温速度:10℃/分
測定周波数:10Hz
つかみ間長:15mm
幅:5mm
【0153】
<接着力試験用サンプルおよび試験片の作製>
作製したシート状の各硬化性組成物を50mm×50mmに切り出し、その上に5mm×5mm×300μmの金メッキ付きシリコンチップを縦3列、横3列、計9個を等間隔になるように配置した。但し、シート状の硬化性組成物がシリコンチップのシリコン面に接するように配置させた。シリコンチップに接触しているシート状の硬化性組成物を密着させるために、シリコーン離形処理された38μmのポリエチレンテレフタレートを対峙させ、熱ラミネート試験装置で熱ラミネート(温度80℃、シリンダー圧力0.3MPa)させた。熱ラミネート後、シリコンチップの周囲をカッターナイフで切り込みを入れ、シリコンチップの片側にシート状の硬化性組成物が仮接着された接着力試験用サンプルを作製した。
被着体として金メッキ加工された銅フレーム基板を準備し、その上にシート状の硬化性組成物が仮接着されたシリコンチップを配置して、熱プレス(150℃×1MPa×1min)し、続いてポストベーク(170℃×2時間)させて試験片を準備した。
【0154】
<接着力の評価>
上記で作製した各試験片を、ボンドテスター(ノードソン・アドバンスド・テクノロジー社製、製品名:Dage4000-PXY)を用いて評価した。測定条件は、測定スピードを100μm/sとし、測定高さを100μmとした。3点で接着力を測定した値の算術平均値を算出した。数値が大きいほど、硬化物のシリコンチップおよび被着体に対する接着性が高いと評価することができる。評価基準は以下の通りである。
5:接着力の算術平均値が10N/mm以上、非常に優れている。
4:接着力の算術平均値が7N/mm以上、10N/mm未満、より優れている。
3:接着力の算術平均値が5N/mm以上、7N/mm未満、優れている。
2:接着力の算術平均値が3N/mm以上、5N/mm未満、実用可能である。
1:接着力の算術平均値が3N/mm未満、実用不可能である。
【0155】
≪産業上の利用可能性≫
本実施形態に係る硬化性組成物によれば、フィラー含有量が高いことから、反りが小さく、接着性に優れるので、半導体チップの封止材、接着材、アンダーフィル材、ポッティング材等をはじめとする絶縁性樹脂材料として好適に利用できる。また、金属との接着性に優れるので、例えば銅張積層板用、配線板形成用ボンディングシート、フレキシブル基板のカバーコート等に好適である。