(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089789
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】固形制汗剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20240627BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/02
A61Q15/00
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/26
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205207
(22)【出願日】2022-12-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.エアロバイク
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 佳鳴
(72)【発明者】
【氏名】川俣 亮介
(72)【発明者】
【氏名】金 勉希
(72)【発明者】
【氏名】清野 勇輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB352
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC262
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC692
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD532
4C083BB51
4C083CC17
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れる固形制汗剤組成物の提供。
【解決手段】
(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、(C)制汗成分と、(D)25℃で固体の炭化水素と、を含有する固形制汗剤組成物であって、前記固形制汗剤組成物が(E)エタノールを含む場合、前記(E)エタノールの含有量が、前記固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であることを特徴とする固形制汗剤組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、
(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、
(C)制汗成分と、
(D)25℃で固体の炭化水素と、を含有する固形制汗剤組成物であって、
前記固形制汗剤組成物が(E)エタノールを含む場合、前記(E)エタノールの含有量が、前記固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であることを特徴とする固形制汗剤組成物。
【請求項2】
前記(B)の含有量に対する前記(A)の含有量の質量比[(A)/(B)]が、3以上5以下である、請求項1に記載の固形制汗剤組成物。
【請求項3】
前記(A)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して8質量%以上18質量%以下であり、
前記(B)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して2質量%以上4質量%以下であり、
前記(C)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して15質量%以上30質量%以下であり、
前記(D)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して2.5質量%以上4.5質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の固形制汗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形制汗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固形制汗剤組成物には、基本的な機能である制汗力や防臭力はもちろんのこと、固形制汗剤組成物塗布時における良好な使用感(皮膚当たりの柔らかさ)や、固形制汗剤組成物塗布後における良好な皮膚状態(皮膚のなめらかさ)を実現できるものが求められている。
【0003】
例えば、制汗効果及びその持続性、保存安定性などに優れた固形制汗剤組成物を提供する目的で、特定のモノマーを構造単位として有する共重合体と、炭素数が16以上22以下の直鎖脂肪族アルコールと、制汗成分と、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、並びに特定のポリエーテル変性シリコーンから選択される少なくとも1種と、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルとを、特定の比率で含む固形制汗剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、制汗効果が高く、塗布後のべたつきがないこと等に優れた固形制汗剤組成物を提供する目的で、25℃での固形油と、制汗成分と、有機変性粘度鉱物と、特定の界面活性剤と、水とを有する固形制汗剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、冷却効果等に優れたスティック状の制汗剤組成物を提供する目的で、制汗作用物質、水、疎水性相、乳化剤、及び組成物重量の10%のエタノールを含み、任意でマスキング油等が含まれるスティック状の制汗剤組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかし、上記特許文献1~2に記載の固形制汗剤組成物においては、制汗成分を多量に配合していることから、固形制汗剤組成物自体が硬くなり、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさについては、改良の余地があった。
また、上記特許文献3に記載のスティック状の制汗剤組成物については、当該制汗剤組成物に含まれるマスキング油により硬さは適度であるが、製造工程において融解させた原料を低温で固化させる際、当該制汗剤組成物に対して仮フタが張り付き、製造性が悪くなるという問題が生じていた。
また、上記特許文献1~3に記載の制汗剤組成物においては、制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさについては、検討されていなかった。
したがって、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れる固形制汗剤組成物は、未だ満足できるものは提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/123191号
【特許文献2】特開2021-104970号公報
【特許文献3】特表2001-504846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れる固形制汗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明の固形制汗剤組成物が、(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、(C)制汗成分と、(D)25℃で固体の炭化水素と、を含有する固形制汗剤組成物であって、前記固形制汗剤組成物が(E)エタノールを含む場合、前記(E)エタノールの含有量が、前記固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であることにより、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れる固形制汗剤組成物が得られることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1>
(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、
(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、
(C)制汗成分と、
(D)25℃で固体の炭化水素と、を含有する固形制汗剤組成物であって、
前記固形制汗剤組成物が(E)エタノールを含む場合、前記(E)エタノールの含有量が、前記固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であることを特徴とする固形制汗剤組成物である。
<2>
前記(B)の含有量に対する前記(A)の含有量の質量比[(A)/(B)]が、3以上5以下である、前記<1>に記載の固形制汗剤組成物である。
<3>
前記(A)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して8質量%以上18質量%以下であり、
前記(B)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して2質量%以上4質量%以下であり、
前記(C)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して15質量%以上30質量%以下であり、
前記(D)の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して2.5質量%以上4.5質量%以下である、前記<1>から前記<2>のいずれかに記載の固形制汗剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れる固形制汗剤組成物を提供することができる。即ち、前記(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、前記(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、前記(C)制汗成分と、前記(D)25℃で固体の炭化水素とを含有する固形制汗剤組成物は、当該固形制汗剤組成物塗布時においては、皮膚に対して塗りやすい適度な硬さを有し、当該固形制汗剤組成物塗布後においては、皮膚になめらかさを付与し、かつ製造性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(固形制汗剤組成物)
本発明の固形制汗剤組成物は、(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素と、(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールと、(C)制汗成分と、(D)25℃で固体の炭化水素と、を含有する固形制汗剤組成物であって、前記固形制汗剤組成物が(E)エタノールを含む場合、前記(E)エタノールの含有量が、前記固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であることを特徴とし、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
本明細書において、「(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素」は、「(A)」又は「(A)成分」と称されることがあり、「(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロール」は、「(B)」、「(B)成分」、又は「(B)トリアシルグリセロール」と称されることがあり、「(C)制汗成分」は、「(C)」又は「(C)成分」と称されることがあり、「(D)25℃で固体の炭化水素」は、「(D)」又は「(D)成分」と称されることがあり、「(E)エタノール」は、「(E)」又は「(E)成分」と称されることがある。
【0011】
<(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素>
前記(A)25℃で液体の、側鎖を有する飽和炭化水素は、主に、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさを付与するために含有される。
【0012】
前記(A)成分としては、25℃で液体であり、かつ側鎖を有していれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン、ポリブテンなどが挙げられる。
これらの中でも、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさが良好となる観点から、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動イソパラフィン、イソドデカンが好ましい。
【0013】
前記(A)成分の含有量としては、特に制限はなく、後述する(B)成分の含有量を考慮して適宜設定することができるが、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさの観点から、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上18質量%以下であることがより好ましい。
当該(A)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%以上であると、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさが良好となるため好適である。
当該(A)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して30質量%以下であると、固形制汗剤組成物自体が柔らかくなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となり好適である。
【0014】
前記(A)成分としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
当該(A)成分の市販品としては、例えば、商品名で、シンセラン 4SP(α-オレフィンオリゴマー、日本サーファクタント工業株式会社製)、NIKKOL NET-814-1(軽質流動イソパラフィン、日光ケミカルズ株式会社製)、マルカゾールR(イソドデカン、丸善石油化学株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
<(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロール>
前記(B)25℃で固体の、脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であるトリアシルグリセロールは、主に、製造性を向上させるため含有される。
【0016】
前記(B)成分としては、25℃で固体であり、かつ脂肪酸由来の炭素鎖長が8以上22以下であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、製造性が向上する観点から、硬化ヒマシ油、水添パーム油、水添ダイズ油が好ましい。
【0017】
前記(B)成分の含有量としては、特に制限はなく、前記(A)成分の含有量を考慮して適宜設定することができるが、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性の観点から、固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以上6質量%以下であることが好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。
当該(B)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以上であると、製造性が向上するとともに、固形制汗剤組成物自体が柔らかくなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となり好適である。
当該(B)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して6質量%以下であると、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさが向上するとともに、固形制汗剤組成物自体が硬くなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となり好適である。
【0018】
前記(B)成分としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
当該(B)成分の市販品としては、例えば、商品名で、ヒマ硬(硬化ヒマシ油、川研ファインケミカル株式会社(ケイエフ・トレーディング株式会社)製)、NIKKOL Trifat P-52(水添パーム油、日光ケミカルズ株式会社製)、BIOGEL Soybean Oil/FH(水添ダイズ油、Phoenix Chemical Inc.製)などが挙げられる。
【0019】
[質量比(A/B)]
本明細書において、前記(B)の含有量に対する前記(A)の含有量の質量比[(A)/(B)]は、「質量比[(A)/(B)]」と称されることがある。
当該質量比[(A)/(B)]としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、及び製造性の観点から、2以上6以下であることが好ましく、3以上5以下であることがより好ましい。
当該質量比[(A)/(B)]が2以上であると、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさが向上するとともに、固形制汗剤組成物自体が硬くなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となり好適である。
当該質量比[(A)/(B)]が6以下であると、製造性が向上するため好適である。
【0020】
<(C)制汗成分>
前記(C)制汗成分は、制汗効果を付与するために配合される。
【0021】
前記(C)制汗成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、乾燥硫酸アルミニウムカリウム、クロルヒドロキシアルミニウム、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、乾燥硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロルハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロルハイドレート、ジルコニウムクロルハイドレート、クロロヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコール錯体、クロロヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム・グリシン錯体などが挙げられる。
これらの中でも、制汗効果が良好となる観点から、乾燥硫酸アルミニウムカリウム、クロルヒドロキシアルミニウム、酸化亜鉛が好ましい。
【0022】
前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、制汗効果、及び固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさの観点から、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
当該(C)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%以上であると、十分な制汗効果が得られるため好適である。
当該(C)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して30質量%以下であると、固形制汗剤組成物自体が硬くなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となるため好適である。
【0023】
前記(C)成分は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該(C)成分の市販品としては、例えば、商品名で、タイエースK-20(大明化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<(D)25℃で固体の炭化水素>
前記(D)25℃で固体の炭化水素は、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、及び製造性を向上するために含有される。
【0025】
前記(D)成分としては、25℃で固体であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさの観点から、パラフィン、ポリエチレンワックスが好ましい。
【0026】
前記(D)成分の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、及び製造性の観点から、固形制汗剤組成物全量に対して2質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上4.5質量%以下であることがより好ましい。
当該(D)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して2質量%以上であると、製造性が向上するため好適である。
当該(D)成分の含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%以下であると、固形制汗剤組成物自体が硬くなりすぎず、適度な硬さとなるため、当該固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさが良好となり好適である。
【0027】
前記(D)成分としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
当該(D)成分の市販品としては、例えば、商品名で、精製パラフィンワックス(パラフィン、日興リカ株式会社製)、POLYWAX(登録商標)(ポリエチレンワックス、NuCera Solutions社製)などが挙げられる。
【0028】
<(E)エタノール>
本発明の固形制汗剤組成物には、(E)エタノールが含まれていてもよいが、含まれないことが好ましい。
前記固形制汗剤組成物に(E)エタノールが含まれる場合、当該(E)エタノールの含有量としては、固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であり、0.1質量%以下であることが好ましい。当該(E)エタノールの含有量が、固形制汗剤組成物全量に対して1質量%以下であると、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさが良好となり、かつ固形状に製造することが困難となるといった問題を解消することができ好適である。
当該(E)エタノールは、無水エタノールであってもよく、含水エタノールであってもよい。
【0029】
前記固形制汗剤組成物に(E)エタノールが含まれる場合、当該(E)エタノールは適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
当該(E)エタノールの市販品としては、例えば、商品名で、トレーサブル 95 1級(発酵エタノール、日本アルコール産業株式会社)、合成アルコール95度(日本アルコール販売株式会社製)、95度合成特定アルコール(信和アルコール産業株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
<その他の成分>
本発明の固形制汗剤組成物には、前記(A)成分~前記(E)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、固形制汗剤組成物に配合されるその他の成分を添加することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分以外の飽和炭化水素、前記(B)成分以外のエステル油、前記(D)成分以外のワックス類、高級脂肪酸、界面活性剤、シリコーン類、高級アルコール、高分子化合物、酸化防止剤、色素、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、ビタミン剤、清涼剤、抗炎症剤、アミノ酸、植物抽出物、植物エキス、香料、水などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を妨げない範囲で目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
―(B)成分以外のエステル油―
前記(B)成分以外のエステル油としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
当該(B)成分以外のエステル油は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該(B)成分以外のエステル油の市販品としては、例えば、商品名で、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(TRIFAT S-308 日本サーファクタント工業株式会社)などが挙げられる。
当該(B)成分以外のエステル油の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、固形制汗剤組成物全量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0032】
―シリコーン類―
前記シリコーン類としては、本発明の固形制汗剤組成物を固形状に形成可能であるものであれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できるが、25℃で液状の油が好ましい。
当該シリコーン類としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該シリコーン類の市販品としては、例えば、商品名で、TSF-405(デカメチルシクロペンタシロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などが挙げられる。
【0033】
―高級アルコール―
前記高級アルコールとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
当該高級アルコールは、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該高級アルコールの市販品としては、例えば、商品名で、カルコール 8098(ステアリルアルコール、花王株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
―酸化防止剤―
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸などが挙げられる。
当該酸化防止剤は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該酸化防止剤の市販品としては、例えば、商品名で、IONOL CP(ジブチルヒドロキシトルエン、オクサリスケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0035】
―防腐剤―
前記防腐剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、安息香酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’-トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液(商品名:ケーソンCG、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)、サリチル酸、ペンタンジオール、フェノキシエタノール、エタノールなどが挙げられる。
当該防腐剤は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該防腐剤の市販品としては、例えば、商品名で、ニッサンカチオンM2-100R(塩化ベンザルコニウム、日油株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
―保湿剤―
前記保湿剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコール、ソルビトール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール、コメ発酵エキス、ラクトフェリン、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。
当該保湿剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該保湿剤の市販品としては、例えば、商品名で、アクロビユートMB-52(ポリオキシプロピレンブチルエーテル、日油株式会社製)などが挙げられる。
当該保湿剤の含有量としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。当該保湿剤として、コメ発酵エキス、ラクトフェリン、プロピレングリコール、ソルビトール、1,3-ブチレングリコールを用いる場合は、固形制汗剤組成物全量に対して0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。当該保湿剤として、ポリオキシプロピレンブチルエーテルを用いる場合は、固形制汗剤組成物全量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0037】
―清涼剤―
前記清涼剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、メンチルアセテート、乳酸メンチル、メンチルピロリドンカルボン酸、メンチルエチルアミノシュウ酸、メントキシプロパンジオールメントールなどが挙げられる。
当該清涼剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記清涼剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形制汗剤組成物全量に対して0.01質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0038】
―水―
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記水の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形制汗剤組成物全量に対して5質量%未満であることが好ましい。当該水の含有量が固形制汗剤組成物全量に対して5質量%未満であると、固形状に製造することが困難となるといった問題を解消することができ好適である。
【0039】
本発明において、前記(E)エタノール、及び前記水の代替成分としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、デカメチルシクロペンタシロキサンを用いることができる。
当該トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルの市販品としては、例えば、商品名で、TRIFAT S-308(トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、日本サーファクタント工業株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
-製造方法-
本発明の固形制汗剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分、及びその他の成分であるトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、塩化ベンザルコニウム、グリチルレチン酸ステアリル、イソステアリル酸、ステアリルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ボリオキシプロピレンブチルエーテル、香料を混合し、前記(B)成分及び前記(D)成分が溶解する温度(例えば、74℃~90℃)まで十分に加熱した後、前記(C)成分を加えてよく攪拌することで溶解液を製造する。当該溶解液を、当該溶解液の凝固点より少し高い温度(例えば、68℃~74℃)まで冷却して容器に流し込み、室温又は冷却条件下で固めることで、固形制汗剤組成物を製造することができる。
なお、前記「(B)成分及び(D)成分が溶解する温度」、及び前記「溶解液の凝固点より少し高い温度」は、各成分の融点や凝固点に応じて適宜設定することができる。
【0041】
前記固形制汗剤組成物を調製する装置としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断と全体混合できる複数の撹拌羽根(プロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた撹拌装置などが挙げられる。なお、前記(A)~前記(E)成分、及び前記その他の成分としては、固形制汗剤組成物を調製するにあたり、それぞれ単独で使用してもよく、また2種以上の成分を含む混合物の状態で使用してもよい。
【0042】
-容器-
前記固形制汗剤組成物を収容する容器としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スティック容器などが挙げられる。当該スティック容器の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、ABS樹脂、ポリアミド等の樹脂;ガラスなどが挙げられる。
これらは、単層ないし2層以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
-用途-
本発明の固形制汗剤組成物の用途としては、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れることから、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に適用することができ、制汗剤、防臭剤、制汗防臭剤、デオドラント剤に好適に利用可能である。
【実施例0044】
以下に実施例、比較例、及び処方例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
表1~7に示す、実施例、比較例、及び処方例に記載の各成分の含有量は質量%で示し、全て純分換算した値である。
【0046】
(実施例1~20、及び比較例1~4)
<固形制汗剤組成物の作製>
下記表1~5に示す組成からなる、実施例1~20及び比較例1~4の固形制汗剤組成物を以下の方法により調製した。
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分、及びその他の成分であるトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、塩化ベンザルコニウム、グリチルレチン酸ステアリル、イソステアリル酸、ステアリルアルコール、ジブチルヒドロキシトルエン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ボリオキシプロピレンブチルエーテル、香料を混合し、前記(B)成分及び前記(D)成分が溶解する温度(74℃~90℃)まで十分に加熱した後、前記(C)成分を加えてよく攪拌することで溶解液を製造した。当該溶解液を、当該溶解液の凝固点より少し高い温度(68℃~74℃)まで冷却して容器に流し込み、室温又は冷却条件下で固めることにより各固形制汗剤組成物を製造した。
【0047】
次に、得られた各固形制汗剤組成物について、以下項目を評価・判定した。結果を表1~5に示す。
【0048】
<制汗効果の評価・判定>
2名の健康な専門評価者の右腋窩に対して、各固形制汗剤組成物を塗布した。なお、2名の専門評価者の左腋窩に対しては何も塗布せず、ブランクとした。両脇部分に汗吸収パットを備えた発汗試験用Tシャツを着用し、38℃、40%RHの恒温室にて、エアロバイクによる運動を15分間行い、発汗を行った。その後、以下式より制汗率を算出した。
(式)・・・制汗率(%)={(左腋運動後の汗吸収パットの質量(g)-左腋運動前の汗吸収パットの質量(g))-(右腋運動後の汗吸収パットの質量(g)-右腋運動前の汗吸収パットの質量(g))}/(左腋運動後の汗吸収パットの質量(g)-左腋運動前の汗吸収パットの質量(g))×100
下記判定基準に基づき、専門評価者2名の平均制汗率から「制汗効果」を判定した。
-制汗効果の判定基準-
◎:平均制汗率が、40%以上
〇:平均制汗率が、30%以上39%以下
△:平均制汗率が、20%以上29%以下
×:平均制汗率が、20%未満
【0049】
<固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさの評価・判定>
20代~30代の女性専門評価者10名の腋窩に対して、各固形制汗剤組成物を5回往復させて塗布した。塗布後に「皮膚のなめらかさを感じる」と回答した人数に基づき、「固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ」を判定した。
-判定基準-
◎:「皮膚のなめらかさを感じる」と回答した人が、9名以上
○:「皮膚のなめらかさを感じる」と回答した人が、7名以上8名以下
△:「皮膚のなめらかさを感じる」と回答した人が、5名以上6名以下
×:「皮膚のなめらかさを感じる」と回答した人が、4名以下
【0050】
<固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさの評価・判定>
20代~30代の女性専門評価者10名の腋窩に対して、各固形制汗剤組成物を5回往復させて塗布した。塗布時に「皮膚当たりの柔らかさを感じる」と回答した人数に基づき、「固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ」を判定した。
-判定基準-
◎:「皮膚当たりの柔らかさを感じる」と回答した人が、9名以上
○:「皮膚当たりの柔らかさを感じる」と回答した人が、7名以上8名以下
△:「皮膚当たりの柔らかさを感じる」と回答した人が、5名以上6名以下
×:「皮膚当たりの柔らかさを感じる」と回答した人が、4名以下
【0051】
<製造性の評価・判定>
各固形制汗剤組成物の製造過程において、冷却して固化させた各固形制汗剤組成物に対して付着する仮フタの有無を確認した。同様の試験を10回行い、下記判定基準により「製造性」を判定した。
-判定基準-
◎:付着した仮フタの数が、1個以下
〇:付着した仮フタの数が、2個以上3個以下
△:付着した仮フタの数が、4個以上6個以下
×:付着した仮フタの数が、7個以上
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
(処方例1~10)
下記表6~7に示す組成及び含有量の固形制汗剤組成物を、実施例1と同様の方法で調製した。
【0058】
【0059】
【0060】
実施例1~20、比較例1~4、及び処方例1~10で使用した各成分の詳細について、下記表8に示す。
【0061】
本発明の固形制汗剤組成物は、固形制汗剤組成物塗布時における皮膚当たりの柔らかさ、固形制汗剤組成物塗布後における皮膚のなめらかさ、及び製造性に優れるため、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に適用することができ、制汗剤、防臭剤、制汗防臭剤、デオドラント剤に好適に利用可能である。