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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089798
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】太陽光発電の電力分配システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240627BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240627BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/38 130
H02J3/00 170
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205224
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】509345925
【氏名又は名称】株式会社ティーエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 和久
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA04
5G066AA05
5G066AE09
5G066HA15
5G066HA17
5G066HB06
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギー発電事業者が太陽光発電を行い、発電量を予測すると共に、予測に基づいて自家消費することで効率的に電力を分配し、余剰電力を販売することができる太陽光発電の電力分配システムを提供する。
【解決手段】太陽光発電の発電量を予測した発電予測値と、自己が消費する電力を予測した消費電力予測値との差分を演算し、差分に基づいて太陽光発電を自己消費と売電とに分配するようになっている太陽光発電の電力分配システムである。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電の発電量を予測した発電予測値と、自己が消費する電力を予測した消費電力予測値との差分を演算し、前記差分に基づいて前記太陽光発電を自己消費と売電とに分配するようになっていることを特徴とする太陽光発電の電力分配システム。
【請求項2】
前記自己消費で不足する電力を買電する請求項1に記載の太陽光発電の電力分配システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギーとしての太陽光発電による電力を自家消費すると共に、余剰電力を販売(売電)するための電力分配システムに関し、特に太陽光発電による発電量及び自家消費量を予測して、自分で消費する自家消費と電力会社等への販売とを効率良く分配するための電力分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量が地球規模で増加しており、温室効果ガスによる地球温暖化問題が深刻さを増している。そのため、二酸化炭素の排出が少ない社会、即ち低炭素社会の構築が世界的な課題となっている。低炭素社会を実現するための再生可能エネルギーの1つとして、太陽光発電が普及して来ている。
【0003】
2012年7月のFIT(Feed In Tariff)法(固定価格買取制度)の成立後、投資型の太陽光発電施設が全国に多数設置されて来た。FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社(小売電気事業者)が一定期間固定価格で買い取ることを国が約束する制度であるが、この制度において、小売電気事業者が発電事業者から電気を買い取る際の費用の一部は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として電気料金に上乗せされ、結果的に国民が税金で負担している。国民が費用の一部を負担することで、小売電気事業者は、火力発電などと比べてまだコストが高い再生可能エネルギーを購入し易くなる。これによって、再生可能エネルギーが安定的に購入されるようになるため、再生可能エネルギー発電事業者は、事業の持続的な運営と普及を行い易くなるという仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-125203号公報
【特許文献2】特開2018-85850号公報
【特許文献3】実新登録第3223017号公報
【特許文献4】特開2021-48666号公報
【特許文献5】特開2022-12752号公報
【特許文献6】特開2022-176535号公報
【特許文献7】特開2021-162890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FIT単価が現在10円/kwh、若しくは入札による単価設定となり、再生可能エネルギー発電事業者にとっては、FIT販売よりも、電気代高騰の中、自家消費する時代に移り変わって来ている。つまり、販売する売電単価が安くなって来ているので、発電電力を自家消費した方が得な状況となっている。自分の工場、事務所などに自分で太陽光発電施設を設置し、電力会社より購入する電力(買電)の量を減らし、発電電力はできるだけ自家消費する時代へと突入している。
【0006】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、再生可能エネルギー発電事業者が太陽光発電を行い、発電量と自家消費電力を予測すると共に、予測値に基づいて自家消費及び売電と買電とを効率的に分配し、余剰電力を有効利用することができる太陽光発電の電力分配システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、太陽光発電の電力分配システムに関し、本発明の上記目的は、太陽光発電の発電量を予測した発電予測値と、自己が消費する電力を予測した消費電力予測値との差分を演算し、前記差分に基づいて前記太陽光発電を自己消費と売電とに分配することにより達成される。前記自己消費が不足する電力を買電するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の太陽光発電の電力分配システムによれば、太陽光で発電できる電力の予測と、自家消費の電力の予測とを行っているので、効率的に電力を分配することができ、しかも精度が高い。天気予報や季節の移り変わりなどから、太陽光の発電予測を行うソフトは存在しているが精度が低く、自家消費電力と余剰電力を予測するようなダブル予測可能なソフトは存在しておらず、本発明の利用効果は大きい。
【0009】
再生可能エネルギーの売電価格が下落した状況において、発電電力をできるだけ自分で消費して余剰電力のみを売電し、発電電力が足りなくなったときに電力を買電するので、発電電力者にとっては極めて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】太陽光発電の設置例を示す模式図である。
図2】太陽光発電の設置例を示す模式図である。
図3】太陽光発電の設置例を示す模式図である。
図4】太陽光発電の設置例を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態の概要を模式的に示す全体構成図である。
図6】発電予測値と消費電力予測値の一例を示す特性図である。
図7図6の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、再生可能エネルギーとしての太陽光発電において、太陽光発電の電力をできるだけ自家消費するようにし、太陽光発電の発電量を天気予報、季節情報などから予測すると共に、再生可能エネルギー発電事業者(個人や企業も含めて)が、自家消費の電力量を稼働計画などから予測し、予測値に基づいて余剰電力を効率良く演算し、余剰電力のみを電力会社等に販売(売電)することができ、自家消費分が不足する場合に電力会社から買電するようにした太陽光発電の電力分配システムである。本発明では、太陽光発電の電気を、先ず自己消費し、自己消費しても余る電気を売電する。もし、余らなかった場合、例えば、夜間など発電しない時間帯や、雨や曇りで発電量が落ちて自己消費の発電分が不足した場合には、電力会社から買電する。このように、「自己消費+売電」のパターンと、「自己消費+買電」のパターンがある。
【0012】
太陽光発電における太陽光パネルなどの発電施設1,2,3は、図1に示すように空き地に設置されたり、住宅の屋根若しくは敷地、或いは図2に示すように大規模なスーパー10の屋根若しくは屋上、或いは図3に示すように大規模なショップ20の屋根若しくは屋上、或いは図4に示すように大規模なホームセンター30の屋根若しくは屋上に太陽光発電パネルを設置した形態で良い。また、太陽光発電においては、定格出力が50kW未満の低圧発電(小規模発電)、定格出力が50kW以上~2000kW未満の高圧発電(大規模発電)及び特別高圧発電の3種類が存在するが、本発明ではいずれの発電にも適用できる。
【0013】
例えば自分の工場で消費する太陽光発電設備を工場内に設置し、工場の屋根が広い場合は売電用の太陽光発電設備も付加的に設置し、太陽光由来の電力を自ら消費すると共に、余剰電力を販売する。買電する電力が高騰する最中、再生可能エネルギー電気を安く居住地域に売電する。FIT時は、インバランス(電力の需要量(使われる分)と供給量の差分のこと)管理が必要ではなかったが、電力を分配する場合にはインバランス管理が必要となる。インバランス管理とは、太陽光は天候に左右される電源なので、事前に送配電業者に予測値の報告をしなければならないが、本発明では、予測値に基づいてその報告を自動的に行うことができる。
【0014】
電力の自家消費と余剰電力の売電に関しては、2つの量を正確に予測できるソフトが必要である。1つ目は、屋根などに設置した太陽光発電設備から発電できる発電量の発電予測値であり、2つ目は、自家消費に使う電力量の自家消費電力予測値である。そして、太陽光全体の発電量から自家消費分を引いた、送電線を使用して売電する売電量を予測する。太陽光の発電予測すら、再生可能エネルギー由来なので難しい中、工場が使用する消費電力量まで予測する。電気の需要家や投資家は、このオールインワンサービスの中、心配なく、インバランスペナルティーも見越した太陽光で発電した電力をできるだけ自家消費に回し、更に余剰電力がある場合に限って売電できるようにする。このようなビジネスモデルは、自家消費の太陽光発電設備を自社の投資によりすることにより、可能となる。この他、設置者の設備投資資金なしで、0円で太陽光を設置したい電力の需要家(投資家)も登場すると考えられる。
【0015】
即ち、0円で、つまり無料で太陽光発電設備を設置したい法人や個人を探し、この事業所、工場などの屋根や敷地に、投資家が太陽光発電設備を設置する。つまり、太陽光発電設備を設置したい法人や個人は設置費用を負担せず、設置費用は全て投資家が負担する。この0円太陽光発電を設置された電気の需要家は、自分の工場、屋根などで発電した再生可能エネルギー由来の電力を大手電力会社より安く使える権利を、電力の需要家(例えば地域の住民)に与える。投資会社もボランテイァではないので、設備設置費投資の回収をして利益を上げなければならないが、その投資回収は、その屋根等で発電した電力を大手電力会社より安く、需要家に売電することで賄う。
【0016】
更に、需要家の屋根などに空きスペースがあれば、過積載の太陽光発電設備を設置し、他社に売電する。再生可能エネルギー由来の電力で、電力を買い取った町全体が、カーボンニュートラルになることが期待される。また、投資家にとっては、設備設置の回収費を工場のみに頼らず、余剰売電から得た費用で充当できる。2050年までの国策であるカーボンニュートラル宣言の応援で、電力の需要家にとっては、大手電力会社より安く電力を調達でき、投資家は0円で発電設備を設置するが、ダブルインカムにより早く設備設置の回収を図ることができる。また、地方自治体にとつては、町全体がカーボンニュートラルシティーになれる可能性があり、町の活性化向上に資することができる。
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図5は本発明の一実施形態を示しており、工場ビル100の屋上に太陽光パネル101が設置されると共に、空き地に売電のための太陽光パネル102が設置されている。太陽光パネル101で発電された電力P1と、太陽光パネル102で発電された電力P2とはいずれも分配部103に入力されている。
【0019】
また、パソコン(PC)などで構成される発電量予測装置110には、天気予報111、カレンダ情報112が入力され、発電量予測装置110は予測した発電量予測値113を出力して差分演算部130に入力する。パソコン(PC)などで構成される自家消費電力予測装置120には、生産計画121、出荷計画122、稼働計画123が入力され、自家消費電力予測装置120は予測した消費電力予測値124を出力して差分演算部130に入力する。差分演算部130で演算された差分値D1は余剰電力予測部131に入力され、余剰電力予測部131で予測された予測値D2が判定部132に入力されて余剰電力があるか否かが判定され、判定部132の判定結果Jが分配部103及び送配電業者104に入力される。
【0020】
差分演算部130は、図6に示すように発電量予測値113と消費電力予測値124の差分D1を演算し、その差分D1を余剰電力予測部131に入力する。余剰電力予測部131は、発電量予測値113と消費電力予測値124の時間的変化量(微分量)の変化に基づいて、両者が交叉する分岐点Cを事前に予測し、予測結果である余剰電力予測値D2を分配部103及び送配電業者104に送るようになっている。
【0021】
このような構成において、その動作例を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0022】
先ず、工場ビル100の屋上に設置された太陽光パネル101が発電し(ステップS1)、この発電電力は分配部103を経て電力P2として自家消費されると共に、余剰電力P4を送配電業者104を経て売電する(ステップS2)。空き地に設置された太陽光パネル102も発電し(ステップS3)、この発電電力P3は、分配部103及び送配電業者104を経て売電される(ステップS4)。
【0023】
発電量予測装置110には天気予報111及びカレンダ情報112が入力されており、発電量予測装置110は天候や季節の日照時間などのデータから、太陽光パネル101の発電予測値113を演算し(ステップS10)、発電予測値113は差分演算部130に入力される。一方、自家消費電力予測装置120には生産計画1211、出荷計画122及び稼働計画123が入力されており、自家消費電力予測装置120は稼働時間や生産品数などのデータから、工場が自分で消費する消費電力予測値124を演算し(ステップS11)、消費電力予測値124は差分演算部130に入力される。
【0024】
差分演算部130は、入力された発電予測値113及び消費電力予測値124の差分D1を演算し(ステップS12)、差分D1は余剰電力予測部131に入力され、発電予測値113及び消費電力予測値124の微分変化に基づいて、余剰電力予測部131は余剰電力予測値D2を演算する(ステップS13)。余剰電力予測値D2は判定部132に入力され、余剰電力が有るか否かが判定される(ステップS20)。余剰電力が有る場合、つまり消費電力予測値124が発電予測値113より小さい場合には、そのまま動作を継続するため、上記ステップS1にスキップする。
【0025】
一方、上記ステップS20において余剰電力がないと判断された場合、つまり消費電力予測値124が発電予測値113以上と判断された場合には、判定結果Jを分配部103及び送配電業者104に送り、自家消費と売電を中止して買電に切り替える(ステップS21)。その後、余剰電力が有るか否かを判定し(ステップS22)、余剰電力が有る場合は上記ステップS1にスキップし、余剰電力がない場合は上記ステップS21にスキップする。
本発明によれば、太陽光で発電できる電気の予想と自家消費の電気の予想をでき、しかも精度が高く、利用効果は大きい。なお、上述では再生可能エネルギーとして太陽光発電を例に挙げたが、水力、風力、地熱、波力、温度差、バイオマスなどを適用することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1、2,3 発電施設
10 スーパー
20 ショップ
30 ホームセンター
100 工場ビル
101 太陽光パネル(自家消費用)
102 太陽光パネル(売電用)
103 分配部
104 送配電業者
110 発電量予測装置
113 発電予測値
120 自家消費電力予測装置
124 消費電力予測値
130 差分演算部
131 余剰電力予測部
132 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7