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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089802
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】振動デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20240627BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205231
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】横山 好彦
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA43
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA09
5J079HA16
5J079HA25
5J108KK04
5J108MM01
(57)【要約】
【課題】電気的な接続が確実に取れ、信頼性の高い端子構造を備えた振動デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】振動デバイスの製造方法は、第1面、および前記第1面と表裏の関係にある第2面を有するベース基板の前記第1面に第1導電層を形成することと、前記第1導電層の上面の一部である第1領域上に、前記第1導電層とは材質の異なる第2導電層を形成することと、前記第1導電層の上面の他の一部である第2領域が、前記第2導電層から露出している状態で、前記第2領域および前記第2導電層の表面に、第3導電層を形成することと、前記第3導電層上に、振動素子に電気的に接続される接合部材を接合することと、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、および前記第1面と表裏の関係にある第2面を有するベース基板の前記第1面に第1導電層を形成することと、
前記第1導電層の上面の一部である第1領域上に、前記第1導電層とは材質の異なる第2導電層を形成することと、
前記第1導電層の上面の他の一部である第2領域が、前記第2導電層から露出している状態で、前記第2領域および前記第2導電層の表面に、第3導電層を形成することと、
前記第3導電層上に、振動素子に電気的に接続される接合部材を接合することと、
を含む、
振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ベース基板は、発振回路を含む集積回路と、前記第1面から前記第2面に貫通する貫通電極と、を有し、
前記第2面側において、前記貫通電極と平面視で重なる領域に、前記集積回路と電気的に接続されるパッドが設けられ、
前記第1導電層、前記第2導電層、および前記第3導電層を介して、前記パッドと前記振動素子とが電気的に接続される、
請求項1に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1導電層の前記第1領域上に、前記第2導電層を形成することは、
前記第1導電層上に前記第2導電層の第1層を形成することと、
前記第1層上の、平面視で前記第1領域と重なる領域に前記第2導電層の第2層を形成することと、
前記第2層をマスクとして、前記第2領域上の前記第1層を除去し、前記第2導電層の側面をテーパ形状にすることとを含む、
請求項1または2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第3導電層上に、前記振動素子に電気的に接続される前記接合部材を接合することとは、前記第3導電層上に、金属バンプを介して前記振動素子を接合することを含む、
請求項1または2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1導電層は、TiW層、Ti層、Cr層、またはNiCr層である、
請求項1または2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第2導電層は、Cu層である、
請求項1または2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第3導電層は、最表層が、前記接合部材と同じ材質である、
請求項1または2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記第3導電層は、最表層がAu層であり、
前記接合部材は、Auバンプである、
請求項7に記載の振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、集積回路が形成された半導体基板を含むベース基板と、ベース基板の他方面側に接合されたリッドと、ベース基板とリッドとの間に収容される振動素子を含む振動デバイスの製造方法が開示されている。詳しくは、ベース基板の他方面に、集積回路と振動素子との間を電気的に接続する配線の一部である接続端子を形成することが開示されている。また、ベース基板の接続端子は、複数の導電膜を積層した層構成であり、バンプなどの接合部材を介して、当該接続端子と、振動素子の端子とを電気的に接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-57755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の接続端子は、例えば、複数の金属層により形成するが、金属層の形成方法によっては、断線や、接続配線の抵抗値が上昇してしまう虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る一態様の振動デバイスの製造方法は、第1面、および前記第1面と表裏の関係にある第2面を有するベース基板の前記第1面に第1導電層を形成することと、前記第1導電層の上面の一部である第1領域上に、前記第1導電層とは材質の異なる第2導電層を形成することと、前記第1導電層の上面の他の一部である第2領域が、前記第2導電層から露出している状態で、前記第2領域および前記第2導電層の表面に、第3導電層を形成することと、前記第3導電層上に、振動素子に電気的に接続される接合部材を接合することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1に係る振動デバイスの斜視図。
図2】振動デバイスの平面図。
図3図1のb-b断面における断面図。
図4】貫通電極の上部端子部周辺の平面図。
図5図4のc-c断面における断面図。
図6】貫通電極の上部端子部の製造方法の流れを示すフローチャート。
図7】製造過程の一態様を示す図。
図8】製造過程の一態様を示す図。
図9】製造過程の一態様を示す図。
図10】製造過程の一態様を示す図。
図11】比較例における製造過程の一態様を示す図。
図12】製造過程の一態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
***振動デバイスの構成***
図1は、振動デバイスの斜視図である。図2は、振動デバイスの平面図である。図3は、図1のb-b断面における断面図である。
【0008】
図1に示すように、本実施形態の振動デバイス100は、平面的に略長方形をなした箱状の表面実装デバイスであり、ベース基板10、蓋体50などから構成された発振器である。
なお、各図面では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。本実施形態では、長方形状をなした振動デバイス100の長辺の延在方向をXプラス方向、短辺の延在方向をYプラス方向とし、振動デバイス100の厚さ方向をZプラス方向としている。また、Zプラス方向を上方、Zマイナス方向を下方ともいう。Xプラス方向とXマイナス方向とを合せてX軸方向ともいう。Y軸、Z軸についても同様である。
【0009】
図3に示すように、振動デバイス100は、ベース基板10と、ベース基板10の第1面10a上に載置された振動素子40と、振動素子40を覆ってベース基板10の上面に接合される蓋体50と、を有する。
ベース基板10は、好適例では、シリコン基板である。なお、シリコン基板に限定するものではなく、半導体基板であれば良く、例えば、Ge、GaP、GaAs、InP基板などをベース基板10として用いても良い。
【0010】
ベース基板10の第2面10bには、集積回路部60が設けられている。集積回路部60は、ベース基板10の第2面10b側に半導体プロセスにより形成された、例えば、トランジスターなどの能動素子や、キャパシターや抵抗などの受動素子を含む集積回路領域である。集積回路部60には、振動素子40を発振させて所定周波数の出力信号を生成する発振回路が含まれている。なお、第1面10aと、第2面10bとは表裏関係にある。
換言すれば、ベース基板10は、裏面に発振回路を含む集積回路部60を備え、その表面に振動素子40が実装される半導体基板である。
【0011】
図2は、振動デバイス100の平面図であり、説明の便宜上、蓋体50を外した図としている。
振動素子40は、好適例では、厚みすべり振動モードを有するATカット水晶基板からなる略長方形状の振動基板41を備えている。ATカット水晶基板は、三次の周波数温度特性を有しているため、振動素子40は、温度特性が優れている。なお、ATカット水晶基板を用いることに限定するものではなく、水晶基板であれば良く、例えば、Xカット水晶基板、Yカット水晶基板、Zカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板、STカット水晶基板などから振動基板41が形成されることでも良い。
【0012】
図3に示すように、振動基板41の蓋体50側には、第1励振電極42が設けられている。振動基板41のベース基板10側には、第2励振電極43が設けられている。
図2に示すように、第1励振電極42は、平面的に矩形状の電極であり、その端部42bは振動基板41の一端に延在し、振動基板41の裏面側に折り返されている。端部42bの折り返し部分は、ベース基板10のマウント端子61と向き合う位置に配置される。
【0013】
第2励振電極43は、第1励振電極42と振動基板41を介して対向する矩形状の電極であり、その端部43bは、振動基板41の一端側に延在し、ベース基板10のマウント端子61と向き合う端子となる。ベース基板10上には、マウント端子61が2ヶ所設けられている。2つのマウント端子61は、Y軸方向において離間している。端部42bの折り返し部分は、Yプラス側のマウント端子61と重なる位置に配置される。端部43bは、Yマイナス側のマウント端子61と重なる位置に配置される。
第1励振電極42、第2励振電極43は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、Ti(チタン)、タングステン(W)等の金属材料、または、これら金属材料を含む合金により構成される。
【0014】
図3に示すように、第2励振電極43の端部43bは、ベース基板10のマウント端子61の上に、接合部材65を介して接続される。換言すれば、第2励振電極43は、接合部材65を介して、対応するマウント端子61と電気的に接続される。同様に、第1励振電極42も、接合部材65を介して、対応するマウント端子61と電気的に接続される。
接合部材65は、好適例では、金バンプを用いる。なお、金バンプに限定するものではなく、導電性と接合性とを兼ね備えていれば良く、例えば、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ、樹脂コアバンプ等の各種の導電性のバンプを接合部材65に用いても良い。
【0015】
図3に示すように、第2励振電極43の端部43bに対応するマウント端子61は、配線部62を介して貫通電極63と電気的に接続している。同様に、第1励振電極42に対応するマウント端子61も、配線部62を介して貫通電極63と電気的に接続している。
貫通電極63の下方の他端には、パッド64が設けられており、集積回路部60の発振回路と電気的に接続される。このように、振動素子40の第2励振電極43と集積回路部60の発振回路とは、貫通電極63を介して電気的に接続される。同様に、振動素子40の第1励振電極42と集積回路部60の発振回路とは、対応する貫通電極63を介して電気的に接続される。換言すれば、ベース基板10は、発振回路を含む集積回路部60と、第1面10aから第2面10bに貫通する貫通電極63と、を有し、第2面10b側において、貫通電極63と平面視で重なる領域に、集積回路部60と電気的に接続されるパッド64が設けられる。
【0016】
ベース基板10の集積回路部60の下側には、絶縁層を介して外部接続端子71,72が設けられている。外部接続端子71,72は、集積回路部60と電気的に接続している。外部接続端子71,72は、振動デバイス100を表面実装するための実装端子である。なお、図3では、外部接続端子71,72が図示されているが、実際は、さらに外部接続端子が設けられている。具体的には、外部接続端子は、VDD、GNDを含む電源端子、発振出力端子、モード切替え信号入力端子を含む複数の外部接続端子が設けられている。
【0017】
蓋体50は、リッドであり、平面的には長方形のトレイ状の形状をなしており、断面的には図3に示すように、当該トレイ形状における凹部50bを伏せた状態で周縁部がベース基板10に接合される。蓋体50の材料は、好適例としてシリコンを採用している。より詳細には、シリコン基板をウェットエッチングまたはドライエッチングして凹部50bを形成することで、蓋体50を形成している。なお、蓋体50の材料は、シリコンに限定するものではなく、シリコン以外の他の半導体材料からなる半導体基板を用いても良い。また、蓋体50の材料は、半導体材料以外の42アロイ、アルミ、銅、ジュラルミンなどの金属、またはそれらのいずれかを含む合金を用いても良い。蓋体50は、接合材8を介してベース基板10に接合される。好適例では、接合材8として金を用いており、金を熱圧着してベース基板10と蓋体50との間を接合している。なお、金に限定するものではなく、接合材8とベース基板10との間、および、接合材8と蓋体50との間で拡散接合され、ベース基板10と蓋体50との間の電気的導通が確保できる金属や、合金であれば良い。そしてベース基板10と蓋体50とにより、気密性を有する収容空間Sが形成され、振動素子40は、この収容空間S内に収容される。好適例において、収容空間S内は減圧状態に気密封止される。なお、収容空間S内が不活性ガス雰囲気で気密封止されることであっても良い。
【0018】
***端子部分の構成***
図4は、貫通電極の上部端子部周辺の平面図であり、図2に対応している。図5は、図4のc-c断面における断面図である。
まず、図4図5を用いて、貫通電極63の周辺部位の構成について説明する。
【0019】
図4に示すように、貫通電極63の周囲には、矩形状の上部端子部38が設けられている。上部端子部38は、配線部62を介してマウント端子61に接続している。
図5に示すように、上部端子部38は、複数の金属層が積層された積層構造となっている。まず、ベース基板10の第1面10aの上には、絶縁層21が設けられている。絶縁層21は、好適例では、SiO2層である。
絶縁層21の上には、第1導電層31が設けられている。第1導電層31は、好適例では、チタンタングステン(TiW)により構成されるTiW層である。なお、第1導電層31は、TiW層に限定するものではなく、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケルクロム(NiCr)のいずれかにより構成される第1導電層31であってもよい。すなわち、第1導電層31は、Ti層、Cr層、またはNiCr層であってもよい。
【0020】
ここで、上部端子部38の貫通電極63に近い第1領域81は、第1導電層31の上に、第2導電層32と第3導電層33とが積層された構成となっている。他方、上部端子部38の周縁部の第2領域82は、第1導電層31の上に、第3導電層33が積層された構成となっている。つまり、上部端子部38の中心側の第1領域81の方が、周縁部の第2領域82よりも、厚く構成されている。
【0021】
第2導電層32は、第1層23と第2層24とを積層した2層構成としている。好適例では、第1層23、第2層24ともにCu層であるが、第2層24の方が、第1層23よりも厚くなっている。
第3導電層33は、第3層25と第4層26とを積層した2層構成としている。好適例では、第3層25はTi層とし、第4層26はAu層としている。
換言すれば、第3導電層33は、最表層の第4層26がAu層であり、Auバンプからなる接合部材65と同じ材質である。
【0022】
図5に示すように、貫通電極63の内部も、第1領域81と同じ積層構造となっている。貫通電極63の貫通孔20は、ベース基板10を貫通する孔であり、孔の底部には集積回路部60のパッド64が位置している。
貫通孔20の底部には、第1導電層31、第2導電層32および第3導電層33が積層されており、第1導電層31が集積回路部60のパッド64と接続している。なお、貫通孔20の側面には、絶縁層21が設けられている。
【0023】
また、上部端子部38から伸びる配線部62、および、マウント端子61も、第1領域81と同じ積層構造となっている。このように、導電性に優れた厚いCu層を有する第2導電層32を含む低抵抗な金属の積層構造を、貫通電極63、上部端子部38、配線部62およびマウント端子61に用いることにより、確実で安定した電気的接続を行うことができる。
【0024】
***端子部分の製造方法***
図6は、貫通電極の上部端子部の製造方法の流れを示すフローチャートである。図7図10は、図5のd部の拡大図であり、製造過程の一態様を示す図である。
ここでは、上部端子部38の製造方法について図6を主体に、適宜、図7図10を交えて説明する。
【0025】
ステップS11では、ベース基板10を準備する。前述した通り、例えば、シリコン基板からなるベース基板10を準備する。
ステップS12では、ベース基板10の第1面10a上に、絶縁層21を形成する。好適例では、貫通孔20(図5)が形成されたベース基板10を熱酸化することにより、SiO2層からなる絶縁層21を形成する。図7では、第1面10a上に絶縁層21が形成された状態を図示しているが、一緒に、貫通孔20の内部にも絶縁層21が形成される。なお、熱酸化に限定されず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により絶縁層21を形成しても良い。また、SiO2層に限定するものではなく、窒化シリコン(SiN)層で絶縁層21を形成しても良いし、樹脂層であっても良い。
【0026】
ステップS13では、絶縁層21の上に、第1導電層31を形成する。好適例では、絶縁層21の上にスパッタ法によりTiW層を形成し、第1導電層31とする。
ステップS14では、第1導電層31の上に、第2導電層32の第1層23を形成する。好適例では、第1導電層31の上に、スパッタ法によりCu層を形成し、第1層23とする。図7には、この状態が示されており、ベース基板10の第1面10a上に、絶縁層21、第1導電層31、第2導電層32の第1層23がこの順番で積層されている。
【0027】
ステップS15では、第1層23における第1領域81の上に、第2導電層32の第2層24を形成する。具体的には、第1層23における第2領域82の上にレジスト48を形成した後、レジスト48から露出した第1層23の上に、電界めっき法によりCu層を形成し、第2導電層32の第2層24とする。これにより、第1層23の上の、平面視で第1領域81と重なる領域に第2層24を形成する。この状態が図8に示されている。
ステップS16では、レジスト48を除去する。好適例では、ウェットプロセスによりレジスト48を除去する。
【0028】
ステップS17では、第2導電層32の第2層24をマスクとして、ウェットエッチングにより第2領域82の第1層23を除去する。図9には、この状態が示されており、第2領域82には第1導電層31が露出している。なお、この際、第2導電層32の側面は、ウェットエッチングによりテーパ形状となる。詳しくは、第2導電層32の側面は、ベース基板10の第1面10aからの垂線に対して、角度θの角度を持ったテーパ形状となる。つまり、第1面10aに対する第2導電層32の側面の角度は、鈍角となる。
換言すれば、第2導電層32をマスクとして、第2領域82の表層の第1層23を除去することは、第2導電層32の側面をテーパ形状とすることを含む。これにより、第2導電層32の上に形成される第3導電層33のカバレッジ性が良くなり、配線抵抗が低く、電気的に安定した積層配線を形成することができる。
【0029】
ステップS18では、第2導電層32および第1導電層31の上に、第3導電層33の第3層25を形成する。好適例では、第2導電層32および第1導電層31の上にスパッタ法によりTi層を形成し、第3層25とする。第3層25にTi層を用いることにより、第2領域82では、下地のTiW層からなる第1導電層31に対して第3層25を密着性良く成膜することができる。なお、Ti層に限定するものではなく、下地の銅と表面の金との接触を防止可能な金属バリア層であれば良く、例えば、TiW層、Cr層や、NiCr層などを第3層25としても良い。
【0030】
ステップS19では、第3層25の上に、第3導電層33の第4層26を形成する。好適例では、第3層25の上にスパッタ法によりAu層を形成し、第4層26とする。
換言すれば、振動デバイス100の製造方法は、第1面10a、および第1面10aと表裏の関係にある第2面10bを有するベース基板10の第1面10aに、第1導電層31を形成することと、第1導電層31の上面の一部である第1領域81上に、第1導電層31とは材質の異なる第2導電層32を形成することと、第1導電層31の上面の他の一部である第2領域82が、第2導電層32から露出している状態で、第2領域82および第2導電層32の表面に、第3導電層33を形成することと、を含む。
【0031】
図5に戻る。
これにより、図5に示す、上部端子部38が形成される。なお、上記工程により、貫通電極63、配線部62およびマウント端子61も一緒に形成される。
例えば、マウント端子61も、上部端子部38と同じ、第1導電層31、第2導電層32および第3導電層33の積層構造となり、最表層となる第3導電層33の第4層26は、金バンプからなる接合部材65(図4)の下地膜として機能する。
換言すれば、振動デバイス100の製造方法は、第3導電層33上に、振動素子40に電気的に接続される接合部材65を接合することを含む。また、第1導電層31、第2導電層32および第3導電層33を介して、パッド64と振動素子40とが電気的に接続される。また、第3導電層33上に、振動素子40に電気的に接続される接合部材65を接合することとは、第3導電層33上に、金属バンプを介して振動素子40を接合することを含む。
【0032】
***比較例***
図11図12は、比較例における製造過程の一態様を示す図であり、図9図10に対応している。
ここでは、従来の製造方法により上部端子部を形成した際の課題について比較例として説明する。
【0033】
従来の製造方法は、図6のステップS11~ステップS16までは同じであるが、以降の工程が異なっていた。具体的には、ステップS17のウェットエッチングでは、第2導電層32の第2層24をマスクとして、第2領域82の第1層23に加えて、第1導電層31までを除去していた。図11には、この状態が示されており、ウェットエッチングの影響により第2導電層32の側面における上下の角部が丸みを帯びているのが解る。
【0034】
以降の工程は、図6での説明と同じであり、第2導電層32および第1導電層31の上に、第3導電層33の第3層25を形成した後、第3層25の上に、第3導電層33の第4層26を形成する。これにより、図12に示す比較例の上部端子部98が形成される。
図12に示す、比較例の上部端子部98では、第2導電層32と第1導電層31との境界部分にエグレが生じており、その部分で第3導電層33が断線していた。断線があると、第2導電層32のCuが露出して、第4層26のAuと接触することによる拡散が懸念されるなど、信頼性が低下してしまう。なお、当該エグレは、ウェットエッチングによる第2導電層32の角部の丸みを起点に発生していた。
このように、比較例の従来の製造方法では、端子部における断線や、接続配線の抵抗値が上昇する虞があった。
【0035】
以上、述べた通り、本実施形態の振動デバイスの製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
振動デバイス100の製造方法は、第1面10a、および第1面10aと表裏の関係にある第2面10bを有するベース基板10の第1面10aに、第1導電層31を形成することと、第1導電層31の上面の一部である第1領域81上に、第1導電層31とは材質の異なる第2導電層32を形成することと、第1導電層31の上面の他の一部である第2領域82が、第2導電層32から露出している状態で、第2領域82および第2導電層32の表面に、第3導電層33を形成することと、第3導電層33上に、振動素子40に電気的に接続される接合部材65を接合することと、を含む。
【0036】
これによれば、端子部に断線や、接続配線の抵抗値が上昇する虞があった比較例の製造方法と異なり、上部端子部38には、第2導電層32の側面にエグレなどの異形部は生じない。よって、電気的な接続が確実に取れ、信頼性の高い上部端子部38を製造することができる。
従って、電気的な接続が確実に取れ、信頼性の高い上部端子部38を備えた振動デバイス100の製造方法を提供することができる。
【0037】
また、ベース基板10は、発振回路を含む集積回路部60と、第1面10aから第2面10bに貫通する貫通電極63と、を有し、第2面10b側において、貫通電極63と平面視で重なる領域に、集積回路部60と電気的に接続されるパッド64が設けられ、第1導電層31、第2導電層32および第3導電層33を介して、パッド64と振動素子40とが電気的に接続される。
【0038】
これによれば、貫通電極63、上部端子部38、パッド64などを介して、発振回路を含む集積回路部60と振動素子40とを、電気的に確実に接続することができる。
【0039】
また、第1導電層31の第1領域81上に、第2導電層32を形成することは、第1導電層31上に第2導電層32の第1層23を形成することと、第1層23上の、平面視で第1領域81と重なる領域に第2導電層32の第2層24を形成することと、第2層24をマスクとして、第2領域82上の第1層23を除去し、第2導電層32の側面をテーパ形状にすることとを含む。
これによれば、第2導電層32の上に形成される第3導電層33の被覆性が良くなり、配線抵抗が低く、電気的に安定した積層配線を形成することができる。
【0040】
また、第3導電層33上に、振動素子40に電気的に接続される接合部材65を接合することとは、第3導電層33上に、金属バンプを介して振動素子40を接合することを含む。これによれば、第3導電層33の最表層で金からなる第4層26の上に、金バンプからなる接合部材65が接合されるため、同じ金属同士で相性良く、電気的、構造的に安定して接合できる。
【0041】
また、第1導電層31はTiW層であり、第2導電層32はCu層である。または、第1導電層31は、Ti層、Cr層、NiCr層のいずれかであっても良い。
これによれば、導電性に優れたCu層を含む低抵抗な積層配線、端子部を形成することができる。
【0042】
また、第3導電層33は、最表層の第4層26が接合部材65と同じ材質であり、第3導電層33の第4層26がAu層であり、接合部材65はAuバンプである。
これによれば、第3導電層33の最表層で金からなる第4層26の上に、金バンプからなる接合部材65が接合されるため、同じ金属同士で相性良く、電気的、構造的に安定して接合できる。
【符号の説明】
【0043】
8…接合材、10…ベース基板、10a…第1面、10b…第2面、20…貫通孔、21…絶縁層、23…第1層、24…第2層、25…第3層、26…第4層、31…第1導電層、32…第2導電層、33…第3導電層、38…上部端子部、40…振動素子、41…振動基板、42…第1励振電極、42b…端部、43…第2励振電極、43b…端部、48…レジスト、50…蓋体、50b…凹部、60…集積回路部、61…マウント端子、62…配線部、63…貫通電極、64…パッド、65…接合部材、71,72…外部接続端子、81…第1領域、82…第2領域、98…比較例の上部端子部、100…振動デバイス。
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