(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089807
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20240627BHJP
A61B 17/76 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61B17/86
A61B17/76
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205242
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】508233331
【氏名又は名称】東海部品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】田村 怜史
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL21
4C160LL26
4C160LL44
4C160LL54
4C160LL56
4C160LL58
(57)【要約】
【課題】 骨折の治療に用いられるインプラントに係り、特に、機能を阻害されにくくあらゆる箇所の骨折の治療に使用できると共に容易に製造できるインプラントを提供すること。
【解決手段】 先端側に第1骨片アンカーが設けられた軸と、軸の基端側が挿入されて第2骨片側に設置されるスリーブと、を具備し、スリーブの内周面には雌ネジ部が設けられていて、軸の基端側には弾性変形部が設けられていて、弾性変形部には雌ネジ部に螺合される雄ネジ部が設けられていて、雌ネジ部と雄ネジ部の断面形状により軸がスリーブに沿って第2骨片側へ移動しようとすると雄ネジ部が上記弾性変形部の弾性変形により雌ネジ部に乗り上げて軸の第2骨片側への移動が許容されるが第1骨片側へ移動しようとすると雄ネジ部は雌ネジ部に乗り上げることができず軸の第1骨片側への移動は規制されるようになっていることを特徴とするもの。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に第1骨片アンカーが設けられた軸と、
上記軸の基端側が挿入されて第2骨片側に設置されるスリーブと、
を具備し、
上記スリーブの内周面には溝が設けられていて、
上記軸の基端側には弾性変形部が設けられていて、
上記弾性変形部には上記溝に係合される凸部が設けられていて、
上記溝と上記凸部の断面形状により上記軸が上記スリーブに沿って第2骨片側へ移動しようとすると上記凸部が上記弾性変形部の弾性変形により上記溝に乗り上げて上記軸の第2骨片側への移動が許容されるが第1骨片側へ移動しようとすると上記凸部は上記溝に乗り上げることができず上記軸の第1骨片側への移動は規制されるようになっていることを特徴とするインプラント。
【請求項2】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記溝は雌ネジ部であり、
上記凸部は雄ネジ部であり、
上記軸の基端側が上記スリーブの内周面に螺合されることを特徴とするインプラント。
【請求項3】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記軸の基端側にスリットが設けられることにより上記弾性変形部が構成されることを特徴とするインプラント。
【請求項4】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記軸の基端側には上記軸を回転させるための治具が係合される回転治具用係合部が設けられていることを特徴とするインプラント。
【請求項5】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記軸の基端側には上記軸を第2骨片側に牽引するための治具が螺合される牽引治具用ネジ部が設けられていることを特徴とするインプラント。
【請求項6】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとしてねじが設けられていることを特徴とするインプラント。
【請求項7】
請求項1記載のインプラントにおいて、
上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとして他のインプラントに係合される係合部が設けられていることを特徴とするインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折の治療に用いられるインプラントに係り、特に、機能を阻害されにくくあらゆる箇所の骨折の治療に使用できると共に容易に製造できるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
骨折の治療に用いられるインプラントの従来の構成として、特許文献1に記載されたようなものが存在している。
特許文献1に記載された骨接合具は、例えば、大腿骨に埋設される髄内釘と共に使用され、ラグスクリューとスリーブから構成される。上記ラグスクリューは長尺状の軸本体の先端部にスクリュー部が備えられる。上記スクリュー部には骨折により分離された骨頭が固定される。また、上記ラグスクリューの後端側にはストッパ部が設けられる。上記ストッパ部は軸本体の外周面に突出したリング状構造による複数のラチェット歯から構成されている。
【0003】
上記スリーブは上記髄内釘を貫通して固定され、内部に上記ラグスクリューの後端側が収容されるようになっている。また、上記スリーブには軸方向に沿って延長された複数のスリットが設けられ、上記スリーブのスリット間の内周面には内側に突出された爪が設けられている。上記爪は上記軸のラチェット歯に係合される。上記ラチェット歯と上記爪には傾斜面と係合段差面がある。上記ラグスクリューが上記スリーブに対して基端側へ移動しようとすると上記爪が傾斜面に沿って上記ラチェット歯を乗り越える。そのため、上記ラグスクリューは基端側へは移動することができる。しかし、上記ラグスクリューが上記スリーブに対して先端側へ移動しようとすると上記爪は係合段差面に当接し上記ラチェット歯を乗り越えられない。そのため、上記ラグスクリューは先端側へは移動することができないようになっている。
よって、上記ラグスクリューに固定された骨頭は上記大腿骨側に押しつけられる方向にのみ移動され、これによって骨折の治癒が促進される。
【0004】
また、別の実施の形態では、スリーブにコ字型のスリットが形成されることで片持ち板バネ状の舌片部が設けられている。上記舌片部に上記スリーブの内側に突出された爪が設けられていて、上記爪がラグスクリューのラチェット歯に係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では次のような問題があった。
スリーブにはスリットが形成されているので、上記スリットから上記スリーブの内部に組織が入り込んでしまい、骨接合具の機能が阻害されてしまうことが懸念される。骨接合具を大腿骨以外の箇所に適応し、髄内釘を使用せずにスリットが露出した状態で使用する場合は、特にこのような問題が懸念される。
また、筒状のスリーブの中央にスリットを形成し、更に内側に爪を設ける加工は難易度が高く、製造が困難である。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、機能を阻害されにくくあらゆる箇所の骨折の治療に使用できると共に容易に製造できるインプラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1によるインプラントは、先端側に第1骨片アンカーが設けられた軸と、上記軸の基端側が挿入されて第2骨片側に設置されるスリーブと、を具備し、上記スリーブの内周面には溝が設けられていて、上記軸の基端側には弾性変形部が設けられていて、上記弾性変形部には上記溝に係合される凸部が設けられていて、上記溝と上記凸部の断面形状により上記軸が上記スリーブに沿って第2骨片側へ移動しようとすると上記凸部が上記弾性変形部の弾性変形により上記溝に乗り上げて上記軸の第2骨片側への移動が許容されるが第1骨片側へ移動しようとすると上記凸部は上記溝に乗り上げることができず上記軸の第1骨片側への移動は規制されるようになっていることを特徴とするものである。
又、請求項2によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記溝は雌ネジ部であり、上記凸部は雄ネジ部であり、上記軸の基端側が上記スリーブの内周面に螺合されることを特徴とするものである。
又、請求項3によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側にスリットが設けられることにより上記弾性変形部が構成されることを特徴とするものである。
又、請求項4によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側には上記軸を回転させるための治具が係合される回転治具用係合部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側には上記軸を第2骨片側に牽引するための治具が螺合される牽引治具用ネジ部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとしてねじが設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項7によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとして他のインプラントに係合される係合部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項8によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記スリーブの基端側には上記スリーブを保持する治具が係合される治具用係合部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように、本願発明の請求項1記載のインプラントによると、先端側に第1骨片アンカーが設けられた軸と、上記軸の基端側が挿入されて第2骨片側に設置されるスリーブと、を具備し、上記スリーブの内周面には溝が設けられていて、上記軸の基端側には弾性変形部が設けられていて、上記弾性変形部には上記溝に係合される凸部が設けられていて、上記溝と上記凸部の断面形状により上記軸が上記スリーブに沿って第2骨片側へ移動しようとすると上記凸部が上記弾性変形部の弾性変形により上記溝に乗り上げて上記軸の第2骨片側への移動が許容されるが第1骨片側へ移動しようとすると上記凸部は上記溝に乗り上げることができず上記軸の第1骨片側への移動は規制されるようになっているので、上記スリーブの外周面にスリットのような開口部を設ける必要がなく、機能を阻害されにくくあらゆる箇所の骨折の治療に使用できると共に容易に製造できる。
又、請求項2によるインプラントは、請求項1記載のインプラントにおいて、上記溝は雌ネジ部であり、上記凸部は雄ネジ部であり、上記軸の基端側が上記スリーブの内周面に螺合されるので、上記軸を回転により上記スリーブに対して移動させることができる。
又、請求項3記載のインプラントによると、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側にスリットが設けられることにより上記弾性変形部が構成されるので、容易に製造できる。
又、請求項4記載のインプラントによると、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側には上記軸を回転させるための治具が係合される回転治具用係合部が設けられているので、上記軸を回転させて上記雄ネジ部と上記雌ネジ部によって移動させることができる。
又、請求項5記載のインプラントによると、請求項1記載のインプラントにおいて、上記軸の基端側には上記軸を第2骨片側に牽引するための治具が螺合される牽引治具用係合部が設けられているので、上記軸を牽引することによっても第2骨片側に移動できる。
又、請求項6記載のインプラントによると、請求項1記載のインプラントにおいて、上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとしてねじが設けられているので、上記スリーブを第2骨片側に固定できる。
又、請求項7記載のインプラントによると、請求項1記載のインプラントにおいて、上記スリーブの基端側には第2骨片アンカーとして他のインプラントに係合される係合部が設けられているので、上記スリーブを第2骨片側の他のインプラントに固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図1(a)はインプラントを大腿骨の骨折に対して使用した状態を示す図、
図1(b)はインプラントを足首の骨折に対して使用した状態を示す図、
図1(c)はインプラントを骨盤の骨折に対して使用した状態を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図2(a)はインプラントの斜視図、
図2(b)はインプラントの分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図3(a)はインプラントの平面図、
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図3(b)のIV部分の拡大図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図5(a)はスリーブの斜視図、
図5(b)はスリーブの平面図、
図5(c)は
図5(b)のVc-Vc断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図6(a)はインプラントの設置に使用する治具の斜視図、
図6(b)はインプラントの設置に使用する治具の断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図7(a)はインプラントの設置に使用する治具の一方の軸用ドライバーの斜視図、
図7(b)はインプラントの設置に使用する治具の他方の軸用ドライバーの斜視図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図8(a)は軸の第1骨片アンカーを骨に螺合させる場合にインプラントと治具を組み合わせた状態を示す斜視図、
図8(b)は軸の第1骨片アンカーを骨に螺合させる場合にインプラントと治具を組み合わせた状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図8(a)は軸を第2骨片側に牽引する場合にインプラントと治具を組み合わせた状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図10(a)は軸を第2骨片側に牽引した状態のインプラントと治具を示す斜視図、
図10(b)は軸を第2骨片側に牽引した状態のインプラントと治具を示す断面図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、
図11(a)は軸を第2骨片側に牽引した状態のインプラントと治具を示す斜視図、
図11(b)は軸を第2骨片側に牽引した状態のインプラントと治具を示す断面図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態を示す図で、
図12(a)はインプラントの使用状態を示す正面図、
図12(b)は
図12(a)のXIIb-XIIb矢視図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態及び第3の実施の形態を示す図で、
図12(b)のXIII-XIII断面図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、インプラントの使用状態を示す図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態を示す図で、
図15(a)はスリーブの平面図、
図15(b)は
図15(a)のXVb-XVb断面図である。
【
図16】本発明の第3の実施の形態を示す図で、
図16(a)はスリーブの斜視図、
図16(b)はスリーブの平面図、
図16(c)は
図16(b)のXVIc-XVIc断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1乃至
図5を参照しながら、本発明の第1の実施の形態について説明する。
この第1の実施の形態によるインプラント1は、
図1から
図3に示すように、軸3とスリーブ5とから構成される。この第1の実施の形態によるインプラント1は、
図1(a)に示す例では、例えば、大腿骨7が骨折により第1骨片としての骨頭9と第2骨片としての大腿骨幹部10に分離してしまった部分の治療に用いられ、
図1(b)に示す例では、例えば、足首の骨折の治療に用いられ、
図1(c)に示す例では、例えば、骨盤の骨折の治療に用いられる。
【0012】
図1(a)に示す例では、上記大腿骨幹部10を貫通して上記スリーブ5が設置され、上記軸3は上記スリーブ5を貫通して上記骨頭9に固定されていて、上記軸3を介して上記骨頭9が第2骨片側(
図13中右側)に固定及び牽引される。
また、
図1(b)に示す例では、脛骨6が骨折により第1骨片6aと第2骨片6bに分離されている。上記第2骨片6bを貫通して上記スリーブ5が設置され、上記軸3は上記スリーブ5を貫通して上記第1骨片6aに固定されていて、上記軸3を介して上記第1骨片6aが第2骨片6b側(
図1(b)中右側)に固定及び牽引される。
また、
図1(c)に示す例では、
図1(c)中右側の第2骨片としての腸骨8a、仙骨8b、及び、
図1(c)中左側の第1骨片としての腸骨8cを貫通して上記スリーブ5が設置され、上記軸3は上記スリーブ5を貫通して上記腸骨8cに固定されていて、上記軸3を介して上記腸骨8cが第2骨片側(
図1(c)中右側)に固定及び牽引される。
【0013】
図1から
図3に示すように、上記軸3の先端側(
図2(b)中左上側)には第1骨片アンカー21が設けられている。上記第1骨片アンカー21は、セルフタッピングねじで、上記骨頭9に螺合されるようになっている。
【0014】
また、上記軸3の基端側(
図2(b)中右下側)には周方向に等間隔に複数(例えば4つ)のスリット23が形成されている。これらスリット23は基端側(
図2(b)中右下側)に開口されていて、これにより上記軸3の基端側(
図2(b)中右下側)には複数(例えば4つ)の弾性変形部25が設けられている。
図2(b)、
図3(b)、及び、
図4に示すように、上記弾性変形部25の先端側(
図2(b)中右下側)には、それぞれ、雄ネジ部27が形成されている。
図4に示すように、上記雄ネジ部27には凸部としてネジ山29が形成されていて、上記ネジ山29の断面形状は、第2骨片側(
図4中右側)に緩やかに傾斜された移動許容面31が設けられ、第1骨片側(
図4中左側)に略垂直な移動規制面33が設けられた略直角三角形を成している。
【0015】
また、
図2(b)、
図3(b)、及び、
図4に示すように、上記軸3の基端側(
図2(b)中右下側)であって、上記弾性変形部25の基部の内側には、治具用係合部35が設けられている。この治具用係合部35は、例えば、六角形の横断面形状を成した凹部である。
また、上記軸3の内周面の上記治具用係合部35より先端側(
図3(b)中左側)には治具用雌ネジ部37が設けられている。
【0016】
上記スリーブ5は
図2から
図5に示すように筒状の部材で、上記軸3の基端側(
図2(b)中右下側)が上記スリーブ5の先端側(
図2(b)中左上側)から内部に挿入される。
図5(b)に示すように、上記スリーブ5の内周面の基端側(
図5(b)中右側)には雌ネジ部41が設けられていて、上記雌ネジ部41には溝として螺旋溝43が形成されている。この雌ネジ部41には上記軸3の弾性変形部25の雄ネジ部27が螺合される。
図4や
図5(b)に示すように、上記螺旋溝43の断面形状も、第2骨片側(
図4中右側)に緩やかに傾斜された移動許容面45が設けられ、第1骨片側(
図4中左側)に略垂直な移動規制面47が設けられた略直角三角形を成している。このような構成により、上記軸3が第2骨片側(
図4中右側)に並行移動しようとすると、上記ネジ山29が上記螺旋溝43の移動許容面45を乗り越えて、上記軸3の第2骨片側(
図4中右側)への並行移動が許容されるようになっている。このとき、上記弾性変形部25が弾性変形されるようになっている。しかし、上記軸3が第1骨片側(
図4中左側)に並行移動しようとすると、上記ネジ山29の移動規制面33と上記螺旋溝43の移動規制面47が当接し、上記雄ネジ部27は上記螺旋溝43を乗り越えられず、上記軸3の第1骨片側(
図4中左側)への並行移動が規制されるようになっている。
【0017】
また、上記軸3の治具用係合部35に図示しない治具を係合させて、上記軸3を回転させることで、上記軸3を第2骨片側(
図4中右側)、又は、第1骨片側(
図4中左側)に移動させることができるようになっている。
【0018】
また、
図5(a)に示すように、上記スリーブ5の外周面の基端側(
図5(a)中右側)には、第2骨片アンカー51が設けられている。この第2骨片アンカー51は、セルフタッピングねじで、
図1(a)に示す例では、上記大腿骨幹部10に螺合される。
また、上記スリーブ5の外周面であって、上記第2骨片アンカー51よりも基端側(
図5(a)中右側)には拡径部55が設けられている。
また、上記スリーブ5の基端(
図5(a)中右端)には、治具係合用凹部57が形成されている。
【0019】
また、上記インプラント1の設置作業には、例えば、
図6に示すような治具81が用いられる。上記治具81は、
図6(a)、
図6(b)、及び、
図7に示すように、筒状のスリーブドライバ83、上記スリーブドライバ83の基端側(
図6中右下側)に設置されるコンプレッションボルト85、及び、上記スリーブドライバ83と上記コンプレッションボルト85を貫通して配置されるラグスクリュードライバ87、89とから構成される。なお、
図6には上記治具81に上記ラグスクリュードライバ87が用いられている場合を示し、
図7(a)には上記ラグスクリュードライバ87のみを示し、
図7(b)には上記ラグスクリュードライバ89のみを示す。
【0020】
上記スリーブドライバ83には、
図6(a)に示すように、先端側(
図6(a)中左上側)に上記スリーブ5の治具係合用凹部57に係合される係合凸部91が形成されている。
上記コンプレッションボルト85の内周面には雌ネジ部92が設けられている。
上記ラグスクリュードライバ87の先端には、上記軸3の治具用雌ネジ部37に螺合される治具側雄ネジ部93が設けられている。また、上記ラグスクリュードライバ87の基端側には上記コンプレッションボルト85の雌ネジ部92に螺合される雄ネジ部95が設けられている。また、上記ラグスクリュードライバ87の基端には上記ラグスクリュードライバ87を操作するためのハンドル97が設けられている。
上記ラグスクリュードライバ89は上記ラグスクリュードライバ87とほぼ同様の構成であるが、上記ラグスクリュードライバ89の先端側には、上記軸3の治具用係合部35に係合される治具側係合凸部99が設けられている。
【0021】
図8に示すように上記治具81の上記スリーブドライバ83と上記ラグスクリュードライバ89によって、上記インプラント1の軸3の上記骨頭9への螺合を行うことができるようになっている。この場合は、上記スリーブ5の治具係合用凹部57に上記スリーブドライバ83の係合凸部91を係合させて、上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5の回転を防止する。この状態で、上記ラグスクリュードライバ89を上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部99を上記軸3の治具用係合部35に係合させて、上記軸3を回転させることができるようになっている。
【0022】
また、
図9及び
図10に示すように、上記スリーブドライバ83と上記コンプレッションボルト85及び上記ラグスクリュードライバ89による上記治具81を使用して、上記軸3を第2骨片側(
図10(b)中右側)に牽引することができるようになっている。この場合は、上記スリーブ5の治具係合用凹部57に上記スリーブドライバ83の係合凸部91を係合させて、上記スリーブドライバ83の後端側(
図10(b)中)右側に上記コンプレッションボルト85を設置する。そして、上記ラグスクリュードライバ89を上記コンプレッションボルト85と上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバー89の雄ネジ部95を上記コンプレッションボルト85の雌ネジ部92に螺合させるとともに、上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部99を上記軸3の治具用係合部35に係合させ、上記ラグスクリュードライバ89によって上記軸3の回転を防止する。この状態で、上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5を回転させると、上記軸3は雄ネジ部27と雌ネジ部41によって、上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部99に沿って上記スリーブ5に対して並行移動される。
【0023】
また、
図11に示すように、上記スリーブドライバ83と上記コンプレッションボルト85と上記ラグスクリュードライバ87による上記治具81を使用して、上記軸3を第2骨片側(
図11(b)中右側)に牽引することができるようになっている。この場合は、上記スリーブ5の治具係合用凹部57に上記スリーブドライバ83の係合凸部91を係合させて、上記スリーブドライバ83の後端側(
図10(b)中)右側に上記コンプレッションボルト85を設置する。そして、上記ラグスクリュードライバ87を上記コンプレッションボルト85と上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバー87の雄ネジ部95を上記コンプレッションボルト85の雌ネジ部92に螺合させるとともに、上記ラグスクリュードライバ87の治具側雄ネジ部93を上記軸3の治具用雌ネジ部37に螺合させ、上記ラグスクリュードライバ87によって上記軸3の回転を防止するとともに上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5の回転を防止する。この状態で上記コンプレッションボルト85を回転させると、上記ラグスクリュードライバ87とともに上記軸3が上記スリーブ5に沿って並行移動される。このときは、上記軸3の弾性変形部25のネジ山29が上記スリーブ5の螺旋溝43の移動許容面45を乗り越えて、上記軸3の第2骨片側(
図10(b)中右側)への並行移動が許容されるようになっている。
【0024】
次に、この第1の実施の形態による作用について説明する。
まず、
図1(a)に示す例でのインプラント1の設置について説明する。
この場合、初めに、図示しないドリルを用いて大腿骨幹部10及び骨頭9に下穴61、63を形成する。
次に、上記下穴61、63にインプラント1を挿入し、スリーブ5の治具係合用凹部57にスリーブドライバ83の係合凸部91を係合させる。
次に、上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5を回転させる。第2骨片アンカー51を上記大腿骨幹部10に螺合させて、上記スリーブ5を上記大腿骨幹部10に固定する。
次に、ラグスクリュードライバ89を上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部99を上記軸3の治具用係合部35に係合させる。
次に、上記ラグスクリュードライバ89によって上記軸3を回転させ、第1骨片アンカー21を上記骨頭9に螺合させ、上記軸3を上記骨頭9に固定する。
【0025】
次に、上記骨頭9を第2骨片側(
図1(a)中右側)に牽引する場合について説明する。
この場合、例えば、
図9及び
図10に示すように、上記スリーブ5の治具係合用凹部57に上記スリーブドライバ83の係合凸部91を係合させ、上記スリーブドライバ83の後端側(
図10(b)中)右側にコンプレッションボルト85を設置する。
次に、上記ラグスクリュードライバ89を上記コンプレッションボルト85と上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバー89の雄ネジ部95を上記コンプレッションボルト85の雌ネジ部92に螺合させるとともに、上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部99を上記軸3の治具用係合部35に係合させる。
次に、上記ラグスクリュードライバ89によって上記軸3の回転を防止しながら上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5を回転させる。上記軸3は回転が規制されているので、雄ネジ部27と雌ネジ部41によって上記ラグスクリュードライバ89の治具側係合凸部93に沿って上記スリーブ5に対して並行移動される。
【0026】
また、
図11に示すように、上記スリーブドライバ83と上記コンプレッションボルト85と上記ラグスクリュードライバ87による上記治具81を使用して、上記軸3を第2骨片側(
図11(b)中右側)に牽引する場合もある。この場合は、まず、上記スリーブ5の治具係合用凹部57に上記スリーブドライバ83の係合凸部91を係合させて、上記スリーブドライバ83の後端側(
図10(b)中)右側に上記コンプレッションボルト85を設置する。
次に、上記ラグスクリュードライバ87を上記コンプレッションボルト85と上記スリーブドライバ83と上記スリーブ5に貫通させ、上記ラグスクリュードライバー87の雄ネジ部95を上記コンプレッションボルト85の雌ネジ部92に螺合させるとともに、上記ラグスクリュードライバ87の治具側雄ネジ部93を上記軸3の治具用雌ネジ部37に螺合させる。
次に、上記ラグスクリュードライバ87によって上記軸3の回転を防止するとともに上記スリーブドライバ83によって上記スリーブ5の回転を防止した状態で上記コンプレッションボルト85を回転させる。上記コンプレッションボルト85が回転されると、上記ラグスクリュードライバ87とともに上記軸3が上記スリーブ5に沿って並行移動される。このときは、上記軸3の弾性変形部25のネジ山29が上記スリーブ5の螺旋溝43の移動許容面45を乗り越えて、上記軸3の第2骨片側(
図10(b)中右側)への並行移動が許容されるようになっている。なお、上記雄ネジ部27のネジ山29が上記螺旋溝43の移動許容面45を乗り越えようとするときには上記弾性変形部25が弾性変形される。
【0027】
前記したように上記軸3及び上記骨頭9を任意に第2骨片側に牽引する場合の他、上記骨頭9や上記大腿骨幹部10に外力が加わった場合にも、上記軸3及び上記骨頭9は第2骨片側(
図4中右側)に移動される場合がある。このような場合も、上記軸3の雄ネジ部27のネジ山29が上記スリーブ5の螺旋溝43の移動許容面45を乗り越えて、上記軸3の第2骨片側(
図4中右側)への並行移動が許容される。
【0028】
一方、上記軸3が第1骨片側(
図4中左側)に並行移動しようとする場合は、上記ネジ山29の移動規制面33と上記螺旋溝43の移動規制面47が当接し、上記雄ネジ部27は上記螺旋溝43を乗り越えられず、上記軸3の第1骨片側(
図4中左側)への並行移動が規制される。
このようにして、上記骨頭9は上記大腿骨幹部10に押しつけられる方向には移動するが、上記大腿骨幹部10から離れる方向には移動されず、上記大腿骨7の骨折の治癒が促進される。
【0029】
図1(b)に示す例でも、同様に、第2骨片6b及び第1骨片6aに下穴65、67を形成し、上記インプラント1を設置する。軸3の第1骨片アンカー21は上記第1骨片6aに螺合され、スリーブ5の第2骨片アンカー51は上記脛骨6に螺合される。この場合も、上記インプラント1により上記第1骨片6aの第1骨片側(
図1(b)中右側)への移動は許容されているが、第2骨片側(
図1(b)中左側)への移動は規制されている。
【0030】
図1(c)に示す例では、
図1(c)中右側の腸骨8a、仙骨8b、及び、
図1(c)中左側の腸骨8cに下穴71、73、75を形成し、上記インプラント1を設置する。軸3の第1骨片アンカー21は上記腸骨8cに螺合され、スリーブ5の第2骨片アンカー51は上記腸骨8aに螺合される。この場合も、上記インプラント1により上記腸骨8c及び上記仙骨8bの第1骨片側(
図1(c)中右側)への移動は許容されているが、第2骨片側(
図1(c)中左側)への移動は規制されている。
【0031】
次に、この第1の実施の形態による効果について説明する。
まず、スリーブ5の内側に雌ネジ部41が設けられていて、軸3の弾性変形部25の雄ネジ部27と上記雌ネジ部41が上記スリーブ5の内側で螺合される構成になっているので、上記スリーブ5の外周面に開口部がなく、上記スリーブ5の外側から内部に組織が入り込むことがなく、インプラント1の機能が阻害されにくい。また、これにより、上記インプラント1を他のインプラントに収容せず単体で用いることができるので、例えば、上記インプラント1と組み合わせて他のインプラントを使用できない場所でも使用することができ、あらゆる箇所の骨折の治療に使用できる。
また、上記スリーブ5の中央にスリットを設ける必要がなく、上記インプラント1を容易に製造できる。
上記軸3にスリット23を形成することにより上記弾性変形部25が構成されるので、上記弾性変形部25を備えた上記軸3を容易に製造できる。
上記スリーブ5にセルフタッピングネジである第2骨片アンカー51が設けられているので、上記スリーブ5を第2骨片側に確実に固定できる。
【0032】
次に、
図12乃至
図15を参照しながら、本発明の第2の実施の形態について説明する。
この第2の実施の形態によるインプラント101も、前記した第1の実施の形態によるインプラント1と略同様の構成で、軸3とスリーブ103から構成される。
図12及び
図13に示す例では、上記インプラント101は、例えば、大腿骨7の骨頭9部分の骨折の治療に用いられる。この場合、上記大腿骨幹部10に図示しないドリルによって形成された髄孔100内にネイル104が挿入され、上記ネイル104に設けられたインプラント用貫通孔102を貫通した状態で上記インプラント1が設置される。上記インプラント1のスリーブ103は上記ネイル104に固定され、上記インプラント1の軸3は骨頭9側に固定されていて、上記軸3を介して上記骨頭9が第2骨片側(
図13中右側)に牽引される。
また、
図14に示す例でも、上記インプラント1は、例えば、上記大腿骨7が骨折により骨頭9と大腿骨幹部10に分離してしまった場合の治療に用いられるが、上記スリーブ103が上記大腿骨幹部10の側面に設置されたプレート106に固定されている。
【0033】
図15に示すように、上記スリーブ103は前記した第1の実施の形態におけるスリーブ5と略同様の構成であるが、外周側に前記した第1の実施の形態におけるスリーブ5の第2骨片アンカー51よりも大きい範囲に設けられた第2骨片アンカー105と、前記した第1の実施の形態におけるスリーブ5の拡径部55よりも大きい範囲に設けられた拡径部107が設けられている。
図12及び
図13に示す例では、上記第2骨片アンカー105は上記ネイル104のインプラント用貫通孔102内の雌ネジ部111に螺合され、上記スリーブ103が上記ネイル104に固定されるようになっている。また、上記拡径部107が上記ネイル104に当接することによって、上記スリーブ103ひいては上記インプラント101の
図13中左側への移動が規制されるようになっている。
図14に示す例では、上記第2骨片アンカー105は上記プレート106のインプラント用貫通孔115内の雌ネジ部117に螺合されて上記スリーブ103が上記プレート106に固定されるようになっている。また、上記拡径部107が上記プレート106に当接することによって、上記スリーブ103ひいては上記インプラント101の
図14中左側への移動が規制されるようになっている。
なお、この第2の実施の形態と前記した第1の実施の形態とで共通する構成要素については同じ符号を付し、説明を省略している。
【0034】
次に、この第2の実施の形態による作用について説明する。
例えば、
図12及び
図13に示す例では、インプラント101を大腿骨7の骨頭9部分の骨折の治療に用いる場合は、まず、上記大腿骨幹部10に図示しないドリルによって髄孔100を形成し、上記髄孔100内にネイル104を挿入する。
次に、上記ネイル104のインプラント用貫通孔102に図示しないドリルを貫通させるようにして、上記大腿骨幹部10に下穴123を形成するとともに上記骨頭9に下穴125を形成する。
次に、上記インプラント101を上記ネイル104に貫通させて、スリーブ103の第2骨片アンカー105を上記ネイル104の雌ネジ部111に螺合させ、上記スリーブ103を上記ネイル104に固定する。
次に、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3を回転させて上記下穴125に第1骨片アンカー21を螺合させて、上記軸3に上記骨頭9を固定する。
次に、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3によって上記骨頭9を第2骨片側に適宜牽引する。
【0035】
また、例えば、
図14に示す例では、プレート106を固定ネジ131によって大腿骨幹部10に固定する。次に、上記プレート106のインプラント用貫通孔115に図示しないドリルを貫通させるようにして、上記大腿骨幹部10に下穴123を形成するとともに上記骨頭9に下穴125を形成する。
次に、上記インプラント101を上記プレート106に貫通させて、スリーブ103の第2骨片アンカー105を上記プレート106の雌ネジ部131に螺合させ、上記スリーブ103を上記プレート106に固定する。
次に、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3を回転させて上記下穴125に第1骨片アンカー21を螺合させて、上記軸3に上記骨頭9を固定する。
次に、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3によって上記骨頭9を第2骨片位側に適宜牽引する。
【0036】
この第2の実施の形態でも、インプラント101によって上記骨頭9は上記大腿骨幹部10に押しつけられる方向には移動するが、上記大腿骨幹部10から離れる方向には移動されず、上記大腿骨7の骨折の治癒が促進される。
【0037】
この第2の実施の形態の場合も、前記した第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏する。
【0038】
次に、
図16を参照しながら、本発明の第3の実施の形態について説明する。
この第3の実施の形態によるインプラント201は、
図12及び
図13に示す例では、前記した第2の実施の形態によるインプラント101と共に、例えば、大腿骨7の骨頭9部分の骨折の治療に用いられる。インプラント201も、前記した第2の実施の形態によるインプラント101と略同様の構成で、軸3とスリーブ203から構成される。
【0039】
図16に示すように、上記スリーブ203は前記した第1の実施の形態におけるスリーブ5と略同様の構成であるが、外周面には雄ネジ部はなく、幅方向両側にそれぞれ第2骨片アンカーとしての係合部205が設けられている。上記係合部205は、上記スリーブ203の幅方向(
図16(b)中上下方向)両側の一部を切り欠いたような凹部であり、上記スリーブ203の幅方向(
図16(b)中上下方向)両側にそれぞれ互いに並行に設けられている。
上記スリーブ203は上記係合部205を上記ネイル104のインプラント用貫通孔211に係合させた状態で、上記ネイル104に設置される。
なお、この第3の実施の形態と前記した第1の実施の形態及び第2の実施の形態とで共通する構成要素については同じ符号を付し、説明を省略している。
【0040】
上記インプラント201を設置する場合、前記した第2の実施の形態の場合と同様に、上記ネイル104のインプラント用貫通孔211に図示しないドリルを貫通させるようにして上記大腿骨幹部10に下穴213を形成するとともに上記骨頭9に下穴215を形成する。その後、上記インプラント201を上記ネイル104のインプラント用貫通孔211に貫通させ、し、上記スリーブ203の係合部205を上記ネイル104のインプラント用貫通孔211に係合させ、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3を回転させて上記下穴215に第1骨片アンカー21を螺合させて、上記軸3に上記骨頭9を固定する。
また、前記した第1の実施の形態の場合と同様に、上記軸3によって上記骨頭9を第2骨片位側に適宜牽引する。
【0041】
この第3の実施の形態によるインプラント201も前記した第1の実施の形態や第2の実施の形態によるインプラントと同様の作用及び効果を奏する。
【0042】
なお、本発明は前記第1の実施の形態から第3の実施の形態に限定されない。
本発明によるインプラントは、さまざまな箇所の骨折の治療に用いられる場合が考えられる。
第1の実施の形態におけるインプラントを
図12及び
図13に示すネイルやインプラントとともに使用する場合も考えられる。
軸に設けられた凸部として、は雄ネジとして機能する螺旋形状を分割したようなもの以外にも、環状に設けられた凸部等、様々なものが考えられる。また、スリーブに設けられた溝としては、雌ネジとして機能する螺旋溝の他、環状溝等、様々なものが考えられる。
凸部の移動許容面と移動規制面、及び、溝の移動許容面と移動規制面の角度は、スリーブに対する軸の第1骨片側への移動を規制し第2骨片側への移動を許容するものであれば、様々な場合が考えられる。
その他各構成要素の形状、材質、大きさ、個数については様々な場合が考えられる。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、骨折の治療に用いられるインプラントに係り、特に、機能を阻害されにくくあらゆる箇所の骨折の治療に使用できると共に容易に製造できるように工夫したものに関し、例えば、大腿骨の骨折の治療に好適である。
【符号の説明】
【0044】
1 インプラント
3 軸
5 スリーブ
21 第1骨片アンカー
23 スリット
25 弾性変形部
29 ネジ山(凸部)
35 治具用係合部
43 螺旋溝(溝)
51 第2骨片アンカー
101 インプラント
103 スリーブ
105 第2骨片アンカー
201 インプラント
203 スリーブ
205 係合部(第2骨片アンカー)