(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008981
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】衣類処理装置、防振装置
(51)【国際特許分類】
D06F 37/22 20060101AFI20240112BHJP
F16F 9/34 20060101ALI20240112BHJP
F16F 9/24 20060101ALI20240112BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20240112BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
D06F37/22
F16F9/34
F16F9/24
F16F15/023 A
F16F15/04 L
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185490
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2020078365の分割
【原出願日】2020-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】久野 功二
(72)【発明者】
【氏名】小室 琢磨
(57)【要約】
【課題】シリンダ内に封入されたオイルがピストンに設けられたオリフィス孔を通過するときの粘性抵抗を利用した防振装置を用いて起動時、定常時に応じて減衰力を可変する。
【解決手段】本実施形態に係る衣類処理装置は、外郭を構成する外箱と、外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、衣類処理槽の振動を減衰する防振装置と、を備える衣類処理装置であって、防振装置は、弾性部材によって構成される弾性防振部と、弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、を備え、減衰機構部は、内部にオイルが封入されたシリンダと、シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有するピストンと、を備え、回転槽の低速回転時において減衰機構部が発生する減衰力は、回転槽の高速回転時において減衰機構部が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する外箱と、
前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、
前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、
前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置と、
を備える衣類処理装置であって、
前記防振装置は、
弾性部材によって構成される弾性防振部と、
前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、
を備え、
前記減衰機構部は、
内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、
前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、
を備え、
前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上である衣類処理装置。
【請求項2】
外郭を構成する外箱と、
前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、
前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、
前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置と、
を備える衣類処理装置であって、
前記防振装置は、
弾性部材によって構成される弾性防振部と、
前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、
を備え、
前記減衰機構部は、
内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、
前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、
を備え、
前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも85N以上であり、
前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも60N以下である衣類処理装置。
【請求項3】
前記減衰機構部が発生する減衰力は、前記シリンダ内に封入する前記オイルの粘性によって調整されている請求項1または2に記載の衣類処理装置。
【請求項4】
前記シリンダの内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度22~46の間の粘性を示すオイルが封入されている請求項1から3の何れか1項に記載の衣類処理装置。
【請求項5】
外郭を構成する外箱と、前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、を備える衣類処理装置に備えられ、前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置であって、
弾性部材によって構成される弾性防振部と、
前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、
を備え、
前記減衰機構部は、
内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、
前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、
を備え、
前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上である防振装置。
【請求項6】
外郭を構成する外箱と、前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、を備える衣類処理装置に備えられ、前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置であって、
弾性部材によって構成される弾性防振部と、
前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、
を備え、
前記減衰機構部は、
内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、
前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、
前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、
を備え、
前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも85N以上であり、
前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも60N以下である防振装置。
【請求項7】
前記シリンダの内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度22~46の間の粘性を示すオイルが封入されている請求項5または6に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類に所定の処理を施す衣類処理装置、および、この衣類処理装置に備えられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衣類に所定の処理を施す衣類処理装置の一例である洗濯機においては、特に衣類を脱水する脱水動作において、衣類を収容する衣類処理槽の振動を効果的に減衰することができる防振ダンパーの開発が進められている。ここで、この種の防振ダンパーには、回転槽の回転速度が低速である脱水動作の起動時においては、衣類処理槽が大きく揺れることから大きな減衰力が要求され、一方、回転槽の回転速度が脱水用の定常回転速度となる脱水動作の定常時においては、衣類処理槽の振幅が小さくなることから、大きな減衰力は必要なく、床に伝搬する振動を抑える程度の小さな減衰力が要求される。
【0003】
このように、特に洗濯機に備えられる防振ダンパーについては、脱水動作の起動時と定常時とで要求される減衰力の大きさが異なっており、脱水動作の進行に伴い減衰力が大から小に切り替わる特性を有することが好ましい。このような事情に鑑みて、例えば特許文献1に開示されているように、シリンダ内に保持された磁気粘性流体の粘度をコイルの通電により制御することで減衰力を切り替えることを可能にしたサスペンションが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の構成では、磁気粘性流体やコイルなどが必要であり、製造コストが高くなるという課題がある。一方で、衣類処理槽の振動を減衰する防振装置として、シリンダ内に封入されたオイルがピストンに設けられたオリフィス孔を通過するときの粘性抵抗を利用した装置、いわゆるオイルダンパーと称される防振装置も知られている。そして、この種の防振装置は、上述した磁気粘性流体やコイルを用いる防振装置に比べ、製造コストを抑制することができる。
【0006】
そこで、本実施形態は、シリンダ内に封入されたオイルがピストンに設けられたオリフィス孔を通過するときの粘性抵抗を利用した防振装置を用いて、起動時、定常時に応じて減衰力の可変を行えるようにした衣類処理装置、および、当該衣類処理装置に備えられる防振装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る衣類処理装置は、外郭を構成する外箱と、前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置と、を備える衣類処理装置であって、前記防振装置は、弾性部材によって構成される弾性防振部と、前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、を備え、前記減衰機構部は、内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、を備え、前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上である。
また、本実施形態に係る衣類処理装置は、外郭を構成する外箱と、前記外箱の内部に設けられる衣類処理槽と、前記衣類処理槽の内部に回転可能に設けられる回転槽と、前記衣類処理槽の振動を減衰する防振装置と、を備える衣類処理装置であって、前記防振装置は、弾性部材によって構成される弾性防振部と、前記弾性防振部に直列に配置される減衰機構部と、を備え、前記減衰機構部は、内部に国際標準化機構の粘度規格において粘度10~100の間の粘性を示すオイルが封入され、キャビテーションにより気泡が発生するシリンダと、前記シリンダ内を往復移動可能に設けられたシャフトと、前記シャフトに固定され、少なくとも1つ以上のオリフィス孔を有し、前記オリフィス孔の総開口面積が3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けられたピストンと、を備え、前記回転槽の低速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも85N以上であり、前記回転槽の高速回転時において前記減衰機構部が発生する減衰力は、少なくとも60N以下である。
【0008】
本実施形態に係る防振装置は、本実施形態に係る衣類処理装置に備えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る洗濯機の構成例を概略的に示す縦断正面図
【
図2】第1実施形態に係る洗濯機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
【
図3】第1実施形態に係る防振ダンパーの構成例を概略的に示す縦断側面図
【
図4】第1実施形態に係るピストンの構成例を概略的に示す平面図
【
図5】第1実施形態に係る防振ダンパーのストロークと減衰力との関係例を示す図
【
図6】第1実施形態に係るピストンの構成例を概略的に示す縦断側面図
【
図7】第1実施形態に係る防振ダンパーが示す減衰特性の一例を示す図
【
図8】第1実施形態に係る脱水動作の起動時における防振ダンパーの減衰特性の一例を示す図
【
図9】第1実施形態に係る脱水動作の定常時における防振ダンパーの減衰特性の一例を示す図
【
図10】第2実施形態に係る第1制御の一例を示す図
【
図11】第2実施形態に係る第2制御の一例を示す図
【
図12】第3実施形態に係る第1制御の一例を示す図
【
図13】第3実施形態に係る第2制御の一例を示す図
【
図14】第4実施形態に係る洗濯機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
【
図15】第5実施形態に係るピストンの構成例を概略的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、衣類処理装置および防振装置に係る複数の実施形態について図面を参照ながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に例示する洗濯機1は、衣類に所定の処理、この場合、少なくとも、衣類を洗う洗い処理、衣類をすすぐすすぎ処理、衣類を脱水する脱水処理を施すことが可能な衣類処理装置の一例である。また、洗濯機1は、回転槽の回転中心軸が水平方向あるいは水平方向に対して傾斜する方向に延びる、いわゆるドラム式の洗濯機である。
【0012】
洗濯機1は、その外郭を構成する矩形箱状の外箱2の内部に、有底円筒状の水槽3を備えている。水槽3は、衣類処理槽の一例であり、内部に水を溜めることが可能である。また、洗濯機1は、有底円筒状のドラム4を備えている。ドラム4は、回転槽の一例であり、水槽3の内部において回転可能に設けられている。
【0013】
ドラム4の周壁には図示しない多数の小孔が設けられており、また、ドラム4の内周面には、衣類をかき上げるための図示しないバッフルが設けられている。また、水槽3およびドラム4の前面開口部は、外箱2の前面に設けられた図示しないドアによって開閉可能となっている。使用者は、このドアを開くことにより、水槽3およびドラム4の前面開口部を通してドラム4内に衣類を収容したり、あるいは、ドラム4内から衣類を取り出したりすることができる。
【0014】
外箱2の内部において、水槽3は、複数、この場合、2つの防振ダンパー100によって弾性的に支持されている。防振ダンパー100は、防振装置の一例であり、例えば運転動作中に水槽3に発生する振動を減衰するものである。防振ダンパー100は、その一端部、この場合、上端部が、水槽3の下部に設けられた固定部3aに例えばボルトなどによって強固に固定されている。また、防振ダンパー100は、その他端部、この場合、下端部が、外箱2の底部に設けられた固定部2aに例えばボルトなどによって強固に固定されている。
【0015】
次に、洗濯機1の制御系の構成例について説明する。
図2に例示する制御装置10は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、制御プログラムおよび各種の設定内容に応じて洗濯機1の動作全般を制御する。制御装置10には、ドラムモータ11、給水弁12、排水弁13などといった各種の駆動系の構成要素が接続されている。
【0016】
ドラムモータ11は、水槽3の後部に設けられており、
図1に例示するように、ドラム4を正転方向R1および逆転方向R2に回転可能である。制御装置10は、例えば、衣類を洗う洗い動作、衣類をすすぐすすぎ動作においては、ドラムモータ11によってドラム4を正転方向R1および逆転方向R2に切り替えながら回転させる。洗い動作およびすすぎ動作は、通常回転動作の一例であり、制御装置10は、ドラム4を所定の通常速度で回転させる。
【0017】
また、制御装置10は、例えば、衣類を脱水する脱水動作においては、ドラムモータ11によってドラム4を一方向、この場合、正転方向R1に回転させる。脱水動作は、高速回転動作の一例であり、制御装置10は、ドラム4を通常速度よりも高速度で回転させる。
【0018】
給水弁12は、例えば水道などの給水源から水槽3に延びる図示しない給水経路に設けられている。制御装置10は、給水弁12を開くことにより水槽3内に水を供給することが可能である。排水弁13は、水槽3の底部から機外に延びる図示しない排水経路に設けられている。制御装置10は、排水弁13を開くことにより、水槽3内に溜められている水を機外に排出することが可能である。
【0019】
次に、防振ダンパー100の構成例について詳細に説明する。
図3に例示するように、防振ダンパー100は、弾性防振部110および減衰機構部120を備えている。弾性防振部110は、弾性部材の一例であるコイルばね111を主体として構成されている。コイルばね111は、ばね受け112,113の間において伸縮可能に設けられている。減衰機構部120は、弾性防振部110に対し直列に配置されている。この場合、防振ダンパー100は、弾性防振部110を下側、減衰機構部120を上側とした状態で、水槽3の固定部3aと外箱2底部の固定部2aとの間に取り付けられている。
【0020】
減衰機構部120は、シリンダ121、シャフト122、ピストン123などを備えている。シリンダ121は、この場合、円筒状に設けられており、内部にオイルOLおよび空気ARが封入されている。なお、シリンダ121内に封入される気体は、空気ARに限定されず、例えば、窒素等の気体であってもよい。シリンダ121の一端部、この場合、上端部は、閉塞されている。また、シリンダ121の上端部には、被固定部124が設けられている。被固定部124は、水槽3の固定部3aに例えばボルトなどによって強固に固定される。また、シリンダ121の他端部、この場合、下端部は、軸受け部125によって閉塞されている。軸受け部125は、全体として円環状に構成されており、その中央部に当該軸受け部125を軸方向に貫通する軸受け孔125aを有する。
【0021】
シャフト122は、防振ダンパー100の長手方向に沿って直線状に延びており、軸受け部125の軸受け孔125aに挿通されている。これにより、シャフト122は、シリンダ121内を矢印A1,A2方向に往復移動可能に設けられている。ここで、矢印A1方向は、弾性防振部110のコイルばね111が伸長される伸長方向である。一方、矢印A2方向は、弾性防振部110のコイルばね111が圧縮される圧縮方向の一例である。
【0022】
シャフト122の一端側、この場合、上端側は、シリンダ121の内部に延びており、その先端部にはピストン123が固定されている。これにより、ピストン123は、シャフト122とともにシリンダ121内を矢印A1,A2方向に往復移動する。また、シャフト122の他端側、この場合、下端側は、シリンダ121の外部に露出しており、その先端部は、外箱2底部の固定部2aに例えばボルトなどによって強固に固定される。また、シャフト122の下端側には、ばね受け113が固定されている。そして、このばね受け113と、シリンダ121の下端部に固定されたばね受け112との間に、上述したコイルばね111が伸縮可能に嵌め込まれている。
【0023】
ピストン123は、ほぼ円板状に構成されており、その外周面がシリンダ121の内周面に摺接する大きさとなっている。また、ピストン123は、当該ピストン123を軸方向に貫通する複数のオリフィス孔126を有している。
【0024】
図4に例示するように、ピストン123は、複数、この場合、4つのオリフィス孔126を有している。複数のオリフィス孔126は、ピストン123の周方向において互いに等間隔を有して配置されている。複数のオリフィス孔126の総開口面積は、3.5mm
2以上6.5mm
2以下となるように設けることが好ましく、本実施形態では、この範囲内において更に好適な範囲である4.5mm
2以上5.5mm
2以下となるように設けられている。なお、この場合、ピストン123の軸方向に直交する面の面積は、概ね314mm
2である。
【0025】
以上のように構成される防振ダンパー100によれば、弾性防振部110においては、コイルばね111の弾性によって減衰力が発生する。また、減衰機構部120においては、シリンダ121内においてピストン123が往復移動することに伴い、ピストン123の外周面とシリンダ121の内周面との摩擦抵抗によって減衰力が発生する。さらに、減衰機構部120においては、シリンダ121内においてピストン123が往復移動することに伴い、シリンダ121内のオイルOLがピストン123のオリフィス孔126内を通過する。そして、オイルOLがオリフィス孔126内を通過するときの粘性抵抗によって減衰力が発生する。
【0026】
ここで、本実施形態における「減衰力」の定義について説明する。即ち、
図5に符号Sで例示するように、防振ダンパー100は、水槽3の振動に応じて伸縮するものであり、そのストロークSつまり伸縮量が変動する。また、
図5に符号Fで例示するように、防振ダンパー100が発生する減衰力の大きさは、そのストロークSの変動に応じて変動する。そして、本実施形態における「減衰力」は、ストロークSが最大となるときに防振ダンパー100が発揮する減衰力Faと、ストロークSが最小となるときに防振ダンパー100が発揮する減衰力Fbとの差Dとして定義されている。本実施形態の防振ダンパー100によれば、シリンダ121内に空気ARが封入されている。このような構成においては、後述するエアレーション、つまり、オイルOLと空気ARが混ざり合うことによってオイルOL内に気泡が発生しやすく、従って、起動時と定常時における減衰力の差Dを特に大きくできる。
【0027】
ところで、この種の防振ダンパー100、いわゆるオイルダンパーと称される防振装置においては、シリンダ121内におけるピストン123の往復動が繰り返されると、シリンダ121内に注入されているオイルOLと気体ARが混ざり合うことで発生するエアレーション又はオイルOLに含まれる気体ARが圧力の低下により膨張して気泡化するキャビテーションという現象が発生することが知られている。このエアレーションやキャビテーションによって生じた気泡によりオイルOLがオリフィス孔126内を通過するときの粘性抵抗が下がり、減衰力が低下する。そのため、シリンダ121の内部には、このような気泡の解消を図るために消泡剤も添加されている。
【0028】
また、水槽3を防振支持する2つの防振ダンパー100のうちの少なくとも一方、この場合、洗濯機1の正面側から見て右側の防振ダンパー100については、オリフィス孔126の構成が次の通りとなっている。なお、右側の防振ダンパー100は、ドラム4が正転方向R1に回転する脱水動作において当該ドラム4の回転方向が下方向となる側を支持する防振ダンパーである。
【0029】
即ち、
図6に例示するように、右側の防振ダンパー100のオリフィス孔126の内周面は、シャフト122の往復移動方向A1,A2に対して傾斜するテーパ形状となっている。この場合、オリフィス孔126は、弾性防振部110の伸長方向A1側の径寸法D1が弾性防振部110の圧縮方向A2側の径寸法D2よりも大きくなるテーパ形状となっている。なお、弾性防振部110の伸長方向A1は、コイルばね111が伸びる方向であり、この場合、上方向となる。また、弾性防振部110の圧縮方向A2は、コイルばね111が縮む方向であり、この場合、下方向となる。
【0030】
以上のように構成される防振ダンパー100は、脱水動作において次に示す減衰特性を示す。即ち、
図7の領域G1で例示するように、ドラム4の回転速度が低速、例えば240rpmである脱水動作の「起動時」においては、防振ダンパー100の一部を構成する減衰機構部120は、少なくとも85ニュートン以上100ニュートン以下の減衰力を発生する。この場合、防振ダンパー100の減衰機構部120は、90ニュートンの減衰力を発生するように構成されている。
【0031】
また、
図7の領域G2で例示するように、ドラム4の回転速度が高速、例えば800rpmである脱水動作の「定常時」においては、防振ダンパー100の一部を構成する減衰機構部120は、少なくとも40ニュートン以上60ニュートン以下の減衰力を発生する。この場合、防振ダンパー100の減衰機構部120は、50ニュートンの減衰力を発生するように構成されている。
【0032】
次に、防振ダンパー100の減衰特性、特に減衰機構部120が発生する減衰特性について、さらに詳細に説明する。即ち、
図8に例示するグラフは、ドラム4の回転速度が低速である脱水動作の「起動時」について、防振ダンパー100のオリフィス孔126の総開口面積やオイルOLの種類を適宜変更した場合に示された減衰機構部120の減衰力をプロットしたものである。また、
図9に例示するグラフは、ドラム4の回転速度が高速である脱水動作の「定常時」について、防振ダンパー100のオリフィス孔126の総開口面積やオイルOLの種類を適宜変更した場合に示された減衰機構部120の減衰力をプロットしたものである。
【0033】
脱水動作の「起動時」においては、減衰機構部120が発生する減衰力は大きい方が好ましく、例えば85N以上の減衰力を発揮することが好ましい。
図8に例示するグラフでは、オリフィス孔126の総開口面積が6.5mm
2以下である場合に、減衰機構部120が発生する減衰力が85N以上となる傾向が認められる。一方、脱水動作の「定常時」においては、減衰機構部120が発生する減衰力は小さい方が好ましく、例えば60N以下の減衰力を発揮することが好ましい。
図9に例示するグラフでは、オリフィス孔126の総開口面積が3.5mm
2以上である場合に、減衰機構部120が発生する減衰力が60N以下となる傾向が認められる。
【0034】
よって、
図8および
図9のグラフを総合すると、オリフィス孔126の総開口面積が3.5mm
2以上6.5mm
2以下の範囲内であるときに、脱水動作の「起動時」において例えば85N以上の大きな減衰力を発生でき、且つ、脱水動作の「定常時」において例えば60N以下の小さな減衰力を発生できる減衰特性が得られることを導き出すことができる。そして、本実施形態では、オリフィス孔126の総開口面積は、この範囲内において特に好適である4.5mm
2以上5.5mm
2以下となるように設けられている。
【0035】
また、上述した通り、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が90ニュートン、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が50ニュートンであるとすると、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力は、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力の1.8倍となっている。つまり、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力の1.4倍以上となる関係が成立している。
【0036】
そして、このような減衰特性、つまり、減衰機構部120が発生する減衰力の特性は、シリンダ121内に封入するオイルOLの粘性を一要因として調整することができる。即ち、シリンダ121内に封入するオイルOLは、例えば、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)のVG規格(VG:Viscosity Grade)において粘度10~100の間の粘性を示すオイル、より好ましくは粘度22~46の粘性を示すオイルを用いるとよい。この範囲のオイルを適宜選択して用いることにより、上述した減衰特性、つまり、脱水動作の進行に伴い減衰力が大から小に切り替わる特性を有する防振ダンパー100を実現することができる。なお、本実施形態では、ISOのVG規格において粘度32を示すオイルOLがシリンダ121内に封入されている。
【0037】
以上に例示した洗濯機1によれば、シリンダ121内に封入されたオイルOLがピストン123に設けられたオリフィス孔126を通過するときの粘性抵抗を利用した防振ダンパー100を用いて、当該防振ダンパー100の一部を構成する減衰機構部120が示す減衰特性により、脱水動作の進行に伴う減衰力の大から小への可変を効果的に行うことができる。
【0038】
また、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上となるように調整することによって、洗濯機1に好適な減衰特性、即ち、脱水動作の「起動時」においては減衰力が「大」となり、脱水動作の「定常時」においては減衰力が「小」となる減衰特性を実現することができる。
【0039】
また、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が少なくとも85N以上となり、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力が少なくとも60N以下となるように調整することによって、洗濯機1に好適な減衰特性を実現することができる。
【0040】
また、オリフィス孔126の総開口面積は、3.5mm2以上6.5mm2以下となるように設けることが好ましいが、本実施形態では、この範囲内において更に好適な範囲である4.5mm2以上5.5mm2以下となるように設けられている。これにより、洗濯機1に好適な減衰特性を実現することができる。なお、オリフィス孔126がテーパ形状の場合、その総開口面積は、オリフィス孔126の両開口端のうち開口が小さい方の面積の総和により求めるようにするとよい。
【0041】
また、減衰機構部120が発生する減衰力は、シリンダ121内に封入するオイルOLの粘性の設定によって確実に調整することができる。即ち、シリンダ121内に封入するオイルOLを適宜選択することにより、換言すれば、オイルOLの粘性を適宜選択することにより、減衰機構部120の減衰特性を確実に調整することができる。
【0042】
また、オリフィス孔126の内周面を、シャフト122の往復移動方向に対して傾斜するテーパ形状にするとよい。この構成によれば、弾性防振部110のコイルばね111が伸長されるときにオイルOLがオリフィス孔126を通過することで発生する粘性抵抗と、弾性防振部110のコイルばね111が圧縮されるときにオイルOLがオリフィス孔126を通過することで発生する粘性抵抗と、を異ならせることができる。よって、弾性防振部110の伸長時と圧縮時とで減衰機構部120が発生する減衰力を変化させることができる。
【0043】
そのため、オリフィス孔126は、弾性防振部110の伸長方向A1側の径寸法D1が弾性防振部110の圧縮方向A2側の径寸法D2よりも大きいテーパ状とするとよい。この構成によれば、弾性防振部110が伸長される場合には、オリフィス孔126には、径寸法が小さい圧縮方向A2側から径寸法が大きい伸長方向A1側に向かってオリフィス孔126内にオイルOLが流入するようになり、つまり、オリフィス孔126内にオイルOLが流入しにくくなるから、より大きな減衰力を発生することができる。一方、弾性防振部110が圧縮される場合には、オリフィス孔126には、径寸法が大きい伸長方向A1側から径寸法が小さい圧縮方向A2側に向かってオリフィス孔126内にオイルOLが流入するようになり、つまり、オリフィス孔126内にオイルOLが流入しやすくなるから、より小さな減衰力を発生することができる。
【0044】
よって、このようなテーパ状のオリフィス孔126を有する防振ダンパー100は、水槽3のうち脱水動作においてドラム4の回転方向が下方向となる側を支持する防振ダンパーとして備えるとよい。この構成によれば、脱水動作においてドラム4から与えられる下方向の力を受けて弾性防振部110が圧縮されるときに、減衰機構部120が発生する減衰力を小さくすることができ、床に伝搬する振動を効果的に抑えることができる。また、圧縮された弾性防振部110が反発して伸長する場合には、減衰機構部120が発生する減衰力を大きくすることができ、水槽3の揺れを効果的に抑えることができる。また、水槽3の上方向への揺れを抑えることで、当該水槽3が外箱2に衝突することを回避できる。
【0045】
なお、水槽3を防振支持する2つの防振ダンパー100のうちの他方、この場合、洗濯機1の正面側から見て左側の防振ダンパー100については、オリフィス孔126をテーパ状に形成してもよいし、テーパ状に形成しなくてもよい。また、左側の防振ダンパー100についてオリフィス孔126をテーパ状に形成する場合には、弾性防振部110の伸長方向A1側の径寸法D1が弾性防振部110の圧縮方向A2側の径寸法D2よりも大きくなる構成とするとよい。
【0046】
(第2実施形態)
この実施形態では、制御装置10は、脱水動作を複数回繰り返す場合には、以下の第1制御または第2制御を実行するように構成されている。なお、本実施形態に係る洗濯機1において、脱水動作が複数回繰り返される場合には、N+1回目の脱水動作は、N回目の脱水動作の完了から所定時間が経過する前に実行されるように設定されているものとする。ここで、「N」は、1以上の整数である。
【0047】
このように設定される洗濯機1によれば、例えば、2回目の脱水動作は、1回目の脱水動作の完了から所定時間が経過する前に実行される。また、この所定時間は、脱水動作によりオイルOLに発生した気泡が自然に消泡されない程度の時間、つまり、脱水動作においてオイルOLに発生した泡が自然に消えることなく残存する程度の時間が設定される。よって、N+1回目、例えば、2回目の脱水動作は、N回目、例えば、1回目の脱水動作においてオイルOLに発生した泡が完全に消えないうちに実行されることになる。
【0048】
また、脱水動作を「複数回繰り返す」とは、同じ衣類に対して脱水動作を複数回繰り返す場合を含み、また、異なる衣類に対して脱水動作を行う場合も含む。即ち、例えば、使用者が、ある衣類に対して脱水動作が終了した後、その衣類をドラム4内から取り出し、別の衣類をドラム4内に投入して脱水動作を行うような場合も含まれる。このように、本実施形態において、脱水動作を「複数回繰り返す」とは、同じ衣類であるか異なる衣類であるかに関わらず、ドラム4内の濡れた衣類に対して脱水動作が複数回行われる場合を含む概念である。
【0049】
<1>第1制御
図10に例示するように、この制御は、N回目の脱水動作の完了から所定時間が経過する前にN+1回目の脱水動作が実行される場合には、N+1回目の脱水動作、例えば、2回目の脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T1を、N回目の脱水動作、例えば、1回目の脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T2よりも長くする制御である。但し、共振回転速度K1は、ドラム4の回転に伴い水槽3に発生する振動周波数が外箱2の共振周波数となる回転速度である。
【0050】
<2>第2制御
図11に例示するように、この制御は、N回目の脱水動作の完了から所定時間が経過する前にN+1回目の脱水動作を実行することに代えて、N+1回目以降、例えば、2回目以降の脱水動作を実行する前に、ドラム4の回転を停止させる停止時間を設けるようにした制御である。なお、停止時間の長さは、上述した所定時間、つまり、脱水動作によりオイルに発生した気泡が自然に消泡されない程度の時間を超える時間であれば、適宜変更して実施することができる。
【0051】
上述した第1制御によれば、N+1回目の脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T1を通常よりも長くするようにしたので、N回目の脱水動作において気泡が発生したとしても、N+1回目の脱水動作においてドラム4の回転速度が共振回転速度K1に到達する前に消泡、つまり、気泡による減衰力の低下を解消することができる。これにより、N+1回目の脱水動作において減衰力が不足するといった事態の発生を抑制することができる。
【0052】
また、上述した第2制御によれば、N+1回目以降の脱水動作を実行する前に、ドラム4の回転を停止させ、この状態で十分な時間をかけて消泡させるようにしたので、N回目の脱水動作において気泡が発生したとしても、N+1回目の脱水動作が開始される前に消泡、つまり、気泡による減衰力の低下を解消することができる。これにより、N+1回目の脱水動作において減衰力が不足するといった事態の発生を抑制することができる。
【0053】
特に、所定の時間内に脱水動作を連続的に複数回繰り返す場合には、各回の脱水動作の間の時間が短くなるため、複数回の脱水動作の間に十分な消泡時間を確保できないおそれがある。そのため、上述した第1制御または第2制御の何れかの制御を実行することにより、十分な消泡を可能にすることができ、所定の時間内に複数回の脱水動作が繰り返される場合であっても各回の脱水動作において必要な減衰力を発揮することができる。
【0054】
なお、第1制御または第2制御は、例えば3回目以降の複数回目の脱水動作から行うようにしてもよい。即ち、例えば、1回目の脱水動作では、気泡の発生が少なかったり、脱水動作の時間が短かったりする場合があり、このような場合には、必ずしも消泡を行わなくてもよい。そのため、消泡が不可欠となる程の気泡が発生し始める例えば3回目以降の脱水動作から第1制御または第2制御を行うようにすることで、これらの制御が無用に行われてしまうことを回避できる。
【0055】
(第3実施形態)
この実施形態では、制御装置10は、洗い動作の後に、脱水動作、シャワーすすぎ動作、シャワー後脱水動作、ためすすぎ動作、最終脱水動作を順に実行するように構成されている。また、洗濯機1は、図示しない循環機構を備えている。この循環機構は、水槽3に連通する循環経路と当該循環経路の途中に設けられている循環ポンプを備えている。制御装置10は、循環ポンプを駆動することにより水槽3内の水を循環経路を介して循環させて水槽3内にシャワー状に吐出できるように構成されている。
【0056】
シャワーすすぎ動作は、有水回転動作の一例であり、上述した循環機構によって水槽3内に水をシャワー状に供給しながらドラム4を正転方向R1および逆転方向R2に切り替えて回転させることにより、ドラム4内の衣類をすすぐ動作である。シャワー後脱水動作は、シャワーすすぎ動作の後に実行される高速回転動作の一例であり、ドラム4を通常速度よりも高速度で回転させることにより、ドラム4内の衣類を脱水する動作である。ためすすぎ動作は、水槽3内に所定量の水を溜めた状態でドラム4を正転方向R1および逆転方向R2に切り替えて回転させることにより、ドラム4内の衣類をすすぐ動作である。最終脱水動作は、運転の最終段階で実行される脱水動作である。
【0057】
そして、制御装置10は、上述したシャワー後脱水動作を実行する場合には、以下の第1制御または第2制御を実行する。
【0058】
<1>第1制御
図12に例示するように、この制御は、シャワーすすぎ動作後のシャワー後脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T1を、洗い動作後の脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T2よりも長くする制御である。但し、共振回転速度K1は、ドラム4の回転に伴い水槽3に発生する振動周波数が外箱2の共振周波数となる回転速度である。
【0059】
<2>第2制御
図13に例示するように、この制御は、シャワーすすぎ動作後のシャワー後脱水動作を実行する前に、ドラム4の回転を停止させる停止時間を設ける制御である。なお、停止時間の長さは、適宜変更して実施することができる。
【0060】
上述した第1制御によれば、シャワーすすぎ動作後のシャワー後脱水動作においてドラム4の回転速度を所定の共振回転速度K1まで上昇させる時間T1を通常よりも長くするようにしたので、洗い動作後の脱水動作において気泡が発生したとしても、シャワー後脱水動作においてドラム4の回転速度が共振回転速度K1に到達する前に消泡、つまり、気泡による減衰力の低下を解消することができる。これにより、シャワー後脱水動作において減衰力が不足するといった事態の発生を抑制することができる。
【0061】
また、上述した第2制御によれば、シャワーすすぎ動作後のシャワー後脱水動作を実行する前に、ドラム4の回転を停止させるようにしたので、洗い動作後の脱水動作において気泡が発生したとしても、シャワー後脱水動作が開始される前に消泡、つまり、気泡による減衰力の低下を解消することができる。これにより、シャワー後脱水動作において減衰力が不足するといった事態の発生を抑制することができる。
【0062】
特に、上述したシャワーすすぎ動作の時間は短い場合があり、シャワーすすぎ動作前の脱水動作とシャワー後脱水動作との間に十分な消泡時間を確保できないおそれがある。そのため、上述した第1制御または第2制御の何れかの制御を実行することにより、十分な消泡を可能にすることができ、シャワー後脱水動作において必要な減衰力を発揮することができる。
【0063】
(第4実施形態)
図14に例示するように、制御装置10には、さらに振動検知センサ14が接続されている。振動検知センサ14は、運転状態検知部の一例であり、水槽3に発生する振動を検知する。振動検知センサ14は、例えば、水槽3の加速度を検知する加速度センサによって構成することができる。
【0064】
そして、制御装置10は、脱水動作を継続するか否かを振動検知センサ14による検知結果と所定の閾値Sとの比較に基づいて判定するように構成されている。即ち、制御装置10は、振動検知センサ14によって検知される水槽3の振動の大きさが閾値Sよりも小さい場合には、そのまま脱水動作を継続することを許容し、振動検知センサ14によって検知される水槽3の振動の大きさが閾値Sを超える場合には、脱水動作を停止する。
【0065】
そして、制御装置10は、所定時間内に脱水動作を複数回実行する場合にあって2回目以降の複数回目に実行する場合における閾値S1として、所定時間内に脱水動作を1回だけ実行する場合における閾値S2よりも小さい値を設定している。この所定時間は、脱水動作によりオイルOLに発生した気泡が自然に解消されない程度の時間、つまり、脱水動作においてオイルOLに発生した泡が自然に消えることなく残存する程度の時間が設定される。この構成によれば、所定時間内に脱水動作が複数回実行される場合、つまり、気泡が消泡されないまま次の脱水動作が実行される場合には、より厳しい判定条件に基づき脱水動作を停止させることができる。つまり、気泡が消泡されず十分な減衰力を発揮できないような場合には、脱水動作を停止させることができる。また、早期に脱水動作を停止させて、気泡の消泡を図ることができる。なお、補足として説明するが、所定時間内に脱水動作を複数回実行する場合にあって1回目の脱水動作における閾値S1としては、所定時間内に脱水動作を1回だけ実行する場合における閾値S2と同じ値が設定される。但し、所定時間内に脱水動作を複数回実行する場合にあって1回目の脱水動作における閾値S1として、所定時間内に脱水動作を1回だけ実行する場合における閾値S2と異なる値を設定することは許容される。
【0066】
(第5実施形態)
図15に例示するように、複数のオリフィス孔126は、開口面積が異なっていてもよい。このとき、開口面積が最も大きいオリフィス孔126の径寸法は、開口面積が最も小さいオリフィス孔126の径寸法の少なくとも1.3倍以上となるように設定するとよい。
【0067】
このように開口面積が異なるオリフィス孔126を組み合わせることによって、減衰機構部120が発生する減衰力を一層きめ細かく調整することができる。また、複数のオリフィス孔126の開口面積の差を大きくすることにより、つまり、少なくとも1.3倍以上の差となるように構成することにより、洗濯機1に要求される減衰特性、つまり、脱水動作の進行に伴い減衰力が大から小に切り替わる特性を有する防振ダンパー100を一層実現しやすくできる。
【0068】
(その他の実施形態)
なお、本実施形態は、上述した複数の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、上述した複数の実施形態を適宜組み合わせて実施することができる。
【0069】
また、ドラム4の低速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力は、ドラム4の高速回転時において減衰機構部120が発生する減衰力の少なくとも1.4倍以上であればよい。また、減衰機構部120は、シリンダ121内に空気ARを封入しない構成としてもよい。このようにシリンダ121内に空気ARが封入されていない構成であっても、少なくともキャビテーションにより気泡が発生し得るため、起動時と定常時における減衰力の差Dを大きくすることが可能である。
【0070】
また、1つのピストン123に設けられるオリフィス孔126の数は、少なくとも1つ以上であればよい。また、オリフィス孔126は、テーパ状であってもよいし、テーパ状でなくてもよい。また、オリフィス孔126をテーパ状に構成する場合には、1つのピストン123について、少なくとも1つ以上のオリフィス孔126をテーパ状にすればよい。また、1つのピストン123に設けられる複数のオリフィス孔126の開口面積を異ならせる場合には、それぞれのオリフィス孔126の開口面積を異ならせてもよいし、少なくとも1つ以上のオリフィス孔126の開口面積を他のオリフィス孔126の開口面積と異ならせてもよい。
【0071】
振動検知センサ14は、加速度センサで構成されるものに限らず、例えば、ドラムモータ11の回転軸の回転速度を検知する回転検知センサなど、洗濯機1の運転状態を検知できるものであれば種々のセンサ類を適用することができる。
【0072】
また、本実施形態は、防振装置を備える洗濯機であれば、いわゆる横軸型のドラム式洗濯機以外のタイプの洗濯機にも適用することができる。また、本実施形態は、乾燥機能を有する洗濯機にも適用することができる。また、本実施形態は、乾燥機能を有しない洗濯機にも適用することができる。また、本実施形態は、例えば、衣類の消臭、脱臭、除菌、漂白など、衣類に対して何らかの処理を施す装置であれば、種々の衣類処理装置に適用することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
図面中、1は洗濯機(衣類処理装置)、2は外箱、3は水槽(衣類処理槽)、4はドラム(回転槽)、14は振動検知センサ(運転状態検知部)、100は防振ダンパー(防振装置)、110は弾性防振部、111はコイルばね(弾性部材)、120は減衰機構部、121はシリンダ、122はシャフト、123はピストン、126はオリフィス孔を示す。