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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089815
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240627BHJP
   C25F 3/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/304 646
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
C25F3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205262
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】514318448
【氏名又は名称】岩津 春生
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩津 春生
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA73
5F157AB02
5F157AB33
5F157BB22
5F157BB53
5F157BB62
5F157BE23
5F157BE43
5F157CF04
5F157CF44
5F157CF46
5F157CF48
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB03
5F157DB18
(57)【要約】
【課題】基板の洗浄を適切に行う。
【解決手段】基板処理方法であって、基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、
前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、
前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を有することを特徴とする、基板処理方法。
【請求項2】
前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記電解エッチング工程は、
前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を有することを特徴とする、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記配置工程において、
側面視において、一対の前記直接電極を隣接して配置し、
側面視において、一対の間接電極を前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置し、
前記対向電極を前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置することを特徴とする、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させることを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させることを特徴とする、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板処理装置であって、
基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行う電解エッチング部と、
前記処理液中に静電界を形成する静電界形成部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、
前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、
前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を実行するように、電解エッチング部と前記静電界形成部を制御することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化するように、前記電解エッチング部を制御することを特徴とする、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記電解エッチング工程において、
前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を実行することを特徴とする、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
側面視において、一対の前記直接電極が隣接して配置され、
側面視において、一対の間接電極が前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置され、
前記対向電極が前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置されることを特徴とする、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、
前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させることを特徴とする、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させることを特徴とする、請求項14に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば半導体基板(以下、「基板」という。)を清浄な状態に保つため、各々の処理工程の前後において、基板上のパーティクル(異物)を除去する洗浄工程が行われている。
【0003】
基板の洗浄工程では、例えば基板上に洗浄液を供給して、当該基板を洗浄する。この洗浄液には、パーティクルの高い除去力が求められる。特に近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、基板上に形成するパターンが微細化しており、より微細なパーティクルを除去する必要がある。
【0004】
そこで従来、種々の洗浄液の開発が進められている。例えば特許文献1には、金属配線の腐食を抑制するためのリソグラフィー用の洗浄液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-124948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板に付着するパーティクルには、例えば金属や非金属等、様々な種類の粒子が含まれる。この点、従来のように洗浄液のみで、これら複数種のパーティクルをすべて除去するのは困難である。したがって、従来の基板の洗浄工程には改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板の洗浄を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、基板処理方法であって、基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、電解エッチング工程において表面に通電膜が無い基板においても非接触で電解エッチングを行いエッチング能力を向上させて基板から粒子を離脱させ、電界形成工程において処理液に強電場と弱電場を形成し、粒子移動工程において高誘電率粒子を強電場で収集し、低誘電率粒子を弱電場で収集することができる。したがって、洗浄液に静電界を形成することで、基板からパーティクルである粒子を除去して、当該基板を適切に洗浄することができる。
【0010】
前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成してもよい。
【0011】
前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化してもよい。
【0012】
前記基板処理方法は、前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、前記直接電極は絶縁膜で覆われ、前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、前記間接電極は絶縁膜で覆われ、前記対向電極は絶縁膜で覆われていてもよい。
【0013】
前記電解エッチング工程は、前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を有していてもよい。
【0014】
前記配置工程において、側面視において、一対の前記直接電極を隣接して配置し、側面視において、一対の間接電極を前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置し、前記対向電極を前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置してもよい。
【0015】
前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させてもよい。
【0016】
前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させてもよい。
【0017】
別な観点による本発明は、基板処理装置であって、基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行う電解エッチング部と、前記処理液中に静電界を形成する静電界形成部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を実行するように、電解エッチング部と前記静電界形成部を制御することを特徴としている。
【0018】
前記制御部は、前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成するように、前記静電界形成部を制御してもよい。
【0019】
前記制御部は、前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化するように、前記電解エッチング部を制御してもよい。
【0020】
前記基板処理装置は、前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、前記直接電極は絶縁膜で覆われ、前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、前記間接電極は絶縁膜で覆われ、前記対向電極は絶縁膜で覆われていてもよい。
【0021】
前記制御部は、前記電解エッチング工程において、前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を実行してもよい。
【0022】
側面視において、一対の前記直接電極が隣接して配置され、側面視において、一対の間接電極が前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置され、前記対向電極が前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置されてもよい。
【0023】
前記制御部は、前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させてもよい。
【0024】
前記制御部は、前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板の洗浄を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】基板処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】基板処理装置の構成の概略を示す平面図である。
図3】給排液機構の構成の概略を示す平面図である。
図4】電解エッチング工程の充電時において、電源によって負パルス電圧を印加すると共に、直接電極と間接電極の接続を切断した様子を示す説明図である。
図5】電解エッチング工程の放電時において、電源による負パルス電圧の印加を停止し、直接電極と間接電極を接続した様子を示す説明図である。
図6】誘電泳動工程において、電源によって正パルス電圧と負パルス電圧を繰り返し印加すると共に、直接電極と間接電極の接続を切断した様子を示す説明図である。
図7】洗浄液に形成される電場と、高誘電率粒子及び低誘電率粒子の移動を示す説明図である。
図8】誘電泳動工程において、電源によって正パルス電圧と負パルス電圧を繰り返し印加すると共に、基板ステージと電源の接続を切断した様子を示す説明図である。
図9】洗浄液に形成される電場と、高誘電率粒子及び低誘電率粒子の移動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法は、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0028】
<基板処理装置の構成>
先ず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について説明する。図1は、基板処理装置1の概略を示す縦断面図である。図2は、基板処理装置1の概略を示す平面図である。基板処理装置1では、基板処理として、基板W上のパーティクル(異物)を除去する洗浄処理を行う。基板Wは、例えば半導体ウェハ、ガラス基板等である。また、パーティクルは基板W上に付着した粒子である。この粒子には、後述する洗浄液Lの誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子と、洗浄液Lの誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子が含まれる。
【0029】
基板処理装置1は、基板Wを保持する基板ステージ10を有している。基板ステージ10と基板Wは容量結合している。基板ステージ10は絶縁膜11に覆われ、後述する洗浄液Lに露出していない。なお、絶縁膜11は基板Wに設けられていてもよい。基板ステージ10は、後述する第2のスイッチ51を介して電源40に接続可能に構成されている。なお、基板ステージ10は、本発明における対向電極として機能する。
【0030】
基板ステージ10に保持された基板W上には、処理液としての洗浄液Lが供給され、当該洗浄液Lの液パドルが形成されている。本実施形態では、後述するように洗浄液Lに静電界を形成することで洗浄処理が行われるため、洗浄液Lの種類は特に限定されないが、例えば有機物分解及び金属除去用にはSPM(HSO/H)が用いられる。
【0031】
基板ステージ10(基板W)の上方には、当該基板Wに対向して直接電極20と間接電極30が設けられている。直接電極20と間接電極30はそれぞれ、少なくとも一部が洗浄液Lに浸漬している。本実施形態において、直接電極20は平面視において環状形状を有し、側面視において一対の直接電極20、20は隣接して配置されている。また、間接電極30は平面視において環状形状を有し、側面視において一対の間接電極30、30は、一対の直接電極20、20を挟むように、当該一対の直接電極20、20の外側に配置されている。なお、図1及び図2においては、一対の直接電極20、20と一対の間接電極30、30を図示しているが、実際には、複数対の直接電極20、20と複数対の間接電極30、30が基板Wに対向して配置されている。
【0032】
直接電極20は絶縁膜21に覆われ、洗浄液Lに露出していない。直接電極20の表面には、洗浄液Lに露出する露出電極22が設けられている。露出電極22は、後述する第1のスイッチ50を介して間接電極30と接続可能に構成されている。直接電極20と露出電極22は一体に構成され、絶縁膜容量と電気二重層容量の直列接続を構成している。また、露出電極22は平面視において環状形状を有し、直接電極20の内側に配置されている。すなわち側面視において、一対の直接電極20、20の内側で、一対の露出電極22、22は対向して配置されている。
【0033】
直接電極20は、後述する電源40に接続されている。すなわち、露出電極22は、コンデンサを介して電源40に接続された状態である。
【0034】
間接電極30は、絶縁膜31で覆われている。
【0035】
直接電極20及び露出電極22と間接電極30は、昇降機構(図示せず)によって、洗浄液Lの液パドルが壊れない範囲で昇降自在に構成されている。また、直接電極20及び露出電極22と間接電極30は、水平移動機構(図示せず)によって、洗浄液Lの液パドルが壊れない範囲で水平方向に移動自在に構成されている。これにより、直接電極20及び露出電極22と間接電極30を、基板Wに対して任意の位置に配置することができる。
【0036】
間接電極30と基板ステージ10には、電源40が接続されている。電源40は、正極性のパルス電圧(以下、「正パルス電圧」という。)と負極性のパルス電圧(以下、「負パルス電圧」という。)を、間接電極30と基板ステージ10に印加可能なパルス電源である。すなわち、正パルス電圧を印加する場合は、間接電極30を陽極とし、基板ステージ10を陰極としてパルス電圧を印加する場合である。そして、正パルス電圧を印加すると、洗浄液Lに正静電界が形成される。負パルス電圧を印加する場合は、間接電極30を陰極とし、基板ステージ10を陽極としてパルス電圧を印加する場合である。そして、負パルス電圧を印加すると、洗浄液Lに負静電界が形成される。
【0037】
直接電極20の露出電極22と間接電極30との間には、第1のスイッチ50が設けられている。第1のスイッチ50は、露出電極22と間接電極30の接続と切断を切り替える。第1のスイッチ50の切り替えは、制御部70によって制御される。
【0038】
基板ステージ10と電源40との間には、第2のスイッチ51が設けられている。第2のスイッチ51は、基板ステージ10と電源40の接続と切断を切り替える。第2のスイッチ51の切り替えは、制御部70によって制御される。
【0039】
なお、本実施形態では、基板ステージ10(対向電極)、直接電極20及び間接電極30、電源40、第1のスイッチ50及び第2のスイッチ51が、本発明における電解エッチング部を構成する。また、基板ステージ10(対向電極)、間接電極30及び電源40が、本発明における静電界形成部を構成する。
【0040】
図3(後述する図7及び図9)に示すように直接電極20、露出電極22及び間接電極30の上方には、洗浄液Lを供給し、且つ洗浄液Lを排出する給排液機構60が設けられている。給排液機構60は、洗浄液Lを供給する給液孔61と、洗浄液Lを排出する排液孔62とを有している。給液孔61は、間接電極30の外側において、複数箇所、例えば4箇所に形成されている。なお、給液孔61は、間接電極30を貫通するように形成されていてもよい。給液孔61は、洗浄液Lを貯留して供給する洗浄液供給源(図示せず)に連通している。排液孔62は、例えば露出電極22の内側領域に対応して形成され、当該露出電極22の内側領域から洗浄液Lを排出する。排液孔62は、洗浄液Lを吸引して排出するポンプ(図示せず)に連通している。なお、図1では、図面が煩雑になるのを避けるため、給排液機構60の図示を省略している。
【0041】
かかる場合、給排液機構60を用いて洗浄液Lの供給と排出を共に行うことができるので、給排液を効率よく行うことができる。また、洗浄液Lを基板W上から排出する際、電極(直接電極20、露出電極22及び間接電極30)と基板W間において、気液界面の衝撃が無く、洗浄液Lは水平に移動する。このため、例えば基板W上にパターンが形成されている場合、当該パターンに作用する洗浄液Lの表面張力が小さくなり、その結果、パターン倒れを抑制することができる。
【0042】
なお、洗浄液Lを供給及び排出する手段は給排液機構60に限定されるものではなく、例えばノズル(図示せず)を用いてもよい。かかる場合、基板ステージ10で基板Wを保持した後、直接電極20(及び露出電極22)と間接電極30を配設し、さらに給排液機構60の給液孔61から洗浄液Lを供給してもよい。或いは、基板ステージ10で基板Wを保持した後、給排液機構60の給液孔61から基板W上に洗浄液Lを供給し、さらに直接電極20と間接電極30を配設してもよい。
【0043】
図1に示すように基板処理装置1は制御部70を有している。制御部70は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理装置1における基板Wの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部70にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0044】
<洗浄処理方法>
次に、以上のように構成された基板処理装置1を用いた基板Wの洗浄処理について説明する。基板Wに付着する粒子には、例えば、フォトリソグラフィ処理で用いられるレジストや、シリコンや金属配線を研削した際の削り屑、外部からの浮遊パーティクル等、種々の粒子が含まれるが、本実施形態ではこれら粒子を基板Wから除去する。具体的に基板Wの洗浄処理は、電解エッチングを行って基板W上の粒子を当該基板Wから離脱させる電解エッチング工程と、洗浄液L中で粒子を誘電泳動させて、当該粒子を収集する誘電泳動工程と、を有している。
【0045】
(電解エッチング工程)
電解エッチング工程では、先ず、図4に示すように第1のスイッチ50によって露出電極22と間接電極30の接続を切断し、第2のスイッチ51によって基板ステージ10と電源40を接続する。また、電源40によって、間接電極30を陰極とし、基板ステージ10を陽極として、間接電極30に負パルス電圧Vを印加して、洗浄液Lに負静電界を形成する。そうすると、間接電極30に負の電荷が蓄積され、基板ステージ10に正の電荷が蓄積される。なお、以下の説明において、このように電極に電荷が蓄積される状態を「充電」という場合がある。
【0046】
この充電時では(後述する放電時以外では)、直接電極20と基板ステージ10が接続されているので、直接電極20と基板ステージ10は等電位となる。このため、露出電極22と基板ステージ10における基板Wはほぼ等電位の陽極同士となり、また間接電極30は陰極のため、電荷交換(酸化還元反応)を抑制することができる。
【0047】
このように電解反応を抑制することで、例えば基板W上に金属配線が形成されている場合、当該金属配線の腐食を抑制することができる。或いは、例えば基板W上に金属配線を形成する場合、当該基板Wの表面には例えばコバルトめっきからなるバリア膜(下地膜)が形成されているが、この下地膜の金属のイオン化傾向が、金属配線のイオン化傾向より小さい場合、無電解の置換めっきが行われ、当該下地膜が剥がれる場合がある。この点、上述したように電解反応を抑制することで、無電界時の置換めっきを抑制することができる。
【0048】
そして、負パルス電圧Vの印加と、第1のスイッチ50による露出電極22と間接電極30の切断と、第2のスイッチ51による基板ステージ10と電源40の接続は、間接電極30と基板ステージ10に十分な電荷が蓄積されるまで、すなわち満充電されるまで行われる。上述したように充電時には、露出電極22と基板Wにおける電荷交換が抑制される。また、間接電極30と基板ステージ10との間に負パルス電圧Vを印可する際の負静電界を高くすると水の電気分解が進行することが懸念されるが、本実施形態では水の電気分解も抑制されるので、上記負静電界を高くすることができる。
【0049】
その後、図5に示すように第1のスイッチ50によって露出電極22と間接電極30を接続し、第2のスイッチ51によって基板ステージ10と電源40の接続を維持する。また、電源40による負パルス電圧Vの印加を停止する。そうすると、間接電極30に蓄積された負の電荷が露出電極22に移動し、露出電極22側で還元反応が起きる。これに伴い、基板ステージ10側の基板Wの表面では酸化反応が起きる。そして、基板W上のパーティクルのうち、金属、例えば銅(Cu)の粒子はイオン化する。金属イオン、例えば銅イオン(Cu)は、基板W上から離反し、洗浄液L中に溶解する。なお、以下の説明において、以上の反応を「放電」という場合がある。
【0050】
なお、例えば1回の放電で十分な粒子が基板Wから離脱しない場合、上述した充電と放電は繰り返し行われてもよい。
【0051】
本実施形態では、直接電極20が絶縁膜21で覆われ、間接電極30が絶縁膜31で覆われ、基板ステージ10が絶縁膜11で覆われており、これら直接電極20と間接電極30は洗浄液Lに接触しておらず、基板ステージ10は基板Wの表面に接触していない。電解エッチング工程では、このように表面に通電膜が無い基板Wにおいても非接触で電解エッチングが行われ、印加電圧を調整することでエッチング能力を向上させて、基板Wから粒子が離脱する。
【0052】
(誘電泳動工程)
上述した電解エッチング工程において、充電と放電を繰り返し行い、正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加して、洗浄液Lに正静電界と負静電界を繰り返し形成する。なお、正パルス電圧Vを印加する場合、充電時は第1のスイッチ50によって露出電極22と間接電極30の接続を切断し、放電は不要である。
【0053】
かかる場合、基板W上のパーティクルのうち、非金属の粒子は、基板Wから離脱し洗浄液L中に浮遊する。これら洗浄液L中に浮遊する粒子には、洗浄液Lの誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子が含まれる。低誘電率粒子は、例えば有機物(レジスト残渣)や、電解エッチングされたシリコン酸化物(SiO)等である。なお、以下の説明において、このように粒子が移動する状態を「誘電泳動」という場合がある。
【0054】
誘電泳動では、洗浄液Lの誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子が、基板Wの表面の強電場に残存する。この高誘電率粒子には、金属の粒子のうちイオン化されなかった金属や、その他微細化等で高誘電率化した粒子等が含まれる。但し、洗浄液Lの誘電率は80~100程度であり、誘電率が80より大きくなる高誘電率粒子は少ない。
【0055】
次に、誘電泳動工程では、基板Wから離脱した高誘電率粒子と低誘電率粒子を、洗浄液L中で誘導泳動させて収集する。より詳細には、誘電泳動工程では、主として低誘電率粒子を捕集する工程と、主として高誘電率粒子を捕集する工程の、2段階で行う。電解エッチング工程では、上述したように基板W上の金属の粒子はイオン化するが、この金属イオンは洗浄液L中に溶解しているため、基板Wへの再付着はなく、後述する間接電極30側(直接電極20と間接電極30の間)の強電場ES1において直接電極20に還元される。なお、本実施形態の誘電泳動工程は、本発明における電界形成工程と粒子移動工程を含む。
【0056】
先ず、誘電泳動工程において主として低誘電率粒子を捕集する際には、図6に示すように第1のスイッチ50によって露出電極22と間接電極30の接続を切断し、第2のスイッチ51によって基板ステージ10と電源40の接続を維持する。また、電源40によって、正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加する。すなわち、正パルス電圧Vを印加する場合は、間接電極30を陽極とし、基板ステージ10を陰極としてパルス電圧を印加し、負パルス電圧Vを印加する場合は、間接電極30を陰極とし、基板ステージ10を陽極としてパルス電圧を印加する。そして、電源40によって正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加することで、洗浄液Lに正静電界と負静電界を繰り返し形成する。
【0057】
図7は、洗浄液Lに形成される電場と、高誘電率粒子P及び低誘電率粒子Pの移動を示す説明図である。本実施形態では、高誘電率粒子P及び低誘電率粒子Pの誘電泳動が起きて、低誘電率粒子Pは基板Wの表面から離脱して洗浄液L中に浮遊し、高誘電率粒子Pは基板Wの表面に残存する。なお、この高誘電率粒子Pの離脱又は残存は、例えば洗浄液LのpHに依存する。但し、このように高誘電率粒子Pが基板Wの表面に残存する場合でも、後述するように誘電泳動によって捕集される。
【0058】
また、本実施形態では、間接電極30の下端が直接電極20及び露出電極22の下端より基板ステージ10側(基板W)側に位置するように、間接電極30と直接電極20及び露出電極22を配置する。また、間接電極30と基板ステージ10が近接するように、間接電極30を配置する。さらに、間接電極30は、後述するように高誘電率粒子Pを捕集するため、鉛直方向に延伸する鉛直部30aと、鉛直部30aから直接電極20側に水平方向に延伸する水平部30bとを有している。なお、間接電極30側の強電場で高誘電率粒子Pを捕集することができれば、水平部30bを省略することができる。
【0059】
図7に示すように洗浄液Lに静電界を形成すると、当該洗浄液Lに、静電界の強度が相対的に大きい強電場Eと、静電界の強度が相対的に小さい弱電場Eとが形成される。なお、図7中の細線は、等電位線を示す。
【0060】
弱電場Eは、一対の直接電極20、20間の洗浄液L、詳細には一対の露出電極22、22間の洗浄液Lに形成される。一方、強電場ES1は、間接電極30の鉛直部30aと水平部30bで囲まれる洗浄液Lに形成される。また、基板Wの表面には強電場が形成され、特に間接電極30と基板Wが近接して配置されているため、当該基板Wの表面において間接電極30と基板Wの間には強電場ES2が形成される。
【0061】
そして、洗浄液Lに正静電界と負静電界を繰り返し形成することで、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを誘導泳動させることができる。低誘電率粒子Pは、電場の強いところから弱いところに移動する性質がある。このため、低誘電率粒子Pは、露出電極22、22間の弱電場Eに移動し、当該弱電場Eで捕捉される。この際、直接電極20と基板ステージ10の間の洗浄液Lには電場強度が中間の中間領域があるが、この中間領域に浮遊する低誘電率粒子Pは、洗浄液Lに正静電界と負静電界を繰り返し形成することによって弱電場Eに移動する。
【0062】
また、洗浄液Lに浮遊する高誘電率粒子Pは、電場の弱いところから強いところに移動する性質がある。このため、高誘電率粒子Pは、間接電極30側の強電場ES1に移動し、当該強電場ES1で捕捉される。また、基板Wの表面に残存する高誘電率粒子Pは、特に間接電極30と基板Wの間の強電場ES2にも移動する。
【0063】
次に、誘電泳動工程において主として高誘電率粒子Pを捕集する際には、図8に示すように第1のスイッチ50にって露出電極22と間接電極30の切断を維持し、第2のスイッチ51によって基板ステージ10と電源40の接続を切断する。また、電源40によって、正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加する。そして、電源40によって正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加することで、洗浄液Lに正静電界と負静電界を繰り返し形成する。そうすると、基板Wの表面はバルク電位となり弱電場となる。この際、印加電圧、印加周波数、印加電圧の波形の立上りと立下り等を制御して、弱電場を適切に形成する。なお、この正パルス電圧Vと負パルス電圧Vの繰り返し印加に代えて、正パルス電圧Vのみを印加すること、負パルス電圧Vのみを印加すること、或いは交流を用いることも可能である。
【0064】
また、図9に示すように直接電極20及び露出電極22と間接電極30を上昇させる。この際、基板W上の洗浄液Lの液パドルが壊れない範囲で上昇させる。そうすると、間接電極30と基板Wの間の距離が大きくなり、基板Wの表面が弱電場となり、特に間接電極30と基板Wの間も弱電場となる。この状態で、上述したように洗浄液Lに正パルス電圧Vと負パルス電圧Vを繰り返し印加して正静電界と負静電界を繰り返し形成することで、基板Wの表面に残存する高誘電率粒子Pは、当該基板Wの表面から離脱し、間接電極30側の強電場ES1に移動して、当該強電場ES1で捕捉される。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、電解エッチング工程において基板Wから一部の高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを離脱させ、誘電泳動工程において高誘電率粒子Pを強電場ES1で収集し、低誘電率粒子Pを弱電場Eで収集することができる。そして、このように集塵することで、高誘電率粒子Pを強電場ES1で収集が基板Wに再付着することを抑制することができる。したがって、従来のように洗浄液Lの種類に依存することなく、洗浄液Lに静電界を形成することで、基板Wからパーティクルである粒子を除去して、当該基板Wを適切に洗浄することができる。そしてこのように静電界を用いて基板Wを洗浄することは、従来にない極めて斬新なものである。
【0066】
ここで、従来のように洗浄液のみで様々な種類の粒子を基板から除去する場合、粒子の種類に応じて洗浄液を変更する必要がある。また、効率的に粒子を除去するため、高濃度の洗浄液を使用する必要もある。
【0067】
この点、本実施形態では、洗浄液Lに静電界を形成し、印加電圧を調整することでエッチング能力を向上させて、基板Wから粒子を除去することができるので、様々な種類の洗浄液Lの洗浄能力を高めることができる。また、使用する洗浄液Lを高濃度から低濃度に変更することも可能である。このため、基板Wの洗浄処理にかかるコストを低減することができる。
【0068】
また、例えば公知文献1(吉田暁ら著 「電気泳動と誘電泳動を併用した2種類分子の分離」 Q315 SCEJ 74th Anuual Meeting(Yokohama、2009))に記載されているように、従来の誘電泳動は、交流電圧を印加することにより行われていた。すなわち、本実施形態のように洗浄液Lに形成された静電界を用いるのではなく、従来は直接電界を用いて誘電泳動を行っていた。かかる場合、洗浄対象の基板に電圧を印加するための電極(通電膜等)が必要になり、このような電極が無い基板の洗浄には、従来の誘電泳動の技術を適用することはできない。
【0069】
この点、本実施形態では、洗浄液Lに形成された正静電界と負静電界を用いて高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを誘導泳動させるので、基板Wに電極(通電膜等)が不要で、あらゆる基板Wを洗浄することができる。
【0070】
また、上記公知文献1や公知文献2(中野道彦ら著 「DNA結合に伴う誘電体微粒子の誘電泳動特性変化の測定」 静電気学会誌 40、1 (2016)20-25)の記載によれば、誘電泳動において、粒子に作用する誘電泳動力は、印加される電圧の2乗に比例する。このため、粒子の移動速度を上げるためには、電圧を高くすることが好ましい。
【0071】
この点、本実施形態では、洗浄液Lに静電界を形成するため、露出電極22と基板ステージ10における電荷交換(酸化還元反応)を抑制することができる。そうすると、静電界の強度を高くして、電源40から印加する電圧も高くすることができる。このため、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pに作用する誘電泳動力を大きくして、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pの移動速度を上げることができるので、当該高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを短時間で収集することができる。また、静電界の強度を高くすると、直接電極20と基板ステージ10の間の中間領域を狭くすることができ、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを適切に移動させることができる。以上のように本実施形態によれば、洗浄液Lに形成された静電界を用いるからこそ、高い電圧を印加して、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを適切に収集することができる。
【0072】
なお、公知文献2の記載によれば、粒子の誘電率は粒子径に関係し、また当該粒子の誘電率は印加周波数にも関係するため、本実施形態において周波数の適正化を行うことが好ましい。
【0073】
また、従来の基板の洗浄では、基板上の粒子を洗浄液中に浮遊させた後、これら洗浄液中の粒子を除去するため、基板上にリンス液や純水を供給し、基板の外部に振り切って洗浄する、いわゆるスピン洗浄を行っていた。かかる場合、リンス液や純水が大量に必要であった。
【0074】
この点、本実施形態では、静電界を用いて高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを適切に収集することができるので、従来のリンス液や純水の使用量を大幅に低減することができる。
【0075】
本発明では、洗浄液Lに強電場Eと弱電場Eを形成し、高誘電率粒子Pと低誘電率粒子Pを誘電泳動させて収集していたが、この集塵構造(集塵機構)は上記実施形態に限定されない。すなわち、基板処理装置1の構成部材は上記実施形態の例に限定されず、洗浄液Lに強電場Eと弱電場Eを形成できれば任意の集塵構造を取り得る。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0077】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0078】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)基板処理方法であって、
基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、
前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、
前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を有することを特徴とする、基板処理方法。
(2)前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成することを特徴とする、前記(1)に記載の基板処理方法。
(3)前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化することを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の基板処理方法。
(4)前記処理液中に直接電極、露出電極、間接電極及び対向電極を配置する配置工程を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の基板処理方法。
(5)前記電解エッチング工程は、
前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を有することを特徴とする、前記(4)に記載の基板処理方法。
(6)前記配置工程において、
側面視において、一対の前記直接電極を隣接して配置し、
側面視において、一対の間接電極を前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置し、
前記対向電極を前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置することを特徴とする、前記(4)又は(5)に記載の基板処理方法。
(7)前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させることを特徴とする、前記(6)に記載の基板処理方法。
(8)前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させることを特徴とする、前記(6)又は(7)に記載の基板処理方法。
(9)基板処理装置であって、
基板上に供給された処理液を用いて電解エッチングを行う電解エッチング部と、
前記処理液中に静電界を形成する静電界形成部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記処理液を用いて電解エッチングを行い、前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる電解エッチング工程と、
前記処理液中に静電界を形成し、且つ、前記静電界の強度が相対的に大きい強電場と、前記静電界の強度が相対的に小さい弱電場とを形成する電界形成工程と、
前記静電界によって、前記処理液の誘電率より高い誘電率を有する高誘電率粒子を前記強電場に移動させ、且つ、前記処理液の誘電率より低い誘電率を有する低誘電率粒子を前記弱電場に移動させる粒子移動工程と、を実行するように、電解エッチング部と前記静電界形成部を制御することを特徴とする、基板処理装置。
(10)前記制御部は、前記電界形成工程において、前記処理液中に正静電界と負静電界を繰り返し形成するように、前記静電界形成部を制御することを特徴とする、前記(9)に記載の基板処理装置。
(11)前記制御部は、前記電解エッチング工程において、前記電解エッチングを行い、前記基板上の金属粒子を金属イオンに酸化するように、前記電解エッチング部を制御することを特徴とする、前記(9)又は(10)に記載の基板処理装置。
(12)前記処理液中に配置された、直接電極、露出電極、対向電極及び間接電極を有し、
前記直接電極は絶縁膜で覆われ、
前記露出電極は前記直接電極の表面に設けられ、前記処理液に露出し、
前記間接電極は絶縁膜で覆われ、
前記対向電極は絶縁膜で覆われていることを特徴とする、前記(9)~(11)のいずれかに記載の基板処理装置。
(13)前記制御部は、
前記電解エッチング工程において、
前記間接電極に電圧を印加して前記処理液に静電界を形成する充電工程と、
前記露出電極と前記間接電極を接続して、前記対向電極側に配置された前記基板上の粒子を当該基板から離脱させる放電工程と、を実行することを特徴とする、前記(12)に記載の基板処理装置。
(14)側面視において、一対の前記直接電極が隣接して配置され、
側面視において、一対の間接電極が前記一対の直接電極を挟んで当該一対の直接電極の外側に配置され、
前記対向電極が前記一対の直接電極及び前記一対の間接電極に対向して配置されることを特徴とする、前記(12)又は(13)に記載の基板処理装置。
(15)前記制御部は、
前記電界形成工程において、前記一対の直接電極間に前記弱電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記低誘電率粒子を前記弱電場に移動させることを特徴とする、前記(14)に記載の基板処理装置。
(16)前記制御部は、
前記制御部は、
前記電界形成工程において、前記間接電極側に前記強電場を形成し、
前記粒子移動工程において、前記高誘電率粒子を前記強電場に移動させることを特徴とする、前記(14)又は(15)に記載の基板処理装置。
【符号の説明】
【0079】
1 基板処理装置
10 基板ステージ
11 絶縁膜
20 直接電極
21 絶縁膜
22 露出電極
30 間接電極
30a 鉛直部
30b 水平部
31 絶縁膜
40 電源
50 第1のスイッチ
51 第2のスイッチ
60 給排液機構
61 給液孔
62 排液孔
70 制御部
強電場
弱電場
L 洗浄液
高誘電率粒子
低誘電率粒子
正パルス電圧
負パルス電圧
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9