(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089817
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】高温用バルブアクチュエータおよび高温用ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/126 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
F16K31/126 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205266
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】501417929
【氏名又は名称】株式会社キッツエスシーティー
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】本間 克彦
(72)【発明者】
【氏名】原島 伸恭
(72)【発明者】
【氏名】成 基賢
【テーマコード(参考)】
3H056
【Fターム(参考)】
3H056AA01
3H056BB34
3H056CA07
3H056CB03
3H056CB09
3H056CD04
(57)【要約】
【課題】簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる高温用バルブアクチュエータおよび高温用ダイヤフラムバルブを提供すること。
【解決手段】高温用バルブアクチュエータ1は、弾性部材50によってストロークの一方向に付勢されたピストン15を備えたピストンユニット10をシリンダ30内に設け、ピストンユニット10は、エア流路13aを有したユニット本体11と、このユニット本体11に流路を有したベローズ14を介して連結したピストン15と、ピストン15の面状部16aに密封固着された波型ダイヤフラム22と、面状部16aと波型ダイヤフラム22の間に設けたエア室20により構成され、エア室20に駆動エアを供給・排気させてピストン15をストローク自在に設け、エア室20に駆動エアを供給した際に、波型ダイヤフラム22をシリンダ30内に設けた圧接面31aに接触するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材によってストロークの一方向に付勢されたピストンを備えたピストンユニットをシリンダ内に設け、
前記ピストンユニットは、エア流路を有したユニット本体と、該ユニット本体に流路を有したベローズを介して連結した前記ピストンと、前記ピストンの面状部に密封固着された波型ダイヤフラムと、前記面状部と前記波型ダイヤフラムの間に設けたエア室により構成され、
前記エア室に駆動エアを供給・排気させて前記ピストンをストローク自在に設け、
前記エア室に駆動エアを供給した際に、前記波型ダイヤフラムを前記シリンダ内に設けた圧接面に接触するようにしたことを特徴とする高温用バルブアクチュエータ。
【請求項2】
前記ピストンユニットは、前記面状部と前記波型ダイヤフラムを溶接し、前記ベローズの一端を前記ユニット本体に溶接し、前記ベローズの他端を前記ピストンにそれぞれ溶接して一体化させた請求項1に記載の高温用バルブアクチュエータ。
【請求項3】
前記ユニット本体は、エア継手ベースとエア導入継手を溶接してユニット化した請求項1または2に記載の高温用バルブアクチュエータ。
【請求項4】
前記圧接面は、前記シリンダの内壁面であり、
前記波型ダイヤフラムは、前記エア室に駆動エアを供給した場合に、前記圧接面に分散拡大して接地される複数の接地部を有する請求項1または2に記載の高温用バルブアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1に記載の高温用バルブエアアクチュエータを備え、
前記高温用バルブエアアクチュエータによって前記ピストンをストロークさせてボデー内の流路に設けたダイヤフラムを開閉する高温用ダイヤフラムバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用バルブアクチュエータおよび高温用ダイヤフラムバルブに関し、特に、弾性部材によってストロークの一方向に付勢されたピストンを備えたノーマルクローズタイプ、またはノーマルオープンタイプの高温用バルブアクチュエータおよび高温用ダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置のガス供給系のバルブには、バルブを作動させるノーマルクローズタイプ、またはノーマルオープンタイプのバルブアクチュエータが用いられている。
このバルブアクチュエータは、スプリング等の弾性部材によってストロークの一方向に付勢されたピストンをシリンダ内部に備え、このピストンがステムに連結してダイヤフラムを弁座に当接するように変形させる押圧力がダイヤフラムに付加される押圧力付加方向およびダイヤフラムを弁座から離して復元させるようにダイヤフラムに付加された押圧力を開放する押圧力開放方向に移動する。
【0003】
このようなバルブアクチュエータは、シリンダの内部に設けたエア室に供給した駆動エアの圧力を利用することによって、ピストンを弾性部材による付勢力に抗して開位置、または、閉位置に移動している。
そして、このエア室を気密にするため、ピストンやピストンの移動を案内する軸周りをシールしている。
例えば、シリンダの内壁面に摺動する部分となるピストンの外周面には、ポリマー、シリコン、又はゴム等の樹脂からなる樹脂製シール部材が設けられている。
【0004】
ところで、半導体製造装置では、近年、供給するガスが高温化する傾向にあり、300℃を超えるガスの使用にも適用可能なバルブアクチュエータが求められている。しかしながら、300℃を超えるような高温ガスにバルブアクチュエータを適用した場合、上述の樹脂製シール部材が熱膨張や潤滑材の枯渇により損傷することによって、耐久性が低下してしまうという問題があった。
このような問題を解消するため、各種のバルブアクチュエータが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1および特許文献2には、ピストンがシリンダの内壁面を擦り付けることなく滑動するアクチュエータが記載されている。
特許文献1に記載のアクチュエータは、高温に曝される弁を空気圧に関連して制御するアクチュエータに於いて、ピストンがハウジング内に設けられ、ハウジングのキャップとピストンの周縁部間に耐熱性のベローズがキャップから導入される高圧空気によりピストンを移動し得るようにシール状態で伸縮可能に連結され、高圧空気導入によるピストンの移動に伴って弁体開閉用のステムをスプリングに抗して移動させるカムが放射状でほぼ等角位置に設けられている。
【0006】
また、特許文献2に記載のアクチュエータは、プランジャを作動させるためのアクチュエータであって、主入口及び主出口と、互いに向かい合う第1及び第2の中空キャップの第2キャップには、それを貫いて延びるキャップチャネルが設けられ、第1及び第2の中空キャップと、第1中空キャップと第2中空キャップの間に設けられている主作動組立体であって、互いに反対側の第1及び第2のダイヤフラム面を有する変形可能なダイヤフラム、第1ダイヤフラム面によって限定され、主入口と流体連通している第1室、第2ダイヤフラム面によって限定され、主出口と連通している第2室、第1室及び第2室を流体封止するための静的封止要素、及び、作動位置と非作動位置の間を可動であり、第2ダイヤフラム面へ取り付け可能なピストン面を含んでいる主ピストン、を備えている主作動組立体と、当該ステムの一部分は第2キャップの外に延びていてプランジャへ接続可能であり、主ピストンと協働して、主ピストンが作動位置と非作動位置の間で動くときはキャップチャネル内で滑動するようになっている作動ステムと、ピストンを非作動位置に付勢する付勢機構と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-26052号公報
【特許文献2】国際公開第2013010269号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたアクチュエータでは、カムによって構成された倍力機構を設けているため、複雑な構造となる問題および倍力機構の摩耗による耐久性低下の問題があった。
また、特許文献2に記載されたアクチュエータでは、ピストンの駆動に用いるダイヤフラムをピストンおよびピストンとは別の部材である第2キャップ等、2部材に固定しなければならないため、組付け性が悪いという問題があった。
そして、特許文献2に記載されたアクチュエータでは、ピストンの移動を案内する軸部周辺をシールするダイヤフラムを複数箇所に設けているため、複雑な構造になる問題があった。
さらに、特許文献2に記載されたアクチュエータでは、膨張したダイヤフラムがストローク方向に可動自在なピストンに当接されるため、ダイヤフラムがピストンの当接面に対して均一に当接して膨張することが難しく、ピストンの移動が不安定になってピストンの移動をガイドする部分に接触し易くなり、その接触部分が摩耗することによって、結果的に耐久性が低下する問題があった。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる高温用バルブアクチュエータおよび高温用ダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弾性部材によってストロークの一方向に付勢されたピストンを備えたピストンユニットをシリンダ内に設け、ピストンユニットが、エア流路を有したユニット本体と、このユニット本体に流路を有したベローズを介して連結したピストンと、ピストンの面状部に密封固着された波型ダイヤフラムと、面状部と波型ダイヤフラムの間に設けたエア室により構成され、エア室に駆動エアを供給・排気させてピストンをストローク自在に設け、エア室に駆動エアを供給した際に、波型ダイヤフラムをシリンダ内に設けた圧接面に接触するようにした高温用バルブアクチュエータである。
【0011】
請求項2に係る発明は、ピストンユニットが、面状部とダイヤフラムを溶接し、ベローズの一端をユニット本体に溶接し、ベローズの他端をピストンにそれぞれ溶接して一体化させた高温用バルブアクチュエータである。
【0012】
請求項3に係る発明は、ユニット本体が、エア継手ベースとエア導入継手を溶接してユニット化した高温用バルブアクチュエータである。
【0013】
請求項4に係る発明は、圧接面が、シリンダの内壁面であり、波型ダイヤフラムが、エア室に駆動エアを供給した場合に、圧接面に分散拡大して接地される複数の接地部を有する高温用バルブアクチュエータである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の高温用バルブエアアクチュエータを備え、高温用バルブエアアクチュエータによってピストンをストロークさせてボデー内の流路に設けたダイヤフラムを開閉する高温用ダイヤフラムバルブである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によると、ピストンユニットは、エア流路を有したユニット本体と、このユニット本体に流路を有したベローズを介して連結したピストンと、ピストンの面状部に密封固着された波型ダイヤフラムと、面状部と波型ダイヤフラムの間に設けたエア室により構成され、エア室に駆動エアを供給・排気させてピストンをストローク自在に設け、エア室に駆動エアを供給した際に、波型ダイヤフラムをシリンダ内に設けた圧接面に接触するようにした。
これにより、エア室に駆動エアを供給したことによる波型ダイヤフラムの膨張作用を利用して倍力機構を用いずにピストンが弾性部材の付勢力に抗したストロークの方向に移動される。
また、波型ダイヤフラムがシリンダ内の圧接面に接地されながら膨出し、圧接面に対する接地面が圧接面に沿って均一に広がるように変形されることによって、ピストンをストローク方向に安定的に移動させ、ピストンの移動をガイドする部分への接触が抑えられる。
また、エア室に駆動エアを供給することによって波型ダイヤフラムが膨張される、すなわち、エア室内に駆動エアが供給されることによって、エア室内を気密に封止した状態となり、他にシール部材によってピストンの軸周りをシールする必要がなく、シール部材をシリンダの内周面に擦りながらピストンが移動されない。
しかも、波型ダイヤフラムがピストンのみの一部材に対して組付けられるとともに、アクチュエータの主要部分となるエア流路を有したユニット本体とベローズとピストンとを連結してユニット化してシリンダ内に組み付けることができる。
このため、請求項1に係る発明によると、簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、ピストンユニットが、面状部と波型ダイヤフラムを溶接し、ベローズの一端をユニット本体に溶接し、ベローズの他端をピストンにそれぞれ溶接して一体化させている。
これにより、ピストンユニットが、強固かつ気密に連結されるため、一体ものとしてより取り扱い易くなり、結果的に組付け性をより高めることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によると、ユニット本体が、エア継手ベースとエア導入継手を溶接してユニット化したことにより、外部のエア供給先との接続部分となるエア導入継手とエア継手ベースとを強固に連結した一体ものとしてピストンユニットを取り扱うことができるため、組付け作業性、耐久性および気密性をより高めることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によると、圧接面が、シリンダの内壁面であり、波型ダイヤフラムが、エア室に駆動エアを供給した場合に、圧接面に分散拡大して接地される複数の接地部を有することにより、エア室に駆動エアを供給されることによって、シリンダの内壁面側に膨出した波型ダイヤフラムが内壁面に分散拡大して接地部を接地されるため、内壁面からの反力を受け易くなり、結果的に、ピストンの推力を増大させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によると、高温用バルブエアアクチュエータを備え、高温用バルブエアアクチュエータによってピストンをストロークさせてボデー内の流路に設けたダイヤフラムを開閉することにより、エア室に駆動エアを供給したことによる波型ダイヤフラムの膨張作用を利用して倍力機構を用いずにピストンが弾性部材の付勢力に抗したストロークの方向に移動される。
また、波型ダイヤフラムがシリンダ内の圧接面に接地されながら膨出し、圧接面に対する接地面が圧接面に沿って均一に広がるように変形されることによって、ピストンをストローク方向に安定的に移動させ、ピストンの移動をガイドする部分への接触が抑えられる。
また、エア室に駆動エアを供給することによって波型ダイヤフラムが膨張される、すなわち、エア室に駆動エアが供給されることによってエア室内を気密に封止した状態となり、他にシール部材によってピストンの軸周りをシールする必要がなく、シール部材をシリンダの内周面に擦りながらピストンが移動されない。
しかも、波型ダイヤフラムがピストンのみの一部材に対して組付けられるとともに、エア流路を有したユニット本体とベローズとピストンとを連結してユニット化してシリンダ内にアクチュエータの主要部分を組み付けることができる。
このため、請求項5に係る発明によると、簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る高温用バルブアクチュエータを備えた高温用ダイヤフラムバルブの断面図である。
【
図2】
図1に示した高温用バルブアクチュエータの上面図である。
【
図3】
図1に示した高温用ダイヤフラムバルブの側面図である。
【
図4】
図1に示した高温用バルブアクチュエータがバルブを弁開状態にしたときの状態を示す高温用ダイヤフラムバルブの断面図である。
【
図5】
図1に示したピストンユニットの拡大図である。
【
図6】波型ダイヤフラムの膨出形状によって得られるピストンの推力の違いを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る高温用バルブアクチュエータ1および高温用ダイヤフラムバルブ100の実施形態を
図1~
図6に基づいて詳細に説明する。
なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
図1は、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1を備えた高温用ダイヤフラムバルブ100の断面図である。
図2は、
図1に示した高温用バルブアクチュエータ1の上面図である。
図3は、
図1に示した高温用ダイヤフラムバルブ100の側面図である。
図4は、
図1に示した高温用バルブアクチュエータ1が弁開状態にしたときの状態を示す高温用ダイヤフラムバルブ100の断面図である。
図5は、
図1に示したピストンユニット10の拡大図である。
図6は、波型ダイヤフラム22の膨出状態によって得られるピストン15の推力の違いを説明するための図である。
【0022】
本発明の実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1は、高温用ダイヤフラムバルブ100に備えられている。高温用ダイヤフラムバルブ100は、バルブ70とそのバルブを駆動する高温用バルブアクチュエータ1とを備え、例えば、半導体製造装置のガス供給系の自動バルブとして用いられる。
また、高温用バルブアクチュエータ1は、
図1に示すように、バルブ70の弁体であるダイヤフラム71を開閉駆動するものであり、バルブ70のボデー72に連結して設けられる。
【0023】
<高温用バルブアクチュエータ1によって駆動されるバルブ70について>
まず、高温用バルブアクチュエータ1によって駆動されるバルブ70について説明する。
バルブ70は、ダイヤフラム71を弁体として用いたダイヤフラムバルブと称されるものであり、ボデー72の内部にガスの流入口となる上流側端部からガスの流出口となる下流側端部に向けて形成された流路72aの途中に弁座73が設けられている。
そして、バルブ70は、ボデー72の上部にボデー72と一体的に設けて高温用バルブアクチュエータ1のシリンダ30との連結部分となるアクチュエータ連結部74を有する。
このアクチュエータ連結部74の内部には、ダイヤフラム71が弁座73に当接自在な状態でその外周縁部をボデー72の段部とボンネット75によって挟持固定されている。
また、ダイヤフラムピース76が、ダイヤフラム71を弁座73に当接させる方向に押圧自在にボンネット75によって支持されている。
【0024】
<高温用バルブアクチュエータ1について>
次に、高温用バルブアクチュエータ1について説明する。
なお、本実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1は、ノーマルクローズタイプであり、弾性部材であるスプリング50によってストロークの一方向に付勢されたピストン15をシリンダ30内部に備えている。
この高温用バルブアクチュエータ1は、ピストン15がステム部16bに連結し、ステム部16bと共にダイヤフラム71が弁座73に当接するようにダイヤフラム61に押圧力を付加する押圧力付加方向、および、ダイヤフラム71が弁座73から離れて復元されるようにダイヤフラム71に付加された押圧力を開放する押圧力開放方向に移動する。
【0025】
そして、高温用バルブアクチュエータ1は、ピストンユニット10と、ピストンユニット10が組付けられるシリンダ30と、シリンダ30の開口30aを閉じるシリンダカバー40とを有する。
【0026】
<ピストンユニット10について>
まず、ピストンユニット10について説明する。
ピストンユニット10は、一端部にエア供給元に接続されるエア接続部としての上部ナット12aが設けられたユニット本体11と、ユニット本体11の他端部とピストン15の間を伸縮自在に連結したベローズ14と、ステム部16bと一体的に設けられたピストン15とを備えている。
このピストンユニット10は、エアの導入方向上流側から下流側に向けてユニット本体11と、ベローズ14と、ピストン15とが連結して一体化されている。
【0027】
<ピストンユニット10のユニット本体11について>
ユニット本体11は、エア導入継手12と、エア継手ベース13とを有し、エア継手ベース13とエア導入継手12を溶接してユニット化したものである。
エア導入継手12は、本実施形態では、例えば、エア供給元に繋がるエアチューブ等のエア配管に接続されるエア接続部が一端部に設けられた市販の金属製管継手が用いられる。
本実施形態では、エア導入継手12は、エア接続部として継手本体12cに回転自在に設けてエア配管を締結する上部ナット12aと、継手本体12cに固設された下部ナット12bとを有する。
【0028】
エア継手ベース13は、例えば、ステンレス材からなる金属製であり、エア導入継手12とベローズ14との間に設けられ、エア導入継手12から導入された駆動エアがベローズ14の内部まで誘導される流路13aが内部に形成されている。
そして、このエア継手ベース13は、シリンダカバー40をシリンダ30に組み付ける際にシリンダカバー40の後述する押し込み突き当て部46が突き当てられる被突き当て段部13bを有する。
【0029】
<ピストンユニット10のベローズ14について>
ベローズ14は、本実施形態では、市販の金属製のベローズが用いられ、ユニット本体11からベローズ14内に導入されたエアがピストン15に設けたエアの流路18に誘導されるようになっている。
このベローズ14が伸縮動作されることによって、ピストン15がシリンダ30に固定配置されたユニット本体11に対して相対的に移動される。
【0030】
<ピストンユニット10のピストン15について>
ピストン15は、金属材料からなり、ストローク方向に直交する断面が略円形状をなし、その外径がシリンダ30の内周面31eに対して間隙を設けた寸法に調整されたヘッド部16と、ヘッド部16に一体的に設けられ、バルブ70のステムとして機能するステム部16bとを有する。
【0031】
ヘッド部16は、一端部にベローズ14の端部に連結される被連結部17(
図5参照)が設けられ、そのベローズ14に連結される一端部から内部を通って後述のエア室20に接続されるエアの流路18が形成されている。
また、ヘッド部16には、スプリング50の端部が嵌め込まれてその一端部を保持するスプリングセット凹部19が設けられている。
【0032】
<ピストン15に設けたエア室20について>
ピストン15のヘッド部16には、エア室20が設けられている。
エア室20は、ヘッド部16の面状部16aと後述の波型ダイヤフラム22の間、具体的には、スプリング50による付勢方向に向けられた面と後述の波型ダイヤフラム22の間に設けられている。
このエア室20は、スプリング50による付勢方向でシリンダ30の内壁面31aに向かい合う開口面21aを有した凹部である。
そして、波型ダイヤフラム22は、エア室20の開口面21aを塞ぐようにして面状部16aに固着されている。
【0033】
エア室20は、ステム部16bの基端部の周りを内周とし、ヘッド部16の外周縁部の周りを外周とする環状の凹部であり、内部にヘッド部16の流路18に接続して駆動エアを導入するための通気口21bが設けられている。
また、エア室20の内周側および外周側の両方の上端面となる面状部16aには、
図5に示すように、波型ダイヤフラム22を溶接するための取付段部16aa、16abが周方向に沿って設けられている。
【0034】
<ピストン15に設けた波型ダイヤフラム22について>
波型ダイヤフラム22は、本実施形態では、例えば、コバルト合金からなる金属製であり、シリンダ30の内壁面31a側に膨出自在にピストン15の面状部16aに密封固着されている。
この波型ダイヤフラム22は、ステム部16bが貫通されるステム貫通孔22aが中心部に形成された環状をなし、内周側および外周側の両端部が面状部16aの各取付段部16aa、16abに溶接して固着されるようになっている。
なお、本実施形態では、波型ダイヤフラム22は、ピストン15に取り付けることによってエア室20の開口面21aを気密に封止することができると共に、高耐熱性を有していれば溶接以外のその他の方法によってヘッド部16に取り付けられるようにしてもよい。例えば、波型ダイヤフラム22は、高耐熱性の接着材を用いてヘッド部16に取付けるようにしてもよい。
また、波型ダイヤフラム22は、高耐熱性を有していれば、金属以外の材料を用いても構わない。例えば、高耐熱性の樹脂材を用いてもよい。
【0035】
このようにピストン15に設けたエア室20は、波型ダイヤフラム22によって開口面21aが塞がれ、内部に設けた通気口21bを通して駆動エアが導入されることによってエアが充填されるようになっている。
このため、ユニット本体11を通して外部のエア供給元からエア室20内に駆動エアを導入すると、エア室20内に充填されたエアによって、波型ダイヤフラム22がシリンダ30の内壁面31aに向けて膨出されるようになっている。
一方、エア供給元からの駆動エアの供給を停止すると、エア室20内のエアが通気口21bを通して流出するため、波型ダイヤフラム22がエア導入前の萎んだ状態に戻る。
【0036】
<ピストン15に設けたステム部16bについて>
ステム部16bは、面状部16aの中心位置から軸方向に沿ってピストン15に一体的に突設され、その先端部がバルブ70のダイヤフラムピース76に当接自在になっている。
このステム部16bは、シリンダ30に設けた後述のステムガイド孔32cに通されてピストン15をストローク方向にガイドする機能もなしている。
なお、本実施形態では、ステム部16bがピストン15に一体的に設けられたものを例示したが、ステム部16bはピストン15と協働して動くようになっていればピストン15と別体に設けても構わない。
【0037】
<ユニットとして一体化されたピストンユニット10について>
ここで、ユニットとして一体化されたピストンユニット10について説明する。
ピストンユニット10は、
図5に示すように、ユニット本体11とベローズ14とピストン15とが溶接して連結されている。
また、ユニット本体11を構成するエア導入継手12とエア継手ベース13についても溶接して連結されている。
このため、ピストンユニット10は、ピストン15をスプリング50の付勢力に抗するストローク方向に動かすように機能するエア室20および波型ダイヤフラム22を備えて、外部のエア供給元に接続されるエア接続部12aから、バルブ70のダイヤフラム71を押圧するための押圧力をバルブ70側に伝達するステム部16bまで一体化されている。
つまり、ピストンユニット10は、アクチュエータの主要部分を一体化したものになっている。
なお、本実施形態では、ユニット本体11とベローズ14とピストン15とが溶接して連結されているものを例示したが、ユニット本体11とベローズ14とピストン15とを一体化するように連結することができればその他の連結方法を用いても構わない。例えば、高耐熱性の接着材を用いて連結するようにしてもよい。
【0038】
<シリンダ30について>
次に、シリンダ30について説明する。
シリンダ30は、ピストンユニット10を含む高温用バルブアクチュエータ1の主要部分が収容されるケース部31と、バルブ70に連結されるベース部32とを有する。
【0039】
<シリンダ30のケース部31について>
ケース部31は、ピストンユニット10がエアの供給元との接続部分となる上部ナット12aを含む上端部を外部に突出した状態で組付けられる。
このケース部31の内部には、ピストンユニット10のピストン15がシリンダ30に組付けられた状態でストローク移動される空間が形成されている。
そして、ケース部31は、内部にスプリング50が設けられ、このスプリング50が、ダイヤフラム71が弁座73に当接するようにダイヤフラムピース76を押圧する力をピストン15に付加している。
【0040】
このケース部31の内周面31eには、
図1に示すように、ピストン15のストローク範囲を規制する止め輪60の外周端部を嵌入して保持する止め輪保持溝31bが形成されている。
そして、本実施形態では、エア室20に対向する内壁面31aの領域がエア室20側に向けて突出された突出面領域31aaになっており、この突出面領域31aaが波型ダイヤフラム22を溶接するための取付段部16aa、16abにその外周段部を嵌入するようにしてエア室20の内方に配置可能になっている。
【0041】
<シリンダ30のベース部32について>
ベース部32は、バルブ70との連結部分である。このベース部32の外周面には、バルブ70のボデー72に形成された雌ネジ部72bに螺合する雄ネジ部32aが形成されている。
また、ベース部32は、バルブ70との連結側の先端面にダイヤフラム71を挟持する側にボンネット75を押圧するボンネット押圧面32bが形成されている。
さらに、ベース部32には、ステム部16bをピストン15のストローク方向にガイドするステムガイド孔32cが形成されている。
このステムガイド孔32cは、ピストン15に突設したステム部16bをシリンダ30内部からバルブ70のダイヤフラムピース76が配置された空間に向けて貫通させている。
また、シリンダ30の内壁面31aには、シリンダ30内のエアを外部に流出するエア流出口31cが形成されている。
【0042】
<シリンダカバー40について>
次に、シリンダカバー40について説明する。
シリンダカバー40は、ピストンユニット10をシリンダ30内に組付ける際にピストンユニット10の挿入口となるシリンダ30の開口30aをピストンユニット10の上部を外部に突出させた状態で閉じるものである。
【0043】
このシリンダカバー40は、上面が内径側から外径側に向けて階段状に下がって形成され、最上面が形成された上段部41と、上段部41に対して一段下がって外径方向にフランジ状に突出した中段部42と、中段部42に対してさらに一段下がって外径方向にフランジ状に突出した下段部43とを有する。
また、シリンダカバー40は、ピストンユニット10の上部を挿通自在に形成したユニット上部貫通孔44が中央に形成されている。
このユニット上部貫通孔44は、
図2に示すように、ピストンユニット10の下部ナット12bの軸に直交方向の2面に対向する2面44a、44bを孔内面に有した長方形状をなしている。
【0044】
上段部41は、2つの止めネジS1を螺着するための2箇所のネジ孔41aが周側面からユニット上部貫通孔44に向けて貫通して形成されている。
この上段部41に形成した2箇所のネジ孔41aに止めネジS1を螺着することによって、止めネジS1の先端がピストンユニット10の下部ナット12bの2面にそれぞれ当接される。
このため、ピストンユニット10は、ユニット上部貫通孔44の2面44a、44bおよび2つの止めネジS1によって回転不能、かつ、下方に動くことを阻止された状態でシリンダ30に固定される。
【0045】
中段部42の外周面とシリンダ30の内周面31eとの間には環状の隙間Gが設けられ、スプリングナットNがシリンダ30に螺着してその隙間Gに配置されるようになっている。
そして、シリンダ30に対してスプリングナットNを螺着すると、スプリングナットNの下面がシリンダカバー40の下段部43の上面に当接され、これによってシリンダカバー40がシリンダ30に固定されるようになっている。
【0046】
下段部43には、回転防止ネジS2を3カ所に螺着するためのネジ孔43aが周側面に周方向に沿って均等に間隔をあけた3カ所に形成されている。
これら3カ所のネジ孔43aは、シリンダ30の周側面に形成された3カ所のネジ挿通孔31dに対応した位置に形成され、このネジ挿通孔31dを通して螺着した回転防止ネジS2によってシリンダ30に対してシリンダカバー40を回転不能に固定することができるようになっている。
本実施形態では、回転防止ネジS2は、極低頭六角穴付きボルトを用いており、シリンダ30の周側面に対して埋没した状態で螺着される。
なお、回転防止ネジS2は、シリンダカバー40の回転を防止することができれば、3カ所に限らずその他の個数設けても構わないし、配置間隔についても不均等であっても構わない。すなわち、回転防止ネジS2の適用個数および配置間隔は、仕様に合わせて適宜調整するとよい。
【0047】
そして、シリンダカバー40の下面には、スプリング50の一端部を保持するようにピストン15に設けたスプリングセット凹部19と対となるようにスプリング50の他端部を保持するスプリングセット凹部45が設けられている。
また、シリンダカバー40の下面には、エア継手ベース13の被突き当て段部13bに突き当てられる押し込み突き当て部46が突設されている。
この押し込み突き当て部46が被突き当て段部13bに突き当てられる面は、スプリングセット凹部45の内周側の上面になっている。
つまり、押し込み突き当て部46は、スプリングセット凹部45の上面を利用して設けられている。
【0048】
<ピストンユニット10をシリンダ30に組付ける手順について>
ここで、ピストンユニット10をシリンダ30に組付ける手順について説明する。
まず、作業者は、ステム部16b側を先端にしてシリンダ30の開口30aからシリンダ30内にピストンユニット10を挿入する。
この時、作業者は、ステム部16bをシリンダ30のステムガイド孔32cに挿入させつつピストンユニット10をシリンダ30内方に向けて挿入する。
つまり、ピストンユニット10は、ステムガイド孔32cをシリンダ30に組付ける際の位置決めガイドにしてシリンダ30内に挿入される。
【0049】
次に、作業者は、止め輪60をシリンダ30の内周面31eに設けた止め輪保持溝31bに嵌めこんで固定する。
そして、作業者は、シリンダ30の開口30aに向けられているピストン15のスプリングセット凹部19にスプリング50の一端部を嵌めこみ、シリンダカバー40のユニット上部貫通孔44にピストンユニット10の上部を貫通させながら、シリンダカバー40のスプリングセット凹部45にスプリング50の他端部を嵌めこむ。
そして、作業者は、スプリング50を圧縮させながらシリンダカバー40を取付け完了位置まで押し込む。
このとき、シリンダカバー40の押し込み突き当て部46がピストンユニット10の被突き当て段部13bに突き当てられることによって、ピストンユニット10がシリンダ30内に押し込まれる。
【0050】
次に、作業者は、スプリングナットNをシリンダ30に螺着することによってシリンダカバー40をシリンダ30に固定する。
次いで、作業者は、止めネジS1および回転防止ネジS2をそれぞれ所定の箇所に螺着することによって、ピストンユニット10のシリンダへの組付けが完了する。
なお、シリンダ30に組付けられたピストンユニット10にエア供給元に繋がるエアチューブを接続する場合、エアチューブの端部を上部ナット12aで締結固定する。
このとき、エア導入継手12を軸中心に回転させる力、つまり、シリンダ30に対してピストンユニット10を軸方向に相対的に回転させる力が作用するが、ピストンユニット10に固設された下部ナット12bの2面がシリンダカバー40のユニット上部貫通孔44の2面44a、44bおよび止めネジS1によって回転が規制されるため、ピストンユニット10の回転が阻止され、結果的に、ベローズ14が捩れることを防止している。
【0051】
<高温用バルブアクチュエータ1の動作について>
次に、高温用バルブアクチュエータ1の動作について説明する。
高温用バルブアクチュエータ1は、バルブ70の弁閉処理に対応してエア供給元からユニット本体11へエアの供給を停止している状態では、
図1に示すように、ピストン15のエア室20内のエアが通気口21bを通してエア室20の外に流出するため、波型ダイヤフラム22が萎んだ状態となってシリンダ30の内壁面31aに向けて膨出していない。
このため、ピストン15は、スプリング50の付勢力によってヘッド部16がシリンダ30の下部の下死点位置に配置される。
なお、ピストン15が下死点位置にある状態では、シリンダ30の内壁面31aの突出面領域31aaがエア室20の内方側に入り込んでいるため、この状態で波型ダイヤフラム22が内壁面31a側に膨出すると、内壁面31aに当接し易いようになっている。
また、ピストン15が下死点位置に移動される際、シリンダ30の内壁面31aに設けられたエア流出口31cからピストン15のヘッド部16と内壁面31aとの間のエアが抜けるようになっているため、そこに滞留したエアがピストン15の移動を妨げることがない。
さらに、ピストン15が下死点位置に移動される際、ヘッド部16がシリンダ30の内周面31eに対して、間にシール材を介さず間隙を設けた状態で移動するため、シリンダ30の内周面31eに擦れることがない。
そして、下死点位置に移動したピストン15のステム部16bがバルブ70のダイヤフラムピース76を押下し、ダイヤフラムピース76によってバルブ70のダイヤフラム71が押圧されて弁座73に当接されることによって、バルブ70が弁閉状態となる。
【0052】
一方、バルブ70の弁開処理に対応してエア供給元からユニット本体11に駆動エアが供給開始されると、高温用バルブアクチュエータ1は、
図4に示すように、駆動エアが通気口21bを通してエア室20に供給され、波型ダイヤフラム22が徐々に膨らんでシリンダ30の内壁面31aに向けて膨出される。
この時、波型ダイヤフラム22は、シリンダ30の内壁面31aに沿って接地されながら膨らむため、内壁面31aに沿ってエアが均等に分散して拡がる。
つまり、波型ダイヤフラム22は、内壁面31aに沿って均等に拡がった面からピストン15を移動させる方向に反力を受けながら膨張する。
このため、ピストン15は、波型ダイヤフラム22の膨張によって、ストローク方向に傾き難い安定した状態でスプリング50の付勢力に抗しながら止め輪60に当接する上死点位置まで移動される。
ピストン15が上死点位置に移動される際、ヘッド部16がシリンダ30の内周面31eに対して、間にシール材を介さず間隙を設けた状態で移動するため、シリンダ30の内周面31eに擦れることがない。
そして、ピストン15が上死点位置に移動されると、ステム部16bがバルブ70のダイヤフラムピース76から離れ、ダイヤフラムピース76によるダイヤフラム71への押圧力が開放されて、ダイヤフラム71が弁座73から離れた状態に復元されることによって、バルブが弁開状態となる。
【0053】
<波型ダイヤフラム22の膨出形状によって得られるピストン15の推力の違いについて>
ここで、波型ダイヤフラム22の膨出形状によって得られるピストン15の推力の違いについて、
図6を用いて説明する。
図6は、波型ダイヤフラム22の膨出形状によって得られるピストン15の推力の違いを説明するための図である。
なお、
図6では、ピストン15の推力の大きさを矢印の大きさで表している。
図6には、(a)~(c)の順でピストン15の推力が大きくなるように膨張形状を変化させた波型ダイヤフラム22A、22B、22Cを示している。
図6(a)と
図6(b)とを比較した場合、波型ダイヤフラム22A、22Bの形状については略同じであるものの、シリンダ30の内壁面31aに接地する接地部22dとなる波の頂点部分が、
図6(a)に示した波型ダイヤフラム22Aに比べて
図6(b)に示した波型ダイヤフラム22Bが多い。
このため、
図6(b)に示した状態の波型ダイヤフラム22Bのほうが
図6(a)に示した状態の波型ダイヤフラム22Aに比べて内壁面31aから受ける反力が大きくなり、結果としてピストン15の推力が大きくなる。
【0054】
次に、
図6(c)についてみると、波型ダイヤフラム22Cが膨張状態において、波の頂点部分周辺が扁平形状になり、全体として略矩形状となって、シリンダ30の内壁面31aに接地する接地部22dを大きく拡大している。
このため、波型ダイヤフラム22Cが膨張してシリンダ30の内壁面31aに当接することによって、内壁面31aからより大きい反力を得ることができる。
つまり、波型ダイヤフラム22は、膨張状態でより多くの面をシリンダ30の内壁面31aに当接するように、すなわち、膨張状態で分散拡大して接地される複数の接地部22dを有するように、形状、寸法等を設定することが重要であり、この点を考慮し適宜調整するとよい。
【0055】
<実施形態の効果>
以上のように、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1によると、ピストンユニット10が、エア流路13aを有したユニット本体11と、このユニット本体11に流路14aを有したベローズ14を介して連結したピストン15と、ピストン15の面状部16aに密封固着された波型ダイヤフラム22と、面状部16aと波型ダイヤフラム22の間に設けたエア室20により構成され、エア室20に駆動エアを供給・排気させてピストン15をストローク自在に設け、エア室20に駆動エアを供給した際に、波型ダイヤフラム22をシリンダ30の内壁面31aに接触するようにした。
これにより、エア室20に駆動エアを供給したことによる波型ダイヤフラム22の膨張作用を利用して倍力機構を用いずにピストン15がスプリング50の付勢力に抗したストロークの方向に移動される。
また、波型ダイヤフラム22がシリンダ30の内壁面31aに接地されながら膨出し、内壁面31aに対する接地面が圧接面に沿って均一に広がるように変形されることによって、ピストン15をストローク方向に安定的に移動させ、ピストン15の移動をガイドする部分、例えば、ステムガイド孔32cへの接触が抑えられる。
また、エア室20に駆動エアを供給することによって波型ダイヤフラム22が膨張される、すなわち、エア室20内に駆動エアが供給されることによって、エア室20内を気密に封止した状態となり、他にシール部材によってピストン15の軸周りをシールする必要がなく、シール部材をシリンダ30の内周面31eに擦りながらピストンが移動されない。
しかも、波型ダイヤフラム22がピストン15のみの一部材に対して組付けられるとともに、アクチュエータの主要部分となるエア流路13aを有したユニット本体11とベローズ14とピストン15とを連結してユニット化してシリンダ30内に組み付けることができる。
このため、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1によると、簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる。
【0056】
また、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1によると、ピストンユニット10が、面状部16aと波型ダイヤフラム22を溶接し、ベローズ14の一端をユニット本体11に溶接し、ベローズ14の他端をピストン15にそれぞれ溶接して一体化させている。
これにより、ピストンユニット10が、強固かつ気密に連結されるため、一体ものとしてより取り扱い易くなり、結果的に、組付け性をより高めることができる。
【0057】
また、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1によると、ユニット本体11が、エア継手ベース13とエア導入継手12を溶接してユニット化したことにより、外部のエア供給先との接続部分となるエア導入継手12とエア継手ベース13とを強固に連結した一体ものとしてピストンユニット10を取り扱うことができるため、組付け作業性、耐久性および気密性をより高めることができる。
【0058】
また、実施形態に係る高温用バルブアクチュエータ1によると、波型ダイヤフラム22が膨張して接地される圧接面が、シリンダ30の内壁面31aであり、波型ダイヤフラム22が、エア室20に駆動エアを供給した場合に、内壁面31aに分散拡大して接地される複数の接地部22dを有することにより、エア室20に駆動エアが供給されることによって、シリンダ30の内壁面31a側に膨出した波型ダイヤフラム22が内壁面31aに分散拡大して接地部を接地させるため、内壁面31aからの反力を受け易くなり、結果的に、ピストン15の推力を増大させることができる。
【0059】
また、実施形態に係る高温用ダイヤフラムバルブ100によると、エア室20に駆動エアを供給したことによる波型ダイヤフラム22の膨張作用を利用して倍力機構を用いずにピストン15が弾性部材の付勢力に抗したストロークの方向に移動される。
また、波型ダイヤフラム22がシリンダ30内の内壁面31aに接地されながら膨出し、その接地面が内壁面31aに沿って均一に広がるように変形されることによって、ピストン15をストローク方向に安定的に移動させ、ピストン15の移動をガイドする部分、例えば、ステムガイド孔31cへの接触が抑えられる。
また、エア室20に駆動エアを供給することによって波型ダイヤフラム22が膨張される、すなわち、エア室20内に駆動エアが供給されることによって、エア室20内を気密に封止した状態となり、他にシール部材によってピストン15の軸周りをシールする必要がなく、シール部材をシリンダ30の内周面31eに擦りながらピストン15が移動されない。
しかも、波型ダイヤフラム22がピストン15のみの一部材に対して組付けられるとともに、アクチュエータの主要部分となるエア流路13aを有したユニット本体11とベローズ14とピストン15とを連結してユニット化してシリンダ30内に組み付けることができる。
このため、実施形態に係る高温用ダイヤフラムバルブ100によると、簡易な構造であって熱負荷に対する耐久性および組付け性を高めることができる。
【0060】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、波型ダイヤフラム22がシリンダ30の内壁面31aを圧接面として当接されるものを例示したが、波型ダイヤフラム22が膨張した際に、シリンダ30内部の壁面に当接できれば、内壁面31a以外の壁面を圧接面として当接されるようにしても構わない。例えば、シリンダ30の内部に設けた板状部材によって波型ダイヤフラム22の圧接面を形成するようにしてもよい。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、波型ダイヤフラム22を例示したが、エア室20にエアを導入することによって、シリンダ30内の圧接面側に膨出して圧接面に接地することができれば、波型以外の形状が含まれても構わない。
また、波型ダイヤフラム22の材質についても、金属製に限定せず、高耐熱性の樹脂を用いても構わない。
【0063】
また、例えば、上記の実施形態では、高温用バルブアクチュエータ1がノーマルクローズタイプであるものを例示したが、高温用バルブアクチュエータ1がノーマルオープンタイプであってもよい。
高温用バルブアクチュエータ1がノーマルオープンタイプの場合、ピストン15のヘッド部16の下面側にスプリング50を設け、ヘッド部16の上面側に波型ダイヤフラム22を設けてエア室20を形成し、膨張した波型ダイヤフラム22が接地される圧接面をシリンダ30内に設ければよい。
【0064】
また、例えば、上記の実施形態では、弾性部材としてスプリング50を用いたが、ベルビルワッシャ等その他の弾性部材を用いても構わない。
【0065】
また、例えば、上記の実施形態では、高温用バルブアクチュエータ1を高温用ダイヤフラムバルブ100に適用したものを例示したが、高温用バルブアクチュエータ1は、スプリング等の弾性部材によってストロークの一方向に付勢されたピストンのストロークを利用して弁を上下に開閉するバルブであれば、ベローズバルブやニードルバルブ或いはその他のバルブに適用しても構わない。
【0066】
今回開示された各実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 高温用バルブアクチュエータ
10 ピストンユニット
11 ユニット本体
12 エア導入継手
12a 上部ナット(エア接続部)
12b 下部ナット
12c 継手本体
13 エア継手ベース
13a 流路
13b 被突き当て段部
13c 上流側被連結部
13d 下流側被連結部
14 ベローズ
14a 流路
15 ピストン
16 ヘッド部
16a 面状部
16aa、16ab 取付段部
16b ステム部
17 被連結部
18 流路
19 スプリングセット凹部
20 エア室
21a 開口面
21b 通気口
22 波型ダイヤフラム
22A、22B、22C 波型ダイヤフラム
22a ステム貫通孔
22d 接地部
30 シリンダ
30a 開口
31 ケース部
31a 内壁面(圧接面)
31aa 突出面領域
31b 止め輪保持溝
31c エア流出口
31d ネジ挿入孔
31e 内周面
32 ベース部
32a 雄ネジ部
32b ボンネット押圧面
32c ステムガイド孔
40 シリンダカバー
41 上段部
41a ネジ孔
42 中段部
43 下段部
43a ネジ孔
44 ユニット上部貫通孔
44a、44b 面
45 スプリングセット凹部
46 押し込み突き当て部
50 スプリング(弾性部材)
60 止め輪
70 バルブ
71 ダイヤフラム
72 ボデー
72a 流路
72b 雌ネジ部
73 弁座
74 アクチュエータ連結部
75 ボンネット
76 ダイヤフラムピース
100 高温用ダイヤフラムバルブ