IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-成膜装置 図1
  • 特開-成膜装置 図2
  • 特開-成膜装置 図3
  • 特開-成膜装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089821
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/32 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
C23C14/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205270
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠悟
(72)【発明者】
【氏名】木下 公男
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BA43
4K029BA45
4K029BA46
4K029BA47
4K029CA03
4K029DD02
(57)【要約】
【課題】昇華部の交換頻度を低減できる成膜装置を提供する。
【解決手段】昇華部50は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材70に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムから選択される少なくとも一つの物質71が含まれている。昇華部50には、母材70に対して酸化物である物質71が含まれるため、当該物質71が酸化被膜として機能する。そのため、母材70が酸化して昇華することを抑制できる。また、図3(b)に示すように、昇華部50は、消耗に伴って次々に新たな物質71の被膜が出現するので、酸化抑制効果が持続する。図3(b)では、昇華部50の「E1」で示す領域が消耗したが、新たな表面にも、物質71が存在している。そのため、昇華部50の消耗を抑制することで、昇華部50の交換頻度を低減することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンプレーティング法により成膜材料を対象物に形成させる成膜装置であって、
前記成膜材料を昇華させる昇華部を備え、
前記昇華部は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムから選択される少なくとも一つの物質が含まれている、成膜装置。
【請求項2】
前記昇華部は、1wt%以上の前記物質を含む、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記昇華部は、前記成膜材料を格納する容器である、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記昇華部は、プラズマを導く電極である、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項5】
プラズマを生成する圧力勾配型プラズマガンを備え、
前記昇華部は、前記プラズマを導く電極機能を有すると共に、前記成膜材料を格納する容器によって構成される、請求項1に記載の成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜装置として、特許文献1に記載されているように、イオンプレーティング法により成膜材料を対象物形成させる成膜装置が知られている。この成膜装置は、プラズマガンを用いてチャンバー内でプラズマを生成し、チャンバー内で成膜材料を昇華させている。基板に成膜材料が付着し、続けて堆積することにより、当該基板上に膜が成長し、形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-279751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の成膜装置は、成膜材料を昇華させる昇華部を備える。絶縁性材料を成膜する場合、このような昇華部は、タングステンなどの高融点金属によって形成されていた。しかしながら、酸素雰囲気下での高温加熱によって酸化タングステン(WO)が発生するが、当該酸化タングステンは昇華性を有するため、成膜に伴って昇華部が消耗していた。従来の成膜装置では、早期に昇華部が消耗されることにより、交換頻度が高くなってしまうという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、昇華部の交換頻度を低減できる成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る成膜装置は、イオンプレーティング法により成膜材料を対象物に形成させる成膜装置であって、成膜材料を昇華させる昇華部を備え、昇華部は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムから選択される少なくとも一つの物質が含まれている。
【0007】
本発明に係る成膜装置において、昇華部は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、及び酸化イットリウムから選択される少なくとも一つの物質が含まれている。昇華部には、母材に対して酸化物である物質が含まれるため、当該物質が酸化被膜として機能する。そのため、母材が酸化して昇華することを抑制できる。また、昇華部は、消耗に伴って次々に新たな物質の被膜が出現するので、酸化抑制効果が持続する。そのため、昇華部の消耗を抑制することで、昇華部の交換頻度を低減することができる。
【0008】
昇華部は、1wt%以上の上記物質を含んでよい。この場合、上述の母材の酸化抑制効果を十分に得ることができる。
【0009】
昇華部は、成膜材料を格納する容器であってよい。成膜材料がプラズマによって加熱されることで、容器である昇華部も加熱されるが、当該容器には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【0010】
昇華部は、プラズマを導く電極であってよい。プラズマによって電極である昇華部も加熱されるが、当該電極には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【0011】
成膜装置は、プラズマを生成する圧力勾配型プラズマガンを備え、昇華部は、プラズマを導く電極機能を有すると共に、成膜材料を格納する容器によって構成される。圧力勾配型プラズマガンで安定的に生成されたプラズマは、電極機能を有する昇華部に導かれる。昇華部は、成膜材料を格納する容器によって構成されるため、プラズマによる加熱に伴い格納された成膜材料を加熱することができる。また、電極及び容器である昇華部には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、昇華部の交換頻度を低減することができる成膜装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置の概略断面図である。
図2】主ハースの拡大図である。
図3】主ハースの材料の拡大概念図である。
図4】比較例及び実施例に係る主ハースの実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る成膜方法、及び成膜装置について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る成膜装置の構成について説明する。図1は、成膜装置1の構成を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の成膜装置1は、いわゆるイオンプレーティング法の一種であるRPD(Reactive Plasma Deposition)に用いられるRPD成膜装置である。RPDの特徴は、圧力勾配型プラズマガン7を用いて高密度に生成したプラズマをハース機構2によって成膜材料Maに導入することで材料の昇華と昇華した材料粒子のイオン化を同一の機構で行う点である。RPDでは高密度プラズマを用いるため、材料粒子のイオン化率が高く、一般的なイオンプレーティング法と比較してより緻密で基板に対する密着性の強い薄膜を成膜できる。なお、説明の便宜上、図1には、XYZ座標系を示す。Y軸方向は、後述する基板が搬送される方向である。Z軸方向は、基板と後述するハース機構とが対向する位置である。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向とに直交する方向である。
【0016】
成膜装置1は、基板11(対象物)の板厚方向が略鉛直方向となるように基板11が真空チャンバー10内に配置されて搬送されるいわゆる横型の成膜装置であってもよい。この場合には、X軸及びY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向且つ板厚方向となる。なお、成膜装置1は、基板11の板厚方向が水平方向(図1ではZ軸方向)となるように、基板11を直立又は直立させた状態から傾斜した状態で、基板11が真空チャンバー10内に配置されて搬送される、いわゆる縦型の成膜装置であってもよい。この場合には、Z軸方向は水平方向且つ基板11の板厚方向であり、Y軸方向は水平方向であり、X軸方向は鉛直方向となる。本発明の一実施形態に係る成膜装置は、以下、横型の成膜装置を例として説明する。
【0017】
成膜装置1は、真空チャンバー10、搬送機構3、成膜機構14を備えている。
【0018】
真空チャンバー10は、基板11を収納し成膜処理を行うための部材である。真空チャンバー10は、成膜材料Maの膜が形成される基板11を搬送するための搬送室10aと、成膜材料Maを拡散させる成膜室10bと、プラズマガン7からビーム状に照射されるプラズマPを真空チャンバー10に受け入れるプラズマ口10cとを有している。搬送室10a、成膜室10b、及びプラズマ口10cは互いに連通している。搬送室10aは、所定の搬送方向(図中の矢印A)に(Y軸に)沿って設定されている。また、真空チャンバー10は、導電性の材料からなり接地電位に接続されている。
【0019】
成膜室10bは、壁部10Wとして、搬送方向(矢印A)に沿った一対の側壁と、搬送方向(矢印A)と交差する方向(Z軸方向)に沿った一対の側壁10h,10iと、X軸方向と交差して配置された底面壁10jと、を有する。
【0020】
搬送機構3は、成膜材料Maと対向した状態で基板11を保持する基板保持部材16を搬送方向(矢印A)に搬送する。例えば基板保持部材16は、基板11の外周縁を保持する枠体である。搬送機構3は、搬送室10a内に設置された複数の搬送ローラ15によって構成されている。搬送ローラ15は、搬送方向(矢印A)に沿って等間隔に配置され、基板保持部材16を支持しつつ搬送方向(矢印A)に搬送する。なお、基板11は、例えばガラス基板やプラスチック基板などの板状部材が用いられる。
【0021】
続いて、成膜機構14の構成について詳細に説明する。成膜機構14は、イオンプレーティング法により成膜材料Maの昇華の結果生成される粒子を基板11に付着させる。成膜機構14は、プラズマガン7と、ステアリングコイル5と、ハース機構2と、輪ハース6とを有している。
【0022】
プラズマガン7は、例えば圧力勾配型のプラズマガンであり、その本体部分が成膜室10bの側壁に設けられたプラズマ口10cを介して成膜室10bに接続されている。プラズマガン7は、真空チャンバー10内でプラズマPを生成する。プラズマガン7において生成されたプラズマPは、プラズマ口10cから成膜室10b内へビーム状に出射される。これにより、成膜室10b内にプラズマPが生成される。
【0023】
プラズマガン7は、陰極60を通して導入されるアルゴンガスへの放電によってプラズマを生成する。陰極60とプラズマ口10cとの間には、第1の中間電極(グリッド)61と、第2の中間電極(グリッド)62とが同心的に配置されている。第1の中間電極61内にはプラズマPを収束するための環状永久磁石61aが内蔵されている。第2の中間電極62内にもプラズマPを収束するため電磁石コイル62aが内蔵されている。
【0024】
ステアリングコイル5は、プラズマガンが装着されたプラズマ口10cの周囲に設けられている。ステアリングコイル5は、プラズマPを成膜室10b内に導く。ステアリングコイル5は、ステアリングコイル用の電源(不図示)により電流を流すことで励磁される。
【0025】
ハース機構2は、成膜材料Maを保持する。ハース機構2は、真空チャンバー10の成膜室10b内に設けられ、搬送機構3から見てZ軸方向の負方向に配置されている。ハース機構2は、プラズマガン7から出射されたプラズマPを成膜材料Maに導く主陽極又はプラズマガン7から出射されたプラズマPが導かれる主陽極である主ハース17を有している。主ハースの構成については後述する。
【0026】
輪ハース6は、プラズマPを誘導するための電磁石を有する補助陽極である。輪ハース6は、成膜材料Maを保持する主ハース17の容器17aの周囲に配置されている。輪ハース6は、環状のコイル9と環状の永久磁石部20と環状の容器12とを有し、コイル9及び永久磁石部20は容器12に収容されている。本実施形態では、搬送機構3から見てZ負方向にコイル9、永久磁石部20の順に設置されているが、Z負方向に永久磁石部20、コイル9の順に設置されていてもよい。輪ハース6は、コイル9に流れる電流の大きさに応じて、成膜材料Maに入射するプラズマPの向き、または、主ハース17に入射するプラズマPの向きを制御する。
【0027】
ガス供給部40は、真空チャンバー10内にキャリアガス及び酸素ガスを供給する。キャリアガスに含まれる物質として、例えば、アルゴン、ヘリウムなどの希ガスが採用される。ガス供給部40は、真空チャンバー10の外部に配置されており、成膜室10bの側壁(例えば、側壁10h)に設けられたガス供給口を通し、真空チャンバー10内へ原料ガスを供給する。ガス供給部40は、制御部からの制御信号に基づいた流量のキャリアガス及び酸素ガスを供給する。
【0028】
電流供給部80は、プラズマガン7に電流を供給する。これにより、プラズマガン7は、所定の値の放電電流にて放電を行う。電流供給部80は、制御部からの制御信号に基づいた電流値の電流を供給する。
【0029】
次に、図2を参照して、主ハース17の構成について詳細に説明する。主ハース17は、成膜材料Maを昇華させる昇華部50として機能する。主ハース17は、成膜材料Maが充填されたZ軸方向の正方向に延びた筒状の容器17aと、容器17aから突出したフランジ部17bとを有している。主ハース17は、真空チャンバー10が有する接地電位に対して正電位に保たれているため、主ハース17は放電における電極(陽極)となりプラズマPを吸引することができる。このプラズマPが入射する主ハース17の容器17aには、成膜材料Maを充填するための貫通孔17cが形成されている。そして、成膜材料Maの先端部分が、この貫通孔17cの一端において成膜室10bに露出している。
【0030】
成膜材料Maとして、例えば、ITO(酸化錫ドープ酸化インジウム)、IWO(酸化タングステンドープ酸化インジウム)などの導電材料が用いられる。図2(a)に示すように、成膜材料Maが導電性物質からなるため、主ハース17にプラズマPが照射されると、プラズマPが成膜材料Maに直接入射し、成膜材料Maの先端部分が加熱されて昇華し、プラズマPによりイオン化された成膜材料粒子Mbが成膜室10b内に拡散する。成膜室10b内に拡散した成膜材料粒子Mbは、プラズマPによってイオン化され、成膜室10bのZ軸正方向へ移動し、搬送室10a内において基板11の表面に付着する(図1参照)。なお、成膜材料Maは、所定長さの円柱形状に成形された固体物であり、一度に複数の成膜材料Maがハース機構2に充填される。そして、膜厚方向の原子組成が一定となるように最先端側の成膜材料Maの先端部分が主ハース17の上端との所定の位置関係を保つように、成膜材料Maの昇華に応じて、成膜材料Maがハース機構2のZ負方向側から順次押し出される。
【0031】
成膜材料Maは、例えば、酸化シリコン、酸化錫などの絶縁性物質でもよい。図2(b)に示すように、成膜材料Maが絶縁性物質からなるため、プラズマPは主ハース17に入射する。これにより、主ハース17が加熱されることで成膜材料Maが加熱されて昇華する。
【0032】
図3(a)に示すように、昇華部50としての主ハース17は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つの母材70に対して、酸化ランタン、酸化セリウム(CeO)、酸化イットリウム(Y)、及び酸化トリウム(ThO)から選択される少なくとも一つの物質71が含まれている。なお、図3は、母材70の中に物質71が含まれる様子を模式的に記載したものである。また、図3では、主ハース17の一部を拡大した様子が示されているが、当該状態は、主ハース17の全域にわたって成り立っている。
【0033】
昇華部50は、1wt%以上の酸化ランタンを含んでよく、より好ましくは2wt%程度の酸化ランタンを含んでよい。なお、酸化ランタンの含有量の上限値は特に限定されないが、3wt%以下の酸化ランタンを含んでよく、より好ましくは2wt%以下の酸化ランタンを含んでよい。なお、酸化ランタンなどの添加物質の含有量を示す「wt%」は、主ハース17を構成する物質全体の重量を100%としたときの、添加物質の重量割合を示している。なお、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムの含有量についても同様の数値範囲としてよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る成膜装置1の作用・効果について説明する。
【0035】
本実施形態に係る成膜装置1において、昇華部50は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材70に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムから選択される少なくとも一つの物質71が含まれている。図3(a)に示すように、昇華部50には、母材70に対して酸化物である物質71が含まれるため、当該物質71が酸化被膜として機能する。そのため、母材70が酸化して昇華することを抑制できる。
【0036】
また、図3(b)に示すように、昇華部50は、消耗に伴って次々に新たな物質71の被膜が出現するので、酸化抑制効果が持続する。図3(b)では、昇華部50の「E1」で示す領域が消耗したが、新たな表面にも、物質71が存在している。そのため、昇華部50の消耗を抑制することで、昇華部50の交換頻度を低減することができる。
【0037】
ここで、タングステンの母材で構成され、酸化ランタンを含有しない比較例に係る主ハースと、タングステンの母材に酸化ランタンが1wt%含まれる実施例に係る主ハースを準備した。図4(a)は、使用前の主ハースである。比較例に係る主ハースも、実施例に係る主ハースも、使用前の形状は同じである。これらの主ハースを成膜装置にセットして、35時間の運転を行った。図4(b)は、運転後の比較例に係る主ハースを示す。図4(c)は、運転後の実施例に係る主ハースを示す。図4(b)(c)に示すように、母材に酸化ランタンを含有させることで、消耗量が減っていることが確認できる。これにより、交換頻度を低減できることが確認される。
【0038】
昇華部50は、1wt%以上の酸化ランタンを含んでよい。この場合、上述の母材70の酸化抑制効果を十分に得ることができる。
【0039】
昇華部50は、成膜材料Maを格納する容器であってよい。成膜材料MaがプラズマPによって加熱されることで、容器である昇華部50も加熱されるが、当該容器には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【0040】
昇華部50は、プラズマPを導く電極であってよい。プラズマPによって電極である昇華部50も加熱されるが、当該電極には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【0041】
成膜装置1は、プラズマPを生成する圧力勾配型プラズマガンを備え、昇華部50は、プラズマPを導く電極機能を有すると共に、成膜材料Maを格納する容器によって構成される。圧力勾配型プラズマガンで安定的に生成されたプラズマPは、電極機能を有する昇華部50に導かれる。昇華部50は、成膜材料Maを格納する容器によって構成されるため、プラズマPによる加熱に伴い格納された成膜材料Maを加熱することができる。また、電極及び容器である昇華部50には物質が含まれているため、酸化を抑制することができる。
【0042】
本発明は、上述のRPD成膜装置の実施形態に限定されるものではなく、イオンプレーティング法全般に適用できる。例えば、上記実施形態における昇華部は、成膜材料を抵抗加熱装置や電子銃を用いて昇華させ、RFコイルで生成したプラズマを用いて成膜が行われる成膜装置に適用されてもよい。
【0043】
上述の実施形態では、昇華部50は、電極としての機能と容器としての機能を同時に備えていた。これに代えて、昇華部50は、電極としての機能を有さず、成膜材料Maを格納する容器としての機能だけを有してもよい。この場合、容器とは別の部材として電極が設けられる。あるいは、昇華部50は、容器としての機能を有さず、電極としての機能だけを有してもよい。
【0044】
[形態1]
イオンプレーティング法により成膜材料を対象物に形成させる成膜装置であって、
前記成膜材料を昇華させる昇華部を備え、
前記昇華部は、タングステン、モリブデン、及びタンタルから選択される少なくとも一つを含む母材に対して、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化トリウムから選択される少なくとも一つの物質が含まれている、成膜装置。
[形態2]
前記昇華部は、1wt%以上の前記物質を含む、形態1に記載の成膜装置。
[形態3]
前記昇華部は、前記成膜材料を格納する容器である、形態1又は2に記載の成膜装置。
[形態4]
前記昇華部は、プラズマを導く電極である、形態1~3の何れか一項に記載の成膜装置。
[形態5]
プラズマを生成する圧力勾配型プラズマガンを備え、
前記昇華部は、前記プラズマを導く電極機能を有すると共に、前記成膜材料を格納する容器によって構成される、形態1~4の何れか一項請求項1に記載の成膜装置。
【符号の説明】
【0045】
1…成膜装置、11…基板(対象物)、50…昇華部、70…母材、71…物質。
図1
図2
図3
図4