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特開2024-89823送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089823
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/36 20060101AFI20240627BHJP
   H01Q 19/18 20060101ALI20240627BHJP
   H01Q 19/13 20060101ALI20240627BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240627BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240627BHJP
   H04B 7/145 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01Q3/36
H01Q19/18
H01Q19/13
H01Q15/14 Z
H01Q23/00
H04B7/145
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205274
(22)【出願日】2022-12-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G研究開発促進事業/次世代の5次元モバイルインフラ技術の研究開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真吾
(72)【発明者】
【氏名】小野 真和
(72)【発明者】
【氏名】若藤 健司
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
5K072
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA06
5J020BC02
5J020DA03
5J020DA04
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA26
5K072AA04
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB25
5K072GG02
5K072GG05
(57)【要約】
【課題】RIS部によって反射される電波の反射角度を制御することができる送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法を提供する。
【解決手段】増幅器1は、入力信号INを増幅する。放射部2は、増幅器1が増幅し入力信号INに基づいて、空間に電波RW_Pを放射する。第1反射部3は、放射部2から放射された電波RW_Pを反射する。第2反射部4は、第1反射部3からの電波RW_Pを反射することで送信対象に送信するRIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板として構成される。制御部5は、第2反射部4を制御する。第2反射部4は、送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて制御部5から指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度にて電波RW_Pを反射することで、目標反射角度にて電波RW_Pを反射するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、
前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、
前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信するRIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板として構成される第2反射部と、
前記第2反射部を制御する制御部と、を備え、
前記第2反射部は、前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて前記制御部から指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度にて前記電波を反射することで、前記目標反射角度にて前記電波を反射する、
送信装置。
【請求項2】
前記第2反射部は、2次元的に配列された複数の反射素子部と、
前記複数の反射素子部のそれぞれにおける前記電波の反射を制御する位相制御部と、を備え、
前記反射素子部は、前記放射部から放射された電波を受信して受信信号を出力するアンテナ素子と、
前記受信信号の位相に、前記位相制御部から与えられる制御信号に応じて所定の移相量を与えた送信信号を、前記アンテナ素子へ出力する位相変換部と、を備え、
前記位相制御部は、前記第2反射部にて前記制御部から指示された反射角度の通りに前記電波が反射されるように、前記位相変換部での前記移相量にオフセットを与える、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記位相制御部は、前記目標反射角度に対応した前記移相量に与える位相オフセットが格納されたテーブル情報を有し、
前記位相制御部は、前記制御部から指示された前記目標反射角度に応じて前記テーブル情報を参照して、前記位相オフセットを決定する、
請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信信号に与えられた前記移相量を検査する検査回路をさらに備え、
前記複数の反射素子部のそれぞれは、
終端器と、
前記アンテナ素子と、前記位相変換部及び前記終端器との間に挿入され、前記受信信号の入力先を、前記位相変換部又は前記終端器に切り替える第1のスイッチと、
前記位相変換部からの前記送信信号の出力先を、前記アンテナ素子又は前記終端器に切り替える第2のスイッチと、
前記アンテナ素子と前記検査回路との間に挿入され、前記受信信号の前記検査回路への入力経路を開閉する第3のスイッチと、
前記位相変換部の出力と前記検査回路との間に挿入され、前記送信信号の前記検査回路への入力経路を開閉する第4のスイッチと、を備え、
前記第1のスイッチによって前記アンテナ素子と前記位相変換部の入力とを接続し、前記第2のスイッチによって前記位相変換部の出力と前記終端器とを接続し、前記第3及び第4のスイッチを閉じた状態で、前記検査回路は、前記受信信号に固定値である前記移相量を与えた信号と前記送信信号とを比較し、前記受信信号に固定値である前記移相量を与えた信号と前記送信信号との位相差が所定量よりも大きいか否かを検出する、
請求項2又は3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記増幅器は、進行波管増幅器として構成される、
請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項6】
請求項2又は3のいずれか一項に記載の前記送信装置の前記複数の反射素子部のキャリブレーションを制御するキャリブレーション制御装置と、
前記第1反射部で反射されてから前記第2反射部で反射されることなく漏れ出た電波を検出する漏れ電波検出アンテナと、
前記第2反射部で反射された電波の放射パターンを取得するための放射パターン測定用アンテナと、を備え、
前記キャリブレーション制御装置は、前記漏れ電波が所定のレベルよりも小さくなるように、かつ、前記放射パターンのピークが所定の角度範囲内に収まるように、前記位相制御部に、選択する位相オフセットを指示する、
送信装置のキャリブレーションシステム。
【請求項7】
前記キャリブレーション制御装置は、前記複数の反射素子部から、1つの基準反射素子部と、キャリブレーション対象である対象反射素子部と、を選択し、
前記位相制御部にキャリブレーション用目標反射角度を指示し、
前記基準反射素子部及び対象反射素子部のみで前記第1反射部で反射された電波を反射して放射パターンを取得し、
前記放射パターンのピークが、前記キャリブレーション用目標反射角度を基準とする所定の範囲内に収まるように、前記位相制御部に、前記対象反射素子部に指示すべき位相オフセットを指示することで、前記対象反射素子部のキャリブレーションを行う、
請求項6に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【請求項8】
前記キャリブレーション制御装置は、隣接する2つの前記反射素子部を、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部として選択する、
請求項7に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【請求項9】
前記キャリブレーション制御装置は、隣接する2つの前記反射素子部を、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部として選択する、
請求項7に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【請求項10】
入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、
前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信する第2反射部と、を備える送信装置において、
前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度を前記第2反射部に指示し、
前記第2反射部は、前記指示された反射角度に基づいて前記電波を反射することで、前記電波を前記目標反射角度にて前記電波を反射する、
送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術の進歩に伴い、無線信号の送受信手法について様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザ端末の位置を推定する技術として、以下が開示されている。RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)パネルは、アクセスポイントから送信されたパイロット信号を所定の反射パターンに従って反射させる。反射された信号を受信したユーザ端末は、信号中の特徴を抽出し、位置と1つ以上の特徴とのペアを含むデータベースに基づいて、ユーザ端末の位置を推定する。
【0004】
また、特許文献2には、車載アンテナとして、送信信号を発生するための送信器と、主および副反射器と、送信信号を副反射器に伝導するために送信器と関連付けられる導波管とを備える車載アンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-117980号公報
【特許文献2】特表2010-521915号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「電気情報通信学会 知識ベース 10群 8編 8章 移相器とアンテナ」、2022年、電気情報通信学会、インターネット、2022年12月16日検索、<URL: https://www.ieice-hbkb.org/files/10/10gun_08hen_08.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、5G(5th Generation)基地局のビームフォーミングは、例えば、固体電力増幅器(Solid State Power Amplifier:SSPA)及びフェーズドアレイアンテナを用いる構成で実現されている。しかしながら、通信周波数の高周波化が進むと、アンテナ、増幅器といった通信素子の多素子化、又はデバイスの高集積化によって、動作中により多くの放熱が生じることが想定される。
【0008】
このような課題の解決策として、反射波の指向制御が可能なRIS部を設け、アンテナにより放射された電波をRIS部によって反射させる技術が考えられる。この技術は、上記の多素子化又は高集積化といった事象を抑制しつつ、反射された電波を所望の位置にある対象に伝搬させることが可能となる。
【0009】
しかし、電波を所望の方向に反射するには、RIS部に配列された複数の反射素子部において電波に与える移相量を正確に制御することが求められる。そのため、反射素子部のそれぞれ電波に与える移相量を調整、すなわちキャリブレーションして、反射される電波の反射角度を制御する機能が求められる。
【0010】
本開示は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、RIS部によって反射される電波の反射角度を制御することができる送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様である送信装置は、入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信するRIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板として構成される第2反射部と、前記第2反射部を制御する制御部と、を備え、前記第2反射部は、前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて前記制御部から指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度にて前記電波を反射することで、前記目標反射角度にて前記電波を反射するものである。
【0012】
本開示の一態様である送信方法は、入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信する第2反射部と、を備える送信装置において、前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度を前記第2反射部に指示し、前記第2反射部は、前記指示された反射角度に基づいて前記電波を反射することで、前記電波を前記目標反射角度にて前記電波を反射する、送信方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、RIS部によって反射される電波の反射角度を制御することができる送信装置、送信装置のキャリブレーションシステム及び送信方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかる送信装置の概観構成を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1にかかる送信装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】反射素子部の構成を模式的に示す図である。
図4】スイッチがアンテナ素子と終端器とを接続する場合の反射素子部を示す図である。
図5】スイッチがアンテナ素子と位相変換部とを接続する場合の反射素子部を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる送信装置における電波の反射角度のずれを示す図である。
図7】実施の形態1にかかる送信装置で反射された電波の放射パターンを示す図である。
図8】オフセット量が格納されたテーブル情報の例を示す図である。
図9】実施の形態2にかかるキャリブレーションシステムの構成を模式的に示す図である。
図10】基準反射素子部及び対象反射素子部を示す図である。
図11】2つの反射素子部の間隔に対する放射パターンの変化の例を示す図である。
図12】基準反射素子部及び反射素子部の選択方法の例を示す図である。
図13】放射パターンに基づいたキャリブレーション動作のフロー図である。
図14】チルト方向における放射パターンの例を示す図である。
図15】実施の形態3にかかる送信装置の構成を模式的に示す図である。
図16】反射素子部及び検査回路の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0016】
実施の形態1
実施の形態1にかかる送信装置について説明する。本実施の形態にかかる送信装置100は、RIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板に電波を照射し、RIS反射板で所望の方向に反射された電波を送信するものとして構成される。RIS反射板には、反射素子部がアレイ状に配列されており、各反射素子部が反射する電波に与える移相量を制御することで、フェーズドアレイアンテナと同様に、所望の方向に電波を偏向させることができる。
【0017】
以下では、図の紙面の右へ向かう方向をX方向、上へ向かう方向をZ方向、紙面手前から奥へ向かう方向をY方向とする。Z軸回りの回転方向、すなわち送信装置100の方位角方向をパン方向φ、X-Y平面に平行な軸回りの回転方向、すなわち送信装置100の仰俯角方向をチルト方向θとする。
【0018】
図1に、実施の形態1にかかる送信装置100の概観構成を模式的に示す。また、図2に、実施の形態1にかかる送信装置100の機能構成を模式的に示す。送信装置100は、増幅器1、放射部2、第1反射部3、第2反射部4及び制御部5を有する。
【0019】
増幅器1は、入力されるRF信号INを増幅して、放射部2へ出力する。増幅器1は、例えば、進行波管増幅器(Traveling Wave Tube Amplifier:TWTA)などのハイパワーアンプとして構成される。本実施の形態では、TWTAを用いることで、SSPAを用いる場合と比べて、より高出力の送信装置を構成することができる。
【0020】
放射部2は、増幅器1で増幅されたRF信号を電波RW_Pとして放射するアンテナとして構成される。
【0021】
放射された電波RW_Pは、第1反射部3によって反射されて、第2反射部4へ入射する。放射部2から放射された電波RW_Pは球面波であるが、凹面状の第1反射部3で反射されることで、概ね平面波となって第2反射部4へ入射する。
【0022】
第2反射部4は、RIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板として構成され、入射する電波RW_Pを、目標反射角度θの方向に、電波RWとして反射する。
【0023】
制御部5は、第2反射部4に反射角度制御信号CAを与えることで、第2反射部4によって反射される電波RWの反射角度を制御する。
【0024】
次いで、第2反射部4の構成について説明する。第2反射部4は、複数の反射素子部と、複数の反射素子部の位相変換を制御する位相制御部41と、を有する。
【0025】
第2反射部4は、複数の反射素子部が2次元平面上にアレイ状に配置されて構成される。以下では、Nを2以上の整数とする。図2では、簡略化のため、反射素子部E1~ENを一方向に並べて表示している。反射素子部E1~ENのそれぞれは、第1反射部3から入射する電波RW_Pの位相を調整した後に放射することで、電波RWの反射方向、すなわち伝搬方向を制御する。
【0026】
以下では、jを1以上N以下の整数とし、反射素子部E1~ENの共通構成として、反射素子部Ejについて説明する。図3に、反射素子部Ejの構成を模式的に示す。反射素子部Ejは、アンテナ素子Aj、位相変換部Pj、スイッチSj及び終端器Tjを有する。
【0027】
第1反射部3から入射する電波RW_Pは、アンテナ素子Ajによって受信され、受信信号RSjとして、スイッチSjの一端へ出力される。
【0028】
スイッチSjは、制御信号CPjに応じてオン/オフし、受信信号RSjの入力先を位相変換部Pj又は終端器Tjに切り替えることができる。
【0029】
図4に、スイッチSjがアンテナ素子Ajと終端器Tjとを接続する場合の反射素子部Ejを示す。この場合、受信信号RSjは、アンテナ素子AjからスイッチSjを介して終端器Tjに入力され、終端器Tjは入力された受信信号RSjを終端する。
【0030】
図5に、スイッチSjがアンテナ素子Ajと位相変換部Pjの入力とを接続する場合の反射素子部Ejを示す。この場合、受信信号RSjは、アンテナ素子AjからスイッチSjを介して位相変換部Pjに入力される。位相変換部Pjは、制御信号CPjに応じて、受信信号RSjに与える移相量を調整し、位相調整後の信号である送信信号TSjを、アンテナ素子Ajへ出力する。位相変換部Pjは、制御信号CPjに応じて受信信号RSjに与える移相量を連続的に変化させることができる、可変位相変換部として構成される。
【0031】
アンテナ素子Ajに入力された信号送信TSjは、電波RWとしてアンテナ素子Ajから放射される。
【0032】
位相制御部41は、反射角度制御信号CAに応じて、位相変換部T1~TNのそれぞれに制御信号CP1~CPNを与えることで、位相変換部T1~TNが受信信号RS1~RSNに与える移相量を制御する。
【0033】
送信装置100の反射角度制御について説明する。送信装置100では、制御部5が位相制御部41に反射角度制御信号CAを与えることで、電波RWの反射角度を制御している。しかし、第1反射部3及び第2反射部4の形状、製造誤差及び設置位置などによって、電波の反射角度に誤差が生じることが想定される。
【0034】
図6に、送信装置100における電波の反射角度のずれを示す。図6では、目標反射角度θからΔθだけずれて反射された電波RWに対して、指定された目標反射角度θにて理想的に反射された電波RW_IDEALを表示している。このように、反射角度制御信号CAによって反射角度θが指示されたとしても、例えば、電波RWは誤差Δθだけずれて、θ+Δθの方向に反射されてしまう。
【0035】
図7に、送信装置100で反射された電波RWの放射パターンを示す。図7におけるW_REALは、誤差Δθだけずれて反射された電波RWの放射パターンである。W_IDEALは、目標反射角度θにて反射された場合の電波RWの理想的な放射パターンである。反射方向がΔθだけずれて反射された放射パターンW_REALでは、理想的な放射パターンW_IDEALと比べて、ピーク値が低下してしまう。また、放射パターンW_REALではサイドローブも大きくなってしまう。その結果、放射パターンW_REALでのサイドローブ抑圧比SLSR_REALは、理想的な放射パターンW_IDEALのサイドローブ抑圧比SLSR_IDEALよりも低下してしまう。
【0036】
そこで、本構成では、反射角度制御信号CAによって目標反射角度θが指定された場合に、誤差Δθをキャンセルして、反射角度θの方向に電波を反射可能に構成される。具体的には、位相制御部41にオフセット角-Δθを指示することで、位相変換部P1~PNのそれぞれでの誤差をキャンセルして、電波RWの反射角度を、反射角度制御信号CAによって指示された目標反射角度θにて反射することができる。
【0037】
なお、ここでは、説明の簡略化のため、電波RWの反射角度及び誤差について、仰俯角方向であるθに着目している。しかし、RIS反射板の特性上、当然のことながら、方位角方向φにもRWの反射方向を偏向させることができ、かつ、この方向にも誤差が生じ得る。したがって、仰俯角方向θと同様に、方位角方向φについても誤差をキャンセルできることは、言うまでも無い。
【0038】
具体的には、位相制御部41は、位相変換部T1~TNに指示する位相オフセット量が格納されたテーブル情報TABを有している。図8に、オフセット量が格納されたテーブル情報の例を示す。位相制御部41は、指示された角度に対して、移相量の基準値とオフセット値とを読み出し、基準値とオフセット値とを加算した移相量を、制御信号CP1~CPNによって位相変換部T1~TNに指示する。
【0039】
以上、本構成によれば、各反射素子部における移相量にオフセットを与えることで、反射角度誤差をキャンセルして、電波RWを目標反射角度にて反射することが可能となる。これにより、送信対象へ向けて正確に電波RWを放射することが可能となる。
【0040】
実施の形態2
次に、実施の形態1にかかる送信装置100のキャリブレーションを行うキャリブレーションシステム1000について説明する。図9に、キャリブレーションシステム1000の構成を模式的に示す。キャリブレーションシステム1000は、送信装置100における電波RWの反射方向のキャリブレーションを行うものであり、漏れ電波検出用アンテナ1001、放射パターン測定用アンテナ1002及びキャリブレーション制御装置1003を有する。
【0041】
また、本構成では、送信装置100は、送信装置100の姿勢をチルトθ方向及びパン方向φに変位させることが可能な、ステージ110に搭載されている。
【0042】
漏れ電波検出用アンテナ1001は、第1反射部3によって第2反射部4へ向けて反射された電波RW_Pのうち、第2反射部4で反射されることなく、第2反射部4の後方へ漏れ出た電波を検出するアンテナとして構成される。よって、漏れ電波検出用アンテナ1001は、第1反射部3から見て、第2反射部4によって完全に掩蔽されないように、第2反射部4の後方に配置される。この例では、漏れ電波検出用アンテナ1001は、第2反射部4の上方に配置されて、電波RW_Pのうちで、第2反射部4の上方に漏れ出た電波RW_Lを検出することができる。漏れ電波検出用アンテナ1001は、漏れ電波の検出結果を示す漏れ電波検出信号DET1を、キャリブレーション制御装置1003へ出力する。
【0043】
放射パターン測定用アンテナ1002は、送信装置100から放射される電波RWの放射パターンを測定するアンテナとして構成される。よって、漏れ電波検出用アンテナ1001は、送信装置100からの電波RWの放射方向に、送信装置100から離隔した位置に配置される。放射パターンを好適に測定するために、放射パターン測定用アンテナ1002は、反射素子部の配列間隔の100倍程度、第2反射部4から離隔させることが望ましい。例えば、反射素子部の配列間隔が5mmである場合、第2反射部4から500mm程度離隔した位置に、放射パターン測定用アンテナ1002を配置することが望ましい。
【0044】
なお、放射パターン測定用アンテナ1002は、電波RWの放射パターンを取得できる限り、単一のアンテナを移動させる構成や、アレイアンテナなどの各種のアンテナを用いることができる。放射パターン測定用アンテナ1002は、電波RWの放射パターンの検出結果を示す放射パターン検出信号DET2を、キャリブレーション制御装置1003へ出力する。
【0045】
キャリブレーション制御装置1003は、漏れ電波検出信号DET1及び放射パターン検出信号DET2に基づいて、送信装置100での電波RWの反射角度のずれを検出して、送信装置100での電波RWの反射角度をキャリブレーションする。
【0046】
キャリブレーション制御装置1003は、第2反射部4及び制御部5に指示信号INS1及びINS2を出力し、増幅器1にキャリブレーション用の入力信号IN_Cを出力することで、送信装置100にキャリブレーションに必要な動作を行わせることが可能に構成される。また、キャリブレーション制御装置1003は、ステージ110に駆動信号DRVを与えてステージ110を駆動することで、送信装置100をチルト方向θ及びパン方向φに変位させることができる。
【0047】
このように、送信装置100及びステージ110を動作させることで、キャリブレーション制御装置1003は、電波RWの放射パターンを測定することができる。すなわち、送信装置100をチルト方向θ及びパン方向φに駆動させながら放射パターン測定用アンテナ1002で電波RWを受信して、放射パターン検出信号DET2モニタすることで、キャリブレーション制御装置1003は、電波RWの2次元的な放射パターンを測定することができる。そして、キャリブレーション制御装置1003は、取得した放射パターンに基づいて、電波RWの反射角度のずれを検出して、そのずれを補正することができる。
【0048】
また、キャリブレーション制御装置1003は、漏れ電波検出信号DET1に基づいて、漏れ電波の有無を検出することもできる。これにより、漏れ電波が生じないように、第1反射部3の取り付け角度を補正することができる。第1反射部3の取り付け角度の補正は、人手によって行ってもよいし、第1反射部3を駆動する機構が設けられている場合には、キャリブレーション制御装置1003がその機構を駆動することで行ってもよい。
【0049】
次いで、放射パターンに基づいたキャリブレーション動作について説明する。本実施の形態では、第2反射部4に設けられた反射素子部E1~ENから、基準となる基準反射素子部E_REFと、キャリブレーション対象となる対象反射素子部E_OBJとを選択し、これら2つの組を移動させながらキャリブレーションを行う。
【0050】
図10に、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJを示す。本実施の形態では、第2反射部4に配列される複数の反射素子部の中で、隣接する2つの反射素子部を基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJとして選択する。そして、これらの2つの反射素子部によって反射された電波が干渉すること生じる電波RWの放射パターンを測定する。
【0051】
ここで、隣接する2つの反射素子部を基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJとして選択する理由について説明する。図11に、2つの反射素子部の間隔に対する放射パターンの変化の例を示す。2つの反射素子部の間隔が5mmのように小さい場合には、0°を中心として、両方向に対称な放射パターンが得られることがわかる。これに対し、2つの反射素子部の間隔が10mmや40mmのように大きくなると、基準反射素子部と対象反射素子との距離が半波長以上となってしまい、放射パターンにグレーティングローブが発生してしまい、ピーク位置の調整ができなくなってしまう。よって、2つの反射素子部の間隔はなるべく小さいことが望ましく、そのため、基準反射素子部を特定の1つの反射素子部に固定することは、好ましくないことが理解できる。本実施の形態では、こうした事態を回避するために、隣接する2つの反射素子部を基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJとして選択している。
【0052】
ただし、図11はあくまで例示に過ぎず、例えば、許容できる放射パターンが得られるならば、隣接していない2つの反射素子部を基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJとして選択することを排除するものではない。
【0053】
次に、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJの選択方法について説明する。図12に、基準反射素子部E_REF及び反射素子部E_OBJの選択方法の例を示す。なお、ここでは、説明の簡略化のため、第2反射部4に5行5列の合計25個の反射素子部が配列されているものとしたが、これは例示に過ぎず、反射素子部の数はこれに限定されるものではない。
【0054】
この例では、初めに、格子状に配列された反射素子部の角部の反射素子部を基準反射素子部E_REFとして選択し、その1つ下の反射素子部を対象反射素子部E_OBJとして選択する。図12においては、フェーズ1に示すように、左上角の反射素子部を基準反射素子部E_REFとして選択し、その1つ下の反射素子部を対象反射素子部E_OBJとして選択する。この組み合わせで対象反射素子部E_OBJのキャリブレーションを行った後、対象反射素子部を変えるため、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJを選択し直す。
【0055】
ここでは、図12のフェーズ2のように、キャリブレーション直後のフェーズ1における対象反射素子部E_OBJを新たな基準反射素子部E_REFとして選択し、その1つ下の反射素子部を対象反射素子部E_OBJとして選択する。このように、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJの組を1反射素子部ずつ移動させながら対象反射素子部E_OBJのキャリブレーションを行う。
【0056】
なお、フェーズ4及びフェーズ9のように、同じ列に対象反射素子部E_OBJとして選択できる対象反射素子部が無い場合には、フェーズ5及びフェーズ10のように、未だ対象反射素子部の選択が行われていない隣の列の反射素子部を、対象反射素子部として選択すればよい。
【0057】
このように、反射素子部の配列の中で対象反射素子部E_OBJをスイープしながらキャリブレーションを行うことで、第2反射部4の全ての反射素子部をキャリブレーションすることができる。
【0058】
次いで、放射パターンに基づいたキャリブレーション動作について、具体的に説明する。図13に、放射パターンに基づいたキャリブレーション動作のフロー図を示す。
【0059】
ステップS1
キャリブレーションを行う反射角度θを選択する。送信装置100では、例えば、30°、45°、60°など、複数の反射角度のそれぞれの方向に電波を反射することが求められる場合がある。よって、それぞれの反射角度を指示された場合でも適切な方向に電波を反射できるように、各反射角度についてキャリブレーションするために、初めに、送信装置100に指示する反射角度θを選択する。
【0060】
ステップS2
キャリブレーションを行うために、第2反射部4の反射素子部E1~ENから、基準となる基準反射素子部E_REFを1つ選択する。
【0061】
ステップS3
第2反射部4の反射素子部E1~ENから、キャリブレーション対象となる対象反射素子部E_OBJをさらに1つ選択する。
【0062】
基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJについては、スイッチSjを制御してアンテナ素子Ajと位相変換部Pjとを接続する。これによって、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJは電波を反射可能な状態となる。
【0063】
一方で、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJ以外の反射素子部については、スイッチSjを制御してアンテナ素子Ajと終端器とを接続する。これらの反射素子部については、スイッチSjを制御してアンテナ素子Ajと終端器Tjとを接続する。これによって、これらの反射素子部は電波を反射しない状態となる。
【0064】
これにより、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJだけが電波を反射するので、これらの2つの反射素子部のみについて電波の反射角度のキャリブレーションを行うことが可能となる。
【0065】
ステップS4
反射角度θに応じた移相量を、基準反射素子部E_REFと対象反射素子部E_OBJとに指示する。
【0066】
ステップS5
この状態下で、基準反射素子部E_REF及び対象反射素子部E_OBJのみで電波を放射して放射パターンを測定する。図14に、チルト方向θにおける放射パターンの例を示す。この例では、基準反射素子部E_REFの線路長と対象反射素子部E_OBJの線路長との差が理想的に0mmである場合と、製造誤差などの影響を受けた比較対象として線路長差が0.1mm、0.5mm、1mm及び2.5mmの場合とを示した。
【0067】
基準反射素子部E_REFの線路長と対象反射素子部E_OBJの線路長とに差があると、位相ずれによって電波RWの反射方向が変化することがわかる。この例では、線路長差が大きくなるにしたがって、+θ方向に放射パターンのピークが移動することが分かる。
【0068】
ステップS6
キャリブレーション制御装置1003は、測定した放射パターンを参照し、ピーク位置が所定の角度範囲内に入っているかを判定する。
【0069】
ステップS7
放射パターンのピーク位置が所定の角度範囲内に入っていない場合、オフセット値テーブルに未選択のオフセット値が有るかを判定する。
【0070】
ステップS8
オフセット値テーブルに未選択のオフセット値が無い場合、オフセット値テーブルの全てのオフセット値によっても電波RWの反射角度を所望の角度にできないこと意味している。そのため、キャリブレーション制御装置1003は、異常を示すアラームを出して、キャリブレーション動作を終了する。
【0071】
ステップS9
オフセット値テーブルに未選択のオフセット値が有る場合、キャリブレーション制御装置1003は、未選択のオフセットから1つのオフセット値を選択して、選択したオフセット値を対象反射素子部E_OBJに指示し、処理をステップS5へ戻す。
【0072】
ステップS10
放射パターンのピーク位置が所定の角度範囲内に入っている場合、未調整の反射素子部、すなわち、対象反射素子部E_OBJとして選択されていない反射素子部があるかを判定する。対象反射素子部E_OBJとして選択されていない反射素子部がある場合、処理をステップS3に戻す。
【0073】
ステップS11
対象反射素子部E_OBJとして選択されていない反射素子部が無い場合、未検証の反射角度θがあるかを判定する。未検証の反射角度θが有る場合、処理をステップS1に戻す。未検証の反射角度θが無い場合、全ての反射素子部について、電波の反射角度のキャリブレーションが終了したものとして、キャリブレーション動作を終了する。
【0074】
以上で説明したように、第2反射部4に設けられた複数の反射素子部の中で基準反射素子部及び対象反射素子部の組を移動させながら、対象反射素子部を逐次キャリブレーションしてゆくことで、全ての反射素子部を好適にキャリブレーションすることができる。
【0075】
実施の形態3
本実施の形態では、送信装置における自己点検機能について説明する。図15に、実施の形態3にかかる送信装置300の構成を模式的に示す。送信装置300は、実施の形態1にかかる送信装置100の第2反射部4を第2反射部6に置換し、さらに検査回路7を追加した構成を有する。
【0076】
第2反射部6は、第2反射部4の反射素子部E1~ENを、それぞれ反射素子部EA1~EANに置換した構成を有する。
【0077】
図16に、反射素子部EAj及び検査回路7の回路構成を示す。反射素子部EAjは、反射素子部Ejと比較して、スイッチSAj~SCjを追加した構成を有する。スイッチSAjは、位相変換部Pjの後段に挿入され、送信信号TSjの伝搬経路をアンテナ素子Aj又は終端器Tjに切り替えることができる。スイッチSBjは、オンとなることで、アンテナ素子Ajからの受信信号RSjを検査回路7に入力することができる。スイッチSCjは、オンとなることで、位相変換部Pjから出力された送信信号TSjを検査回路7に入力することができる。
【0078】
反射素子部EAjの位相変換部Pjを検査する場合には、制御信号CPjによって、スイッチSjはアンテナ素子Ajと位相変換部Pjとを接続する。また、スイッチSAjは位相変換部Pjと終端器Tjとを接続することで、送信信号TSjが終端される。さらに、スイッチSBj及びSCjをオンにすることで、受信信号RSj及び送信信号TSjが検査回路7に入力される。
【0079】
なお、反射素子部EAjの位相変換部Pjの検査をしない場合には、スイッチSAjは位相変換部Pjとアンテナ素子Ajとを接続する。また、スイッチSBj及びSCjはオフとなる。
【0080】
検査回路7は、検査用位相変換部71及び判定部72を有する。
【0081】
検査用位相変換部71は、制御信号CDに応じて、複数の固定経路長の移相器を選択可能な位相変換部として構成され、検査対象の反射素子部から入力される受信信号RSjに、本来与えるべき移相量と同一の値に固定された量の位相量を与えることができる。複数の固定経路長の移相器を選択可能な位相変換部は、各所の一般的な構成を適用することができ、例えば、非特許文献1に記載される「図2・3スイッチドライン移相器を利用した3ビット移相器の模式図」のような構成を用いることができる。
【0082】
判定部72は、検査対象の反射素子部の位相変換部Pjによって指示された移相量が与えられた送信信号TSjと、検査用位相変換部71によって固定された位相量が与えられた基準信号REFと、を比較して、位相変換部Pjによって所望の移相量が送信信号TSjに与えられているかを判定する。そして、位相変換部Pjによって所望の移相量が送信信号TSjに与えられていない場合、判定部72は、位相変換部Pjの異常を示すアラームを出力する。
【0083】
例えば、判定部72は、図16に示すように、減算器72A及び異常判定部72Bを有する。減算器72Aは、例えば、送信信号TSjから基準信号REFを減算し、減算して得られた差分信号ΔSを異常判定部72Bへ出力する。異常判定部72Bは、差分信号ΔSのレベルLを予め定められた閾値THと比較し、レベルLが閾値THよりも大きい場合、位相変換部Pjに異常が生じているものとして、アラームALMを出力する。
【0084】
以上、本構成によれば反射素子部のそれぞれに位相変換部における移相量が所望の値となっているかを、検査回路によって検査することができる。これにより、反射素子部の異常を早期に検出できる。また、送信装置100の運用を開始した後でも、所望のタイミングで検査を行うことも可能である。
【0085】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態3にかかる送信装置300は、実施の形態1にかかる送信装置100の変形例として説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、送信装置300に実施の形態2にかかるキャリブレーションシステム1000を適用して、同様にキャリブレーション動作を行えることは、言うまでもない。
【0086】
実施の形態3で説明した検査回路の構成は例示に過ぎず、各反射素子部からの送信信号に与えられた移相量が所望の値であるか否かを検査できる限り、適宜他の構成としてもよい。
【0087】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0088】
(付記1)入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信するRIS(Reconfigurable Intelligent metaSurface)反射板として構成される第2反射部と、前記第2反射部を制御する制御部と、を備え、前記第2反射部は、前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて前記制御部から指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度にて前記電波を反射することで、前記目標反射角度にて前記電波を反射する、送信装置。
【0089】
(付記2)前記第2反射部は、2次元的に配列された複数の反射素子部と、前記複数の反射素子部のそれぞれにおける前記電波の反射を制御する位相制御部と、を備え、前記反射素子部は、前記放射部から放射された電波を受信して受信信号を出力するアンテナ素子と、前記受信信号の位相に、前記位相制御部から与えられる制御信号に応じて所定の移相量を与えた送信信号を、前記アンテナ素子へ出力する位相変換部と、を備え、前記位相制御部は、前記第2反射部にて前記制御部から指示された反射角度の通りに前記電波が反射されるように、前記位相変換部での前記移相量にオフセットを与える、付記1に記載の送信装置。
【0090】
(付記3)前記位相制御部は、前記目標反射角度に対応した前記移相量に与える位相オフセットが格納されたテーブル情報を有し、前記位相制御部は、前記制御部から指示された前記目標反射角度に応じて前記テーブル情報を参照して、前記位相オフセットを決定する、付記2に記載の送信装置。
【0091】
(付記4)前記送信信号に与えられた前記移相量を検査する検査回路をさらに備え、前記複数の反射素子部のそれぞれは、終端器と、前記アンテナ素子と、前記位相変換部及び前記終端器との間に挿入され、前記受信信号の入力先を、前記位相変換部又は前記終端器に切り替える第1のスイッチと、前記位相変換部からの前記送信信号の出力先を、前記アンテナ素子又は前記終端器に切り替える第2のスイッチと、前記アンテナ素子と前記検査回路との間に挿入され、前記受信信号の前記検査回路への入力経路を開閉する第3のスイッチと、前記位相変換部の出力と前記検査回路との間に挿入され、前記送信信号の前記検査回路への入力経路を開閉する第4のスイッチと、を備え、前記第1のスイッチによって前記アンテナ素子と前記位相変換部の入力とを接続し、前記第2のスイッチによって前記位相変換部の出力と前記終端器とを接続し、前記第3及び第4のスイッチを閉じた状態で、前記検査回路は、前記受信信号に固定値である前記移相量を与えた信号と前記送信信号とを比較し、前記受信信号に固定値である前記移相量を与えた信号と前記送信信号との位相差が所定量よりも大きいか否かを検出する、付記2又は3に記載の送信装置。
【0092】
(付記5)前記増幅器は、進行波管増幅器として構成される、付記1乃至4のいずれか1項に記載の送信装置。
【0093】
(付記6)付記2乃至5のいずれか一項に記載の前記送信装置の前記複数の反射素子部のキャリブレーションを制御するキャリブレーション制御装置と、前記第1反射部で反射されてから前記第2反射部で反射されることなく漏れ出た電波を検出する漏れ電波検出アンテナと、前記第2反射部で反射された電波の放射パターンを取得するための放射パターン測定用アンテナと、を備え、前記キャリブレーション制御装置は、前記漏れ電波が所定のレベルよりも小さくなるように、かつ、前記放射パターンのピークが所定の角度範囲内に収まるように、前記位相制御部に、選択する位相オフセットを指示する、送信装置のキャリブレーションシステム。
【0094】
(付記7)前記キャリブレーション制御装置は、前記複数の反射素子部から、1つの基準反射素子部と、キャリブレーション対象である対象反射素子部と、を選択し、前記位相制御部にキャリブレーション用目標反射角度を指示し、前記基準反射素子部及び対象反射素子部のみで前記第1反射部で反射された電波を反射して放射パターンを取得し、前記放射パターンのピークが、前記キャリブレーション用目標反射角度を基準とする所定の範囲内に収まるように、前記位相制御部に、前記対象反射素子部に指示すべき位相オフセットを指示することで、前記対象反射素子部のキャリブレーションを行う、付記6に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0095】
(付記8)前記キャリブレーション制御装置は、隣接する2つの前記反射素子部を、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部として選択する、付記7に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0096】
(付記9)前記キャリブレーション制御装置は、隣接する2つの前記反射素子部を、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部として選択する、付記7又は8に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0097】
(付記10)前記キャリブレーション制御装置は、最初に基準反射素子部として選択された前記反射素子部以外の反射素子部のそれぞれが対象反射素子部として選択されるように、基準反射素子部及び対象反射素子部の選択を繰り返して、それぞれの前記対象反射素子部のキャリブレーションを行う、付記7乃至9のいずれか一項に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0098】
(付記11)前記キャリブレーション制御装置は、前回に前記対象反射素子部としてキャリブレーションが完了した反射素子部を、次回の基準反射素子部として選択する、付記10に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0099】
(付記12)前記複数の反射素子部のそれぞれは、終端器と、前記アンテナ素子と、前記位相変換部及び前記終端器との間に挿入され、前記受信信号の入力先を、前記位相変換部又は前記終端器に切り替える第1のスイッチと、をさらに備え、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部では、前記第1のスイッチは、前記アンテナ素子と前記位相変換部とを接続し、前記基準反射素子部及び前記対象反射素子部以外の反射素子部では、前記第1のスイッチは、前記アンテナ素子と前記終端器とを接続する、付記7乃至11のいずれか一項に記載の送信装置のキャリブレーションシステム。
【0100】
(付記13)入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器が増幅し前記入力信号に基づいて、空間に電波を放射する放射部と、前記放射部から放射された電波を反射する第1反射部と、前記第1反射部からの電波を反射することで送信対象に送信する第2反射部と、を備える送信装置において、前記送信対象への反射角度を示す目標反射角度に基づいて指示された反射角度にオフセットを加えた反射角度を前記第2反射部に指示し、前記第2反射部は、前記指示された反射角度に基づいて前記電波を反射することで、前記電波を前記目標反射角度にて前記電波を反射する、送信方法。
【符号の説明】
【0101】
1 増幅器
2 放射部
3 第1反射部
4 第2反射部
5 制御部
6 第2反射部
7 検査回路
41 位相制御部
71 検査用位相変換部
72 判定部
72A 減算器
72B 異常判定部
100 送信装置
110 ステージ
300 送信装置
1000 キャリブレーションシステム
1001 漏れ電波検出用アンテナ
1002 放射パターン測定用アンテナ
1003 キャリブレーション制御装置
CA 反射角度制御信号
CP1~CPN 制御信号
DET1 漏れ電波検出信号
DET2 放射パターン検出信号
DRV 駆動信号
E1~EN、EA1~EAN 反射素子部
E_REF 基準反射素子部
E_OBJ 対象反射素子部
IN RF信号
INS1、INS2 指示信号
Sj、SAj~SCj スイッチ
T1~TN 位相変換部
TAB テーブル情報
Tj 終端器
Pj 位相変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16