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特開2024-89828インパクト検出装置、インパクト検出方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089828
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】インパクト検出装置、インパクト検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A63B69/36 541W
A63B69/36 541E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205279
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 良平
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄美
(57)【要約】
【課題】素振りや空振りと、インパクトを伴うスイングとを区別する。
【解決手段】ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部101と、スイングの時間推移を示す基準動作データであって、スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部102と、動画データのうち、基準動作データにおいて識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を特定する特定部104と、区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合、動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部105と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部と、
モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部と、
前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を、特定する特定部と、
前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、
前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部と、
を有するインパクト検出装置。
【請求項2】
前記区間に打球音を含むフレームが2以上存在する場合、
前記判定部は、
前記識別子が付されたタイミングに最も近いフレームをインパクトフレームとして判定する
請求項1に記載のインパクト検出装置。
【請求項3】
前記基準動作データは、モデル毎に複数で用意され、
前記第2取得部は、
前記複数の基準動作データのうち、前記動画データで示されるスイングに類似する一の基準動作データを取得する
請求項1に記載のインパクト検出装置。
【請求項4】
前記基準動作データは、前記モデルにおける関節座標の時間推移を示すデータであり、
前記動画データにおけるユーザーにおける関節座標の時間推移を解析する解析部を有し、
前記第2取得部は、
前記複数の基準動作データのうち、
前記動画データの、ユーザーにおける関節座標の時間推移に最も類似する時間推移を有する基準動作データを取得する
請求項3に記載のインパクト検出装置。
【請求項5】
前記動画データを編集する編集部を有し、
前記編集部は、
前記動画データに対し、前記特定部で特定されたインパクトフレームを基準に、第1時間だけ前方のフレームから第2時間だけ後方のフレームまでを切り出す
請求項2に記載のインパクト検出装置。
【請求項6】
前記動画データに2以上のスイングが含まれている場合、
前記編集部は、
前記スイング毎に、当該動画データを切り出す
請求項5に記載のインパクト検出装置。
【請求項7】
前記編集部によって切り出された2以上の動画データを並べて再生する再生部を備える
請求項6に記載のインパクト検出装置。
【請求項8】
コンピューターに、
ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する過程と、
モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する過程部と、
前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を、特定する過程と、
前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、
前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する過程と、
を実行させるインパクト検出方法。
【請求項9】
コンピューターを、
ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部、
モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部、
前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を、特定する特定部、および、
前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばインパクト検出装置、インパクト検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ等において一定のパターンを有するスイングを撮影し、撮影された動画データを解析することが行われている。これにより、当該スイングを評価したり、診断したりすることができる。このような技術の例として、例えばスイングに係る動画データの画像認識にかかる処理コストを減少させるとともに、画像認識結果を利用した動作の解析精度を向上させる技術が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-125075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インパクト(打撃)を伴わないスイング、具体的には単なる素振りや空振りと、実際にインパクトを伴うスイングと、を区別することが困難である、という課題がある。
このような事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、素振りや空振りと、インパクトを伴うスイングとを区別することが容易な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るインパクト検出装置は、ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部と、モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部と、前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を、特定する特定部と、前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るインパクト検出装置の使用状況の一例を示す図である。
図2】インパクト検出装置のハードウェアの構成を示す図である。
図3】インパクト検出装置の機能ブロック図である。
図4】動画データの一例を示す図である。
図5】基準動作データの一例を示す図である。
図6】インパクト検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7】動画データと音声データとの関係においてインパクト検出を示す図である。
図8】スイングが連続する動画データの一例を示す図である。
図9】動画データの切り出しを示す図である。
図10】動画データの再生例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態に係るインパクト検出装置について図面を参照して説明する。
なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係るインパクト検出装置1の使用状況の一例を示す図である。インパクト検出装置1は、例えば撮影機能付きの情報処理装置、具体的にはスマートフォンである。インパクト検出装置1は、ユーザーUによるインパクトを伴うスイング、例えばゴルフにおけるスイングを撮影して、当該撮影した動画データを解析する。なお、インパクト検出装置1は、スマートフォン以外、例えば携帯型端末装置や、パーソナルコンピューターなどのように動画データを解析する機能を有する装置であってもよい。
【0009】
図2は、インパクト検出装置1におけるハードウェアの構成を示す図である。インパクト検出装置1によるインパクト検出は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。インパクト検出装置1は、処理装置10と撮影装置11と操作入力装置12と表示装置13と記憶装置14と通信装置15とを含む。
【0010】
処理装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の単数または複数の演算処理回路で構成され、情報処理装置であるインパクト検出装置1の各要素を統括的に制御する。なお、処理装置10は、CPUのほか、DSP(Digital Signal Processor)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路によって構成されてもよい。
【0011】
撮影装置11は、ユーザーUのスイングを撮影し、当該撮影した音声および映像を含む動画データを出力する。
操作入力装置12は、ユーザーによる操作を受け付ける。操作入力装置12は、例えばユーザーが押下する複数の操作子、またはユーザーによる接触を検知するタッチパネルであり、表示装置13による画像表示面に重ねられる。なお、操作入力装置12を操作するユーザーは、スイングをしたユーザー本人であってもよいし、他のユーザーであってもよい。
【0012】
表示装置13は、例えば液晶パネルや有機ELパネルで構成され、処理装置10による制御のもとで各種の画像を表示する。例えば撮影されたスイングや、当該スイングの編集画面などが表示装置13に表示される。
【0013】
記憶装置14は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成された単数または複数のメモリーであり、処理装置10が実行するプログラムと処理装置10が使用する各種データや、スイングの動画データを記憶する。なお、複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置14を構成してもよい。また、インパクト検出装置1に対して着脱可能な可搬型の記録媒体、または、インパクト検出装置1がネットワークを介して通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)を、記憶装置14の一部として利用してもよい。
【0014】
通信装置15は、処理装置10による制御のもとで、ネットワークを介してサーバー等と通信する。
【0015】
図3は、処理装置10の機能的な構成を例示するブロック図である。処理装置10は、記憶装置14に記憶されたプログラムを実行することで、動画データにおいてインパクトが発生したインパクトフレームを検出するための複数の要素(制御部100、第1取得部101、第2取得部102、解析部103、特定部104および判定部105)として機能する。また、処理装置10は、動画データにおいてインパクトフレーム検出した後に、当該動画データを編集するための編集部106、および、動画データを再生するための再生部107としても機能する。
なお、処理装置10における機能の一部を他の装置、例えばネットワークを介して接続されたサーバーに負担させる構成としてもよい。
【0016】
図4は、動画データの一例を示す図である。図に示されるように、動画データは、インパクトの検出対象であって、ユーザーUによるゴルフのスイングを、例えばインパクト検出装置1によって撮影したものである。当該動画データは、複数のフレームFrで構成される映像部分と、図4では省略されているが、映像部分に同期した音声部分と、を含む。映像部分では、スイング画像がフレームFr毎に記録され、音声部分では、スイングの際に収音した音が記録される。
なお、動画データの各フレームFrには、開始フレームからの通し番号としてフレーム番号が関連付けられる。
【0017】
図では、スイングの代表的な動作のうち、アドレス、トップ、インパクトおよびフィニッシュが順に(A)、(C)、(E)および(G)で示される。
また、動画データは、例えばMPEG方式であるが、複数のフレームで連続する映像部分と、当該映像部分に同期した音声部分とを含むのであれば、方式は問わない。
【0018】
インパクト検出装置1では、動画データのインパクトフレームを検出するために、基準動作データを参照する。そこで、基準動作データについて説明する。
【0019】
図5は、基準動作データを説明するための図である。
基準動作データは、模範/見本になるスイングを示すデータである。詳細には、基準動作データは、モデルMがスイングした際の骨格情報の各関節Jにおける三次元座標の時間推移を示すデータである。三次元座標の基準は、例えばモデルMにおける両足の重心座標であり、各関節Jにおける三次元座標は、当該重心座標からの相対座標によりフレームFr毎に規定される。
なお、基準動作データの各フレームFrには、動画データと同様に、開始フレームからの通し番号としてフレーム番号が関連付けられる。
【0020】
関節Jの例としては、例えば左膝、右膝、左股関節、右股関節、左肩関節、右肩関節、左肘および右肘など挙げられる。
図では、右利きのモデルMが正面(打球方向を北とした場合に、東)から見たスイングした際の関節Jが黒丸で示され、スイングのうち、代表的なアドレス、テイクバック、トップ、ダウンスイング、インパクト、フォロースルーおよびフィニッシュについて、順に(1)~(7)として例示されている。
基準動作データで示されるスイングのフレームのうち、インパクトを示すフレームインパクトフレームには、他のフレームとは区別するために識別子が予めタグ付けされる。
【0021】
基準動作データは、各関節Jの三次元座標を示すので、視点を指定すれば、任意の地点から、モデルMのスイングを眺めることが可能である。
スイングは、一般的に言えば、ユーザーUの性別、利き手、世代(年齢)、ゴルフの巧拙(プロ、セミプロ、アマ)などの属性によって異なる。このため、基準動作データは、これらの属性に応じて、複数の種類が用意されてデータベース化される。基準動作データのデータベースは、記憶装置14に記憶する構成としてもよいし、クラウド上のサーバーに記憶する構成としてもよい。
また、基準動作データのデータベースの検索性を向上させるために、基準動作データで示されるスイング(関節座標の時間推移)の類似性を示す樹形図を、予め作成してもよい。
【0022】
次に、インパクト検出装置1において、動画データからインパクトフレームを検出するための動作について説明する。
【0023】
図6は、インパクト検出装置1の動作を示すフローチャートである。この動作は、例えばユーザーUが、インパクト検出装置1に対して、インパクトフレームを検出するアプリケーションプログラムに対応するアイコンを操作したことを契機として実行される。
【0024】
当該アプリケーションプログラムが実行されると、制御部100は、第1取得部101に対し、インパクトフレームの検出対象である動画データの取得を指示する(ステップSa11)。
【0025】
指示された第1取得部101は、例えば1または2以上の動画データの一覧を表示装置13に表示させて、ユーザーUにインパクトフレームの検出対象となる動画ファイルの選択を促す。ユーザーUが動画ファイルすると、第1取得部101は、選択した動画ファイルを、インパクトフレームの検出する対象の動画ファイルとして取得する。
なお、動画ファイルの取得元としては、記憶装置14や、ネットワークを介した外部装置などが挙げられる。記憶装置14に記憶された動画ファイルとしては、撮影装置11で撮影された直近の動画ファイルや、過去に撮影された動画ファイルなどが含まれる。
【0026】
制御部100は、第1取得部101によって取得された動画データを解析部103に転送する。解析部103は、動画データにおいて、スイングするユーザーの関節座標の時間推移を、既知の方法を用いて解析する。
解析部103は、解析した関節座標の時間推移を示す情報を第2取得部102に転送する。
【0027】
第2取得部102は、動画データを解析して得られた関節座標の時間推移に最も類似する基準動作データを、データベースを検索して特定し、取得する(ステップSa12)。なお、解析して得られた関節座標の時間推移に最も類似する基準動作データは、例えばSubsequence Dynamic Time Warpingを用いて特定してもよい。
【0028】
制御部100は、第1取得部101によって取得された動画データおよび第2取得部102によって取得された基準動作データを特定部104に転送する。特定部104は、動画データの各フレームと基準動作データの各フレームとの相関性を、具体的には、動画データの各フレームが基準動作データのどのフレームに対応しているのかを求める。
【0029】
図7の上欄は、動画データの各フレームと基準動作データの各フレームとの相関性を示す図であり、具体的には、動画データの各フレームが基準動作データのどのフレームに対応しているのかを黒点で示す。
例えば、動画データにおいてフレーム(A)が、基準動作データにおいてアドレス(1)のフレームに対応していることを示す。同様に、動画データにおいてフレーム(E)が、基準動作データにおいてインパクト(5)のフレームに対応していることを示す。また、動画データにおいてフレーム(G)が、基準動作データにおいてフィニッシュ(7)のフレームに対応していることを示す。
【0030】
特定部104は、相関性を求めた後、基準動作データのインパクト(5)に対応する動画データのフレーム(E)を基準にして、時間的に前の例えば0.3秒から、時間的に後方の例えば0.3秒までの区間Sを、当該動画データにおいてインパクトフレームが含まれる可能性が高い区間であると特定する(ステップSa13)。
特定部104は、特定した区間Sを示す情報を判定部105に転送する。
【0031】
次に、判定部105は、動画データのうち、特定部104によって特定された区間Sの音声部分に、打撃音が1つであるか否かを判定する(ステップSa14)。打撃音とは、極めて短時間(例えば0.01秒)以内において音量が閾値を超える音をいう。図7の下欄は、特定部104によって特定された区間Sの音声部分を示す波形一例であって、当該区間Sに打撃音が2つ存在する場合の例である。
【0032】
判定部105は、区間Sの音声部分に存在する打撃音が1つのみと判定した場合(ステップSa14の判定結果が「Yes」である場合)、区間Sの映像部分のうち、当該打撃音がピーク値を迎えるフレームをインパクトフレームと検出する(ステップSa15)。
【0033】
区間Sの音声部分に存在する打撃音が1つではないと判定される場合(ステップSa14の判定結果が「No」になる場合)、次に、判定部105は、当該区間Sの音声部分に存在する打撃音が2つ以上であるか否かを判定する(ステップSa16)。
【0034】
当該区間Sの音声部分に存在する打撃音が2つ以上であると判定した場合(ステップSa16の判定結果が「Yes」の場合)、判定部105は、区間Sに存在する2以上の打撃音のうち、動画データのフレーム(E)に最も近いタイミングの打撃音が、ユーザーUによるスイングで発生したインパクトであるとする。そして、判定部105は、当該打撃音がピーク値を迎えるフレームをインパクトフレームと特定する(ステップSa17)。
【0035】
ゴルフ練習場では、多数のユーザーが、同時並行的にゴルフを練習する。このため、短時間の間に多数の打撃音が発生し得る。図7の下欄は、区間Sの音声部分では、タイミングa、bで打撃音が発生した場合の例である。この場合、タイミングbで発生した打撃音の音量がタイミングaで発生した打撃音の音量よりも大きければ、ユーザーUのスイングにおけるインパクトがタイミングbで発生したと誤検出してしまう可能性がある。
【0036】
これに対し、本実施形態では、打撃音の音量ではなく、フレーム(E)に最も近いタイミングaの打撃音が、ユーザーUによるスイングで発生したと判定されるので、多数のユーザーが同時に練習する場合であっても、ユーザーUのスイングにおけるインパクトフレームを精度良く特定することができる。
【0037】
なお、区間Sの音声部分に存在する打撃音が1つではなく(ステップSa14の判定結果が「No」であって)、打撃音が2つ以上でない場合(ステップSa16の判定結果が「No」になる場合)とは、当該区間Sの音声部分に打撃音が存在しない場合である。このため、判定部105は、ステップSa16の判定結果が「No」の場合には、動画データにはインパクトフレームが存在しないことになるので、制御部100に通知し、当該制御部100は、エラー処理を実行する(ステップSa18)。
本実施形態では、ユーザーUによるスイングが単なる素振りである場合、区間Sに打撃音が発生しないので、ステップSa18においてエラー処理が実行される。このため、打撃音を伴わないスイングにおいてフレーム(E)がインパクトフレームである、と特定されることはない。
なお、エラー処理の例としては、動画データにはインパクトフレームが存在しない旨や、動画データのスイングは素振りです旨などのメッセージを、表示装置13に表示させることなどが挙げられる。
【0038】
本実施形態によれば、素振りや空振りと、実際の打撃を伴うスイングとを区別することができるだけでなく、複数人が同時並行的にスイングする場合でも、ユーザーのスイングを撮影したインパクトフレームを精度良く検出することができる。
【0039】
実施形態において、ユーザーUが1回のスイングしたことを前提として説明したが、実際には、撮影開始から撮影終了まで、スイングを複数回繰り返す。動画データに複数回のスイングが含まれている場合、スイング毎にインパクトフレームを特定すればよい。
【0040】
図8は、動画データに複数回のスイングが含まれている場合において、当該動画データの各フレームと基準動作データの各フレームとの相関性を示す図である。図に示される相関性は、1つの動画データに3回のスイングが含まれる例である。
この例において、音声部分の図示は省略されているが、仮に、各スイングのフレーム(E)付近に打撃音が発生していれば、当該打撃音の発生しているフレームがインパクトフレームとして検出される。
【0041】
動画データに複数回のスイングが含まれる場合、各スイングにおいてインパクトフレームが特定された後に、編集部106は、当該動画データを編集して、各スイングを切り出す構成としてもよい。
具体的には、当該動画データのうち、3回のスイングにおいてフレーム(E)がインパクトフレームとして特定された場合、図9に示されるように、編集部106が、フレーム(E)の時間的に前の2.0秒から、フレーム(E)の時間的に後の2.0秒までを、1つのスイングとして切り出す。
【0042】
なお、図の例の場合、スイングを示す動画データが3つ切り出されることになる。このように切り出された動画データには、例えば撮影日時など情報が関連付けられる。
また、フレーム(E)の時間的に前の2.0秒が第1時間の一例であり、フレーム(E)の時間的に後の2.0秒が第2時間の一例である。第1時間および第2時間については、ユーザーUによって任意の時間に設定可能にしてもよい。
【0043】
スイング毎に、動画データが切り出された場合に、再生部107は、例えば図10に示されるように、比較のために2つ並べて再生する構成としてもよい。2つ並べて再生する構成において、図に示されるように、インパクトフレームとして特定されたフレーム(E)で揃えれば、2つの動画においてインパクト前後においてスイングの相違をユーザーUが把握しやすくなる。
【0044】
再生する動画データについては、2つに限られず、3以上であってもよい。また、再生する動画データについて、記憶装置14に記憶されているものに限られず、クラウド上のサーバーに記憶された動画データであってもよい。
例えば、自己のスイングと、より上級者のスイングとを比較することによって、自己のスイングが劣っている点を把握しやすくなる。また例えば過去のスイングと現在のスイングとを比較することによって上達の度合いを把握することもできる。る、
なお、再生部107は、等速の再生に限られず、スロー再生してもよいし、早送り再生してもよいし、コマ送りで再生してもよい。
【0045】
なお、実施形態では、インパクトフレームを特定するアプリケーションプログラムが、ユーザーUによる操作を契機として実行されたが、例えばスイングの撮影が終了したことを契機として実行される構成としてもよい。この構成において、第1取得部101は、撮影されたスイングの動画データをインパクトの検出対象として取得する。
また、実施形態では、動画データの解析を、インパクト検出装置1の解析部103が行う構成としたが、インパクト検出装置1以外の装置、例えば外部装置が解析し、当該解析結果である、関節座標の時間推移を示す情報を、第2取得部102が取得する構成でもよい。
【0046】
また、実施形態では、スイングとして、ゴルフスイングを例示したが、他にテニス、野球、卓球など打撃音を伴うスイングにおいて適用可能である。
【0047】
以上の記載から、例えば以下のように本開示の好適な態様が把握される。
【0048】
本開示のひとつの態様(態様1)に係るインパクト検出装置は、ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部と、モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部と、前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を特定する特定部と、前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部と、を有する。
【0049】
態様1によれば、第1に、動画データにおいて、基準動作データにおいてインパクトである旨の識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含む区間が特定され、第2に、当該区間に、打球音を含むフレームが存在すれば、動画データにインパクトを伴うスイングが含まれると判定される。換言すれば、当該区間に、打球音を含むフレームが存在しなれければ、動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれないと判定される。したがって、態様1によれば、素振りや空振りのように、インパクトを伴わないスイングと、インパクトを伴うスイングとを区別することができる。
【0050】
態様1の具体的な態様2に係るインパクト検出装置では、前記区間に打球音を含むフレームが2以上存在する場合、前記判定部は、前記識別子が付されたタイミングに最も近いフレームをインパクトフレームとして判定する。
態様2によれば、区間に打球音を含むフレームが2以上存在する場合、識別子が付されたタイミングに最も近いフレームがインパクトフレームとして判定される。このため、対象ユーザーによる打球音を伴うフレームを、他のユーザーによる打球音の影響を受けずに、精度良く特定することができる。
【0051】
態様1の具体的な態様3に係るインパクト検出装置では、前記基準動作データは、モデル毎に複数で用意され、前記第2取得部は、前記複数の基準動作データのうち、前記動画データで示されるスイングに類似する一の基準動作データを取得する。
態様3によれば、複数の基準動作データのうち、動画データで示されるスイングに類似する基準動作データが用いられて、区間が特定される。
【0052】
態様3の具体的な態様4に係るインパクト検出装置では、前記基準動作データは、前記モデルにおける関節座標の時間推移を示すデータであり、前記動画データにおけるユーザーにおける関節座標の時間推移を解析する解析部を有し、前記第2取得部は、前記複数の基準動作データのうち、前記動画データの、ユーザーにおける関節座標の時間推移に最も類似する時間推移を有する基準動作データを取得する。
【0053】
態様2の具体的な態様5に係るインパクト検出装置では、前記動画データを編集する編集部を有し、前記編集部は、前記動画データに対し、前記特定部で特定されたインパクトフレームを基準に、第1時間だけ前方のフレームから第2時間だけ後方のフレームまでを切り出す。
態様5によれば、動画データのうち、インパクトフレームに対し第1時間だけ前方のフレームから、インパクトフレームに対し第2時間だけ後方のフレームまでが、編集部によって切り出される。
【0054】
態様5の具体的な態様6に係るインパクト検出装置では、前記動画データに2以上のスイングが含まれている場合、前記編集部は、前記スイング毎に、当該動画データを切り出す。態様6によれば、複数のスイングを含む一連の動画データが、スイング毎に切り出される。
【0055】
態様6の具体的な態様7に係るインパクト検出装置では、前記編集部によって切り出された2以上の動画データを並べて再生する再生部を備える。態様7によれば、2以上の動画を再生することによりスイングを比較することができる。
【0056】
本開示の好適な態様8に係るインパクト検出方法は、コンピューターに、ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する過程と、モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する過程部と、前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を特定する過程と、前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する過程と、を実行させる。
【0057】
本開示の好適な態様9に係るプログラムは、コンピューターを、ユーザーによるスイングの際に収録した音を含む動画データであって、当該スイングが複数フレームで撮影された動画データを取得する第1取得部、モデルによるスイングの時間推移を示す基準動作データであって、前記スイングにおいてインパクトのタイミングであることを示す識別子が付された基準動作データを取得する第2取得部、前記動画データのうち、前記基準動作データにおいて前記識別子が付されたタイミングに相当するフレームを含んだ区間を特定する特定部、および、前記区間に、打球音を含むフレームが存在するか否かを判定し、前記区間に打球音を含むフレームが存在すると判定した場合には、前記動画データに、インパクトを伴うスイングが含まれると判定する判定部、として機能させる。
【符号の説明】
【0058】
1…インパクト検出装置、10…処理装置、11…撮影装置、12…操作入力装置、13…表示装置、14…記憶装置、15…通信装置、100…制御部、101…第1取得部、102…第2取得部、103…解析部、104…特定部、105…判定部、106…編集部、107…再生部。
図1
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図8
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図10