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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089831
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】長尺部材の送り装置及び進退方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/15 20060101AFI20240627BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F27D3/15 T
F27D3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205283
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506000128
【氏名又は名称】日鉄環境エネルギーソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】戸高 光正
(72)【発明者】
【氏名】星沢 康介
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠之
(72)【発明者】
【氏名】新居田 理人
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055AA03
4K055MA03
(57)【要約】
【課題】外周面に段差を有する長尺部材を省スペースで進退させるのに有効な長尺部材の送り装置及び進退方法を提供する。
【解決手段】送り装置1は、長尺部材90の外周面91に接し、長尺部材90を進退させる回転駆動ローラ110と、回転駆動ローラ110との間に長尺部材90を挟む押さえローラ120と、押さえローラ120を外周面91に押し付けるローラ押さえ部130と、を備え、ローラ押さえ部130は、外周面91から離れて位置する固定部131と、固定部131と外周面91との間に位置し、押さえローラ120を保持する軸受部132と、長尺部材90の前進方向又は後退方向である延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続され、固定部131へ近づく方向への軸受部132の変位に応じた反力を発生する板バネ133と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を進退させる装置であって、
前記長尺部材の外周面に接し、前記長尺部材の進退方向に垂直な第一軸線まわりに回転して前記長尺部材を進退させる回転駆動ローラと、
前記回転駆動ローラとの間に前記長尺部材を挟み、前記長尺部材の進退に追従して前記第一軸線に平行な第二軸線まわりに回転する押さえローラと、
前記長尺部材の外周面に垂直な変位方向における前記押さえローラの変位を許容しつつ、前記押さえローラを前記長尺部材の外周面に押し付けるローラ押さえ部と、を備え、
前記ローラ押さえ部は、
前記長尺部材の外周面から離れて位置する固定部と、
前記固定部と前記長尺部材の外周面との間に位置し、前記押さえローラを保持する軸受部と、
前記長尺部材の前進方向又は後退方向である延出方向に向かって凸となるように屈曲し、前記延出方向から前記固定部と前記軸受部とに接続され、前記固定部へ近づく方向への前記軸受部の変位に応じた反力を発生する板バネと、
を有する、長尺部材の送り装置。
【請求項2】
前記進退方向において、前記第一軸線の位置と前記第二軸線の位置とが互いに異なっている、
請求項1記載の長尺部材の送り装置。
【請求項3】
前記進退方向に沿って前記回転駆動ローラと並ぶように設けられ、前記長尺部材の外周面に接し、前記長尺部材の進退に追従して前記進退方向に垂直な第三軸線まわりに回転するガイドローラと、
前記ガイドローラとの間に前記長尺部材を挟み、前記長尺部材の進退に追従して前記進退方向に垂直な第四軸線まわりに回転する第二押さえローラと、
前記変位方向における前記第二押さえローラの変位を許容しつつ、前記第二押さえローラを前記長尺部材の外周面に押し付ける第二ローラ押さえ部と、を更に備え、
前記第二ローラ押さえ部は、
前記長尺部材の外周面から離れて位置する第二固定部と、
前記第二固定部と前記長尺部材の外周面との間に位置し、前記第二押さえローラを保持する第二軸受部と、
前記変位方向に交差する第二延出方向に向かって凸となるように屈曲し、前記第二延出方向から前記第二固定部と前記第二軸受部とに接続され、前記第二固定部へ近づく方向への前記第二軸受部の変位に応じた反力を発生する第二板バネと、
を有する、
請求項1又は2記載の長尺部材の送り装置。
【請求項4】
前記延出方向は、前記押さえローラから前記第二押さえローラに向かう方向であり、
前記第二延出方向は、前記第二押さえローラから前記押さえローラに向かう方向である、
請求項3記載の長尺部材の送り装置。
【請求項5】
前記回転駆動ローラと、前記押さえローラと、前記ローラ押さえ部と、前記ガイドローラと、前記第二押さえローラと、前記第二ローラ押さえ部と、を収容して一体化するケーシングを更に備える、
請求項4記載の長尺部材の送り装置。
【請求項6】
前記ケーシングを保持する保持部と
前記ケーシングから前記保持部に作用する反力を検出する力センサと、
を更に備える、
請求項5記載の長尺部材の送り装置。
【請求項7】
前記力センサにより検出された反力に基づいて、前記回転駆動ローラの回転トルクを制御する制御部を更に備える、
請求項6記載の長尺部材の送り装置。
【請求項8】
前記回転駆動ローラは、周方向に沿った溝を外周面に有し、
前記溝は、前記第一軸線から遠ざかるにつれて互いに離れるように傾斜した第一内面及び第二内面を有し、
前記第一内面及び前記第二内面の両方が前記長尺部材の外周面に接する、
請求項1又は2記載の長尺部材の送り装置。
【請求項9】
前記第一内面と前記第二内面とのなす角が、60~120度である、
請求項8記載の長尺部材の送り装置。
【請求項10】
前記回転駆動ローラと前記押さえローラとの間を経て後退方向に延びた前記長尺部材を支持し、前記長尺部材の進退に追従して移動する補助部を更に有する、
請求項1又は2記載の長尺部材の送り装置。
【請求項11】
前記長尺部材は、溶融炉内に酸素を送り込みながら前記溶融炉内で燃焼する酸素ランスパイプであり、
前記回転駆動ローラは、前記溶融炉の出湯口に挿入された前記酸素ランスパイプを進退させる、
請求項1記載の長尺部材の送り装置。
【請求項12】
前記長尺部材は、溶融炉の出湯口の固着物を突き崩す突き棒であり、
前記回転駆動ローラは、前記溶融炉の出湯口に向かって前記突き棒を進退させる、
請求項1記載の長尺部材の送り装置。
【請求項13】
前記出湯口に対向する位置と、前記出湯口に対向しない位置とを通る搬送方向に沿って移動し、前記出湯口に対し、前記長尺部材の進退とは別の作業を行う他の装置に取り付けられ、前記搬送方向に沿って前記他の装置と並ぶように前記回転駆動ローラ、前記押さえローラ、及び前記ローラ押さえ部を保持する保持部と、
を更に備える、
請求項11又は12記載の長尺部材の送り装置。
【請求項14】
前記他の装置は、閉塞された前記出湯口を開孔させる開孔装置である、
請求項13記載の長尺部材の送り装置。
【請求項15】
前記他の装置は、開放された前記出湯口を閉塞させる閉塞装置である、
請求項13記載の長尺部材の送り装置。
【請求項16】
継ぎ目をスリーブにより接続された長尺部材を進退方向に沿わせることと、
前記長尺部材の外周面に回転駆動ローラを接させることと、
押さえローラを前記長尺部材の外周面に接させ、前記押さえローラと前記回転駆動ローラとで前記長尺部材を挟むことと、
前記長尺部材の外周面から離れて位置する固定部と、
前記長尺部材の外周面に垂直な変位方向において、前記固定部と前記長尺部材の外周面との間に位置し、前記押さえローラを保持する軸受部と、
前記長尺部材の前進方向又は後退方向である延出方向に向かって凸となるように屈曲し、前記延出方向から前記固定部と前記軸受部とに接続され、前記固定部へ近づく方向への前記軸受部の変位に応じた反力を発生する板バネと、
を有するローラ押さえ部によって、前記押さえローラを前記長尺部材の外周面に押し付けることと、
前記進退方向に垂直な第一軸線まわりに前記回転駆動ローラを回転させることで前記長尺部材を前記進退方向に沿って進退させ、前記長尺部材の進退に追従して前記押さえローラを前記第一軸線に平行な第二軸線まわりに回転させることと、
前記スリーブが前記回転駆動ローラと前記押さえローラとの間を通過する際に、前記板バネの変形により、前記スリーブの段差に応じて前記押さえローラを変位させることと、
を含む長尺部材の進退方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺部材の送り装置及び進退方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸素ランスをコイル状に収納するコイル状パイプ収納リールと、コイル状パイプ収納リールから酸素ランスを直線状に矯正し送り出すパイプ矯正送り装置とを備える酸素開孔装置が開示されている。パイプ矯正送り装置は、ピンチローラの回転によって酸素ランスを送り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63-30956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のパイプ矯正送り装置は、外周面に段差を有しない連続的なコイル状パイプを送り出すものであり、外周面に段差を有するパイプをピンチローラで送り出すことを想定していない。実際に酸素開孔を行う現場においては、余ったパイプをつなぎ合わせて有効活用することが少なからず行われており、パイプの外周面の段差に適応できない限り、ピンチローラによるパイプの送り出しは困難である。このため長尺のパイプをコイル状パイプ収納リールにコイル状に収納する構造としている。予め使用長さにカットされたパイプを使うのに比較して、接続がなく連続送り出しできるが、コイル状パイプ収納リールはパイプ径に応じた大きさのリール径を必要とし、設置スペースを確保することが困難である。
【0005】
本開示は、外周面に例えば接続のために段差あるいは断面形状変化を有する長尺部材を簡単な構造で且つ省スペースで進退させるのに有効な長尺部材の送り装置及び進退方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る長尺部材の送り装置は、長尺部材を進退させる装置であって、長尺部材の外周面に接し、長尺部材の進退方向に垂直な第一軸線まわりに回転して長尺部材を進退させる回転駆動ローラと、回転駆動ローラとの間に長尺部材を挟み、長尺部材の進退に追従して第一軸線に平行な第二軸線まわりに回転する押さえローラと、長尺部材の外周面に垂直な変位方向における押さえローラの変位を許容しつつ、押さえローラを長尺部材の外周面に押し付けるローラ押さえ部と、を備え、ローラ押さえ部は、長尺部材の外周面から離れて位置する固定部と、固定部と長尺部材の外周面との間に位置し、押さえローラを保持する軸受部と、長尺部材の前進方向又は後退方向である延出方向に向かって凸となるように屈曲し、延出方向から固定部と軸受部とに接続され、固定部へ近づく方向への軸受部の変位に応じた反力を発生する板バネと、を有する。
【0007】
長尺部材の外周面に接する回転駆動ローラ及び押さえローラにより長尺部材を進退させる構成によれば、長尺部材を進退させるための駆動力を定位置で付与することが可能である。また、延出方向に向かって凸となるように屈曲し、延出方向から固定部と軸受部とに接続された板バネによれば、限られたスペースにおいて板バネの全長を長くし、軸受部の変位に対する反力の変化を抑えることができる。これにより、長尺部材の進退に適した反力を維持しつつ、長尺部材の外周面の段差あるいは断面形状変化に簡単な構造で柔軟に適応することが可能となる。更に、延出方向を前進方向又は後退方向とすることで、ローラ押さえ部のスリム化を図ることができる。従って、外周面に段差を有する長尺部材を省スペースで進退させることができる。
【0008】
進退方向において、第一軸線の位置と第二軸線の位置とが互いに異なっていてもよい。進退方向において第一軸線の位置と第二軸線の位置とが一致している場合に比較して、長尺部材の継ぎ目における段差が通過する際における押さえローラの変位を小さくすることができる。
【0009】
進退方向に沿って回転駆動ローラと並ぶように設けられ、長尺部材の外周面に接し、長尺部材の進退に追従して進退方向に垂直な第三軸線まわりに回転するガイドローラと、ガイドローラとの間に長尺部材を挟み、長尺部材の進退に追従して進退方向に垂直な第四軸線まわりに回転する第二押さえローラと、変位方向における第二押さえローラの変位を許容しつつ、第二押さえローラを長尺部材の外周面に押し付ける第二ローラ押さえ部と、を更に備え、第二ローラ押さえ部は、長尺部材の外周面から離れて位置する第二固定部と、第二固定部と長尺部材の外周面との間に位置し、第二押さえローラを保持する第二軸受部と、変位方向に交差する第二延出方向に向かって凸となるように屈曲し、第二延出方向から第二固定部と第二軸受部とに接続され、第二固定部へ近づく方向への第二軸受部の変位に応じた反力を発生する第二板バネと、を有してもよい。長尺部材の進退方向以外の固定が可能となる。
【0010】
延出方向は、押さえローラから第二押さえローラに向かう方向であり、第二延出方向は、第二押さえローラから押さえローラに向かう方向であってもよい。押さえローラと第二押さえローラとの間に板バネ及び第二板バネを収容することで、更なる省スペース化を図ることができる。
【0011】
回転駆動ローラと、押さえローラと、ローラ押さえ部と、ガイドローラと、第二押さえローラと、第二ローラ押さえ部と、を収容して一体化するケーシングを更に備えてもよい。省スペースに配置された回転駆動ローラ、押さえローラ、ローラ押さえ部、ガイドローラ、第二押さえローラ、及び第二ローラ押さえ部をコンパクトなケーシングに収容し、ハンドリングを容易にすることができる。
【0012】
ケーシングを保持する保持部とケーシングから保持部に作用する反力を検出する力センサと、を更に備えてもよい。簡素な構成で、信頼性の高い反力情報を得ることができる。
【0013】
力センサにより検出された反力に基づいて、回転駆動ローラの回転トルクを制御する制御部を更に備えてもよい。信頼性の高い反力情報を有効活用して、より高度な自動化を図ることができる。
【0014】
回転駆動ローラは、周方向に沿った溝を外周面に有し、溝は、第一軸線から遠ざかるにつれて互いに離れるように傾斜した第一内面及び第二内面を有し、第一内面及び第二内面の両方が長尺部材の外周面に接してもよい。長尺部材に対し、より大きな駆動力を伝達することができる。
【0015】
第一内面と第二内面とのなす角が、60~120度であってもよい。長尺部材に対し、より大きな駆動力を伝達することと、長尺部材の継ぎ目における段差が通過する際における押さえローラの上下動を抑制することと、の両立を図ることができる。
【0016】
回転駆動ローラと押さえローラとの間を経て後退方向に延びた長尺部材を支持し、長尺部材の進退に追従して移動する補助部を更に有してもよい。長尺部材をよりスムーズに進退させることができる。
【0017】
長尺部材は、溶融炉内に酸素を送り込みながら溶融炉内で燃焼する酸素ランスパイプであり、回転駆動ローラは、溶融炉の出湯口に挿入された酸素ランスパイプを進退させてもよい。
【0018】
長尺部材は、溶融炉の出湯口の固着物を突き崩す突き棒であり、回転駆動ローラは、溶融炉の出湯口に向かって突き棒を進退させてもよい。
【0019】
出湯口に対向する位置と、出湯口に対向しない位置とを通る搬送方向に沿って移動し、出湯口に対し、長尺部材の進退とは別の作業を行う他の装置に取り付けられ、搬送方向に沿って他の装置と並ぶように回転駆動ローラ、押さえローラ、及びローラ押さえ部を保持する保持部と、を更に備えてもよい。他の装置の搬送装置を、回転駆動ローラ及び押さえローラの搬送にも有効活用することができる。
【0020】
他の装置は、閉塞された出湯口を開孔させる開孔装置であってもよい。
【0021】
他の装置は、開放された出湯口を閉塞させる閉塞装置であってもよい。
【0022】
本開示の他の側面に係る長尺部材の進退方法は、継ぎ目をスリーブにより接続された長尺部材を進退方向に沿わせることと、長尺部材の外周面に回転駆動ローラを接させることと、押さえローラを長尺部材の外周面に接させ、押さえローラと回転駆動ローラとで長尺部材を挟むことと、長尺部材の外周面から離れて位置する固定部と、長尺部材の外周面に垂直な変位方向において、固定部と長尺部材の外周面との間に位置し、押さえローラを保持する軸受部と、長尺部材の前進方向又は後退方向である延出方向に向かって凸となるように屈曲し、延出方向から固定部と軸受部とに接続され、固定部へ近づく方向への軸受部の変位に応じた反力を発生する板バネと、を有するローラ押さえ部によって、押さえローラを長尺部材の外周面に押し付けることと、進退方向に垂直な第一軸線まわりに回転駆動ローラを回転させることで長尺部材を進退方向に沿って進退させ、長尺部材の進退に追従して押さえローラを第一軸線に平行な第二軸線まわりに回転させることと、スリーブが回転駆動ローラと押さえローラとの間を通過する際に、板バネの変形により、スリーブの段差に応じて押さえローラを変位させることと、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、外周面に段差あるいは断面形状変化を有する長尺部材を簡単な構造でかつ省スペースで進退させるのに有効な長尺部材の送り装置及び進退方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】長尺部材の送り装置を例示する平面図である。
図2図1の送り装置の側面図である。
図3図1中のIII-III線に沿って進退駆動装置の内部を示す断面図である。
図4】第一軸線の位置と第二軸線の位置とが一致している場合において、スリーブによって生じる押さえローラの変位を表す模式図である。
図5】第一軸線の位置と第二軸線の位置とが異なっている場合において、スリーブによって生じる押さえローラの変位を表す模式図である。
図6】第一軸線の位置と第二軸線の位置とのずれを拡大した場合を例示する模式図である。
図7図3中のVII-VII線に沿って進退駆動装置の内部を示す断面図である。
図8】滑り止め溝を例示する模式図である。
図9図3中のIX-IX線に沿って進退駆動装置の内部を示す断面図である。
図10】進退駆動装置の側面図である。
図11】力センサの構成を例示する模式図である。
図12】長尺部材の作動機構を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、長尺部材90の送り装置1を例示する平面図である。図2は、図1の送り装置1の側面図である。図1及び図2に示す送り装置1は、長尺部材90を長手方向に沿って進退させる装置である。例えば送り装置1は、溶融炉2の出湯口3に対して長尺部材90を進退させる。出湯口3は、溶融炉2の炉底部に設けられ、溶融炉2内の溶融物を溶融炉2外に送り出す。溶融炉2は、例えば廃棄物溶融炉であるがこれに限られない。溶融炉2は鉄鋼材料の溶融炉であってもよい。以下、送り装置1から出湯口3へ向かう方向を「前進方向」といい、出湯口3から送り装置1へ向かう方向を「後退方向」という。
【0027】
長尺部材90は、例えば外形が円状の菅部材又は棒部材である。管部材の例としては、溶融炉2内(出湯口3の湯道内を含む)に酸素を送り込みながら溶融炉2内で燃焼する酸素ランスパイプが挙げられる。出湯口3からの出湯(溶融物の送り出し)の末期においては、粘性の高い溶融物が溶融炉2内に停滞する場合がある。酸素ランスパイプは、送り込んだ酸素によって、溶融炉2内で燃焼し、燃焼熱を発生させる。この燃焼熱によって、溶融物の粘度が下げられ、溶融物の停滞が解消される。
【0028】
棒部材の例としては、溶融炉2の出湯口3の固着物を突き崩す突き棒が挙げられる。例えば突き棒は、出湯中に出湯口3を閉塞し、流れを阻害する高粘度の溶融物や未溶解物を突き崩すのに用いられる。
【0029】
図1及び図2に示すように、送り装置1は、進退駆動装置10と、補助部20とを備える。進退駆動装置10は、長尺部材90の外周面に対し、長尺部材90の長手方向に沿った摩擦力を作用させることで、長尺部材90を長手方向に沿って進退させる。以下、進退駆動装置10が長尺部材90を進退させる方向を進退方向D1という。
【0030】
補助部20は、進退駆動装置10から後退方向に延びた長尺部材90(後述の回転駆動ローラ110と押さえローラ120との間を経て後退方向に延びた長尺部材90)を支持し、長尺部材90の進退に追従して移動する。一例として、送り装置1は、進退方向D1に沿うように配置されるレール21を更に備え、補助部20はレール21に沿って移動する。例えば補助部20は、スライドブロック22と、接続保持部23とを有する。スライドブロック22は、進退方向D1に沿って移動できるようにレール21に取り付けられている。接続保持部23はスライドブロック22に固定され、長尺部材90を支持する。スライドブロック22がレール21に沿って移動可能であるため、接続保持部23は長尺部材90の進退に追従して移動する。長尺部材90が酸素ランスパイプである場合、接続保持部23は、酸素供給用のホースと長尺部材90とを接続するように構成されていてもよい。
【0031】
レール21は、折りたたみ得るように構成されていてもよい。例えばレール21は、ヒンジ部24等により鉛直な軸線まわりに折り畳み可能となっていてもよい。送り装置1を未使用の期間における省スペース化を図ることができる。
【0032】
図示において、レール21及びスライドブロック22は、接続保持部23よりも上に位置しているが、これに限られない。レール21及びスライドブロック22は、接続保持部23よりも下に位置していてもよい。また、補助部20は、床面に接地して、長尺部材90の進退に追従して移動する台車であってもよい。この場合、レール21を省略可能である。
【0033】
送り装置1は、長尺部材90の進退とは別の作業を行う他の装置50と共に移動するように構成されていてもよい。図1及び図2に例示されている他の装置50は、開孔部51と、閉塞部52とを組み合わせた開閉装置である。開孔部51は、閉塞された出湯口3を開孔させるように構成されている。閉塞部52は、開放された出湯口3を上記マッドにより閉塞させるように構成されている。
【0034】
他の装置50は、必ずしも開孔部51と閉塞部52との両方を含んでいなくてもよい。例えば他の装置50は、開孔部51を含み、閉塞部52を含まない開孔装置であってもよく、閉塞部52を含み、開孔部51を含まない閉塞装置であってもよい。
【0035】
他の装置50は、出湯口3に対向する位置と、出湯口3に対向しない位置とを通る搬送方向D3に沿って、搬送装置60により搬送される。図示において、搬送方向D3は、鉛直方向と、進退方向D1とに垂直であるがこれに限られない。
【0036】
他の装置50と共に移動するために、送り装置1は、保持部30と、レール保持部40とを更に備える。保持部30は、他の装置50に取り付けられ、搬送方向D3に沿って他の装置50と並ぶように進退駆動装置10を保持する。保持部30により、搬送方向D3に沿って他の装置50と並ぶように進退駆動装置10が保持されるので、搬送装置60を利用して、出湯口3に対向する位置と、出湯口3に対向しない位置との間で進退駆動装置10を移動させることが可能となる。
【0037】
レール保持部40は、他の装置50に取り付けられ、レール21を保持する。これにより、搬送装置60をレール21及び補助部20の移動にも利用することが可能となる。
【0038】
図3は、図1中のIII-III線に沿って進退駆動装置10の内部を示す断面図である。図3に示すように、長尺部材90は、スリーブ93等の筒状の継手部材により複数の長尺部材をつなぎ合わせて構成されている場合がある。この場合、長尺部材90の外径が、スリーブ93において局所的に大きくなる。進退駆動装置10は、スリーブ93等による長尺部材90の外径変化に柔軟に対応しつつ、長尺部材90に対して十分な摩擦力を作用させるのに有効な構成を備えている。なお、長尺部材90は、継手部材によるつなぎ方法以外の方法によって複数の部材をつなぎ合わせて構成されていてもよい。例えば溶接によってつなぎ合わされていてもよい。また、長尺部材90の外形変化は、段差であってもよいし、段のない(急激な)断面形状であってもよい。外形変化の大きさは、例えば、長尺部材90のつなぎ箇所部分(継ぎ目)以外の外形に対して約2~3割程度の増分である。例えば、つなぎ合わされる前の長尺部材の外形が直径20~22mmである場合には、スリーブ93の肉厚等に相当する大きさとして2~3mmが全周に亘って増大するものが想定される。
【0039】
例えば進退駆動装置10は、回転駆動ローラ110と、押さえローラ120と、ローラ押さえ部130と、回転駆動装置140とを有する。回転駆動ローラ110は、長尺部材90の外周面91に接し、進退方向D1に垂直な第一軸線111まわりに回転して長尺部材90を進退させる。例えば回転駆動ローラ110は、第一軸線111まわりに回転して進退方向D1に沿った摩擦力を外周面91に作用させ、長尺部材90を進退させる。一例として、第一軸線111は長尺部材90の下に位置し、回転駆動ローラ110は下から外周面91に接する。
【0040】
押さえローラ120は、回転駆動ローラ110との間に長尺部材90を挟み、長尺部材90の進退に追従して第一軸線111に平行な第二軸線121まわりに回転する。一例として、第二軸線121は長尺部材90の上に位置し、押さえローラ120は上から外周面91に接する。回転駆動ローラ110が上から外周面91に接するように配置され、押さえローラ120が下から外周面91に接するように配置されていてもよい。押さえローラ120の外周面には、図7に示すように全周に亘ってくぼみ120cが形成されていてもよい。くぼみ120cは、長尺部材90の外周面91に沿った形状(例えば断面形状が弧状)であってもよい。ただし、押さえローラ120は、くぼみ120cが形成されず、外周面が平坦な形状であってもよい。
【0041】
ローラ押さえ部130は、外周面91に垂直な変位方向D2における押さえローラ120の変位を許容しつつ、押さえローラ120を外周面91に押し付ける。例えば第二軸線121が長尺部材90の上に位置する場合、ローラ押さえ部130は押さえローラ120を下に向かって外周面91に押し付ける。第二軸線121が長尺部材90の下に位置する場合、ローラ押さえ部130は押さえローラ120を上に向かって外周面91に押し付ける。長尺部材90は、ローラ押さえ部130が押さえローラ120を外周面91に押し付ける力によって、回転駆動ローラ110に押し付けられることとなる。これにより、回転駆動ローラ110と長尺部材90との間に摩擦力が生じる。
【0042】
ローラ押さえ部130は、固定部131と、軸受部132と、板バネ133とを有する。固定部131は、外周面91から離れて位置する。固定部131の「固定」は、第一軸線111に対する相対位置が不変であることを意味する。固定部131は、第一軸線111に対し不変の相対位置を基準に可動性を有していてもよい。例えば固定部131は、第一軸線111及び第二軸線121に平行であり、且つ第一軸線111に対し相対位置が不変である固定軸線136まわりに回転可能である。第二軸線121が長尺部材90の上に位置する場合、固定部131は、外周面91から上方に離れて位置する。第二軸線121が長尺部材90の下に位置する場合、固定部131は、外周面91から下方に離れて位置する。
【0043】
軸受部132は、固定部131と外周面91との間に位置し、第二軸線121まわりに回転するように押さえローラ120を保持する。板バネ133は、前進方向又は後退方向である延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続され、固定部131へ近づく方向への軸受部132の変位に応じた反力を発生する。図示の例において、延出方向D11は前進方向である。
【0044】
固定部131は、固定軸線136から延出方向D11に張り出した接続プレート134を有する。軸受部132は、第二軸線121から延出方向D11に張り出した軸受プレート135を有する。板バネ133は、延出方向D11に向かって凸となるように屈曲した横向きU字状の断面形状を有し、接続プレート134と軸受プレート135とにそれぞれ接続されている。
【0045】
このように、延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続された板バネ133によれば、限られたスペースにおいて板バネ133の全長を長くし、軸受部132の変位に対する反力の変化を抑えることができる。これにより、長尺部材90の進退に適した反力を維持しつつ、外周面91の段差に柔軟に適応することが可能となる。更に、延出方向D11を前進方向又は後退方向とすることで、ローラ押さえ部130のスリム化を図ることができる。従って、外周面91に段差を有する長尺部材90を省スペースで進退させることができる。
【0046】
回転駆動装置140は、第一軸線111まわりに回転駆動ローラ110を回転させる。回転駆動装置140の動力源は、例えばエアモータである。回転駆動装置140の動力源は、電動モータであってもよく、油圧モータであってもよい。長尺部材90が回転駆動ローラ110に押し付けられた状態で、回転駆動装置140が回転駆動ローラ110を回転させることにより、進退方向D1に沿った摩擦力が回転駆動ローラ110から長尺部材90に作用し、長尺部材90が進退する。
【0047】
進退方向D1において、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とは互いに異なっていてもよい。例えば図3においては、第二軸線121が第一軸線111よりも前進方向に位置している。第二軸線121が第一軸線111よりも後退方向に位置していてもよい。進退方向D1において第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが互いに異なる構成によれば、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが一致している場合に比較して、外周面91の段差が通過する際における押さえローラ120の変位を小さくすることができる。
【0048】
図4は、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが一致している場合において、スリーブ93によって生じる押さえローラ120の変位を表している。図5は、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが異なっている場合において、スリーブ93によって生じる押さえローラ120の変位を表している。図4に示すように、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが一致している場合、スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げることに起因する長尺部材90の変位と、押さえローラ120がスリーブ93に乗り上げることに起因する押さえローラ120の変位とが同時に生じることとなる。このため、スリーブ93に起因する段差に追従するためには、スリーブ93による長尺部材90の直径の増分に相当する変位量Sにて押さえローラ120を一気に変位させる必要がある。
【0049】
図5に示すように、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが異なっている場合、スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げることに起因する長尺部材90の変位が生じるタイミングと、押さえローラ120がスリーブ93に乗り上げることに起因する押さえローラ120の変位が生じるタイミングとが相違する。例えば、第二軸線121が第一軸線111よりも前進方向に位置する場合、スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げることに起因する長尺部材90の変位が先に生じ、その後、押さえローラ120がスリーブ93に乗り上げることに起因する押さえローラ120の変位が生じる。このため、押さえローラ120の変位が2段階に分かれ、各段階における変位量が上記変位量Sの半分になる。このように、中心軸線92の一回あたりの変位を小さくすることができる。このため、回転駆動ローラ110と押さえローラ120との間にスリーブ93が突入する際の衝撃を緩和することができる。
【0050】
スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げる期間と、押さえローラ120がスリーブ93に乗り上げる期間とが重複しないように、第一軸線111と第二軸線121との位置ずれを拡大することによって、押さえローラ120の総変位量を上記変位量Sの半分にすることも可能である。例えば図6に示す例によれば、スリーブ93が押さえローラ120に到達する前に回転駆動ローラ110を通過するので、スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げることに起因する長尺部材90の変位が解消された後に、押さえローラ120がスリーブ93に乗り上げることに起因する押さえローラ120の変位が生じるので、押さえローラ120の総変位量が上記変位量Sの半分となる。
【0051】
図7は、図3中のVII-VII線に沿って進退駆動装置10の内部を示す断面図である。図7に示すように、回転駆動ローラ110は、周方向に沿った溝112を外周面に有してもよい。溝112は、第一軸線111から遠ざかるにつれて互いに離れるように傾斜した第一内面113及び第二内面114を有してもよい。溝112は、第一内面113及び第二内面114の両方が外周面91に接するように構成されていてもよい。
【0052】
第一内面113及び第二内面114の両方が外周面91に接する構成によれば、回転駆動ローラ110から外周面91に作用する摩擦力を高めることができる。例えば、回転駆動ローラ110が、長尺部材90の直下の一点で外周面91に接する場合、回転駆動ローラ110から外周面91に作用する摩擦力Fは次式で表される。
F=μ・P・・・(1)
P:ローラ押さえ部130が押さえローラ120を外周面91に押し付ける力
μ:静摩擦係数
【0053】
これに対し、第一内面113及び第二内面114の両方が外周面91に接する場合、回転駆動ローラ110から外周面91に作用する摩擦力Fは次式で表される。
F=μ・P/(cos((π-θ)/2))・・・(2)
θ:第一内面113と第二内面114とのなす角
【0054】
式(1)と式(2)との比較により示されるとおり、第一内面113及び第二内面114の両方が外周面91に接する構成の採用によって摩擦力Fを大きくすることが可能である。式(2)から明らかであるとおり、角度θが小さくなるにつれて摩擦力は大きくなる。一方、角度θが小さくなるにつれて、スリーブ93が回転駆動ローラ110に乗り上げる際における長尺部材90の変位量が大きくなる。摩擦力を大きくしつつ、長尺部材90の変位量を過大にしないという観点から、第一内面113と第二内面114とのなす角θは、60~120°であってもよく、80~100°であってもよい。
【0055】
図8に示すように、回転駆動ローラ110の外周面には、周方向に沿って並ぶ複数の滑り止め溝115が形成されていてもよい。複数の滑り止め溝115のそれぞれは、回転駆動ローラ110の外周面の周方向を横切るように形成されている。この複数の滑り止め溝115によって、回転駆動ローラ110と長尺部材90との間に生じる回転滑りが抑制され、回転駆動ローラの駆動力(回転トルク)が長尺部材90に適切に伝達される。
【0056】
図3に戻り、進退駆動装置10は、ガイドローラ150と、第二押さえローラ160と、第二ローラ押さえ部170とを更に有してもよい。ガイドローラ150は、進退方向D1に沿って回転駆動ローラ110と並ぶように設けられ、外周面91に接し、長尺部材90の進退に追従して進退方向D1に垂直な第三軸線151まわりに回転する。一例として、第三軸線151は長尺部材90の下に位置し、ガイドローラ150は下から外周面91に接する。
【0057】
第二押さえローラ160は、ガイドローラ150との間に長尺部材90を挟み、長尺部材90の進退に追従して進退方向D1に垂直な第四軸線161まわりに回転する。一例として、第四軸線161は長尺部材90の上に位置し、第二押さえローラ160は上から外周面91に接する。ガイドローラ150が上から外周面91に接するように配置され、第二押さえローラ160が下から外周面91に接するように配置されていてもよい。第二押さえローラ160の外周面には、押さえローラ120と同様に、図9に示すように、全周に亘ってくぼみ160cが形成されていてもよい。くぼみ160cは、長尺部材90の外周面91に沿った形状(例えば断面形状が弧状)であってもよい。ただし、第二押さえローラ160は、くぼみ160cが形成されず、外周面が平坦な形状であってもよい。
【0058】
第二ローラ押さえ部170は、変位方向D2における第二押さえローラ160の変位を許容しつつ、第二押さえローラ160を外周面91に押し付ける。例えば第四軸線161が長尺部材90の上に位置する場合、第二ローラ押さえ部170は第二押さえローラ160を下に向かって外周面91に押し付ける。第四軸線161が長尺部材90の下に位置する場合、第二ローラ押さえ部170は第二押さえローラ160を上に向かって外周面91に押し付ける。
【0059】
第二ローラ押さえ部170は、第二固定部171と、第二軸受部172と、第二板バネ173とを有する。第二固定部171は、外周面91から離れて位置する。固定部131と同様に、第二固定部171は、第三軸線151に対し不変の相対位置を基準に可動性を有していてもよい。例えば第二固定部171は、第三軸線151及び第四軸線161に平行であり、且つ第三軸線151に対し相対位置が不変である第二固定軸線176まわりに回転可能である。第四軸線161が長尺部材90の上に位置する場合、第二固定部171は、外周面91から上方に離れて位置する。第四軸線161が長尺部材90の下に位置する場合、第二固定部171は、外周面91から下方に離れて位置する。
【0060】
第二軸受部172は、第二固定部171と外周面91との間に位置し、第四軸線161まわりに回転するように第二押さえローラ160を保持する。第二板バネ173は、前進方向又は後退方向である第二延出方向D12に向かって凸となるように屈曲し、第二延出方向D12から第二固定部171と第二軸受部172とに接続され、第二固定部171へ近づく方向への第二軸受部172の変位に応じた反力を発生する。
【0061】
第二固定部171は、第二固定軸線176から第二延出方向D12に張り出した第二接続プレート174を有する。第二軸受部172は、第四軸線161から第二延出方向D12に張り出した第二軸受プレート175を有する。第二板バネ173は、第二延出方向D12に向かって凸となるように屈曲した横向きU字状の断面形状を有し、第二接続プレート174と第二軸受プレート175とにそれぞれ接続されている。
【0062】
ガイドローラ150と、第二押さえローラ160と、第二ローラ押さえ部170とを更に備えることにより、長尺部材90の進退方向以外の移動を規制し、直線運動のみとすることで、長尺部材90をより安定させることができる。
【0063】
板バネ133の延出方向D11は、押さえローラ120から第二押さえローラ160に向かう方向であり、第二板バネ173の第二延出方向D12は、第二押さえローラ160から押さえローラ120に向かう方向であってもよい。例えば図3では、ガイドローラ150及び第二押さえローラ160が回転駆動ローラ110及び押さえローラ120よりも前進方向に位置しており、延出方向D11が前進方向であり、第二延出方向D12が後退方向である。板バネ133の屈曲部と、第二板バネ173の屈曲部とは、押さえローラ120と第二押さえローラ160との間において対向している。このような構成によれば、押さえローラ120と第二押さえローラ160との間に板バネ133及び第二板バネ173を収容することで、更なる省スペース化を図ることができる。
【0064】
進退方向D1において、第三軸線151の位置と第四軸線161の位置とは互いに異なっていてもよい。例えば図3においては、第四軸線161が第三軸線151よりも後退方向に位置している。第四軸線161が第三軸線151よりも前進方向に位置していてもよい。第一軸線111と第二軸線121との位置ずれにより、外周面91の段差が通過する際における押さえローラ120の変位を小さくすることができるのと同様に、第三軸線151と第四軸線161との位置ずれにより、外周面91の段差が通過する際における第二押さえローラ160の変位を小さくすることができる。
【0065】
図9は、図3中のIX-IX線に沿って進退駆動装置10の内部を示す断面図である。図9に示すように、ガイドローラ150は、回転駆動ローラ110と同様に、周方向に沿った溝152を外周面に有してもよい。溝152は、第三軸線151から遠ざかるにつれて互いに離れるように傾斜した第一内面153及び第二内面154を有してもよい。溝152は、第一内面153及び第二内面154の両方が外周面91に接するように構成されていてもよい。第一内面153と第二内面154とのなす角は、第一内面113と第二内面114とのなす角と同様に、60~120°であってもよく、80~100°であってもよい。
【0066】
図10は、進退駆動装置10の側面図である。図10に示すように、進退駆動装置10は、ケーシング180を更に有してもよい。ケーシング180は、回転駆動ローラ110と、押さえローラ120と、ローラ押さえ部130と、ガイドローラ150と、第二押さえローラ160と、第二ローラ押さえ部170と、を収容して一体化する。ケーシング180は、前進方向に開口181を有し、後退方向に開口182を有する。これにより、長尺部材90をケーシング180内に通すことが可能となっている。
【0067】
ケーシング180は、下ケーシング183と、上ケーシング184とに分かれている。下ケーシング183は、回転駆動ローラ110と、ガイドローラ150とを収容する。例えば下ケーシング183は、下面プレートP11と、前面プレートP12と、後面プレートP13と、一対の側面プレートP14とを有する。下面プレートP11は下方に面し、前面プレートP12は前進方向に面し、後面プレートP13は後退方向に面する。一対の側面プレートP14は、進退方向D1及び変位方向D2に垂直な方向において互いに対向し、回転駆動ローラ110及びガイドローラ150を保持する。
【0068】
上ケーシング184は、押さえローラ120と、ローラ押さえ部130と、第二押さえローラ160と、第二ローラ押さえ部170とを収容する。例えば上ケーシング184は、上面プレートP21と、前面プレートP22と、後面プレートP23と、一対の側面プレートP24とを有する。上面プレートP21は上方に面し、前面プレートP22は前進方向に面し、後面プレートP23は後退方向に面する。一対の側面プレートP24は、進退方向D1及び変位方向D2に垂直な方向において互いに対向し、押さえローラ120、ローラ押さえ部130、第二押さえローラ160及び第二ローラ押さえ部170を保持する。
【0069】
例えば一対の側面プレートP24は、上述した固定軸線136まわりに回転するように固定部131を保持し、第二固定軸線176まわりに回転するように第二固定部171を保持する。また、一対の側面プレートP24は、変位方向D2に沿って変位し得るように軸受部132及び第二軸受部172を保持する。例えば一対の側面プレートP24のそれぞれは、進退方向D1に並ぶガイドスリットSL1とガイドスリットSL2とを有する。ガイドスリットSL1及びガイドスリットSL2のそれぞれは、変位方向D2に沿って延び、下方に開放されている。軸受部132は、進退方向D1及び変位方向D2に垂直な方向において互いに逆向きに突出した一対の突起137を有する。一対の突起137は、一対の側面プレートP24のガイドスリットSL1にそれぞれ挿入される。これにより、軸受部132が、変位方向D2に沿って変位するように案内される。同様に、第二軸受部172は、進退方向D1及び変位方向D2に垂直な方向において互いに逆向きに突出した一対の突起177を有する。一対の突起177は、一対の側面プレートP24のガイドスリットSL2にそれぞれ挿入される。これにより、第二軸受部172が、変位方向D2に沿って変位するように案内される。
【0070】
ケーシング180は、一対の抜け止め185と、一対の抜け止め186とを更に有する。一対の抜け止め185は、一対の突起137のそれぞれをガイドスリットSL1内に留めるように、一対の側面プレートP24にそれぞれ取り付けられる。板バネ133は、一対の突起137が、ガイドスリットSL1から下方に出るまで反力を維持するように構成されていてもよい。この場合、一対の抜け止め185は、自然状態に対して板バネ133を変形させて、一対の突起137のそれぞれをガイドスリットSL1内に留めることとなる。このように、板バネ133に初期変形を付与した状態で、押さえローラ120とローラ押さえ部130とをガイドスリットSL1内に収容する構成においては、初期変形の大きさによって、ローラ押さえ部130が押さえローラ120を外周面91に押し付ける力を自在に調節することができる。
【0071】
同様に、一対の抜け止め186は、一対の突起177のそれぞれをガイドスリットSL2内に留めるように、一対の側面プレートP24にそれぞれ取り付けられる。第二板バネ173は、一対の突起177が、ガイドスリットSL1から下方に出るまで反力を維持するように構成されていてもよい。この場合、一対の抜け止め186は、自然状態に対して第二板バネ173を変形させて、一対の突起177のそれぞれをガイドスリットSL2内に留めることとなる。このように、第二板バネ173に初期変形を付与した状態で、第二押さえローラ160と第二ローラ押さえ部170とをガイドスリットSL2内に収容する構成においては、初期変形の大きさによって、第二ローラ押さえ部170が第二押さえローラ160を外周面91に押し付ける力を自在に調節することができる。
【0072】
ケーシング180は、ヒンジ187とクランプ188とを更に有してもよい。ヒンジ187は、下ケーシング183と上ケーシング184とが進退方向D1に平行な軸線まわりに互いに回転可能となるように、一対の側面プレートP24のいずれか一方を、一対の側面プレートP14のいずれか一方に接続する。以下、一対の側面プレートP24のうち、ヒンジ187が接続される側面プレートP24を「可動側の側面プレートP24」といい、ヒンジ187が接続されない側面プレートP24を「固定側の側面プレートP24」という。同様に、一対の側面プレートP14のうち、ヒンジ187が接続される側面プレートP14を「可動側の側面プレートP14」といい、ヒンジ187が接続されない側面プレートP14を「固定側の側面プレートP14」という。
【0073】
ヒンジ187により、可動側の側面プレートP14に対し可動側の側面プレートP24を回転させることによって、ケーシング180内を開閉することが可能である。ケーシング180内を開放することによって、長尺部材90をケーシング180内に容易にセットすることができる。
【0074】
クランプ188は、固定側の側面プレートP24を固定側の側面プレートP14に対し固定して、ケーシング180内を閉じた状態に維持するロック状態と、固定側の側面プレートP24を解放してケーシング180内を開放可能にするアンロック状態とを切り替える。
【0075】
溶融炉での使用に際し、ケーシング180は高温に晒されることとなる。そこで、進退駆動装置10は、防熱板190を更に有してもよい。防熱板190は、耐熱材料により構成され、ケーシング180の外面の少なくとも一部を覆う。例えば防熱板190は、ケーシング180の前面(前進方向に向かう面)を覆う前板191と、ケーシング180の下面を覆う下板192とを有する。前板191は、長尺部材90を通す開口193を有する。
【0076】
送り装置1は、溶融炉2から長尺部材90に作用する反力を検出し得るように構成されていてもよい。例えば、上述の保持部30はケーシング180を保持し、送り装置1は、ケーシング180から保持部30に作用する反力を検出する力センサ70を備えていてもよい。ケーシング180から保持部30に作用する反力は、溶融炉2から長尺部材90に作用する反力に相関する。このため、力センサ70によれば、溶融炉2から長尺部材90に作用する反力を容易に検出することができる。なお、保持部30は、ケーシング180を保持することにより、回転駆動ローラ110、押さえローラ120、ローラ押さえ部130、ガイドローラ150、第二押さえローラ160、及び第二ローラ押さえ部170を保持する。
【0077】
図11は、力センサ70の構成を例示する模式図である。図11に示すように、保持部30は、第一アーム31と、第二アーム32とを有する。第一アーム31は、上述した他の装置50に固定され、搬送方向D3に沿って他の装置50からケーシング180に向かって延びる。第二アーム32は、鉛直な接続軸線33まわりに回転可能となるように第一アーム31に接続され、搬送方向D3に沿って第一アーム31から更に延び、ケーシング180に固定される。第一アーム31及び第二アーム32は、前進方向に突出した第一凸部34及び第二凸部35を夫々有する。第二アーム32が、第一アーム31に対して後退方向に回転すると、第二凸部35が第一凸部34から遠ざかる。
【0078】
力センサ70は、第一凸部34から遠ざかる方向への第二凸部35の変位に抗するように、第一凸部34と第二凸部35との間に掛け渡されており、第一凸部34と第二凸部35との間に作用する引っ張り力を検出する。第一凸部34と第二凸部35との間に作用する引っ張り力は、ケーシング180から第二アーム32に作用する反力に相関する。このため、力センサ70によって、ケーシング180から保持部30に作用する反力を検出することができる。
【0079】
力センサ70を備える送り装置1は、制御部80を更に備えてもよい。制御部80は、力センサ70により検出された反力に基づいて、回転駆動ローラ110の回転トルクを制御する。例えば制御部80は、力センサ70により検出された反力が所定の閾値よりも大きい場合に、回転駆動ローラ110の回転トルクを低下させるように回転駆動装置140を制御する。制御部80は、力センサ70により検出された反力を、所定の範囲内に収めるように、回転駆動ローラ110の回転トルクを回転駆動装置140により増減させてもよい。
【0080】
〔長尺部材の進退手順〕
続いて、進退方法の一例として、送り装置1による長尺部材の前進手順を例示する。例えば図12に示すように、前進手順は、ステップS01,S02,S03,S04,S05,S06を含む。ステップS01は、継ぎ目をスリーブ93により接続された長尺部材90を、進退方向D1に沿わせることを含む。ステップS02は、ケーシング180の内部を開放して、外周面91に回転駆動ローラ110及びガイドローラ150を接させることを含む。ステップS03は、ケーシング180の内部を閉じることを含む。これにより、押さえローラ120が外周面91に接し、押さえローラ120と回転駆動ローラ110とで長尺部材90が挟まれ、ローラ押さえ部130によって押さえローラ120が外周面91に押し付けられる。また、第二押さえローラ160が外周面91に接し、第二押さえローラ160とガイドローラ150とで長尺部材90が挟まれ、第二ローラ押さえ部170によって第二押さえローラ160が外周面91に押し付けられる。ステップS04は、回転駆動装置140によって、第一軸線111まわりに回転駆動ローラ110を回転させることで進退方向D1に沿った長尺部材90の前進を開始させ、長尺部材90の前進に追従して、押さえローラ120を第二軸線121まわりに回転させ、ガイドローラ150を第三軸線151まわりに回転させ、第二押さえローラ160を第四軸線161まわりに回転させることを含む。ステップS05は、スリーブ93が回転駆動ローラ110と押さえローラ120との間を通過する際に、板バネ133の変形により、スリーブ93の段差に応じて押さえローラ120を変位させることを含む。ステップS06は、スリーブ93がガイドローラ150と第二押さえローラ160との間を通過する際に、第二板バネ173の変形により、スリーブ93の段差に応じて第二押さえローラ160を変位させることを含む。
【0081】
〔まとめ〕
以上に説明した実施形態は、以下の構成を含む。
(1)長尺部材90を進退させる装置であって、長尺部材90の外周面91に接し、長尺部材90の進退方向D1に垂直な第一軸線111まわりに回転して長尺部材90を進退させる回転駆動ローラ110と、回転駆動ローラ110との間に長尺部材90を挟み、長尺部材90の進退に追従して第一軸線111に平行な第二軸線121まわりに回転する押さえローラ120と、長尺部材90の外周面91に垂直な変位方向D2における押さえローラ120の変位を許容しつつ、押さえローラ120を長尺部材90の外周面91に押し付けるローラ押さえ部130と、を備え、ローラ押さえ部130は、長尺部材90の外周面91から離れて位置する固定部131と、固定部131と長尺部材90の外周面91との間に位置し、押さえローラ120を保持する軸受部132と、長尺部材90の前進方向又は後退方向である延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続され、固定部131へ近づく方向への軸受部132の変位に応じた反力を発生する板バネ133と、を有する、長尺部材90の送り装置1。
長尺部材90の外周面91に接する回転駆動ローラ110及び押さえローラ120により長尺部材90を進退させる構成によれば、長尺部材90を進退させるための駆動力を定位置で付与することが可能である。また、延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続された板バネ133によれば、限られたスペースにおいて板バネ133の全長を長くし、軸受部132の変位に対する反力の変化を抑えることができる。これにより、長尺部材90の進退に適した反力を維持しつつ、長尺部材90の外周面91の段差あるいは断面形状変化に簡単な構造で柔軟に適応することが可能となる。更に、延出方向D11を前進方向又は後退方向とすることで、ローラ押さえ部130のスリム化を図ることができる。従って、外周面91に段差を有する長尺部材90を省スペースで進退させることができる。
【0082】
(2) 進退方向D1において、第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが互いに異なっている、(1)記載の長尺部材90の送り装置1。
進退方向D1において第一軸線111の位置と第二軸線121の位置とが一致している場合に比較して、長尺部材90の継ぎ目における段差が通過する際における押さえローラ120の変位を小さくすることができる。
【0083】
(3) 進退方向D1に沿って回転駆動ローラ110と並ぶように設けられ、長尺部材90の外周面91に接し、長尺部材90の進退に追従して進退方向D1に垂直な第三軸線151まわりに回転するガイドローラ150と、ガイドローラ150との間に長尺部材90を挟み、長尺部材90の進退に追従して進退方向D1に垂直な第四軸線161まわりに回転する第二押さえローラ160と、変位方向D2における第二押さえローラ160の変位を許容しつつ、第二押さえローラ160を長尺部材90の外周面91に押し付ける第二ローラ押さえ部170と、を更に備え、第二ローラ押さえ部170は、長尺部材90の外周面91から離れて位置する第二固定部171と、第二固定部171と長尺部材90の外周面91との間に位置し、第二押さえローラ160を保持する第二軸受部172と、変位方向D2に交差する第二延出方向D12に向かって凸となるように屈曲し、第二延出方向D12から第二固定部171と第二軸受部172とに接続され、第二固定部171へ近づく方向への第二軸受部172の変位に応じた反力を発生する第二板バネ173と、を有する、(1)又は(2)記載の長尺部材90の送り装置1。
長尺部材90の進退方向D1をより安定させることができる。
【0084】
(4) 延出方向D11は、押さえローラ120から第二押さえローラ160に向かう方向であり、第二延出方向D12は、第二押さえローラ160から押さえローラ120に向かう方向である、(3)記載の長尺部材90の送り装置1。
押さえローラ120と第二押さえローラ160との間に板バネ133及び第二板バネ173を収容することで、更なる省スペース化を図ることができる。
【0085】
(5) 回転駆動ローラ110と、押さえローラ120と、ローラ押さえ部130と、ガイドローラ150と、第二押さえローラ160と、第二ローラ押さえ部170と、を収容して一体化するケーシング180を更に備える、(3)又は(4)記載の長尺部材90の送り装置1。
省スペースに配置された回転駆動ローラ110、押さえローラ120、ローラ押さえ部130、ガイドローラ150、第二押さえローラ160、及び第二ローラ押さえ部170をコンパクトなケーシング180に収容し、ハンドリングを容易にすることができる。
【0086】
(6) ケーシング180を保持する保持部30とケーシング180から保持部30に作用する反力を検出する力センサ70と、を更に備える、(5)記載の長尺部材90の送り装置1。
簡素な構成で、信頼性の高い反力情報を得ることができる。
【0087】
(7) 力センサ70により検出された反力に基づいて、回転駆動ローラ110の回転トルクを制御する制御部80を更に備える、(6)記載の長尺部材90の送り装置1。
信頼性の高い反力情報を有効活用して、より高度な自動化を図ることができる。
【0088】
(8) 回転駆動ローラ110は、周方向に沿った溝112を外周面91に有し、溝112は、第一軸線111から遠ざかるにつれて互いに離れるように傾斜した第一内面113及び第二内面114を有し、第一内面113及び第二内面114の両方が長尺部材90の外周面91に接する、(1)~(7)のいずれか記載の長尺部材90の送り装置1。
長尺部材90に対し、より大きな駆動力を伝達することができる。
【0089】
(9) 第一内面113と第二内面114とのなす角が、60~120度である、(8)記載の長尺部材90の送り装置1。
長尺部材90に対し、より大きな駆動力を伝達することと、長尺部材90の継ぎ目における段差が通過する際における押さえローラ120の上下動を抑制することと、の両立を図ることができる。
【0090】
(10) 回転駆動ローラ110と押さえローラ120との間を経て後退方向に延びた長尺部材90を支持し、長尺部材90の進退に追従して移動する補助部20を更に有する、(1)~(9)のいずれか記載の長尺部材90の送り装置1。
長尺部材90をよりスムーズに進退させることができる。
【0091】
(11) 長尺部材90は、溶融炉2内に酸素を送り込みながら溶融炉2内で燃焼する酸素ランスパイプであり、回転駆動ローラ110は、溶融炉2の出湯口3に挿入された酸素ランスパイプを進退させる、(1)~(10)のいずれか記載の長尺部材90の送り装置1。
【0092】
(12) 長尺部材90は、溶融炉2の出湯口3の固着物を突き崩す突き棒であり、回転駆動ローラ110は、溶融炉2の出湯口3に向かって突き棒を進退させる、(1)~(10)のいずれか記載の長尺部材90の送り装置1。
【0093】
(13) 出湯口3に対向する位置と、出湯口3に対向しない位置とを通る搬送方向D3に沿って移動し、出湯口3に対し、長尺部材90の進退とは別の作業を行う他の装置50に取り付けられ、搬送方向D3に沿って他の装置50と並ぶように回転駆動ローラ110、押さえローラ120、及びローラ押さえ部130を保持する保持部30と、を更に備える、(11)又は(12)記載の長尺部材90の送り装置1。
他の装置50の搬送装置60を、回転駆動ローラ110及び押さえローラ120の搬送にも有効活用することができる。
【0094】
(14) 他の装置50は、閉塞された出湯口3を開孔させる開孔装置である、(13)記載の長尺部材90の送り装置1。
【0095】
(15) 他の装置50は、開放された出湯口3を閉塞させる閉塞装置である、(13)記載の長尺部材90の送り装置1。
【0096】
(16) 継ぎ目をスリーブにより接続された長尺部材90を進退方向D1に沿わせることと、長尺部材90の外周面91に回転駆動ローラ110を接させることと、押さえローラ120を長尺部材90の外周面91に接させ、押さえローラ120と回転駆動ローラ110とで長尺部材90を挟むことと、長尺部材90の外周面91から離れて位置する固定部131と、長尺部材90の外周面91に垂直な変位方向D2において、固定部131と長尺部材90の外周面91との間に位置し、押さえローラ120を保持する軸受部132と、長尺部材90の前進方向又は後退方向である延出方向D11に向かって凸となるように屈曲し、延出方向D11から固定部131と軸受部132とに接続され、固定部131へ近づく方向への軸受部132の変位に応じた反力を発生する板バネ133と、を有するローラ押さえ部130によって、押さえローラ120を長尺部材90の外周面91に押し付けることと、進退方向D1に垂直な第一軸線111まわりに回転駆動ローラ110を回転させることで長尺部材90を進退方向D1に沿って進退させ、長尺部材90の進退に追従して押さえローラ120を第一軸線111に平行な第二軸線121まわりに回転させることと、スリーブが回転駆動ローラ110と押さえローラ120との間を通過する際に、板バネ133の変形により、スリーブの段差に応じて押さえローラ120を変位させることと、を含む長尺部材90の進退方法。
【符号の説明】
【0097】
2…溶融炉、3…出湯口、1…送り装置、90…長尺部材、91…外周面、20…補助部、50…他の装置、60…搬送装置、D3…搬送方向、D2…変位方向、D1…進退方向、110…回転駆動ローラ、111…第一軸線、120…押さえローラ、121…第二軸線、130…ローラ押さえ部、131…固定部、132…軸受部、133…板バネ、D11…延出方向、112…溝、113…第一内面、114…第二内面、150…ガイドローラ、151…第三軸線、160…第二押さえローラ、161…第四軸線、170…第二ローラ押さえ部、171…第二固定部、172…第二軸受部、173…第二板バネ、D12…第二延出方向、180…ケーシング、30…保持部、70…力センサ、80…制御部、140…回転駆動装置。
図1
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