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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089837
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】実アイテム作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240627BHJP
   G06Q 30/018 20230101ALI20240627BHJP
   G06F 21/64 20130101ALI20240627BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/018 342
G06F21/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205292
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】513087677
【氏名又は名称】PCIソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徳原 晋一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 行生
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 兼蔵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 潔
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC16
5L050CC16
(57)【要約】
【課題】各々が単一のデジタルアイテムからの真正の複製であることを証明可能である実アイテム作成方法を提供する。
【解決手段】実アイテム作成方法は、複数の実アイテム10に共通に割り当てる真贋証明書番号と、複数の実アイテム10を相互に識別する自在に各実アイテム10に割り当てる印刷シリアル番号と複製の総数とを設定する工程と、複数の実アイテム10に対して共通に紐付けし、真贋証明書番号と全部の印刷シリアル番号とのデータが書き込まれている印刷NFT28を生成する工程と、各通常紙11に、地紋56を施しつつ、真贋証明書番号と該通常紙11の印刷シリアル番号と総数を追記情報として付加して、デジタルアイテム14からを複数の実アイテム10を複製する工程と、を備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が単一のデジタルアイテムからの真正の複製であることを証明可能に複数の実アイテムを作成する実アイテム作成方法であって、
前記複数の実アイテムに共通に割り当てる真正証明番号と、前記複数の実アイテムを相互に識別自在に各実アイテムに割り当てる割当IDと、前記複数の実アイテムの総数とを設定する工程と、
前記複数の実アイテムに対して共通に紐付けする単一のNFTであって、少なくとも前記真正証明番号と、前記総数と、全部の前記割当IDとのデータが書き込まれている紐付けNFTを生成する工程と、
前記デジタルアイテムの複製により作成した各実アイテムをさらに複製したときには複製の複製であることが判別できる判別処理が施された各紙媒体に、前記デジタルアイテムが複製されていて、かつ該紙媒体における前記デジタルアイテムの複製領域とは重ならない追記領域に前記真正証明番号と、前記総数と、該デジタルアイテムの割当IDと、前記紐付けNFTのトークンIDとの情報が追記情報として付加されている前記実アイテムを前記総数だけ作成する工程と、
を備えることを特徴とする実アイテム作成方法。
【請求項2】
前記デジタルアイテムは、既存のブロックチェーンから取得したNFTアイテムである、請求項1記載の実アイテム作成方法。
【請求項3】
前記紐付けNFTを生成する工程では、前記紐付けNFTを、前記既存のブロックチェーンに連結する、請求項2記載の実アイテム作成方法。
【請求項4】
各紙媒体には、前記追記情報がQRコードで付加されている、請求項1記載の実アイテム作成方法。
【請求項5】
各紙媒体には、前記追記情報がテキストで追記されている、請求項1記載の実アイテム作成方法。
【請求項6】
前記追記領域は、前記紙媒体において、前記複製領域と同一面の余白領域、又は前記複製領域の裏面に設定されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の実アイテム作成方法。
【請求項7】
前記判別処理は、紙媒体における地紋透かしである、請求項1~6のいずれか1項に記載の実アイテム作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複製した実アイテムの真正が証明可能である実アイテム作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネット上のマーケットにおいて、オリジナルデータであることを保証するNFT(Non-Fungible Token)が付加されたデジタルアート、写真、アイコン等が取引されている。ブロックチェーンでは、そのNFTに紐付けされたデジタルアイテムは真正であることが証明される。一方、実アイテム(印刷物等のリアルデータ)は、P2P(ピアツーピア)ネットワークの外に存在するので、NFTによる真正の証明の仕方は、デジタルアイテムと別のものにする必要がある。
【0003】
特許文献1は、NFTアイテム(ネット上に存在しNFTに対応付けられているデジタルアイテム)に対応付けられた唯一無二の実アイテムとしてのトレーディングカードを開示する。そして、NFTアイテムを売買するときは、トレーディングカードが売り手から買い手に渡るとともに、売り手と買い手は、トレーディングカードの所有時に、トレーディングカードに印刷されているQRコード(登録商標)をスマートフォンで読み取ることによりNFTのスマートコントラクトを起動させて、該スマートコントラクトを使って、NFTの所有を売り手側から買い手側に変更する処理操作を行うようにしている。
【0004】
特許文献2も、NFTアイテムに対応付けられた実アイテムとしての唯一無二のデジタルカードを開示する。特許文献2では、NFTアイテムの所有者でありかつデジタルカードの所有者でもあるユーザは、該デジタルカードに印刷されているQRコードをスマートフォンで読み取ることによりNFTのスマートコントラクトを起動させて、該スマートコントラクトを使って、NFTアイテムを各種の態様でスマートフォンに表示できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6710401号公報
【特許文献2】特開2022-79884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一のデジタルアイテムの所有者は、偽物が市場で多く流通しないように該デジタルアイテムから複製する実アイテムを所定数に制限するとともに、第三者に対して、複製した各実アイテムが該デジタルアイテムを真正に複製した実アイテムであることを証明できるようにしたいという要望がある。
【0007】
特許文献1,2では、NFTアイテムのNFTが唯一無二の実アイテムに紐付けられているので、その実アイテムは、当初は真正であることが証明される。しかしながら、同一のQRコードが付加された実アイテムが簡単に複製されてしまうので、実アイテムが初回の正規の複製であるか、それとも複製の複製であるかの見分けがつかず、また、単一のNFTアイテムから複数の実アイテムを複製して、それら複数の実アイテムが真正の所有者の承認下に一斉に複製された真正品あることを証明するのが難しい。
【0008】
また、NFTの生成には、1つのNFTにつき1単位のガス代(NFT作成手数料)が発生する。このため、単一のデジタルアイテムから複製により相当数の実アイテムを作成したとき、複製数だけNFTが必要となるので、ガス代の合計費用が嵩んでしまう。
【0009】
本発明の目的は、各々が単一のデジタルアイテムからの真正の複製であることの証明付きで、複数の実アイテムを作成する実アイテム作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実アイテム作成方法は、
各々が単一のデジタルアイテムからの真正の複製であることを証明可能に複数の実アイテムを作成する実アイテム作成方法であって、
前記複数の実アイテムに共通に割り当てる真正証明番号と、前記複数の実アイテムを相互に識別自在に各実アイテムに割り当てる割当IDと、前記複数の実アイテムの総数とを設定する工程と、
前記複数の実アイテムに対して共通に紐付けする単一のNFTであって、少なくとも前記真正証明番号と、前記総数と、全部の前記割当IDとのデータが書き込まれている紐付けNFTを生成する工程と、
前記デジタルアイテムの複製により作成した各実アイテムをさらに複製したときには複製の複製であることが判別できる判別処理が施された各紙媒体に、前記デジタルアイテムが複製されていて、かつ該紙媒体における前記デジタルアイテムの複製領域とは重ならない追記領域に前記真正証明番号のトークンIDと、前記総数と、該デジタルアイテムの割当IDと、前記紐付けNFTのトークンIDとの情報が追記情報として付加されている前記実アイテムを前記総数だけ作成する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単一のデジタルアイテムから複製された複数の実アイテムの各々は、さらに複製したときにはさらなる複製であることが判別可能である処理が施されているので、真正の実アイテムからの複製が困難となる。
【0012】
また、単一のデジタルアイテムから複製された複数の実アイテムに対して共通に紐付けする単一のNFTであって少なくとも所有者と、総数と、該複数の実アイテムの全部の割当IDとのデータが書き込まれている紐付けNFTが生成される。一方、真正の実アイテムの紙媒体には、デジタルアイテムの複製領域とは重ならない追記領域に割当ID及び紐付けNFTの情報が追記情報として付加されている。こうして、紙媒体の追記情報の紐付けNFTの情報から対応する紐付けNFTにアクセスして、紙媒体の追記情報の割当IDを、アクセス先の紐付けNFTの割当IDと照合することにより、真正の実アイテムであることを証明することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、単一の紐付けNFTが、複数の実アイテムに対して共通に紐付けされているので、NFTの生成個数に応じた費用がかかる場合には、ガス代を節約して、複数の実アイテムの真正を証明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実アイテム作成方法についての概略説明図である。
図2A】実アイテム作成方法の第1実施形態の主要説明図である。
図2B図2Aの実アイテム作成方法の変形例についての説明図である。
図3A】電子透かし及び印刷NFTにそれぞれ含められる項目についての説明図である。
図3B】真贋証明書、QRコード及び再複製アイテムにそれぞれ含められる項目についての説明図である。
図4図2Aの各実アイテムの真贋証明書の主要部の詳細図である。
図5】ブロックチェーンのブロックの構造を示す図である。
図6】実アイテム作成方法の第2実施形態の主要説明図である。
図7】実アイテム作成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複数の実施形態について説明する。本発明は、これら実施形態に限定されないことは言うまでもない。なお、複数の実施形態間で共通する構成要素については、同一の符号を使用する。
【0016】
図1は、実アイテム作成方法についての概略説明図である。実アイテム作成方法は、複数(例:50個)の実アイテム10を、各々が所定の所有者12の所有する単一のNFT未登録デジタルアイテム14a又はNFTデジタルアイテム14bからの真正の複製であることを証明可能に作成する方法である。なお、単に「デジタルアイテム14」というときは、NFT未登録デジタルアイテム14aとNFTデジタルアイテム14bのいずれか、又は両方を指すものとする。
【0017】
新規作成デジタルアイテムは、NFT未登録デジタルアイテム14aに含まれる。NFT未登録デジタルアイテム14aとは、紐付けされているNFTが存在しないデジタルアイテムをいうものとし、新規作成でないデジタルアイテムであっても、紐付けされているNFTが存在しないデジタルアイテムであれば、NFT未登録デジタルアイテム14aに含まれる。
【0018】
これに対し、NFTデジタルアイテム14bは、P2P(Peer to Peer)ネットワーク18においてブロックチェーン22に紐付けられてNFT化されたデジタルアイテムであり、P2Pネットワーク18bのノード20からブロックチェーン22に適宜アクセスして、内容が閲覧可能になっている。ノード20は、例えばPC(Personal Computer)である。ブロックチェーン22は、直列に連結されている複数のブロック24を備え、最後のブロック24からはNFTデジタルアイテム14bの現在の所有者12や著作者等の情報が知得可能になっている。
【0019】
実アイテム作成方法の実施者としての実アイテム作成者16は、典型的には、所有者12とは別の主体であり、例えば業者である。業者である実アイテム作成者16は、所有者12からの作成依頼に基づいて、デジタルアイテム14の実の複製としての実アイテム10を作成し、作成した実アイテム10を所有者12に引き渡す。
【0020】
しかしながら、所有者12が、業者としての実アイテム作成者16を兼ねることもできる。その場合は、実アイテム作成者16は、自分で作成した実アイテム10を販売したり、貸与したりすることができる。
【0021】
実アイテム作成者16は、実アイテム10の作成に併せて印刷NFT28をP2Pネットワーク18上の記憶装置にストアする。印刷NFT28の内容の詳細については、図4で後述する。
【0022】
NFT未登録デジタルアイテム14aの複製として実アイテム10が作成されたときの印刷NFT28は、実アイテム作成者16の所有するノード20に単独で、すなわちP2Pネットワーク18における他のNFTとは独立にノード20の記憶装置にストアされ、P2Pネットワーク18上の全ノード20に公開される。
【0023】
NFTデジタルアイテム14bの複製として実アイテム10が作成されたときの印刷NFT28は、単独で実アイテム作成者16の所有するノード20に記憶装置にストアされてもよいし、NFTデジタルアイテム14bが紐付けされていたブロックチェーン22の最後のブロック24の後ろに連結されて、該ブロックチェーン22の一部とされてもよい。単独及びブロック24への連結のどちらの場合も、NFTデジタルアイテム14b由来の印刷NFT28の内容は、P2Pネットワーク18上の全ノード20に公開され、本発明の紐付けNFTとして、実アイテム10の真正の証明書として使用可能である。
【0024】
実アイテム作成者16は、印刷NFT28の作成と同時に、所有者12からの依頼で、デジタルアイテム14の売買を行うマーケットプレイス32(例:”OpenSea”、”Rakuten NFT”及び”LINE NFT”)の業者に一般NFT30を作成させることができる。一般NFT30は、デジタルコンテンツの取引マーケットの取引業者が取引アイテムの取引データを記録するためにP2Pネットワーク18上に生成したNFTと定義する。
【0025】
NFTデジタルアイテム14bについては、その入手元が所定の取引マーケットの取引業者が生成したNFTからのものであるから、一般NFT30がP2Pネットワーク18上に既存となっている。一方、NFT未登録デジタルアイテム14aについては、一般NFT30がP2Pネットワーク18上に未生成になっている。そこで、実アイテム作成者16がNFT未登録デジタルアイテム14aについてデジタルコンテンツの取引マーケットに上場することによりNFT未登録デジタルアイテム14aについての一般NFT30を、取引マーケットの取引業者を介してP2Pネットワーク18上に新規に生成することができる。
【0026】
新規作成の一般NFT30は、NFT未登録デジタルアイテム14aに紐付けられており、既存の一般NFT30は、NFTデジタルアイテム14bに紐付けられている。したがって、後述の真贋証明書42及びQRコード44(図2A)に新規作成又は既存の一般NFT30のIDとしてのNFTトークンID(図3A及び図3B)の情報を書き込んでおけば、一般NFT30も、印刷NFT28と同様に、実アイテム10の真正を証明する、本発明の「紐付けNFT」として利用することができる。
【0027】
印刷NFT28及び一般NFT30共に、二次流通後は売買が行われるごとにデジタルアイテム14の著作者にロイヤリティが支払われる。
【0028】
(第1実施形態)
図2Aは、実アイテム作成方法の主要部の第1実施形態の説明図である。実アイテム作成者16は、PC34及びデジタル複合機38を使用して、実アイテム10及び印刷NFT28を作成する。なお、実アイテム10は、現実世界の実のアイテムであるのに対し、印刷NFT28は、NFTデジタルアイテム14bと同様に、仮想空間としてのP2Pネットワーク18に存在するものである。LAN36は、ノード20を介して種々のデータをP2Pネットワーク18と送受自在になっている。PC34及びデジタル複合機38は、LAN36に接続されている。
【0029】
デジタル複合機38は、不正コピーガード機能付き複合機である。不正コピーガードは、最初の複製は、見た目が通常の複製と同じ複製(不正コピーガード無しの複製)としつつ、2回目以降の複製(最初の複製をさらに複製した複製/連鎖的な複製)には、当該複製に対して2回目以降の複製であることを露見させる処置が施される機能である。すなわち複製の複製(連鎖的な複製)であることが判別できる判別処理を施して最初の複製を実施する。
【0030】
なお、複合機とは、印刷機とコピー機の両方を兼ねるOA機器と定義する。デジタル複合機38は、印刷機として印刷又はコピー機としてコピーを実施するとき、不正コピーガード付きで実施するかしないかを使い分けることができる。
【0031】
不正コピーガードとは、具体的には、例えば地紋56(厳密には「地紋透かし」である。)である。不正コピーガードは、本発明の「複製の複製であることが判別できる判別処理」の例である。不正コピーガードは複合機の機能であるのに対し、後述の図2Bの電子透かし26は、デジタルアイテム14自体に埋め込まれており、デジタル複合機38が不正コピーガードのオフの状態で通常紙11にデジタルアイテム14を複製しても、複製後の複製コンテンツ40に埋め込まれる。
【0032】
通常紙11は、それ自体、地紋(詳細には地紋透かし)の処理が施されていない普通の紙媒体(例:A4サイズの白紙)である。デジタル複合機38は、通常紙11の各々にデジタルアイテム14の複製コンテンツ40を複製して、複数(例:50枚)の実アイテム10を作成する。その際、通常紙11の表(おもて)11a及び裏(うら)11bの印刷に対してデジタル複合機38の不正コピーガードがそれぞれオフ及びオンにされ、通常紙11の裏11bのみ、不正コピーガードが施される。複製コンテンツ40は、通常紙11の表11aに複製され、真贋証明書42及びQRコード44は、裏11bに印刷される。
【0033】
実アイテム10において、人(鑑賞者)は、デジタルアイテム14の真正の複製アイテムとしての通常紙11自体からは、裏11bの不正コピーガードを認識することができない。しかしながら、実アイテム10をさらに複製すると、すなわち複製の複製としての再複製アイテム50の裏11bには、不正コピーガードとしての地紋56が露見し、再複製アイテム50が真正の複製ではないことが判明する。なお、実アイテム10の表11aにも不正コピーガードを施しておいても、実アイテム10の表11aから不正コピーガードは知覚できないが、見た目では分からない複製コンテンツ40の影響を極力避けるため、この実施例では、不正コピーガードは実アイテム10の表11aには施さないことにしている。
【0034】
デジタル複合機38は、通常紙11の各々にデジタルアイテム14の複製コンテンツ40を複製して、複数(例:50枚)の実アイテム10を作成する。その際、通常紙11の表(おもて)11a及び裏(うら)11bの印刷に対してデジタル複合機38の不正コピーガードがそれぞれオフ及びオンにされ、通常紙11の裏11bのみ、不正コピーガードが施される。複製コンテンツ40は、通常紙11の表11aに複製され、真贋証明書42及びQRコード44は、裏11bに印刷される。
【0035】
実アイテム10において、人は、デジタルアイテム14の真正の複製アイテムとしての通常紙11自体からは、裏11bの不正コピーガードを認識することができない。しかしながら、実アイテム10をさらに複製すると、すなわち複製の複製としての再複製アイテム50の裏11bには、不正コピーガードとしての地紋56が露見し、再複製アイテム50が真正の複製ではないことが判明する。なお、実アイテム10の表11aにも不正コピーガードを施しておいても、実アイテム10の表11aから不正コピーガードは知覚できないが、見た目では分からない複製コンテンツ40の影響を極力避けるため、この実施例では、不正コピーガードは実アイテム10の表11aには施さないことにしている。
【0036】
図2Bは、図2Aの実アイテム作成方法の変形例についての説明図である。STEP1では、デジタルアイテム14が準備される。デジタルアイテム14には、NFT未登録デジタルアイテム14aとNFTデジタルアイテム14b(図2A)の2種類がある。NFT未登録デジタルアイテム14aは、例えば、所有者12から実アイテム作成者16にUSBメモリやメールの添付ファイルを利用して持ち込まれる。NFTデジタルアイテム14bは、実アイテム作成者16が、所有者12から、NFTデジタルアイテム14bに紐付けられているNFTトークンIDを教えられ、該NFTトークンIDに基づいてP2Pネットワーク18内を検索して、入手する。
【0037】
STEP2では、通常紙11の表11aに電子透かし26付きで複製コンテンツ40が最初の複製として印刷される。電子透かし26は、前述したように、デジタルアイテム14自体に最初から埋め込まれているものである。電子透かし26には、電子透かしIDの情報(図3A)が含まれている。
【0038】
電子透かし26は、デジタルアイテム14の最初の複製である実アイテム10自体からは人は表11aにおいて認識できない。電子透かし26に含まれている電子透かしIDを読み取るには、スキャナが必要となる。
【0039】
この例では、電子透かし26付きのデジタルアイテム14について説明しているが、電子透かし26無しのデジタルアイテム14であつてもよく、電子透かし26無しのデジタルアイテム14では、デジタル複合機38のコピーガード機能や予め地紋の入れてある通常紙11を利用して、通常紙11に地紋56が埋め込まれる。ただし、埋め込まれた地紋56も、電子透かし26と同様に、デジタルアイテム14の最初の複製の複製コンテンツ40からは見た目で知覚されることとない。地紋56は、あくまで、複製の複製を行ったときに露見する(図2Aの再複製アイテム50)。
【0040】
STEP3では、通常紙11と紐付け関係のある唯一無二の印刷NFT28及び一般NFT30が作成される。STEP3の段階で、作成されたものは、印刷NFT28、一般NFT30及び通常紙11の表11aとなる。印刷NFT28及び一般NFT30は、実空間でなく、P2Pネットワーク18に存在する。
【0041】
なお、STEP2とSTEP3とは、順番を入れ替えることができる。すなわち、印刷NFT28及び一般NFT30に含ませる情報は、通常紙11の表11aに複製コンテンツ40を印刷する前に、予め定まるので(図3Aの印刷NFT情報280を参照)、印刷NFT28及び一般NFT30を作成してから、通常紙11に表11aの複製コンテンツ40を複製することができる。
【0042】
STEP4では、QRコード44の情報を作成する。通常は、QRコード44に含ませる情報(図3BのQRコード情報460)と真贋証明書42に含ませる情報(図3Bの真贋証明書情報420)とは、同一である。しかしながら、QRコード情報460の情報量は、真贋証明書情報420の情報量より制限されている。したがって、真贋証明書42に含められる情報は、QRコード44に含められる情報に、さらに、QRコード44の字数制限のためにQRコード44に含めることができなかった情報を加えた情報とする。STEP4は、STEP3の前に実施してもよい。
【0043】
STEP5では、通常紙11の裏11bに地紋56付きで真贋証明書42及びQRコード44を印刷する。STEP5における通常紙11の裏11bの地紋56は、デジタルアイテム14の最初の実の複製である実アイテム10からは、人が見ても知覚できないようになっている。
【0044】
図2Bの表11aに印刷されている電子透かし26は、繰り返しの複製でも、人には知覚できないので、本発明の「複製の複製であることが判別できる判別処理」には含まれない。しかしながら、裏11bには、本発明の「複製の複製であることが判別できる判別処理」としての地紋56が印刷されている。したがって、図2Bの電子透かし26付きの実アイテム10の再複製は、裏11bにおいて図2Aの再複製アイテム50と同様な結果を招来するので、該再複製は、贋物であることが判明する。
【0045】
STEP6では、所有者12に実アイテム10と印刷NFT28が手渡される。なお、印刷NFT28は、STEP3におけるP2Pネットワーク18のノード20の記憶装置における印刷NFT28の書き込みが所有者12への実質的な手渡しとなる。その場合、STEP6における印刷NFT28の手渡しは、印刷NFT28が作成済みであることを実アイテム作成者16から所有者12への通知となる。
【0046】
図3Aは、電子透かし26及び印刷NFT28にそれぞれ含められる電子透かし情報260及び印刷NFT情報280についての説明図である。また、図3Bは、真贋証明書42、QRコード44及び地紋56にそれぞれ含められる真贋証明書情報420、QRコード情報460及び地紋情報560についての説明図である。
【0047】
各情報は、内容、目的及び中身の3つの観点から説明している。さらに、中身について必須項目とOption(任意)項目との2種類がある情報は、種類別の項目についても言及している。項目の内、真贋証明書番号は、本発明の真正証明番号に相当する。
【0048】
図4は、図2Aの各実アイテム10の真贋証明書42に含められる主要な4項目についての詳細図である。真贋証明書42に含まれる主要な4項目として、作者名、著者・作成日、印刷可能枚数(実アイテム10の総数)及びシリアル番号が選択されている。
【0049】
作者名、著者・作成日及び印刷可能枚数は、複数(例:50個)の実アイテム10に共通である。1番目の実アイテム10から50番目の実アイテム10には、順番に、01、02、・・・、50が印刷シリアル番号として付けられている。印刷シリアル番号は、複数の実アイテム10を相互に識別自在に各実アイテムに割り当てる割当IDの一例である。このような割当IDは、数字に限らず、アルファベットや記号を含むものであってもよい。
【0050】
人は、実アイテム10の真贋を検証するとき、実アイテム10の真贋証明書42から印刷NFTトークンIDを知得する。そして、知得した印刷NFTトークンIDに基づいてP2Pネットワーク18内の印刷NFT28にアクセスする。次に、真贋証明書番号について、印刷NFT28に書き込まれているものと実アイテム10の真贋証明書42に記載されているものとが一致するか否かを調べる。一致していれば、検証対象の実アイテム10は、真正(本物)の実アイテム10であり、一致していなければ、真正ではない、すなわち偽物と判断する。
【0051】
人は、実アイテム10の真贋を検証するとき、実アイテム10の真贋証明書42の印刷NFTトークンID真贋証明書42に代えて、スマートフォン等のQRコード読取りアプリを利用して、QRコード44を読み取る。これにより、QRコード44がデコードされ、QRコード44の中身の真贋証明書番号と印刷NFTトークンIDとを読み取ることができる。さらに、デコードされた印刷NFTトークンIDに基づいてP2Pネットワーク18内の印刷NFT28にアクセスする。そして、真贋証明書番号について、印刷NFT28に書き込まれている情報と実アイテム10のQRコード44からデコードされた情報とが一致するか否かを調べる。一致していれば、検証対象の実アイテム10は、真正(本物)であり、一致していなければ、真正ではない、すなわち偽物と判断する。
【0052】
印刷NFT28、真贋証明書42及びQRコード44には、図3A及び図3Bに図示しているように、印刷NFT28と真贋証明書42又はQRコード44とで共通の項目が多数存在する(例:電子透かしID、印刷可能枚数及び印刷シリアル番号等)。人は、これらの共通の項目についての一致及び不一致からも真贋検証対象の実アイテム10の真贋を見分けることができる。
【0053】
なお、図1に図示しているように、所有者12は、マーケットプレイス32の業者に一般NFT30を作成させることができる。一般NFT30に印刷NFT情報280(図3A)と同じデータを含ませておけば、一般NFT30を使って、実アイテム10の真贋についての検証を行うことができるし、典型的にはそのようにする。その場合、印刷NFT28及び一般NFT30の両方を検証用に使用することができる。また、印刷NFT28及び一般NFT30の一方を、省略してもよい。
【0054】
印刷NFT28及び一般NFT30共に、著作者の情報と共に、ロイヤリティ率の情報が書き込まれている。これにより、著作者へロイヤリティの支払いを可能にすることができる。
【0055】
図5は、ブロックチェーン22のブロック24の構造(イーサリアムのトークン規格)を示している。ブロック24は、NFTでもある。図示のブロック24は、オフチェーンの例であり、インデックスデータ、メタデータ及び対象データがその順番に参照値を介して直列に連結されている。ブロック24は、オンチェーンの構造を採ることもできる。
【0056】
(第2実施形態)
図6は、実アイテム作成方法の主要部の第2実施形態の説明図である。図6において、図2の要素と同一の要素は、図2の要素に付けた符号と同一の符号を付けて、説明は省略し、相違点について説明する。
【0057】
第2実施形態では、複製コンテンツ40、真贋証明書42及びQRコード44は、すべて通常紙11の表11aに印刷される。表11aは、複製領域60と、余白領域62とに分割される。複製領域60は、表11aの大部を占め、余白領域62は、表11aの周辺を占めて、矩形の複製領域60を外側から囲っている。複製領域60と余白領域62とは、相互に重なっていない。複製コンテンツ40は、複製領域60に印刷され、真贋証明書42及びQRコード44は、余白領域62、詳細には余白領域62の下辺部の余白に印刷されている。
【0058】
複製領域60と余白領域62の少なくとも一方、又は両方には、デジタル複合機38による複製コンテンツ40の複製、真贋証明書42及びQRコード44の印刷の際、電子透かし26及び/又は地紋56も併せて印刷される。デジタルアイテム14からの複製コンテンツ40の最初の複製では、電子透かし26及び地紋56は、人が知覚できないようになっている。
【0059】
デジタルアイテム14から複製により作成された実アイテム10の表11aを、さらに複製(再複製)した再複製アイテム50には、地紋56が露見する。これにより、再複製が禁じられることになる。
【0060】
最後に、図7を参照して、実アイテム作成方法のフローチャートを説明する。このフローチャートは、第1実施形態と第2実施形態とに共通に適用される。STEP100では、デジタルアイテム14を取得する。実アイテム作成者16は、デジタルアイテム14を所有者12から直接、提供を受けるか、所有者12から教示されたブロックチェーン22のブロック24から取得する。
【0061】
STEP102では、実アイテム作成者16は、デジタルアイテム14の複製作業に当たり、該複製作業時に必要となる複数の項目の値を設定する。この項目には、図3A及び図3Bの各情報の中身である必須項目の全部に加えて、オプション(任意)項目の幾つかが含まれる。全情報を通じて、同一の項目が必須項目とオプション(任意)項目との両方で設定されている場合は、必須項目として取り扱う。
【0062】
STEP104では、紐付けNFTを生成する。紐付けNFTとは、図2BのSTEP3で印刷NFT28及び一般NFT30の両方が生成される場合には、両方が紐付けNFTであり、一方のみが生成される場合には、その一方のNFTである。
【0063】
STEP106では、実アイテム作成者16は、再複製判別処理付き媒体に追記情報付きでデジタルアイテム14から複数の実アイテム10を複製する。再複製処理付き媒体とは、デジタル複合機38によりコピーガード機能により地紋56を印刷された通常紙11又は地紋56が予め埋め込まれている特別紙である。追記情報とは、例えば真贋証明書42又はQRコード44である。
【0064】
(変形例)
実施形態の真贋証明書42及びQRコード44は、本発明の「追記情報」に相当する。しかしながら、図2Bの電子透かし26にも、真贋証明書42及びQRコード44と同じ情報を含ませれば、本発明の「追記情報」として利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10・・・実アイテム、11・・・通常紙、11a・・・表、11b・・・裏、12・・・所有者、14・・・デジタルアイテム、14a・・・NFT未登録デジタルアイテム、14b・・・NFTデジタルアイテム、16・・・実アイテム作成者、18・・・P2Pネットワーク、20・・・ノード、22・・・ブロックチェーン、24・・・ブロック、26・・・電子透かし、28・・・印刷NFT、30・・・一般NFT、32・・・マーケットプレイス、40・・・複製コンテンツ、42・・・真贋証明書、44・・・QRコード、50・・・再複製アイテム、56・・・地紋、58・・・再複製アイテム、60・・・複製領域、62・・・余白領域。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7