(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089847
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ポリアミン化合物、このポリアミン化合物からなる粉体用分散剤、およびこの粉体用分散剤を含有する分散体組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 229/16 20060101AFI20240627BHJP
C09K 23/16 20220101ALI20240627BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240627BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C07C229/16 CSP
C09K23/16
C09D17/00
C08G65/333
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205331
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】小室 晴香
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 文隆
(72)【発明者】
【氏名】飯島 志行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 郁也
【テーマコード(参考)】
4D077
4H006
4J005
4J037
【Fターム(参考)】
4D077AA01
4D077AA03
4D077AA08
4D077AB03
4D077AC05
4D077DC19X
4D077DC19Y
4D077DC32X
4D077DC32Y
4D077DC45X
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4D077DC47X
4D077DC47Y
4D077DD43X
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4D077DE07X
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4D077DE09X
4D077DE09Y
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB68
4H006AC52
4J005AA03
4J005BD05
4J037AA02
4J037AA25
4J037CB16
4J037CC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる種類の分散体を含む分散体混合物をも良好に分散可能で、分散体組成物の流動性を向上できる分散剤として利用され得る新規なポリアミン化合物の提供。
【解決手段】式(1)で示されるポリアミン化合物。
(R
1はHまたは式(2)で示される基であり、R
1のうち少なくとも1つは式(2)で示される基である。mは1~4、nは1~6である。)
(R
2はC1~C25の炭化水素基であり、R
3はHまたはメチル基であり、AOはC2~C4のオキシアルキレン基である。XはAOの平均付加モル数であり、0~30である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるポリアミン化合物。
【化1】
(式(1)において、R
1は、水素原子または式(2)で示される基であり、R
1のうち少なくとも1つは式(2)で示される基である。mは1~4の数であり、nは1~6の数である。
【化2】
(式(2)において、R
2は炭素数1~25の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。XはAOの平均付加モル数であり、0~30の数である。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミン化合物からなる粉体用分散剤。
【請求項3】
請求項2に記載の粉体用分散剤、分散体および分散媒を含有する分散体組成物。
【請求項4】
前記分散体が2種類以上の分散体からなる分散体混合物である請求項3に記載の分散体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリアミン化合物、このポリアミン化合物からなり、分散体混合物を良好に分散させることができる粉体用分散剤、およびこの粉体用分散剤を含有する分散体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン化合物は、塩基性やこれに伴う求核性を有しており、触媒、溶剤、着色剤、乳化剤、重合調整剤、分散剤等、種々の用途に用いられている。
一方、有機粉体や無機粉体の分散体は単独では分散性が不十分な場合が多いことから、これら分散体を含有する分散体組成物を調製する際、分散体組成物の流動性や貯蔵安定性の向上を目的として、分散剤が使用されている。有機粉体を含有する分散体組成物は、塗料、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジスト、および筆記具インキなどに利用されている。また無機粉体を含有する分散体組成物は、積層セラミックコンデンサの誘電体層スラリー、電極を形成する導電ペースト、半導体用CMPスラリーとして、幅広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、粒径の小さい分散体を高濃度で水中に分散させるために、ポリアミン化合物にエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加させた高分子分散剤が提案されている。一方、特許文献2では、酸化チタン等のセラミックス粉体を分散させるために、含窒素複素環式化合物を含む分散剤が提案されている。
このように分散剤は使用する分散体に応じて使い分けがなされている。
【0004】
一方で分散体組成物には、2種類以上の分散体を含有するものも多くあり、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極層の製造時にはニッケル粉体およびチタン酸バリウム粉体の混合物が利用され、窒化アルミニウムの製造時にはアルミナ粉体およびカーボン粉体の混合物が利用されている。分散体混合物に対しては、各分散体に有効な分散剤が組み合わせて使用されている。
【0005】
しかしながら、異なる種類の分散剤を組み合わせることで、分散剤同士の相互作用が生じ、分散体混合物の分散性の低下などの問題が生じている。また、同じ種類の分散剤を用いた場合でも、分散剤や分散体同士の相互作用が生じ、分散性の低下が生じることがあった。そのため、分散剤には、1種類の分散体を良好に分散させるとともに、分散体混合物をも良好に分散させる性能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-205088号公報
【特許文献2】特開2021-115571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、1種類の分散体を良好に分散させることができるだけでなく、異なる種類の分散体を含む分散体混合物をも良好に分散させることができ、分散体組成物の流動性を向上させることができる粉体用分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリアミン化合物を新たに案出し、これを粉体用分散剤として用いることにより上記目的を達成できることを見出した。この新たな知見に基づく本発明は以下の態様を含む。
【0009】
[1]下記式(1)で示されるポリアミン化合物。
【化1】
(式(1)において、R
1は、水素原子または式(2)で示される基であり、R
1のうち少なくとも1つは式(2)で示される基である。mは1~4の数であり、nは1~6の数である。
【化2】
(式(2)において、R
2は炭素数1~25の炭化水素基であり、R
3は水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。XはAOの平均付加モル数であり、0~30の数である。)
【0010】
[2]前記[1]に記載のポリアミン化合物からなる粉体用分散剤。
【0011】
[3]前記[2]に記載の粉体用分散剤、分散体および分散媒を含有する分散体組成物。
【0012】
[4]前記分散体が2種類以上の分散体からなる分散体混合物である前記[3]に記載の分散体組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規なポリアミン化合物を粉体用分散剤として用いることによって、1種類の分散体を良好に分散させることができるだけでなく、異なる種類の分散体を含む分散体混合物をも良好に分散させることができ、分散体組成物の流動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は実施例で用いた化合物1の
1HNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は本明細書で説明される実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
本明細書において段階的に記載されている複数の数値範囲において、各上限値および各下限値は、任意に組み合わされた数値範囲の上限値または下限値になり得る。例えば、ある成分の含有量について「5~20質量%、10~15質量%」の記載がある場合、「5~15質量%」、「10~20質量%」、「5~10質量%」、「15~20質量%」の各数値範囲を構成し得る。
また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値または実施例から一義的に導き出される値に置き換えることができる。
【0016】
[ポリアミン化合物]
本発明の新規化合物であるポリアミン化合物について説明する。
本発明のポリアミン化合物は下記式(1)で示される。
【化1】
【0017】
式(1)において、R1は、水素原子または式(2)で示される基であり、R1のうち少なくとも1つは式(2)で示される基である。言い換えれば、式(1)で示されポリアミン化合物に含まれる(3+m)個のR1のうち少なくとも1つは式(2)で示される基である。
mは、1~4の数であり、好ましくは2~4である。
nは、1~6の数であり、好ましくは2~6であり、より好ましくは2~4である。
【0018】
式(2)で示される基は下記のとおりである。
【化2】
【0019】
式(2)において、R2は炭素数1~25の炭化水素基である。炭素数1~25の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基などの直鎖状飽和炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、イソデシル基、イソステアリル基、2-オクチルデシル基、2-オクチルドデシル基、2-ヘキシルデシル基などの分岐鎖状飽和炭化水素基;パルミトイル基、オレイル基、リノレイル基などの不飽和炭化水素基などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散性の観点から、R2は、好ましくは炭素数1~18の直鎖状もしくは分岐鎖状飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12の直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状飽和炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1~3の直鎖状飽和炭化水素基である。
R3は、水素原子またはメチル基である。
【0020】
式(1)に含まれるR1のうち、式(2)で示す基であるR1の数をrとしたとき、式(2)で示す基の数の割合をPとすると、Pは次の式(3)で表される。
P=r/(3+m) ・・・(3)
rは、1以上であり、(3+m)以下である。
Pは、0よりも大きく、1以下である。Pの下限値は好ましくは0.3であり、より好ましくは0.5であり、Pの上限値は好ましくは0.8であり、より好ましくは0.6である。例えばPの好ましい範囲は0.3~0.8であり、より好ましい範囲は0.5~0.6である。
【0021】
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基であり、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのオキシアルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシドを付加重合することで得られる。その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。AOは、好ましくはオキシエチレン基単独であるか、またはオキシエチレン基を50mol%以上含むオキシエチレン基およびオキシプロピレン基の組み合わせであり、より好ましくはオキシエチレン基単独である。
Xは、AOの平均付加モル数で、0~30の数である。分散性の観点から、Xは、好ましくは0~15であり、より好ましくは1~10である。
【0022】
本発明のポリアミン化合物の重量平均分子量は、好ましくは100~10,000であり、より好ましくは400~5,000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0023】
(ポリアミン化合物の製造方法)
式(1)で示される化合物を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、R2-(AO)x-O-CO-C(R3)=CH2(式中の記号の定義は上記のとおりである。)で示されるアクリレートまたはメタクリレートと、ポリアミンとをマイケル付加反応させる方法が挙げられる。
【0024】
ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミンなどのジアミン;ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、3,3’-ジアミノ-ジプロピルアミンなどのトリアミン;トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンなどのテトラミン;テトラエチレンペンタミンなどのペンタミンなどが挙げられる。分散性の観点から、ポリアミンは、好ましくはトリアミン、テトラミン、ペンタミンであり、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンである。
【0025】
前記マイケル付加反応においては触媒を用いてもよく、触媒としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物または水酸化物、アルコラート、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。
また、前記マイケル付加反応は無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用して行ってもよい。前記マイケル付加反応に使用した溶媒は、そのまま残留させてもよく、反応終了後、蒸留等の操作により除去することもできる。前記マイケル付加反応の温度は、好ましくは50~130℃であり、より好ましくは50~100℃である。
【0026】
[粉体用分散剤・分散体組成物]
本発明のポリアミン化合物は、分散体、特に、異なる種類の分散体を含む分散体混合物を分散させるための粉体用分散剤として利用することができる。
【0027】
本発明で分散の対象となる分散体は特に限定されないが、通常用いられる有機または無機の粉体が挙げられる。
有機粉体としては、例えばフォストイエロー、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ナフトールレッド、銅フタロシアニン系顔料、リンモリブデンタングステン酸塩、タンニン酸塩、カタノール、タモールレーキ、イソインドリノンエローグリーニッシュ、イソインドリノンエトーレディシュ、キナクリドン、ジオキサジンバイオレット、ペリノンオレンジ、ペリレンバーミリオン、ペリレンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどの有機顔料;ポリアミド系合成樹脂、ポリエステル系合成樹脂、ポリオレフィン系合成樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂などの合成樹脂粉体;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸カルシウム複合体、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの金属石鹸などが挙げられる。なお、これらの有機粉体の平均粒子径としては、その種類によって大きく異なるが、一般的には、100μm以下である。
【0028】
無機粉体としては、例えばカオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩;アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化ニ鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物;炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物;カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素化合物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などが挙げられる。なお、これらの無機粉体の平均粒子径としては、その種類によって大きく異なるが、一般的には、100μm以下であり、好ましくは0.1~50μmである。
【0029】
これらの分散体は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上の分散体を含む場合、本発明特有の効果が得られやすい。この観点から、分散体は好ましくは異なる2種類以上の無機粉体の分散体混合物であり、より好ましくは金属酸化物と炭素化合物とを組み合わせた分散体混合物であり、特に好ましくはアルミナとカーボンブラックとを組み合わせた分散体混合物である。
【0030】
本発明において上記の無機粉体もしくは有機粉体を分散させる分散媒も特に限定されず、例えば、灯油、軽油、ケロシンなどの燃料油;ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素油;ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾールなどの芳香族炭化水素油;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール;酢酸エチル、ジオクチルフタレート、大豆油、アマニ油などのエステル油;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、モノグライム、ジグライム、テトラグライム、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどのエーテル;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール;1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素油;メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどのケトン;ターピネオール、流動パラフィン、ミネラルスピリット、N-メチル-2-ピロリドン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン、グリセリ、水などが挙げられる。
【0031】
本発明の粉体用分散剤は、上記式(1)で示されるポリアミン化合物に包含される複数種のポリアミン化合物から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の効果を妨げない範囲で、公知の他の添加剤を加えても良い。
【0032】
本発明の分散体組成物は、本発明の粉体用分散剤、分散体および分散媒を含有する。
本発明の分散体組成物における分散剤の含有量は、分散体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部、特に好ましくは0.5~3質量部である。分散媒の含有量は、分散体100質量部に対して、好ましくは20~800質量部、より好ましくは50~500質量部、特に好ましくは70~200質量部である。
【実施例0033】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0034】
得られた化合物の同定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて行った。
以下にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定条件を示す。
装置:東ソー株式会社製HLC-8420GPC
カラム:東ソー株式会社製TSKgel SuperAW3000+2500
溶離液:30mmol/L LiBr および 50mmol/Lトリエチルアミンを添加したDMF
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折計(RI)
温度:40℃
標準:ポリエチレングリコール
試料:有効分0.1質量%のTHF溶液を100μL注入
【0035】
以下に1HNMRの測定条件を示す。
装置:日本電子株式会社製JNM―ECA―600
溶媒:重クロロホルム
標準:テトラメチルシラン
温度:25℃
【0036】
上記測定条件で得られた1HNMRのチャートを解析することで、目的物の生成を確認することができる。具体的には、アクリレートまたはメタクリレートの炭素―炭素二重結合に付加した水素のピーク(5.6~6.6ppm)が消失し、炭素―窒素単結合の炭素に付加した水素のピーク(2.4~3.0ppm)が生じたことを確認する。
【0037】
実施例および比較例で用いた化合物1~9について以下に説明し、表1にまとめた。なお、表1中の「ポリアミン」の欄は、化合物1~6の製造に用いたポリアミンを示す。
【0038】
[化合物1の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(205g、0.42mol)、ジエチレントリアミン(15g、0.14mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物1を得た(式(2)中、R
2:メチル基、R
3:水素原子、AO:オキシエチレン基、X:9)。
得られた化合物1の
1HNMRチャートを
図1に示す。
【0039】
[化合物2の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(181g、0.38mol)、ジエチレントリアミン(19g、0.19mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物2を得た(式(2)中、R2:メチル基、R3:メチル基、AO:オキシエチレン基、X:9)。
【0040】
[化合物3の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(185g、0.39mol)、テトラエチレンペンタミン(15g、0.08mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物3を得た(式(2)中、R2:メチル基、R3:水素原子、AO:オキシエチレン基、X:9)。
【0041】
[化合物4の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(192g、0.40mol)、ジエチレントリアミン(8g、0.08mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物4を得た(式(2)中、R2:メチル基、R3:水素原子、AO:オキシエチレン基、X:9)。
【0042】
[化合物5の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート(173g、0.78mol)、ジエチレントリアミン(27g、0.26mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物5を得た(式(2)中、R2:メチル基、R3:水素原子、AO:オキシエチレン基、X:3)。
【0043】
[化合物6の製造例]
300mL4つ口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(182g、0.17mol)、ジエチレントリアミン(18g、0.17mol)を仕込み、均一になるように攪拌しながら50℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し化合物6を得た(式(2)中、R2:メチル基、R3:メチル基、AO:オキシエチレン基、X:23)。
【0044】
[化合物7]
ジエチレントリアミンにエチレンオキサイドを付加させた化合物(分子量:約3,500)
【0045】
[化合物8]
無水マレイン酸とメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数:11)とのラジカル重合によって得られた共重合体(重量平均分子量:約20,000)。
【0046】
[化合物9]
含窒素複素環式化合物にエチレンオキサイドを付加させたポリエーテルと無水フタル酸からなるエステル化合物(分子量:約800)。
【0047】
【0048】
[スラリー1-1、2-1、3-1の調製方法]
以下のようにしてスラリー1-1、2-1、3-1を調製した。
50mLスクリュー管に、粉体、N-メチル-2-ピロリドンを秤量し、自転公転型ミキサーで2分間攪拌してスラリーを得た。スラリーの各原料配合量は表2~4に示す。なお、表2~4中の成分の数値の単位はグラム(g)である。
【0049】
[スラリー1-2~1-10、2-2~2-10、3-2~3-10の調製方法]
化合物1~9を分散剤として使用して、以下のようにしてスラリー1-2~1-10、2-2~2-10、3-2~3-10を調製した。
50mLスクリュー管に、分散剤、粉体、N-メチル-2-ピロリドンを秤量し、自転公転型ミキサーで2分間攪拌してスラリーを得た。スラリーの各原料配合量は表2~4に示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
[スラリーの粘度]
各スラリーの粘度を以下のようにして測定した。
動的粘弾性装置(Paar Physica MCR-300、Anton Paar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が1(1/s)のときの粘度を測定した。
また、スラリーの粘度変化率を下記式から算出し、以下の基準で判断した。結果を表5に示す。
スラリーの粘度変化率(%)
=100×(分散剤添加時の粘度/分散剤未添加時の粘度)
【0054】
(スラリーの粘度変化率の評価基準)
[スラリー1―1~1-10]
◎:粘度変化率が25%未満
○:粘度変化率が25%以上50%未満
×:粘度変化率が50%以上
[スラリー2―1~2-10]
◎:粘度変化率が5%未満
○:粘度変化率が5%以上20%未満
×:粘度変化率が20%以上
[スラリー3―1~3-10]
◎:粘度変化率が5%未満
○:粘度変化率が5%以上20%未満
×:粘度変化率が20%以上、または粘度が高く測定不能
【0055】
【0056】
表5に示される結果から明らかなように、本発明のポリアミン化合物1~6を粉体用分散剤として用いることにより、分散体がアルミナまたはカーボンブラック単独の場合のみならず、アルミナとカーボンブラックの分散体混合物に対しても良好に分散させることができ、分散体組成物の流動性を向上させることができた。
本発明のポリアミン化合物は、分散体を分散させる粉体用分散剤として利用することができ、例えば、塗料、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具インキ、積層セラミックコンデンサの誘電体層スラリー、電極を形成する導電ペースト、半導体用CMPスラリーなどの分散体組成物の調製に利用することができる。