(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089850
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240627BHJP
G06T 7/55 20170101ALI20240627BHJP
【FI】
G06T7/00 660B
G06T7/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205335
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591207574
【氏名又は名称】サクサシステムエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 麻井
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 正一
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA03
5L096FA06
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA02
(57)【要約】
【課題】 人物である被写体が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合であっても、転倒状態を適切に検出できるようにする。
【解決手段】 姿勢推定部103により、最新のフレーム画像データより被写体の骨格座標が取得され、被写体に関する情報が特定され、当該特定された情報に基づいて、全方位転倒判定部1041により、被写体が転倒状態にあるか否かが判定される。被写体は転倒状態にないと判別されると、奥行方向転倒可能性判定部1042により、N秒前のフレーム画像の被写体の骨格座標と最新の骨格座標とが用いられて、奥行方向への転倒の可能性が判定される。奥行方向への転倒の可能性があると判別されると、奥行方向転倒判定処理部により被写体が奥行方向に転倒した状態にあるか否かを判定する処理が行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の人物を被写体として連続的に撮影することにより得た映像データを構成するフレーム画像を用いて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判別する画像処理装置であって、
最新の前記フレーム画像より前記被写体の骨格座標を取得し、前記被写体に関する情報を特定して前記被写体の姿勢を推定可能にする姿勢推定手段と、
前記姿勢推定手段において特定した情報に基づいて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判定する全方位転倒判定手段と、
前記全方位転倒判定手段において、前記被写体は転倒状態にないと判別された場合に、N秒前の前記フレーム画像より取得される前記被写体の骨格座標と、前記姿勢推定手段で取得された最新の前記フレーム画像の前記被写体の骨格座標とを用いて、奥行方向への転倒の可能性を判定する奥行方向転倒可能性判定手段と、
前記奥行方向転倒可能性判定手段において、奥行方向への転倒の可能性があると判定された場合に、前記被写体が奥行方向に転倒した状態にあるか否かを判定する処理を行う奥行方向転倒判定処理手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記奥行方向転倒判定処理手段は、
前記被写体の最新の前記フレーム画像内の上下方向の位置を判定する上下方向位置判定手段と、
前記上下方向位置判定手段によって、前記被写体が最新の前記フレーム画像内の下側に位置していると判定された場合に、N秒前の前記フレーム画像における肩から足首までの長さが、最新の前記フレーム画像における肩から足首までの長さよりも短く、かつ、最新の前記フレーム画像における腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとの比率に偏りがない場合に、前記被写体は転倒状態にあると判別する下位置転倒判定手段
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記奥行方向転倒判定処理手段は、
前記被写体の最新の前記フレーム画像内の上下方向の位置を判定する上下方向位置判定手段と、
前記上下方向位置判定手段によって、前記被写体が前記最新の前記フレーム画像内の中央あるいは上側に位置していると判定された場合に、N秒前の前記フレーム画像における肩から足首までの長さが、最新のフレームにおける肩から足首までの長さよりも長く、かつ、最新の前記フレーム画像における腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとの比率に偏りがない場合に、前記被写体は転倒状態の可能性があると判定する中上位置転倒可能性判定手段と、
前記中上位置転倒可能性判定手段において、前記被写体は転倒状態の可能性があると判定された場合に機能する手段であって、奥行方向への傾き予測角度を算出し、算出した前記傾き予測角度が閾値よりも小さい場合に、前記被写体は転倒状態にあると確定する奥行方向転倒確定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記姿勢推定手段は、取得した骨格座標より、各部位の最小X座標、最小Y座標、最大X座標、最大Y座標より前記被写体の全体を囲む矩形を求めることができるものであり、
前記全方位転倒判定手段は、
前記矩形の縦の長さが横の長さより長いこと、求めた前記骨格座標が最新の前記フレーム画像の上から下に向かって肩、腰、膝、足首の順序で並んでいること、求めた前記骨格座標に基づいて求められる肩から腰の長さと腰から足首の長さに偏りがないことの1つ以上を満たさない場合に、前記被写体は転倒状態にあると判別する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
所定の人物を被写体として連続的に撮影することにより得た映像データを構成するフレーム画像を用いて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判別する画像処理を行うコンピュータによって実行される画像処理プログラムであって、
最新の前記フレーム画像より前記被写体の骨格座標を取得し、前記被写体に関する情報を特定して前記被写体の姿勢を推定可能にする姿勢推定ステップと、
前記姿勢推定ステップにおいて特定した情報に基づいて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判定する全方位転倒判定ステップと、
前記全方位転倒判定ステップにおいて、前記被写体は転倒状態にないと判別した場合に、N秒前の前記フレーム画像より取得される前記被写体の骨格座標と、前記姿勢推定手段で取得された最新の前記フレーム画像の前記被写体の骨格座標とを用いて、奥行方向への転倒の可能性を判定する奥行方向転倒可能性判定ステップと、
前記奥行方向転倒可能性判定ステップにおいて、奥行方向への転倒の可能性があると判定した場合に、前記被写体が奥行方向に転倒した状態にあるか否かを判定する処理を行う奥行方向転倒判定処理ステップと
を実行することを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人物である被写体を撮影することにより得た映像データを構成するフレーム画像を解析して、被写体が転倒している場合を検知できる装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
後に記す特許文献1には、車両に乗車している人物を被写体として撮影することにより得た画像を解析することにより、当該被写体の骨格モデルを生成し、生成した骨格モデルから被写体が立位状態か座位状態かを区別して判定する技術が開示されている。これにより立位状態にある人物対して、着席を促すといった転倒防止措置を講じることができる。また、当該特許文献1には、生成した骨格モデルより被写体が転倒した場合を判別し、転倒していると判別した場合には、車両の運転手等に報知したり、外部に通知したりすることが記載されている。これにより、転倒した人物を迅速に保護することなどの対応が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば化学工場などの危険な薬品を扱う作業現場において、床にこぼれた液体で滑ったり、有毒ガスの吸引によって意識を喪失したりして、転倒事故が発生する場合がある。このような場合に、周囲に別の作業者が居れば迅速な対応が可能であるが、機械化等により他の作業者が近くにいない場合も多い。また、監視カメラによって撮影された映像をリアルタイムに監視担当者が監視し、転倒事故の発生を迅速に検知できるようにすることも考えられる。しかし、監視担当者が何かの理由で席を外し、監視が行われていないときに転倒事故が発生した場合には、転倒事故の発生の検知が遅れてしまう。
【0005】
このため、人に頼ることなく、無人でも作業現場を監視できるようにし、転倒事故の発生を遅滞なく検知して適切な対応を取ることができるようにすることが望まれている。そこで、上述した特許文献1に開示された発明のように、作業者を撮影して得た画像を解析して当該作業者の骨格モデルを生成して作業者の姿勢を把握し、作業者が転倒した場合に自動的に検知できるようにすることが考えられる。より具体的には、撮影して得た画像データを解析し、被写体である作業者の各部位(頭、肩、腰、膝、足首など)の骨格座標を特定し、各部位の位置関係から立位状態と転倒状態とを区別することが考えられる。
【0006】
しかしながら、作業者が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合には、作業者の各部位の位置関係が立位状態と同じに映ってしまうため、転倒状態と立位状態の区別ができない場合がある。例えば、作業者を撮影した画像において、当該作業者が立位状態にあるときに検出される各部の座標は、当該画像の上側から下側に向かって、頭、肩、腰、膝、足首の順に並ぶ。これに対して、当該作業者が監視カメラに向かって転倒した場合、換言すれば、作業者の頭が監視カメラに近づくように当該作業者が転倒した場合を考える。この場合には、作業者を撮影した画像において、検出される各部の座標は、当該画像の上側から下側に向かって、足首、膝、腰、肩、頭の順になり、立位状態とは逆になるため、転倒状態であることを適切に検知できる。
【0007】
また、当該作業者が監視カメラに対して、横方向に転倒した場合、換言すれば、作業者の頭が監視カメラに対して右側、あるいは、左側に向かって当該作業者が転倒した場合を考える。この場合には、作業者を撮影した画像において、検出される各部の座標は、当該画像の横方向に頭、肩、腰、膝、足首の順になり、立位状態の並び順とは直交する状態となるため、転倒状態であることを適切に検知できる。これらの状態に対して、作業者が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合、すなわち、作業者の頭が監視カメラから離れる方向に転倒したとする。この場合、作業者を撮影した画像において、検出される各部の座標は、当該画像の上側から下側に向かって頭、肩、腰、膝、足首の順になるため、立位状態のときと同じ並び順になる。このため、作業者が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合には、転倒状態と立位状態の区別ができない。
【0008】
以上の点に鑑み、この発明は、人物である被写体が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合であっても、転倒状態を適切に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の画像処理装置は、
所定の人物を被写体として連続的に撮影することにより得た映像データを構成するフレーム画像を用いて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判別する画像処理装置であって、
最新の前記フレーム画像より前記被写体の骨格座標を取得し、前記被写体に関する情報を特定して前記被写体の姿勢を推定可能にする姿勢推定手段と、
前記姿勢推定手段において特定した情報に基づいて、前記被写体が転倒状態にあるか否かを判定する全方位転倒判定手段と、
前記全方位転倒判定手段において、前記被写体は転倒状態にないと判別された場合に、N秒前の前記フレーム画像より取得される前記被写体の骨格座標と、前記姿勢推定手段で取得された最新の前記フレーム画像の前記被写体の骨格座標とを用いて、奥行方向への転倒の可能性を判定する奥行方向転倒可能性判定手段と、
前記奥行方向転倒可能性判定手段において、奥行方向への転倒の可能性があると判定された場合に、前記被写体が奥行方向に転倒した状態にあるか否かを判定する処理を行う奥行方向転倒判定処理手段と
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明の画像処理装置によれば、姿勢推定手段によって、最新のフレーム画像より被写体の骨格座標が取得され、被写体に関する情報を特定して被写体の姿勢が推定可能にされる。姿勢推定手段において特定された情報に基づいて、全方位転倒判定手段により、被写体が転倒状態にあるか否かが判定される。全方位転倒判定手段により、被写体は転倒状態にないと判別された場合に、奥行方向転倒可能性判定手段により、N秒前のフレーム画像の被写体の骨格座標と最新の骨格座標とが用いられて、奥行方向への転倒の可能性が判定される。奥行方向転倒可能性判定手段により、奥行方向への転倒の可能性があると判別された場合に、奥行方向転倒判定処理手段により被写体が奥行方向に転倒した状態にあるか否かを判定する処理が行われる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、人物である被写体が監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合であっても、当該転倒状態を適切に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態の画像処理システム及び画像処理装置の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図2】撮影された画像内の中央部分や中央部分よりも上方に作業者の画像部分が位置する場合における作業者の立位状態の画像と転倒状態の画像の違いについて説明するための図である。
【
図3】撮影された画像内の中央部分よりも下方に作業者の画像部分が位置する場合における作業者の立位状態の画像と転倒状態の画像の違いについて説明するための図である。
【
図4】被写体が立位状態か転倒状態かを確定するために用いる床面奥行方向(Z軸)と足首から肩までの延長線とのなす角度(予測角度)の算出について説明するための図である。
【
図5】実施の形態の画像処理装置で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】転倒状態の検出のための処理の実行タイミングについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、この発明による装置、プログラムの一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態においては、説明を簡単にするため、例えば、化学工場などの危険な薬品を扱う作業現場においての作業者の状態を、監視カメラを通じて監視する場合を例にして説明する。しかし、この発明は、化学工場などの危険な薬品を扱う作業現場に限るものではなく、人物が転倒状態になった場合に、これを迅速かつ適切に検出する必要がある種々の場合に適用可能なものである。
【0014】
[画像処理システム及び画像処理装置の構成例]
図1は、実施の形態の画像処理システム及び画像処理装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図1に示すように、画像処理装置1に対しては、入力デバイスとしての監視カメラ2が接続されると共に、出力デバイスとしてモニタ装置(ディスプレイ装置)3が接続されている。
【0015】
監視カメラ2は、化学工場などの作業現場の天井等に設置され、上方より当該作業現場で作業する作業者を監視対象の被写体として撮影するものであり、市販されている既存のものである。この実施の形態の監視カメラ2は、1秒間に30フレームのフレーム画像を撮影して、これらが連続した映像データを画像処理装置1に提供する。モニタ装置3は、LCD(Liquid Crystal Display)などの薄型の表示素子を備え、画像処理装置1から出力された映像信号に応じた映像を表示させるものであり、例えば、パーソナルコンピュータ用に市販されている既存のものである。なお、
図1においては省略したが、出力デバイスとしてスピーカを画像処理装置1に接続し、音声情報を出力することも可能である。
【0016】
画像処理装置1は、
図1に示すように、映像データ用の入力端子101T、映像入力部101、映像蓄積部102、姿勢推定部103、転倒判定部104、判定結果出力部105、映像信号用の出力端子105T、制御部110、記憶装置111を備える。制御部110は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどが接続されて構成されたマイクロプロセッサであり、画像処理装置1の各部を制御する機能を実現する。
【0017】
記憶装置111は、例えば、SSD(Solid State Drive)等の記録媒体とそのドライバとからなる装置部であり、種々のデータ等の記録媒体への記録、記録媒体に記録されたデータ等の読み出し、変更、削除等を行う。記憶装置111は、必要となるデータやプログラムを記憶保持する他、種々の処理において生じる中間データを一時記憶する作業領域としても用いられる。
【0018】
映像データ用の入力端子101Tは、監視カメラ2との接続端部を構成する。映像入力部101は、入力端子101Tを通じて接続された監視カメラ2からの映像データを受け付けて、自機において処理が可能な形式のデータに変換して取り込み、映像蓄積部102に記録する処理を行う。映像蓄積部102は、この実施の形態では、SSDとそのドライバとからなる装置部であり、映像入力部101からの映像データを蓄積する。映像蓄積部102に蓄積された映像データについは、例えば、所定時点から1秒前のフレーム画像、2秒前のフレーム画像などというように、当該映像データを構成するフレーム画像から必要に応じた時点のフレーム画像を読み出して利用することができるようにされている。
【0019】
姿勢推定部103は、映像蓄積部102に蓄積された映像データの最新のフレーム画像(フレーム画像データ)を解析し、当該フレーム画像に含まれる作業者(監視対象の被写体)の画像の姿勢に関する種々の情報を取得する。具体的に、姿勢推定部103は、当該フレーム画像に含まれる作業者の画像部分についての骨格座標を取得する。姿勢推定部103は、取得した骨格座標を用いて、当該作業者の画像部分の各部位の最小X座標、最小Y座標、最大X座標、最大Y座標を求め、当該フレーム画像において、作業者の画像部分の全体を囲む矩形領域を特定し、当該矩形領域の縦の長さと横の長さとを特定する。当該矩形領域は、対角線の両端、すなわち、左上が(最小X座標、最小Y座標)、右下が(最大X座標、最大Y座標)で特定される矩形領域となる。
【0020】
また、姿勢推定部103は、取得した作業者の画像部分についての各部位の骨格座標から各部位の並び方向と並び順を特定する。また、姿勢推定部103は、取得した作業者の画像部分についての各部位の骨格座標から作業者の画像部分の肩から腰の長さと、腰から足首の長さを特定する。姿勢推定部103において特定された作業者の画像部分を囲む矩形領域、作業者の画像部分の各部位の並び方向と並び順、作業者の画像部分の肩から腰の長さ、腰から足首までの長さに基づいて、当該フレーム画像における作業者の画像部分についての姿勢が推定できるようになる。なお、骨格座標の取得は、例えば、背景差分法、ミーンシフト法、パタンマッチングなどの種々の手法を用いて行うことが可能であり、これらの手法は公知の技術であるので詳細な説明については省略する。
【0021】
転倒判定部104は、姿勢推定部103において特定された情報に基づいて、また、必要がある場合には過去のフレーム画像をも用いて、最新のフレーム画像における作業者の画像部分が、転倒状態にあるか否かを判定する。この実施の形態の転倒判定部104は、作業者の画像部分についての各部位の位置関係を用いた作業者の全方位についての転倒判定を行う。しかし、作業者が監視カメラ2から遠ざかる方向である奥行方向に転倒した場合には、立位状態と転倒状態とで作業者の画像部分についての骨格座標により特定される作業者の画像部分の各部位の位置関係が同じに見えるために立位状態と転倒状態との区別がつかない。
【0022】
そこで、この実施の形態の画像処理装置1の転倒判定部104は、作業者が監視カメラ2から遠ざかる奥行方向に転倒した場合であっても、転倒したことを適切に判定できるようにしている。このため、
図1に示すように、転倒判定部104は、全方位転倒判定部1041、奥行方向転倒判可能性定部1042、画像上下方向位置判定部1043、下位置転倒判定部1044、中上位置転倒可能性判定部1045、奥行方向転倒確定部1046を備えている。以下、転倒判定部104を構成する各部について説明する。
【0023】
全方位転倒判定部1041は、姿勢推定部103において特定された情報に基づいて、作業者が当該作業現場においていずれかの方向に転倒しているか(転倒状態になっているか)否かを判定する。具体的に、全方位転倒判定部1041は、以下の3つの情報を用いて判定を行う。まず、第1に、全方位転倒判定部1041は、上述したように、姿勢推定部103において特定された当該フレーム画像において、作業者の画像部分の全体を囲む矩形領域の縦の長さが横の長さよりも長いか否かを判定する。作業者の画像部分が立位状態にある場合には、当該矩形領域の縦の長さが横の長さよりも長くなるためである。
【0024】
第2に、全方位転倒判定部1041は、上述したように、姿勢推定部103において特定された当該フレーム画像における作業者の画像部分においての各部位の並び順が、当該フレーム画像の上から下に向かって、肩→腰→膝→足首の順になっているか判定する。立位状態でなければ、作業者の画像部分についての各部位の並び順が当該並び順にはならなくなるためである。
【0025】
第3に、全方位転倒判定部1041は、上述したように、姿勢推定部103において特定された作業者の画像部分においての肩から腰の長さと、腰から足首の長さに偏りがないか否かを判定する。立位状態にあれば、肩から腰の長さと腰から足首の長さとは同程度の長さになるが、しゃがんだり、座り込んだりしている場合には、肩から腰の長さが長く、腰から足首の長さが著しく短くなるためである。また、倒れている場合には、肩から腰の長さと腰から足首の長さとの間に偏りが生じる場合があるためである。
【0026】
全方位転倒判定部1041は、上述した第1から第3の判定の全てを満たせば、当該作業者は立位状態にあり、1つでも満たさない場合には、当該作業者は転倒状態と判別する。すなわち、作業者の画像部分の全体を囲む矩形領域の縦の長さが横の長さよりも短い場合には転倒状態と判定する。また、被写体の各部位の並びが上から下に向かって肩→腰→膝→足首の順になっていない場合には転倒状態と判定する。また、被写体の肩から腰の長さと腰から足首の長さに偏りがある場合には転倒状態と判定する。しかし、全方位転倒判定部1041において作業者が立位状態であると判定された場合であっても、上述もしたように、作業者が監視カメラ2から離れる方向である奥行方向に転倒している場合もある。そこで、以下の各部が機能する。
【0027】
奥行方向転倒可能性判定部1042は、映像蓄積部102を参照し、N秒前(Nは1以上の整数であり、例えば、1秒前あるいは2秒前)のフレーム画像を抽出し、当該フレーム画像に含まれる作業者の画像部分においての骨格座標を取得する。なお、骨格座標の取得は、上述した姿勢推定部103において用いた手法を用いて行う。奥行方向転倒可能性判定部1042は、N秒前のフレーム画像から取得した作業者の画像部分についての骨格座標に基づいて、作業者の画像部分についての肩と足首の位置を特定する。また、奥行方向転倒可能性判定部1042は、姿勢推定部103で取得された最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩と足首の位置とを特定する。奥行方向転倒可能性判定部1042は、N秒前のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩と足首の位置と、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩と足首の位置とを比較する。
【0028】
この比較の結果、奥行方向転倒可能性判定部1042は、どちらかのみに変化が生じている場合には、当該作業者が奥行方向に転倒している可能性があると判定する。例えば、作業者が意識を失って奥行方向に頭から倒れた場合には、両フレーム画像間で足首の位置があまり変化していないのに、肩の位置が大きく変化することになるからである。また、例えば、作業者が奥行方向に滑って転んだ場合には、足首側が奥行方向に大きく移動するのに対して、両フレーム画像間で肩の位置があまり変化していない場合があるためである。しかし、奥行方向に歩行して移動した場合においては、立位状態であっても、監視カメラ2と被写体(作業者)との位置関係から奥行方向転倒可能性判定部1042において、奥行方向に転倒している可能性があると判定される場合がある。
【0029】
このため、画像上下方向位置判定部1043は、例えば、姿勢推定部103において特定された作業者の画像部分の位置に基づいて、作業者の画像部分は、最新のフレーム画像内において上下方向の中央部分あるいは中央部分よりも上方にいるか否かを判定する。フレーム画像内において上下方向の中央部分あるいは中央部分よりも上方に作業者の画像部分が位置している場合と、中央部分よりも下方に位置している場合とでは、作業者の画像部分の見え方が異なるためである。
【0030】
図2は、撮影されたフレーム画像内の中央部分や上方に作業者の画像が位置する場合における作業者の立位状態の画像と転倒状態の画像の違いについて説明するための図である。また、
図3は、撮影される画像の中央部分よりも下方に作業者の画像が位置する場合における作業者の立位状態の画像と転倒状態の画像の違いについて説明するための図である。まず、
図2を用いて、フレーム画像の上下方向の中央部分に、作業者の画像が位置する場合について説明する。
【0031】
監視カメラ2は、作業現場において監視対象(転倒検出対象)の作業者が作業する作業エリアの全体を撮影するように設置され、この実施の形態においては、作業現場において作業者の左上方の天井部分や壁面部分に設置されているものとする。また、監視カメラ2は、フレーム画像の中央部分に立位状態の作業者の画像部分が位置し、かつ、当該作業者の画像部分の上下方向の長さが当該フレーム画像の上下方向の長さの30%以上を占めるように、種々の条件が決められる。当該条件は、例えば、作業者までの距離、光軸方向(監視カメラ2の向き)、監視カメラ2のズーム倍率などである。もちろん、作業者は作業エリアにおいて移動する場合もあるが、作業者が一番よくいる場所を基準に決めればよい。
【0032】
図2(A)においては、立位状態の作業者PSと転倒状態の作業者PLを示しており、説明を簡単にするため作業者PSと作業者PLの足首の位置は同じ位置にあるものとして示している。また、
図2(A)において、点線の楕円形で示したエリアは、監視カメラ2の画角内において、立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分との両方が含まれる最小撮影範囲を示すものであり、監視カメラ2から所定距離だけ離れた位置に設定されている。
【0033】
また、
図2(A)において、監視カメラ2の設置方向に延びた斜めの直線は、監視カメラ2のレンズ面を含み光軸と直交する平面と、作業者の足元(つま先)や作業者の頭部とを最短距離で結ぶものである。従って、監視カメラ2のレンズ面を含む当該平面と、作業者のつま先や頭部とを結ぶ直線は、相互に平行なものであり、それらの直線と床面とのなす角の角度θは、
図2(A)の場合には、45度未満とされる。すなわち、角度θが45度未満の範囲内において、作業者の画像部分は、フレーム画像の上下方向の中央部分、あるいは、中央部分よりも上方(上側)に位置することになる。
【0034】
従って、
図2(A)に示した例の場合、すなわち、作業者の画像部分が、フレーム画像の上下方向の中央部分に位置する場合には、立位状態の作業者PSの画像部分の上下方向の長さHSは、転倒状態の作業者PLの画像部分の上下方向の長さHLに比べて長くなる。
図2(B)は、
図2(A)の状態を撮影した場合の立位状態の作業者PSの画像部分を抽出したものであり、
図2(C)は、
図2(A)の状態を撮影した場合の転倒状態の作業者PLの画像部分を抽出したものである。
図2(B)と
図2(C)とを比較すると分かるように、立位状態の作業者PSの画像部分の上下方向の長さHSは、転倒状態の作業者PLの画像部分の上下方向の長さHLに比べて長くなる。しかし、骨格座標の並び順に変化はないため、立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分とからは、立位状態か転倒状態かの判別が難しい。
【0035】
なお、ここでは
図2を用いて、フレーム画像の上下方向の中央部分に、被写体(作業者)の画像が位置する場合について説明した。
図2を用いて説明した立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分との上下方向の長さの関係は、フレーム画像の中央よりも上方(上側)の部分に作業者の画像部分が位置する場合においても同様に成立する。しかし、
図2を用いて説明した立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分との上下方向の長さの関係は、フレーム画像の中央部分よりも下方(下側)の部分に作業者の画像部分が位置する場合には成立しない。具体的に、
図3を用いて、フレーム画像の上下方向の下側部分に、作業者の画像部分が位置する場合について説明する。
【0036】
監視カメラ2の設置場所及び設置条件は、上述した通りである。すなわち、
図3を用いて説明する場合においても、作業現場において転倒検出対象の作業者が作業する作業エリアの全体を撮影するように設置され、作業現場において作業者の左上方の天井部分や壁面部分に設置されている。また、監視カメラ2は、フレーム画像の中央部分に立位状態の作業者の画像部分が位置し、かつ、当該作業者の画像部分の上下方向の長さが当該フレーム画像の上下方向の長さの30%以上を占めるように、作業者までの距離や光軸方向(監視カメラ2の向き)が決められる。
【0037】
図3(A)においても、
図2(A)の場合と同様に、立位状態の作業者PSと転倒状態の作業者PLを示しており、説明を簡単にするため作業者PSと作業者PLの足首の位置は同じ位置にあるものとして示している。また、
図3(A)においても、点線の楕円形で示したエリアは、監視カメラ2の画角内において、立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分との両方が含まれる最小撮影範囲を示すものであり、監視カメラ2から所定距離だけ離れた位置に設定されている。
【0038】
また、
図3(A)においても、
図2(A)の場合と同様に、監視カメラ2の設置方向に延びた斜めの直線は、監視カメラ2のレンズ面を含み光軸と直交する平面と、作業者の足元(つま先)や作業者の頭部とを最短距離で結ぶものである。従って、監視カメラ2のレンズ面を含む当該平面と、作業者のつま先や頭部とを結ぶ直線は、相互に平行なものであり、それらの直線と床面とのなす角の角度θは、
図3(A)の場合には、45度以上とされる。すなわち、角度θが45度以上の範囲内において、作業者の画像部分は、フレーム画像の上下方向の中央部分よりも下方(下側)に位置することになる。
【0039】
従って、
図3(A)に示した例の場合、すなわち、作業者の画像部分が、フレーム画像の上下方向の中央部分より下方(下側)に位置する場合には、転倒状態の作業者PLの画像部分の上下方向の長さHLは、立位状態の作業者PSの画像部分の上下方向の長さHSに比べて長くなる。
図3(B)は、
図3(A)の状態を撮影した場合の立位状態の作業者PSの画像部分を抽出したものであり、
図3(C)は、
図3(A)の状態を撮影した場合の転倒状態の作業者PLの画像部分を抽出したものである。
図3(B)と
図3(C)とを比較すると分かるように、立位状態の作業者PSの画像部分の上下方向の長さHSは、転倒状態の作業者PLの画像部分の上下方向の長さHLに比べて短くなる。しかし、骨格座標の並び順に変化はないため、立位状態の作業者PSの画像部分と転倒状態の作業者PLの画像部分とからは、立位状態か転倒状態かの判別が難しい。
【0040】
また、
図2と
図3とを比較すると分かるように、フレーム画像において作業者の画像部分が当該フレーム画像の上下方向において、中央部分あるいは中央部分よりも上方に位置する場合と、中央部分よりも下方に位置する場合とでは、当該画像の見え方が逆になる。このため、フレーム画像内において、作業者の画像部分が当該フレーム画像の上下方向のどの部分に位置しているのかを特定できないと、監視カメラから離れる方向である奥行方向に転倒した場合に、転倒状態にあることを適切に検出できないのである。
【0041】
そこで、画像上下方向位置判定部1043は、姿勢推定部103において特定した作業者の画像部分の骨格座標や作業者の画像部分の輪郭(エッジ)の位置などから、最新のフレーム画像内における被写体の画像の位置を判定する。具体的に、画像上下方向位置判定部1043は、作業者の画像部分がフレーム画像の上下方向の中央部分あるいは中央部分よりも上方に位置するのか、中央部分よりも下方に位置するのかを判定する。
【0042】
下位置転倒判定部1044は、画像上下方向位置判定部1043により、作業者の画像部分が最新のフレーム画像内の上下方向の下方(中央部分より下側)に位置していると判定された場合に機能する。下位置転倒判定部1044は、N秒前のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さと、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さとを比較する。
【0043】
これは、
図3を用いて説明したように、撮影された画像の上下方向の中央部分よりも下方に作業者の画像が位置する場合には、作業者の立位状態の画像の縦(上下方向)の長さは、転倒状態の画像の縦の長さより短くなるためである。従って、N秒前のフレーム画像における作業者についての画像の肩から足首までの長さより、最新のフレーム画像における作業者の画像部分についての肩から足首までの長さの方が長い場合には、転倒状態にある可能性があると判定できる。
【0044】
更に、下位置転倒判定部1044は、最新のフレーム画像における作業者の画像部分についての腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとを特定し、両者に偏りがないか(両者の比率が偏っていないか)を調べる。単にしゃがんでいる場合には、腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じるためである。
図3(B)、(C)に示したように、立位状態と転倒状態とでは、作業者の画像部分における腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じることはない。
【0045】
なお、N秒前のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さは、上述した奥行方向転倒可能性判定部1042で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。また、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さは、上述した姿勢推定部103で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。同様に、最新のフレーム画像における作業者の画像部分についての腰から膝までの長さと膝から足首までの長さは、上述した姿勢推定部103で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。
【0046】
下位置転倒判定部1044において、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の肩から足首までの長さの方が長く、かつ、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じていないと判定できたとする。この場合、下位置転倒判定部1044は、被写体である作業者は転倒状態にあると判定する。上述した条件の一方でも成り立たない場合には、下位置転倒判定部1044は、作業者は立位状態であると判定する。
【0047】
なお、作業者が監視カメラ2に近づく方向に徒歩で移動したとしても、立位状態と転倒状態とでは、常に
図3に示した関係が崩れることはない。すなわち、作業者の画像部分がフレーム画像内の上下方向の下方(中央部分より下側)に位置している場合には、立位状態なのに最新のフレーム画像での作業者の画像部分の肩から足首までの長さの方が長くなることはない。このため、下位置転倒判定部1044は、上述した条件を満足する場合には、被写体である作業者は転倒状態にあると確定できる。
【0048】
これに対して、中上位置転倒可能性判定部1045は、単独で、作業者は転倒状態にあると確定することができないため、転倒状態にある可能性があると判定するにとどまるものである。中上位置転倒可能性判定部1045は、画像上下方向位置判定部1043により、作業者の画像部分が最新のフレーム画像内の上下方向の中央部分あるいは中央部分よりも上方(上側)に位置していると判定された場合に機能する。
【0049】
中上位置転倒可能性判定部1045は、N秒前のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さと、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さとを比較する。これは、
図2を用いて説明したように、撮影された画像の上下方向の中央部分あるいは中央部分よりも上方に作業者の画像が位置する場合には、作業者の立位状態の画像の縦(上下方向)の長さは、転倒状態の画像の縦の長さより長くなるためである。従って、N秒前のフレーム画像における作業者についての画像の肩から足首までの長さより、最新のフレーム画像における作業者の画像部分についての肩から足首までの長さが短い場合には、作業者は転倒状態にある可能性があると判定できる。
【0050】
更に、中上位置転倒可能性判定部1045は、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとを特定し、両者に偏りがないか(両者の比率が偏っていないか)を調べる。単にしゃがんでいる場合には、腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じるためである。
図2(B)、(C)に示したように、立位状態と転倒状態とでは、作業者の画像部分における腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じることはない。
【0051】
この場合においても、N秒前のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さは、上述した奥行方向転倒可能性判定部1042で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。また、最新のフレーム画像における当該作業者の画像部分についての肩から足首までの長さは、上述した姿勢推定部103で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。同様に、最新のフレーム画像における作業者の画像部分についての腰から膝までの長さと膝から足首までの長さは、上述した姿勢推定部103で特定した作業者の画像部分の骨格座標を用いて求めることができる。
【0052】
中上位置転倒可能性判定部1045において、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の肩から足首までの長さの方が短く、かつ、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じていないと判定できたとする。この場合、下位置転倒判定部1044は、被写体である作業者は転倒状態である可能性があると判定する。上述した条件の一方でも成り立たない場合には、下位置転倒判定部1044は、作業者は立位状態であると判定する。
【0053】
上述したように、中上位置転倒可能性判定部1045においては、下位置転倒判定部1044での処理のように、被写体である作業者は転倒状態であるとは特定できない。中上位置転倒可能性判定部1045においては、被写体である作業者は転倒状態である可能性があると判定しているにすぎない。これは、作業者が監視カメラ2から離れる方向である奥行方向に徒歩で移動した場合、立位状態であるにも関わらず、転倒状態の場合と同様の状態になる場合があるためである。すなわち、作業者が奥行方向に徒歩で移動すると、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の肩から足首までの長さの方が短く、かつ、最新のフレーム画像での作業者の画像部分の腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとに偏りが生じていない状態となる場合がある。
【0054】
そこで、中上位置転倒可能性判定部1045において、作業者が転倒状態である可能性があると判定された場合に、奥行方向転倒確定部1046が機能する。奥行方向転倒確定部1046は、N秒前のフレーム画像の作業者の画像部分の足首の位置を中心とし、足首から肩までの長さを半径とする円周上に最新のフレーム画像の作業者の画像部分の肩の位置を当てはめて、床面と当該肩の位置に応じた半径とのなす角の角度を求める。当該角度が転倒状態にある作業者の身体に応じた直線(半径)と床面との予測角度となり、最新の作業者の画像部分の肩の位置に応じて算出される予測角度となる。この予測角度が、予め決められる閾値(例えば30度)と比較し、閾値より小さければ、作業者は転倒状態にあると確定する。
【0055】
予測角度の算出について具体的に説明する。
図4は、作業者が立位状態か転倒状態かを確定するために用いる床面と足首から肩までの延長線とのなす角度(予測角度)の算出について説明するための図である。
図4(A)は、作業者の画像部分がフレーム画像の上下方向の中央位置あるいは中央位置よりも上方に位置している場合における作業者の立位状態の画像と転倒状態の画像の監視カメラ2に対向する正面の映り方を示している。すなわち、
図4(A)の立位状態の画像と転倒状態の画像は、
図2(B)、(C)に示したものと同様のものである。
【0056】
図4(A)に示すように、転倒状態の作業者の画像部分の足首ALから肩SLまでの長さは、立位状態の作業者の画像部分の足首ASから肩SSまでの長さよりも短くなる。しかし、転倒状態の作業者の画像部分の足首ALの位置と立位状態の作業者の画像部分の足首ASとの位置を一致させたとすると、本来、転倒状態の作業者の画像部分の肩SLの位置と、立位状態の作業者の画像部分の肩SSの位置とは、同じ円周上に位置するものである。このため、作業者の画像部分の足首と肩とを結ぶ直線と床面とがなす角の角度(予測角度)が分かれば、立位状態か転倒状態かの特定が予測角度に応じて客観的に特定できる。
【0057】
従って、上述した中上位置転倒可能性判定部1045において、作業者が転倒している可能性があると判定された場合、N秒前のフレーム画像と最新のフレーム画像とでは、作業者の画像部分については、以下の(1)~(3)に示す状態になっているものと特定できる。すなわち、(1)足首の位置は大きく変化していない。(2)足首から肩までの長さは短くなっている。(3)肩の位置が下がっている。という状態であると特定できる。この(1)~(3)の状態であることを前提にして、予測角度の算出を行う。
【0058】
図4(B)は、監視カメラ2が作業者を撮影している状態を横から(監視カメラ2の光軸に対して直交する方向から)見た場合の図である。従って、Y軸方向が高さ方向であり、Z軸方向が奥行方向である。この場合、Z軸が床面に対応している。また、
図4(B)の円の中心(原点)が、作業者の画像部分の足首AS、ALの位置に対応している。また、
図4(B)において、Y軸と円周との交点が立位状態にある作業者の画像部分の肩SSの位置に対応している。更に、
図4(B)において、Z軸近傍の円周上に示した位置が転倒状態にある作業者の画像部分の肩SLの位置に対応している。
【0059】
従って、作業者の画像部分が立位状態である場合には、足首ASと肩SSとを結ぶ直線はY軸と位置し、Y軸とZ軸とのなす角の角度は言うまでもなく90度(直角)である。これに対して、作業者の画像部分が転倒状態である場合には、肩SLの位置は大きくZ軸(床面)に近づくため、足首ALと肩SLとを結ぶ直線とZ軸とのなす角の角度(予測角度)αは、この例の場合には、30度以下になる。このように予測角度の閾値を30度以下に設定するのは、作業者が転倒した場合、若干奥行方向に移動するなどの誤差を含む場合もあるためである。このため、作業者の画像部分の足首と肩とを結ぶ直線とZ軸とのなす角が取り得る角度の範囲は、0度~90度ということになる。
【0060】
以上を前提にして、予測角度の算出方法の一例を示す。事前準備として、以下の処理を行っておく。(1)作業者の画像部分がフレーム画像の上下方向の中央位置に位置している状況下において、立位状態にある作業者の画像部分の足首ASから肩SSまでの長さLSと、転倒状態にある作業者の画像部分の足首ALから肩SLまでの長さLLとを求める。(2)転倒状態にあるときの長さLLを立位状態にあるときの長さLSで割り算し、立位状態にあるときの長さLSに対する転倒状態にあるときの長さLLの割合RTを求める。
【0061】
(3)1から割合RTを減算し、100を乗算すれば、作業者の画像部分が立位状態から転倒状態になる場合の足首から肩までの長さの変化範囲の割合RGを求めることができる。この変化範囲の割合RGは、0度から90度の範囲に対応するものであり、作業者の画像部分が立位状態から転倒状態に至る変化範囲を示す情報となる。従って、90度を変化の範囲RGで割り算すれば、変化の範囲RGにおける単位変化角度UAが分かる。このため、変化範囲を示す情報となる変化範囲の割合RGと単位変化角度UAとを、奥行方向転倒確定部1046が、例えば、自己が備えるメモリや制御部110の不揮発性メモリに記録して保持し、いつでも利用可能にしておく。
【0062】
この後、実際に転倒状態の確定を行う場合、奥行方向転倒確定部1046は、以下の処理を行う。まず、奥行方向転倒確定部1046は、N秒前のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AS1から肩SS1までの長さLS1と、最新のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AL1から肩SL1までの長さLL1とを求める。次に、最新のフレーム画像の作業者の画像部分における当該長さLL1を最新のフレーム画像の作業者の画像部分における当該長さLS1で割り算し、割合RT1を求める。次に、1から割合RT1を減算し、100を乗算すれば、最新のフレームの作業者の画像部分がN秒前のフレーム画像の作業者の画像部分からどれだけ変化したかを示す変化範囲の割合RG1が分かる。
【0063】
そこで、既に求め保持している変化範囲の割合RGから新たに求めた変化範囲の割合RG1を減算すると、当該変化範囲において、作業者の画像部分がどれだけ変化し(どれだけ倒れ)、あとどれだけ変化可能か、すなわちZ軸方向に倒れることが可能かを示す変化可能量CHが分かる。この変化可能量CHと単位変化角度UAとを乗算すれば、変化可能な角度、すなわち予測角度αを算出できる。この予測角度αが30度以下であれば、作業者は転倒状態にあると特定できる。
【0064】
上述した予測角度αの算出方法の一例の具体的な算出例を説明する。ここでは、(1)作業者の画像部分がフレーム画像の上下方向の中央位置に位置している状況下において、立位状態にある作業者の画像部分の足首ASから肩SSまでの長さLSが「値10」で、転倒状態にある作業者の画像部分の足首ALから肩SLまでの長さLLが「値7」であったとする。これらの値は、上述したように、フレーム画像における作業者の画像部分の骨格座標に応じて特定できる。この場合の座標は、フレーム画像に対して、縦と横に複数画素単位を1目盛りとする座標系を設定するようにしてもよいし、縦と横の画素位置を座標としてもよい。もちろん他の座標を設定しておくようにしてもよい。(2)転倒状態にあるときの長さLL「値7」を立位状態にあるときの長さLS「値10」で割り算し、立位状態にあるときの長さLSに対する転倒状態にあるときの長さLLの割合RTを求める。この例の場合、割合RT=7/10=「値0.7」となる。
【0065】
(3)1から割合RT「値0.7」を減算し、100を乗算すれば、作業者の画像部分が立位状態から転倒状態になる場合の足首から肩までの長さの変化範囲の割合RG「30%」を求めることができる。この変化範囲の割合RG「値30%」は、0度から90度の範囲に対応するものであり、作業者の画像部分が立位状態から転倒状態に至る変化範囲を示す情報となる。従って、90度を変化の範囲RG「値30%」で割り算すれば、変化の範囲RGにおける単位変化角度UA「値3度」が分かる。このため、変化範囲を示す情報となる変化範囲の割合RG「値30%」と単位変化角度UA「値3度」とを、奥行方向転倒確定部1046が、所定のメモリに記録して保持し、いつでも利用可能にしておく。
【0066】
この後、実際に転倒状態の確定を行う場合、奥行方向転倒確定部1046は、以下の処理を行う。まず、奥行方向転倒確定部1046は、N秒前のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AS1から肩SS1までの長さLS1と、最新のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AL1から肩SL1までの長さLL1とを求める。この例では、N秒前のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AS1から肩SS1までの長さLS1が「値8」で、最新のフレーム画像の作業者の画像部分の足首AL1から肩SL1までの長さLL1が「値6」であったとする。
【0067】
次に、最新のフレーム画像の作業者の画像部分における当該長さLL1「値6」を最新のフレーム画像の作業者の画像部分における当該長さLS1「値8」で割り算し、割合RT1を求める。この場合、割合RT1=6/8=0.75となる。次に、1から割合RT1「値0.75」を減算し、100を乗算すれば、最新のフレームの作業者の画像部分がN秒前のフレーム画像の作業者の画像部分からどれだけ変化したか(どれだけ倒れたか)を示す変化範囲の割合RG1が分かる。この例の場合、変化範囲の割合RG1=(1-0.75)×100=25%が算出できる。
【0068】
そこで、既に求め保持している変化範囲の割合RG「値30%」から新たに求めた変化範囲の割合RG1「25%」を減算すると、当該変化範囲において、作業者の画像部分がどれだけ変化し(どれだけ倒れ)、ありどれだけ変化可能か、すなわちZ軸方向に倒れることが可能かを示す変化可能量CHが分かる。この例の場合、変化可能量CH=30%-25%=5%となる。このため、記憶保持している単位変化角度UA「値3度」と変化可能量CH「値5%」とを乗算すると、ありどれだけZ軸方向に倒れることが可能かを示す角度、すなわち予測角度α=15度と求めることができる。この場合、予測角度は30度以下であるので転倒状態であると特定できる。
【0069】
このようにして、奥行方向転倒確定部1046は、最新のフレーム画像における作業者の画像部分の足首と肩とを結ぶ直線と床面とのなす角の角度である予測角度αを算出する。奥行方向転倒確定部1046は、算出した予測角度αが、30度未満であれば、転倒状態であると特定し、予測角度αが30度以上であれば立位状態であると特定する。このようにして、転倒判定部104において、転倒状態にあると判定された場合に、制御部110の制御の下、判定結果出力部105が機能し、作業者が転倒状態にあることを通知する表示を、モニタ装置3を通じて行うようにする。なお、ここでは、表示出力だけを行うようにしたが、モニタ装置3がスピーカを備えている場合や、別途、スピーカが接続されている場合には、音声により作業者が転倒状態になったことを通知するようにしてもよい。
【0070】
また、予測角度αと比較する閾値は、常に30度ではなく、監視カメラ2の設置条件(光軸の角度や作業者までの距離)を踏まえた上で、立位状態の作業者の画像部分の肩の位置、転倒状態の作業者の画像部分の肩の位置などを考慮して、作業現場に応じて設定すればよい。また、ここでは、N秒前のフレーム画像と最新のフレーム画像とを用いて転倒状態か否かを特定するようにしたが、1秒前と最新のフレーム画像とを用いて転倒状態か否かを特定した後、2秒前と最新のフレーム画像とを用いて転倒状態か否かを特定するというように、複数回の特定処理を行うようにしてももちろん良い。
【0071】
[画像処理装置1で行われる処理のまとめ]
図5、
図6は、実施の形態の画像処理装置で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
図5、
図6のフローチャートに示す処理は、制御部110の制御の下、主に、姿勢推定部103と転倒判定部104が機能して行われる処理である。制御部110は、例えば、フレーム画像ごと、あるいは、複数フレーム画像ごとなどのように、所定のタイミングごとに、
図5、
図6に示すフローチャートの処理を実行する。
【0072】
図5、
図6のフローチャートに示す処理が、制御部110により実行されると、制御部110の制御の下、姿勢推定部103が機能する。姿勢推定部103は、映像蓄積部102に蓄積された監視カメラ2からの映像データの最新のフレーム画像を読み出し、人物(作業者)の画像部分においての各部位の骨格座標を取得する(ステップS101)。次に、制御部110の制御の下、姿勢推定部103が機能し、読み出した最新のフレーム画像において、作業者の画像部分の全体を囲む矩形領域を特定し、当該矩形領域の縦の長さが横の長さよりも長いか否かを調べる(ステップS102)。ステップS102で調べた結果は、転倒判定部104の全方位転倒判定部1041に通知される。
【0073】
更に、姿勢推定部103は、ステップS101の処理で特定した作業者の画像部分の各部位の骨格座標に基づき、人物(作業者)の画像部分においての各部位の位置関係を特定し、上から下に肩、腰、膝、足首の順に並んでいるかを調べる(ステップS103)。ステップS103で調べた結果は、転倒判定部104の全方位転倒判定部1041に通知される。また、姿勢推定部103は、ステップS101の処理で特定した作業者の画像部分の各部位の骨格座標に基づき、肩から腰までの長さと、腰から足首までの長さを特定し、偏りがないかを調べる(ステップS104)。ステップS104で調べた結果は、転倒判定部104の全方位転倒判定部1041に通知される。
【0074】
この後、全方位転倒判定部1041は、ステップS102~ステップS104の結果が全て満足するか否かを判定し(ステップS105)、判定結果を制御部110に通知する。全方位転倒判定部1041は、以下の(1)~(3)の全てを満足しているか否かを判別する。(1)作業者の画像部分の全体を囲む矩形領の縦の長さが横の長さよりも長いこと。(2)作業者の画像部分の各部位が、上から下に肩、腰、膝、足首の順に並んでいること。(3)作業者の画像部分の肩から腰までの長さと、腰から足首までの長さに偏りがないこと。
【0075】
全方位転倒判定部1041は、上記の(1)~(3)の1つでも満足しないと判別した場合には、当該作業現場にいる判定対象の作業者は、転倒状態にあると判定する(ステップS106)。判定結果の通知を受けた制御部110は、判定結果出力部105を通じて、モニタ装置3に判定結果を出力し、モニタ装置3の表示出力により作業者の転倒を、当該作業現場の監督者、管理者に対して通知する(ステップS107)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
【0076】
ステップS105の判別処理において、上記の(1)~(3)のすべてを満足したと判別したとする。この場合には、まだ、作業者が監視カメラ2から離れる方向である奥行方向に倒れている可能性がある。このため、制御部110の制御の下、奥行方向転倒可能性判定部1042が機能する。奥行方向転倒可能性判定部1042は、映像蓄積部102よりN秒前のフレーム画像を読み出し、ステップS101での姿勢推定部103の処理と同様の手法で、人物(作業者)の画像部分の骨格座標を取得する(ステップS108)。
【0077】
この後、奥行方向転倒可能性判定部1042は、N秒前の作業者の画像部分の肩と足首の位置と、ステップS101で取得した最新のフレーム画像における作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の画像部分の肩と足首の位置とを比較する(ステップS109)。奥行方向転倒可能性判定部1042は、ステップS109の比較結果から、N秒前と最新のフレーム画像との間で、作業者の画像部分の肩と足首の位置について、肩と足首の一方だけ変化しているか否かを判定し(ステップS110)、判定結果は制御部110に通知する。ステップS110の判別処理において、どちらか一方だけ変化していないと判別したときには、制御部110の制御の下、奥行方向転倒可能性判定部1042は、作業者は立位状態であると判定する(ステップS111)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
【0078】
ステップS110の判別処理において、どちらか一方だけ変化したと判別したときには、作業者が奥行方向に転倒している可能性があることを排除できないため、
図6のステップS112の処理に進む。この場合、制御部110の制御の下、画像上下方向位置判定部1043が機能し、ステップS101で読み出した最新のフレーム画像内において、人物(作業者の画像部分)の位置を特定する(ステップS112)。画像上下方向位置判定部1043は、ステップS112の特定結果に基づいて、人物(作業者の画像部分)の位置は、当該フレーム画像内の上下方向の中央部分または中央部分よりも上方に位置しているか否かを判別する(ステップS113)。判別結果は、制御部110に通知される。
【0079】
ステップS113の判別処理において、作業者の画像部分の位置は、当該フレーム画像内の上下方向の中央部分または中央部分よりも上方に位置していない、すなわち、当該フレーム画像内の上下方向の中央部分よりも下方に位置していると判別したとする。この場合には、制御部110の制御に元、下位置転倒判定部1044が機能する。下位置転倒判定部1044は、N秒前のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の肩から足首までの長さと、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の画像部分の肩から足首までの長さとを比較する(ステップS114)。
【0080】
更に、下位置転倒判定部1044は、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の画像部分の腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとを特定する(ステップS115)。なお、ステップS114において、N秒前のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標は、ステップS108で取得したものを用いることができるし、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標は、ステップS101で取得したものを用いることができる。同様に、ステップS115において、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標は、ステップS101で取得したものを用いることができる。
【0081】
この後、下位置転倒判定部1044は、ステップS114での比較結果とステップS115での特定結果を踏まえた判別処理を行い(ステップS116)、判定結果を制御部110に通知する。ステップS116では、以下の2つのことを満足するか否かを判別する。すなわち、N秒前のフレーム画像内の作業者の画像部分の肩から足首までの長さよりも、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の肩から足首までの長さの方が長いこと。最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の下半身部分の比率が適正であること。の両方を満足するか否かを判定する。ステップS116の判別処理において、両方を満足しないと判別した場合には、下位置転倒判定部1044は、作業者は立位状態である(転倒状態ではない)と判定する(ステップS117)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了して、次の実行タイミングを待つことになる。
【0082】
一方、ステップS116の判別処理において、両方を満足すると判別した場合には、下位置転倒判定部1044は、作業者は転倒状態であると判定する(ステップS118)。制御部110は、判定結果出力部105を通じて、モニタ装置3に判定結果を出力し、モニタ装置3の表示出力により作業者の転倒を、当該作業現場の監督者、管理者に対して通知する(ステップS119)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
【0083】
ステップS113の判別処理において、作業者の画像部分の位置は、当該フレーム画像内の上下方向の中央部分または中央部分よりも上方に位置していると判別したとする。この場合には、制御部110の制御に下、中上位置転倒可能性判定部1045が機能する。中上位置転倒可能性判定部1045は、N秒前のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の肩から足首までの長さと、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の画像部分の肩から足首までの長さとを比較する(ステップS120)。このステップS120の処理は、上述したステップS114と同様の処理である。
【0084】
更に、中上位置転倒可能性判定部1045は、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の骨格座標に応じた作業者の画像部分の腰から膝までの長さと膝から足首までの長さとを特定する(ステップS121)。このステップS121の処理は、上述したステップS115と同様の処理である。この後、中上位置転倒可能性判定部1045は、ステップS120での比較結果とステップS121での特定結果を踏まえて判定処理を行い(ステップS122)、判定結果を制御部110に通知する。ステップS116では、以下の2つのことを満足するか否かを判別する。すなわち、N秒前のフレーム画像内の作業者の画像部分の肩から足首までの長さが、最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の肩から足首までの長さよりも長いこと。最新のフレーム画像内の作業者の画像部分の下半身部分の比率が適正であること。の両方を満足するか否かを判定する。
【0085】
ステップS122の判別処理において、両方を満足すると判別した場合には、制御部110の制御の下、奥行方向転倒確定部1046が機能する。奥行方向転倒確定部1046は、
図4を用いて説明したように、作業者の画像部分と床面とのなす角の角度(作業者の画像の奥行方向への傾き予測角度α)を算出する処理を行う(ステップS123)。この後、奥行方向転倒確定部1046は、算出した予測角度αが閾値よりも小さいか否かを判別し(ステップS124)、判別結果を制御部110に通知する。
【0086】
ステップS124の判別処理において、予測角度αが閾値よりも小さい(予測角度αが閾値未満の値である)と判別した場合には、奥行方向転倒確定部1046は、作業者は転倒状態にあると判定(確定)し(ステップS126)、判定結果を制御部110に通知する。当該通知を受けた制御部110は、判定結果出力部105を通じて、モニタ装置3に判定結果を出力し、モニタ装置3の表示出力により作業者の転倒を、当該作業現場の監督者、管理者に対して通知する(ステップS127)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
【0087】
また、ステップS122の判別処理において、両方を満足しないと判別した場合と、ステップS124において、算出した予測角度は閾値以上であると判別した場合には、奥行方向転倒確定部1046は、作業者は立位状態であると判定する(ステップS125)。この後、制御部110は、この
図5、
図6に示す処理を終了し、次の実行タイミングを待つことになる。
【0088】
[実施の形態の効果]
この実施の形態の画像処理装置1は、監視カメラ2からの映像データを用いて、作業現場にいる作業者が転倒状態になった場合を、迅速かつ適切に判定し、これを当該作業現場の監督者や管理者に通知できる。特に、作業者が監視カメラ2から離れる方向である奥行方向に転倒した場合であっても、これを迅速かつ適切に判定できる。すなわち、転倒状態を検出できなかったり、検出が遅れたりすることが無いようにできる。これにより、作業者が転倒した場合に、発見が遅れ、適切な対応を迅速に取ることができないといった不都合を生じさせないようにすることができる。
【0089】
また、高精度な監視カメラは必要なく、1つのカメラレンズで機能するいわゆる単眼カメラを監視カメラ2として用いることができるので、簡単に導入することができ、導入コストの低減も図ることができる。
【0090】
[変形例]
図7は、転倒状態の検出のための処理の実行タイミングについて説明するための図である。上述したように、画像処理装置1での作業者の転倒判定処理(
図5、
図6)は、フレーム画像ごとや複数フレーム画像ごとに行われる。例えば、
図7(A)に示すように、3フレーム画像ごとに作業者の転倒判定処理を行う場合には、5回連続して転倒状態にあると判定されなければ、転倒状態にあると判定しないようにすることもできる。これにより、躓き程度のすぐに立位状態に復帰できた軽微な転倒については、転倒状態にあると判定しないようにできる。
【0091】
しかし、
図7(B)に示すように、上述した実施の形態の画像処理装置1の場合、奥行方向への作業者の転倒判定においては、N秒前の過去のフレーム画像も使用する。このため、奥行方向への作業者の転倒判定においては、例えば、1秒前のフレーム画像を使用して転倒状態にあると判定できたとする。この場合に、さらに2秒前、3秒前のフレーム画像を使用して転倒判定を行い、そのそれぞれにおいて転倒状態にあると判定できた場合に、転倒状態にあると判定することもできる。
【0092】
上述した実施の形態の予測角度の計算方法は一例であり、他の種々の計算方法を用いることができる。
【0093】
また、上述した実施の形態では、奥行方向の転倒状態を検出するための予測角度αの算出は、N秒前のフレーム画像と最新のフレーム画像を用いて行うものとして説明した。しかしこれに限るものではない。例えば、最初に1秒前のフレーム画像と最新のフレーム画像を用いて予測角度を算出し、判定結果が立位状態の場合には、2秒前のフレーム画像と最新のフレーム画像とを用いて予測角度を算出し、再度、立位状態か転倒状態かの判定を行うようにしてもよい。この場合、過去に遡る時間は、3秒前までのように予め決めておくようにすればよい。
【0094】
また、上述した実施の形態の画像処理装置は、化学工場において作業員を監視する場合について適用したが、これに限るものではない。作業者が転倒状態になった場合に、これを迅速かつ適正に検出する必要がある種々の場合に適用できる。
【0095】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の姿勢推定手段の機能は、実施の形態の画像処理装置1の姿勢推定部103が実現し、請求項の全方位転倒判定手段の機能は、画像処理装置1の全方位転倒判定部1041が実現している。また、請求項の奥行方向転倒可能性判別手段の機能は、画像処理装置1の奥行方向転倒可能性判定部1042が実現している。また、請求項の奥行方向転倒判定処理手段の機能は、画像処理装置1の画像上下方向位置判定部1043、下位置転倒判定部1044、中上位置転倒可能性判定部1045、奥行方向転倒確定部1046が実現している。
【0096】
また、請求項の上下方向位置判定手段の機能は、画像処理装置1の画像上下方向位置判定部1043が実現し、請求項の下位置転倒判定手段の機能は、画像処理装置1の下位置転倒判定部1044が実現している。また、請求項の中上位置転倒可能性判定手段の機能は、画像処理装置1の中上位置転倒可能性判定部1045が実現し、請求項の奥行方向転倒確定手段の機能は、画像処理装置1の奥行方向転倒確定部1046が実現している。
【0097】
また、上述した実施の形態の
図5、
図6のフローチャートに示した処理を実行するプログラムが、この発明による画像処理プログラムの一実施の形態が適用されたものである。従って、
図5,
図6に示した処理を実行する画像処理プログラムを、パーソナルコンピュータに搭載して実行可能にしておくことにより、この発明の画像処理装置1を実現できる。換言すれば、
図1に示した姿勢推定部103、転倒判定部104を構成する5つの判定部と1つの確定部の機能は、制御部110において実行されるソフトウェアによって実現することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…画像処理装置、101T…入力端子、101…映像入力部、102…映像蓄積部、103…姿勢推定部、104…転倒判定部、1041…全方位転倒判定部、1042…奥行方向転倒可能性判定部、1043…画像上下方向位置判定部、1044…下位置転倒判定部、1045…中上位置転倒可能性判定部、1046…奥行方向転倒確定部、105…判定結果出力部、105T…出力端子、2…監視カメラ、3…モニタ装置