IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEスチール株式会社の特許一覧

特開2024-89852表面粗度測定装置および表面粗度測定方法
<>
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図1
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図2
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図3
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図4
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図5
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図6
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図7
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図8
  • 特開-表面粗度測定装置および表面粗度測定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089852
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】表面粗度測定装置および表面粗度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/30 20060101AFI20240627BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20240627BHJP
   B21B 28/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01B21/30 102
B21C51/00 N
B21B28/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205338
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南里 侑輝
(72)【発明者】
【氏名】宮山 善行
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔平
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA57
2F069BB07
2F069CC05
2F069DD15
2F069DD16
2F069GG04
2F069GG62
2F069HH09
2F069JJ04
2F069JJ06
2F069JJ10
2F069MM04
2F069MM32
(57)【要約】
【課題】圧延後に圧延ロールの表面の粗さを直接測定することができ、高精度の面粗さを短時間で測定できる表面粗度測定技術を提供する。
【解決手段】圧延ロールの表面粗さを測定する表面粗度測定装置であって、前記圧延ロールの表面に検出部が対向し前記圧延ロールのロール表面までの距離を測定する変位センサと、前記変位センサのコントローラと、前記変位センサおよび前記コントローラをそれぞれ収納する筐体と、前記筐体を支える支持ビームと、前記筐体が固定され、前記支持ビーム上を前記圧延ロールの軸方向に平行に往復移動可能な往復台と、前記圧延ロールを固定するチョックに前記支持ビームを固定する固定治具と、往復台の位置を回転軸として、前記圧延ロールの軸方向に平行な線を含む鉛直面上で前記筐体を回転させる回転機構と、を備える装置である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロールの表面粗さを測定する表面粗度測定装置であって、
前記圧延ロールの表面に検出部が対向し前記圧延ロールのロール表面までの距離を測定する変位センサと、
前記変位センサのコントローラと、
前記変位センサおよび前記コントローラをそれぞれ収納する筐体と、
前記筐体を支える支持ビームと、
前記筐体が固定され、前記支持ビーム上を前記圧延ロールの軸方向に平行に往復移動可能な往復台と、
前記圧延ロールを固定するチョックに前記支持ビームを固定する固定治具と、
往復台の位置を回転軸として、前記圧延ロールの軸方向に平行な線を含む鉛直面上で前記筐体を回転させる回転機構と、
を備える、表面粗度測定装置。
【請求項2】
さらに、前記筐体を前記圧延ロール表面に向けて進退させる進退機構を備える、
請求項1に記載の表面粗度測定装置。
【請求項3】
前記変位センサおよび前記コントローラを別個に収納する筐体は往復台を中心に挟んで配置され、
前記筐体は前記圧延ロールの側に耐熱ブロックを有する、
請求項1に記載の表面粗度測定装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記変位センサが測定した表面変位データに基づき、前記圧延ロール表面の表面データの演算機能を備える、
請求項1に記載の表面粗度測定装置。
【請求項5】
前記演算機能は面粗さのパラメータを算出する機能を有する、
請求項4に記載の表面粗度測定装置。
【請求項6】
前記変位センサは2次元領域での変位量を測定する機能を有する、
請求項1に記載の表面粗度測定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表面粗度測定装置を圧延後に圧延ロールのチョックに固定し、
前記圧延ロールの軸方向に平行に変位センサを移動させながら圧延ロール表面の粗さを検出する、
表面粗度測定方法。
【請求項8】
一の圧延ロールの表面粗度の測定後、鉛直面内で往復台の位置を軸として前記変位センサを回転し、他の圧延ロールの表面粗度を測定する、
請求項7に記載の表面粗度測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延ロールなどの圧延ロールのロール表面の面粗さを検出する表面粗度測定装置および表面粗度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧延用ロールの表面検査では、超音波探傷という方法が行われている。超音波探傷は対象物の表面から一定の距離に、超音波プローブを保持し、該超音波プローブから音響結合媒体を介して対象物へ超音波を伝搬させ、対象物の表面や表面直下に存在する欠陥を検出するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ロール表面欠陥検出装置として、単一光源を照射し、その反射あるいは拡散する光を検出するリニアセンサあるいはエリアセンサを有し、そのセンサ出力を処理して被検査ロールの表面欠陥を検出するという方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-103033号公報
【特許文献2】特開2010-014515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1や2に開示された技術では、耐荷重、重量の関係から面粗さを測定できる大型のセンサを用いてロールを直接測定することが出来なかった。そのため、圧延ロール表面を型どりしてレプリカを作成し、そのレプリカに写し取った凹凸の粗さを測定していた。レプリカの作成には軟化した樹脂が硬化するまでに時間を要する問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、圧延後に圧延ロールの表面の粗さを直接測定することができ、高精度の面粗さを短時間で測定できる表面粗度測定装置および表面粗度測定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる表面粗度測定装置は、圧延ロールの表面粗さを測定する表面粗度測定装置であって、前記圧延ロールの表面に検出部が対向し前記圧延ロールのロール表面までの距離を測定する変位センサと、前記変位センサのコントローラと、前記変位センサおよび前記コントローラをそれぞれ収納する筐体と、前記筐体を支える支持ビームと、前記筐体が固定され、前記支持ビーム上を前記圧延ロールの軸方向に平行に往復移動可能な往復台と、前記圧延ロールを固定するチョックに前記支持ビームを固定する固定治具と、往復台の位置を回転軸として、前記圧延ロールの軸方向に平行な線を含む鉛直面上で前記筐体を回転させる回転機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明にかかる表面粗度測定装置は、
(a)さらに、前記筐体を前記圧延ロール表面に向けて進退させる進退機構を備えること、
(b)前記変位センサおよび前記コントローラを別個に収納する筐体は往復台を中心に挟んで配置され、前記筐体は前記圧延ロールの側に耐熱ブロックを有すること、
(c)前記コントローラは、前記変位センサが測定した表面変位データに基づき、前記圧延ロール表面の表面データの演算機能を備えること、
(d)前記演算機能は面粗さのパラメータを算出する機能を有すること、
(e)前記変位センサは2次元領域での変位量を測定する機能を有すること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0009】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる表面粗度測定方法は、上記いずれかの表面粗度測定装置を圧延後に圧延ロールのチョックに固定し、前記圧延ロールの軸方向に平行に変位センサを移動させながら圧延ロール表面の粗さを検出する、ことを特徴とする。
【0010】
なお、本発明にかかる表面粗度測定方法は、一の圧延ロールの表面粗度の測定後、鉛直面内で往復台の位置を軸として前記変位センサを回転し、他の圧延ロールの表面粗度を測定することがより好ましい解決手段になり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる表面粗度測定装置および表面粗度測定方法によれば、圧延後に直接圧延ロールの表面粗度を測定できる。非接触で型どりレプリカと同等の精度でより短時間で測定できるうえ、ロール軸方向に隙間なく表面粗度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる表面粗度測定装置の概要を示す模式正面図である。
図2】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図であって、支持ビームの固体治具をチョックに固定する手順を示す上面図である。
図3】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図であって、(a)は支持ビームを固体治具に取り付けた状態の上面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその部分正面図である。
図4】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図であって、(a)は支持ビームに往復台を取り付けた状態の上面図であり、(b)はその正面図である。
図5】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図であって、往復台にコントローラ側筐体を取り付けた状態の正面図である。
図6】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図であって、往復台に変位センサ側筐体を取り付けた状態の正面図である。
図7】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置を用いた表面粗度測定方法を示す模式図である。
図8】表面粗度測定位置を示す模式正面図であって、(a)は上記実施形態にかかる表面粗度測定装置を用いた場合を表し、(b)は従来法にかかるレプリカ採取位置を表す。
図9】上記実施形態にかかる表面粗度測定装置を用いて測定した圧延ロールの粗度と従来法で測定した粗度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は本発明の一実施形態にかかる表面粗度測定装置の概要を示す模式正面図である。図2~7は、上記実施形態にかかる表面粗度測定装置の組み立て手順を示す模式図である。本実施形態の表面粗度測定装置1は、圧延後に圧延ロール2の表面粗度を測定するために圧延ロール2を固定するチョック3に固定される。表面粗度測定装置1は、変位センサ4と、変位センサ4のコントローラ5と、筐体6と、支持ビーム7と、往復台8と、固定治具9と、往復台8に有する回転機構と、を備える。さらに、筐体6を圧延ロール2表面に向けて進退させる進退機構を備えることが好ましい。
【0015】
変位センサ4は圧延ロール2の表面に検出部が対向して設置され、圧延ロール2の表面までの距離を測定する機能を有する。変位センサ4は2次元領域での変位量を測定する機能を有する。コントローラ5は、変位センサ4が測定した表面変位データに基づき、圧延ロール2表面の表面データの演算機能を備える。演算機能は面粗さのパラメータを算出する機能を有する。面粗さのパラメータとしては、算術平均粗さSaや最大山高さSp、最大谷深さSv、SpとSvの和である最大高さSzなどを用いることができる。
【0016】
筐体6は変位センサ4およびコントローラ5をそれぞれ収納し、往復台8に固定される。変位センサ4とコントローラ5とはケーブル10で接続され、指令や測定データを通信できるようにしている。ケーブル10は筐体6の往復台8への固定具に面ファスナーなどで緊縛することが好ましい。また、変位センサ4を収納する筐体6は圧延ロール2の側に耐熱ブロックを有する。圧延後の高温の圧延ロール2からの熱に対し変位センサ4を保護することができる。
【0017】
支持ビーム7は、その両端が固定治具9により圧延ロール2の軸方向両端に位置するチョック3にそれぞれ固定される。往復台8は支持ビーム7上で圧延ロール2の軸方向に平行に往復移動可能に設置される。往復台8は往復台8を中心に挟んで配置された筐体6を往復台8の位置を軸に回転することができる。その回転は圧延ロール2の軸方向に平行な線を含む鉛直面上で回転機構により行われる。
【0018】
(組み立て機構)
以下、本実施形態にかかる表面粗度測定装置1を圧延後に圧延ロール2の表面粗度を測定できるように組み立てる手順を説明する。
図2に上面模式図で示すように、溝形の固定治具9が1対のチョック3それぞれのスペーサ3Aを挟み付けるように固定螺子9Aで固定する。固定螺子9Aには六角穴付きボルトなどを用いることができる。以下に同じ。
【0019】
図3(a)に上面模式図で示すように固定治具9に支持ビーム7の両端を螺子固定する。図3(b)の側面模式図、図3(c)の正面模式図に示す固定螺子9Aで固定する。支持ビーム7はアルミフレームなどで構成され、支持ビーム7上を往復移動する往復台8の基礎となるブロックランパー8Aが据え付けられている。
【0020】
図4(a)の上面模式図、図4(b)の正面模式図に示すように、支持ビーム7上のブロックランパー8Aに回転機構兼進退機構としての回転治具8Bを、圧延ロール2の軸に直交し水平方向に延伸するシャフト8Cに回転および進退移動可能に取り付ける。シャフト8Cの一端を固定した台座はブロックランパー8Aに螺子固定される。
【0021】
図5の正面模式図に示すように、回転治具8Bをシャフト8Cの後退限(圧延ロール2から離れる方向に)に移動する。コントローラ5を収納した筐体6を回転治具8Bに吊るすように取り付け、固定螺子9Aで固定する。
【0022】
次に、図6の正面模式図に示すように、コントローラ5を収納した筐体6が上になるように回転治具8Bを回転させて位置決めする。変位センサ4を収納した筐体6を回転治具8Bに吊るすように取り付け、固定螺子9Aで固定する。そして、変位センサ4とコントローラ5をケーブル10で接続し、ケーブル10は面ファスナーなどで緊縛する。
【0023】
(進退兼回転機構)
測定時には回転治具8Bがシャフト8Cのブロックランバー8A側の前進限(圧延ロール2に近づく方向に)で固定されている。回転治具8Bを緩めて、筐体6の上下を入れ替えることができる(図7)。90°回転するごとにピンにより固定することができる。
回転治具8Bをシャフト8Cに沿って、圧延ロール2に近づけたり、離したりして、位置決めする。
【0024】
(走査機構)
支持ビーム7に位置決めされたブロックランパー8Aを緩め、任意の位置(圧延ロール2のロール軸に平行な方向で)まで移動後、ブロックランパー8Aを固定する(図7)。
【0025】
(表面粗度測定方法)
進退兼回転機構や走査機構により、任意の位置へ変位センサ4を移動させたのち、変位センサ4から圧延ロール2の表面までの距離を測定する。その後、所定の位置まで移動させて、測定を繰り返す。図8(a)に示すように、測定範囲をロール軸方向に連続させることが好ましい。一のロールの測定終了後、筐体6を上下入れ替えて、他のロールを測定することが好ましい。
【実施例0026】
熱間圧延後の圧延ロール(ワークロール)の表面粗度を上記表面粗度測定装置を用いて測定した発明例とシリコン樹脂を用いてロール表面のレプリカを採取した従来法を比較した。発明例は図8(A)のようにロール軸方向に連続するように測定した。従来法では、ロール軸方向に7か所のレプリカを採取した。表面粗度は、25mmの長さの線分析とし、最大の高さの差Rzで評価した。図9の結果は○印と実線で発明例を、×印と破線で従来例を示す。測定位置はレプリカ採取位置で比較した。図9の結果から発明例と従来例の測定値に差がないことがわかる。一方、発明例は従来例の1/4の時間で測定を終えることができ、また、発明例では面粗度のパラメータを活用することもできる。発明例は、高精度で、効率的な測定法といえる。
【符号の説明】
【0027】
1 表面粗度測定装置
2 圧延ロール
3 チョック
3A (チョックの)スペーサ
4 変位センサ
5 コントローラ
6 筐体
7 支持ビーム
8 往復台
8A ブロッククランパー
8B (回転機構兼進退機構の)回転治具
8C シャフト
9 固定治具
9A 固定螺子
10 ケーブル
11 (表面粗度測定装置による)測定位置
12 (レプリカの)採取位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9