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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089854
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】洗濯物乾燥機のフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20240627BHJP
   B01D 46/12 20220101ALI20240627BHJP
   B01D 46/69 20220101ALI20240627BHJP
【FI】
D06F58/02 K
B01D46/12
B01D46/69
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205340
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】517260700
【氏名又は名称】アイナックス稲本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】稲森 件吾
(72)【発明者】
【氏名】石田 千貴
【テーマコード(参考)】
3B166
4D058
【Fターム(参考)】
3B166AA24
3B166AB24
3B166AB29
3B166AE02
3B166AE07
3B166AE12
3B166BA56
3B166BA73
3B166BA84
3B166CA01
3B166CB11
3B166EA03
3B166EA11
3B166EB03
3B166EB18
4D058JA12
4D058KB12
4D058MA11
4D058RA14
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】洗濯物乾燥機のフィルタ装置に関し、乾燥用空気の排気中に含まれるリントをより減少させること、及びフィルタに付着したリントを効果的に除去する手段を提供することである。
【解決手段】二重化、すなわち通過する空気流の上流側に位置する前フィルタとその下流側に位置する後フィルタとの2枚のフィルタを備えたフィルタ装置を提供する。また、前後のフィルタの下方部、好ましくは下辺近くの前方又は側方に後フィルタから離脱した塊状ないし膜片状のリントを通過可能な開口を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物収容部を通過した乾燥用空気の流出路に設置される主として洗濯物から離脱したリントを捕捉するためのフィルタ装置において、
前記流出路の上流側に位置する前フィルタ及び下流側に位置する後フィルタとの比較的狭い間隔を隔てて配置された2枚のフィルタと、
当該2枚のフィルタの下方部に前記後フィルタから離脱したリントが通過可能な開口とを備え、
前記後フィルタから離脱したリントが当該開口を通って排出されることを特徴とする、洗濯物乾燥機のフィルタ装置。
【請求項2】
前記間隔が後フィルタから離脱した塊状ないし膜片状のリントが通過可能で、かつ前フィルタの前方の噴射口から噴射された噴流が前フィルタを通過して後フィルタに付着しているリントを剥離するのに必要な勢いで後フィルタに達することのできる間隔である、請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
矩形かつ略同面積の前記前フィルタ及び後フィルタを備え、当該2枚のフィルタがリントを含む空気を下方から上方へと流す前記流出路に斜めに設置されている、請求項1又は2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記前フィルタ及び後フィルタの2枚のフィルタに付着したリントを当該2枚のフィルタから剥離するための空気噴流が、前記前フィルタの反後フィルタ側に当該前フィルタの面と略平行にしてかつ通過する乾燥用空気の流れ方向と略直交する方向で対向配置した複数のフレキシブルエアチューブから噴射される、請求項1又は2記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記対向配置した複数のフレキシブルエアチューブが前記前フィルタの上方部に配置され、当該前フィルタの中央ないし下方部の反後フィルタ側には前フィルタのフィルタ面に向けて空気を噴射する複数のフレキシブルエアチューブが配置されている、請求項4記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯物乾燥機のフィルタ装置に関し、2枚のフィルタを有するフィルタ装置及びこれらのフィルタに付着したリントを除去するフィルタ清掃手段を備えた上記装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大量の洗濯物を処理する業務用の洗濯物乾燥機は、通常、洗濯物の収容部となる回転ドラムと、負圧で回転ドラムに乾燥用空気を通過させる排気ブロワと、乾燥用空気を加熱するヒータと、回転ドラムを通過した乾燥用空気中に浮遊するリント(風綿)を捕捉するフィルタ装置とを備えている。回転ドラムを通過した乾燥用空気には洗濯物から離脱した繊維くずであるリントが多数含まれている。そのリントは、機械内部に配置したフィルタ装置で捕捉しているが、すべてを捕捉することはできず、フィルタ装置を通過するリントが存在する。
【0003】
フィルタ装置を通過したリントは、排気ブロワを通過して排気と共に機外に排出されるが、排気ブロワのインペラにリントが堆積すると回転のアンバランスによるモータの早期破損の懸念がある。また、特許文献1で提案されているような排気をヒータの前(空気流路の上流側)に循環させる洗濯物乾燥機では、排風中のリントが例えば蒸気ヒータのフィンに付着して目詰まりを起こし、ヒータの熱伝達を低下させて乾燥性能を劣化させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐37690号公報
【特許文献2】特開2009‐201864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、洗濯物乾燥機における乾燥用空気の排気中に含まれるリントをより減少させることができるフィルタ装置を得ることを第1の課題とし、そのようなフィルタ装置のフィルタに付着したリントを効果的に除去する手段を提供することを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、二重化、すなわち通過する空気流の上流側に位置する前フィルタ32とその下流側に位置する後フィルタ33との2枚のフィルタを備えたフィルタ装置を提供することにより、上記第1の課題を解決している。そして、前後のフィルタ32、33の下方部、好ましくは前フィルタ32の下辺近くの前方又は後側方に後フィルタ33から離脱した塊状ないし膜片状のリントを通過可能な開口35(35a、35b)を設けることにより、上記第2の課題を解決している。前後のフィルタ32、33のメッシュ数は、前フィルタ32に対して後フィルタ33は同等もしくは細かいことが望ましい。
【0007】
洗濯物収容部(回転ドラム)3から流出した乾燥用空気が下方から上方へと流れる上下方向の流出路18にフィルタ装置4を斜めに設置したときは、後フィルタ33から離脱した塊状ないし膜片状のリントを前フィルタ下辺部の開口35aを通して流出路18の底部空所36に落下させ、剥離して底部空所36に落下する前フィルタ32からの離脱したリントと共に1箇所に集めることができ、底部空所36に取出口を設けることで容易に機外に排出することができる。
【0008】
乾燥用空気に浮遊しているリントは、フィルタ32、33の上部から付着していく傾向があるため、乾燥工程中に前フィルタ32の下辺部に設けた開口35aを通るリントは少なく、開口35aを通過したリントも後フィルタ33で捕捉されるので、開口35aを通過したリントが後フィルタ33を通過して排気ブロワ5のインペラやヒータ2のフィン等に付着する可能性は低い。必要があれば、開口35aにフラップ(揺動して開閉される扉)を設けて、乾燥工程中は開口35aを閉じるようにすることもできる。
【0009】
排出開口35は、前フィルタ32の下辺後側の2枚のフィルタ32、33間の間隙の下端や当該間隙の下方側面に設けることもできる。後フィルタ33から離脱したリントは、これらの開口35を通して落下させて、又はエゼクタやブロワで吸引して機外へ排出することができる。
【0010】
2枚のフィルタ32、33に捕捉されて付着したリントは、従来提案されている各種の清掃手段で除去することができるが、前フィルタ32と後フィルタ33とに個別に清掃手段を設けるとフィルタ装置の構造が複雑かつ大型になる。この問題は、前フィルタ32と後フィルタ33とを比較的狭い間隔で配置し、リントがより多く付着する前フィルタの手前(フィルタ装置を通過する空気流の上流側、以下同じ。)に前フィルタの面に沿う方向の流れを生成する方向に噴流を生成するフレキシブルエアチューブ(以下、単に「エアチューブ」と言う。)42を設ける構造により、2枚のフィルタ32、33に付着したリントを同時に剥離することができる。
【発明の効果】
【0011】
フィルタ装置に2枚のフィルタを設けることにより、通過空気に含まれるリントをより多く捕捉することができ、排気をより清浄にでき、排気中に含まれるリントの堆積に起因する機械の故障や効率の低下を避けることができる。2枚のフィルタを比較的狭い間隔で配置することで、フィルタ装置の大型化を避けることができる。
【0012】
2枚のフィルタを比較的狭い間隔で配置すると、後フィルタに捕捉されたリントの除去が困難になるが、前後のフィルタの下方部に開口を設けることにより、後フィルタから剥離したリントの除去が可能になる。また、前フィルタの前方に配置したエアチューブ42から前フィルタの面に沿う流れが生成されるように空気を噴射することにより、比較的狭い間隔で配置した2枚のフィルタに付着したリントを同時に剥離することができ、フィルタ装置の清掃を自動化することが容易になる。
【0013】
また、リント剥離用の噴流の生成手段としてエアチューブを用いることにより、1本毎のエアチューブの噴射領域が広くなり、フィルタの大面積化にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の洗濯物乾燥機を回転ドラムの軸線方向から見た全体図
図2図1のフィルタ装置部分の拡大図
図3】前フィルタの正面図
図4】排出開口の他の例を示す斜視図
図5】エアブロー配管とエアチューブの正面図
図6】エアブロー配管とエアチューブを上方から見た図
図7】フィルタ清掃動作を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明のフィルタ装置4を備えた業務用の洗濯物乾燥機を示す図で、1は乾燥機の筐体、2は乾燥用空気を加熱するヒータ、3は筐体1内で図の紙面直角方向の軸回りに回転駆動される円筒形の回転ドラム、4はフィルタ装置、5は排気ブロワである。筐体1の前面には、回転ドラム3内に洗濯物を投入する投入口11が設けられている。回転ドラム3の周面は、空気が通過可能な金網やパンチングメタルで形成されている。
【0016】
筐体1内には、乾燥工程時に回転ドラム3を通過する所望の空気流Aが生成されるように、回転ドラム3を囲むように隔壁12、13が設けられている。隔壁12の上方には乾燥用空気の流入口14が開口し、隔壁13の下方には、回転ドラム内を流れた空気の流出口15が開口している。流出口15には下辺回りに揺動駆動される流出口ダンパ16が設けられている。隔壁13と筐体の側壁17との間には、流出口15から流出した排気を筐体下部から上方の排気ブロワ5へと導く流出路18が形成されている。通過空気中に浮遊するリントを捕捉するフィルタ装置4は、流出路18に設置されている。
【0017】
筐体1の上部には、回転ドラム3を通過した乾燥用空気Aを外気の吸気口23に隣接して設けた排気口24に導く排気路25が形成され、この排気路とヒータ2の上部に設けた吸入空気室26との間には、上辺回りに揺動駆動されて循環口27とこの開口を通って吸入空気室26へと流れる循環空気の流量を調整する循環ダンパ28が設けられている。
【0018】
乾燥用空気Aは、排気ブロワ5の吸引力により、外気吸気口23から吸入空気室26を経てヒータ2で加熱され、流入口14から流出口15へと回転ドラム3内を直径方向に流れて流出口15から流出路18を下から上へフィルタ装置4を通って流れて排気ブロワ5に流入する。排気ブロワ5から吐出された排気は、排気路25を流れて排気口24から機外に排出される。循環ダンパ28の開度により、排気の一部がヒータ2の流入側の吸入空気室26に循環される。
【0019】
乾燥しようとする洗濯物は、投入口11から回転ドラム3内に投入される。外気及び循環口27から流入した循環空気は、ヒータ2を通って洗濯物を収容して回転するドラム3を斜めに流れ、流出口15から流出路18へと導かれ、流出路18を下から上へと流れる間にフィルタ装置4でリントが捕捉され、排気ブロワ5を通って排気口24から排出されるが、循環ダンパ28の開度により、排気の一部又は全部が吸入空気室26に流入して、ヒータ2で再加熱されて回転ドラム3内の洗濯物を乾燥するのに用いられる。
【0020】
流出路18に設置したフィルタ装置4は、矩形のフィルタ枠31を備え、フィルタ枠31には、面直角方向に間隔を明けて2枚のフィルタ32、33が取り付けられている。流出路18を斜めに遮断するように2枚のフィルタ32、33を設けているのは、リントを含んだ空気を大面積の2枚のフィルタ32、33を通過させて少ない圧損でより多くのリントを捕捉して排気をより清浄にするためである。
【0021】
排気の流入側に位置する前フィルタ32は、図3に示すように、前フィルタ32の下辺34とフィルタ枠31の下辺との間に開口35aを残して取り付けられている。好ましい前後のフィルタの間隔40~100mmに対し、開口35aの上下幅は50~100mmであるが、フィルタ間隔30~200mmに対し、開口35aの上下幅は30~300mmとすることも可能である。下流側の後フィルタ33は、フィルタ枠31の下辺に達しており、従って開口35aの背後には後フィルタ33の下辺部分が存在している。
【0022】
図4は、後フィルタ33から離脱したリントの排出開口35の他の例を示した図で、前記のフィルタ32、33を支持しているフィルタ枠31の一方の側材31bの下端に排出開口35bを設け、対向する他方の側材31aの下端に排出用空気流Bを排出開口35bに向けて噴き出す空気吹込口37を設けた例である。このような構造の場合も、排出開口35bに隣接してダストシュートを設けて、又はブロワやエジェクタの吸気口を設けて、開口35bから排出されたリントを機外に排出することができる。
【0023】
フィルタ装置4と流出口ダンパ16とは、流出口ダンパ16が流出口15を閉じた状態で、流出口ダンパ16の上縁38とフィルタ枠31の下辺34とが当接する位置関係となるようにして取り付けられている。
【0024】
流出口ダンパ16は、開いたときは、当該ダンパの背面側の底部空所36を閉鎖するように揺動して流出口15を開き、閉じたときは、図2に示すように、底部空所36の上方を開放すると共に、その上縁38とフィルタ枠31の下辺34との間を閉じた状態で流出口15を閉鎖する。排気ブロワ5が回転を継続している状態で流出口ダンパ16を閉じると、その上縁38とフィルタ枠31の下辺34との間で絞られて排気ブロワ5に吸引される空気は、前フィルタ32の前面に沿って流れると同時に、開口35aを通った空気が後フィルタ33の前面に沿って下から上へと流れる。
【0025】
回転ドラム3に投入された洗濯物は、回転ドラム3の回転によりかき上げられてドラム内を落下する動作を繰り返す。洗濯物の間を通過した乾燥用空気には洗濯物から離脱した多くのリントが含まれている。これらのリントは、フィルタ32、33の前面に捕捉されて堆積する。フィルタにリントが層状に堆積するとフィルタ装置4の空気抵抗が増加するので、1回ないし数回の乾燥工程が終了する毎にフィルタの清掃(フィルタに付着しているリントの除去)を行わねばならない。
【0026】
フィルタの清掃を手動で行う場合には、フィルタ枠31を図2の紙面直角方向のレールに案内して筐体1外に引き出して行うことができる。しかし、省力化と環境衛生の点から、筐体1内で自動的にリントの除去を行うのが望ましい。
【0027】
リントが付着するフィルタ前面に堆積したリントの除去を自動で行う場合、フィルタ背後からの空気噴射で行うことが多いが、2重フィルタの場合は、後フィルタ前面から離脱したリントが前フィルタの背面に捕捉されるので、採用することができない。また、フィルタ前面側に配置したノズルから一定の方向に噴射される噴流をフィルタ面と平行ないし斜めに吹き付けてフィルタに捕捉されたリントを剥離する方法も知られているが、この方法では後フィルタ33に捕捉されたリントを除去することは困難であった。
【0028】
この発明の発明者等は、種々の試験により、空気噴射時に振れ動くシリコン製のエアチューブからの噴流を用いることにより、前フィルタ32の前方で噴射される空気流により比較的狭い間隔を開けて配置した2枚のフィルタ32、33に堆積したリントを共に膜片状にして剥離できることを見いだした。
【0029】
実施例のフィルタ装置は、1,500mm×1,500mmのフィルタ32、33を備えており、噴射空気を貯留するエアタンクやコンプレッサの容量及びリント除去に要する時間などを考慮して図5、6に示すように、リント剥離用のエアブロー配管を3系統配置し、それぞれのエアブロー配管41a、41b、43に各4本のシリコン製のエアチューブ42、44(φ10×φ6、長さ200mm)を取り付けている。
【0030】
前フィルタ32の前方上部左右の上エアブロー配管41(41a、41b)に取り付けたエアチューブ42(42a、42b)は、2本ずつ対向する横方向に前フィルタ32のフィルタ面と略平行に取り付けられ、前フィルタ32の高さ方向の中央からやや下前方に配置した下エアブロー配管43に取り付けたエアチューブ44は、図2に示すように、フィルタ面に向く方向にして取り付けている。各エアブロー配管41a、41b、43は、図示しない制御器で開閉されるそれぞれの電磁弁を介して図示しない1個のエアタンクに接続されている。
【0031】
各エアチューブ42、44は、空気噴射時に不規則に振れ動くことにより、フィルタ面の広い範囲に脈動する噴流が作用してそれぞれのエアチューブがフィルタの広い範囲に付着したリントを剥離していると考えられる。
【0032】
図7は、上記構造を備えたフィルタ装置4のフィルタ32、33に捕捉されて膜状に堆積したリントの除去動作を示すタイムチャートである。
【0033】
洗濯工程が終了して排気ブロワ5に停止信号が入った後の排気ブロワ5の惰性回転時の途中の時点cで流出口ダンパ16を閉じる。惰性回転する排気ブロワ5で吸引される空気は、流出口ダンパの上縁38とフィルタ枠の下辺34との間で絞られて前フィルタ32の前面に沿って流れると同時に開口35aを通って後フィルタ33の前面に沿って下から上へと流れる。この流れは、フィルタ32、33の下方部に付着しているリントを剥離して上方に押し上げる作用もしていると考えられる。この作用は、主として流出口ダンパ16の閉動作時に発揮される。
【0034】
排気ブロワ5の惰性回転のあと、上エアブロー配管41a、次いで上エアブロー配管41bにエアタンクの圧縮空気が供給され、それぞれの配管のエアチューブ42a、42bから圧縮空気が噴射される。この噴射を繰り返すことにより、前後のフィルタ32、33の上方に付着しているリント及び下方から上方に押し上げられたリントがフィルタ面から離脱する。
【0035】
次いで短い待ち時間後に、下エアブロー配管43に圧縮空気が供給され、フィルタ32、33の中央付近に付着しているリントを剥離する。この動作は、後フィルタ33から剥離したリントを前フィルタ下辺部の排出開口35aから流出路18の底部空所36に落下させる作用も備えている。上エアチューブ42及び下エアチューブ44からの上記順序での空気噴射は、上記順序で繰り返し行われる。
【0036】
流出口ダンパ16は、リント除去時に上方から落下するリントが流出口ダンパ16の背後の底部空所36に落下するように案内しており、落下するリントが回転ドラム3側に戻らないようにする蓋の機能も備えている。底部空所36に落下したリントは、適時、図示しない開口から機外に排出される。
【0037】
エアチューブ42、44の素材は、高温に耐えることができ、柔軟性を持ったシリコン製であり、チューブの厚みは2mm以上、内径は6mm以上が望ましい。チューブ長さは200mm±150mmが望ましい。また、エアチューブの形状は円形であり、先端を垂直にカットしたものである。本願の発明者らの試験によると、エアチューブ42、44は、断面円形のものが、流路抵抗が少なく圧損が少ないため、後フィルタ33に付着しているリントの除去にも有効であると考えられる。
【0038】
エアチューブの配置は、フィルタの面積や噴射エアを貯留するエアタンクの容量、乾燥する洗濯物の種類などによりそれぞれ最適な配置を試験により求めるべきであるが、フィルタを斜めに配置したときは、リントはフィルタの上部から付着する傾向があるので、主となるエアチューブは、フィルタの上部に配置した方が、効率が良い。
【0039】
図の実施例では、エアタンクの圧力の確保と左右の上エアチューブ42a、42bからの噴射圧に差が生じないように、上エアブロー配管41を左右で41aと41bとに分けて、エアタンクからの配管の距離の差を小さくしている。上エアブロー配管を左右に分けたときはどちらを先に噴射しても良いが、上段と下段に分けたときは、上段、下段の順番で噴射することが望ましい。
【0040】
また、下エアブロー配管43に設けたエアチューブ44で後フィルタから離脱したリントをフィルタ装置の下方部に設けた排出開口35から掃き出すことが可能なので、上下のエアチューブ42と44とは、フィルタの上部とフィルタの高さ方向の中間よりやや下に配置するのが望ましいと考えられる。
【0041】
フィルタの前方にフィルタの面と略平行に配置した上エアチューブ42から噴出する空気は、エアチューブの振れ動きにより、フィルタ面と平行に、フィルタを通過する斜め方向に、更にフィルタから斜めに離れる方向に不規則に変化して流れる。正確には計測できないが、視認によれば、振れ角は±60~90度と認められたが、この振れ角はエアチューブの先端部が前フィルタ32や側壁17に当たって制限されている。
【0042】
細長くて柔軟かつ不定形であるリントは、フィルタに絡み合った状態で膜状に付着する。一方、エアチューブからの噴流は静圧を下げて周囲の空気を引き込むので、フィルタ面と平行に流れる噴流やフィルタ面から離れる方向に斜めに流れる噴流は、フィルタ背面の空気を静圧差でフィルタ前面へと付勢し、フィルタ前面に捕捉されて膜状に堆積したリントを剥離させる。膜状に堆積したリントの一部が浮き上がると、エアチューブの振れ動きにより方向を変えた噴流がその部分に衝突して、隣接するリントを引きはがそうとすると共に、引き上げられた部分を引きちぎって膜片としてフィルタから離脱させる。急激に振れ動くエアチューブからのこのような噴流の作用により、フィルタの前方に配置したエアチューブからの噴流により、フィルタに捕捉されて薄膜状に堆積したリントがフィルタから剥離されると考えられる。
【0043】
そして、前フィルタに向けて斜めに噴射されたときにその噴流が前フィルタを通って後フィルタの前面で同様な流れを生じさせるので、比較的狭い間隔で配置された後フィルタに堆積したリントも剥離することができると推測される。
【0044】
フィルタの前方に配置したエアチューブからの噴流の上記のような作用は、1枚のフィルタを備えたフィルタ装置でも発揮されると考えられる。また、洗濯物の種類によって乾燥用空気に浮遊してくるリントの太さ、長さ及び絡みやすさは異なると考えられる。従って、フィルタが1枚のフィルタ装置であっても、機械や流出路の構造上フィルタの背後にノズルやエアチューブを配置できない場合や、洗濯物から離脱して浮遊してくる繊維くずの種類によっては、この実施例に示した上エアチューブのようにフィルタの面と略平行にエアチューブを配置して当該フィルタに捕捉されたリントの除去を効率的に行うことができる場合も多いと考えられる。
【符号の説明】
【0045】
2 ヒータ
3 回転ドラム
4 フィルタ装置
5 排気ブロワ
15 流出口
16 流出口ダンパ
18 流出路
32 前フィルタ
33 後フィルタ
35(35a、35b) 排出開口
36 底部空所
41(41a、41b)、43 エアブロー配管
42(42a、42b)、44 エアチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7