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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089858
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】リニアエンコーダ、及び、工作機械
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240627BHJP
   B23Q 5/22 20060101ALI20240627BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240627BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
   G05B 19/19 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01D5/245 110X
B23Q5/22 530H
B23Q17/22 E
B23Q11/00 K
G05B19/19 F
G01D5/245 110Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205351
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 憲之
【テーマコード(参考)】
2F077
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
2F077AA41
2F077AA42
2F077VV02
2F077VV04
3C029AA32
3C269AB01
3C269BB11
3C269CC01
3C269GG01
(57)【要約】
【課題】リニアエンコーダのハウジング内に汚染を招く物質が入り込むことを抑制する。
【解決手段】スケールと、スケールを検出ヘッドで走査して位置情報を得るセンサユニット102bと、スケール及び検出ヘッドを収納するハウジング301と、電空レギュレータ104a,104bと、制御装置11を含むリニアエンコーダ12である。ハウジング301はスケール長手方向の両端部114に設けられた空気注入口118を有する。電空レギュレータ104a,104bは、空気をハウジングの空気注入口118に吐出する。制御装置11は、センサユニット102bの移動方向の前方側に位置するハウジングの空気注入口118に吐出する空気の圧力である前方圧力と、その後方側に位置するハウジングの空気注入口118に吐出する空気の圧力である後方圧力に関し、前方圧力よりも後方圧力が高くなるように電空レギュレータ104a,104bを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと、前記スケールと対向して配置された検出ヘッドを有しており前記スケールを前記検出ヘッドで走査して位置情報を得るセンサユニットと、前記スケールおよび前記検出ヘッドを収納するハウジングと、を含み、
前記センサユニットは、前記ハウジングの外に配置された走査ヘッドと、前記走査ヘッドと前記検出ヘッドを連結する連結部とを有し、
前記ハウジングは、前記センサユニットの連結部が移動できるように構成されたスケール長手方向に延びる開口と、前記開口を閉塞するシール部材と、前記スケール長手方向の両端部に設けられた空気注入口とを有する、リニアエンコーダであって、
圧力が調整された空気を前記ハウジングの両端部の空気注入口に吐出する電空レギュレータと、
前記センサユニットの移動方向の前方側に位置する前記ハウジングの空気注入口に吐出する空気の圧力である前方圧力と、その後方側に位置する前記ハウジングの空気注入口に吐出する空気の圧力である後方圧力に関し、前記前方圧力よりも前記後方圧力が高くなるように前記電空レギュレータを制御する制御装置と、を備える、
ことを特徴とするリニアエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアエンコーダにおいて、
前記制御装置は、
前記センサユニットが第1速度で移動する場合の前記後方圧力に比べて、前記センサユニットが前記第1速度よりも速い第2速度で移動する場合の前記後方圧力が高くなるように前記電空レギュレータを制御する、
ことを特徴とするリニアエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリニアエンコーダを含み、
前記リニアエンコーダの前記制御装置は、前記センサユニットが接続された制御対象物の位置を制御する数値制御装置である、
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアエンコーダ及び工作機械に関し、特に、リニアエンコーダのハウジング内に汚染を招く物質が入り込むことを抑制するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の工作機械に搭載されたリニアエンコーダについて、図2,3を参照して説明する。図2は、従来のリニアエンコーダ102が搭載された工作機械100の一例を示す概略構成図である。図3は、リニアエンコーダ102のスケール302の長手方向と直交するリニアエンコーダ102の断面を示す断面図である。図2に示すように、リニアエンコーダ102は、スケールユニット102aとセンサユニット102bを備える。スケールユニット102aは、図示しないベッドに固定されている。センサユニット102bは、制御対象物としてのテーブル110に固定されており、スケールユニット102a内のスケール302(図3参照)からテーブル110の位置を検出し、位置情報を数値制御装置101へ出力する。
【0003】
テーブル110は、ボールねじナット109と固定され非回転状態となっており、ボールねじ108(ねじ軸)の回転に伴って、ボールねじナット109は、ボールねじ108の軸方向に移動可能となっている。ボールねじ108は、その両端を図示しないタックベアリングで軸支されており、カップリング107を介して、モータ106の出力軸と連結されている。
【0004】
モータ106の出力軸の他側にはロータリエンコーダ105が設けられており、ロータリエンコーダ105は、モータ106の回転位置を検出し、その位置情報を数値制御装置101へ出力する。数値制御装置101は、ロータリエンコーダ105からの位置情報と、リニアエンコーダ102からの位置情報から、制御対象物(テーブル110)を所望の位置へ移動させるべく、モータ106へ制御電流を流し、モータ106を回転させる。
【0005】
ここで、リニアエンコーダ102の設置環境について説明する。工作機械であれば、加工物を切削する際に生じる切粉や、切削効率を上げるための切削液といった、リニアエンコーダ102を汚染する物質が周辺に存在する。また、図2からも分かるように、リニアエンコーダ102は比較的、ボールねじ108の近傍に配置されることが多く、ボールねじ108の回転を滑らかにするための潤滑油が、ボールねじ108の回転に伴って、リニアエンコーダ102に飛沫することもある。このような物質が、スケールユニット102aのハウジング301(図3参照)内に入ってこないように、従来から、ハウジング301のスケール長手方向(スケール302の長手方向、図3の紙面を突き抜ける方向)の端から圧縮空気を導入することが行われている。図2の例では、ハウジング301の両端部114から空気を導入しているが、ハウジング301の片端からのみ導入する場合もある。導入される圧縮空気は、工作機械等が設置された工場のコンプレッサ等から供給される。
【0006】
コンプレッサから供給される圧縮空気は、エアフィルタユニット103にて清浄化したものを使用する。エアフィルタユニット103は、通常のエアフィルタだけでなく、ドレインキャッチやミストセパレータ、マイクロミストセパレータ、スーパーミストセパレータなどで構成され、多段に清浄化してクリーンエアを生成することが一般的である。このようにして清浄化された圧縮クリーンエアは、圧力計付きレギュレータ204にて所定の空気圧に設定され、スケールユニット102aのハウジング301へ供給される。
【0007】
供給される圧縮クリーンエアのエア圧は、高ければ高いほど、汚染を招く物質からスケールユニット102aを保護する能力が上がるが、逆に、工場のコンプレッサのエア消費量が増え、これに伴い消費電力量も上がるため、非効率になる。加えて、エア流量が増えるため、エアフィルタユニット103のフィルタ汚れも早くなるため、フィルタ交換等のメンテナンスの間隔も短くなってしまう。このようなことから、汚染を招く物質に対する保護能力と、エア流量とのバランスを考えながら、エア圧の設定値を選定している。それでも、スケールユニット102aのハウジング301内部が汚れることは、リニアエンコーダ102にとって問題であった。
【0008】
図3に示すように、スケールユニット102aは、ハウジング301と、ハウジング301内に配置されたスケール302を備える。センサユニット102bは、ハウジング301内に位置する検出ヘッド312と、ハウジング301の外に位置する走査ヘッド305と、走査ヘッド305と検出ヘッド312を連結する連結部308を備える。
【0009】
スケール302は、ガラス板に格子状のクロム遮光膜を敷設したものであり、ゴム紐303や図示しない接着剤にてハウジング301(スケールカバー)に固定されている。ハウジング301は、センサユニット102bの連結部308がスケール長手方向に移動できるように構成されたスケール長手方向に沿った開口310を備える。ハウジング301の開口310は、2枚の防塵シール304a,304bにより塞がれており、これにより、外部から物質がハウジング301内に侵入することが抑制されている。
【0010】
センサユニット102bの検出ヘッド312は、LED等からなる発光ユニット306と、フォトダイオード等からなる受光ユニット307と、発光ユニット306及び受光ユニット307を保持する保持部309を備える。走査ヘッド305は、内部に不図示の処理回路基板を備える。走査ヘッド305の処理回路基板と、検出ヘッド312の発光ユニット306及び受光ユニット307とは、センサユニット102bの連結部308に設けたトンネル状の穴(不図示)を通じてケーブルで接続されており、LEDへの電力供給やフォトダイオードで光電変換された電気信号を送受信している。
【0011】
センサユニット102bがスケールユニット102aに対してスケール長手方向に移動する際は、センサユニット102bの連結部308が、防塵シール304a,304bと接触しつつ、防塵シール304a,304bを掻き分けながら、移動することになる。
【0012】
防塵シール304a,304bは、ゴム材からなることが一般的であり、ニトリルゴムやウレタンといったものから、耐油性の観点からフッ化ゴムなども選定されている。しかし、例えば、工作機械で使用される切削液の種類は、数多あり、いろんな添加剤が使用されているため、完全に影響を受けないゴム材というのは、探すのが難しい。また、防塵シール304a,304bに付着した油剤が、経年劣化して粘度が増したり、切粉の鉄粉など他の異物を含有したりして、センサユニット102bの連結部308との接触部で引き摺られる現象が起き、接触面が傷んでしまうこともあった。このようにして、防塵シール304a,304bに、劣化や変形、変質といった問題が起き、防塵シール304a、304bと連結部308の間に、隙間が生じることがある。なお、従来技術では、前述したようにハウジング301内に圧縮空気を導入しているので、多少の隙間であれば、空気圧(エア圧)によって外部からハウジング301内への物質の入り込みを防ぐことができる、と考えられている。
【0013】
ここで、図3を再び参照すると、ハウジング301の内部断面では、そのほとんどの面積を、センサユニット102bの検出ヘッド312が占めており、隙間が僅かしか存在しない。この状態で、スケールユニット102aとセンサユニット102bとが、相対移動すると、あたかもシリンダ内でピストンが作動するような状況が起きる。センサユニット102bは、この場合、ピストンに相当するが、これが向かう側のハウジング301の内室は、気圧が高くなり、逆に、離れていく側のハウジング301の内室は、気圧が低くなる現象が起きてしまう。気圧が高くなる側のハウジング301の内室はよいが、気圧が低くなる側のハウジング301の内室は気圧が低くなる。低くなった気圧が、供給されるエア圧と相殺した結果、負圧の状態となる場合があると、外部からハウジング301内に物質を吸い込んでしまう。2枚の防塵シール304a,304bのそれぞれと連結部308の間に、隙間が生じていると、供給されるエア圧が低下した状態となっているので、より負圧が生じ易いといえる。
【0014】
また、近年の工作機械等では、リニアモータ駆動の採用等で、スケールユニット102aとセンサユニット102bとの相対移動速度、所謂、送り速度は、高速化、高加速度化しており、これも負圧が生じることを助長している。なお、検出ヘッド312が位置するハウジング301の内部断面において、もっと互いの隙間を増やせば負圧が生じにくくなるという考えもあるが、そのためにハウジング301を大きく(太く)せねばならないため、難しい選択を迫られることとなっている。
【0015】
特許文献1には、ハウジングに内設されたメインスケールと検出ヘッドの相対移動によってその移動距離を測定する測長装置に関し、検出ヘッドの移動方向の前側部分から後側部分に空気を流す通風管を設けて、移動方向の後側部分の負圧状態を抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実開平4-11405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
リニアエンコーダにおいて、防塵シールで開口を塞ぎ、圧縮クリーンエアをハウジング内へ導入しているにもかかわらず、汚染物質がハウジング内に入り込み、スケール面を汚し、検出不良となる事例がある。その原因は、次の通りである。
【0018】
切削液や潤滑油などが防塵シールに付着し、切粉の鉄粉などの他の異物を含みながら、油剤の粘度が増す。その粘度が増した状態で、センサユニットが走査されると、防塵シールとセンサユニットの連結部との接触面での摩擦が大きくなり、防塵シールのリップ部が徐々に損傷し、シール性能が低下する。しかし、この状態でも、クリーンエアのエア圧によって、一定程度はハウジング内への物質の入り込みを防ぐことはできるが、スケールユニットとセンサユニットとの相対移動により、あたかもシリンダ内でピストンが作動するような状態となるため、ハウジング内が負圧となってしまう。負圧が発生すると、リニアエンコーダの周辺雰囲気に漂っているオイルミストや粉塵を吸い込むこととなり、スケール面を汚してしまう。
【0019】
これを防ぐために、クリーンエアのエア圧を定常的に上げた場合、工場側のエアコンプレッサのエア消費量が増え、非効率になってしまう。また、エア流量が増えたことにより、クリーンエアを生成するエアフィルタ類の汚れも加速し、頻繁にフィルタ交換などのメンテナンスをする必要性に迫られることになる。よって、リニアエンコーダのハウジング内に汚染物質が入り込むことを効果的に抑制できる構成が望まれている。
【0020】
本発明の目的は、リニアエンコーダのハウジング内に汚染を招く物質が入り込むことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るリニアエンコーダは、スケールと、前記スケールと対向して配置された検出ヘッドを有しており前記スケールを前記検出ヘッドで走査して位置情報を得るセンサユニットと、前記スケールおよび前記検出ヘッドを収納するハウジングと、を含み、前記センサユニットは、前記ハウジングの外に配置された走査ヘッドと、前記走査ヘッドと前記検出ヘッドを連結する連結部とを有し、前記ハウジングは、前記センサユニットの連結部が移動できるように構成されたスケール長手方向に延びる開口と、前記開口を閉塞するシール部材と、前記スケール長手方向の両端部に設けられた空気注入口とを有する、リニアエンコーダであって、圧力が調整された空気を前記ハウジングの両端部の空気注入口に吐出する電空レギュレータと、前記センサユニットの移動方向の前方側に位置する前記ハウジングの空気注入口に吐出する空気の圧力である前方圧力と、その後方側に位置する前記ハウジングの空気注入口に吐出する空気の圧力である後方圧力に関し、前記前方圧力よりも前記後方圧力が高くなるように前記電空レギュレータを制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るリニアエンコーダにおいて、前記制御装置は、前記センサユニットが第1速度で移動する場合の前記後方圧力に比べて、前記センサユニットが前記第1速度よりも速い第2速度で移動する場合の前記後方圧力が高くなるように前記電空レギュレータを制御する、としてもよい。
【0023】
また、本発明に係る工作機械は、上記リニアエンコーダを含み、前記リニアエンコーダの前記制御装置は、前記センサユニットが接続された制御対象物の位置を制御する数値制御装置である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スケールに対してセンサユニット(検出ヘッド)が移動したとしても、ハウジング内で負圧が生じることを抑制することができるため、ハウジング内への汚染物質の入り込みを抑制することができる。リニアエンコーダ内部への汚染物質の入り込みを抑制することは、リニアエンコーダの検出不良に関する故障やアラーム発生といった事態の発生を低減することに繋がるため、メンテナンス費用や交換費用の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るリニアエンコーダを含む工作機械の一例を示す概略構成図である。
図2】従来技術のリニアエンコーダを含む工作機械の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態及び従来技術に共通のリニアエンコーダの断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るリニアエンコーダ12を含む工作機械10の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、本実施形態では、リニアエンコーダ12のハウジング301へ導入するエアの供給経路において、圧力計付きレギュレータ204(図2参照)に代えて、電空レギュレータ104a,104bを配置している。また、数値制御装置11と電空レギュレータ104a,104bの間に電線を配置して、数値制御装置11から電空レギュレータ104a,104に制御信号PSR,PSLを送信できるようにしている。図1のその他の構成は、図2の構成と同じである。
【0028】
工作機械10は、数値制御装置11を備えるNC工作機械である。工作機械10は、数値制御装置11と、制御対象物としてのテーブル110と、テーブル110に接続されたリニアエンコーダ12を備える。工作機械10及びリニアエンコーダ12の基本構成は、図2,3を用いて説明した工作機械100及びリニアエンコーダ102と同じである。
【0029】
図1に示すように、リニアエンコーダ12は、スケールユニット102aとセンサユニット102bを備える。スケールユニット102aは、スケール302(図3参照)とハウジング301を含む。センサユニット102bは、スケール302と対向して配置された検出ヘッド312(図3参照)と、ハウジング301の外に配置された走査ヘッド305と、走査ヘッド305と検出ヘッド312を連結する連結部308を含む。
【0030】
スケール302は、例えばガラス板に格子状の遮光膜を敷設したものである。検出ヘッド312は、スケール302を挟んで互いに対向して位置する発光ユニット306と受光ユニット307(光センサ素子)を含む。センサユニット102bは、ボールねじナット109の移動に伴って、検出ヘッド312でスケール302を走査して、受光ユニット307と処理回路基板(不図示)により位置情報を取得し、位置情報を数値制御装置11に送信する。このように、リニアエンコーダ12は透過型エンコーダである。
【0031】
なお、リニアエンコーダ12は反射型エンコーダであってもよい。すなわち、スケールは、例えばスチール板に格子状の反射遮光膜を敷設したものであってもよく、検出ヘッドは、発光ユニットと受光ユニット(光センサ素子)が共にスケールの片側に配置されたものであってもよい。
【0032】
ハウジング301は、スケール302および検出ヘッド312を収納する。ハウジング301は、センサユニット102bの連結部308が移動できるように構成されたスケール長手方向に延びる開口310と、開口310を閉塞する防塵シール304a,304b(シール部材)と、スケール長手方向の両端部114(図1参照)に設けられた空気注入口118を含む。なお、ハウジング301のスケール長手方向の両端部114は、端板により閉塞されており、端板に空気注入口118が設けられている。
【0033】
リニアエンコーダ12は、電空レギュレータ104a,104bを備える。電空レギュレータ104a,104bは、エアフィルタユニット103を介して供給された圧縮空気(コンプレッサから供給された圧縮空気)を吸入し、その圧縮空気の圧力を調整して、ハウジング301の空気注入口118に吐出する。具体的には、電空レギュレータ104aは、ハウジング301の右端部114の空気注入口118に空気を吐出し、電空レギュレータ104bは、ハウジング301の左端部114の空気注入口118に空気を吐出する。なお、本実施形態では、2つの電空レギュレータ104a,104bを用いているが、これらが一体化された1つの電空レギュレータが用いられてもよい。
【0034】
数値制御装置11は、制御信号PSRを送信して電空レギュレータ104aの吐出空気の圧力を制御し、制御信号PSLを送信して電空レギュレータ104bの吐出空気の圧力を制御する。なお、本実施形態では、リニアエンコーダ12が工作機械10に採用されているため、電空レギュレータ104a,104bの制御装置として数値制御装置11を用いている。しかし、リニアエンコーダ12が採用される装置やシステムに応じて、電空レギュレータ104a,104bを制御するための他の制御装置が用いられてもよい。制御装置は、CPUを有するプロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、記憶装置に格納されたプログラムと制御データ等に従って動作し、電空レギュレータ104a,104bを制御する。
【0035】
数値制御装置11は、センサユニット102b(検出ヘッド312)の移動方向の前方側に位置するハウジング301の空気注入口118に吐出する空気の圧力である前方圧力と、その後方側に位置するハウジング301の空気注入口118に吐出する空気の圧力である後方圧力に関し、前方圧力よりも後方圧力が高くなるように電空レギュレータ104a,104bを制御する。これについて、以下で具体的に説明する。
【0036】
数値制御装置11は、入力された運転プログラムや操作者からの指令位置に基づいて、センサユニット102bからフィードバックされる検出位置と指令位置との差分を無くするようモータ106へ制御電流を出力し、モータ106の回転軸を回転させる。モータ106の回転軸の回転に伴って、カップリング107を介して連結されたボールねじ108が回転し、回転を拘束されたボールねじナット109が軸方向へ移動する。これによって、ボールねじナット109と連結したテーブル110を所望の位置へ移動させることができる。よって、数値制御装置11は、テーブル110を所望の位置へ移動させる前に、指令位置と検出位置との差分から、センサユニット102bが、スケールユニット102aに対して、相対的に左右のいずれに移動することになるかを把握することができている。
【0037】
ここで、図1において、テーブル110を左方向へ移動させる指令位置となった場合、センサユニット102bもスケールユニット102aに対して、相対的に左方向へ移動することとなる。この状態となったら、数値制御装置11は、電空レギュレータ104aへの制御信号PSRにて、スケールユニット102a(ハウジング301)の右側の空気注入口118に導入するエアの圧力値(空気圧力値)を大きくする指令を出力し、逆に、電空レギュレータ104bへの制御信号PSLにて、スケールユニット102a(ハウジング301)の左側の空気注入口118に導入するエアの圧力値を小さくする指令を出力する。そして、テーブル110が指令位置へ到達したら、数値制御装置11は、各電空レギュレータ104a,104bのエア圧力値が均衡するように制御信号PSR,PSLを出力する。
【0038】
一方、図1において、テーブル110を右方向へ移動させる指令位置となった場合、電空レギュレータ104aへの制御信号PSRにて、スケールユニット102aの右側の空気注入口118に導入するエアの圧力値を小さくする指令を出力し、電空レギュレータ104bへの制御信号PSLにて、スケールユニット102aの左側の空気注入口118に導入するエアの圧力値を大きくする指令を出力する。
【0039】
ここで、空気圧力値の一例について説明する。リニアエンコーダ12の構造やサイズによっても異なるが、ハウジング301の2つの空気注入口118のそれぞれに、例えば0.03MPa程度のエア圧力値でエア導入する。よって、例えば、センサユニット102bの移動時にエア圧力値を大きくしたい側(移動方向の後方側)を0.05MPaとし、小さくしたい側(移動方向の前方側)を0.01MPaといった具合に制御信号PSR,PSLを出力するとよい。また、エア圧力値を相対的に小さくする側については、必ずしも移動していない時の均衡した0.03MPaより小さくする必要は無い。すなわち、0.03MPaのままであっても、エア圧力値を大きくする側(移動方向の後方側)がそれを超えていればよい。つまり、センサユニット102bが移動する側(移動方向の前方側)のスケールユニット102aの内室へ導入するエア圧力値が、逆側(移動方向の後方側)の内室のエア圧力値よりも小さくなるようにすればよい。
【0040】
すなわち、センサユニット102bが遠ざかる側(移動方向の後方側)のスケールユニット102a(ハウジング301)の内室に、負圧が発生しないようにエア圧力値を指令することが理想的と言える。負圧が発生する条件は、予め実験等によって測定しておくと、尚のこと理に適ったエア圧力値を指令できるであろう。なお、ここで示したエア圧力値は一例であり、エア圧力値は適宜変更することができる。
【0041】
以上説明した実施形態によれば、センサユニット102b(検出ヘッド312)が移動した際に、ハウジング301の検出ヘッド移動方向の後方側の内室で負圧が生じることを抑制できるため、開口310を介して、ハウジング301内へ汚染物質が入り込むことを抑制することができる。リニアエンコーダ内部へ汚染物質の入り込みを抑制することは、リニアエンコーダの検出不良に関する故障やアラーム発生といった事態の発生を低減することに繋がるため、メンテナンス費用や交換費用の削減も可能となる。
【0042】
なお、数値制御装置11(制御装置)は、センサユニット102bが移動していない時(停止時)に2つの空気注入口118に供給するエアの合計圧力値(停止時圧力値)に対して、それが移動している時(移動時)に2つの空気注入口118に供給するエアの合計圧力値(移動時圧力値)が大きくならないように、電空レギュレータ104a,104bを制御してもよい。すなわち、センサユニット102bの移動時に、エア流量を増やすことを抑制してもよい。これにより、圧縮空気を供給するコンプレッサのエア消費量を抑制することができ、エアフィルタユニット103のフィルタ汚れが進むことを抑制することができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のリニアエンコーダについて説明する。第2実施形態のリニアエンコーダは、上記した実施形態(第1実施形態)のリニアエンコーダと基本構成は同じであるが、センサユニット102bの移動速度に応じて、ハウジング301に供給する空気の圧力を変化させる点で異なる。
【0044】
具体的には、第2実施形態では、数値制御装置11は、センサユニット102bが遅い速度(第1速度)で移動する場合におけるハウジング301の検出ヘッド移動方向の後方側内室に供給する空気の圧力(後方圧力と言う)に比べて、センサユニット102bが速い速度(第2速度、第2速度>第1速度)で移動する場合における後方圧力の方が高くなるように電空レギュレータ104a,104bを制御する。
【0045】
例えば、数値制御装置11は、センサユニット102bの移動速度に比例させて、ハウジング301の検出ヘッド移動方向の後方側内室のエア圧力値(センサユニット102bの停止時のエア圧力値から高くする値)を大きくする。一例として、数値制御装置11は、テーブル110を移動させる送り速度について、例えば、1m/min当たり0.01MPaの比率で、ハウジング301の検出ヘッド移動方向の後方側内室のエア圧力値を大きくするように電空レギュレータ104a,104bへ指令を出力する。この第2実施形態においても、ハウジング301内へ汚染物質が入り込むことを効果的に抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではない。図1では、送り軸は1軸の形態で説明したが、3軸(X軸、Y軸、Z軸)等の形態であってもよい。また、送り機構は、ボールねじ108による駆動方式であったが、リニアモータ駆動方式でも構わない。リニアモータ駆動方式の方が、より高速化、高加減速化が可能なため、センサユニット102bの移動に伴うハウジング301内の負圧状態がより起きやすいので、上記した実施形態の効果が発揮されやすい。
【0047】
センサユニット102bの移動に伴うハウジング内の気圧低下、周辺環境の状態、対象システムの状態等を考慮して、制御装置がリニアエンコーダ102へ導入するエアの圧力を制御するものは、上記した構成要素を多少変化させたとしても、本願発明の範囲内にあると言える。
【符号の説明】
【0048】
10,100 工作機械、11,101 数値制御装置(制御装置)、12,102 リニアエンコーダ、102a スケールユニット、102b センサユニット、103 エアフィルタユニット、104a,104b 電空レギュレータ、105 ロータリエンコーダ、106 モータ、107 カップリング、108 ボールねじ、109 ボールねじナット、110 テーブル(制御対象物)、114 端部、118 空気注入口、204 圧力計付きレギュレータ、301 ハウジング(スケールカバー)、302 スケール、303 ゴム紐、304a,304b 防塵シール(シール部材)、305 走査ヘッド、306 発光ユニット、307 受光ユニット(光センサ素子)、308 連結部、309 保持部、310 開口、312 検出ヘッド。
図1
図2
図3