(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089863
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】太陽電池パネル
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20240627BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20240627BHJP
H02S 20/26 20140101ALI20240627BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L31/04 560
E04D13/18
H02S20/26
H02S20/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205359
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和雅
【テーマコード(参考)】
2E108
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2E108KK04
2E108MM05
2E108NN07
5F151AA02
5F151AA03
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5F251AA11
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
5F251JA13
(57)【要約】
【課題】屋根の重量の増加を抑制することが可能な太陽電池パネルを提供する。
【解決手段】建物の壁と共に収容空間を区画する屋根としての太陽電池パネル1であって、収容空間外420側の面である第一面と、収容空間内410側の面である第二面1Bとを有するフィルム状の太陽電池セル10と、第一面上に積層される第1封止材21と、第二面上に積層される第2封止材22と、を有し、太陽電池セルを封止する封止材と、第1封止材における太陽電池セル10とは反対側の面上に積層されるポリカーボネートを主成分とする第1シート23と、第2封止材22における太陽電池セル10とは反対側の面上に積層される第2シート24と、を備え、第1封止材21および第1シート23はいずれも透光性を有し、太陽電池パネル1は、収容空間を広げる方向に突出する凸部又は収容空間を狭める方向に突出する凹部の少なくとも一つを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁と共に収容空間を区画する屋根としての太陽電池パネルであって、
収容空間外側の面である第一面と、収容空間内側の面である第二面とを有するフィルム状の太陽電池セルと、
前記第一面上に積層される第1封止材と、前記第二面上に積層される第2封止材と、を有し、前記太陽電池セルを封止する封止材と、
前記第1封止材における前記太陽電池セルとは反対側の面上に積層されるポリカーボネートを主成分とする第1シートと、
前記第2封止材における前記太陽電池セルとは反対側の面上に積層される第2シートと、
を備え、
前記第1封止材および前記第1シートはいずれも透光性を有し、
当該太陽電池パネルは、前記収容空間を広げる方向に突出する凸部又は前記収容空間を狭める方向に突出する凹部の少なくとも一つを有する、
太陽電池パネル。
【請求項2】
前記第2シートは樹脂製である、請求項1に記載の太陽電池パネル。
【請求項3】
前記第1シートは前記収容空間外側の面に透光性を有する保護層を備える、請求項1に記載の太陽電池パネル。
【請求項4】
波板状または折板状である凹凸部を有し、当該凹凸部は前記凸部によって形成される、請求項1に記載の太陽電池パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルの構造として、たとえば、特開平10-308524号公報(特許文献1)等に記載される、規則的に起伏する波形の支持体表面に、多数の太陽電池セルを有する太陽電池フィルムが貼着されてなる太陽電池モジュールが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、工場等の屋根構造に対して、上記公報の太陽電池モジュールを導入した場合には、支持体の重量により既存の屋根に比べて太陽電池モジュール設置後の屋根の重量が増加する虞がある。一方で、耐震性能等の観点から、屋根質量を増加させることは好ましくない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、屋根の重量の増加を抑制することが可能な太陽電池パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の太陽電池パネルは、建物の壁と共に収容空間を区画する屋根としての太陽電池パネルであって、収容空間外側の面である第一面と、収容空間内側の面である第二面とを有するフィルム状の太陽電池セルと、上記第一面上に積層される第1封止材と、上記第二面上に積層される第2封止材と、を有し、上記太陽電池セルを封止する封止材と、上記第1封止材における上記太陽電池セルとは反対側の面上に積層されるポリカーボネートを主成分とする第1シートと、上記第2封止材における上記太陽電池セルとは反対側の面上に積層される第2シートと、を備え、上記第1封止材および上記第1シートはいずれも透光性を有し、当該太陽電池パネルは、上記収容空間を広げる方向に突出する凸部又は上記収容空間を狭める方向に突出する凹部の少なくとも一つを有する。
【発明の効果】
【0007】
この開示によれば、屋根の重量の増加を抑制することが可能な太陽電池パネルの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態の太陽電池パネルが用いられた工場の全体斜視図である。
【
図3】
図1中のIII-III線矢視端面図である。
【
図4】実施の形態の太陽電池パネルの外観を示す斜視図である。
【
図6】本実施の形態の太陽電池パネルが用いられた工場の変形例を示す
図1中のII-II線矢視に対応する断面図である。
【
図7】本実施の形態の太陽電池パネルが用いられた工場の他の変形例を示す
図1中のII-II線矢視に対応する断面図である。
【
図8】
図5中のVIIIで囲まれた領域の太陽電池パネルの断面図である。
【
図9】実施の形態の太陽電池パネルの重ね合わせ状態を示す第1図である。
【
図10】実施の形態の太陽電池パネルの重ね合わせ状態を示す第2図である。
【
図11】実施の形態の太陽電池パネルの工場屋根の梁への固定方法を示す模式図である。
【
図12】他の実施の形態の太陽電池パネルの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施の形態の太陽電池パネルについて、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0010】
以下に用いる図面中、Xで示す矢印およびYで示す矢印は同一の水平上での90度異なる方向を示し、Zで示す矢印は鉛直方向を示すものとする。
図4および
図12に示す太陽電池パネルは、Z方向において手前側から奥側に向かって上昇する方向に傾斜している状態を図示している。
【0011】
図1から
図3を参照して、本実施の形態の太陽電池パネル1が用いられた工場1000の概略構成について説明する。
図1は、工場の全体斜視図、
図2は、
図1中II-II線矢視端面図、
図3は、
図1中III-III線矢視端面図である。
【0012】
図1に示すように、建物としての工場1000は、壁300と太陽電池パネル1とを有する。建物としては工場に限らず店舗、倉庫等が挙げられる。壁300は、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303および第4壁部304を有する。第1壁部301と第2壁部302とは、台形であり、鉛直方向の一方の辺である長辺が他方の辺である短辺に比べて長くなっている。
【0013】
図2および
図3に示すように、第1壁部301の長辺と短辺とを繋ぐ一対の辺のうち短辺が地面側となるように接地されており、長辺は一方の辺から他方の辺に向けて傾斜している。第3壁部303と第4壁部304とは略矩形状であり、第3壁部303の方が第4壁部304に比べて鉛直方向の長さが長くなっている。
【0014】
第3壁部303は、第1壁部301および第2壁部302の長辺と接続されている。第4壁部304は、第1壁部301および第2壁部302の短辺と接続されている。第3壁部303の面は、第1壁部301および第2壁部302の長辺に沿って鉛直方向に延びている。第4壁部304の面は、第1壁部301および第2壁部302の短辺に沿って鉛直方向に延びている。
【0015】
第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304の鉛直方向上側に屋根としての太陽電池パネル1が設けられている。太陽電池パネル1は、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304の上辺と接続されている。
【0016】
太陽電池パネル1は、建物の壁300と共に工場1000の内部空間である収容空間400を区画している。太陽電池パネル1、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304で区画された領域が収容空間内410であり、太陽電池パネル1、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304で区画された収容空間内410の外の領域、つまり太陽電池パネル1の受光面100Aに対して鉛直方向上側の領域が収容空間外420である。
【0017】
(太陽電池パネル1)
図1および
図2を参照して太陽電池パネル1を説明する。太陽電池パネル1は、波板状であり凹凸部を有している。本実施の形態において、凹凸部は第1壁部301と第2壁部302とを結ぶ方向に連続して複数設けられた凸部1aを有する。凸部1aは、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304の上端を繋ぐ面(
図1中のS1)に対して、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304で区画された収容空間内410を広げる方向に突出している。太陽電池パネル1は、波板状に変えて折板状(
図12参照)であってもよい。
【0018】
(太陽電池パネル1)
図4および
図5を参照して、太陽電池パネル1の外観構成について説明する。
図4は、太陽電池パネル1の外観を示す斜視図、
図5は、
図4中のV-V線矢視部分断面図である。この太陽電池パネル1は、従来のスレート屋根に代わり、たとえば工場の屋根として設置される太陽電池パネルである。
【0019】
太陽電池パネル1は、一の方向(図示のY方向)に対して直交する方向(図示のX方向)での断面で見た場合に、受光面100A側および非受光面100B側に向けて交互に突出する凹凸部(凸部1a)であり、収容空間内410を広げる方向に突出する凸部1aが複数形成されている。具体的には、工場等において良く用いられるスレート屋根に採用される波型の形態を有している。太陽電池パネル1の凸部1aの数量は、特に制限はなく、少なくとも一つを有すればよい。
【0020】
本実施の太陽電池パネル1の全体の寸法は、縦方向(図示の前後方向)で、約2000mm、横方向(図示の左右方向)で、約1000mmである。
図2に示すように、波型の大きさは、波の1ピッチ(P)が、約150mm、波の高さ(h)が、約40mm、厚さは、約7mmである。
【0021】
たとえば、既存のスレート屋根の重量は、約10kg/m2であるのに対して、本実施の形態の太陽電池パネル1は、後述するように樹脂シートの重ね合わせで構成されていることから、約8kg/m2と、軽量化を図ることを可能としている。
【0022】
図6を参照して、太陽電池パネル1の凹凸部の第1の変形例について説明する。第1の変形例においては、太陽電池パネル1の凹凸部は凸部1aと凹部1bとが第1壁部と第2壁部とを繋ぐ方向に交互に複数連続して設けられている。凹部1bは、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304の上端を繋ぐ面(図中のS1)と、第1壁部301、第2壁部302、第3壁部303、および、第4壁部304とで区画された収容空間400を狭める方向に突出している。
【0023】
図6においては、凹凸部が凸部1aと凹部1bとが第1壁部301と第2壁部302とを繋ぐ方向に交互に複数連続して設けられているが、凹凸部は複数の凹部1bが連続して設けられてもよく、凸部1aと凹部1bとが非連続に複数設けられてもよい。非連続に設けられるとは、例えば太陽電池パネル1の一部が平板状に形成されており、平板状な部分を介して凸部1aや凹部1bが設けられる場合であってもよい。
【0024】
例えば、太陽電池パネル1の一部が平板状に形成される場合であってもよい。平板状に形成される場合は、平板状に形成される部分が凹凸部に挟まれる領域に限らない。例えば、太陽電池パネル1の周縁部が平板状に形成されてもよい。
【0025】
図7を参照して、太陽電池パネル1の凹凸部の第2の変形例について説明する。この太陽電池パネル1の凸部1cは、収容空間内410を広げる方向に段階的に突出する凸部であってもよい。
図7の凸部1cに変えて、凹部が収容空間内410を狭める方向に段階的に突出する凹部であってもよい。
【0026】
(太陽電池パネル1の積層構造)
図8を参照して、太陽電池パネル1の積層構造について説明する。太陽電池パネル1は、収容空間外420側の面である第一面と収容空間内410側の面である第二面とを有する太陽電池セル10と、太陽電池セル10を封止する封止材を有する。太陽電池セル10は、収容空間400の外側の面である第一面(受光面100A)と、収容空間400の内側の面である第二面(非受光面100B)とを有する。封止材は、太陽電池セル10の第一面側に積層される透明材料の第1封止材21と、第二面側上に積層される第2封止材22を有する。つまり、第1封止材21および第2封止材22により、太陽電池セル10を封止する封止材を構成する。透明材料の第1シート23は、第1封止材21における太陽電池セル10とは反対側の面上に積層される。第2シート24は、第2封止材22における太陽電池セル10とは反対側の面上に積層される。第1シート23は収容空間400の外側の面に透光性を有する保護層25を備える。太陽電池セル10の全体としての厚さは、約7mmである。
【0027】
第1シート23、第2シート24、第1封止材21、第2封止材22、太陽電池セル10は、それぞれが収容空間400を広げる方向に突出する凸部1aを複数有する形状に形成されている。つまり、一方の面側(受光面100A側)および他方の面側(非受光面100B側)に向けて交互に突出する凹凸形態に形成されている。さらに、それぞれが凹凸態様に形成された状態で形状が維持されるため、例えばフィルム状の太陽電池パネル1を凹凸態様に維持する目的としての支持体を必要としない。
【0028】
または、第1封止材21の一方の面(受光面100Aに対応する面、収容空間400外側の面)に保護層25が形成されており、太陽電池セル10を、保護層25が形成された第1封止材21および第2封止材22で封止した上で、第1シート23および第2シート24で挟み込み、その後、太陽電池セル10、第1封止材21、第2封止材22、第1シート23および第2シート24を収容空間400を広げる方向に突出する凸部1aが複数連続する凹凸部に曲げ変形することで太陽電池パネル1を形成してもよい。予め第1シート23の一方の面(受光面100Aに対応する面)に保護層25を形成した後に、凹凸部に曲げ変形した場合には、平板状の第1シート23に保護層25を形成できるため、保護層25を形成する工程を容易にすることができる。
【0029】
または、太陽電池セル10、第1封止材21、第2封止材22、第1シート23および第2シート24を、収容空間400を広げる方向に突出する凸部1a複数連続して設けられるように受光面側および非受光面側に向けて交互に突出する凹凸部に曲げ変形し、その後、保護層25を第1シート23に形成してもよい。
【0030】
(太陽電池セル10)
太陽電池セル10には、従来から公知の太陽電池フィルムを用いることが可能であり、たとえば、シリコン型(結晶シリコン型、微結晶シリコン型、アモルファスシリコン型等)、化合物半導体型(InGaAs型、GaAs型、CIGS型、CZTS型等)、色素増感型、有機薄膜型等、任意の太陽電池フィルムが用いられる。なお、軽量化および薄型化の観点からは、アモルファスシリコン型、CIGS型、または、ペロブスカイト型を用いることが好ましい。太陽電池セル10の厚さは、好ましくは5mm以下、0.01mm~1mm、0.05mm~0.5mm、約0.1mm程度である。太陽電池セル10を収容空間400を広げる方向に突出する凸部1aが複数連続して設けられるように曲げ変形可能な厚みであれば良い。
【0031】
(封止材)
第1封止材21および第2封止材22には、透光性を有し太陽光を透過可能なEVA、POE(ポリオレフィン)、アイオノマー等が用いられる。第1封止材21および第2封止材22の厚さは、好ましくは10mm以下、5mm以下、0.01mm~1mm、0.05mm~0.5mm、約0.1~0.5mmである。好ましくは太陽電池セル10の厚さの1~5倍程度である。本実施の形態において、第1封止材21および第2封止材22は透明である。なお、ここで透明とは、透過率が高いことを指し、好ましくは透過率が88%以上、88%~92%である。透過率が無機ガラスやポリカーボネートの透過率と同等であることが好ましい。太陽電池セル10に対して受光面側に配置される部材の透過率は発電効率に影響する。
【0032】
(第1シート23および第2シート24)
第1シート23および第2シート24は、透光性を有し太陽光を透過可能な樹脂で構成されている。具体的にはポリカーボネート(PC)樹脂を主成分とする樹脂で構成されている。ポリカーボネート(PC)樹脂は、ガラスに比べて軽量であるため、第1シート23および第2シート24としてポリカーボネートを主成分とする樹脂を用いることで、太陽電池パネル1を軽量化できる。第1シート23および第2シート24の厚さは、いずれも約3mmである。本実施の形態において、第1シート23および第2シート24は透明である。第1シート23の透光性は、第2シート24の透光性に比べて高くてもよい。
【0033】
なお、第2シート24はポリカーボネート(PC)樹脂を主成分とする樹脂製でなくてもよい。さらに、第2シート24は、樹脂製でなくてもよい。しかし、第1シート23との熱膨張差を小さくしやすいため、第2シート24が樹脂製であることが好ましい。同様に、第1シート23との熱膨張差を更に小さくするため、第2シート24がポリカーボネート(PC)樹脂を主成分とする樹脂製であることが好ましい。第1シート23と第2シート24との熱膨張差が小さいと、太陽電池パネル1の熱膨張時の面外変形を抑制することができる。
【0034】
第1シート23と第2シート24との厚みは同じでなくてもよい。第1シート23と第2シート24の厚みが同等の場合、熱膨張差を調整しやすい。特に、第1シート23と第2シート24が同じ材質からなる場合には、厚みを同等にすることで熱膨張差をなくすことができる。
【0035】
第1シート23の厚みは3mmに限らないが、3mm以上であることが好ましい。太陽電池セル10に対して受光面側に配置される第1シート23が3mm以上である場合、たとえば、雹が降った場合に雹の衝突により第1シート23の破損防止を期待できる。
【0036】
(保護層25)
保護層25には、透光性を有し、第1シート23の紫外線等による劣化を防止し、飛来物による傷つきを防止するための層であり、たとえば、シリコン系化合物を含有するシリコン系の紫外線硬化型のアクリル樹脂からなるコーティグ層等が用いられる。保護層25の厚さは、約10~50μmである。本実施の形態において、保護層25は透明である。保護層25はコーティング層ではなく、保護シートを貼った形態でもよい。
【0037】
保護層25は、紫外線等による劣化を防ぐ機能と飛来物による傷付きを防止する機能の両方を兼ね備えているのが好ましいが、いずれか一方の機能のみを有する材料を用いてもよい。また、上記2つの機能を発揮させる必要がない場合には、太陽電池パネル1に保護層25を設ける必要はない。
【0038】
第1封止材21および第1シート23は、太陽電池セル10に対して受光面側に配置されることから、透光性を有することすなわち太陽光を透過可能であることが必須となるが、第2封止材22および第2シート24は、太陽電池セル10に対して非受光面側に配置されることから、透光性を有することは必須ではない。しかし、工場の内部に太陽光を取り込みたい箇所については、透光性を有する封止材樹脂を第2封止材22として用いてもよく、透光性を有するシートを第2シート24として用いてもよい。
【0039】
(屋根への施工)
次に、
図9から
図11を参照して、上記構成を備える太陽電池パネル1の工場の屋根への施工について説明する。
図9は、太陽電池パネル1の重ね合わせ状態を示す第1図、
図10は、太陽電池パネル1の重ね合わせ状態を示す第2図、
図11は、太陽電池パネル1の工場屋根の梁への固定方法を示す模式図である。
【0040】
上記構成を備える太陽電池パネル1は、受光面側および非受光面側に向けて交互に突出する凹凸部に形成されているため、例えば既存のスレート屋根の上に太陽電池パネルを設置する場合に比べ、スレート屋根自体を太陽電池パネル1と置き換えることが可能であり工場屋根に施工した場合の重量増加を抑制できる。
【0041】
図9を参照して、従来のスレート瓦と同様に、太陽電池パネル1を工場の屋根として施工する場合には、太陽電池パネル1の周縁部においては、隣り合う太陽電池パネル1同士が重ね合わされる領域(図中のWで示す領域)が生じる。この領域では、受光面100A側(上側)に位置する太陽電池パネル1により非受光面100B側に位置する太陽電池パネル1に入射する太陽光が遮られることから、非受光面側に位置する太陽電池パネル1の重ね合わされる領域には、太陽電池セル10を設けなくてもよい。
【0042】
なお、施工の容易性から、全て同じ形態の太陽電池パネル1を用いる場合には、非受光面100B側に位置する太陽電池パネル1の重ね合わされる領域にも、太陽電池セル10が設けられていてもよい。
【0043】
または、隣り合う太陽電池パネル1同士が重ね合わされることなく、突合わされるように施工することで、太陽電池パネル1の全面を有効に活用することができる。
【0044】
図10を参照して、隣接配置される太陽電池パネル1の電気配線については、太陽電池パネル1の非受光面側に配線ケーブル100を配置することで、太陽電池パネル1の受光面側に配線ケーブル100の影が発生することを防止することができる。なお、一つの太陽電池パネル1の中においても、非受光面100B側に配線ケーブル100を配置する構成を採用してもよい。
【0045】
太陽電池パネル1の受光面側に配線ケーブル100の影が発生することが問題にならない場合には、太陽電池パネル1の受光面側に配線ケーブル100を配置してもよい。
【0046】
図11を参照して、太陽電池パネル1の工場屋根の梁200へ固定方法については、太陽電池パネル1に予め固定用の孔Bを設け、孔Bに図示しない締結部材を挿入し梁200と締結することで工場屋根に設置される。梁200は建築物において水平方向の力を支える部材である。孔Bの周囲には太陽電池セル10を設けないようにしておくとよい。孔Bの形状は、丸孔に限定されず、長孔、矩形孔等の採用が可能である。さらに、孔Bを設けることなく、太陽電池パネル1のフック、両面テープ等の係合部材を設け、梁200側にも対応する位置に係合部材を設けて、太陽電池パネル1を梁200へ固定してもよい。
【0047】
太陽電池パネル1が梁200に固定されることで固定されるため、例えばスレート屋根や太陽電池パネル1が載置される支持体の上に太陽電池パネル1を設置する必要がなくなる。つまり、梁200に固定された太陽電池パネル1自体が屋根の役割を担うことができる。そのため、太陽電池パネル1を工場屋根に施工した場合の質量増加を抑制できる。
【0048】
図11では、梁200に太陽電池パネル1を固定する場合を図示したが、太陽電池パネル1を屋根に固定可能であれば、梁200に固定される態様に限らず、たとえば、柱等、その他の工場の構造体に固定される態様であってもよい。
【0049】
このように、本開示の太陽電池パネル1によれば、従来のスレート瓦に比べで軽量化を図りながら、太陽電池パネル1を工場の屋根部材として用いることができる。これにより、新設の工場の屋根として用いることができるとともに、既存の工場の屋根のスレート瓦に代えて、本開示の太陽電池パネル1を用いることができる。その結果、稼働中の工場であっても、工場の稼働に影響を与えずに、工場の屋根に施工することが可能な太陽電池パネルの提供を可能とする。
【0050】
(他の形態の太陽電池パネル1A)
図12を参照して、他の形態の太陽電池パネル1Aについて説明する。
図12は、他の実施の形態の太陽電池パネル1Aの外観を示す斜視図である。上述した太陽電池パネル1は、一の方向(図示のY方向)に対して直交する方向(図示のX方向)での断面(受光方向に沿った断面で見た場合)で見た場合に、受光面100A側および非受光面100B側に向けて交互に突出する凹凸部の一例として波型の形態を採用したが、太陽電池パネル1Aは、折板の形態を採用している。この形態の太陽電池パネル1Aであっても太陽電池パネル1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
本実施の形態では、一例として、工場の屋根材として本実施の形態の太陽電池パネルを施工する場合について説明したが、太陽電池パネル1が屋根材として施工される建築物は工場に限らない。
【0052】
太陽電池パネル1が屋根材として施工される建築物が工場である場合は、屋根が大面積であるため従来の太陽電池パネルを施工する場合に比べ重量増加抑制の効果が大きい。
【0053】
他方、従来、工場の屋根材として太陽電池パネルを載置する場合は、大規模な工場屋根の強度補強が必要になる。稼働中の工場に対して屋根に耐荷重を増やす補強工事、屋根の張替えを行なうことが困難であり、工場を非稼働にする必要が生じる。
【0054】
これに対し、本実施の形態の太陽電池パネル1は、既存の屋根材に比べて質量が大きくなく、太陽電池パネル1を屋根材として用いることができるため、耐荷重を増やすための補強工事を必要としない。
【0055】
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0056】
(態様I)
建物の壁と共に収容空間を区画する屋根としての太陽電池パネルであって、
収容空間外側の面である第一面と、収容空間内側の面である第二面とを有するフィルム状の太陽電池セルと、
上記第一面上に積層される第1封止材と、上記第二面上に積層される第2封止材と、を有し、上記太陽電池セルを封止する封止材と、
上記第1封止材における上記太陽電池セルとは反対側の面上に積層されるポリカーボネートを主成分とする第1シートと、
上記第2封止材における上記太陽電池セルとは反対側の面上に積層される第2シートと、
を備え、
上記第1封止材および上記第1シートはいずれも透光性を有し、
当該太陽電池パネルは、上記収容空間を広げる方向に突出する凸部または上記収容空間を狭める方向に突出する凹部の少なくとも一つを有する、
太陽電池パネル。
【0057】
(態様II)
上記第2シートは樹脂製である、態様Iに記載の太陽電池パネル。
【0058】
(態様III)
上記第1シートは上記収容空間外側の面に透光性を有する保護層を備える、態様Iまたは態様IIに記載の太陽電池パネル。
【0059】
(態様IV)
波板状または折板状である凹凸部を有し、当該凹凸部は上記凸部によって形成される、態様Iから態様IIIのいずれかに記載の太陽電池パネル。
【0060】
以上、本開示の太陽電池パネルについて説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 太陽電池パネル、1a,1c 凸部、1b 凹部、10 太陽電池セル、21 第1封止材、22 第2封止材、23 第1シート、24 第2シート、25 保護層、100 配線ケーブル、100A 受光面、100B 非受光面、200 梁、300 壁、301 第1壁部、302 第2壁部、303 第3壁部、304 第4壁部、400 収容空間、410 収容空間内、420 収容空間外、1000 工場。