(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089874
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240627BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20240627BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08J5/18 CEY
B29C39/24
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205378
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 康昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐希
(72)【発明者】
【氏名】市村 雅弘
【テーマコード(参考)】
4F071
4F204
4J127
【Fターム(参考)】
4F071AA33
4F071AC07A
4F071AC15A
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4F071AF17
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4J127AA04
4J127BB031
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4J127BC021
4J127BD411
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4J127CC183
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れ、且つ取り扱いやすさ(屈曲性)にも優れるフィルム、及びフィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山と、を有するフィルムであって、JIS B0601:2001に準拠した前記谷の最大谷深さ(Rv)と、前記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、1.50μm<Rv<8.00μm、0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90、及び30μm<RSm<300μmを満たし、前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052GPa~1.500GPaであり、前記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山と、を有するフィルムであって、
JIS B0601:2001に準拠した前記谷の最大谷深さ(Rv)と、前記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、
1.50μm<Rv<8.00μm
0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90
30μm<RSm<300μm
を満たし、
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052GPa~1.500GPaであり、
前記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、
フィルム。
【請求項2】
前記表面に前記谷及び/又は山を形成するための微粒子を含まない、
請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.150GPa~1.000GPaである、
請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記UV硬化性樹脂は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含む、
請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル樹脂(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含み、
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマー、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートモノマー、ベンジル(メタ)アクリレートモノマー、ステアリル(メタ)アクリレートモノマー、イソデシル(メタ)アクリレートモノマー、イソクチル(メタ)アクリレートモノマー、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートモノマー、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレートモノマー、イソアミル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含む、
請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムは、光重合開始剤をさらに含む、
請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項7】
ペン入力デバイス用フィルムである、
請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項8】
UV硬化性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、ポジ型を用いた転写によりフィルムの表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山とを形成する工程と、を含む、フィルムの製造方法であって、
前記フィルムは、JIS B0601:2001に準拠した前記谷の最大谷深さ(Rv)と、前記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、
1.50μm<Rv<8.00μm
0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90
30μm<RSm<300μm
を満たし、
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052GPa~1.500GPaであり、
前記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、
フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル等の情報入力用パネルを介してスマートフォン、ノートパソコン、タブレット等の情報機器に情報入力することが普及してきている。特に、ペンタブレット、液晶タブレット、タブレット型パソコン、電子ペーパー等の、スタイラスペン等のペン型ポインティングデバイスによって情報入力することが可能なペン入力デバイスにおいて、ペン型ポインティングデバイスは、文字を書く、絵を描画する、等の用途に利用されている。
【0003】
ペン入力デバイスが様々な用途に利用されるようになってきたことに伴い、ペン型ポインティングデバイスを使用した入力方法について、様々な高度な機能が要求されるようになってきた。例えば、ペン入力デバイスに、直接ペン型ポインティングデバイスを使用すると、ペン先が滑って書き味が悪いため、適度な筆記抵抗を与えて紙に鉛筆で書くような書き味を付加する機能が要求されている。
【0004】
上記書き味を付加するために、種々のペン入力デバイス用フィルムが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1にはハードコート層にシリカ微粒子を含有させ、表面に凸形状を有するタッチパネル用積層フィルムが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、樹脂の形状により表面に凸形状を与える触感改良フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-153298号
【特許文献2】特開2014-137640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のタッチパネル用積層フィルムは、ペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際に、ハードコート層上のシリカ微粒子が欠落しやすく、フィルムの表面に傷がつきやすい、という問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の触感改良フィルムは、ペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際に、樹脂の凸部分が欠落しやすく、フィルムの表面が傷つきやすい(即ち、耐擦過性に劣る)という問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れ、且つ取り扱いやすさ(屈曲性)にも優れるフィルム、及びフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山と、を有するフィルムであって、JIS B0601:2001に準拠した上記谷の最大谷深さ(Rv)と、上記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、1.50μm<Rv<8.00μm、0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90、及び30μm<RSm<300μmを満たし、上記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052~1.500GPaであり、上記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、フィルムを用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)
表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山と、を有するフィルムであって、
JIS B0601:2001に準拠した前記谷の最大谷深さ(Rv)と、前記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、
1.50μm<Rv<8.00μm
0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90
30μm<RSm<300μm
を満たし、
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052GPa~1.500GPaであり、
前記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、
フィルム。
(2)
前記表面に前記谷及び/又は山を形成するための微粒子を含まない、
(1)に記載のフィルム。
(3)
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.150GPa~1.000GPaである、
(1)又は(2)に記載のフィルム。
(4)
前記UV硬化性樹脂は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含む、
(1)又は(2)に記載のフィルム。
(5)
前記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル樹脂(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含み、
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマー、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートモノマー、ベンジル(メタ)アクリレートモノマー、ステアリル(メタ)アクリレートモノマー、イソデシル(メタ)アクリレートモノマー、イソクチル(メタ)アクリレートモノマー、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートモノマー、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレートモノマー、イソアミル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含む、
(4)に記載のフィルム。
(6)
前記フィルムは、光重合開始剤をさらに含む、
(1)又は(2)に記載のフィルム。
(7)
ペン入力デバイス用フィルムである、
(1)又は(2)に記載のフィルム。
(8)
UV硬化性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、ポジ型を用いた転写によりフィルムの表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山とを形成する工程と、を含む、フィルムの製造方法であって、
前記フィルムは、JIS B0601:2001に準拠した前記谷の最大谷深さ(Rv)と、前記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、
1.50μm<Rv<8.00μm
0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90
30μm<RSm<300μm
を満たし、
前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052GPa~1.500GPaであり、
前記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む、
フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れ、且つ取り扱いやすさ(屈曲性)にも優れるフィルム、及びフィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが可能である。数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
【0015】
1.フィルム
本実施形態に係るフィルムは、表面にJIS B0601:2001に準拠した谷と山と、を有するフィルムであって、JIS B0601:2001に準拠した上記谷の最大谷深さ(Rv)と、上記山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、1.50μm<Rv<8.00μm、0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90、及び30μm<RSm<300μmを満たし、前記フィルムの貯蔵弾性率は、0.052~1.500GPaであり、上記フィルムは、UV硬化性樹脂を含む。
【0016】
本実施形態に係るフィルムは、特に限定されないが、例えば、様々な形状(曲面、平面等)、及び様々な材質(ガラス、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂等)の基材に対して貼り付けて使用される。
【0017】
フィルムが1.50μm<Rv<8.00μm、0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90、30μm<RSm<300μmの関係性を満たすことで、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある。また、フィルムの貯蔵弾性率が、0.052~1.500GPaであることで、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。また、UV硬化性樹脂を含むことにより耐擦過性に優れ、且つ成形性に優れる傾向にある。
【0018】
フィルムが1.50μm<Rv<8.00μm、0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90、30μm<RSm<300μmの関係性を満たすことで、耐擦過性に優れる傾向にある要因は、フィルムの表面にJIS B0601:2001に準拠した山であって大きな山が形成されることを抑制することにより、フィルムの表面が摩擦により一部又は全て欠落し、フィルムの表面に傷がつくことを抑制するためと考えられる。また、上述した関係性を満たすことで、フィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある要因は、JIS B0601:2001に準拠した谷であって適度な大きさの谷が形成されることを促進することにより、フィルムが貼り付けられたペン入力デバイスを介してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際に、適度な抵抗を与えるためであると考えられる。但し、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある要因はこれに限定されない。
【0019】
フィルムの貯蔵弾性率が0.052~1.500GPaであることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。フィルムの貯蔵弾性率が0.052GPa以上であることで、フィルムが適度な硬さを発現する。これにより、フィルムが摩擦により一部又は全て欠落し、フィルムの表面に傷がつくことを抑制することが出来る(即ち、耐擦過性に優れる)。また、フィルムの貯蔵弾性率が1.500GPa以下であることで、フィルムが適度な柔軟性を発現する。これにより、様々な形状(曲面、平面等)、様々な材質(ガラス、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂等)の基材に対して、フィルムを表面に割れを生じさせることなく、貼合させることが出来る(即ち、耐屈曲性に優れる)。但し、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある要因はこれに限定されない。
【0020】
本実施形態のフィルムは、耐擦過性、フィルムが貼り付けられたペン入力デバイスを介してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味、及び屈曲性に優れる傾向にあることから、ペン入力デバイス用フィルムとして好適に用いられる。ペン入力デバイスとしては、スタイラスペン等のペン型ポインティングデバイスによって情報入力することが可能な表示装置であれば特に限定されないが、例えば、ペンタブレット、液晶タブレット、タブレット型パソコン、電子ペーパー等が挙げられる。
【0021】
以下、本実施形態のフィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)の各成分についてそれぞれ詳説するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0022】
フィルムは、UV硬化性樹脂組成物を原料として、後述する方法によって製造される。UV硬化性樹脂組成物は、下記で詳説するUV硬化性樹脂を含み、光重合開始剤及びその他の添加剤を含んでもよい。
【0023】
1.1.UV硬化性樹脂
本実施形態のUV硬化性樹脂は、UV照射により硬化する樹脂を意味する。UV硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーや(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができ、これらは、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(メタ)アクリレートオリゴマーの具体的な構造としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル樹脂(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、アルカン(メタ)アクリレートオリゴマー及びアルキレングリコール(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。このなかでも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル樹脂(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことがさらに好ましい。(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、屈曲性が向上する傾向にある。
【0025】
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレートオリゴマーに対して相溶性を有するものが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーの具体的な構造としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレートモノマー、エチル(メタ)アクリレートモノマー、プロピル(メタ)アクリレートモノマー、イソプロピル(メタ)アクリレートモノマー、ブチル(メタ)アクリレートモノマー、イソアミル(メタ)アクリレートモノマー、ヘキシル(メタ)アクリレートモノマー、2-エチル(メタ)アクリレートモノマー、イソクチル(メタ)アクリレートモノマー、イソデシル(メタ)アクリレートモノマー、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー、ステアリル(メタ)アクリレートモノマー、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、シクロヘキシル(メタ)アクリレートモノマー、ベンジルアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマー、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートモノマー、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートモノマー、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレートモノマー等の含エーテル基アクリレートモノマーが挙げられる。このなかでも、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマー、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートモノマー、ベンジル(メタ)アクリレートモノマー、ステアリル(メタ)アクリレートモノマー、イソデシル(メタ)アクリレートモノマー、イソクチル(メタ)アクリレートモノマー、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートモノマー、ラウリル(メタ)アクリレートモノマー、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレートモノマー、イソアミル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマー、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1種以上を含むことがさらに好ましい。(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、フィルムの貯蔵弾性率、屈折率、耐久性、粘度などの物性を好適な範囲にすることができる。
【0026】
低粘度の(メタ)アクリレートモノマーは、UV硬化性樹脂組成物の希釈に好適に用いられる。低粘度の(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマー、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。本明細書において、低粘度の(メタ)アクリレートモノマーとは、25℃での粘度が2Pa・s以下の(メタ)アクリレートモノマーをいう。
【0027】
ガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリレートモノマーは、UV硬化性樹脂組成物の貯蔵弾性率を増加させるために好適に用いられる。ガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノマー、イソボルニル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0028】
ガラス転移温度が5℃以下である(メタ)アクリレートモノマーは、UV硬化性樹脂組成物の貯蔵弾性率を低下させるために好適に用いられる。ガラス転移温度が5℃以下である(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0029】
多官能である(メタ)アクリレートモノマーは、UV硬化性樹脂組成物の架橋密度を調整し、貯蔵弾性率を増加させるために好適に用いられる。本明細書において、多官能である(メタ)アクリレートモノマーとは、1つの分子中に同一又は異なる構造の官能基を2つ以上有する(メタ)アクリレートモノマーをいう。官能基としては特に限定されないが、例えば、アクリロイル基、エポキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0030】
多官能である(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2官能であるトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマー、6官能であるジペンタエリストールヘキサアクリレートモノマーが挙げられる。
【0031】
プラスチックに対して溶解性がある(メタ)アクリレートモノマーは、後述する基材フィルムとの接着性に優れるために好適に用いられる。プラスチックに対して溶解性がある(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0032】
UV硬化性樹脂の含有量は、UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは、45~99質量%であり、50~99質量%であり、60~99質量%であり、70~99質量%であり、80~99質量%である。UV硬化性樹脂の含有量が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0033】
(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは、15.0~70.0質量%であり、20.0~65.0質量%であり、30.0~60.0質量%であり、33.0~55.0質量%であり、35.0~50.0質量%である。(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0034】
(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、UV硬化性樹脂の固形分総量に対して、好ましくは、20.0~80.0質量%であり、25.0~70.0質量%であり、30.0~60.0質量%であり、33.0~50.0質量%であり、35.0~50.0質量%である。(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0035】
(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは、30.0~80.0質量%であり、40.0~70.0質量%であり、50.0~65.0質量%であり、50.0~60.0質量%である。(メタ)アクリレートモノマーの含有量が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0036】
(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、UV硬化性樹脂の固形分総量に対して、好ましくは、35.0~85.0質量%であり、40.0~70.0質量%であり、50.0~67.0質量%であり、50.0~65.0質量%である。(メタ)アクリレートモノマーの含有量が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0037】
1.2.光重合開始剤
本実施形態のフィルムは、光重合開始剤を含むことが好ましい。本実施形態の光重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系、アシルホスフィンオキサイド系、ベンゾインベンゾエート系、α-アシロキシムエステル系等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等の硫黄化合物、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等の燐化合物等を挙げることができ、これらは、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
光重合開始剤の具体的な構造としては、特に限定されないが、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを挙げることができる。
【0039】
光重合開始剤の含有量は、UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは、0.1~10質量%であり、0.5~8質量%であり、1~5質量%である。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることにより、硬化速度、屈曲性及び耐擦過性に優れる傾向にある。
【0040】
1.3.その他の添加剤
本実施形態のフィルムは、上記の各成分の他に、従来のフィルムに用いられ得る公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、着色剤、酸化防止剤、光重合促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、充填剤、粘着剤、その他の添加剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
1.4.その他
本実施形態のフィルムはUV硬化性樹脂組成物からなる単層フィルムであってもよく、UV硬化性樹脂組成物からなる表面層フィルムと、前記表面層フィルムを支持する基材フィルムと、からなる積層フィルムであってもよい。本実施形態のフィルムを基材に貼合する方法は特に限定されないが、例えば単層フィルムを基材に直接貼合する方法、積層フィルムの基材フィルムと基材を、粘着剤を介して貼合する方法等が挙げられる。積層フィルムの場合、上述の各成分は、表面層フィルムの各成分である。ここで基材とは、特に限定されないが、例えば、ペン入力デバイスの表面の部材であり、具体的には、ガラス、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂等である。基材フィルムの成分は、特に限定されないが、例えば上述のUV硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、及び熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート、熱可塑性ポリイミド、セルロースアセテート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。
【0044】
基材フィルムは、上記の各成分の他に、従来のフィルムに用いられ得る公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、着色剤、安定化剤、難燃剤、充填剤、粘着剤、その他の添加剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
2.フィルムの特性
以下、本実施形態のフィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)の各特性についてそれぞれ詳説するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0046】
2.1.表面構造
フィルムの表面には、凹凸形状が形成されており、ここで凹形状は、JIS B0601:2001に準拠した谷であり、凸形状は、JIS B0601:2001に準拠した山である。また、JIS B0601:2001に準拠した要素の平均長さ(RSm)は、谷と谷との間の平均長さである。
【0047】
JIS B0601:2001に準拠した最大谷深さ(Rv)は、1.50μm<Rv<8.00μmであり、好ましくは、2.00μm<Rv<7.50μmであり、2.50μm<Rv<7.00μmである。Rvが上記範囲であることにより、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある。JIS B0601:2001に準拠した最大谷深さ(Rv)は、JIS B0601:2001に準拠して測定できる。より具体的には、実施例に記載された方法で測定できる。
【0048】
JIS B0601:2001に準拠した最大山高さ(Rp)は、好ましくは、0.01μm<Rp<1.20μmであり、0.01μm<Rp<1.00μmであり、0.01μm<Rp<0.90μmである。Rpが上記範囲であることにより、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある。JIS B0601:2001に準拠した最大谷深さ(Rv)は、JIS B0601:2001に準拠して測定できる。より具体的には、実施例に記載された方法で測定できる。
【0049】
最大谷深さ(Rv)と最大山高さ(Rp)と、は0.80<Rv/(Rv+Rp)<0.90の関係性を満たし、好ましくは0.81<Rv/(Rv+Rp)<0.90である。Rv/(Rv+Rp)が上記関係性を満たすことにより、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある。
【0050】
JIS B0601:2001に準拠した要素の平均長さ(RSm)は、30μm<RSm<300μmであり、好ましくは、30μm<RSm<200μmであり、30μm<RSm<150μmであり、30μm<RSm<100μmであり、30μm<RSm<90μmである。RSmが上記範囲であることにより、耐擦過性及びフィルムが貼り付けられたペン入力デバイスに対してペン型ポインティングデバイスにより情報入力する際の書き味に優れる傾向にある。JIS B0601:2001に準拠した最大谷深さ(RSm)は、JIS B0601:2001に準拠して測定できる。より具体的には、実施例に記載された方法で測定できる。
【0051】
フィルムの表面構造は、フィルムの表面に微粒子を含んで形成されてもよく、フィルムの表面に微粒子を含まないで形成されてもよい。耐擦過性を向上させる観点からは、フィルムの表面に微粒子を含まないで形成されることが好ましい。
【0052】
Rv,Rp、及びRSmを制御する方法は、特に限定されないが、例えば、後述するフィルムの製造方法において、ポジ型の表面に固定された無機及び/又は有機微粒子の材質、粒径等を調整する方法が挙げられる。
【0053】
2.2.貯蔵弾性率
フィルムの貯蔵弾性率は、0.052~1.500GPaであり、好ましくは、0.080~1.300GPaであり、0.150~1.000GPaであり、0.150~0.900GPaである。フィルムの貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。フィルムの貯蔵弾性率は、公知の方法により測定することができる。より具体的には、実施例に記載された方法で測定できる。また、本実施形態のフィルムが積層フィルムである場合、貯蔵弾性率は表面層フィルムの貯蔵弾性率である。
【0054】
フィルムの貯蔵弾性率を制御する方法は、特に限定されないが、例えば、UV硬化性樹脂組成物の組成を制御する方法を挙げることができる。
【0055】
2.3.厚さ
本実施形態のフィルムが単層フィルムである場合、本実施形態のフィルムの平均厚さは、特に限定されないが、例えば20~800μmであり、50~500μmであり、75~300μmであり、100~200μmである。フィルムの厚さが上記範囲であることにより、フィルムは耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0056】
本実施形態のフィルムが、UV硬化性樹脂組成物からなる表面層フィルムと、表面層フィルムを支持する基材フィルムと、からなる積層フィルムである場合、基材フィルムの平均厚さは、特に限定されないが、例えば1~500μmであり、50~400μmであり、100~300μmである。また、表面層フィルムの平均厚さは、特に限定されないが、例えば10~300μmであり、50~250μmであり、75~200μmであり、75~150μmである。フィルムの表面層フィルムと基材フィルムの厚さが上記範囲であることにより、本実施形態のフィルムは、耐擦過性及び屈曲性に優れる傾向にある。
【0057】
フィルムの厚さは、公知の方法により測定することができる。特に限定されないが、例えば、マイクロメーターを用いて測定する。
【0058】
3.フィルムの製造方法
本実施形態のフィルムの製造方法は、UV硬化性樹脂組成物を塗布する塗布工程、及びポジ型を用いた転写によりフィルムの表面構造を形成するポジ型転写工程を有する。
【0059】
3.1.塗布工程
本実施形態に係るフィルムが単層フィルムの場合、特に限定されないが、例えば、UV透過性の基材上に未硬化のUV硬化性樹脂組成物を塗布する。本実施形態に係るフィルムがUV硬化性樹脂組成物からなる表面層フィルムと、表面層フィルムを支持する基材フィルムと、からなる積層フィルムである場合、特に限定されないが、例えば、基材フィルム上に未硬化のUV硬化性樹脂組成物を塗布する。
【0060】
UV透過性とは、特に限定されないが、例えば、波長365nmの紫外線を10%以上透過し、30%以上透過し、50%以上透過し、又は、70%以上透過する性質である。
【0061】
未硬化のUV硬化性樹脂組成物は、公知の方法で塗布される。塗布の方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコート、リバースコート、コンマコート、ダイコート、バーコート、カーテンフローコート、ローラーコート、スプレー、エアレススプレー、ホットスプレーが挙げられる。
【0062】
塗布工程は、UV硬化性樹脂組成物を溶媒で希釈してから行ってもよい。溶媒は、特に限定されないが、例えば、無極性溶媒であってもよく、極性溶媒であってもよい。
【0063】
3.2.ポジ型転写工程
ポジ型は、本実施形態に係るフィルムを作製するための型であり、表面領域に凹凸形状を有する。ポジ型の表面領域に凹凸形状を与える方法としては、特に限定されないが、例えば、無機及び/又は有機微粒子をポジ型の表面領域に固定する方法、ポジ型の表面領域が凹凸形状を有するようにポジ型を作製する方法が挙げられる。
【0064】
ポジ型は、単層構造でもよく、複層構造でもよい。複層構造の場合は、基材層、基材層上の粗面層、粗面層上の離型層を含んでもよく、粗面層と離型層とが、ポジ型の表面領域を構成する。粗面層は、ポジ型の表面領域に凹凸形状を与え、離型層は、後述するフィルムの製造方法において、ポジ型を脱型しやすくする。
【0065】
ポジ型が単層構造であるとき、特に限定されないが、例えば、1.1.で詳説したUV硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱可塑性樹脂、及び/又は金属やガラスなどの無機材料を含む。
【0066】
ポジ型が複層構造であるとき、基材層は、特に限定されないが、例えば、1.1.で詳説したUV硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱可塑性樹脂、及び/又は金属やガラスなどの無機材料を含む。
【0067】
ポジ型が複層構造であるとき、粗面層は、特に限定されないが、例えば、1.1.で詳説したUV硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱可塑性樹脂、及び/又は金属やガラスなどの無機材料を含み、無機及び/又は有機微粒子を含んでもよい。
【0068】
ポジ型が複層構造であるとき、離型層は、特に限定されないが、例えば、1.1.で詳説したUV硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱硬化性樹脂、1.4.で詳説した熱可塑性樹脂、及び/又は金属やガラスなどの無機材料を含み、シリコーン系離型剤等の離型剤を含んでもよい。
【0069】
ポジ型の表面領域に固定された無機及び/又は有機微粒子は、特に限定されないが、例えば、金属単体、金属化合物、ケイ素化合物、フッ素化合物、熱可塑性樹脂で形成された粒子、熱硬化性樹脂で形成された粒子、光硬化性樹脂で形成された粒子である。
【0070】
ポジ型の表面領域に固定された無機及び/又は有機微粒子の粒径は、好ましくは、0.5~40.0μmであり、1.0~20.0μmであり、2.0~10.0μmである。微粒子の粒径が上記数値範囲であることにより、2.フィルムの特性で詳説した特性を満たすフィルムを容易に形成できる。
【0071】
ポジ型の表面領域の、JIS B0601:2001に準拠した最大谷深さ(Rv)は、好ましくは、0.01μm<Rv<1.20μmであり、0.01μm<Rv<1.10μmである。
【0072】
ポジ型の表面領域の、JIS B0601:2001に準拠した最大山高さ(Rp)は、好ましくは、1.50μm<Rp<8.00μmであり、2.00μm<Rp<7.50μmであり、2.50μm<Rp<7.00μmである。
【0073】
ポジ型の最大谷深さ(Rv)と最大山高さ(Rp)と、は、好ましくは0.01<Rv/(Rv+Rp)<0.20であり、0.10<Rv/(Rv+Rp)<0.15である。
【0074】
ポジ型の表面領域の、JIS B0601:2001に準拠した要素の平均長さ(RSm)は、好ましくは30μm<RSm<300μmであり、30μm<RSm<200μmであり、30μm<RSm<150μmであり、30μm<RSm<100μmであり、30μm<RSm<90μmである。
【0075】
ポジ型の表面領域が上記数値範囲を満たすことにより、2.フィルムの特性で詳説した特性を満たすフィルムを容易に形成できる。
【0076】
ポジ型は、公知のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、着色剤、酸化防止剤、光重合促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、充填剤、離型剤、その他の添加剤等が挙げられる。その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
ポジ型の表面領域の形状を転写して本実施形態のフィルムを作製する方法は、特に限定されないが、例えば、塗布工程後、未硬化のUV硬化性樹脂組成物上にポジ型をラミネートし、基材、基材フィルム、又はポジ型側からUV照射することで、ポジ型の表面領域の凹凸形状が転写された状態でUV硬化性樹脂組成物を硬化させる。その後、ポジ型を脱型し、本実施形態に係るフィルムを作製することができる。
【0078】
UV照射の光源は、特に限定されないが、例えば、水銀ランプ、高圧水銀ランプ、UV-LED、キセノンランプ、レーザー光源が挙げられる。
【0079】
UV照射の強度及び積算強度は、UV硬化性樹脂組成物の組成、厚さ等によって適宜選択される。UV照射の強度は、特に限定されないが、例えば、10mW/cm2~10000mW/cm2である。また、UV照射の積算強度は、特に限定されないが、例えば、50~10000mJ/cm2である。
【0080】
4.ペン型ポインティングデバイス
ペン型ポインティングデバイスは、ペン入力デバイスに文字などの情報を入力するデバイスであって、プラスチックや金属などの硬質材料で形成される。プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。金属としては、特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム等の金属、ステンレス等の合金が挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
ペン先の形状は、特に限定されないが、通常、曲面形状である。ペン先の平均径は特に限定されないが、例えば、0.1~10.0mmである。
【実施例0082】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0083】
1.フィルムの作製
1.1.実施例1~5、比較例1~2のフィルム(ネガ型のフィルム)の作製
表1に記載の組成となるように調合してUV硬化性樹脂組成物を用意した。ポジ型として、大槻工業株式会社製マット離型フィルムを用意した。前記マット離型フィルムは、厚さ25μmの基材層、シリカフィラーを含む大槻工業社製「GM60」からなる粗面層、及びシリコーン系離型コートである大槻工業社製「SK-1」からなる離型層が、この順に積層された構成である。このポジ型上にUV硬化性樹脂組成物をダイコートによって塗布し、塗布したUV硬化性樹脂組成物上に基材フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4360、厚み188μm)を積層した。この積層体を、一定の距離のギャップを有する2本の金属ロールの間を通して、UV硬化性樹脂組成物を、ポジ型と基材フィルムの間に厚みが均一になるように行き渡らせた。ギャップは、硬化後のUV硬化性組成物層の厚みが100μmとなるように適宜調整した。なお、ポジ型の厚みは、マイクロメーターにより測定した。続いて、基材フィルム側から、高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、HHM-7000/D-FS)を用いて、照射強度150±10mW/cm2、積算照射強度3000±300mJ/cm2となるように主波長365nmの紫外線を照射し、UV硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面層フィルムを成形し硬化し、フィルムの表面構造を形成した。紫外線の強度測定は、トプコン社製、UVR-T1/UD-T36を用いた。測定条件は、測定波長を300~390nmとし、ピーク感度波長を355nmとした。続いて、ポジ型を脱型し、実施例1~5、及び比較例1~2のフィルム(ネガ型のフィルム)を得た。
【0084】
ポジ型は、JIS B0601:2001に準拠した谷の最大谷深さ(Rv)と、山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、が、それぞれ、Rv=1.02μm、Rp=4.25μm、RSm=68.52μmであった。また、Rv/(Rv+Rp)=0.19であった。なお、Rv,Rp,RSmは後述の方法で測定した。
【0085】
1.2.比較例3~9のフィルム(ポジ型のフィルム)の作製
表2に記載の組成となるように調合してUV硬化性樹脂組成物を用意した。縁の高さが10mmの300mm×200mmのステンレストレイ内に、実施例1~5、比較例1~2のフィルムの作製のために作製したポジ型を、その表面領域(凸形状)とは反対側の面とステンレストレイの底とが対向するように接地した。その後、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーンゴム用主剤「TSE3455T(A)」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーンゴム用硬化剤「TSE3455T(B)」、及びモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーンゴム用硬化遅延剤「ME75」を、重量比が「TSE3455T(A)」:「TSE3455T(B)」:「ME75」=100:10:1となるように調合したシリコーンゴム液を、硬化後の厚みが5mmとなるようにステンレス内に流し込み、真空脱泡を行った後、55℃のオーブンに7時間投入して1次硬化を行った。続いて、1次硬化をしたシリコーンゴムをポジ型及びステンレストレイから剥がし、剥がしたシリコーンゴムを100℃のオーブンに20時間投入して2次硬化を行って、ネガ型を得た。このネガ型上にUV硬化性樹脂組成物をダイコートによって塗布し、塗布したUV硬化性樹脂組成物上に基材フィルムであるポリエチレンテレフタラートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4360、厚み188μm)を積層した。この積層体を、一定の距離のギャップを有する2本の金属ロールの間を通して、UV硬化性樹脂組成物を、ネガ型と基材フィルムの間に厚みが均一になるように行き渡らせた。ギャップは、硬化後のUV硬化性組成物層の厚みが100μmとなるように適宜調整した。なお、ネガ型の厚みは、マイクロメーターにより測定した。続いて、基材フィルム側から、高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、HHM-7000/D-FS)を用いて、照射強度150±10mW/cm2、積算照射強度3000±300mJ/cm2となるように主波長365nmの紫外線を照射し、UV硬化性樹脂組成物を硬化させ、表面層フィルムを成形し硬化し、フィルムの表面構造を形成した。紫外線の強度測定は、トプコン社製、UVR-T1/UD-T36を用いた。測定条件は、測定波長を300~390nmとし、ピーク感度波長を355nmとした。続いて、ポジ型を脱型し、比較例3~9のフィルム(ポジ型のフィルム)を得た。
【0086】
1.3.貯蔵弾性率測定用フィルムの作製
表1及び表2に記載の貯蔵弾性率は、各実施例及び比較例のフィルムと同じUV硬化性樹脂組成物を、以下に記載の方法でフィルムにし、当該フィルムについて後述の方法で測定した。
【0087】
具体的には、表1及び表2に記載の組成となるように、調合してUV硬化性樹脂組成物を用意した。UV硬化性樹脂組成物を離型ポリエチレンテレフタラートフィルムA(リンテック社製、PET3811)の離型面上にダイコートで塗布し、塗布したUV硬化性樹脂組成物の上に離型ポリエチレンテレフタラートフィルムB(リンテック社製、PET3811)を離型面がUV硬化性樹脂組成物に接するように積層し、一定の距離のギャップを有する2本の金属ロールの間を通して、UV硬化性樹脂組成物を、離型ポリエチレンテレフタラートフィルムAと離型ポリエチレンテレフタラートフィルムBの間に厚みが均一になるように行き渡らせた。ギャップは、硬化後のUV硬化性組成物層の厚みが100μmとなるように適宜調整した。続いて、フィルムB側から高圧水銀ランプ(オーク製作所社製、HHM-7000/D-FS)を用いて、照射強度150±10mW/cm2、積算照射強度3000±300mJ/cm2となるように主波長365nmの紫外線を照射し、UV硬化性樹脂組成物を硬化した。紫外線の強度測定は、トプコン社製、UVR-T1/UD-T36を用いた。測定条件は、測定波長を300~390nmとし、ピーク感度波長を355nmとした。続いて、フィルムAとフィルムBを硬化したUV硬化性樹脂組成物から剥離し、貯蔵弾性率測定用フィルムを得た。
【0088】
表1及び表2に示す材料は、以下のとおりである。
[(メタ)アクリレートオリゴマー]
・ウレタンアクリレートオリゴマー:ダイセル・オルネクス株式会社製「KRM7735」
[(メタ)アクリレートモノマー]
・イソボルニルアクリレートモノマー:共栄社化学株式会社製「IBXA」
・トリプロピレングリコールジアクリレートモノマー:ダイセル・オルネクス株式会社製「TPGDA」
・テトラヒドロフルフリルアクリレートモノマー:共栄社化学株式会社製「THF-A」
・フェノキシエチルアクリレートモノマー:共栄社化学株式会社製「PO-A」
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートモノマー:ダイセル・オルネクス株式会社製「DPHA」
[光重合開始剤]
・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:IGM Resins B.V.社製「Omnirad184」
・ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:IGM Resins B.V.社製「TPO」
【0089】
2.測定方法
2.1.表面粗さパラメータ
各実施例及び比較例で作製したフィルム、並びにポジ型を、測定面であるフィルムの表面とは反対の面に、厚さ0.5mmソーダライムガラスを、粘着剤を介して貼り合わせて固定し、表面粗さ測定機(株式会社東京精密製、SURFCOM TOUCH50)を用いて、以下の条件にてJIS B0601:2001に準拠して、谷の最大谷深さ(Rv)と、山の最大山高さ(Rp)と、要素の平均長さ(RSm)と、を測定した。
・表面粗さ検出部の触針:株式会社東京精密製、DM43801(先端半径:2μm)
・測定速度 :1.5mm/s
・評価長さ :4mm
・測定種別 :粗さ測定
・形状除去 :R面
・カットオフ種別 :ガウシアン
・カットオフ周波数λc:0.8mm
・カットオフ周波数λs:2.5μm
【0090】
2.2.貯蔵弾性率
貯蔵弾性率測定用フィルムに対して、動的粘弾性測定装置DMA:Dynamic Mechanical Analysis(ティー・エイ・インスツルメント社製、RSA-G2)を用いて測定した。測定条件は、引張モード、昇温速度10℃/min、1Hzで測定を行い、25℃での値を読み取った。
【0091】
2.3.表面層フィルムの厚み
1.1.及び1.2.で作製した、表面層フィルムと基材フィルムとを積層した積層フィルムの厚みをマイクロメーターで測定し、その厚みから事前に測定した基材フィルムの厚みを差し引いて、表面層フィルムの厚みを算出した。
【0092】
3.評価
3.1.耐擦過性評価
新東化学社製往復摩耗試験機トライボギアTYPE30にワコム社製ハードフェルト芯ACK-20003を取り付け、そのハードフェルト芯を各実施例及び比較例で作製したフィルムの表面に接触させた。その後、23℃、65%(相対湿度)の雰囲気下で、荷重100g、速度3000mm/min、移動距離50mmでフィルムの表面を500往復及び1000往復し目視にて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:500往復後、1000往復後ともに、フィルムの表面にキズが発生しなかった。
△:500往復後、キズが発生しなかったが、1000往復後、フィルムの表面にキズが発生した。実用上は問題ないレベルである。
×:500往復後、フィルムの表面にキズが発生した。
【0093】
3.2.書き味評価
各実施例及び比較例で作製したフィルムに対して、三菱鉛筆社製スタイラスペンHi-uni DIGITAL for Wacomを用いて、官能評価にて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:適度な筆記抵抗があり、滑らかに筆記ができる。
△:筆記抵抗が適度な範囲を僅かに超えて大きい(又は小さい)ため、滑らかに筆記しにくい。実用上問題があるレベルである。
×:筆記抵抗が適度な範囲を大幅に超えて大きい(又は小さい)ため、滑らかに筆記ができない。実用上問題があるレベルである。
【0094】
3.3.屈曲性評価
各実施例及び比較例で作製したフィルムを用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行った。折り曲げ試験装置(BEVS Industrial Co., Ltd社製、円筒形マンドレル屈曲試験器)を使用し、表面層フィルムが外側になる様に、直径10mmの円筒マンドレルに巻き付けた際、表面層フィルムに割れが発生しているかどうか、目視で観察した。また、円筒マンドレルに巻き付けたものとは別に、各実施例及び比較例で作製したフィルムについて、表面層フィルムを外側として90°に折り曲げた際、表面層フィルムに割れが発生しているかどうか、目視で観察し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
○:円筒マンドレルに巻き付けた際の表面層フィルム、及び90°に折り曲げた際の表面層フィルムのいずれも、割れは見られない。
△:円筒マンドレルに巻き付けた際の表面層フィルムは、割れが見られない。90°に折り曲げた際の表面層フィルムは、割れが見られるが、実用上は問題ないレベルである。
×:円筒マンドレルに巻き付けた際の表面層フィルム、及び90°に折り曲げた際の表面層フィルムのいずれも、割れが見られる。
【0095】
3.4.総合評価
耐擦過性評価、書き味評価、屈曲性評価に対して、〇を2点、△を1点、×を0点として、実施例及び比較例毎に全ての評価結果の合計点を算出し、以下の基準で総合評価をした。
[評価基準]
◎:6点
〇:5点
△:4点
×:0~3点
【0096】
各実施例及び比較例におけるフィルムの作製に用いたUV硬化性樹脂組成物の組成、各物性の測定値、及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0097】
【表1】
*1:示した数値は、左から、固形分質量比/UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対する質量百分率(%)/UV硬化性樹脂の固形分総量に対する質量百分率(%)である。
【0098】
【表2】
*1:示した数値は、左から、固形分質量比/UV硬化性樹脂組成物の固形分総量に対する質量百分率(%)/UV硬化性樹脂の固形分総量に対する質量百分率(%)である。
【0099】
4.評価結果
表1及び表2の評価結果から、実施例1~5はいずれも、貯蔵弾性率が所定の範囲外である比較例1~2、Rv、Rv/(Rv+Rp)、及びRSmのいずれかが所定の範囲外である比較例3~9と比較して、耐擦過性、書き味、及び屈曲性に優れることがわかった。