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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089875
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】鉄鉱石の選別方法及び脱リン方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/00 20060101AFI20240627BHJP
   B07C 5/342 20060101ALI20240627BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240627BHJP
   C22B 1/11 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C22B1/00 101
B07C5/342
G01N21/27 A
C22B1/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205386
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰英
【テーマコード(参考)】
2G059
3F079
4K001
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059BB08
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF08
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
3F079CC03
3F079DA11
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA02
4K001CA05
4K001CA09
4K001CA49
4K001DA10
4K001HA09
(57)【要約】
【課題】鉄鉱石をリン含有率に応じた複数の区分に効率良く分類、選別可能な選別方法等を提供する。
【解決手段】本発明は、しきい値決定用鉄鉱石を撮像したしきい値決定用画像を用いて、第1しきい値及び第2しきい値を決定するしきい値決定工程ST1と、選別対象鉄鉱石を撮像した選別対象画像と、第1しきい値及び第2しきい値とを用いて、選別対象鉄鉱石を第1~第3区分の3つの区分に分類し、選別する選別工程ST2と、を有する。しきい値決定工程ST1では、しきい値決定用画像において、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値≧第1しきい値となり、第2しきい値≦赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値<第1しきい値となり、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値<第2しきい値となるように、第1しきい値及び第2しきい値を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別対象である選別対象鉄鉱石と同種の鉄鉱石であるしきい値決定用鉄鉱石を撮像したカラー画像であるしきい値決定用画像を用いて、カラー画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値に対する第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定するしきい値決定工程と、
前記選別対象鉄鉱石を撮像したカラー画像である選別対象画像と、前記第1しきい値Rt1及び前記第2しきい値Rt2とを用いて、前記選別対象鉄鉱石を3つの区分に分類し、選別する選別工程と、を有し、
前記しきい値決定工程は、
前記しきい値決定用鉄鉱石を撮像して前記しきい値決定用画像を取得する画像取得ステップと、
前記しきい値決定用画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する抽出ステップと、
前記しきい値決定用画像において、前記しきい値決定用鉄鉱石のうち、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1以上となり、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1未満で且つ前記第2しきい値Rt2以上となり、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第2しきい値Rt2未満となるように、前記第1しきい値Rt1及び前記第2しきい値Rt2を決定する決定ステップと、を含み、
前記選別工程は、
前記選別対象鉄鉱石を撮像して前記選別対象画像を取得する画像取得ステップと、
前記選別対象画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する抽出ステップと、
前記選別対象鉄鉱石を、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1以上である画素領域に対応する第1区分の選別対象鉄鉱石と、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1未満で且つ前記第2しきい値Rt2以上である画素領域に対応する第2区分の選別対象鉄鉱石と、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第2しきい値Rt2未満である画素領域に対応する第3区分の選別対象鉄鉱石と、の3つの区分の選別対象鉄鉱石に分類し、分類された前記3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石を選別する選別ステップと、を含む、
鉄鉱石の選別方法。
【請求項2】
前記しきい値決定工程の前記画像取得ステップでは、目視によって、前記しきい値決定用鉄鉱石を、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石の3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類し、分類した前記3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石毎に前記しきい値決定用画像を取得し、
前記しきい値決定工程の前記抽出ステップでは、前記3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石毎の前記しきい値決定用画像のそれぞれについて、R成分の強度値を抽出し、
前記しきい値決定工程の前記決定ステップでは、前記黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Ryaveと、前記赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Rraveと、前記黒色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Rbaveとを算出し、以下の式(1)によって前記第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(2)によって前記第2しきい値Rt2を決定する、
請求項1に記載の鉄鉱石の選別方法。
t1=(Ryave+Rrave)/2 ・・・(1)
t2=(Rrave+Rbave)/2 ・・・(2)
【請求項3】
前記しきい値決定工程の前記決定ステップでは、前記しきい値決定用画像における前記しきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の最大値Rmaxと、前記しきい値決定用画像における前記しきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の最小値Rminとを算出し、以下の式(3)によって前記第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(4)によって前記第2しきい値Rt2を決定する、
請求項1に記載の鉄鉱石の選別方法。
t1=Rmax-(Rmax-Rmin)/3 ・・・(3)
t2=Rmin+(Rmax-Rmin)/3 ・・・(4)
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の鉄鉱石の選別方法によって分類された前記3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、一部の区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行する脱リン工程を有する、
鉄鉱石の脱リン方法。
【請求項5】
前記脱リン工程において、前記第1区分の選別対象鉄鉱石及び前記第2区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行する、
請求項4に記載の鉄鉱石の脱リン方法。
【請求項6】
前記脱リン工程において、前記第1区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行する、
請求項4に記載の鉄鉱石の脱リン方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石の選別方法及び脱リン方法に関する。特に、本発明は、鉄鉱石をリン含有率に応じた複数の区分に効率良く分類、選別可能な選別方法、及び、この選別方法を用いて一部の区分の鉄鉱石に対してのみ効率良く脱リン処理を実行可能な脱リン方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、良質な鉄鉱石の枯渇によって、従来使用されていなかったリンの含有率が0.1質量%を超える高リン鉄鉱石を、製鉄原料として使用せざるを得ない状況になっている。鉄鉱石のリン含有率が高すぎると、製造される鉄鋼製品の品質に悪影響を及ぼすため、脱リン処理を実行することが必要であるが、製鉄原料として使用する全ての鉄鉱石について一律に脱リン処理を実行することは、効率が悪く、コストも多大になるという問題がある。
このため、使用する鉄鉱石をリン含有率に応じて分類し、リン含有率の高い鉄鉱石を選別して、リン含有率の高い鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することが望まれるが、このためには、鉄鉱石をリン含有率に応じて分類、選別する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、JIG選別(ジグ選別)や重液選別等の比重選別によって、高リン鉄鉱石からゲーサイトリッチ鉱石を選別し、このゲーサイトリッチ鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することが提案されている。
しかしながら、ゲーサイトリッチ鉱石とそれ以外の鉱石(例えばヘマタイトリッチ鉱石)との比重差は、工業的に効率良く選別可能なほど大きくないため、比重選別では、鉄鉱石をリン含有率に応じて効率良く分類、選別できないという問題がある。
【0004】
また、非特許文献1には、鉄鉱石粒子をその外観色を目視することで、ゲーサイトが主体である黄色粒子と、ヘマタイトが主体である黒粒子と、中間粒子との3つに分類することが記載されている。
しかしながら、非特許文献1には、鉄鉱石を自動的に分類、選別する方法や、脱リン処理について、何ら提案されていない。
【0005】
なお、非特許文献2には、鉄鉱石に対する脱リン処理の方法について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-20010号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】岡崎潤,他2名,“鉄鉱石粒子の分類およびそれらの鉱物特性と焼結性”,鉄と鋼,2006年,Vol.92,No.12,p.21-28
【非特許文献2】雀部実,他2名,“高リン鉄鉱石からの直接脱リン”,鉄と鋼,2014年,Vol.100,No.2,p.217-222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するべくなされたものであり、鉄鉱石をリン含有率に応じた複数の区分に効率良く分類、選別可能な選別方法、及び、この選別方法を用いて一部の区分の鉄鉱石に対してのみ効率良く脱リン処理を実行可能な脱リン方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討した結果、鉄鉱石の外観色が、リン含有率の高いものから順に、黄褐色系、赤褐色系、黒色系の色を示すことを見出した。また、本発明者は、鉄鉱石を撮像したカラー画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値の大小によって、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系の鉄鉱石を分類可能であることを見出した。このため、鉄鉱石を撮像したカラー画像のR成分の強度値を抽出すれば、その大小に応じて、鉄鉱石をリン含有率と相関を有する黄褐色系、赤褐色系及び黒色系の各区分に自動的に効率良く分類、選別できることに想到した。
本発明は、上記の本発明者の知見によって完成したものである。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、選別対象である選別対象鉄鉱石と同種の鉄鉱石であるしきい値決定用鉄鉱石を撮像したカラー画像であるしきい値決定用画像を用いて、カラー画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値に対する第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定するしきい値決定工程と、前記選別対象鉄鉱石を撮像したカラー画像である選別対象画像と、前記第1しきい値Rt1及び前記第2しきい値Rt2とを用いて、前記選別対象鉄鉱石を3つの区分に分類し、選別する選別工程と、を有し、前記しきい値決定工程は、前記しきい値決定用鉄鉱石を撮像して前記しきい値決定用画像を取得する画像取得ステップと、前記しきい値決定用画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する抽出ステップと、前記しきい値決定用画像において、前記しきい値決定用鉄鉱石のうち、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1以上となり、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1未満で且つ前記第2しきい値Rt2以上となり、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値が前記第2しきい値Rt2未満となるように、前記第1しきい値Rt1及び前記第2しきい値Rt2を決定する決定ステップと、を含み、前記選別工程は、前記選別対象鉄鉱石を撮像して前記選別対象画像を取得する画像取得ステップと、前記選別対象画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する抽出ステップと、前記選別対象鉄鉱石を、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1以上である画素領域に対応する第1区分の選別対象鉄鉱石と、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第1しきい値Rt1未満で且つ前記第2しきい値Rt2以上である画素領域に対応する第2区分の選別対象鉄鉱石と、前記選別対象画像において前記R成分の強度値が前記第2しきい値Rt2未満である画素領域に対応する第3区分の選別対象鉄鉱石と、の3つの区分の選別対象鉄鉱石に分類し、分類された前記3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石を選別する選別ステップと、を含む、鉄鉱石の選別方法を提供する。
【0011】
本発明において、「選別対象鉄鉱石と同種の鉄鉱石であるしきい値決定用鉄鉱石」は、選別対象鉄鉱石と同じ鉱山から採掘した、材質が同等の鉄鉱石を意味し、選別対象鉄鉱石と異なるタイミングで採掘又は入荷した鉄鉱石の他、選別対象鉄鉱石から抜き取ったサンプルをしきい値決定用鉄鉱石として用いる場合も含まれる。
また、本発明において、「カラー画像」とは、鉄鉱石に、昼白色、昼光色又は白色の光源から出射した光が照射される環境下、或いは、太陽光が照射される環境下で、鉄鉱石が撮像された、色相としてR(赤)、G(緑)、B(青)の各成分を有する画像を意味する。
また、本発明において、「黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石」、「赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石」及び「黒色系のしきい値決定用鉄鉱石」とは、しきい値決定用鉄鉱石に、昼白色、昼光色又は白色の光源から出射した光が照射される環境下、或いは、太陽光が照射される環境下で、その外観色が、それぞれ黄褐色系、赤褐色系及び黒色系であるしきい値決定用鉄鉱石を意味する。
さらに、本発明において、「少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石を選別する」とは、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石(例えば、第1区分の選別対象鉄鉱石)を、他の区分の選別対象鉄鉱石(例えば、第2区分及び第3区分の選別対象鉄鉱石)と分けて取り出すことを意味する。
【0012】
本発明によれば、しきい値決定工程によって、カラー画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値に対する第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2(Rt1>Rt2)が決定され、選別工程によって、選別対象鉄鉱石を撮像したカラー画像である選別対象画像と、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2とを用いて、選別対象鉄鉱石が3つの区分(第1区分、第2区分、第3区分)に分類され、3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石が選別される。
具体的には、しきい値決定工程では、しきい値決定用鉄鉱石を撮像したカラー画像であるしきい値決定用画像において、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値が第1しきい値Rt1以上となり、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値が第1しきい値Rt1未満で且つ第2しきい値Rt2以上となり、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値が第2しきい値Rt2未満となるように、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2が決定される。
そして、選別工程では、選別対象画像においてR成分の強度値が第1しきい値Rt1以上である画素領域に対応する選別対象鉄鉱石が、第1区分の選別対象鉄鉱石として分類される。この第1区分の選別対象鉄鉱石は、黄褐色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる。また、選別工程では、選別対象画像においてR成分の強度値が第1しきい値Rt1未満で且つ第2しきい値Rt2以上である画素領域に対応する選別対象鉄鉱石が、第2区分の選別対象鉄鉱石として分類される。この第2区分の選別対象鉄鉱石は、赤褐色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる。さらに、選別工程では、選別対象画像においてR成分の強度値が第2しきい値Rt2未満である画素領域に対応する選別対象鉄鉱石が、第3区分の選別対象鉄鉱石として分類される。この第3区分の選別対象鉄鉱石は、黒色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる。
以上のように、本発明によれば、しきい値決定用鉄鉱石を撮像したしきい値決定用画像及び選別対象鉄鉱石を撮像した選別対象画像のR成分の強度値のみを用いて、選別対象鉄鉱石をリン含有率に応じた第1~第3区分に自動的に効率良く分類できる。このため、選別工程において、分類された第1~第3区分の選別対象鉄鉱石のうち、例えば、リン含有率が高いと考えられる第1区分の選別対象鉄鉱石を選別し、この選別した第1区分の鉄鉱石に対してのみ脱リン処理を実行することで、脱リン処理の効率性を高めることが可能である。
【0013】
本発明のしきい値決定工程における第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2の具体的な決定方法としては、種々の態様が考えられる。
例えば、しきい値決定用鉄鉱石を、目視によって、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石の3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類し、分類した3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石毎に別個にしきい値決定用画像を取得し、各しきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値を用いて、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する態様(以下、適宜、これを「第1決定態様」という)が考えられる。
すなわち、第1決定態様の場合、前記しきい値決定工程の前記画像取得ステップでは、目視によって、前記しきい値決定用鉄鉱石を、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石の3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類し、分類した前記3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石毎に前記しきい値決定用画像を取得し、前記しきい値決定工程の前記抽出ステップでは、前記3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石毎の前記しきい値決定用画像のそれぞれについて、R成分の強度値を抽出し、前記しきい値決定工程の前記決定ステップでは、前記黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Ryaveと、前記赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Rraveと、前記黒色系のしきい値決定用鉄鉱石について取得した前記しきい値決定用画像における前記黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の平均値Rbaveとを算出し、以下の式(1)によって前記第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(2)によって前記第2しきい値Rt2を決定する。
t1=(Ryave+Rrave)/2 ・・・(1)
t2=(Rrave+Rbave)/2 ・・・(2)
【0014】
上記の第1決定態様によれば、式(1)によって決定される第1しきい値Rt1によって、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域と、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域とを、精度良く区別できる。また、式(2)によって決定される第2しきい値Rt2によって、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域と、黄褐色系及び赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域とを、精度良く区別できる。このため、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2によって、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石にそれぞれ対応する画素領域を、精度良く区別できる。したがって、選別工程において、第1決定態様によって決定した第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を用いて選別対象鉄鉱石を第1~第3区分に分類することで、分類された第1区分~第3区分の選別対象鉄鉱石が、それぞれ黄褐色系、赤褐色系及び黒色系の選別対象鉄鉱石となる期待を高めることができる。
【0015】
上記の第1決定態様では、しきい値決定用鉄鉱石を、目視によって、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石の3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類する手間が生じる。この手間を避けるには、例えば、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石が混在した状態のしきい値決定用鉄鉱石について、しきい値決定用画像を取得し、このしきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値の最大値及び最小値を用いて、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する態様(以下、適宜、これを「第2決定態様」という)が考えられる。
すなわち、第2決定態様の場合、前記しきい値決定工程の前記決定ステップでは、前記しきい値決定用画像における前記しきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の最大値Rmaxと、前記しきい値決定用画像における前記しきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域の前記R成分の強度値の最小値Rminとを算出し、以下の式(3)によって前記第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(4)によって前記第2しきい値Rt2を決定する。
t1=Rmax-(Rmax-Rmin)/3 ・・・(3)
t2=Rmin+(Rmax-Rmin)/3 ・・・(4)
【0016】
上記の第2決定態様は、しきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のR成分の強度値の最小値Rminから最大値Rmaxまでの範囲を単純に3等分する2つのしきい値のうち、値の大きな方のしきい値を第1しきい値Rt1とし、値の小さな方のしきい値を第2しきい値Rt2として決定する態様である。換言すれば、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石にそれぞれ対応する画素領域のR成分の強度値が、この順に均等に分布していると仮定して、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する態様である。この第2決定態様で決定した第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2では、前述の第1決定態様に比べて、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石にそれぞれ対応する画素領域を区別する精度が低下するおそれがあるものの、目視によって分類する手間が省けるため、効率面で第1決定態様よりも優れるという利点を有する。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記何れかに記載の鉄鉱石の選別方法によって分類された前記3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、一部の区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行する脱リン工程を有する、鉄鉱石の脱リン方法としても提供される。
【0018】
本発明によれば、分類された3つの区分(第1区分~第3区分)の選別対象鉄鉱石のうち、一部の区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行するため、脱リン処理の効率性を高めることが可能である。
【0019】
具体的には、例えば、前記脱リン工程において、前記第1区分の選別対象鉄鉱石及び前記第2区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することが考えられる。第1区分の選別対象鉄鉱石(黄褐色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる)及び第2区分の選別対象鉄鉱石(赤褐色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる)は、第3区分の選別対象鉄鉱石(黒色系の選別対象鉄鉱石であることが期待できる)に比べてリン含有率が高いと考えられるため、第1区分の選別対象鉄鉱石及び前記第2区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することで、脱リン処理の効率性を高めることができる。
【0020】
また、例えば、前記脱リン工程において、前記第1区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することも考えられる。第1区分の選別対象鉄鉱石は、第1~第3区分の選別対象鉄鉱石のうち、リン含有率が最も高いと考えられるため、第1区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することで、脱リン処理の効率性をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鉄鉱石をリン含有率に応じた複数の区分に効率良く分類、選別可能である。また、この選別方法を用いて一部の区分の鉄鉱石に対してのみ効率良く脱リン処理を実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る選別方法を実行するための選別装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る選別方法及び脱リン方法の概略手順を示すフロー図である。
図3】本発明の一実施形態の選別対象鉄鉱石から抜き取ったサンプルを撮像したカラー画像の一例を示す図である。
図4図2に示す画像取得ステップST12、抽出ステップST13及び決定ステップST14の内容を模式的に説明する図である。
図5】本発明の実施例において、各しきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のRGB各成分の強度値を算出した結果の一例を示す。
図6】本発明の実施例において行った、成分分析及び比重測定の結果を示す図である。
図7】本発明の実施例において行った、脱リン試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る鉄鉱石の選別方法及び脱リン方法について、選別する対象及び脱リン処理を実行する対象が、リン含有率が0.1質量%を超える高リン鉄鉱石である場合を例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態に係る選別方法を実行するための選別装置の概略構成を模式的に示す図である。図2は、本実施形態に係る選別方法及び脱リン方法の概略手順を示すフロー図である。
【0024】
<選別装置>
最初に、選別装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態の選別装置100は、コンベア10と、撮像手段20と、演算制御手段30と、空気銃40と、を備えている。
コンベア10は、選別対象である選別対象鉄鉱石を搬送する手段である。
図3は、本実施形態の選別対象鉄鉱石から抜き取ったサンプルを撮像したカラー画像の一例を示す図である(図3ではモノクロ画像になっているが、実際にはカラー画像である)。図3(a)は黒色系の選別対象鉄鉱石Oを撮像したカラー画像であり、図3(b)は赤褐色系の選別対象鉄鉱石Oを撮像したカラー画像であり、図3(c)は黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oを撮像したカラー画像である。なお、後述のしきい値決定用鉄鉱石は、選別対象鉄鉱石と同種の鉄鉱石であるため、図3に示す選別対象鉄鉱石と同様に、黒色系、赤褐色系又は黄褐色系の外観色を有する。本明細書では、しきい値決定用鉄鉱石についても、その外観色に応じて、選別対象鉄鉱石と同様の符号O、O、Oを用いることとする。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の選別装置100は、コンベア10として、3つのコンベア10a、10b、10cを備えている。選別対象鉄鉱石の搬送方向(図1に示す太線矢印方向)の最上流側に位置するコンベア10aには、黄褐色系の選別対象鉄鉱石O、赤褐色系の選別対象鉄鉱石O及び黒色系の選別対象鉄鉱石Oが混在した状態で載置され、搬送される。コンベア10aの端(搬送方向下流側の端)において、選別対象鉄鉱石O、O、Oは、コンベア10aよりも下方に位置するコンベア10bに向けて自然落下する。この落下経路において、撮像手段20が、選別対象鉄鉱石O、O、Oを撮像して選別対象画像を取得する。取得された選別対象画像は演算制御手段30に入力され、演算制御手段30が、後述の画像処理等の演算処理を実行して、選別対象鉄鉱石O、O、Oを第1~第3区分の3つの区分の選別対象鉄鉱石に分類する。次に、演算制御手段30は、選別する区分の選別対象鉄鉱石(図1に示す例では、選別するのは第1区分の選別対象鉄鉱石であり、黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる)が空気銃40の前方を通過する瞬間に、空気銃40に制御信号を送信して、空気銃40を駆動制御する。これにより、空気銃40が前方に圧縮空気Airを放出し、選別する区分の選別対象鉄鉱石は、コンベア10bよりも下方に位置するコンベア10cに向けて飛ばされ、コンベア10cによって搬送される。選別する区分の選別対象鉄鉱石が空気銃40の前方を通過するタイミングは、選別対象鉄鉱石に作用する空気抵抗を無視すれば、撮像手段20と空気銃40との間の離隔距離と、重力加速度とによって、演算制御手段30が計算可能である。一方、他の区分の選別対象鉄鉱石(図1に示す例では、第2区分及び第3区分の選別対象鉄鉱石であり、それぞれ赤褐色系の選別対象鉄鉱石O及び黒色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる)は、コンベア10bによって搬送される。
【0026】
撮像手段20としては、選別対象鉄鉱石O、O、Oを撮像して、色相としてRGBの各成分を有するカラー画像である選別対象画像を取得できる限りにおいて、CCDカメラやCMOSカメラなど、種々の構成を採用可能である。
【0027】
演算制御手段30は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサや、RAM、ROM、ハードディスク等のメモリを具備するコンピュータから構成される。演算制御手段30のメモリには、後述の第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2が記憶される。また、演算制御手段30のメモリには、画像解析プログラムが記憶されており、この画像解析プログラムがハードウェアプロセッサにより実行されることで、後述の演算処理を実行する。画像解析プログラムとしては、例えば、三谷商事社製の「WinROOF」や「Image J」等の、RGBの各成分の強度値を分離して抽出可能な一般的な画像解析ソフトウェアを用いることができる。この演算処理において、メモリに記憶された第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2が用いられ、選別対象鉄鉱石O、O、Oが第1~第3区分の3つの区分の選別対象鉄鉱石に分類される。
【0028】
<選別方法及び脱リン方法>
次に、選別方法及び脱リン方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る選別方法は、しきい値決定工程ST1と、選別工程ST2と、を有する。本実施形態に係る脱リン方法は、本実施形態に係る選別方法に加えて(しきい値決定工程ST1、選別工程ST2に加えて)、脱リン工程ST3を有する。以下、各工程ST1~ST3について説明する。
【0029】
[しきい値決定工程ST1]
しきい値決定工程ST1は、選別対象鉄鉱石と同種の鉄鉱石であるしきい値決定用鉄鉱石を用意し、しきい値決定用鉄鉱石を撮像したカラー画像であるしきい値決定用画像を用いて、カラー画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値に対する第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する工程である。しきい値決定用鉄鉱石としては、例えば、選別対象鉄鉱石から抜き取った数十g~数百g程度のサンプルが用いられる。
本実施形態のしきい値決定工程ST1としては、第1決定態様又は第2決定態様を選択可能であるが、何れの決定態様の場合であっても、しきい値決定工程ST1は、洗浄・乾燥ステップST11と、画像取得ステップST12と、抽出ステップST13と、決定ステップST14と、を含む。
【0030】
(洗浄・乾燥ステップST11)
洗浄・乾燥ステップST11では、後続の画像取得ステップST12でしきい値決定用鉄鉱石を適切に撮像できるように、しきい値決定用鉄鉱石を洗浄した後、乾燥させる処理を行う。しきい値決定用鉄鉱石の洗浄には、例えば、卓上型の超音波洗浄機を用いることができる。しきい値決定用鉄鉱石をビーカーやバットに装入し、超音波洗浄機に投入して、しきい値決定用鉄鉱石全体が浸かるまで水を加えて数分間振動させ、しきい値決定用鉄鉱石の表面に付着している微粉を除去することが考えられる。その後、超音波洗浄機からしきい値決定用鉄鉱石を取り出し、例えば、オーブン等の乾燥機に投入して、100℃程度の温度で数時間乾燥させることが考えられる。
なお、図1に示すような選別装置100においてしきい値決定用鉄鉱石を洗浄・乾燥させる場合には(洗浄・乾燥後の選別対象鉄鉱石からしきい値決定用鉄鉱石を抜き取る場合には)、例えば、しきい値決定用鉄鉱石(選別対象鉄鉱石)をコンベア10aで搬送中に、しきい値決定用鉄鉱石(選別対象鉄鉱石)に高圧水を噴射して表面に付着している微粉を除去した後、100~200℃程度の熱風(排熱風)をしきい値決定用鉄鉱石(選別対象鉄鉱石)に吹き付けて乾燥させることが考えられる。
【0031】
(画像取得ステップST12)
図4は、画像取得ステップST12、抽出ステップST13及び決定ステップST14の内容を模式的に説明する図である。
画像取得ステップST12では、例えば、図1に示す撮像手段20と同様の撮像手段を用いて、洗浄・乾燥後のしきい値決定用鉄鉱石を撮像してしきい値決定用画像を取得する。撮像手段による撮像は、しきい値決定用鉄鉱石に、昼白色、昼光色又は白色の光源(例えば、LED光源)から出射した光が照射される環境下、或いは、太陽光が照射される環境下で行われる。また、しきい値設定用画像中に、しきい値決定用鉄鉱石以外の強度値の大きな画素領域(ノイズ領域)が極力生じないように、必要に応じて、光の反射を抑制する反射防止シート等を背景部分に設置してもよい。
【0032】
具体的には、第1決定態様の場合、画像取得ステップST12では、目視によって、洗浄・乾燥後のしきい値決定用鉄鉱石を、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oの3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類し、図4(a)に示すように、分類した3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石O、O、O毎にしきい値決定用画像Img1、Img2、Img3を取得する。なお、第1決定態様のように、しきい値決定用鉄鉱石を目視によって分類する場合、粒度が小さすぎると外観色を判定し難くなるため、選別対象鉄鉱石から抜き取ったサンプルを篩で分級し、1mm以上の粒度を有する鉄鉱石をしきい値決定用鉄鉱石として用いることが好ましい。
一方、第2決定態様の場合、画像取得ステップST12では、図4(b)に示すように、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oが混在した状態のしきい値決定用鉄鉱石について、しきい値決定用画像Imgを取得する。
【0033】
(抽出ステップST13)
抽出ステップST13では、例えば、図1に示す演算制御手段30と同様の演算処理機能を有する手段を用いて(或いは、演算制御手段30を転用して)、しきい値決定用画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する。しきい値決定用画像が8bitの画像である場合、R成分の強度値は、最も暗い値が0で、最も明るい値が255となり、しきい値決定用画像を構成する画素毎に抽出される。
【0034】
具体的には、第1決定態様の場合、抽出ステップST13では、3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石(黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O)毎のしきい値決定用画像Img1、Img2、Img3のそれぞれについて、R成分の強度値を抽出する。
一方、第2決定態様の場合、抽出ステップST13では、3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oが混在した状態で取得したしきい値決定用画像Imgについて、R成分の強度値を抽出する。
【0035】
(決定ステップST14)
決定ステップST14では、例えば、図1に示す演算制御手段30と同様の演算処理機能を有する手段を用いて(或いは、演算制御手段30を転用して)、しきい値決定用画像において、しきい値決定用鉄鉱石O、O、Oのうち、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域のR成分の強度値が第1しきい値Rt1以上となり、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域のR成分の強度値が第1しきい値Rt1未満で且つ第2しきい値Rt2以上となり、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域のR成分の強度値が第2しきい値Rt2未満となるように、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する。
【0036】
具体的には、第1決定態様の場合、決定ステップST14では、図4(a)に示すように、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oについて取得したしきい値決定用画像Img1における黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域(しきい値決定用画像Img1においてハッチングを施した領域)のR成分の強度値の平均値Ryaveを算出する。また、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oについて取得したしきい値決定用画像Img2における赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域(しきい値決定用画像Img2においてハッチングを施した領域)のR成分の強度値の平均値Rraveを算出する。さらに、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oについて取得したしきい値決定用画像Img3における黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域(しきい値決定用画像Img3においてハッチングを施した領域)のR成分の強度値の平均値Rbaveを算出する。図4(a)に示す各画素領域に記載の数値が、当該画素領域におけるR成分の強度値を示す。なお、図4(a)では、便宜上、同じ画素領域におけるR成分の強度値は一定の値として図示しているが、実際には、同じ画素領域に含まれる画素毎に異なる値となる場合が多い。図4(a)に示す例では、Ryave=175、Rrave=137、Rbave=90である。
そして、第1決定態様の場合、決定ステップST14では、以下の式(1)によって第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(2)によって第2しきい値Rt2を決定する。
t1=(Ryave+Rrave)/2 ・・・(1)
t2=(Rrave+Rbave)/2 ・・・(2)
図4(a)に示す例では、Rt1=156、Rt2=114となる。
第1決定態様によれば、式(1)によって決定される第1しきい値Rt1によって、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域と、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域O、Oとを、精度良く区別できる。また、式(2)によって決定される第2しきい値Rt2によって、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oに対応する画素領域と、黄褐色系及び赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、Oに対応する画素領域とを、精度良く区別できる。このため、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2によって、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oにそれぞれ対応する画素領域を、精度良く区別できる。
【0037】
一方、第2決定態様の場合、決定ステップST14では、図4(b)に示すように、しきい値決定用画像Imgにおけるしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oに対応する画素領域(しきい値決定用画像Imgにおいてハッチングを施した領域)のR成分の強度値の最大値Rmaxと、しきい値決定用画像Imgにおけるしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oに対応する画素領域のR成分の強度値の最小値Rminとを算出する。図4(b)に示す各画素領域に記載の数値が、当該画素領域におけるR成分の強度値を示す。なお、図4(b)では、便宜上、同じ画素領域におけるR成分の強度値は一定の値として図示しているが、実際には、同じ画素領域に含まれる画素毎に異なる値となる場合が多い。図4(b)に示す例では、Rmax=181、Rmin=83である。
そして、第2決定態様の場合、決定ステップST14では、以下の式(3)によって第1しきい値Rt1を決定し、以下の式(4)によって第2しきい値Rt2を決定する。
t1=Rmax-(Rmax-Rmin)/3 ・・・(3)
t2=Rmin+(Rmax-Rmin)/3 ・・・(4)
図4(b)に示す例では、Rt1=148、Rt2=116となる。
第2決定態様は、しきい値決定用画像Imgにおけるしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oに対応する画素領域のR成分の強度値の最小値Rminから最大値Rmaxまでの範囲を単純に3等分する2つのしきい値のうち、値の大きな方のしきい値を第1しきい値Rt1とし、値の小さな方のしきい値を第2しきい値Rt2として決定する態様である。換言すれば、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oにそれぞれ対応する画素領域のR成分の強度値が、この順に均等に分布していると仮定して、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定する態様である。この第2決定態様で決定した第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2では、前述の第1決定態様に比べて、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oにそれぞれ対応する画素領域を区別する精度が低下するおそれがあるものの、目視によって分類する手間が省けるため、効率面で第1決定態様よりも優れるという利点を有する。また、目視によって分類する必要がないため、図1に示す選別装置100を用いて第2決定態様を実行することも可能である。すなわち、選別対象鉄鉱石からしきい値決定用鉄鉱石を抜き取ることなく、搬送される選別対象鉄鉱石の一部をそのまましきい値決定用鉄鉱石として用いることも可能である。
【0038】
以上に説明したしきい値決定工程ST1によって決定された第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2は、選別装置100の演算制御手段30のメモリに記憶され、選別工程ST2で用いられる。この第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2は、固定された値でもよいが、選別対象鉄鉱石の材質に応じて、複数組決定して、それぞれ記憶させておき、選別対象鉄鉱石の材質に応じた第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2の組を選択して用いる態様を採用することも可能である。また、同種の選別対象鉄鉱石であっても、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を適宜更新して記憶させる態様を採用することも可能である。
【0039】
[選別工程ST2]
選別工程ST2は、選別装置100によって、選別対象鉄鉱石O、O、Oを撮像したカラー画像である選別対象画像と、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2とを用いて、選別対象鉄鉱石O、O、Oを3つの区分(第1~第3区分)に分類し、選別する工程である。
本実施形態の選別工程ST2は、洗浄・乾燥ステップST21と、画像取得ステップST22と、抽出ステップST23と、選別ステップST24と、を含む。
【0040】
(洗浄・乾燥ステップST21)
洗浄・乾燥ステップST21では、後続の画像取得ステップST22で選別対象鉄鉱石O、O、Oを適切に撮像できるように、選別対象鉄鉱石O、O、Oを洗浄した後、乾燥させる処理を行う。
例えば、選別対象鉄鉱石O、O、Oをコンベア10aで搬送中に、高圧洗浄機(図示せず)から選別対象鉄鉱石O、O、Oに高圧水を噴射して表面に付着している微粉を除去した後、ドライヤー(図示せず)から100~200℃程度の熱風(排熱風)を選別対象鉄鉱石O、O、Oに吹き付けて乾燥させることが考えられる。
【0041】
(画像取得ステップST22)
画像取得ステップST22では、撮像手段20を用いて、洗浄・乾燥後の選別対象鉄鉱石O、O、Oを撮像して選別対象画像を取得する。撮像手段20による撮像は、選別対象鉄鉱石O、O、Oに、昼白色、昼光色又は白色の光源(例えば、LED光源)から出射した光が照射される環境下、或いは、太陽光が照射される環境下で行われる。また、選別対象画像中に、選別対象鉄鉱石O、O、O以外の強度値の大きな画素領域(ノイズ領域)が極力生じないように、必要に応じて、光の反射を抑制する反射防止シート等を背景部分に設置してもよい。
【0042】
(抽出ステップST23)
抽出ステップST23では、演算制御手段30を用いて、選別対象画像のRGB各成分のうち、R成分の強度値を抽出する。選別対象画像が8bitの画像である場合、R成分の強度値は、最も暗い値が0で、最も明るい値が255となり、選別対象画像を構成する画素毎に抽出される。
【0043】
(選別ステップST24)
選別ステップST24では、演算制御手段30を用いて、選別対象鉄鉱石O、O、Oを、選別対象画像においてR成分の強度値が第1しきい値Rt1以上である画素領域に対応する第1区分の選別対象鉄鉱石と、選別対象画像においてR成分の強度値が第1しきい値Rt1未満で且つ第2しきい値Rt2以上である画素領域に対応する第2区分の選別対象鉄鉱石と、選別対象画像においてR成分の強度値が第2しきい値Rt2未満である画素領域に対応する第3区分の選別対象鉄鉱石と、の3つの区分の選別対象鉄鉱石に分類する。第1区分の選別対象鉄鉱石は、黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる。第2区分の選別対象鉄鉱石は、赤褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる。第3区分の選別対象鉄鉱石は、黒色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる。
【0044】
そして、選別ステップST24では、演算制御手段30及び空気銃40を用いて、分類された3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石を選別する。図1に示す例では、前述のように、黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる第1区分の選別対象鉄鉱石を選別してコンベア10cによって搬送する一方、赤褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる第2区分の選別対象鉄鉱石、及び、黒色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる第3区分の選別対象鉄鉱石は、選別していない(第2区分の選別対象鉄鉱石及び第3区分の選別対象鉄鉱石は、分けずに混在したままである)。ただし、これに限るものではなく、例えば、コンベア10bによって搬送される第2区分及び第3区分の選別対象鉄鉱石についても、コンベア10bの端(搬送方向下流側の端)において、下方に位置する他のコンベアに向けて自然落下させ、その落下経路に、撮像手段20及び空気銃40と同様の撮像手段及び空気銃を配置して、画像取得ステップST22、抽出ステップST23及び選別ステップST24と同様のステップを実行することで、第2区分の選別対象鉄鉱石を第3区分の選別対象と分けて取り出すことも可能である。すなわち、第1区分の選別対象鉄鉱石を選別した後に、第2区分の選別対象鉄鉱石を選別することも可能である。
なお、本実施形態では、図1に示す選別装置100を用いて選別ステップST24を実行する態様を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、分類された3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、少なくとも1つの区分の選別対象鉄鉱石を選別可能である限りにおいて、種々の構成を有する選別装置を用いて選別ステップST24を実行することも可能である。
【0045】
[脱リン工程ST3]
脱リン工程ST3は、選別工程ST2によって分類された3つの区分の選別対象鉄鉱石のうち、一部の区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行する。脱リン工程ST3は、これに限るものではないが、例えば、選別対象鉄鉱石を焼結する焼結工程の前に、還元炉を用いて実行される。
具体的には、第1区分の選別対象鉄鉱石及び第2区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することが考えられる。この場合は、選別工程ST2において、第1区分の選別対象鉄鉱石を選別した後に、第2区分の選別対象鉄鉱石を選別すればよい。また、選別工程ST2において、第1区分の選別対象鉄鉱石及び第2区分の選別対象鉄鉱石を同時に選別(両区分の選別対象鉄鉱石が混在した状態で選別)してもよい。すなわち、第1区分の選別対象鉄鉱石及び第2区分の選別対象鉄鉱石が空気銃40の前方を通過する瞬間に、空気銃40に制御信号を送信して、空気銃40を駆動制御してもよい。さらに、選別工程ST2において、第3区分の選別対象鉄鉱石を選別し、残存した(コンベア10bによって搬送される)第1区分の選別対象鉄鉱石及び第2区分の選別対象鉄鉱石に脱リン処理を実行してもよい。第1区分の選別対象鉄鉱石(黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる)及び第2区分の選別対象鉄鉱石(赤褐色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる)は、第3区分の選別対象鉄鉱石(黒色系の選別対象鉄鉱石Oであることが期待できる)に比べてリン含有率が高いと考えられるため、第1区分の選別対象鉄鉱石及び前記第2区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することで、脱リン処理の効率性を高めることができる。
また、第1区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することも考えられる。この場合は、選別工程ST2において、図1に示すように、第1区分の選別対象鉄鉱石を選別するだけでよい。第1区分の選別対象鉄鉱石は、第1~第3区分の選別対象鉄鉱石のうち、リン含有率が最も高いと考えられるため、第1区分の選別対象鉄鉱石に対してのみ、脱リン処理を実行することで、脱リン処理の効率性をより一層高めることができる。
【0046】
脱リン工程ST3における脱リン処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、非特許文献2に記載のような還元気化脱リン手法を用いて、以下の条件で脱リン処理を実行することが考えられる。
・還元ガス:水素-水蒸気(H-HO)混合ガス
・流量:800ml/min
・還元温度:1000℃、1050℃、1100℃
・還元時間:30min、60min、90min、120min
その他、高炉法における主要な還元ガスであるCO-COを含んだ、CO-CO-H-HOを含む混合ガスを還元ガスとして用いてもよい。
また、特許文献1に記載のような脱リン処理方法を用いてもよい。
【0047】
<実施例>
以下、しきい値決定工程ST1及び脱リン工程ST3等の実施例について説明する。
本実施例では、しきい値決定用鉄鉱石として、選別対象鉄鉱石である豪州産の鉄鉱石A、Bから抜き取ったサンプルを用いた。各鉄鉱石A、Bを篩で分級し、鉄鉱石A、B毎に、粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石と、粒度が2.0mm以上2.8mm未満のしきい値決定用鉄鉱石(すなわち、4組のしきい値決定用鉄鉱石)を準備した。分級後の各しきい値決定用鉄鉱石を、150~200g程度ずつ、ビーカーやバットに装入し、卓上型の超音波洗浄機に投入して、しきい値決定用鉄鉱石全体が浸かるまで水を加えて数分間振動させ、しきい値決定用鉄鉱石の表面に付着している微粉を除去した。その後、超音波洗浄機からしきい値決定用鉄鉱石を取り出し、乾燥機に投入して、105℃の温度で2時間以上乾燥させた。
【0048】
次に、目視によって、洗浄・乾燥後の各しきい値決定用鉄鉱石を、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oの3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石に分類した。そして、分類した3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石O、O、O毎にしきい値決定用画像(4組のしきい値決定用鉄鉱石×3つの区分=12枚のしきい値決定用画像)を取得した。
前述の図3は、鉄鉱石Aを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石を、昼白色のLED光源から出射した光が照射される環境下で撮像して取得したしきい値決定用画像である。
【0049】
次に、演算制御手段30を転用して、各しきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のRGB各成分の強度値を算出した。
図5は、各しきい値決定用画像におけるしきい値決定用鉄鉱石に対応する画素領域のRGB各成分の強度値を算出した結果の一例を示す。図5(a)は、鉄鉱石Aを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について取得したしきい値決定用画像について得られたRGB各成分の強度値を示す。図5(b)は、鉄鉱石Bを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について取得したしきい値決定用画像について得られたRGB各成分の強度値を示す。図5において、「〇」、「△」及び「□」でプロットした点は強度値の平均値を示し、各プロット点から上下に延びるバーはバラつき(標準偏差σ)を意味する。
図5から分かるように、R成分の強度値については、G成分の強度値やB成分の強度値と異なり、しきい値決定用鉄鉱石O、O、Oの間に顕著な差が認められ、この順に強度値が大きくなっている。したがって、しきい値決定工程ST1において、前述の式(1)及び式(2)によって、或いは、前述の式(3)及び式(4)によって、第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を決定すれば、黄褐色系、赤褐色系及び黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O、O、Oにそれぞれ対応する画素領域を、精度良く区別できるといえる。また、選別工程ST2において、しきい値決定工程ST1で決定した第1しきい値Rt1及び第2しきい値Rt2を用いて選別対象鉄鉱石を第1~第3区分に分類することで、分類された第1区分~第3区分の選別対象鉄鉱石が、それぞれ黄褐色系、赤褐色系及び黒色系の選別対象鉄鉱石O、O、Oとなる期待を高めることができる。
【0050】
なお、本実施例では、「JIS M 8202」(鉄鉱石-分析方法通則)、「JIS M 8206」(鉄鉱石-ICP発光分光分析方法)、「JIS M 8211」(鉄鉱石-化合水定量方法)、「JIS M 8212(鉄鉱石-全鉄定量方法)」に基づき、各しきい値決定用鉄鉱石O、O、Oの成分分析も行った。また、本実施例では、「JIS M 8717」(鉄鉱石-密度試験方法)に基づき、各しきい値決定用鉄鉱石O、O、Oの比重測定も行った。
図6は、上記の成分分析及び比重測定の結果を示す図である。図6(a)は、鉄鉱石Aを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。図6(b)は、鉄鉱石Aを用いた粒度が2.0mm以上2.8mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。図6(c)は、鉄鉱石Bを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。図6(d)は、鉄鉱石Bを用いた粒度が2.0mm以上2.8mm未満のしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。
図6から分かるように、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石O、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oの順に、リン(P)の含有率が高いことを確認できた。また、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oは、鉄分(T.Fe)が多く、結晶水(CW)が少ない傾向から、ヘマタイト主体であり、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oは、鉄分(T.Fe)が少なく、結晶水(CW)が多い傾向から、ゲーサイト主体であると考えられることを確認できた。
【0051】
また、図6から分かるように、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oが高密度の傾向であり、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oが低密度の傾向であった。このため、特許文献1に記載のような比重選別では、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石O及び赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oと、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oとの分類ができる可能性はあるが、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oと、赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oとの分類は困難であると考えられる。
【0052】
次に、本実施例では、選別工程ST2において分類される第1区分~第3区分の選別対象鉄鉱石が、それぞれ正しく黄褐色系、赤褐色系及び黒色系の選別対象鉄鉱石O、O、Oとなると仮定し、脱リン工程ST3を模擬した脱リン試験を行った。
具体的には、鉱石Aを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石と、鉱石Bを用いた粒度が4.75mm以上9.5mm未満のしきい値決定用鉄鉱石とを、それぞれ目視で分類した3つの区分のしきい値決定用鉄鉱石O、O、O(計6組のしきい値決定用鉄鉱石)を、それぞれ約10gずつNiるつぼに装入し、内径73mmの電気炉に各るつぼを同時に設置した。次に、電気炉をNガス雰囲気下で所定温度まで加熱し、その後、還元ガス雰囲気に切り替えて120分間の還元気化脱リン処理を実行し、脱リン処理前後のリン成分の変化量(各しきい値決定用鉄鉱石1ton当たりの変化量)を脱リン量として算出した。還元温度は500℃と700℃の2条件とし、還元ガスは水素(H)ガスとした。
【0053】
図7は、上記の脱リン試験の結果を示す図である。図7(a)は、鉄鉱石Aを用いたしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。図7(b)は、鉄鉱石Bを用いたしきい値決定用鉄鉱石について得られた結果である。
図7から分かるように、還元温度によって脱リン量にバラつきがあるものの、500℃還元及び700℃還元の何れの条件でも、黄褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oの脱リン量が最も大きく、次いで赤褐色系のしきい値決定用鉄鉱石Oが脱リン量が大きく、黒色系のしきい値決定用鉄鉱石Oの脱リン量が最も小さいという傾向を示した。
したがって、高リン鉄鉱石の中でも、ゲーサイトの比率及びリン含有率の高い黄褐色系の選別対象鉄鉱石O(第1区分の選別対象鉄鉱石)、又は、黄褐色系の選別対象鉄鉱石Oに加えて赤褐色系の選別対象鉄鉱石O(第2区分の選別対象鉄鉱石)に対して選択的に脱リン処理を実行することで、高温への加熱や多量の還元ガスを必要とし、所要エネルギーが大きな脱リン工程ST3での処理量を減らして、脱リン処理の効率性を高めることが可能であるといえる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・コンベア
20・・・撮像手段
30・・・演算制御手段
40・・・空気銃
100・・・選別装置
ST1・・・しきい値決定工程
ST2・・・選別工程
ST3・・・脱リン工程
ST11・・・洗浄・乾燥ステップ
ST12・・・画像取得ステップ
ST13・・・抽出ステップ
ST14・・・決定ステップ
ST21・・・洗浄・乾燥ステップ
ST22・・・画像取得ステップ
ST23・・・抽出ステップ
ST24・・・選別ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7