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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089892
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20240627BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q11/00
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205411
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】イム ヒョンソオク
(72)【発明者】
【氏名】トゥルソン ウィニーラ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB322
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC612
4C083AC622
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC682
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC742
4C083AC782
4C083AC792
4C083AC812
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC862
4C083AC902
4C083AD042
4C083AD222
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD302
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD532
4C083AD662
4C083BB06
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE31
4C083EE32
4C083EE33
(57)【要約】
【課題】歯面における塩化ドデシルピリジニウムの滞留性を向上させる。
【解決手段】口腔用組成物は、塩化ドデシルピリジニウム、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ドデシルピリジニウム、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
前記塩化ドデシルピリジニウムを0.01質量%以上0.1質量%以下、
前記ココイルアルギニンエチルPCAを0.01質量%以上0.1質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯周炎や口内炎の予防や治療を目的とした口腔用組成物が知られている。
特許文献1は、C10~C14アルキル基を有する第四級アンモニウム塩を含有するプラーク形成抑制用組成物を開示している。上記第四級アンモニウム塩として、塩化ドデシルピリジニウムを例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-58280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化ドデシルピリジニウムは、歯面に滞留した状態で抗菌活性を発現することが知られている。特許文献1等の口腔用組成物には、塩化ドデシルピリジニウムの抗菌活性をより長時間発現させるために、歯面における塩化ドデシルピリジニウムの滞留性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための口腔用組成物は、塩化ドデシルピリジニウム、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有することを要旨とする。
上記口腔用組成物において、前記塩化ドデシルピリジニウムを0.01質量%以上0.1質量%以下、前記ココイルアルギニンエチルPCAを0.01質量%以上0.1質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の口腔用組成物によると、歯面におけるDPCの滞留性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る口腔用組成物を具体化した実施形態について説明する。
口腔用組成物は、塩化ドデシルピリジニウム(以下、「DPC」ともいう。)、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有する。口腔用組成物が、DPC、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有することにより、歯面におけるDPCの滞留性を向上させることができる。
【0008】
以下、口腔用組成物を構成する各成分について説明する。
<DPC>
DPCは、一般にカチオン性殺菌剤として用いられる。DPCとしては、特に制限されず、公知のDPCを用いることができる。
【0009】
DPCの含有量は、特に制限されない。DPCの含有量の下限は、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.03質量%である。DPCの含有量の上限は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.07質量%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、又は0.09質量%であってもよい。
【0010】
DPCの含有量が上記数値範囲であることにより、口腔用組成物中のDPCの分散性を良好にしつつ、DPCによる殺菌作用を好適に発現させることができる。
<ココイルアルギニンエチルPCA>
ココイルアルギニンエチルPCAはカチオン性界面活性剤の一種であり、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩や、CAE(登録商標)とも呼ばれる。ココイルアルギニンエチルPCAとしては特に制限されず、公知のココイルアルギニンエチルPCAを用いることができる。
【0011】
ココイルアルギニンエチルPCAの含有量は、特に制限されない。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の下限は、好ましくは0.01質量%であり、より好ましくは0.03質量%である。ココイルアルギニンエチルPCAの含有量の上限は、好ましくは0.1質量%であり、より好ましくは0.07質量%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、又は0.09質量%であってもよい。
【0012】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分、例えば、薬効成分、界面活性剤、研磨剤、湿潤剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤、甘味剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料、着色剤等を配合してもよい。これら各成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
薬効成分としては、例えば殺菌剤、血行促進剤、抗炎症剤、出血改善剤、組織修復剤、再石灰化剤等が挙げられる。
薬効成分の具体例としては、例えば殺菌剤として、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン(2’,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル)等のハロゲン化ジフェニルエーテルや、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール系殺菌剤、ヒノキチオールが挙げられる。
【0014】
血行促進剤として、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素が挙げられる。
【0015】
抗炎症剤として、イプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
出血改善剤として、トラネキサム酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0016】
組織修復剤として、アラントイン等が挙げられる。
再石灰化剤として、フッ化ナトリウム等のフッ素化合物が挙げられる。
その他、水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、クロロフィル、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、硝酸カリウム等が挙げられる。
【0017】
界面活性剤の具体例としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート20ともいう。)、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60ともいう。)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80ともいう。)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルグリコシド、デシルグリコシド等のアルキルグリコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(酸化エチレンの平均付加モル数が10、20、40、60のもの)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0018】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0019】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤の具体例としては、上記ココイルアルギニンエチルPCA以外に、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモウニム等の第4級アルキルアンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0020】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤の具体例としては、例えばN-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジエチルグリシン等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アルキル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。
【0021】
研磨剤の具体例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、酸化チタン、非晶質シリカ、結晶質シリカ、研磨性シリカ、増粘性シリカ、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、レジン、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。上記シリカは、無水ケイ酸とも呼ばれる。
【0022】
湿潤剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、水、アルコール等が挙げられる。水の具体例としては、例えば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等が挙げられる。アルコールの具体例としては、例えばエタノールが挙げられる。
【0023】
増粘剤の具体例としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられる。増粘剤は、粘結剤ともいう。
【0024】
安定化剤の具体例としては、例えばエデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
防腐剤の具体例としては、例えば1,2-ジブロモ-2、4-ジシアノブタン、感光素、イソチアゾロン誘導体、ヒダントイン誘導体、パラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノール、パラオキシ安息香酸メチル等が挙げられる。
【0026】
甘味剤の具体例としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール等が挙げられる。
【0027】
pH調整剤の具体例としては、例えばクエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの化学的に可能な塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤の具体例としては、例えばトコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
香料は、天然香料や合成香料であってもよい。また、単品香料や調合香料であってもよい。
【0029】
香料の具体例としては、例えばl-メントール、d-カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0030】
着色剤の具体例としては、例えば緑色1号、緑色3号、青色1号、黄色4号、黄色5号、赤色102号、赤色3号等の法定色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0031】
上記その他成分の含有量は、特に制限されない。その他成分の含有量は、好ましくは合計で90質量%以下であり、より好ましくは合計で85質量%以下であり、さらに好ましくは合計で70質量%以下である。また、その他成分のうち、湿潤剤を除いた成分の含有量は、好ましくは合計で60質量%以下であり、より好ましくは合計で55質量%以下であり、さらに好ましくは合計で50質量%以下である。
【0032】
<口腔用組成物の適用形態、剤形、用途>
口腔用組成物の適用形態は、特に制限されず、例えば医薬品、指定医薬部外品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。
【0033】
口腔用組成物の剤形は、特に制限されず、固形状、半固形状(以下、ジェル状ともいう。)、液体状等に適宜、調製することができる、固形状、又は半固形状としては、例えば、日本歯磨工業会において規定される歯磨剤の剤形に準じた粉状、練状、液状等が挙げられる。
【0034】
口腔用組成物の用途は、特に制限されず、公知のものを適宜採用することができる。口腔用組成物の用途としては、例えば舌部を含めた口腔内塗布剤、歯肉抗炎症剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、インプラントケア剤、練歯磨剤、粉歯磨剤、液体歯磨剤、潤性歯磨剤、洗口剤等が挙げられる。
【0035】
<作用及び効果>
本実施形態の口腔用組成物の作用について説明する。
本発明の口腔用組成物は、カチオン性界面活性剤であるココイルアルギニンエチルPCAを含有することによって、歯面にDPCを留まりやすくすることができる。言い換えれば、DPCの滞留性を向上させることができる。
【0036】
本実施形態の口腔用組成物の効果について説明する。
(1)口腔用組成物は、DPC、及びココイルアルギニンエチルPCAを含有する。
したがって、歯面におけるDPCの滞留性を向上させることができる。これに伴い、DPCによる抗菌活性をより長時間発現させることが可能になる。
【0037】
(2)DPCを0.01質量%以上0.1質量%以下、ココイルアルギニンエチルPCAを0.01質量%以上0.1質量%以下の割合で含有する。したがって、口腔用組成物中のDPCの分散性を良好にしつつ、歯面におけるDPCの滞留性を好適に向上させることができる。
【実施例0038】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
表1、2に示す実施例1~16、及び比較例1~4の口腔用組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。なお、表1、2において、各成分の右側に記載した数字は、各成分の含有量(質量%)を意味し、合計で100質量%となるように配合した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
なお、表1、2において、メッキンス(登録商標)Mは、上野製薬(株)製のパラオキシ安息香酸メチルを意味する。PEG-60は、酸化エチレンの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を意味する。香料としては、市販の合成香料を用いた。
【0042】
(評価試験)
実施例1~16、及び比較例1~4の口腔用組成物(以下、被検体ともいう。)について、歯面におけるDPCの滞留性を評価した。評価方法、及び評価結果について以下に示す。
【0043】
(DPCの滞留性の評価方法)
以下の手順で、前処理を行ったヒドロキシアパタイト(以下、HAP担体ともいう。)の調製、及び吸着試験を行った。
【0044】
[前処理溶液の調製]
0.3質量%濃度になるようにウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin;SIGMA-ALDRICH社製)を、ダルベッコPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline ; SIGMA-ALDRICH社製)に添加した。タッチミキサーで完全に溶解するまで攪拌して、前処理溶液を調製した。この前処理溶液を試験に供するまで冷蔵した。
【0045】
[HAP担体の調製]
歯牙表面と同様の挙動を示すHAP担体を以下の手順に従って調製した。
ヒドロキシアパタイト粉末(Bio-GelHTP Gel;BIO-RAD Lab.社製)50mgをPPチューブ(Falcon2059)に秤取した。このヒドロキシアパタイト粉末に、上記前処理溶液を2mL添加し、タッチミキサーで均一にした後、37℃に設定した恒温層内で約15時間振とう処理を行った。その後、再び室温、3000rpm、5分間の条件で遠心分離処理を行い、上清を除去して、HAP担体を得た。
【0046】
[吸着試験]
上記で得られたHAP担体を約50mg秤量し、各被検体2mLを添加した。さらに、タッチミキサーで均一にした後、37℃に設定した恒温層内で15分間振とう処理を行った。その後、室温、3000rpm、5分間の条件で遠心分離処理を行って上清を除去した。得られた残渣に、蒸留水2mLを添加した。さらに、タッチミキサーを用いて均一にした後、室温、3000rpm、5分間の条件で遠心分離処理を行って上清を除去した。得られた残渣に対して、前記と同じ条件で蒸留水洗浄処理を行ない、残渣として吸着処理後のHAP担体を得た。
【0047】
[吸着量の測定]
上記で得られた吸着処理後のHAP担体に、抽出溶媒(pH3の0.02Mクエン酸緩衝液1Lあたり2.88gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解させた溶液:アセトニトリル=1:3)5mLを加え、HAP担体に吸着しているDPCを抽出した。液体クロマトグラフィを用いた公知の定量方法でHAP担体50mgに吸着したDPC量を求めた。同じ試験を3回行い、DPC平均吸着量を求めた。
【0048】
また、ココイルアルギニンエチルPCAを含有していない比較例1~4のDPC平均吸着量を基準にして、言い換えれば100%にして、DPC含有量が同じである各実施例のDPC平均吸着量の変化率を求めた。具体的には、比較例1のDPC平均吸着量を基準にして、実施例1~4のDPC平均吸着量の変化率を求めた。比較例2のDPC平均吸着量を基準にして、実施例5~8のDPC平均吸着量の変化率を求めた。比較例3のDPC平均吸着量を基準にして、実施例9~12のDPC平均吸着量の変化率を求めた。比較例4のDPC平均吸着量を基準にして、実施例13~16のDPC平均吸着量の変化率を求めた。結果を表1、2の吸着量変化率(%)欄に示す。
【0049】
また、DPCの滞留性について、以下の基準で評価した。
・DPCの滞留性の評価基準
◎◎(特に優れる):DPC平均吸着量の変化率が220%を超える場合
◎(優れる):DPC平均吸着量の変化率が180%を超え220%以下である場合
○○(良好):DPC平均吸着量の変化率が140%を超え180%以下である場合
○(可):DPC平均吸着量の変化率が100%を超え140%以下である場合
×(不可):DPC平均吸着量の変化率が100%以下である場合
(評価結果)
表1より、実施例1~16は、いずれもDPCの滞留性が「可」以上であり、DPCの滞留性が向上することが確認された。
【0050】
実施例1、6~8では、DPCの滞留性が「良好」であることが確認された。また、実施例2~4では、DPCの滞留性が「特に優れる」ことが確認された。これらにより、DPCによる抗菌活性をより長時間発現させることが可能になる。
【0051】
また、例えばDPCの含有量が、0.01質量%以上0.03質量%以下であり、ココイルアルギニンPCAの含有量が、0.03質量%以上0.1質量%以下であると、DPCの滞留性が「良好」以上になることが確認された。
【0052】
以下、表3に、本発明の口腔用組成物を液体状、又はジェル状の剤形で使用する際の処方例1~10を示す。また、表4に、本発明の口腔用組成物を練歯磨剤の用途に使用する際の処方例11~17を示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】