(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008990
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】監視装置、監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240112BHJP
G08B 21/12 20060101ALI20240112BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20240112BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 K
G08B21/12
G06T7/62
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187340
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2020040657の分割
【原出願日】2020-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】後藤 治久
(72)【発明者】
【氏名】石井 信行
(72)【発明者】
【氏名】清家 寛志
(57)【要約】
【課題】フレアスタックから放出されるフレアガスの流量を推定する監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置は、フレアを撮影した映像を取得する映像取得部と、フレアが写った所定のフレア画素の輝度値と、フレア以外が写った所定の背景画素の輝度値とに基づいて、前記映像に含まれる各画素を、前記フレア画素に近い第1画素と前記背景画素に近い第2画素の何れかに分類し、前記第1画素に分類された全画素数を算出する映像解析部と、前記全画素数に基づいて、フレアガスの流量を推定するフレアガス流量推定部と、前記フレアガスの流量と所定の閾値とを比較してアラームを発報する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレアを撮影した映像を取得する映像取得部と、
フレアが写った所定のフレア画素の輝度値と、フレア以外が写った所定の背景画素の輝度値とに基づいて、前記映像に含まれる各画素を、前記フレア画素に近い第1画素と前記背景画素に近い第2画素の何れかに分類し、前記第1画素に分類された全画素数を算出する映像解析部と、
前記全画素数に基づいて、フレアガスの流量を推定するフレアガス流量推定部と、
前記フレアガスの流量と所定の閾値とを比較してアラームを発報する出力部と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記映像解析部は、前記映像に含まれる1つの画素を検出対象画素としたときに、前記検出対象画素のRGB輝度値を解析し、解析した前記RGB輝度値を、RGBそれぞれの輝度値を座標軸とする3次元空間にプロットした第1の座標情報と、前記フレア画素のRGB輝度値を前記3次元空間にプロットした第2の座標情報と、前記背景画素のRGB輝度値を前記3次元空間にプロットした第3の座標情報と、を用いて、前記第1の座標情報と前記第2の座標情報との距離を示す第1の距離と、前記第1の座標情報と前記第3の座標情報との距離を示す第2の距離と、を算出し、前記第1の距離と前記第2の距離に基づいて前記検出対象画素が、前記第1画素に分類されるか前記第2画素に分類されるかを判定する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記映像解析部は、時間帯または天候に応じて、前記フレア画素のRGB輝度値および前記背景画素のRGB輝度値を設定する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記映像解析部は、前記第2画素に分類された前記検出対象画素が、前記第1画素に分類された画素群に挟まれた位置に存在する場合、当該検出対象画素を、前記第1画素に分類する、
請求項2または請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記フレアガス流量推定部は、前記フレアガスの流量と前記全画素数との関係を定めた検量線に基づいて、前記フレアガスの流量を推定する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記映像取得部は、異なる2方向から撮影された前記映像を取得し、
前記フレアガス流量推定部は、それぞれの前記映像において前記第1画素に分類された前記画素の画素数に基づいて、前記フレアガスの流量を推定する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
前記映像解析部は、異なる2方向から撮影された前記映像を取得し、第一の方向から撮影された前記映像に基づいて、前記第1画素に分類された画素群の水平方向の画素数W1と垂直方向の画素数H1とを算出し、第二の方向から撮影された前記映像に基づいて、前記第1画素に分類された画素群の水平方向の画素数W2と垂直方向の画素数H2とを算出し、前記画素数H1と前記画素数H2のうち大きい画素数と、前記画素数W1と、前記画素数W2と、を乗じて体積Vを算出し、
前記フレアガス流量推定部は、前記体積Vに基づいて前記フレアガスの流量を推定する、
請求項6に記載の監視装置。
【請求項8】
フレアスタックのフレア放出部周辺の映像を撮影する撮像装置と、
前記映像を取得する請求項1から請求項5の何れか1項に記載の監視装置と、
を備える監視システム。
【請求項9】
フレアスタックのフレア放出部周辺の映像を異なる方向から撮影する2つの撮像装置と、
前記映像を取得する請求項6から請求項7の何れか1項に記載の監視装置と、
を備える監視システム。
【請求項10】
フレアを撮影した映像を取得するステップと、
フレアが写った所定のフレア画素の輝度値と、フレア以外が写った所定の背景画素の輝度値とに基づいて、前記映像に含まれる各画素を、前記フレア画素に近い第1画素と前記背景画素に近い第2画素の何れかに分類し、前記第1画素に分類された全画素数を算出するステップと、
前記全画素数に基づいて、フレアガスの流量を推定するステップと、
前記フレアガスの流量と所定の閾値とを比較してアラームを発報するステップと、
を有する監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、監視システムおよび監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所では、製油の過程で排出された余剰のガスをフレアスタックと呼ばれる設備で焼却する。フレアスタックのバーナー部の先端からは、余剰のガスの燃焼により生じる火炎(フレア)や黒煙が放出される。フレアガスラインは製油所の複数装置からの配管に接続されている。配管の安全弁のシールが劣化すると、本来製油所内で利用されるガス(以下、フレアガスと記載する。)がフレアガスラインに流入し、バーナー部の先端からフレアとして放出される場合がある。これは、省エネルギーの観点から好ましくない。フレアガスが放出されると、フレアの大きさが通常より大きくなる。この性質を利用して、フレアの状態を監視用カメラで撮影し、監視員がその映像を目視によって確認しながら、フレアガスがフレアガスラインに流入していないかどうかの監視を行うことが多い。
【0003】
特許文献1には、化学プラントや火力発電施設、塵焼却施設におけるフレアスタックや煙突から排出される黒煙を検知する黒煙検知システムが記載されている。特許文献1に記載の黒煙検知システムは、排出された煙を連続して撮影した画像を用いて、2つの画像の所定領域に対してオプティカルフロー推定を計算する。そして、オプティカルフロー推定から速度場ベクトルを演算し、速度場が存在する領域から排出煙領域を抽出する。さらに排出煙領域の全画素について輝度ヒストグラムを計算し、暗い輝度値を有する画素が一定以上存在する場合に排出煙領域に黒煙が存在すると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレアスタックでは、放出されるフレアガスの流量(ロス量)を把握する必要がある。フレアスタックから放出されるフレアガスの流量は、フレアガス配管にガス流量計を設置して監視することができる。しかし、新たにフレアガス配管にガス流量計を設置するには、装置の定期修理期間に実施する必要があり、工事できる期間に制限がある。また、ガス流量計の設置に要する費用は高額となる。一方、監視用カメラでフレアを撮影し、監視員が目視により確認する方法では、フレアが大きくなることに基づいてフレアガスの放出が多いことは推定できても、フレアガスの流量を定量的に把握することはできない。簡便で低コストにフレアガスの流量を計測する方法が求められている。特許文献1にも、フレアガス流量を計測する方法は記載されていない。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる監視装置、監視システムおよび監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、監視装置は、フレアを撮影した映像を取得する映像取得部と、フレアが写った所定のフレア画素の輝度値と、フレア以外が写った所定の背景画素の輝度値とに基づいて、前記映像に含まれる各画素を、前記フレア画素に近い第1画素と前記背景画素に近い第2画素の何れかに分類し、前記第1画素に分類された全画素数を算出する映像解析部と、前記全画素数に基づいて、フレアガスの流量を推定するフレアガス流量
推定部と、前記フレアガスの流量と所定の閾値とを比較してアラームを発報する出力部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様によれば、監視システムは、フレアスタックのフレア放出部周辺の映像を撮影する撮像装置と、上記の監視装置と、を備える。
【0009】
本発明の一態様によれば、監視方法は、フレアを撮影した映像を取得するステップと、フレアが写った所定のフレア画素の輝度値と、フレア以外が写った所定の背景画素の輝度値とに基づいて、前記映像に含まれる各画素を、前記フレア画素に近い第1画素と前記背景画素に近い第2画素の何れかに分類し、前記第1画素に分類された全画素数を算出するステップと、前記全画素数に基づいて、フレアガスの流量を推定するステップと、前記フレアガスの流量と所定の閾値とを比較してアラームを発報するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレアガスの流量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態における監視システムの一例を示す図である。
【
図2】一実施形態における監視装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】一実施形態における監視装置が解析する映像の一例を示す図である。
【
図4】一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第1の図である。
【
図5】一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第2の図である。
【
図6】一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第3の図である。
【
図7】一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第4の図である。
【
図8】一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第5の図である。
【
図9】一実施形態におけるフレア画素数の計測結果の一例を示す図である。
【
図10】一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理を説明する図である。
【
図11】一実施形態における設定処理の一例を示す図である。
【
図12】一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理の一例を示す第1の図である。
【
図13】一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理の一例を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、一実施形態によるフレアスタックの監視システムについて
図1~
図13を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における監視システムの一例を示す図である。
図1に、監視システム1の構成を示す。
図1に示すように監視システム1は、カメラ10Aと、カメラ10Bと、映像取得装置15と、映像分配装置20と、監視用モニター25と、監視装置30と、中央監視装置40と、を備える。
図示するように、カメラ10Aと映像取得装置15、映像取得装置15と映像分配装置20、映像分配装置20と監視用モニター25、映像分配装置20と監視装置30、カメラ10Bと監視装置30、監視装置30と中央監視装置40、はそれぞれ接続されている。
【0013】
カメラ10A,10Bは、フレアスタック先端のバーナー部(フレアを放散する先端部、煙突)と、その周辺の映像を撮影する。カメラ10Aとカメラ10Bは、異なる方向からバーナー部周辺の映像を撮影する。異なる方向から撮影を行うのは、フレアが風でなびいたときにも、フレアの立体的な姿を撮影できるようにするためである。カメラ10A,
10Bが撮影した映像を、以下フレア映像と記載する。
【0014】
なお、カメラ10A,10Bは、動画を撮影する撮像装置であることが好ましいが、例えば、所定の時間間隔で静止画を撮影するものであってもよい。また、カメラ10A,10Bのうちの何れか、又は両方は、赤外線カメラであってもよい。フレアスタックでは、フレアの拡大を抑えるため、バーナー部から蒸気を注入することがある。蒸気を注入すると、フレアの火炎が小さくなるが、代わりに水蒸気が放出される。赤外線カメラであれば、水蒸気を検出することができ、より正確にフレアガスの流量を推定することができる。また、赤外線カメラであれば、水素ガスが放出されたときにもその水素ガスを検出することができる。なお、カメラは2台あることが望ましいが、カメラ10A,10Bの何れか1つであってもよい。
【0015】
映像取得装置15は、カメラ10Aが撮影したフレア映像を取得し、そのフレア映像を映像分配装置20へ出力する。一般的に映像取得装置15は、監視用モニター25と直接接続され、監視員は、監視用モニター25に表示されたフレア映像を見てフレアスタックのバーナー部の周辺や上空を確認し、フレアが大きくなっていないか、失火していないか、黒煙が発生していないかなどを目視により監視する。本実施形態の監視システム1では、映像取得装置15は、映像分配装置20と接続される。
【0016】
映像分配装置20は、映像の分配する機能を有している。映像分配装置20は、監視用モニター25および監視装置30と接続されている。映像分配装置20は、映像取得装置15から取得したフレア映像を監視用モニター25および監視装置30へ出力する。
監視用モニター25は、フレア映像を表示する。監視員は、監視用モニター25に表示されたフレア映像を監視する。
【0017】
カメラ10Bは、無線通信によって監視装置30と接続されている。カメラ10Bは、撮影したフレア映像を監視装置30へ送信する。
【0018】
監視装置30は、カメラ10A,10Bが撮影したフレア映像を解析して、フレアガスの流量を推定する。監視装置30は、フレアガスの流量を推定すると、その推定結果やアラーム等を監視装置30の表示部や監視装置30に接続された表示装置へ表示し、監視員に通知する。また、監視装置30は、フレアガスの流量の推定値やアラーム等を中央監視装置40へ送信する。次に監視装置30について詳しく説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態における監視装置の一例を示す機能ブロック図である。
監視装置30は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を備えたPC(Personal Computer)やサーバ等のコンピュータである。図示するように監視装置30は、映像取得部31と、設定情報取得部32と、映像解析部33と、フレアガス流量推定部34と、記憶部35と、出力部36と、を備えている。
【0020】
映像取得部31は、カメラ10A,10Bが撮影したフレア映像を取得する。映像取得部31は、フレア映像を映像解析部33へ出力する。
設定情報取得部32は、フレア映像の解析に必要な各種の設定情報を取得する。設定情報取得部32は、取得した設定情報を記憶部35に記録する。
【0021】
映像解析部33は、フレア映像を解析する。ここで、
図3を参照する。
図3は、本発明の一実施形態における監視装置が解析する映像の一例を示す図である。
図3にカメラ10Aが撮影したフレア映像50の一例を示す。なお、52~53で示す矩形の枠は、フレア映像50そのものではなく、フレア映像の解析に必要な領域を示している。これらの領域は、設定情報取得部32が取得した設定情報に基づいて配置される。
【0022】
(1)例えば、映像解析部33は、フレア映像に映るバーナー部51を、バーナー部の形状に基づくパターン認識により検出する。映像解析部33は、検出したバーナー部51の所定の位置(例えば、バーナー部51の先端の中心)を、フレア映像50における基準位置として設定する。映像解析部33は、例えば、フレア映像50の左下端を原点としたときの基準位置の座標情報を記憶部35に記録する。あるいは、映像解析部33が画像を解析するのではなく、監視員が、バーナー部51の先端中心の座標情報を監視装置30へ入力してもよい。
【0023】
(2)映像解析部33は、設定情報取得部32が取得した設定情報に基づいて、基準位置に基づく所定範囲をフレア監視エリア52、背景エリア53として設定する。
フレア監視エリア52は、例えば、バーナー部51の先端からフレア54が観察される範囲を規定する。
背景エリア53は、フレアや黒煙が到達しない領域に設定される。背景エリア53は、例えば、バーナー部51から十分に離れ、構造物が存在しない空間の一部について設定される。フレア監視エリア52、背景エリア53は監視員が任意に設定することができる。
【0024】
(3)映像解析部33は、フレアに対応するRGB輝度値(RGB色空間における赤、緑、青の256階調の値)に基づいて、フレア映像50からフレア54を検出する。フレアに対応するRGB輝度値の値は、後述する処理により、映像解析部33は、フレア監視エリア52に含まれる画素を解析してフレアに対応するRGB輝度値を設定してもよいし、監視員が監視装置30へフレアに対応するRGB輝度値を入力し、設定情報取得部32がその値を取得してもよい。
【0025】
フレアガス流量推定部34は、フレア映像で検出されるフレア54の画素数に基づいて、フレアガス流量を推定する。また、フレアガス流量推定部34は、フレアガスの流量の推定値と予め設定された複数の閾値とを比較して、フレアガスの流量が各閾値を超えていればアラームの発報を出力部36へ指示する。
【0026】
記憶部35は、種々の情報を記憶する。例えば、記憶部35は、バーナー部51の基準位置の座標情報や、フレアに対応するRGB輝度値の設定情報、フレアガス流量と画素数の関係を示す検量線などを記憶する。
【0027】
出力部36は、フレアガス流量推定部34によるフレアガス流量の推定結果を表示したり、設定情報を入力したりするためのユーザインタフェースの画像を生成する。また、出力部36は、フレアガス流量推定部34の指示に基づいてアラームを出力する。
【0028】
図4~
図8は、それぞれ一実施形態におけるフレアの検出処理を説明する第1の図~第5の図である。
図4(a)にフレア映像50の一例を示す。
図4(b)に、フレア映像50を解析してフレアだけを抽出した画像(以下、フレア画像と記載する。)を示す。
図4(b)に示すフレア画像の作成方法を次に示す。まず、監視員が、
図5に示すようにフレアに対応するRGB輝度値の範囲を設定する。
図5のR5はR(赤)の輝度の範囲、G5はG(緑)の輝度の範囲、B5はB(青)の輝度の範囲を示している。次に画像処理によって、設定された範囲に含まれる輝度値を有する画素を、フレアを示す画素として抽出する。フレアを示す画素と、非フレアを示す画素とに異なる色を付して画像を生成する。これにより
図4(b)のフレア画像が得られる。
図4(b)のフレア画像では、円環状の領域がフレアとして表示されている。
図4(a)と
図4(b)を比較して分かるように、
図4(b)のフレア画像では、フレアの一部しか検出できていない。
【0029】
本実施形態では、フレアの検出精度を向上するために、RGB輝度のR(赤)と、G(緑)と、B(青)の各色の輝度値を座標軸とする3次元空間を用意する。そして、この3次元空間内に、フレアが写った代表的な画素(フレア画素)のRGB輝度値をプロットし、フレアが写っていない非フレアの画素(背景画素)のRGB輝度値をプロットし、フレア映像50の各画素のRGB輝度値をこの3次元空間内にプロットする。ここで、
図6を参照する。
図6の点61は、フレアが写った代表的な画素のRGB輝度値をプロットした点である。点63は、空などの背景が写った画素のRGB輝度値をプロットした点である。点62は、フレア映像50内のある画素のRGB輝度値をプロットした点である。映像解析部33は、フレア映像50内の画素のRGB輝度値をプロットした点62の座標と代表的なフレアのRGB輝度値をプロットした点61の座標とに基づいて、点62と点61の間の距離(ベクトル64の長さ)を算出する。また、映像解析部33は、フレア映像50内の画素のRGB輝度値をプロットした点62の座標と背景のRGB輝度値をプロットした点63の座標とに基づいて、点62と点63の間の距離(ベクトル65の長さ)を算出する。そして、映像解析部33は、点62に対応する画素を、ベクトル64の長さとベクトル65の長さのうち短い方に分類する。つまり、映像解析部33は、ベクトル64の長さが短ければ、点62に対応する画素を、フレアを示す画素(第1画素)であると判定し、ベクトル65の長さが短ければ、非フレアを示す画素(第2画素)であると判定する。映像解析部33は、フレア映像50内の全画素について同様の判定を行う。映像解析部33は、フレアと判定した画素と、非フレアと判定した画素とに異なる色を付してフレア画像を作成する。このような処理によって得られたフレア画像を
図7(a)に示す。
【0030】
図7(a)のフレア画像を参照すると、
図4(b)のフレア画像と比較してより多くの領域がフレアとして検出されていて、検出されるフレアの領域が改善されていることが分かる。しかし、
図7(a)のフレア画像では、フレアの中心部に空洞が生じている。次にこの空洞を補完する処理について説明する。まず、映像解析部33は、
図7(a)に示すフレア画像を、例えば、Y軸方向に上から下方向へ所定の画素数を有する幅ごとに分割し、分割してできた一列の部分画像の各々に対して以下の処理を行う。映像解析部33は、一列の部分画像について、X軸方向に左から右へスキャンする。そのときにフレアを示す画素が所定の画素数以上連続して検知されて、次に非フレアを示す画素が所定の画素数以上連続して検知されて、その次にフレアを示す画素が所定の画素数以上連続して検知されたならば、映像解析部33は、その部分画像では空洞が含まれていると判定する。そして、フレアを示す画素群に挟まれた非フレアを示す画素群をフレアとして認識し、これらの画素群にフレアに対応する色(
図7(a)と同様の色でもよいし、異なる色でもよい。)を付す。このような空洞を補完する処理を行った結果を得られるフレア画像を
図7(b)に示す。なお、
図7(b)のH1,W1については後述する。
【0031】
図8(a)に、
図4(a)とは別のフレア映像50の一例を示す。この例では、バーナー部51の先端部から比較的小さなフレアが放出されている。
図6を用いて説明した、フレア映像50の画素ごとに代表的なフレアのRGB輝度値を示す点および背景のRGB輝度値を示す点との距離に基づいてフレアが写った画素を検出する方法であれば、
図8(b)のフレア画像に示すようにフレアが小さいときでも、検出可能なことが確認できた。
【0032】
図9は、一実施形態におけるフレア画素数の計測結果の一例を示す図である。
図9のグラフの縦軸は、
図6を用いて説明した方法によって検出したフレアを示す画素の全画素数、横軸は時間を示している。
図9のグラフは、例えば、フレアが大きくなったときに撮影されたフレア映像に基づいて算出されたフレア画素数の推移と、フレアが小さくなった別の時間に撮影されたフレア映像に基づくフレア画素数の推移を並べて表示したものである。グラフ91は、フレアが大きくなったときに検出された画素数の推移を示し、グラフ92は、フレアが小さくなったときに検出された画素数の推移を示す。
目視により観察したフレアの大小と映像解析部33が検出したフレアの画素数が一致す
る結果が得られた。
【0033】
次にフレアガス流量の推定方法について説明する。
図10は、一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理を説明する図である。
図10にフレア画像におけるフレアを示す画素の画素数と、フレアガスの流量との関係を表した検量線の一例を示す。
図10の縦軸は、
図6を用いて説明した方法によって検出したフレアを示す画素の全画素数、横軸は、フレアスタックに設けられている流量計によって計測されたガス流量の計測値である。フレアガスの流量を計測する流量計が設けられたフレアスタックに監視システム1を導入し、例えば、カメラ10Aによってフレア映像を撮影する。映像解析部33がそのフレア映像を解析してフレアを示す画素の画素数を算出して記憶部35にフレア映像が撮影された時刻とともに記録する。この処理と並行して、流量計が計測した流量の情報を計測時刻とともに取得し、所定の記憶装置に記録する。記憶部35に記録された各時刻の全画素数と、同じ時刻に計測された流量の計測値と、を対応付けてマッピングすると、最小二乗法などにより、
図10に例示するような検量線101が得られる。このようにして作成した検量線101を記憶部35に記録する。フレアガス流量推定部34は、記憶部35に記録された検量線101を参照して、映像解析部33が検出したフレアの全画素数に対応するフレアガスの流量の推定値を算出する。また、フレアガス流量推定部34は、フレアガス流量の推定値と、閾値とを比較して、フレアガス流量の推定値が閾値を上回っていれば、アラームの発報を出力部36に指示する。
【0034】
(設定処理)
次に監視システム1によるフレアガス流量の推定処理について説明する。
まず、フレアガス流量の推定に先立って、各種設定処理を行う。
図11は、一実施形態における設定処理の一例を示す図である。
まず、映像取得部31がカメラ10A、カメラ10Bが撮影したフレア映像を取得する(ステップS1)。出力部36は、各カメラが撮影したフレア映像を監視装置30のモニターに表示する。次に監視員は、各フレア映像を参照して、バーナー部51の先端位置を設定する(ステップS2)。例えば、監視員は、先端部の座標情報を入力する等によって先端位置を指定する入力を行う。設定情報取得部32は、入力された情報を取得する。先端位置の座標情報が入力された場合、設定情報取得部32は、その座標情報をバーナー部51の先端位置の設定情報として記憶部35に記録する。バーナー部51の先端位置の設定は、映像解析部33が、画像解析により行ってもよい。
【0035】
次に監視員は、各フレア映像を参照して、フレア監視エリア52、背景エリア53を設定する(ステップS3)。フレア監視エリア52は、フレアが写った画素の代表的なRGB輝度値を検出する目的で設定する。監視員は、バーナー部51の先端付近の小さな範囲をフレア監視エリア52として設定する。これは、フレア以外の背景等が含まれないようにするためである。監視員は、フレア監視エリア52に対応する矩形の領域の頂点の座標を入力する等して、フレア監視エリア52を設定する。設定情報取得部32は、入力された座標情報をフレア監視エリア52の設定情報として記憶部35に記録する。
【0036】
背景エリア53は、空などの背景のRGB輝度値を検出する目的で設定する。監視員は、フレアや煙が写り込まない範囲を背景エリア53として設定する。監視員は、背景エリア53に対応する矩形の領域の頂点の座標を入力する等して、背景エリア53を設定する。設定情報取得部32は、入力された座標情報を背景エリア53の設定情報として記憶部35に記録する。
【0037】
これらの設定を行って、監視員が所定の操作を行うと、映像解析部33は、映像取得部31が取得したフレア映像のうちフレア監視エリア52に含まれる各画素のRGB輝度値を算出する。映像解析部33は、任意の画素のRGB輝度値を選択して、この値を代表的
なフレアのRGB輝度値(
図6の点61に相当)として記憶部35に記録する。また、映像解析部33は、映像取得部31が取得したフレア映像のうち背景エリア53に含まれる各画素のRGB輝度値を算出する。映像解析部33は、任意の画素のRGB輝度値を選択して、この値を背景のRGB輝度値(
図6の点63に相当)として記憶部35に記録する。あるいは、映像解析部33が算出したフレア監視エリア52に含まれる各画素のRGB輝度値を監視装置30の表示部に表示し、表示された輝度値を参照しながら、監視員が適切なRGB輝度値を監視装置30へ入力することによって、代表的なフレアのRGB輝度値を設定してもよい。背景のRGB輝度値についても同様である。
【0038】
なお、フレアの代表的なRGB輝度値や背景の代表的なRGB輝度値は、時間帯や季節、天候などに応じて複数セット設定されてもよい。例えば、記憶部35には、晴れの日のフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値、雨の日のフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値、昼間のフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値、夕方のフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値、などが記録されていてもよい。また、フレアのRGB輝度値について、代表的な値が複数存在する場合(例えば、火炎の中心付近のRGB輝度値と境界付近のRGB輝度値)、複数のRGB輝度値を設定してもよい。
【0039】
次に監視員は、アラーム発報の判定用閾値を監視装置30に設定する(ステップS4)。監視員は、フレアガスの流量に応じた複数の閾値を設定してもよい。例えば、監視員は、フレアガスの流量が“X1”ml/secを上回ったら、“フレアガス流量がX1を超えました”とのアラームを発報し、“X2”ml/sec(X2>X1)を上回ったら、“フレアガス流量がX2を超えました”とのアラームを発報するように設定する。設定情報取得部32は、入力された閾値とアラームの内容を記憶部35に記録する。
【0040】
(フレアガス流量の推定処理)
次にフレアガス流量の推定処理について説明する。まず、1台のカメラ10Aが撮影したフレア映像だけを用いてフレアガス流量を推定する処理について説明する。
図12は、一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理の一例を示す第1の図である。まず、映像取得部31がカメラ10Aによって撮影されたフレア映像を取得する(ステップS11)。映像取得部31は、フレア映像を映像解析部33へ出力する。映像解析部33は、フレア映像の各画素につき、以下の処理を行う。
まず、映像解析部33は、フレア映像のある画素のRGB輝度値を解析する(ステップS12)。次に映像解析部33は、解析したRGB輝度値を、Rの輝度値、Gの輝度値、Bの輝度値を座標軸に持つRGBの3次元空間にプロットする(ステップS13)。プロットされた点は、
図6の点62に相当する。次に映像解析部33は、代表的なフレアのRGB輝度値および背景のRGB輝度値からの距離を計算する(ステップS14)。具体的には、映像解析部33は、代表的なフレアのRGB輝度値に対応する点(
図6の点61)と、プロットした点(
図6の点62)との距離を算出する。また、映像解析部33は、背景のRGB輝度値に対応する点(
図6の点63)と、プロットした点(
図6の点62)との距離を算出する。このとき、例えば、時間帯ごとにフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値が設定されている場合、映像解析部33は、現在の時間帯に応じたフレアおよび背景のRGB輝度値の情報を記憶部35から読み出して3次元空間にプロットする。また、例えば、代表的なフレアのRGB輝度値が複数設定されている場合、それぞれのRGB輝度値に対応する点と、ステップS13にてプロットした点との距離を算出する。
【0041】
次に映像解析部33は、解析したRGB輝度値に対応する点が、フレアの代表的なRGB輝度値に対応する点に近いかどうかを判定する(ステップS15)。フレアの代表的なRGB輝度値に対応する点に近い場合(ステップS15;Yes)、映像解析部33は、
今回解析した画素は、フレアが写った画素であると判定する(ステップS16)。背景のRGB輝度値に対応する点に近い場合(ステップS15;No)、映像解析部33は、今回解析した画素は、背景が写った画素であると判定する(ステップS17)。次に映像解析部33は、フレア映像の全画素について解析を行ったかどうかを判定し(ステップS18)、全画素についての解析が完了するまで、ステップS12からの処理を繰り返す。映像解析部33は、ステップS12~S18の処理を繰り返す中で、フレアと判定した画素と背景と判定した画素に異なる色を付したフレア画像(
図7(a))を作成する。
【0042】
なお、ステップS12~ステップS18の処理をフレア映像に含まれる全画素について行うこととしたが、例えば、フレアスタックの設備が写っている箇所など、明らかにフレアが写らないエリアについては処理対象外としてもよい。あるいは、監視対象エリアを設定できるようにして、監視対象エリア内の画素に対してのみステップS12~ステップS18の処理を行うようにしてもよい。
【0043】
全画素についてフレアか背景かを判定する処理が完了すると、次に映像解析部33は、フレアと判定された画素群の中に空洞が存在するかどうかを判定する(ステップS19)。映像解析部33は、フレア画像を垂直方向にスキャンしながら、スキャン中の部分画像について水平方向にスキャンしたときにフレアが写った画素群、背景が写った画素群、フレアが写った画素群の順で画素群が検出されると空洞が存在すると判定する。空洞が存在する場合(ステップS19;Yes)、
図7を用いて説明した空洞補完処理を行う。具体的には、映像解析部33は、フレアの画素群に挟まれた非フレアの画像群にフレアであることを示す色を付してフレア画像を更新する。空洞が存在しない場合(ステップS19;No)、ステップS21の処理に進む。次に映像解析部33は、全部分画像について空洞の検出処理を行ったかどうかを判定し(ステップS21)、全部分画像について空洞の検出処理、補完処理が完了するまで、ステップS19からの処理を繰り返す。
【0044】
なお、フレアの補完処理は、フレア画像を水平方向にスキャンしながら、スキャン中の部分画像について垂直方向にスキャンしたときにフレアが写った画素群、背景が写った画素群、フレアが写った画素群の順で画素群が検出されると空洞が存在すると判定してもよい。
【0045】
空洞の補完処理が完了すると、次に映像解析部33は、フレア画像に基づいて、フレアと判定された画素の全画素数を算出する(ステップS22)。フレアと判定された画素には、ステップS16でフレアと判定された画素の他、ステップS20で補完した画素も含まれる。映像解析部33は、算出した画素数をフレアガス流量推定部34に出力する。次にフレアガス流量推定部34は、映像解析部33から取得したフレアと判定された画素数と、
図10に例示する検量線101とに基づいて、バーナー部51から放出されているフレアガスの流量を推定する。また、フレアガス流量推定部34は、フレアガス流量の推定値と、ステップS4で設定された閾値とを比較する。フレアガス流量の推定値が閾値を上回っている場合、フレアガス流量推定部34は、閾値に対応するアラームを出力するように出力部36へ指示する。出力部36は、フレアガス流量の推定値やアラームを出力する(ステップS23)。これにより、カメラ10Aが撮影したフレア映像に基づいて、バーナー部51から放出されるフレアガスの流量を推定することができる。
【0046】
次に2台のカメラ10A,10Bが撮影した2つのフレア映像を用いてフレアガス流量を推定する処理について説明する。
図13は、一実施形態におけるフレアガス流量の推定処理の一例を示す第2の図である。ステップS11からステップS21までの処理については、
図12で説明した処理と同様である。まず、映像取得部31がカメラ10A、10Bによって撮影されたフレア映像を取得する(ステップS11)。次に映像解析部33は、2つのフレア映像のそれぞれに
ついて、ステップS12からステップS18の処理を行う。まず、映像解析部33は、画素ごとにRGB輝度値を解析し(ステップS12)、RGBの3次元空間にプロットする(ステップS13)。次に映像解析部33は、プロットとした点とフレアの代表的なRGB輝度値および背景のRGB輝度値までの距離を計算し(ステップS14)、今回解析している画素のRGB輝度値が代表的なフレアのRGB輝度値に近いかどうかを判定する(ステップS15)。代表的なフレアのRGB輝度値に近い場合(ステップS15;Yes)、映像解析部33は、今回解析した画素は、フレアが写った画素であると判定する(ステップS16)。背景のRGB輝度値に近い場合(ステップS15;No)、映像解析部33は、今回解析した画素は、背景が写った画素であると判定する(ステップS17)。
映像解析部33は、以上の処理をカメラ10A,10Bが撮影した2つのフレア映像に含まれる全画素について行い、それぞれのフレア画像を作成する。
【0047】
次に映像解析部33は、フレアと判定された画素群の間に空洞が存在するかどうかを判定し(ステップS19)、空洞があれば補完する処理を行う(ステップS20)。
映像解析部33は、以上の処理を2つのフレア画像のそれぞれに対して行い、空洞を補完する。ここで、カメラ10Aが撮影したフレア映像に基づく補完処理後のフレア画像をフレア画像a、カメラ10Bが撮影したフレア映像に基づく補完処理後のフレア画像をフレア画像bとする。
【0048】
次に映像解析部33は、フレア画像aについて、フレアが写っている領域の水平方向の幅W1と垂直方向の高さH1を算出する(ステップS22A)。ここで、
図7(b)を参照する。水平方向の幅W1は、フレアが写る領域のうち最も幅がある部分における水平方向の画素数である。垂直方向の高さH1は、フレアが写る領域のうち最も高さがある部分における垂直方向の画素数である。
また、映像解析部33は、フレア画像bについて、フレアが写っている領域の水平方向の幅W2と垂直方向の高さH2を算出する(ステップS22A)。幅W2、高さH2の算出方法は、W1、H1と同様である。
【0049】
次に映像解析部33は、フレアを内包する直方体の体積Vを算出する(ステップS22B)。具体的には、高さH1と高さH2のうち画素数が大きい方をMax(H1,H2)とすると、映像解析部33は、以下の式(1)により体積Vを算出する。
体積V = Max(H1,H2)×幅W1×幅W2 ・・・・(1)
体積Vは、フレアを内包する直方体に含まれる画素数を示し、本実施形態では、これをフレアの画素数の近似値として用いる。例えば、風の影響でカメラ10Aから撮影したフレア映像ではフレアが小さく(細く)映っていても、他の方向からカメラ10Bが撮影したフレア映像では、幅の広いフレアが映っているような場合、体積Vを算出することにより、実態に近いフレアの大きさに対応する画素数を算出することができる。
【0050】
体積Vを算出すると、フレアガス流量推定部34は、体積V(画素数)と、検量線とに基づいて、バーナー部51から放出されているフレアガスの流量を推定する。なお、記憶部35には、体積Vとフレアガス流量の計測値との関係に基づいて作成された検量線が登録されている。
また、フレアガス流量推定部34は、フレアガス流量の推定値が閾値を上回っている場合、閾値に対応するアラームを出力するように出力部36へ指示する。出力部36は、フレアガス流量の推定値やアラームを出力する(ステップS23)。
【0051】
本実施形態の監視システム1によれば、フレア映像を監視装置30に入力するだけで、バーナー部51から放出されるフレアガスの流量を推定することができる。また、複数の閾値を設定することで、フレアガス流量が閾値を超過した場合にリアルタイムにアラームを発報することができる。これにより、不確かな目視によるフレアの確認や、高価な流量
計の導入を行うこと無く、フレアガスのロス量を把握することができる。また、
図1に示すようにフレア映像を監視用モニター25に表示させて従来通りの監視を行いつつ、監視装置30が通知するフレアガス流量の推定結果や通報されたアラームを参照することができる。また、監視員は、余剰ガスの性質やフレアスタックの設置環境などに応じて、フレア監視エリア52、背景エリア53、閾値、フレアに対応する輝度値などを任意に設定することができるので、どのような設備にも適用することができる。
【0052】
監視装置30における各処理の過程は、例えば監視装置30が有するCPU等がプログラムを実行することによって実現できる。監視装置30によって実行されるプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することによって実現してもよい。なお、監視装置30は、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、監視装置30に内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
なお、RGB輝度値とは、RGB色空間における赤(R)、緑(G)、青(B)の輝度値(0~255)の組み合わせで表される値のことである、白黒輝度値とは、0(黒)~255(白)の256階調で表される値のことである。
【符号の説明】
【0054】
1・・・監視システム
10A、10B・・・カメラ
15・・・映像取得装置
20・・・映像分配装置
25・・・監視用モニター
30・・・監視装置
31・・・映像取得部
32・・・設定情報取得部
33・・・映像解析部
34・・・フレアガス流量推定部
35・・・記憶部
36・・・出力部
50・・・フレア映像
52・・・フレア監視エリア
53・・・背景エリア
【手続補正書】
【提出日】2023-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレアを撮影した映像を取得する映像取得部と、
前記映像に含まれる複数の画素を、前記フレアを示す第1画素と前記第1画素と異なる第2画素とに分類する映像解析部と、
前記第1画素に分類された画素の数に基づいて、フレアガス配管を流れるフレアガスの流量を推定するフレアガス量推定部と、
推定された前記フレアガスの流量を出力する出力部と、
を備え、
前記映像解析部は、前記複数の画素のRGB輝度値と予め定められた前記フレアに対応するRGB輝度値とに基づいて、前記複数の画素を前記1画素と前記第2画素とに分類する、
監視装置。
【請求項2】
前記映像解析部は、予め定められた非フレアに対応するRGB輝度値に更に基づいて、前記複数の画素を前記1画素と前記第2画素とに分類する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記映像解析部は、前記複数の画素のRGB輝度値と前記フレアに対応するRGB輝度値との比較結果、及び、前記複数の画素のRGB輝度値と前記非フレアに対応するRGB輝度値との比較結果に基づいて、前記複数の画素を前記1画素と前記第2画素とに分類する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記映像解析部は、時間帯に応じて、前記フレアに対応するRGB輝度値を更新する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
前記映像解析部は、天候に応じて、前記フレアに対応するRGB輝度値を更新する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項6】
前記映像解析部は、前記第2画素に分類された画素が前記第1画素に分類された画素群に挟まれている場合に、前記第2画素に分類された当該画素を前記第1画素に更新する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の監視装置と、
前記映像を撮影する赤外線カメラと、
を備え、
前記フレアガス量推定部は、前記映像取得部が水蒸気を含む前記映像を取得した場合に、前記水蒸気を検出し、検出された前記水蒸気に基づいて、前記フレアガスの流量を推定する、
監視システム。
【請求項8】
コンピュータを、
フレアを撮影した映像を取得する映像取得部、
前記映像に含まれる複数の画素を、前記フレアを示す第1画素と前記第1画素と異なる第2画素とに分類する映像解析部、
前記第1画素に分類された画素の数に基づいて、フレアガス配管を流れるフレアガスの流量を推定するフレアガス量推定部、及び、
推定された前記フレアガスの流量を出力する出力部、
として機能させ、
前記映像解析部は、前記複数の画素のRGB輝度値と予め定められた前記フレアに対応するRGB輝度値とに基づいて、前記複数の画素を前記1画素と前記第2画素とに分類する、
プログラム。
【請求項9】
フレアを撮影した映像を取得するステップと、
前記映像に含まれる複数の画素を、前記フレアを示す第1画素と前記第1画素と異なる第2画素とに分類するステップと、
前記第1画素に分類された画素の数に基づいて、フレアガス配管を流れるフレアガスの流量を推定するステップと、
推定された前記フレアガスの流量を出力するステップと、を備え、
前記分類するステップは、前記複数の画素のRGB輝度値と予め定められた前記フレアに対応するRGB輝度値とに基づいて、前記複数の画素を前記1画素と前記第2画素とに分類する、
監視方法。