(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089914
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】縦型粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 7/08 20060101AFI20240627BHJP
B02C 7/16 20060101ALI20240627BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B02C7/08
B02C7/16
B02C25/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205453
(22)【出願日】2022-12-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】591173855
【氏名又は名称】杉山重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063DD03
4D063DD06
4D063GC23
4D063GD04
4D063GD15
4D067FF04
4D067FF14
4D067FF15
4D067GB02
(57)【要約】
【課題】微粉砕が可能で動力の損失が少なく、粉砕品が潤滑油で汚染されるおそれがなく、また粉砕品を完全に機外へ排出できる縦型粉砕機30を提供すること。
【解決手段】首振り用モータ36と下皿体34の自転用モータ37を同時稼働させ、首振り用モータ36によって偏心回転体35が回転し、下部主軸51が旋回する。同時に下皿体34の自転用モータ37の出力軸の回転が旋回している下部主軸51にリンク式カップリング60を介して伝達され、下部主軸51の旋回運動と回転運動はユニバーサルジョイント50を介して下皿体34に伝達され、下皿体34が回転しながら、自動調心コロ軸受47の中心47dを支点にして上下に揺動する。これにより、貫通穴33aに投入された原料が下皿体34の上面のテーパ面34aと上皿体33の下面のテーパ面33bで圧縮粉砕される。そして、粉砕品は貫通穴33aから回収部34bに遠心力で排出され、回収部34bから吸引管40aで吸引して回収される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に貫通穴が形成されるとともに、貫通穴の下端開口の周囲にテーパ面を形成した下面を有し、基台に回転可能に組み付けられるとともに上下動可能に組み付けた上皿体と、
基台に自動調心コロ軸受を介して回転可能かつ揺動可能に支持された上部主軸と、
上面に上皿体のテーパ面に当接するテーパ面が形成され、上部主軸の上端部に固定された下皿体と、
上皿のテーパ面が下皿体のテーパ面に圧接するように上皿体を下方へ付勢するスプリングと、
基台に固定され、原料を貫通穴に投入する原料供給口と、
基台に回転可能に組み付けられた偏心回転体と、
偏心回転体を駆動する首振り用モータと、
下皿体の自転用モータと、
偏心回転体の回転中心に対して回転中心が偏心するように偏心回転体に回転可能に組み付けられ、上部主軸とユニバーサルジョイントを介して連結されるとともに、下皿体の自転用モータの出力軸にリンク式カップリングを介して連結された下部主軸とを備え、
原料供給口から原料を上皿体の貫通穴に投入して首振り用モータと下皿体の自転用モータを同時稼働させ、
首振り用モータによって偏心回転体を回転させて下部主軸を旋回させ、
下皿体の自転用モータの出力軸の回転を旋回している下部主軸にリンク式カップリングを介して伝達し、
下部主軸の旋回運動と回転運動をユニバーサルジョイントを介して下皿体に伝達し、
下皿体を回転しながら、自動調心コロ軸受の中心を支点にして上下揺動させ、
貫通穴に投入された原料を下皿体の上面のテーパ面と上皿体の下面のテーパ面で圧縮粉砕することを特徴とする縦型粉砕機。
【請求項2】
溝構造を有するリング状の回収部を下皿体の外周に沿うように設け、貫通穴から回収部に排出された粉砕品を吸引管で吸引して回収することを特徴とする請求項1に記載の縦型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縦型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型粉砕機の一形式として、
図8に示すサイモンズ・ディスク粉砕機10が鉱山での砕石に用いられている。この粉砕機10は筒軸10Aを立設した基台10B、円板状の下皿体11、下向きに伏せた上皿体12、回転円板13、偏心機14、シュート15及びこれらが組み付けられ、筒軸10Aに回転可能に嵌合した回転体16を備えている。
【0003】
上皿体12は中心部に原料が投入される貫通穴12aが設けられている。この上皿体12は回転体16に上下動可能に組み付けられ、スプリング17で下皿体11に向けて付勢されている。回転体16の下部にはベベルギヤ18が設けられ、駆動用プーリ19で回転される駆動軸20に設けたべベルギヤ21に連結されている。
【0004】
下皿体11は取付台22に固定され、取付台22は回転体16に上下動可能で、かつ回転可能に組み付けられている。この取付台22の下面は凹レンズ状の曲面に形成され、回転円板13に支持されている。回転円板13は凸レンズ状の上面を有し、取付台22は下面が回転円板13の上面に嵌合するように載置されている。
【0005】
回転円板13は下面の中心に凸軸13aが設けられ、偏心機14の回転軸心に対して偏心した穴14aに嵌合している。偏心機14は回転体16の筒軸10Aに回転可能に組み付けられ、下端部外周にベベルギヤ14bが設けられている。このベベルギヤ14bは駆動軸20の先端に設けたベベルギヤ23と連結されている。
【0006】
駆動用プーリ19で駆動軸20を回転させると回転体16が回転して上皿体12と下皿体11が同方向に回転する。一方、偏心機14は回転体16と逆方向に回転する。回転円板13は偏心して偏心機14に連結されているので、偏心機14の回転に伴い旋回運動する。そして、回転円板13の旋回に伴い、取付台22に固定した下皿体11が凸軸13aを支点にして揺動するので、貫通穴12aに投入された原料が上皿体12と下皿体11に挟まれて圧潰され、粉砕される。そして、粉砕品は上皿体12と下皿体11の間から遠心力でシュート15へ排出され、シュート15から機外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したサイモンズ・ディスク粉砕機10では、下皿体11の揺動に伴い原料が下皿体11と上皿体12で挟まれて圧潰される。しかし、下皿体11と上皿体12はほぼ同じ速度で同じ方向に回転するため、原料には圧潰力が作用するだけで、擂り潰す力は作用しない。そのため、サイモンズ・ディスク粉砕機10は大塊から中粒までの粗粉砕にしか適さず、微粉砕には適さない。
【0009】
回転円板13が自転しながら揺動するので、取付台22の下面と回転円板13の上面との間にすべり運動が発生する。加えて、取付台22の下面と回転円板13の上面に原料を圧縮粉砕するときの反力が加わり大きな運転動力の損失が生ずる。
【0010】
取付台22の下面と回転円板13の上面のすべり運動部分には常に多量の潤滑油を注入しなければならず、この潤滑油の漏れ、飛散が粉砕品を汚染する。
【0011】
粉砕品をシュート15で機外に排出しているが、機内に残留する粉砕品を完全排出することは困難である。そのため電子部品素材、二次電池素材など、厳重に成分管理しなければならない原料の粉砕には適合しない。
かかる問題点に鑑み、本発明は微粉砕が可能で動力の損失が少なく、粉砕品が潤滑油で汚染されるおそれがなく、また粉砕品を完全に機外へ排出できる縦型粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は縦型粉砕機であって、
中心部に貫通穴が形成されるとともに、貫通穴の下端開口の周囲にテーパ面を形成した下面を有し、基台に水平回転可能に組み付けられるとともに上下動可能に組み付けた上皿体と、
基台に自動調心コロ軸受を介して回転可能かつ揺動可能に支持された上部主軸と、
上面に上皿体のテーパ面に当接するテーパ面が形成され、上部主軸の上端部に固定された下皿体と、
上皿のテーパ面が下皿体のテーパ面に圧接するように上皿体を下方へ付勢するスプリングと、
基台に固定され、原料を貫通穴に投入する原料供給口と、
基台に回転可能に組み付けられた偏心回転体と、
偏心回転体を駆動する首振り用モータと、
下皿体の自転用モータと、
偏心回転体の回転中心に対して回転中心が偏心するように偏心回転体に回転可能に組み付けられ、上部主軸とユニバーサルジョイントを介して連結されるとともに、下皿体の自転用モータの出力軸にリンク式カップリングを介して連結された下部主軸とを備え、
首振り用モータで偏心回転体を回転させて下部主軸を旋回させ、
旋回する下部主軸にリンク式カップリングを介して下皿の自転用モータの出力軸の回転を伝達して下部主軸を回転させ、
ユニバーサルジョイントを介して下軸受の回転を上部主軸に伝達して下皿体を自転させるとともに、下部主軸の旋回運動を上部主軸に伝達して下皿体を自動調心コロ軸受を支点に上下に揺動させながら旋回させ、
貫通穴に投入された原料を下皿体の上面と上皿体の下面で圧縮粉砕することを特徴とする。
【0013】
そして好ましくは下皿体の外周に沿うように下皿体にリング溝状の粉砕品の回収部を組み付け、 粉砕品を貫通穴から遠心力で回収部に排出する。
【0014】
また、好ましくは、粉砕品の回収部から粉砕品を吸引管で吸引する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粉砕機では、下皿体とスプリングで付勢された上皿体が接触するのは下皿体及び上皿体の半径方向に延びる一線となり、この接触線は下皿体の自転と揺動に伴い下皿体と上皿体の間を周回する。下皿体の自転に伴って下皿体と上皿体の間に原料が噛み込まれると、原料の食い込みで上皿体は下皿体の自転に従動し、ついて廻りする。そして、ついて廻りの際に上皿体を廻すための運動エネルギーが原料を介して上皿体に伝わり、そのとき原料を擂り潰す作用が生じる。そのため原料には圧潰する力と擂り潰す力が同時に作用するので、原料を微粉砕できる。
【0016】
従来のサイモンズ・ディスク粉砕機が下皿体と上皿体の両方に動力を伝えて回転させているが、本発明の粉砕機では下皿体だけに動力を伝え、下皿体の自転によって原料が下皿体と上皿体の間に噛み込まれたときのみ、ついて廻りする。そのため動力損失が小さく、また下皿体と上皿体の間に潤滑油を注入する必要もないので、潤滑油で粉砕品が汚染されることもない。
【0017】
粉砕品を貫通穴から遠心力で回収部に排出し、回収部から粉砕品を吸引管で吸引することにより、粉砕品を完全に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例に係る縦型粉砕機を示す一部破断した断面図である。
【
図2】同縦型粉砕機の主要部を示す一部破断した断面図である。
【実施例0019】
以下に本発明を
図1及び
図2に基づき説明する。
図1には本発明の一実施例に係る縦型粉砕機30が示され、
図2には縦型粉砕機の主要部が拡大して示されている。当該縦型粉砕機30は基台31、基台31に立設したハウジング32、上皿体33、下皿体34、偏心回転体35、首振り用モータ36及び下皿体34の自転用モータ37を備えている。
【0020】
ハウジング32の上端部に2本の支柱38,39が立設して固定され、2本の支柱38,39の上端部に水平フレーム40が固定されている。水平フレーム40には筒軸41が垂設されている。
【0021】
上皿体33は取付プレート42に固定されている。この取付プレート42は中心部に筒状のブラケット43が立設して固定され、このブラケット43が筒軸41にベアリンク44で回転可能に、かつ上下動可能に嵌合し、コイルスプリング45で下方へ付勢されている。
【0022】
図3に示すように、上皿体33の中心部には貫通穴33aが形成されている。この貫通穴33aは下端開口面に向けて拡径している。上皿体33の貫通穴33aの下面の下端開口端面の周囲にはテーパ面33bが形成されている。
一方、取付プレート42の中心部にも貫通穴33aに連通する貫通穴42aが形成されている。筒軸41には貫通穴42aに連通する原料供給口46が接続されている。
【0023】
ハウジング32の上部には自動調心コロ軸受47によって上部主軸48が回転可能に組み付けられ、ハウジング32内に垂設されている。
図4と
図5に示すように、自動調心コロ軸受47は内輪47aに二列の軌道溝、外輪47bに球面の軌道面及び転動体47cがたる形のころ軸受で、外輪47bの軌道面の中心が軸受中心47dに一致しているので自動調心性があり、そのため上部主軸48はハウジング32に軸受中心47dを支点にして矢印A方向に揺動可能に組み付けられている。
【0024】
下皿体34は取付プレート49に固着され、取付プレート49が上部主軸48の上端部に固着されている。
図6に示すように、下皿体34の上面には上皿体33のテーパ面33bと同じ傾斜角度を有し、コイルスプリング45で付勢されたテーパ面33bが圧接するテーパ面34aが形成されている。取付プレート49には下皿体34の外周に沿うようにリング状の回収部34bが固定されている。この回収部34bは溝構造を有する。水平フレーム40にはこの回収部34bに達する吸引管40aが垂設されている。
【0025】
上部主軸の下端部はユニバーサルジョイント50を介して下部主軸51に連結されている。この下部主軸51はベアリング52、53で偏心回転体35に回転可能に支持されている。偏心回転体35はベアリング55,56でハウジング32の下部に回転可能に組み付けられている。そして、偏心回転体35の回転中心線に対し下部主軸51はその回転中心線が偏心するように設けられている。偏心回転体35の下部にはギヤ57が固着され、ギヤ57と首振り用モータ36の出力軸に固着したギヤ58がベルト59で連結されている。また下部主軸51は
図7に示すリンク式カップリング60を介して下皿体34の自転用モータ37の出力軸に連結されている。このリンク式カップリング60は、リンクのクランクモーションを利用した軸心違いカップリングで、一方のエンドディスク60aに入力された動力は、リンク60bとセンターディスクを60c介して他方のエンドディスク60dに伝達される。この、リンク60bの長さによって軸心の移動量が決定されるので、軸心違いでの動力伝達が可能なだけではなく、回転中の軸心の平行移動も可能となる。
【0026】
本実施例に係る縦型粉砕機30の構造は以上の通りであって、原料供給口46から原料を上皿体33の貫通穴33aに投入し、首振り用モータ36と下皿体34の自転用モータ37を同時稼働させる。首振り用モータ36によって偏心回転体35が回転し、下部主軸51が旋回する。同時に下皿体34の自転用モータ37の出力軸の回転が旋回している下部主軸51にリンク式カップリング60を介して伝達され、下部主軸51の旋回運動と回転運動はユニバーサルジョイント50を介して下皿体34に伝達され、下皿体34が回転しながら、自動調心コロ軸受47の中心47dを支点にして上下(矢印A方向)に揺動する。これにより、貫通穴33aに投入された原料が下皿体34の上面のテーパ面34aと上皿体33の下面のテーパ面33bで圧縮粉砕される。そして、粉砕品は貫通穴33aから回収部34bに遠心力で排出され、回収部34bから吸引管40aで吸引して回収される。
【0027】
本実施例に係る縦型粉砕機30で原料が圧縮粉砕されるとき、下皿体34とコイルスプリング45で付勢された上皿体33が接触するのは下皿体34及び上皿体33の半径方向に延びる一線となり、この接触線は下皿体34の自転と揺動に伴い下皿体34と上皿体33の間を周回する。下皿体34の自転に伴って下皿体34と上皿体33の間に原料が噛み込まれると、原料の食い込みで上皿体33は下皿体34の自転に従動し、ついて廻りする。そして、ついて廻りの際に上皿体33を廻すための運動エネルギーが原料を介して上皿体33に伝わり、そのとき原料を擂り潰す作用が生じる。そのため原料には圧潰する力と擂り潰す力が同時に作用するので、原料を微粉砕できる。
【0028】
従来のサイモンズ・ディスク粉砕機10が下皿体11と上皿体12の両方に動力を伝えて回転させているが、本実施例に係る縦型粉砕機30では下皿体34だけに動力を伝え、下皿体34の自転によって原料が下皿体34と上皿体33の間に噛み込まれたときのみ、ついて廻りする。そのため動力損失が小さく、また下皿体34と上皿体33の間に潤滑油を注入する必要もないので、潤滑油で粉砕品が汚染されることもない。
【0029】
粉砕品を貫通穴33aから遠心力で回収部34bに排出し、回収部34bから粉砕品を吸引管40aで吸引することにより、粉砕品を完全に排出できる。