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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089918
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】モータコイルおよびモータ固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20240627BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H02K3/18 Z
H02K1/18 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205461
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】519209037
【氏名又は名称】富田電機股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】張金鋒
(72)【発明者】
【氏名】朱智盟
(72)【発明者】
【氏名】呉智正
(72)【発明者】
【氏名】張辰輝
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA09
5H601CC01
5H601DD11
5H601DD18
5H601EE03
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA36
5H601GA40
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB48
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD12
5H601GD13
5H601GD18
5H601JJ10
5H603AA09
5H603BB01
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC11
5H603CC15
5H603CC17
5H603CD21
5H603CE02
5H603CE05
5H603CE09
5H603FA15
5H603FA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モータコイルと、モータコイルを有するモータ固定子とを提供する。
【解決手段】金属ワイヤ11で形成された金属コイル10である、モータコイルであって、金属ワイヤ11の厚さは、金属ワイヤ11の第1の端部12から、金属ワイヤ11の第2の端部13へと徐々に減少し、金属ワイヤ11の断面積はすべて等しい、モータコイル。金属コイル10は、周囲方向に沿って螺旋形状を形成する金属ワイヤ11の複数の積層である。モータ固定子は、複数の歯部を有する固定子鉄心セットを備え、金属コイル10は、各固定子鉄心セットの外面にスリーブされ、第1の端部12および第2の端部13が、それぞれモータ鉄心部分および外側部分に面する。金属ワイヤ11は、外面にポリマ層を有し、ポリマ層と金属ワイヤ11との間に、絶縁被膜が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ワイヤで形成された金属コイルである、モータコイルであって、
前記金属ワイヤは、第1の端部および第2の端部を有し、
前記金属ワイヤの厚さは、前記第1の端部から前記第2の端部へと徐々に減少し、
前記金属ワイヤの断面積はすべて等しく、
前記金属コイルは、周囲方向に沿って螺旋形状を形成する前記金属ワイヤの複数の積層であることを特徴とする、
モータコイル。
【請求項2】
前記金属コイルの幅は、モータ鉄心部分からモータ外側部分へと徐々に増加することを特徴とする、請求項1に記載のモータコイル。
【請求項3】
前記金属コイルの外面は、ポリマ層を有することを特徴とする、請求項1に記載のモータコイル。
【請求項4】
前記ポリマ層と、前記金属コイルの前記外面との間に、絶縁被膜が設けられることを特徴とする、請求項3に記載のモータコイル。
【請求項5】
前記絶縁被膜は、ポリイミド(PI)からなる物質であることを特徴とする、請求項4に記載のモータコイル。
【請求項6】
前記ポリマ層は、液晶ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン、または硫化ポリフェニレンからなることを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のモータコイル。
【請求項7】
各ユニットの延長方向における前記金属コイルのコイル巻数は、1回であることを特徴とする、請求項1に記載のモータコイル。
【請求項8】
モータ固定子であって、
周囲部分と、前記周囲部分の両側に設けられたスロットとを含む、複数の歯部を有する、固定子鉄心セットと、
請求項1に記載の金属ワイヤによっておのおの形成された、複数の金属コイルとを備え、
前記金属コイルのおのおのは、前記金属ワイヤの第1の端部および第2の端部が、それぞれ鉄心部分および外側部分に面するように前記周囲部分にスリーブされ、
前記金属コイルの外面は、ポリマ層を有し、
前記ポリマ層と、前記金属コイルの前記外面との間に、絶縁被膜が設けられることを特徴とする、
モータ固定子。
【請求項9】
前記固定子鉄心セットは、リング状に配置され、前記固定子鉄心セットの外側に環状鉄心がスリーブされ、前記歯部および前記環状鉄心は、その間に、前記金属コイルを収容するための空間を形成し、前記金属コイルは、前記空間の容量の少なくとも85%を占めることを特徴とする、請求項8に記載のモータ固定子。
【請求項10】
前記金属コイルの前記外面を覆う前記ポリマ層の厚さは、0.5mmから0.8mmであることを特徴とする、請求項8に記載のモータ固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータコイル、より詳細には、高密度のモータ固定子コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
モータコイルは、ワイヤの巻上およびフィードを進める前に、固定子鉄心のスロットパターンおよびサイズに適合させる必要があり、これは、固定子鉄心に巻かれるコイルの数およびコイルを巻く方法を制限する。その結果、一般に、固定子鉄心に巻かれたモータコイルの密度は市場では高くなく、モータ動作の効率にさらに影響を与える。
より高いワイヤのフィードおよび生産が予想される場合は、対応する鉄心スロットを拡大して、より多くのコイルを収容する必要があるが、他のメカニズムおよびハウジングの全体の容積が同時に拡大され、全体の容積とモータの重量とが増加する。
【0003】
モータの動作中、コイルは高温を発生し、高温は、モータの性能およびその耐用年数に影響を与える。したがって、コイルと固定子鉄心との間の熱伝導率を高めることができれば、コイルの放熱効率とモータの耐用年数とを、同時に向上させることができる。したがって、固定子鉄心に巻かれるコイルの密度を高め、モータの効率を高め、コイルと固定子鉄心との間の熱伝導率を高める方法が、現場で解決する必要がある緊急の課題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、モータコイルと、モータコイルを有するモータ固定子とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモータコイルは、金属ワイヤで形成された金属コイルであるモータコイルであって、金属ワイヤは、第1の端部および第2の端部を有し、金属ワイヤの厚さは、第1の端部から第2の端部へと徐々に減少し、金属ワイヤの断面積がすべて等しい。金属コイルは、周囲方向に沿って螺旋形状を形成する金属ワイヤの複数の積層である。
【0006】
この層は、モータ鉄心部分からモータ外側部分へと徐々に増加する。
【0007】
金属コイルの外面は、ポリマ層を有する。
【0008】
ポリマ層と、金属コイルの外面との間に、絶縁被膜が設けられる。
【0009】
絶縁被膜は、ポリイミド(PI)からなる物質である。
【0010】
ポリマ層は、液晶ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン、または硫化ポリフェニレンからなる。
【0011】
各ユニットの延長方向における金属コイルのコイル巻数は、1回である。
【0012】
本発明のモータ固定子は、周囲部分と、周囲部分の両側に設けられたスロットとを含む、複数の歯部を有する、固定子鉄心セットと、金属ワイヤによっておのおの形成された、複数の金属コイルと、を備える。金属コイルのおのおのは、金属ワイヤの第1の端部および第2の端部が、それぞれ鉄心部分および外側部分に面するように、周囲部分にスリーブされる。金属コイルの外面は、ポリマ層を有し、ポリマ層と、金属コイルの外面との間に、絶縁被膜が設けられる。
【0013】
固定子鉄心セットはリング状に配置され、固定子鉄心セットの外側に環状鉄心がスリーブされ、歯部と環状鉄心との間に、金属コイルを収容するための空間が形成され、金属コイルは、空間の容量の少なくとも85%を占める。
【0014】
金属コイルの外面を覆うポリマ層の厚さは、0.5mmから0.8mmである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施形態の金属コイルの側面の三次元概略図である。
図2】本開示の金属コイルの上面概略図である。
図3】本開示の金属コイルおよび歯部の分解概略図である。
図4】金属コイルと歯部とが結合された、本開示の実施形態の概略図である。
図5】本開示の実施形態のモータ固定子の断面概略図である。
図6】本開示の実施形態のモータ固定子の部分拡大断面概略図である。
図7】本開示の実施形態のモータ固定子の分解三次元概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
モータコイルの金属コイル10を示す図1および図2を参照されたい。
【0017】
本開示のモータコイルは、約1000rpmの速度および200N-mのトルクを有する低速かつ高トルクのモータに適用される。モータコイルは、平坦な銅製ワイヤで巻かれており、金属コイル10は、モータ鉄心部分Hの近くの第1の端部12と、モータ外側部分Rの近くの第2の端部13とを有する平坦な金属ワイヤ11からなる。
モータ鉄心部分Hおよびモータ外側部分Rを、金属コイル10の延長方向Dとみなしたとき、金属ワイヤ11は、延長方向Dに沿って取り囲むことによって金属コイル10を形成し、金属コイル10の各ユニットにおいて、延長方向Dにコイルを1回だけ巻く。言い換えれば、金属ワイヤ11の第1の端部12と第2の端部13との間に、螺旋形状層14を含む。
【0018】
同じ周回内の銅製ワイヤのサイズがあまりにも異なる場合、表皮効果により、銅損失が増加する可能性がある。したがって、異なる位置の銅製ワイヤの面積を、できるだけ同じにする必要がある。
図6を参照して示すように、この実施形態では、金属ワイヤ11の厚さは、第1の端部12から第2の端部13へと徐々に減少し、すなわち、第1の端部12の厚さT1は、第2の端部13の厚さT2よりも厚く、金属ワイヤ11の各部分のワイヤ面積が、周囲方向に沿って実質的に等しいという要件を満たすために、平坦な金属ワイヤ11の幅を、徐々に増加させる必要がある。つまり、第1の端部12のワイヤ幅Hwは、第2の端部13のワイヤ幅Rwよりも狭い。
いくつかの実施形態では、金属ワイヤ11の厚さは、周囲方向において徐々に減少し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、金属ワイヤ11が各(巻の)コイルに対して同じ厚さを有し、コイルの異なる層14に対して、異なる厚さを有することも可能である。
【0019】
層14として形成されるコイルでは、各コイルの内側141が同一面上にあるため、金属コイル10の外側142の幅は、モータ外側部分Rに向かって、金属コイル10の延長方向Dに沿って、徐々に広くなる。つまり、第1の端部12の近くのコイル幅W1は、第2の端部13の近くのコイル幅W2よりも小さく、モータ鉄心部分Hの延長方向Dから、モータ外側部分Rに向かって見た場合、複数の層14の断面は、台形形状を形成する。
【0020】
金属ワイヤ11は、金属コイル10を形成する前に絶縁被膜15で覆われており、絶縁被膜15は、300℃から400℃の高温に耐えることができる。この実施形態では、絶縁被膜15は、ポリイミド(PI)からなる。絶縁被膜15の外面は、熱伝導率を高めるために使用され、液晶ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン、または硫化ポリフェニレンからなるポリマ層16を有する。
【0021】
固定子鉄心セット20、複数の金属コイル10、および環状鉄心25を備えるモータ固定子200の実施形態である、図3から図7を参照されたい。
【0022】
固定子鉄心セット20は、周囲部分211および取付端部22を有する複数の歯部21を有し、周囲部分211は、歯部21の両側にスロット2111を有する。
【0023】
金属コイル10の構造は、図1および図2に示す実施形態に記載されているので、同じ部分は、これ以上詳細に説明しない。
金属コイル10は、歯部21の取付端部22から周囲部分211上でスリーブされ、スロット2111の側壁2112に対して停止し、それにより、金属コイル10の層14の各コイルの内側141が、周囲部分211の輪郭に一致し、歯部21の取付端部22が、モータ外側部分Rに向けられ、環状鉄心25の内面251に係合するように、複数の固定子鉄心セット20が、リング状に配置される。一方、金属コイル10は、スロット2111の側壁2112と、環状鉄心25の内面251との間に形成される空間26に閉じ込められる。それに加えて、金属コイル10は、各空間26の容量の少なくとも85%を占める。
【0024】
なお、金属コイル10が、周囲部分211にスリーブされた場合、第1の端部12の近くのコイルは、より小さなコイル幅W1を有し、モータ鉄心部分H側を向く一方、第2の端部13の近くのコイルは、より大きなコイル幅W2を有し、モータ外側部分Rの方を向く。このため、金属コイル10は、空間26の容量の少なくとも85%を占めるように、モータ外側部分Rの近くの空間を埋めることができる。それに加えて、各層14の厚さは、モータ外側部分Rに向かって徐々に減少するので、モータ固定子200のサイズも低減される。
【0025】
金属コイル10が、歯部21の周囲部分211にスリーブされ、スロット2111内に配置されるとき、ポリマ層16は、金属コイル10の外面の周りを覆い、被覆の厚さは0.5mmから0.8mmである。この実施形態では、ポリマ層16は、高流動性液晶ポリマからなり、これは、金属コイル10をスロット2111から仕切ることを可能にし、コイル表面上の絶縁被膜15の損傷によって引き起こされる短絡を防止する。ポリマ層16の使用により、金属コイル10の厚さを増加させ、これは、金属コイル10が歯部21にスリーブされる前に、製造リスクを低減し、層14の強度を増加させることができる。
【0026】
ポリマ層16で被覆した後、金属コイル10は、モータが励磁されて高速で振動するとき、歯部21との直接接触による摩擦損傷も回避できる。また、この実施形態における最大モータ駆動電圧96VDCのような低電圧モータでは、流動性の良い材料を、ポリマ層16として使用できれば、金属コイル10上に形成される絶縁層の厚さは、より薄く、より平坦になり、形成後の幾何学的精度を向上させることができる。これにより、絶縁層として絶縁紙を使用する場合と比較して、ポリマ層16の平坦な表面は、熱伝導率をさらに向上させることができる。
【0027】
モータ固定子200には、各金属コイル10の第1の端部12および第2の端部13にそれぞれ接続されるバスバー30が追加的に設けられ、複数の固定子鉄心セット20が、互いに直列に接続できるようになる。
【0028】
結論として、本実施形態で使用される金属コイル10は、モータ固定子200の歯部21側のスロット2111と、環状鉄心25の内面251との間の空間26の形状を満たす巻線構造を有し、その結果、金属コイル10は、歯部21を高密度で取り囲むことができ、電流密度を下げることができる。これによって、電気エネルギの損失を低減し、モータの効率を高める。
モータコイルを使用することによって、モータ全体のサイズおよび重量を低減することに加えて、高流動性ポリマ層16が、金属コイル10とスロット2111との間を埋め、金属コイル10の周囲をポリマ層で覆い、超薄外層をも形成し、金属コイル10と歯部21との間のギャップを減少させ、金属コイル10と歯部21との間の熱伝導率を増加させ、その結果、金属コイル10の熱放射効率を高める。
【0029】
他の実施形態では、金属コイル10は、各スロット2111の容量の少なくとも90%、または少なくとも95%を占める。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7