(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089925
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】食器用の液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20240627BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20240627BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20240627BHJP
C11D 1/825 20060101ALI20240627BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20240627BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/22
C11D17/04
C11D1/825
C11D1/722
C11D1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205473
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 真大
(72)【発明者】
【氏名】神村 絵美
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC23
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA17
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB08
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】油汚れに対する洗浄力をより高め、ウォータスポットを抑制できる食器用の液体洗浄剤組成物。
【解決手段】(A)成分:重量平均分子量100,000以上のノニオン性セルロースと、(B)成分:ノニオン界面活性剤と、(C)成分:下記(c1)式で表される化合物、及び下記(c2)式で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、を含有することよりなる。
R3-O-(C2H4O)x-(C3H6O)y-R4・・・(c1)、C6H5-(C2H4O)l-(C3H6O)m-(CH2)n-R5・・・(c2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:重量平均分子量100,000以上のノニオン性セルロースと、
(B)成分:ノニオン界面活性剤と、
(C)成分:下記(c1)式で表される化合物、及び下記(c2)式で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、
を含有する、食器用の液体洗浄剤組成物。
R3-O-(C2H4O)x/(C3H6O)y-R4・・・(c1)
((c1)式中、R3、R4は、それぞれ独立にH、OH、炭素数1~6のアルケニル基又はフェニル基であり、xは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、yは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数である(但し、xとyとが同時に0になることはない)。)
C6H5-(C2H4O)l/(C3H6O)m-(CH2)n-R5・・・(c2)
((c2)式中、R5はH又はOHであり、lは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、mは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、nは(CH2)の平均繰り返し数を表す0~3の数である。)
【請求項2】
前記(B)成分/前記(A)成分で表される質量比は、0.2~200である、請求項1に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分/前記(A)成分で表される質量比は、0.05~200である、請求項1又は2に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
スプレー用である、請求項1又は2に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗い行動において、被洗物である食器の油汚れを確実に落とすための「油汚れ洗浄力」に加え、「洗浄後に水滴や水跡が食器に残らないように乾くこと」(速乾性)が清潔衛生のイメージ向上の観点から求められている。
洗浄後の食器を乾燥した後の水跡(ウォータスポット)の原因は、水滴残りである。食器洗浄後に付着していた水滴が乾燥することで、表面にウォータスポットを形成する。この問題に対して、食器表面に高分子等を吸着させることで、洗浄後の食器表面の状態を変化させる検討が行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、アニオン界面活性剤と、アミンオキシド型界面活性剤又は両性界面活性剤と、カチオン化高分子と、キレート剤と、3~6価アルコールのプロピレンオキシド付加物と、を特定の量比で含む、食器用の液体洗浄剤組成物が提案されている。特許文献1の発明によれば、ヌル付きの低減と、水切れ性の向上と、が図られている。
特許文献2には、カチオン多糖類と、アルカリ剤と、アニオン界面活性剤と、水とを特定の質量比で含む、硬質表面表の液体洗浄剤組成物が提案されている。特許文献2の発明によれば、油汚れの洗浄力、防汚性の向上と、が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022―063462号公報
【特許文献2】特開2022―055708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術は、陶器、ポリ塩化ビニル(PVC)の被洗物に対するウォータスポットを抑制できるものの、ポリプロピレン(PP)の被洗物を想定していなかった。PPは疎水性であり、疎水性の食器に付着した油汚れは強固である。このため、油汚れに対する洗浄力をより高めつつ、ウォータスポットの抑制を図ることが求められている。
そこで、本発明は、油汚れに対する洗浄力をより高め、ウォータスポットを抑制できる食器用の液体洗浄剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
(A)成分:重量平均分子量100,000以上のノニオン性セルロースと、
(B)成分:ノニオン界面活性剤と、
(C)成分:下記(c1)式で表される化合物、及び下記(c2)式で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、
を含有する、食器用の液体洗浄剤組成物。
R3-O-(C2H4O)x/(C3H6O)y-R4・・・(c1)
((c1)式中、R3、R4は、それぞれ独立にH、OH、炭素数1~6のアルケニル基又はフェニル基であり、xは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、yは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数である(但し、xとyとが同時に0になることはない)。)
C6H5-(C2H4O)l/(C3H6O)m-(CH2)n-R5・・・(c2)
((c2)式中、R5はH又はOHであり、lは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、mは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、nは(CH2)の平均繰り返し数を表す0~3の数である。)
<2>
前記(B)成分/前記(A)成分で表される質量比は、0.2~200である、<1>に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
<3>
前記(C)成分/前記(A)成分で表される質量比は、0.05~200である、<1>又は<2>に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
<4>
スプレー用である、<1>又は<2>に記載の食器用の液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食器用の液体洗浄剤組成物によれば、油汚れに対する洗浄力をより高め、ウォータスポットを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(食器用の液体洗浄剤組成物)
本発明の食器用の液体洗浄剤組成物(以下、単に「液体洗浄剤組成物」ということがある)は、(A)~(C)成分を含有する。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、重量平均分子量100,000以上のノニオン性セルロースである。液体洗浄剤組成物は、(A)成分を含有することで、ウォータスポットの形成を抑制できる(ウォータスポット抑制効果)。
【0010】
(A)成分は、水に溶けた時に、イオン化しない水酸基を持ったセルロース誘導体であり、水酸基の一部がアルコキシ基又はヒドロキシアルコキシ基で置換されたセルロース誘導体である。
置換基であるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~3のアルコキシ基が挙げられる。置換基であるヒドロキシアルコキシ基としては、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基等の炭素数1~3のヒドロキシアルコキシ基が挙げられる。以下、アルコキシ基とヒドロキシアルコキシ基とを総じて(ヒドロキシ)アルコキシ基という。
(A)成分における(ヒドロキシ)アルコキシ基による置換度は、4~70mol%が好ましく、4~30mol%がより好ましい。置換度が上記下限値以上であると、洗浄力、ウォータスポット抑制効果をより高められる。置換度が上記上限値以下であると、洗浄力、ウォータスポット抑制効果をより高められる。
【0011】
(A)成分としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等が挙げられる。中でも、(A)成分としては、HPMCが好ましい。これらの(A)成分であると、洗浄力をより高め、ウォータスポット抑制効果をより高められる。
【0012】
(A)成分の重量平均分子量は、100,000以上であり、200,000~1,000,000が好ましく、200,000~300,000がより好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であると、ウォータスポット抑制効果をより高められる。重量平均分子量が上記上限値以下であると、洗浄力をより高められる。
【0013】
(A)成分の2質量%水溶液の粘度は、40~20,000mPa・sが好ましく、3,000~14,000mPa・sがより好ましく、3,000~5,600mPa・sがさらに好ましい。粘度が上記下限値以上であると、ウォータスポット抑制効果をより高められる。粘度が上記上限値以下であると、洗浄力をより高められる。
粘度は、25℃の(C)成分の2質量%の水溶液をB型粘度計で測定した値である。粘度の測定条件は、以下の通りである。
【0014】
測定条件:
[ローター]
測定対象の粘度に対応するローター番号、ローター回転数は、下記の通りである。
・粘度が500mPa・s未満:ローター番号No.2、回転数60rpm。
・粘度が500mPa・s以上2000mPa・s未満:ローター番号No.3、回転数60rpm。
・粘度が2000mPa・s以上10000mPa・s未満:ローター番号No.4、回転数60rpm。
・粘度が10000mPa・s以上50000mPa・s未満:ローター番号No.4、回転数12rpm。
【0015】
(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1~2質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましく、0.5~1質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、ウォータスポット抑制効果のさらなる図れる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、洗浄力のさらなる向上を図れる。
【0016】
<(B)成分>
(B)成分は、ノニオン界面活性剤である。液体洗浄剤組成物は(B)成分を含有することで、油汚れに対する洗浄力を高められる。加えて、液体洗浄剤組成物は(B)成分を含有することで、スプレー容器から吐出した際に、広範囲に均一に吹き付けられる(スプレー性に優れる)。
【0017】
(B)成分としては、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8~18の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられる。中でも、スプレー性をより高める観点からは、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤としては、下記(b1)式で表される界面活性剤が挙げられる。
【0019】
R1-O-(R2O)j-H・・・(b1)
【0020】
((b1)式中、R1は炭素数10~18の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であり、R2は炭素数1~3のアルキレン基、アルケニレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、エチレン基がさらに好ましく、jは(R2O)の平均繰り返し数を表し、1~20の数である。)
【0021】
R1の炭素数は、8~10が好ましい。
R1は、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよい。
R1が直鎖である場合、-O-は、R1の1級炭素に結合していてもよいし、R1の2級炭素に結合していてもよい。
R1としては、分岐鎖又は2級炭化水素が好ましい。
R2の炭素数は、2~3が好ましく、2がより好ましい。
【0022】
jは、(R2O)(即ち、オキシアルキレン基)の平均繰り返し数(即ち、アルキレンオキシドの平均付加モル数)を表す。jは、5~15がより好ましい。
【0023】
(B)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、洗浄力のさらなる向上を図れる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、ウォータスポット抑制効果のさらなる向上を図れる。
【0024】
(A)成分に対する(B)成分の質量比であり、(B)成分/(A)成分で表される質量比(B/A比)は、0.2~200が好ましく、3.33~30がより好ましく、10~20がさらに好ましい。B/A比が上記下限値以上であると、洗浄力のさらなる向上を図れる。B/A比が上記上限値以下であるとウォータスポット抑制効果のさらなる向上を図れる。
【0025】
<(C)成分>
(C)成分は、下記(c1)式で表される化合物((c1)成分)及び下記(c2)式で表される化合物((c2)成分)から選ばれる少なくとも1種である。液体洗浄剤組成物は、(C)成分を含有することで、油汚れに対する洗浄力を高める。
【0026】
R3-O-(C2H4O)x/(C3H6O)y-R4・・・(c1)
【0027】
((c1)式中、R3、R4は、それぞれ独立にH、OH、炭素数1~6のアルケニル基又はフェニル基であり、xは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、yは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数である(但し、xとyとが同時に0になることはない)。)
【0028】
(c1)式中、(C2H4O)x/(C3H6O)yはオキシエチレン基とオキシプロピレン基とがブロック重合でもランダム重合でもよいことを示す。
【0029】
(c1)成分としては、R3がフェニル基又は炭素数1~3のアルケニル基、R4がH又はOH、xが0~4、yが0である化合物が好ましく、R3がフェニル基、R4がH、xが1~3、yが0である化合物が好ましい。好ましい(c1)成分としては、フェニルグリコール、フェニルカルビトール、ブチルカルビトール、フェニルトリグリコール等が挙げられる。
【0030】
C6H5-(C2H4O)l/(C3H6O)m-(CH2)n-R5・・・(c2)
((c2)式中、R5はH又はOHであり、lは(C2H4O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、mは(C3H6O)の平均繰り返し数を表す0~5の数であり、nは(CH2)の平均繰り返し数を表す0~3の数である(但し、lとmとnとが同時に0になることはない)。)
【0031】
(c2)式中、(C2H4O)l/(C3H6O)mはオキシエチレン基とオキシプロピレン基とがブロック重合でもランダム重合でもよいことを示す。
【0032】
(c2)成分としては、R5がOH、lが0~3、mが0~3、nが0~3である化合物が好ましく、lが0、mが0、nが1~3である化合物がより好ましい。好ましい(c2)成分としては、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等が挙げられる。
【0033】
(C)成分としては、フェニルグリコール、フェニルカルビトール、ベンジルアルコールが好ましい。
上記の(C)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0034】
(C)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、洗浄力のさらなる向上を図れる。(C)成分含有量が上記上限値以下であると、ウォータスポット抑制効果のさらなる向上を図れる。
【0035】
(A)成分に対する(C)成分の質量比であり、(C)成分/(A)成分で表される質量比(C/A比)は、0.05~200が好ましく、0.67~30がより好ましく、5~20がさらに好ましい。C/A比が上記下限値以上であると洗浄力のさらなる向上を図れる。C/A比が上記上限値以下であると、洗浄力のさらなる向上を図れ、ウォータスポット抑制効果のさらなる向上を図れる。
【0036】
<任意成分>
液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(C)成分以外の任意成分を含有してもよい。
なお、(A)~(C)成分及び任意成分の合計量は100質量%&を超えない。
【0037】
任意成分としては、食器用の液体洗浄剤組成物に用いられる成分であればよい。任意成分としては、水、(B)成分以外の界面活性剤(任意界面活性剤)、ハイドロトロープ剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、香料、色素、増粘剤等が挙げられる。
【0038】
水は、液体洗浄剤組成物の溶媒として機能する。水の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、40~85質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。水の含有量が上記下限値以上であれば、ゲル化が抑制され、液の均一性が高まる。水の含有量が上記上限値以下であれば、粘度が低くなりすぎず、使用性に優れる。
【0039】
キレート剤としては、アミノカルボン酸型キレート剤、グリコール酸、ジグリコール酸、乳酸、酒石酸、カルボキシメチル酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸及びこれらの塩等の有機酸及びその塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩が挙げられる。
アミノカルボン酸型キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ヒドロキシエチレンイミノジ酢酸(HIDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β-アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、N-ラウロイルエチレンジアミン三酢酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジカルボキメチルグルタミン酸(CMGA)、(S,S)-エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)及びこれらの塩等が挙げられる。アミノカルボン酸型キレート剤の塩の形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
アミノカルボン酸型キレート剤としては、MGDA、GLDA、EDTA、HEDTA、DHEG、HIDA、DTPAが好ましく、MGDA、GLDA、EDTAがより好ましく、さらにMGDAが好ましい。
これらのキレート剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0040】
キレート剤の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~5質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。キレート剤の含有量が、上記下限値以上であれば、ウォータスポットをより低減できる。キレート剤の含有量が上記上限値以下であれば、ウォータスポットをより低減し、ヌル付きをより抑制できる。
【0041】
任意界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
任意界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤組成物の総質量に対して、0.1~5質量%が好ましい。但し、液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。液体洗浄剤組成物は、アニオン界面活性剤を含まないことで、ウォータスポット抑制効果をより高められる。なお、実質的に含まないとは、液体洗浄剤組成物の機能がアニオン界面活性剤の影響を受けない程度の量である。
【0042】
ハイドロトロープ剤としては、オルトトルエンスルホン酸、メタトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、又はこれらの塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、エタノール、ブチルカルビトール等が挙げられる。
防腐剤としては、イソチアゾリン系化合物が挙げられ、具体的には、ベンズイソチアゾリノン(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)、メチルイソチアゾリノン(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、ブチルベンズイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン等が挙げられる。
pH調整剤としては、無機アルカリ剤、有機アルカリ剤、無機酸等が挙げられる。
無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
有機アルカリ剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン化合物等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、硫酸等が挙げられる。
有機酸としては、酢酸等が挙げられる。
【0043】
<物性>
本発明の液体洗浄剤組成物の25℃でのpHは、6~8が好ましい。液体洗浄剤の25℃でのpHが上記範囲内であれば、ウォータスポット抑制効果のさらなる向上を図れる。
液体洗浄剤組成物のpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値である。
【0044】
本発明の液体洗浄剤組成物の25℃における粘度は、10~200mPa・sが好ましく、50~150mPa・sがより好ましい。粘度が上記下限値以上であれば、容器の注ぎ口からの液だれを良好に抑制できる。粘度が上記上限値以下であると、容器から液体洗浄剤組成物をより容易に吐出できる。
【0045】
液体洗浄剤組成物の粘度は、水の含有量、増粘剤の添加等により調整できる。
液体洗浄剤組成物の粘度は、測定対象を25℃とし、B型粘度計を用いて、ローター番号No.1、ローター回転数60rpmで、ローターの回転の開始から60秒後に測定される値である。
【0046】
(製造方法)
本発明の液体洗浄剤組成物は、従来公知の製造方法によって製造される。
液体洗浄剤組成物の製造方法としては、例えば、(A)~(C)成分及び必要に応じて任意成分を水の一部に添加し、混合し、pHを調整した後に水の残部を加える方法が挙げられる。
【0047】
(液体洗浄剤組成物物品)
液体洗浄剤組成物は、容器に収容されて、液体洗浄剤組成物物品とされてもよい。容器としては、スプレー容器、プルトップ容器等、食器を洗浄する際に用いられる容器でもよいし、詰め替え用のパウチでもよい。
【0048】
(使用方法)
液体洗浄剤組成物の使用方法としては、例えば、液体洗浄剤組成物を洗浄具に塗布し、この洗浄具に液体洗浄剤組成物を泡立て、泡立てた洗浄具で被洗物である食器を擦り洗う方法が挙げられる。また、液体洗浄剤組成物を被洗物に塗布し、これを洗浄具で擦り洗う方法が挙げられる。これらの洗浄方法の場合、液体洗浄剤組成物をスプレー容器から洗浄具又は被洗物に吐出することが好ましい。
あるいは、液体洗浄剤組成物を水に溶解して洗浄液とし、洗浄液に被洗浄物を浸漬しつつ、洗浄具で擦り洗う方法が挙げられる。いずれの方法においても、擦り洗った被洗浄物を水ですすぎ、その後、被洗浄物の水切りを行う。
【0049】
洗浄具としては、スポンジ、ブラシ、布等が挙げられる。
被洗浄物としては、陶磁器、金属製器具等が挙げられる。陶磁器としては、皿、茶わん、丼等の食器類が挙げられる。金属製器具としては、フォーク、スプーン等の食器、ステンレス製のシンク等が挙げられる。
【0050】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)~(C)成分を含有することで、油汚れに対する洗浄力に優れ、かつ被洗物のウォータスポットを抑制できる。
本発明の液体洗浄剤組成物は、スプレー容器に収容されて用いられるスプレー用として特に好適である。
【実施例0051】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0052】
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:HPMC-1、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=28~30mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=7~12モル%、重量平均分子量=10万、2質量%水溶液の粘度40~60mPa・s、商品名「METLOSE 60SH-50」、信越化学工業社製。
・A-2:HPMC-2、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=28~30mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=7~12モル%、重量平均分子量=30万、2質量%水溶液の粘度3000~5600mPa・s、商品名「METLOSE 60SH-4000」、信越化学工業社製。
・A-3:HPMC-3、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=28~30mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=7~12モル%、重量平均分子量=50万、2質量%水溶液の粘度7500~14000mPa・s、商品名「METLOSE 60SH-10000」、信越化学工業社製。
・A-4:HPMC-4、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=19~24mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=4~12モル%、重量平均分子量=12万、2質量%水溶液の粘度80~120mPa・s、商品名「METLOSE 90SH-100」、信越化学工業社製。
・A-5:HPMC-5、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=19~24mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=4~12モル%、重量平均分子量=30万、2質量%水溶液の粘度3500~5600mPa・s、商品名「METLOSE 90SH-4000」、信越化学工業社製。
・A-6:MC、メチルセルロース、メトキシ基置換度=26~33mol%、重量平均分子量=36万、2質量%水溶液の粘度3000~5600mPa・s、商品名「METLOSE SM-4000」、信越化学工業社製。
・A-7:HEC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエトキシ基置換度=30~70mol%、重量平均分子量=100万、2質量%水溶液の粘度5,000~10,000mPa・s、商品名「HEC CF-V」、住友精化社製。
【0053】
<(A’)成分>(A)成分の比較品
・A’-1:HPMC-6、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メトキシ基置換度=28~30mol%、ヒドロキシプロポキシ基置換度=7~12モル%、重量平均分子量=7万、2質量%水溶液の粘度1.3~18mPa・s、商品名「METLOSE 60SH-15」、信越化学工業社製。
・A’-2:CMC、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量=8万、2質量%水溶液の粘度918mPa・s、商品名「CMCダイセル 1260」、ダイセルファインケム社製。
・A’-3:CC、カチオン化セルロース、重量平均分子量=20~80万、2質量%水溶液の粘度75~175mPa・s、商品名「SUPRACARE 212」、ダウケミカル日本社製。
【0054】
<(B)成分>
・B-1:C10-AE(EO10)、アルコールエトキシレート、(b1)式中のR1は炭素数10の分岐アルキル基、R2Oはオキシエチレン基、jは10である化合物。商品名「LutensolXP-100」、BASF社製。
・B-2:C10-AE(EO5)、アルコールエトキシレート、(b1)式中のR1は炭素数10の直鎖アルキル基、R2Oはオキシエチレン基、jは5である化合物。商品名「TO-5」、BASF社製。
・B-3:C1214-AE(EO9)、アルコールエトキシレート、(b1)式中のR1は炭素数12の2級アルキル基と炭素数14の2級アルキル基との混合、R2Oはオキシエチレン基、jは9である化合物。商品名「レオコールSC-90」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製。
・B-4:C1214-AE(EO6)、アルコールエトキシレート、(b1)式中のR1は炭素数12の1級直鎖アルキル基と炭素数14の1級直鎖アルキル基との混合、R2Oはオキシエチレン基、jは6である化合物。
【0055】
<(B’)成分>任意界面活性剤
・B’-1:SAS、2級アルカンスルホン酸、アルキル基の炭素数=12~14、商品名「HOSTAPUR SAS 30A」、クラリアントジャパン社製。
・B’-2:AES、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(天然アルコール(P&G社製の商品名「CO-1270」)に1モル相当のEOを付加した化合物)、商品名「BRES(1)」、ライオン社製。
・B’-3:LAS、炭素数10~14のアルキル基を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩、商品名「ライポン(登録商標)LH-200」、ライオン社製。
【0056】
<(C)成分>
・C-1:フェニルグリコール、C6H5-O-(CH2CH2O)-H、商品名「ニューポール EFP」、三洋化成工業社製。(c1)成分に相当。
・C-2:ベンジルアルコール、C6H5-(CH2O)-H、商品名「ベンジルアルコール」、純正化学社製。(c2)成分に相当。
・C-3:フェニルカルビトール(フェニルジグリコール)、C6H5-O-(CH2CH2O)-(CH2CH2O)-H、商品名「フェニルジグリコール」、東京化成工業社製。(c1)成分に相当。
・C-4:ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、C4H9-O-C2H4-O-C2H4-OH、商品名「ジエチレングリコールモノブチルエーテル」、東京化成工業社製。(c1)成分に相当。
【0057】
<任意成分>
・水酸化ナトリウム。
・エタノール。
・クエン酸。
・水:イオン交換水。
【0058】
(評価方法)
<洗浄評価>
エクストラバージンオリーブオイル(味の素製)に対して、視認性を上げるために、重量で0.1%となるようにSudan IVを均一溶解させたものを評価用汚垢とした。調整した汚垢を疎水性容器(岩崎工業株式会社製、ラストロ・ネオキーパー870mL)に対し、電子天秤で計量しながら、ポリスポイトを用いて、0.1gを均一に塗布し疎水表面汚垢を作製した。
上記疎水表面汚垢に対し、各実施例及び比較例サンプル8mLをライオン社製「レンジまわりのルック」のトリガースプレー容器を用いて噴霧し、60秒間静置した。上記の後に、25℃流速5L/minの流水で満遍なく十分にすすぎ、残存汚垢を目視にて確認し、以下の評価基準で3段階に評価した。
【0059】
≪評価基準≫
○:汚垢の残りが殆ど無い。
△:汚垢の残りがやや多い。
×:汚垢の残りが非常に多い。
【0060】
<ウォータスポット低減効果>
疎水性容器(岩崎工業株式会社製、ラストロ・ネオキーパー870mL)に対して、「レンジまわりのルック」のトリガースプレーを用いて、疎水性容器とスプレー先端部を15cm話した位置から8回噴霧し、25℃流速5L/minの流水で満遍なく十分にすすいだ。その後、疎水性容器に25℃の水道水を20g乗せ、この疎水性容器を80°に傾けた。傾けた直後から、疎水性食器の表面を水膜が流下する時間を測定し、その結果を以下の評価基準にて分類した。
なお、疎水性食容器の表面に水膜が形成されると、膜状に水がゆっくりと流下し、ウォータスポット形成の原因となる水滴が残りにくくなる。一方、疎水性容器の表面に水膜が形成されないと、短時間で水が流れてしまい、ウォータスポット形成の原因となる水滴が表面に残ってしまう。
【0061】
≪評価基準≫
◎:8秒以上。
○:5秒以上8秒未満。
△:2秒以上5秒未満。
×:2秒未満。
【0062】
(実施例1~31、比較例1~11)
表1~4に示す組成に従い、(A)~(C)成分及び任意成分を水に加え、混合して各例の液体洗浄剤組成物を調製した。
表中の配合量は純分換算値である。表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。表中、水酸化ナトリウムの含有量「適量」は、表中のpHとするのに要した量である。表中、水の含有量「バランス」は、液体洗浄剤組成物を100質量%とするのに要した量である。
各例の液体洗浄剤について、ウォータスポットの低減効果、洗浄力を評価し、その結果を表中に示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表1~4に示すように、本発明を適用した実施例1~31は、洗浄力の評価が「△」又は「〇」であり、ウォータスポット低減効果が「△」~「◎」であった。
(A)成分に代えて(A’)成分を含む比較例1~4、(A)成分を欠く比較例9は、ウォータスポットの低減効果が「×」であった。
(B)成分に代えて(B’)成分を含む比較例5~7は、ウォータスポットの低減効果が「×」であった。
(C)成分に代えてエタノールを増量した比較例8、(B)成分を欠く比較例10、(C)成分を欠く比較例11は、洗浄力が「×」であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、ウォータスポットを低減し、洗浄力を高められることが確認された。