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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089928
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240627BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20240627BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240627BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240627BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0606
H01M8/04746
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205477
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】野田 航平
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和宏
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127CC02
5H127DC76
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気化器が高温に上昇するのを抑えて突沸現象が生じるのを防止することができる固体酸化物形燃料電池を提供すること。
【解決手段】改質水を供給する改質水供給手段(14)と、改質水を水蒸気に気化する気化器(2)と、燃料ガスを気化器(2)からの水蒸気と反応させて水蒸気改質する改質器(4)と、改質器(4)からの改質ガスと空気との燃料電池反応により発電を行うセルスタック(6)とを備えた固体酸化物形燃料電池。冷却ガス噴出手段(48)が更に設けられ、この冷却ガス噴出手段(48)は、気化器(2)内に冷却ガスを噴出して冷却する。改質水供給手段(14)は、水供給ポンプ(12)からの改質水を気化器(2)に供給する水供給パイプ(10)を含み、冷却ガス噴射手段(48)は、気化器(2)の底壁における、水供給パイプ(10)を通して改質水が滴下する滴下領域に向けて冷却ガスを噴出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質水を供給する改質水供給手段と、改質水を水蒸気に気化する気化器と、燃料ガスを前記気化器からの水蒸気と反応させて水蒸気改質する改質器と、前記改質器からの改質ガスと空気との燃料電池反応により発電を行うセルスタックとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記気化器内に冷却ガスを噴出するための冷却ガス噴出手段が設けられていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記改質水供給手段は、改質水を供給する水供給ポンプと、前記水供給ポンプからの改質水を前記気化器に供給する水供給パイプとを含み、前記水供給パイプの先端部が前記気化器内に突出しており、前記冷却ガス噴射手段は、前記気化器の底壁における、前記水供給パイプを通して改質水が滴下する滴下領域に向けて冷却ガスを噴出することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記冷却ガス噴出手段は、冷却ガスを前記気化器に供給する冷却ガス供給パイプを含み、前記冷却ガス供給パイプを通して前記気化器の前記滴下領域に向けて冷却ガスを噴出し、前記改質水供給手段により改質水が供給される改質水供給期間と、前記冷却ガス噴出手段により冷却ガスが供給される冷却ガス供給期間とは重なっていないことを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記冷却ガス噴出手段の前記冷却ガス供給パイプには、冷却ガスの流量を調整するガス流量調整弁が配設され、更に、前記水供給ポンプ及び前記ガス流量制御弁を制御するためのコントローラが設けられており、前記コントローラは、前記水供給ポンプからの改質水の供給流量が減少すると前記ガス流量制御弁の開度を大きくして前記冷却ガスの流量が多くなるように制御し、また前記水供給ポンプからの改質水の供給流量が増大すると前記ガス流量制御弁の開度を小さくして前記冷却ガスの流量が少なくなるように制御することを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記冷却ガス噴出手段により供給される冷却ガスは、酸素を含まないガスであることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質水を気化させる気化器を備えた固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」とも称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)として、例えば、燃料ガス(例えば、都市ガスなど)を水蒸気改質して改質ガスを生成し、この改質ガスをセルスタックの燃料極(アノード)側に供給し、また酸化剤としての空気をセルスタックの酸素極(カソード)側に供給し、このセルスタックでの燃料電池反応により発電を行うものが実用に供されている。この固体酸化物形燃料電池は、改質水を気化する気化器と、水蒸気改質する改質器とを備え、改質水が気化器に供給され、気化器にて気化された水蒸気が改質器に送給される。また、燃料ガスは改質器(又は気化器)に供給され、この改質器にて水蒸気を利用して燃料ガスの水蒸気改質が行われる。
【0003】
このようなSOFCにおいては、改質器で炭化水素系の燃料ガス(例えば、メタン)に対し水蒸気を高温状況下で水蒸気改質させると、次のような反応により、燃料ガスが水素と一酸化炭素に変換される。
【0004】
CH4 + H2O → CO + 3H2 ・・・(1)
一方、燃料ガス(例えば、メタン)を水蒸気なしで加熱すると、次のような反応(ブードー反応)が進行して、炭素が析出する。
【0005】
CH4 → C + 2H2 ・・・(2)
また、ニッケルのような金属を触媒として、一酸化炭素から次のような反応により炭素が析出する。
【0006】
2CO → C + CO2 ・・・(3)
セルスタックの燃料極(アノード)上でこのような炭素析出が進行すると、セルスタックの発電性能の低下につながり、また改質器で炭素析出が進行すると、改質器の詰まりや改質触媒の汚れが生じる。
【0007】
このようなことから、この改質器において水蒸気改質が所要の通り起るようにするためには、水蒸気が安定的に供給される必要があり、そのためには、改質水が気化器に供給されて水蒸気が安定して生成され、そして、生成された水蒸気が所要の通りに改質器に送給されて燃料ガスと反応することが重要となる。
【0008】
そこで、気化器(蒸発器)にて安定して水蒸気を発生するようにしたSOFCが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このSOFCにおいては、燃料ガス及び気化器の下流側は温度が高くなるように、またその上流側は温度が過剰に高くならないようにし、気化器における温度勾配が下流側に向かって高くなるようになっている。このような気化器(蒸発器)では、改質水が気化器の上流側部に供給され、そして、供給された改質水は下流側にその高温部に向けて流れ、このように流すことにより、改質水が徐々に加熱されて水蒸気が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6848104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このSOFCにおいては、次のような問題が生じるおそれがある。一般的に、水蒸気改質に用いられる水蒸気を生成するための改質水の量は微量であるのに対し、気化器(蒸発器)内は数百度程度の高温状態であり、それ故に、気化器に供給された改質水(液滴状に供給される)が気化器の接触面(蒸発面)に滴下したときに気化して過熱状態になって突沸が生じるおそれがある。
【0011】
一般的に、液体が沸点に達したときに気泡が生成される現象を沸騰現象と言い、この液体が沸点に達しても気泡が生成なれない状態があり、このような状態を過熱状態と言い、この過熱状態において何らかの刺激(例えば、振動、不純物の混入など)が加わると突然爆発するように沸騰するようになり、このような現象が突沸である。
【0012】
気化器内2が過熱状態となり、このような過熱状態において何らかの刺激が作用すると突沸が生じるようになる。この突沸が生じると、気化器(蒸発器)内の圧力が急上昇し、燃料ガスが気化器(蒸発室)内に供給されず、燃料枯れという現象に発展するおそれがある。
【0013】
本発明の目的は、気化器が高温に上昇するのを抑えて突沸現象が生じるのを防止することができる固体酸化物形燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池は、改質水を供給する改質水供給手段と、改質水を水蒸気に気化する気化器と、燃料ガスを前記気化器からの水蒸気と反応させて水蒸気改質する改質器と、前記改質器からの改質ガスと空気との燃料電池反応により発電を行うセルスタックとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記気化器内に冷却ガスを噴出するための冷却ガス噴出手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記改質水供給手段は、改質水を供給する水供給ポンプと、前記水供給ポンプからの改質水を前記気化器に供給する水供給パイプとを含み、前記水供給パイプの先端部が前記気化器内に突出しており、前記冷却ガス噴射手段は、前記気化器の底壁における、前記水供給パイプを通して改質水が滴下する滴下領域に向けて冷却ガスを噴出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記冷却ガス噴出手段は、冷却ガスを前記気化器に供給する冷却ガス供給パイプを含み、前記冷却ガス供給パイプを通して前記気化器の前記滴下領域に向けて冷却ガスを噴出し、前記改質水供給手段により改質水が供給される改質水供給期間と、前記冷却ガス噴出手段により冷却ガスが供給される冷却ガス供給期間とは重なっていないことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記冷却ガス噴出手段の前記冷却ガス供給パイプには、冷却ガスの流量を調整するガス流量調整弁が配設され、更に、前記水供給ポンプ及び前記ガス流量制御弁を制御するためのコントローラが設けられており、前記コントローラは、前記水供給ポンプからの改質水の供給流量が減少すると前記ガス流量制御弁の開度を大きくして前記冷却ガスの流量が多くなるように制御し、また前記水供給ポンプからの改質水の供給流量が増大すると前記ガス流量制御弁の開度を小さくして前記冷却ガスの流量が少なくなるように制御することを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池では、前記冷却ガス噴出手段により供給される冷却ガスは、酸素を含まないガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、冷却ガス噴出手段が気化器内に冷却ガスを噴出するので、噴出される冷却ガスによって気化器内の温度上昇が抑えられ、これによって、改質水の供給量が少なくてもその温度が徐々に上昇し、かくして、改質水の突沸を防止することができる。
【0020】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、改質水は水供給パイプを通して気化器の滴下領域に滴下され、冷却ガス噴射手段はこの滴下領域に向けて冷却ガスを噴出するので、この滴下領域を効果的に冷却することができ、これによって、改質水の滴下量が少なくても急激な温度上昇を抑え、改質水の突沸を防止できる。
【0021】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、水供給パイプを通して供給される改質水の供給期間と冷却ガス供給パイプを通して供給される冷却ガスの供給期間とが重なっていないので、水供給パイプから滴下した改質水が蒸発しているときに冷却ガスが供給されることはなく、このように供給制御することによって、気化器の滴下領域が過冷却となることがなく、水蒸気の発生遅れを防止することができる。
【0022】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、冷却ガス供給パイプにガス流量調整弁が設けられ、コントローラは、水供給手段からの改質水の供給流量が増えるとガス流量調整弁の開度を小さくして冷却ガスの噴出流量を少なくし、また改質水の供給流量が減るとガス流量調整弁の開度を大きくして冷却ガスの噴出量を多くするので、改質水の流量に関係なく気化器の滴下領域の温度を所望の通りに管理することができる。
【0023】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池によれば、冷却ガスが酸素を含まないガスであるので、セルスタックの燃料極が酸化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に従う固体酸化物形燃料電池の第1の実施形態を示す簡略図。
図2図1の固体酸化物形燃料電池の気化器及びそれに関連する構成を示す部分断面図。
図3】改質水の供給パターンを示す図であって、図3(a)は、改質水の供給量が少ないときの供給パターンを示す図、図3(b)は、改質水の供給量が中程度のときの供給パターンを示す図、また図3(c)は、改質水の供給量が多いときの供給パターンを示す図。
図4】本発明に従う固体酸化物形燃料電池の第2の実施形態の一部を示す簡略断面図。
図5】改質水の供給量と冷却ガスの供給量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池の実施形態について説明する。まず、図1図3を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池の第1の実施形態について説明する。
【0026】
図1において、図示の固体酸化物燃料電池(SOFC)は、改質水を気化する気化器2と、燃料ガス(例えば、都市ガス)を水蒸気改質する改質器4と、燃料電池反応により発電を行う固体酸化物形のセルスタック6とを備えている。この実施形態では、例えば水タンクなどから構成される水供給源8は、水供給パイプ10(水供給流路を構成する)を介して気化器2に接続され、この水供給パイプ10に水供給ポンプ12が配設されている。この水供給ポンプ12が作動すると、水供給源8からの水が改質水として水供給パイプ10を通して気化器2に供給され、水供給源8、水供給ポンプ12及び水供給パイプ10(水供給流路)は、気化器2に改質水を供給する水供給手段14を構成している。
【0027】
また、例えば燃料タンク、埋設管などから構成される燃料ガス供給源16は、燃料ガス供給パイプ18(燃料ガス供給流路を構成する)を介して改質器4に接続され、この燃料ガス供給パイプ18に燃料ガス供給ポンプ20が配設されている。この燃料ガス供給ポンプ20が作動すると、燃料ガス供給源16からの燃料ガスが燃料ガス供給パイプ18を通して改質器4に供給され、この燃料ガス供給源16、燃料ガス供給ポンプ20及び燃料ガス供給パイプ18(燃料ガス供給流路)は、改質器4に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段22を構成している。
【0028】
気化器2は改質水を水蒸気に気化し、気化器2にて発生した水蒸気は、水蒸気送給流路24(例えば、水蒸気送給パイプから構成される)を通して改質器4に送給される。改質器4内には改質触媒が充填されており、この改質器4において、気化器2からの水蒸気を利用して燃料ガス供給手段22から供給された燃料ガスが水蒸気改質される。
【0029】
改質器4にて水蒸気改質された改質ガスは、改質ガス送給流路26(例えば、改質ガス送給パイプから構成される)を通してセルスタック6の燃料極(アノード)側に送給される。また、酸化剤ガスとしての空気がセルスタック6の酸素極(カソード)側に供給される。セルスタック6の酸素極側には空気供給パイプ28(空気供給流路を構成する)が接続され、この空気供給パイプ28に空気ブロア30が配設されている。空気ブロア30が作動すると、大気中の空気が空気供給パイプ28を通してセルスタック6に供給され、この空気ブロア30及び空気供給パイプ28が、空気をセルスタック6に供給する空気供給手段32を構成している。
【0030】
セルスタック6においては、改質器4からの改質ガス(改質された燃料ガス)と空気供給手段32からの空気(空気に含まれる酸素)との燃料電池反応により発電が行われる。セルスタック6の燃料極を通して流れた改質ガス(燃料オフガス)及びその空気極を通して流れた空気オフガスは、セルスタック6の上方の燃料域34に流れ、この燃焼域34にて空気オフガス(空気を含んでいる)により燃料オフガス(燃料ガスを含んでいる)が燃焼される。
【0031】
このSOFCにおいては、気化器2、改質器4及びセルスタック6は断熱モジュール36内に収容され、気化器2及び改質器4は、セルスタック6の上方に配置される。このように構成されるので、燃焼域34での燃焼により気化器2及び改質器4が加熱されて高温状態に保たれるとともに、この燃焼熱を利用して断熱モジュール36内も高温状態に保たれる。
【0032】
断熱モジュール36内の燃焼排気ガスは、燃焼ガス排出流路38(例えば、燃焼ガス排出パイプから構成される)を通して排出される。燃焼ガス排出流路38には、例えば燃焼触媒が配設された燃焼部40が設けられ、この断熱モジュール36内からの燃焼排気ガスは、この燃焼部40の燃焼触媒反応により完全燃焼された後に燃焼ガス排出流路38を通して外部に排出される。
【0033】
このSOFCでは、気化器2内で改質水が突沸しないように、更に、次のように構成されている。図1とともに図2を参照して、水供給パイプ10は気化器2の側壁42を貫通して内側に突出しており、この水供給パイプ10を通して供給される改質水は、その先端部から気化器2の底壁44の滴下領域Sに向けて矢印46で示すように滴下され、滴下された改質水はこの底壁44の表面に沿って拡がって蒸発される。
【0034】
このとき、気化器2の滴下領域Sが燃焼域34からの燃焼熱によって高温状態(例えば、130℃以上)(一例としてこのような温度でよろしいでしょうか?)になっていると、水供給パイプ10の先端から滴下領域Sに滴下した改質水は、急激に加熱されて過熱状態になるおそれがあり、この過熱状態となるのを防止するために、気化器2内に冷却ガスを噴出する冷却ガス噴出手段48が設けられる。
【0035】
更に説明すると、図示の冷却ガス噴出手段48は、図1に示すように、例えば冷却タンクから構成される冷却ガス供給源50と、この冷却ガス供給源50からの冷却ガスを気化器2に供給する冷却ガス供給パイプ52(冷却ガス供給流路を構成する)とを備え、この冷却ガス供給パイプ52に冷却ガス供給ポンプ54が配設されており、この冷却ガス供給ポンプ54が作動されると、冷却ガス供給源50からの冷却ガスが冷却ガス供給パイプ52を通して気化器2に供給される。
【0036】
この冷却ガスとしては、酸素を含まないガスを用いるのが好ましく、このように酸素を含まないガスを用いることにより、セルスタック6の燃料極の酸化を防止することができる。この冷却ガスとしては、例えば窒素ガスを用いることができる。
【0037】
この実施形態においては、図2に示すように、冷却ガス供給パイプ52の先端側(下流端部側)は、気化器2の側壁42を貫通して内側に突出し、改質水パイプ10の先端部よりも更に幾分内側に突出し、この先端部は気化器2の底壁44の滴下領域Sに向けて下側に向いて延びている。このように構成されているので、冷却ガス供給パイプ10を通して供給される冷却ガスは、矢印56で示すように、滴下領域Sに向けて噴出され、これによって、冷却ガスでもって滴下領域Sを効果的に冷却して高温状態になるのを防ぐことができる。
【0038】
この実施形態においては、水供給手段14から供給される改質水と冷却ガス噴出手段48から供給される冷却ガスは、図3に示すタイミングで供給される。例えば、改質水の供給量が少ないときには、図3(a)で示すように、改質水は、1サイクルTの時間Xにおいて例えば1回だけ供給され、このとき冷却ガスは、改質水が供給されない期間に供給される。改質水の供給量が中程度のときには、図3(b)で示すように、改質水は1サイクルTの時間Xにおいて例えば2回供給され、このとき冷却ガスは、改質水が供給されない間の期間に供給される。また、改質水の供給量が多いときには、図3(c)で示すように、改質水は1サイクルTの時間Xにおいて例えば4回供給され、このとき冷却ガスは、上述したと同様に、改質水が供給されない間の期間に供給される。
【0039】
改質水と冷却ガスの供給タイミングをこのようにすることによって、改質水が供給される期間においては、この改質水の気化によって気化器2の滴下領域Sが冷却され、また改質水が供給されない期間においては、冷却ガス噴出手段48から噴出される冷却ガスによって冷却され、従って、この滴下領域Sが高温状態になるのを抑え、改質水の突沸現象の発生を防止することができる。また、このとき、改質水が供給される改質水供給期間と冷却ガスが供給される冷却ガス供給期間とが重なっていないために、気化器2の滴下領域Sが改質水及び冷却ガスにより同時に冷却されることがなく、これによって、この滴下領域Sが過冷却されるのを防止することができる。
【0040】
次に、図4及び図5を参照して本発明に従う固体酸化物形燃料電池の第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態においては、改質水の供給量に応じて冷却ガスの供給量が制御されるように構成されている。尚、この第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と同様の部材には同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0041】
固体酸化物形燃料電池の一部を示す図4において、この第2の実施形態では、固体酸化物形燃料電池を制御するコントローラ62は、燃料ガス供給量演算手段64と、改質水供給量演算手段66と、空気供給量演算手段68と、冷却ガス供給量演算手段70とを含んでいる。燃料ガス供給量演算手段64は、セルスタック(図示せず)の発電出力に応じた燃料ガスの供給量を演算し、コントローラ62は、この供給量に基づいて燃料ガスポンプ(図示せず)の回転数を制御し、これによって、燃料ガス供給手段(図示せず)からの燃料ガスの供給量が制御される。改質水供給量演算手段66は、セルスタック(図示せず)の発電出力に応じた改質水の供給量を演算し、コントローラ62は、この供給量に基づいて水供給ポンプ12の回転数を制御し、これによって、水供給手段14からの改質水の供給量が制御される。また、空気供給量演算手段68は、セルスタック(図示せず)の発電出力に応じた空気の供給量を演算し、コントローラ62は、この供給量に基づいて空気ブロア(図示せず)の回転数を制御し、これによって、空気供給手段(「図示せず)から供給される空気の供給量が制御される。
【0042】
更に、冷却ガス供給量演算手段70は、次のようにして冷却ガス供給量を演算する。この実施形態では、コントローラ62は、メモリ手段72を更に含み、このメモリ手段72には、例えば、図5に示す改質水-冷却ガス供給マップが登録されており、この改質水の供給量と冷却ガスの供給量の関係を示す改質水-冷却ガス供給マップに基づいて冷却ガス供給量が演算される。
【0043】
図5をも参照して、改質水の供給量が多くなると、改質水の気化に多くの熱を消費して気化器2の滴下領域Sの温度が低下傾向になるので、冷却ガス噴出手段48Aからの冷却ガスの供給量を少なくなるように制御し、改質水の供給量が少なくなると、改質水の気化に消費する熱が少なくなってこの滴下領域Sの温度が上昇傾向になるので、冷却ガス噴出手段48Aからの冷却ガスの供給量を多くなるように制御している。
【0044】
冷却ガスの供給量をこのように制御するために、冷却ガス供給パイプ52にガス流量調整弁74が配設され、このガス流量調整弁74は、冷却ガス供給ポンプ54の下流側に設けられ、冷却ガス供給パイプ52を通して供給される冷却ガスの供給量を後述する如く制御する。この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池のその他の構成は、図1図3に示す第1の実施形態のものと同様である。
【0045】
この第2の実施形態においては、改質水供給量演算手段66により改質水の供給量が演算されると、冷却ガス供給量演算手段70は、メモリ手段72に登録された冷却水-冷却ガス供給マップに基づいて冷却ガス供給量を演算し、コントローラ62は、ガス流量調整弁74の開度を制御して冷却ガス噴出手段48Aから供給される冷却ガスの供給量を制御する。この冷却ガス供給量演算手段70は、水供給手段14から供給される改質水の供給量が多い(又は少ない)と、改質水-冷却ガス供給マップに基づいて冷却ガスの供給量を少なくする(又は多くする)ように演算し、これによって、コントローラ62は、ガス流量調整弁74の開度を小さく(又は大きく)して冷却ガスの供給量を少なくし(多くし)、このように改質水の供給量に関連して冷却ガスの供給量を制御することによって、気化器2の滴下領域Sの温度を適切な温度(例えば、100℃前後)に保つことができる。尚、この第2の実施形態においても、改質水の供給期間と冷却ガスの供給期間とが重ならないようにするのが好ましい。
【0046】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、気化器2と改質器4とが別々に構成されているが、このような構成に限定されず、気化器2と改質器4とが1つのユニットとして構成されたものにも同様に適用することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、冷却ガス供給手段48(48A)は冷却ガス供給ポンプ54を含んでいるが、例えば冷却ガス供給源50から所定圧力の冷却ガスを供給することができる場合、この冷却ガス供給ポンプ54に代えて、供給開閉弁(を図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合、供給開閉弁を開状態にすると、冷却ガスが冷却ガス供給パイプ52を通して供給され、この供給開閉弁を閉状態にすると、冷却ガスの供給が停止される。
【符号の説明】
【0049】
2 気化器
4 改質器
6 セルスタック
10 水供給パイプ
14 水供給手段
22 燃料ガス供給手段
32 空気供給手段
48,48A 冷却ガス噴出手段
52 冷却ガス供給パイプ
62 コントローラ
66 改質水供給量演算手段
70 冷却ガス供給量演算手段
74 ガス流量調整弁
S 滴下領域









図1
図2
図3
図4
図5