(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089934
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】拭取装置及び基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B08B 1/32 20240101AFI20240627BHJP
【FI】
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205483
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 宏之
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AB14
3B116BA08
3B116BA12
3B116BA15
3B116BB22
3B116CD42
3B116CD43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】拭取部材に与えられる張力を調整する技術を提供する。
【解決手段】拭取装置は、拭取部材30と、前記拭取部材30が巻回されている状態で第1回転軸24a回りを第1方向に回転することによって、前記拭取部材30を送出する第1ローラ24と、前記第1ローラ24と間隔を置いて配置されており、第2回転軸22a回りを第2方向に回転することによって、前記第1ローラ24から送出される前記拭取部材を巻き取る前記第2ローラ22と、前記第1ローラ24と前記第2ローラ22との間で前記拭取部材30を対象物に接触させる接触部材32と、前記第1ローラ24と前記第2ローラ22との間の前記拭取部材30の張力を調整する制御部と、を備えていてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拭取部材と、
前記拭取部材が巻回されている状態で第1回転軸回りを第1方向に回転することによって、前記拭取部材を送出する第1ローラと、
前記第1ローラと間隔を置いて配置されており、第2回転軸回りを第2方向に回転することによって、前記第1ローラから送出される前記拭取部材を巻き取る第2ローラと、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間で前記拭取部材を対象物に接触させる接触部材と、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間の前記拭取部材の張力を調整する制御部と、を備える拭取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の拭取装置に基板をセットするセット工程と、
前記第1ローラと前記第2ローラとの間の前記拭取部材の張力を調整する調整工程と、
前記第1ローラを前記第1方向に回転させることによって前記拭取部材を送出し、前記第2ローラを前記第2方向に回転させることによって前記第1ローラから送出される前記拭取部材を巻き取る拭取部材送出工程と、
前記基板を前記拭取部材によって拭取る拭取工程と、を備える、基板の製造方法。
【請求項3】
前記拭取工程は、前記拭取部材送出工程後、前記第1ローラと前記第2ローラとの間で前記拭取部材が停止している状態で実行される、請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラとの少なくとも一方の回転の状態を調整することによって、前記拭取部材の張力を調整する、請求項2又は3に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの少なくとも一方の回転期間を調整することによって、前記拭取部材の張力を調整する、請求項2又は3に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記調整工程は、前記第1ローラの回転の状態を調整する、請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの少なくとも一方を回転させるモータの負荷を用いて、前記拭取部材に張力を調整する、請求項2又は3に記載の拭取装置。
【請求項8】
前記調整工程は、前記第1ローラを回転させる前記モータの負荷を用いて、前記拭取部材に張力を調整する、請求項7に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記拭取部材送出工程は、前記第2ローラに前記拭取部材が巻回されている状態で、前記第2ローラを前記第2方向と反対方向である第3方向に回転させることによって前記拭取部材を送出し、前記第1ローラを前記第1方向と反対方向である第4方向に回転させることによって前記第2ローラから送出される前記拭取部材を巻き取る、請求項2又は3に記載の基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、拭取装置及び基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板表面をクロス拭き取りによって洗浄するパターン形成基板洗浄装置が開示されている。装置は、クロスを基板上に押し当てながら移動するローラと、クロスをローラに供給する供給リールと、クロスをローラから巻き取って回収する回収リールと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2個のローラのうちの一方のローラを回転させることによって、クロス等の拭取部材を供給し、他方のローラを回転させることによって拭取部材を回収する構成では、2個のローラの回転状況に応じて拭取部材に与えられる張力が変動する。拭取部材の張力が小さいと、拭取部材が緩み過ぎ得る。その結果、拭取部材から基板に対して十分な力が加わらず、拭取り難くなり得る。一方、拭取部材の張力が大きいと、例えばクロスが破損し得る。その結果、拭取部材の劣化が進む事態が生じ得る。
【0005】
本明細書では、拭取部材に与えられる張力を調整する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示される技術の第1の形態は、拭取装置である。拭取装置は、拭取部材と、前記拭取部材が巻回されている状態で第1回転軸回りを第1方向に回転することによって、前記拭取部材を送出する第1ローラと、前記第1ローラと間隔を置いて配置されており、第2回転軸回りを第2方向に回転することによって、前記第1ローラから送出される前記拭取部材を巻き取る第2ローラと、前記第1ローラと前記第2ローラとの間で前記拭取部材を対象物に接触させる接触部材と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間の前記拭取部材の張力を調整する制御部と、を備えていてもよい。
【0007】
この構成によると、制御部によって、拭取部材の張力を調整することができる。これにより、拭取部材に適切な張力を与え得る。
【0008】
本明細書で開示される技術の第2の形態は、基板の製造方法である。基板の製造方法は、上記第1の形態に記載の拭取装置に基板をセットするセット工程と、前記第1ローラと前記第2ローラとの間の前記拭取部材の張力を調整する調整工程と、前記第1ローラを前記第1方向に回転させることによって前記拭取部材を送出し、前記第2ローラを前記第2方向に回転させることによって前記第1ローラから送出される前記拭取部材を巻き取る拭取部材送出工程と、前記基板を前記拭取部材によって拭取る拭取工程と、を備えていてもよい。
【0009】
この構成によると、調整工程によって、拭取部材の張力を調整することができる。これにより、拭取部材に適切な張力を与え得る。
【0010】
本明細書で開示される技術の第3の形態では、上記の第2の形態において、前記拭取工程は、前記拭取部材送出工程後、前記第1ローラと前記第2ローラとの間で前記拭取部材が停止している状態で実行されてもよい。
【0011】
この構成では、拭取工程の実行中に、拭取部材は、第1ローラと第2ローラとの間で、停止されている。この構成によると、第1ローラと第2ローラとが停止しているために、拭取工程の実行中に、拭取部材から基板に対して意図しない力が加わることを抑制し、その結果として基板が損傷することを抑制し得る。
【0012】
本明細書で開示される技術の第4の形態では、上記の第2又は第3の形態において、前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラとの少なくとも一方の回転の状態を調整することによって、前記拭取部材の張力を調整してもよい。
【0013】
この構成によると、第1ローラ及び第2ローラの少なくとも一方の回転の状態、例えば、回転速度、回転期間、回転量等を調整することによって、拭取部材の張力を調整することができる。
【0014】
本明細書で開示される技術の第5の形態では、上記の第2から第4の形態のいずれか1つにおいて、前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの少なくとも一方の回転期間を調整することによって、前記拭取部材の張力を調整してもよい。
【0015】
この構成によると、第1ローラ及び第2ローラの回転速度、トルク等を複雑に調整せずとも、拭取部材の張力を容易に調整することができる。
【0016】
本明細書で開示される技術の第6の形態では、上記の第4又は第5の形態において、前記調整工程は、前記第1ローラの回転の状態を調整してもよい。
【0017】
この構成によると、拭取部材を送出する第1ローラの回転の状態を調整することによって、拭取部材の張力を容易に調整することができる。
【0018】
本明細書で開示される技術の第7の形態では、上記の第2から第6の形態のいずれか1つにおいて、前記調整工程は、前記第1ローラと前記第2ローラの少なくとも一方を回転させるモータの負荷を用いて、前記拭取部材に張力を調整してもよい。
【0019】
前記第1ローラと前記第2ローラの少なくとも一方を回転させるモータの負荷は、拭取部材の張力に相関する。この構成によると、モータの負荷を用いることによって、拭取部材の張力に基づいて、拭取部材の張力を容易に調整することができる。
【0020】
本明細書で開示される技術の第8の形態では、上記の第7の形態において、前記第1ローラを回転させる前記モータの負荷を用いて、前記拭取部材に張力を調整してもよい。
【0021】
この構成によると、第2ローラのモータの負荷を用いずに済む。
【0022】
本明細書で開示される技術の第9の形態では、上記の第2から第8の形態のいずれか1つにおいて、前記拭取部材送出工程は、前記第2ローラに前記拭取部材が巻回されている状態で、前記第2ローラを前記第2方向と反対方向である第3方向に回転させることによって前記拭取部材を送出し、前記第1ローラを前記第1方向と反対方向である第4方向に回転させることによって前記第2ローラから送出される前記拭取部材を巻き取ってもよい。
【0023】
この構成によると、第1ローラから送出される拭取部材が第2ローラに巻き取られた後、第2ローラから第1ローラに拭取部材を送出することによって、第1ローラと第2ローラとを交換せずに、継続して拭取工程を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】実施例の拭取装置の制御系統を含む拭取装置の概略図を示す。
【
図3】実施例の基板の製造方法のフローチャートを示す。
【
図4】実施例のモータの負荷を模式的に表すグラフを示す。
【
図5】変形例のモータの負荷を模式的に表すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、拭取装置10は、ガラス製の基板100の表面に指紋付着防止用のAF(Anti-Fingerprintの略)膜を成膜して焼成した後に、基板100の表面、即ち成膜後のAF膜を拭き取ることによって基板100の表面を洗浄する。AF膜は、例えばポリテトラフルオロエチレン(即ちPTFE)等のフッ素系樹脂で作製される。変形例では、拭取装置10は、ガラス製の基板100以外の対象物、例えばパターニングされている基板等の表面を洗浄してもよい。基板100は、例えば、携帯端末、PC等のディスプレイに利用される。
【0026】
拭取装置10は、支持台12と、拭取部20と、拭取部材30と、搬送部40と、を備える。支持台12は、拭取部20を支持する枠体を有する。支持台12には、拭取部20が載置されている。拭取部20は、2個のモータ14、16と、制御部18(
図2参照)と、これら2個のモータ14、16に対応する2個のローラ22、24と、接触部材32と、薬液ノズル36(
図2参照)と、を備える。また、本明細書では、拭取部材30は、拭取部20を構成する部材である。そして、支持台12は、2個のモータ14、16を支持する。
【0027】
拭取部20は、拭取部材30を用いて、基板100の表面を拭き取る。拭取部材30は、例えば、マイクロファイバ製の不織布又は織物、ポリエステル等の化学繊維より作製されるクロスである。拭取部材30は、2個のローラ22、24に巻き回される長尺の薄いシート状の部材である。
【0028】
2個のローラ22、24は、互いに間隔を有して、平行に配置される。2個のローラ22、24のそれぞれは、円筒形状を有する。2個のローラ22、24の円筒形状は、互いに同一外径及び軸方向における同一長さを有する。
図2に示すように、2個のローラ22、24のそれぞれは、回転軸22a、24aのそれぞれを中心に互いに同じ方向に回転する。これにより、2個のローラ22、24のうちの一方のローラから拭取部材30が送出され、他方のローラによって巻き取られる。例えば、
図2では、2個のローラ22、24のそれぞれが時計回りに回転することによって、拭取部材30が、ローラ24から送出され、ローラ22によって巻き取られる。ローラ24に巻き回されている拭取部材30の殆どがローラ22に巻き取られると、2個のローラ22、24のそれぞれが逆回転、即ち、
図2の反時計回りに回転することによって、拭取部材30が、ローラ22から送出され、ローラ24によって巻き取られる。これにより、拭取部材30を2個のローラ22、24との間で、送出及び巻取を繰り返すことによって、ローラ22、24を交換せずに、継続して拭取部材30を使用することができる。
【0029】
モータ14、16のそれぞれは、ローラ22、24のそれぞれを回転可能に支持している。ローラ22は、モータ14によって回転される。モータ14は、予め決められている一定の角速度及びトルクでローラ22を回転させる。同様に、ローラ24は、モータ16によって回転される。モータ16は、モータ14と同様に、予め決められている一定の角速度及びトルクでローラ22を回転させる。
【0030】
モータ14、16は、制御部18によって制御される。制御部18は、モータ14、16のそれぞれと、配線によって接続されている。制御部18は、CPU及びROM、RAM等のメモリを含む。制御部18は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに従ってCPUが処理を実行することによって、モータ14、16を制御する。制御部18は、モータ14、16に電力を供給することによって、モータ14、16のそれぞれを、一定の角速度及びトルクで回転させる。制御部18は、モータ14、16のそれぞれに電力を供給する期間を制御することによって、モータ14、16のそれぞれの回転している期間、即ち回転期間を調整する。制御部18は、モータ14、16のそれぞれについて、モータ14、16の回転中の電流値を計測する。
【0031】
2個のローラ22、24の間には、接触部材32が配置されている。接触部材32は、ばね等の付勢部材34によって、下方に付勢されている。接触部材32及び付勢部材34は、支持台12に取り付けられている。接触部材32は、2個のローラ22、24の間に延びる拭取部材30を下方に押し下げる。接触部材32は、ローラ22、24と平行に、拭取部材30の幅方向(即ち拭取部材30の短手方向)の全長に亘って延びる円筒形状を有する。
図2では詳述していないが、接触部材32は、2個のローラ22、24によって送出及び巻取される拭取部材30の移動に合わせて、円筒形状の中心軸を中心に回転可能に支持台12に支持されている。
【0032】
接触部材32とローラ24との間には、薬液ノズル36が配置されている。薬液ノズル36は、支持台12に支持されている。薬液ノズル36のそれぞれは、図示省略したホースを介して、薬液が貯留されている容器から供給される薬液を、拭取部材30に噴霧する。薬液ノズル36からの薬液の噴霧タイミングは、制御部18によって制御される。制御部18は、薬液ノズル36を開弁させて、薬液を噴霧させる。薬液は、拭取部材30に染み込む。薬液は、基板100の洗浄に用いられる洗浄液である。
【0033】
接触部材32の下方では、搬送部40によって、方向Dに沿って、複数の基板100が搬送される。搬送部40は、複数の搬送ローラ42と、搬送盤44と、を備える。搬送盤44は、長方形状の平板を有する。搬送盤44には、複数の基板100が互いに間隔を置いて載置可能である。搬送盤44は、下方から複数の搬送ローラ42によって支持されている。複数の搬送ローラ42は、ローラ22、24と平行に配置される円柱形状を有する。複数の搬送ローラ42は、互いに間隔を置いて配置されている。複数の搬送ローラ42は、支持台12に対して円柱形状の中心軸を中心に回転可能に設置されている。複数の搬送ローラ42の回転は、制御部18によって制御される。制御部18は、複数の搬送ローラ42を回転させるアクチュエータ(図示省略)に電力を供給することによって、複数の搬送ローラ42を中心軸回りに回転させる。
【0034】
(基板の製造方法)
次いで、基板100の製造方法を説明する。まず、基板100の表面にAF膜が成膜される前の状態で、基板100を、洗浄液を用いたウェット洗浄によって洗浄する。次いで、基板100を焼成トレイ上に載置して、例えば液体樹脂をスプレーによって噴霧することによって、基板100の表面にAF膜を成膜する。次いで、成膜後の基板100が焼成トレイに載置されている状態で、焼成炉を用いて、AF膜を焼成する。
【0035】
AF膜が焼成されると、
図3に示すように、S12において、複数の基板100を拭取装置10にセットするセット工程が実行される。具体的には、複数の基板100を、搬送盤44に並べて載置する。次いで、S14では、制御部18は、薬液ノズル36から薬液を拭取部材30に向けて噴霧させる。S16では、制御部18は、薬液ノズル36からの薬液の噴霧を停止させる。
【0036】
以下では、ローラ24が拭取部材30を送出する側のローラであり、ローラ22が拭取部材30を巻き取る側のローラである場合を例として説明する。S18では、制御部18は、ローラ22、24を回転させて、接触部材32によって複数の基板100に押し当てられる拭取部材30の部分を変更させる。具体的には、制御部18は、ローラ22を初期値TPの期間に亘って回転させる。一方、制御部18は、ローラ24を後述するS26で決定済みの回転期間に亘って回転させる。これにより、拭取部材30の張力が調整される。S18及びS26によって、拭取部材30の張力を調整する調整工程が実行される。
【0037】
S20では、制御部18は、ローラ22、24を、それぞれの回転期間だけ回転させて停止させる。S18及びS20によって、拭取部材30を送出する拭取部材送出工程が実行される。
【0038】
次いで、S22では、制御部18は、ローラ22、24が停止している状態、即ち、拭取部材30が停止している状態で、複数の搬送ローラ42を回転させて、搬送盤44に載置されている複数の基板100を、接触部材32によって下方に押し下げられている拭取部材30の下を搬送させる。基板100は、拭取部材30に接触することによって、拭き取られて、洗浄される。S22によって拭取工程が実行される。
【0039】
S22の拭取工程が終了すると、複数の基板100の搬送が停止されて、複数の基板100が搬送盤44から回収される。これにより、基板100が作製される。
【0040】
S24では、制御部18は、ローラ22のモータの負荷、即ち、モータに流れる電流の電流値を制御部18に記録する。S26では、制御部18は、拭取部材30を送出する側のローラ24の回転期間を決定する。具体的には、制御部18は、S24で制御部18に記録されたモータの負荷、即ちモータに流れる電流の電流値が、あらかじめ決められた所定範囲に含まれているか否かを判断する。制御部18は、測定済みの電流値があらかじめ決められた所定範囲よりも大きい場合、即ち拭取部材30の張力が比較的に大きい場合、拭取部材30を送出する側のローラ24の現在の回転期間TCを予め決められている期間T1だけ長くする。一方、制御部18は、測定済みの電流値があらかじめ決められた所定範囲よりも小さい場合、即ち拭取部材30の張力が比較的に小さい場合、拭取部材30を送出する側のローラ24の現在の回転期間TCを予め決められている期間T2だけ短くする。なお、期間T1、T2は、同一あってもよく、異なっていてもよい。期間T1、T2は、例えば初期値TPの1%~10%程度の長さに設定されていてもよい。制御部18は、決定された回転期間を格納(即ち更新)する。
【0041】
上記の構成では、制御部18が、ローラ22、24のうち、拭取部材30を送出する側のローラの回転期間を決定する。制御部18は、ローラ22、24を一定の角速度及び一定のトルクで回転させる。ローラ22、24のうち、拭取部材30を巻き取る側のローラの回転期間が一定である場合、拭取部材30を送出する側のローラの回転期間を調整することによって、ローラ22、24の間の拭取部材30の張力を調整することができる。これにより、拭取部材30の張力が小さいことによって、拭取部材30が緩み過ぎ、その結果、拭取部材30から基板100に対して十分な力が加わらず、拭取り難くなることを抑制することができる。また、拭取部材30の張力が大きいことによって、例えば拭取部材30が破損することを抑制することができる。拭取部材20の劣化を抑制することができる。
【0042】
ローラ22、24では、拭取部材30が巻回されている長さによって、ローラ22、24に巻回わされている拭取部材30の最外層の直径が異なる。この結果、ローラ22、24が同一の角速度で同一の回転期間に亘って回転されると、ローラ24から送出される拭取部材30の長さと、ローラ22に巻き取られる拭取部材30の長さが異なる。
【0043】
例えば、
図2に示すように、ローラ22に巻回わされている拭取部材30の最外層の直径が、ローラ24に巻回わされている拭取部材30の最外層の直径よりも大きい場合、ローラ24から送出される拭取部材30の長さよりもローラ22に巻き取られる拭取部材30の長さの方が長い。この結果、拭取部材30の張力が大きくなる。このことから、拭取部材30の張力を調整するために、S26によってローラ24の回転期間を決定する処理が必要となる。
【0044】
拭取装置10には、新たな複数の基板100が載置される。ローラ22、24の回転によって、基板100の拭き取りに使用される拭取部材30の部分、即ち、接触部材32によって基板100に接触される部分が変化する。これにより、繰り返し、かつ、連続的に基板100を洗浄することができる。
【0045】
ローラ24に巻き回されている拭取部材30が殆ど全て送出されると、制御部18は、ローラ22、24を逆向きに回転させることによって、ローラ22から拭取部材30を送出し、ローラ24によって拭取部材30が巻き取らせる。この構成では、上記した、S18、S20、S24、S26において、ローラ22、24の機能が入れ替わる。これにより、拭取部材30を繰り返し使用することができる。
【0046】
ローラ22、24によって、拭取部材30の送出及び巻取を繰り返すと、拭取部材30の全長において、ローラ22、24に強く巻き回されている箇所と緩く巻き回されている箇所とが混在する。ローラ22、24に巻き回されている拭取部材30の最外径の差とともに、ローラ22、24に強く巻き回されているか、緩く巻き回されているかによっても、拭取部材30の張力が変化する。
【0047】
図4には、拭取回数とモータの負荷との関係、即ち、S24において記録されるモータの負荷(即ちモータの電流値)の変化の一例が模式的に示されている。
図4に示すように、ローラ22、24のモータの負荷、即ち、モータの電流値が最小電流値Iminと最大電流値Imaxとの間の範囲を逸脱すると、拭取部材30の張力が大き過ぎる、または小さ過ぎるために、基板100を適切に洗浄することができない場合がある。上記の製造方法では、モータの電流値が電流値I1から電流値I2の範囲をわずかでも逸脱する場合に、ローラ22、24の回転期間を調整する。この結果、モータの電流値を、最小電流値Iminと最大電流値Imaxとの間の範囲を逸脱しない範囲に収めることができる。これにより、拭取部材30の張力を適切に調整することができる。
【0048】
上記の製造方法では、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間を調整することによって、拭取部材30の張力を調整する。これにより、ローラ22、24の角速度等を調整せずに済む。また、拭取部材30を巻き取る側のローラ22、24の回転期間を調整せずに済む。
【0049】
なお、変形例では、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間とともに、または、これに替えて、拭取部材30を巻き取る側のローラ22、24の回転期間を調整してもよい。また、ローラ22、24の回転期間とともに、または、これに替えて、調整ローラ22、24の角速度、回転量等を調整してもよい。
【0050】
(対応関係)
ローラ24が「第1ローラ」の一例であり、ローラ22が「第2ローラ」の一例である。回転軸22aが「第1回転軸」の一例であり、回転軸24aが「第2回転軸」の一例である。時計回りが「第1方向」及び「第2方向」の一例であり、反時計回りが「第3方向」及び「第4方向」の一例である。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0052】
(変形例1)上記の製造方法では、モータの負荷、即ち、モータの電流値が所定範囲から逸脱した場合に、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間を予め決められている期間T1、T2を用いて調整する。変形例では、モータの負荷に応じて、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間の変化量を変動させてもよい。例えば、制御部18は、モータの負荷が高いほど、即ち、拭取部材30の張力が高いほど、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間をより長く調整してもよい。制御部18は、モータの負荷が低いほど、即ち、拭取部材30の張力が低いほど、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間をより短く調整してもよい。
【0053】
(変形例2)モータの負荷に応じて、拭取部材30を送出する側のローラ22、24の回転期間の変化の頻度を変動させてもよい。例えば、
図5を参照すると、拭取回数とモータの負荷(即ちモータの電流値)との関係の模式的な一例において、電流値I1と電流値Iminとの間であって電流値Imidよりも小さいモータの電流値が1回でもS24において記録される場合(例えば電流値200)、ローラ22、24の回転期間を調整してもよい。一方、電流値I1と電流値Iminとの間であって電流値Imid以上のモータの電流値が1回のS24において記録されてもローラ22、24の回転期間を調整せず、連続する複数回(例えば3回)のS24において電流値Imid以上の電流値が記録される場合(例えば電流値202)、ローラ22、24の回転期間を調整してもよい。S24で記録される電流値が電流値I2と電流値Imaxとの間である場合も同様であってもよい。
【0054】
(変形例3)モータの負荷の測定タイミングは、特に限定されず、例えば、制御部18は、ローラ22、24を停止している間に、拭取部材30を巻き取る側のローラ22、24のモータに電力を供給して、拭取部材30を巻き取る側のローラ22、24が回転し始める電流の電流値を測定してもよい。
【0055】
(変形例4)S26のローラ22、24の回転期間を決定する工程は、例えば、S24のモータの負荷が記録された後、次のS18のローラ22、24が回転される前に、決定されていればよい。例えば、S12の複数の基板100のセット工程中に決定されてもよい。
【0056】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
10:拭取装置、12:支持台、14、16:モータ、18:制御部、20:拭取部、22、24:ローラ、22a、24a:回転軸、30:拭取部材、32:接触部材、34:付勢部材、40:搬送部、100:基板