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特開2024-89941排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089941
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20240627BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240627BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240627BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F01N3/24 A
F01N3/18 F
F01N3/24 Z
B01D53/22 ZAB
B01D53/92 240
B01D53/92 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205496
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本城 匠
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D006
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB04
3G091AB05
3G091AB13
3G091CA17
3G091DB10
3G091HB02
3G091HB03
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA20
4D002CA07
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB20
4D006GA41
4D006HA41
4D006KE12P
4D006KE24Q
4D006MB04
4D006PB19
4D006PB64
(57)【要約】
【課題】CO分離装置の劣化を抑制して長寿命化を図る。
【解決手段】対象機器に、熱機関からの排ガスの流路を切り替えるための流路切替装置(16)と、ガス精製装置(17)と、CO分離膜を含むCO分離装置(30)と、が設けられる。制御装置は排ガスの流路を制御する処理部を備える。処理部は、熱機関及び流路切替装置間における排ガス中の特定物質の濃度と複数の閾濃度との比較結果に基づき、熱機関からの排ガスをガス精製装置に通すことなくCO分離装置に送る第1流路制御と、熱機関からの排ガスをガス精製装置に通してからCO分離装置に送る第2流路制御と、熱機関からの排ガスをガス精製装置に通すことなく且つCO分離装置に送ることなく対象機器の外部に放出させる第3流路制御と、を含む複数の流路制御を切り替えて実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機関からの排ガスの流路を切り替えるための流路切替装置と、ガス精製装置と、CO分離膜を含むCO分離装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御装置であって、前記流路切替装置を用いて前記流路を制御する処理部を備え、
前記処理部は、前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の特定物質の濃度と複数の閾濃度との比較結果に基づき、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく前記CO分離装置に送る第1流路制御と、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通してから前記CO分離装置に送る第2流路制御と、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく且つ前記CO分離装置に送ることなく前記対象機器の外部に放出させる第3流路制御と、を含む複数の流路制御を切り替えて実行する
、排ガス処理用の制御装置。
【請求項2】
前記複数の閾濃度は、第1閾濃度と、前記第1閾濃度より高い第2閾濃度と、を含み、
前記複数の流路制御は、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通してから前記CO分離装置に送ることなく前記対象機器の外部に放出させる第4流路制御を更に含み、
前記処理部は、
前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の前記特定物質の濃度である第1対象濃度が前記第1閾濃度以下であるとき、前記第1流路制御を実行し、
前記第1対象濃度が前記第1閾濃度より高いが前記第2閾濃度以下であるとき、前記第2流路制御又は前記第4流路制御を実行し、
前記第1対象濃度が前記第2閾濃度より高いとき、前記第3流路制御を実行し、
前記処理部は、前記第1対象濃度が前記第1閾濃度より高いが前記第2閾濃度以下であるとき、前記ガス精製装置を経由した後における排ガス中の前記特定物質の濃度である第2対象濃度を第3閾濃度と比較し、前記第2対象濃度が前記第3閾濃度以下であれば前記第2流路制御を実行し、前記第2対象濃度が前記第3閾濃度より高ければ前記第4流路制御を実行する
、請求項1に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項3】
前記複数の閾濃度は、第1閾濃度と、前記第1閾濃度より高い第2閾濃度と、を含み、
前記処理部は、
前記特定物質の濃度が前記第1閾濃度以下であるとき、前記第1流路制御を実行し、
前記特定物質の濃度が前記第1閾濃度より高いが前記第2閾濃度以下であるとき、前記第2流路制御を実行し、
前記特定物質の濃度が前記第2閾濃度より高いとき、前記第3流路制御を実行する
、請求項1に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項4】
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことで、当該排ガス中の前記特定物質が低減される
、請求項1~3の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項5】
前記特定物質は窒素酸化物を含む
、請求項1~3の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項6】
前記対象機器において前記熱機関と前記流路切替装置との間に浄化装置が設けられ、前記熱機関から送出される排ガスは前記浄化装置を経由してから前記流路切替装置に供給され、前記熱機関から送出される排ガス中の前記特定物質は前記浄化装置にて低減され、
前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の前記特定物質の濃度は、前記浄化装置及び前記流路切替装置間における排ガス中の前記特定物質の濃度である
、請求項1~3の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置と、
前記流路切替装置と、
前記ガス精製装置と、
前記CO分離装置と、
前記CO分離装置への供給ガスの内、前記CO分離膜を通過したCOを貯留するCO貯留装置と、を備える
、CO回収システム。
【請求項8】
熱機関からの排ガスの流路を切り替えるための流路切替装置と、ガス精製装置と、CO分離膜を含むCO分離装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御方法であって、前記流路切替装置を用いて前記流路を制御し、
前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の特定物質の濃度と複数の閾濃度との比較結果に基づき、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく前記CO分離装置に送る第1流路制御と、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通してから前記CO分離装置に送る第2流路制御と、
前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく且つ前記CO分離装置に送ることなく前記対象機器の外部に放出させる第3流路制御と、を含む複数の流路制御を切り替えて実行する
、排ガス処理用の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等の熱機関にて生じた排ガスからCOを分離して回収する技術がある。CO分離膜を有するCO分離装置を用いて排ガスからCOを分離することができる。
【0003】
尚、下記特許文献1には、自動車の排気系における消音器と排気管との間にCO吸収部及びバイパス管を設けておき、CO吸収部の内部が所定の圧力以上となった場合などに、排ガスをバイパス管に流す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガスにはCO分離膜の劣化を促進させる物質が含まれることがある。このため、単純に排ガスをCO分離装置に常時供給することはCO分離装置の長寿命化にとって望ましくない。
【0006】
本発明は、CO分離装置の劣化抑制及び長寿命化に寄与する排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO回収システムを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御装置は、熱機関からの排ガスの流路を切り替えるための流路切替装置と、ガス精製装置と、CO分離膜を含むCO分離装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御装置であって、前記流路切替装置を用いて前記流路を制御する処理部を備え、前記処理部は、前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の特定物質の濃度と複数の閾濃度との比較結果に基づき、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく前記CO分離装置に送る第1流路制御と、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通してから前記CO分離装置に送る第2流路制御と、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく且つ前記CO分離装置に送ることなく前記対象機器の外部に放出させる第3流路制御と、を含む複数の流路制御を切り替えて実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CO分離装置の劣化抑制及び長寿命化に寄与する排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO回収システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両及び車両内部の概略的な平面図である。
図2】本発明の実施形態に係り、制御装置の内部構成図である。
図3】本発明の実施形態に係り、制御装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係り、制御装置により実行される4つの流路制御の説明図である。
図5】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、CO回収システムの動作フローチャートである。
図6】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、車両及び車両内部の概略的な変形平面図である。
図7】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、CO回収システムの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0011】
図1は本実施形態に係る車両1の概略的な平面図である。車両1にはCO回収システムが搭載される。COは二酸化炭素を指す。尚、本明細書においてCOとCO2は同じものを指す。車両1は例えば路面上を走行可能な自動車であるが、車両1の種類は任意である。
【0012】
車両1には、内燃機関11、排気マニホールド12、前段排気管13、浄化装置14及びマフラ15が設けられる。また車両1には、流路切替装置16、ガス精製装置17、三方弁18、後段排気管19及び排気口20が設けられる。更に車両1には、CO分離装置30、CO貯留装置40及び制御装置100、並びに、濃度センサCS1及びCS2が設けられる。CO回収システムは、内燃機関11からの排ガス中のCOをCO貯留装置40にて貯留(換言すれば回収)する。尚、浄化装置14を前段浄化装置と称することもでき、これに関連して、ガス精製装置17を後段浄化装置と称することもできる。以下、各部の構成及び機能を説明する。
【0013】
内燃機関11は、熱機関の例であり、燃料を内部で燃焼させることによって車両1を駆動するための駆動力を発生させる。内燃機関11に加えて電動機(不図示)が車両1に設けられていて良い。この場合、内燃機関11と電動機を併用して車両1を駆動するための駆動力を発生させる。
【0014】
内燃機関11内での燃料の燃焼によって生じた排ガス(排気ガス)は排気マニホールド12を通じて前段排気管13に流入する。前段排気管13に対して浄化装置14及びマフラ15が設けられる。換言すれば、前段排気管13にて形成される排ガスの流路に浄化装置14及びマフラ15が挿入される。排ガスの流路において浄化装置14の下流側にマフラ15が設けられ、マフラ15の更に下流側に流路切替装置16が設けられる。
【0015】
前段排気管13は、連結路13a、13b及び13cを有する。連結路13aは排気マニホールド12と浄化装置14との間に設けられ、排気マニホールド12と浄化装置14とを連結する。連結路13bは浄化装置14とマフラ15との間に設けられ、浄化装置14とマフラ15とを連結する。連結路13cはマフラ15と流路切替装置16との間に設けられ、マフラ15と流路切替装置16とを連結する。
【0016】
内燃機関11から送出された排ガスは連結路13aを通って浄化装置14に流れ込む。浄化装置14は自身に流入した排ガスを浄化する。当該浄化において、浄化装置14は自身に流入した排ガス中の浄化対象物質を除去する(換言すれば低減する)。浄化装置14における浄化対象物質はNO、SO、HC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を含む。NOは窒化酸化物を指し、例えばNO、NO、N、N又はNOである。SOは硫黄酸化物を指し、例えばSO又はSOである。浄化装置14は浄化対象物質の除去に適した触媒を含む。浄化装置14は、三元触媒又は酸化触媒による浄化装置、排ガス中の粒子状物質(主にスス)を除去するフィルタ装置、及び、尿素を還元剤として使用した選択還元型触媒装置(いわゆる尿素SCR)を含んでいて良い。但し、車両1の種類によっては選択還元型触媒装置が浄化装置14に設けらない場合もある。例えば、車両1がディーゼル車の場合にあっては選択還元型触媒装置が浄化装置14に設けられるが、車両1がガソリン車の場合にあっては選択還元型触媒装置が浄化装置14に設けられないことがある。尚、除去対象物質が完全に浄化装置14にて除去されるとは限らず、排ガス中の除去対象物質の濃度等に依存して、排ガス中の除去対象物質の幾らかは浄化装置14を通過し得る。
【0017】
浄化装置14による浄化後の排ガスは連結路13bを通ってマフラ15に流れ込む。以下、内燃機関11から浄化装置14に流入する排ガスは、適宜、記号“Ga”にて参照される。浄化装置14による浄化後の排ガスであって、マフラ15に送られる前の排ガスは、適宜、記号“Gb”にて参照される。従って、連結路13a内の排ガスは排ガスGaであり、連結路13b内の排ガスは排ガスGbである。
【0018】
マフラ15は自身に流れ込む排ガス(ここでは排ガスGb)における温度及び圧力を低下させて排気騒音を低減させる機能を持つ。マフラ15を通過した後の排ガスは、適宜、記号“Gc”にて参照される。排ガスGcは連結路13cを通って流路切替装置16に送られる。
【0019】
流路切替装置16は自身に供給された排ガスGcを後段排気管19に送る。但し、後段排気管19は連結路19a~19gを有しており、流路切替装置16は自身に供給された排ガスGcを、制御装置100の制御の下、連結路19a~19cの何れかに送る。尚、流路切替装置16の下流側における排ガスの流れが様々に変化することを考慮し、図1では、流路切替装置16の下流側における排ガスの流れを図示していない。
【0020】
連結路19aは流路切替装置16とCO分離装置30との間に設けられ、流路切替装置16とCO分離装置30とを連結する。連結路19bは流路切替装置16とガス精製装置17との間に設けられ、流路切替装置16とガス精製装置17とを連結する。連結路19cは流路切替装置16と排気口20との間に設けられ、流路切替装置16と排気口20とを連結する。連結路19dはガス精製装置17と三方弁18との間に設けられ、ガス精製装置17と三方弁18とを連結する。連結路19eは三方弁18とCO分離装置30との間に設けられ、三方弁18とCO分離装置30とを連結する。連結路19fは三方弁18と排気口20との間に設けられ、三方弁18と排気口20とを連結する。連結路19gはCO分離装置30と排気口20との間に設けられ、CO分離装置30と排気口20とを連結する。
【0021】
ガス精製装置17は流路切替装置16から自身に送られた排ガスの精製を行う。ガス精製装置17における排ガスの精製は、浄化装置14にて実施される排ガスの浄化と同等のものであって良く、排ガスの精製を排ガスの浄化と読み替えても良い。当該精製において、ガス精製装置17は自身に流入した排ガス中の浄化対象物質を除去する(換言すれば低減する)。ガス精製装置17における浄化対象物質は浄化装置14における浄化対象物質と重複していて良く、ガス精製装置17における浄化対象物質と浄化装置14における浄化対象物質とは完全に同じであっても良い。ガス精製装置17における浄化対象物質は、少なくともNOを含み、更にSOを含んでいても良い。尚、除去対象物質が完全にガス精製装置17にて除去されるとは限らず、除去対象物質の濃度等に依存して、除去対象物質の幾らかはガス精製装置17を通過し得る。ガス精製装置17による精製を経た後の排ガスは連結路19dを通じて三方弁18に送られる。
【0022】
ガス精製装置17は多孔質材料を有する精製装置である第1精製装置を含んでいて良い。多孔質材料は例えば活性炭、ゼオライト又はケイ酸塩である。第1精製装置に設けられる多孔質材料は、活性炭、ゼオライト及びケイ酸塩の内、少なくとも2つの組み合わせであっても良い。ガス精製装置17は尿素を還元剤として使用した選択還元型触媒装置である第2精製装置を含んでいて良い。ガス精製装置17は、選択還元型触媒装置に分類されない触媒装置である第3精製装置を含んでいて良い。第3精製装置は例えば三元触媒又は酸化触媒を含む。ガス精製装置17は、上記の第1~第3精製装置の内、任意の2以上の精製装置の組み合わせであっても良い。
【0023】
三方弁18は三方性の電磁弁である。三方弁18はガス精製装置17から連結路19dを通じて自身に流れ込む排ガスを、制御装置100の制御の下で、連結路19e及び19fの何れか一方に送り出す。連結路19eに送られた排ガスはCO分離装置30に流入する。連結路19fに送られた排ガスは排気口20に流入する。
【0024】
CO分離装置30は、CO分離膜31、入力空間32及び出力空間33を備える。入力空間32と出力空間33との間にCO分離膜31が設けられる。即ち、CO分離装置30内の空間はCO分離膜31を境界に入力空間32と出力空間33に分離される。連結路19a又は19eを通ってCO分離装置30に送られる排ガスは入力空間32に流れ込む。
【0025】
CO分離膜31は、入力空間32内の排ガスの内、気体の二酸化炭素のみを選択的に通過させる膜である。CO分離膜31を通過したガス(即ち気体の二酸化炭素)は出力空間33に入る。出力空間33内のガスはCO貯留装置40に送られる。CO分離膜31を通過しなかったガスは、連結路19gに送られる。尚、入力空間32に流れ込む排ガスの内、CO分離膜31を通過したガスを通過ガスと称し、CO分離膜31を通過しなかったガスを残ガスと称する。理想的にはCO以外のガスのみにて残ガスが構成されるが、残ガスにCOが含まれることがある。
【0026】
CO貯留装置40は出力空間33におけるガス中のCOを捕捉して貯留する。CO貯留装置40におけるCOの捕捉及び貯留の方法として、公知の方法を含む任意の方法を利用することができる。例えば、COの捕捉及び貯留の方法として、物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法又は深冷分離法を利用できる。一例として、物理吸着法を採用される場合のCO貯留装置40の構造及び機能を説明する。この場合、CO貯留装置40は、活性炭又はゼオライト等から成り且つCOの吸着に適したCO吸着剤と、CO吸着剤を収容する容器と、を備える。CO吸着剤に対しCOを含んだガスを接触させることによりCOをCO吸着剤に吸着させることができる。
【0027】
尚、出力空間33とCO貯留装置40との間にポンプ(不図示)を設けて良い。当該ポンプは、出力空間33内のガス(従って通過ガス)を吸い出し、吸い出したガスをCO貯留装置40に送るポンプ動作を行う。当該ポンプは吸気口及び排気口を有し、吸気口から排気口に向かってガスを輸送する気体輸送式真空ポンプである。吸気口が出力空間に設けられ、排気口からのガスがCO貯留装置40に送られる。ポンプの継続的な作動により、出力空間33内のCOの分圧が入力空間32内のCOの分圧よりも低く維持される。入力空間32と出力空間33との間におけるCOの分圧差に基づき、入力空間32から出力空間33に向けてCOがCO分離膜31を通過する。
【0028】
排気口20は車両1の内部空間と車両1の外部空間との間に配置される。流路切替装置16から連結路19cに送られたガス、三方弁18から連結路19fに送られたガス及びCO分離装置30から連結路19gに送られたガスは、排気口20を通じて車外に排出される。車外とは車両1の外部を指す。尚、CO分離装置30の入力空間32と連結路19gとの境界部分には、排気口20から連結路19gを通じて入力空間32に向かう排ガスの流れを阻止するための逆止弁(不図示)が設けられる。
【0029】
濃度センサCS1は連結路13cに対して設けられ、連結路13c内における排ガスGc中の特定物質の濃度を検出する。濃度センサCS1にて検出された濃度を記号“CDET1”にて表す。濃度CDET1は後述の閾濃度と比較される対象濃度(第1対象濃度)の例である。濃度センサCS1は連結路13bに対して設けられるものであっても良く、この場合には、濃度センサCS1は連結路13b内における排ガスGb中の特定物質の濃度を検出する。何れにせよ、濃度CDET1は、内燃機関11及び流路切替装置16間における排ガス中の特定物質の濃度検出値を表す。より詳細には、濃度CDET1は、浄化装置14及び流路切替装置16間における排ガス中の特定物質の濃度検出値を表す。濃度センサCS1は濃度CDET1を示す信号を制御装置100に出力する。
【0030】
濃度センサCS2は連結路19dに対して設けられ、連結路19d内における排ガス中の特定物質の濃度を検出する。濃度センサCS2にて検出された濃度を記号“CDET2”にて表す。濃度CDET2は後述の閾濃度と比較される対象濃度(第2対象濃度)の例である。連結路19d内における排ガスは、浄化装置14による浄化及びガス精製装置17による精製を経た後の排ガスである。故に、濃度CDET2は、浄化装置14及びガス精製装置17を経由した後における排ガス中の特定物質の濃度検出値を表す。これに対し、濃度CDET1は、浄化装置14及びガス精製装置17の内、浄化装置14のみを経由した後における排ガス中の特定物質の濃度検出値を表す。濃度センサCS2は濃度CDET2を示す信号を制御装置100に出力する。
【0031】
上記の特定物質は、浄化装置14における浄化対象物質に含まれ且つガス精製装置17における浄化対象物質にも含まれる。ここでは、上記の特定物質はNOであるとする。特定物質としてのNOは、NO、NO、N、N及びNOの内、全部又は一部を含む。NOがNO、NO、N、N及びNOを含むと解した場合、NOの濃度は、NO、NO、N、N及びNOの各濃度の合算である。或いは、NOの濃度とは、NO、NO、N、N及びNOの何れかの濃度を指すと解しても良い。本実施形態において濃度とは、任意の定義による濃度であって良いが、例えば質量パーセント濃度又は体積パーセント濃度である。
【0032】
図2に制御装置100の内部構成図を示す。制御装置100は、ハードウェア資源として演算処理部110、メモリ120及びインターフェース130を備える。演算処理部110は、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等を含む。制御装置100にて実行される任意の制御、動作及び処理は、演算処理部110にて実行される制御、動作及び処理であると解されて良い。演算処理部110においてMPUとGPUが一体に形成されていても良い(例えばMPUにGPUが内蔵されていても良い)。
【0033】
メモリ120は、ROM(Read only memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び、RAM(Random access memory)等の揮発性メモリを含む。メモリ120に格納されたプログラムを演算処理部110にて実行することで、制御装置100の各機能が実現されて良い。ここにおけるプログラムは複数のプログラムを含んでいて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが実行されることで、制御装置100の各機能が実現されても良い。制御装置100は1以上のECU(Electronic Control Unit)にて構成されていて良い。2以上のECUにおける2以上のMPUにより演算処理部110が構成されていても良い。
【0034】
インターフェース130は相手側装置と通信を行う。通信は双方向通信又は一方向通信である。車両1においてCAN(Controller Area Network)を含む通信網が形成される。相手側装置は車両1に設置され且つ上記通信網に接続された任意の装置を含む。制御装置100及び相手側装置は上記通信網を介して任意の情報及び信号の送受信が可能である。本実施形態において、相手側装置は流路切替装置16、三方弁18並びに濃度センサCS1及びCS2を含む。インターフェース130にとっての相手側装置は、車両1の外部に設けられた外部装置(サーバ装置等)を含み得る。制御装置100及び相手側装置間の通信は、インターフェース130を用いて実現されるが、以下では、インターフェース130の記述が省略されることがある。
【0035】
図3に制御装置100の機能ブロック図を示す。制御装置100には機能ブロックF1及びF2が設けられる。演算処理部110において、単一のプログラム又は複数のプログラムが実行されることで機能ブロックF1及びF2が実現されて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが個別に実行されることで任意の複数の機能ブロックが実現されて良い。機能ブロックF1、F2は、夫々、濃度情報取得部、流路制御部である。
【0036】
濃度情報取得部F1は、濃度センサCS1及びCS2の出力信号に基づき濃度CDET1及びCDET2の情報を取得する。尚、インターフェース130にて濃度情報取得部F1が形成されると考えることも可能である。流路制御部F2は、濃度情報取得部F1にて取得された情報(CDET1及びCDET2の情報)に基づき流路切替装置16及び三方弁18を制御することにより、内燃機関11が送出した排ガスの流路を制御する。
【0037】
流路制御部F2は、排ガスの流路の内、流路切替装置16より下流側の流路を切り替え制御する。流路制御部F2は、流路切替装置16及び三方弁18に対して制御信号を送信することで上記の切り替え制御を実現する。流路切替装置16に至るまでの排ガスの流路は固定されている。以下では、説明の明確化のため、用語“対象ガス”を導入する。対象ガスは流路切替装置16に流入する排ガスであって、故にここでは排ガスGcである。流路制御部F2は、濃度情報取得部F1にて取得された情報(CDET1及びCDET2の情報)に基づき、以下の第1~第4流路制御の何れかを選択的に行うことができる。
【0038】
図4(a)を参照して第1流路制御を説明する。第1流路制御が行われるとき対象ガスは流路FP1を通る。流路FP1は、ガス精製装置17を経由することなくCO分離装置30の入力空間32に至る経路である。即ち、第1流路制御において、流路制御部F2は、対象ガスをガス精製装置17に通すことなく連結路19aを通じてCO分離装置30(詳細には入力空間32)に送る。第1流路制御において、流路制御部F2は対象ガスが連結路19aに送られるよう流路切替装置16を制御する。第1流路制御において三方弁18の制御は不要である。第1流路制御が行われるとき、CO分離装置30に送られたガスは入力空間32に流入する。入力空間32に流入したガスの内、上記通過ガスは出力空間33に進んでCO貯留装置40に送られ、上記残ガスは連結路19gを通じて排気口20から車外に排出される。
【0039】
図4(b)を参照して第2流路制御を説明する。第2流路制御が行われるとき対象ガスは流路FP2を通る。流路FP2は、ガス精製装置17及び三方弁18を経由してCO分離装置30の入力空間32に至る経路である。即ち、第2流路制御において、流路制御部F2は、対象ガスをガス精製装置17に通してから三方弁18を通じてCO分離装置30(詳細には入力空間32)に送る。第2流路制御において、流路制御部F2は対象ガスが連結路19bに送られるよう流路切替装置16を制御すると共にガス精製装置17から三方弁18に流入するガスが連結路19eに送られるよう三方弁18を制御する。第2流路制御が行われるとき、CO分離装置30に送られたガスは入力空間32に流入する。入力空間32に流入したガスの内、上記通過ガスは出力空間33に進んでCO貯留装置40に送られ、上記残ガスは連結路19gを通じて排気口20から車外に排出される。
【0040】
図4(c)を参照して第3流路制御を説明する。第3流路制御が行われるとき対象ガスは流路FP3を通る。流路FP3は、ガス精製装置17及びCO分離装置30の何れも経由することなく排気口20に至る経路である。即ち、第3流路制御において、流路制御部F2は、対象ガスをガス精製装置17に通すことなく且つCO分離装置30に送ることなく連結路19c及び排気口20を通じて車外に放出させる。第3流路制御において、流路制御部F2は対象ガスが連結路19cに送られるよう流路切替装置16を制御する。第3流路制御において三方弁18の制御は不要である。第3流路制御が行われるとき、対象ガスは入力空間32に流入しない。
【0041】
図4(d)を参照して第4流路制御を説明する。第4流路制御が行われるとき対象ガスは流路FP4を通る。流路FP4は、ガス精製装置17及び三方弁18を経由するものの、CO分離装置30の入力空間32に至ることなく排気口20に至る経路である。即ち、第4流路制御において、流路制御部F2は、対象ガスをガス精製装置17に通してからCO分離装置30に送ることなく連結路19f及び排気口20を通じて車外に放出させる。第4流路制御において、流路制御部F2は対象ガスが連結路19bに送られるよう流路切替装置16を制御すると共にガス精製装置17から三方弁18に流入するガスが連結路19fに送られるよう三方弁18を制御する。第4流路制御が行われるとき、対象ガスは入力空間32に流入しない。
【0042】
内燃機関11からの排ガスにはCO分離膜31にとっての被毒物質が含まれる。NO及びSOが被毒物質に該当する。NO又はSOが水分で凝縮される際に発生する凝縮水は強酸であり、当該凝縮水がCO分離膜31に触れるとCO分離膜31の劣化が促進される。浄化装置14にて被毒物質の低減が図られる。しかしながら、内燃機関11から送出される排ガス中の被毒物質の濃度は、内燃機関11の状態及び車両1の走行状態等に依存して様々に変化し、時として非常に高まることがある。このため、浄化装置14における被毒物質の低減がCO分離膜31にとって不十分になることがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、浄化装置14とは別にガス精製装置17を設けておく。そして、浄化装置14での被毒物質の低減が不十分と判断される場合には、ガス精製装置17でも被毒物質を低減させた上で排ガスをCO分離装置30に供給する(第2流路制御)。これにより、CO分離装置30(特にCO分離膜31)の劣化が抑制される。この際、排ガスをガス精製装置17に常時通すとガス精製装置17の寿命が短くなる。このため、必要時のみガス精製装置17に排ガスを通すようにする。これにより、ガス精製装置17の劣化も抑制される(ガス精製装置17の寿命が延びる)。また、ガス精製装置17を通しても、被毒物質が十分に除去されていないと判断されるときには、CO分離装置30へ排ガスを送ることなく車外に放出する(第4流路制御)。これにより、CO分離装置30(特にCO分離膜31)の劣化が抑制される。被毒物質の除去が十分であるか否かを判断するために、濃度センサCS1及びCS2の検出結果を参照する。
【0044】
尚、SOに関しては浄化装置14にて十分な程度に除去されることが期待される。このため、ここでは、濃度センサCS1及びCS2においてNOの濃度を検出対象としている。
【0045】
以下の複数の実施例の中で、CO回収システムに関する詳細な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0046】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。図5は第1実施例に係るCO回収システムの動作フローチャートである。図5を参照して、CO回収システムの動作の流れを説明する。
【0047】
まずステップS11にて内燃機関11が作動開始する。内燃機関11の作動開始に伴って、内燃機関11からの排ガスの送出も開始される。ステップS11の後、内燃機関11が停止すると図5の動作は終了するが、内燃機関11の停止に関わるステップは図5では示されていない。以下、特に記述なき限り、内燃機関11は作動し続けるものとする。ステップS11の後、ステップS12に進む。
【0048】
ステップS12において、流路制御部F2は対象ガスの流路を流路FP3に設定する(即ち第3流路制御を実行する)。流路FP3はデフォルトの流路であり、CO回収システムに何らかの異常がある場合には、以後、ステップS13に進むことなく対象ガスの流路が流路FP3に固定される。このため、CO回収システムに何らかの異常があった場合でも、排ガスの車外への放出が確保される(排ガスの流れが予期せぬ態様で詰まることが回避される)。異常として、例えば、濃度センサCS1又はCS2の異常、制御装置100の異常、CO分離装置30の異常が挙げられる。制御装置100に異常があり、制御信号100からの制御信号が流路切替装置16にて受信されないとき、流路切替装置16はデフォルトとして対象ガスを連結路19cに送る。
【0049】
また、CO貯留装置40におけるCOの貯留量には上限があり、CO貯留装置40におけるCOの貯留量が上限に達している場合にも、以後、ステップS13に進むことなく対象ガスの流路が流路FP3に固定される。ここでは、CO回収システムに異常が無く且つCO貯留装置40におけるCOの貯留量が上限に達していないことを想定する。そうすると、ステップS12の後、ステップS13に進む。
【0050】
ステップS13において、濃度情報取得部F1は濃度センサCS1及びCS2の出力信号に基づき濃度情報を取得する。濃度情報は濃度CDET1及びCDET2の情報である。濃度情報の取得により制御装置100にて濃度CDET1及びCDET2が認識される。濃度情報取得部F1は濃度情報を所定周期で順次取得して良い。ステップS13では最新の濃度情報が取得され、最新の濃度情報に基づき後段のステップの処理が実行される。ステップS13の後、ステップS14に進む。
【0051】
ステップS14において、流路制御部F2は濃度CDET1を閾濃度CTH1と比較し、濃度CDET1が閾濃度CTH1以下であるかを判断する。閾濃度CTH1はCO分離膜31の保護の観点から予め定められた濃度であり、例えば0.1ppm(Parts per million)である。“CDET1≦CTH1”の成立時には(ステップS14のY)ステップS15に進み、“CDET1>CTH1”の成立時には(ステップS14のN)ステップS16に進む。
【0052】
ステップS15において、流路制御部F2は、対象ガスが流路切替装置16から連結路19aを通じてCO分離装置30(詳細には入力空間32)に直接送られるよう流路切替装置16を制御する。即ち、ステップS15において、流路制御部F2は第1流路制御を実行する(図4(a)参照)。
【0053】
ステップS16において、流路制御部F2は濃度CDET1を閾濃度CTH2と比較し、濃度CDET1が閾濃度CTH2以下であるかを判断する。閾濃度CTH2は閾濃度CTH1よりも高い。高すぎる濃度CDET1を有した対象ガスをガス精製装置17に供給すると、ガス精製装置17の寿命が短くなる。また、濃度CDET1が高すぎるとき、対象ガスをガス精製装置17に通しても、CO分離膜31にとって必要なレベルまで被毒物質を除去しきれない可能性が高い。このためステップS16の分岐処理を導入する。閾濃度CTH2はガス精製装置17の保護等の観点から予め定められた濃度であり、例えば20ppm(Parts per million)である。“CDET1≦CTH2”の成立時には(ステップS16のY)ステップS17に進み、“CDET1>CTH2”の成立時には(ステップS16のN)ステップS21に進む。
【0054】
ステップS17において、流路制御部F2は、対象ガスが流路切替装置16から連結路19bを通じてガス精製装置17に送られるよう流路切替装置16を制御する。従ってステップS17に進む場合に実行される流路制御は第2又は第4流路制御である(図4(b)及び(d)参照)。
【0055】
ステップS18において、流路制御部F2は濃度CDET2を閾濃度CTH3と比較し、濃度CDET2が閾濃度CTH3以下であるかを判断する。閾濃度CTH3は、CO分離膜31の保護の観点から予め定められた濃度であり、例えば0.1ppm(Parts per million)である。閾濃度CTH3はステップS14で用いられる閾濃度CTH1と同じであって良いが、閾濃度CTH1と相違させても構わない。少なくとも閾濃度CTH3は閾濃度CTH2より低いと良い。“CDET2≦CTH3”の成立時には(ステップS18のY)ステップS19に進み、“CDET2>CTH3”の成立時には(ステップS18のN)ステップS20に進む。
【0056】
ステップS19において、流路制御部F2は、ガス精製装置17を経由した後における対象ガスが連結路19eを通じてCO分離装置30(詳細には入力空間32)に送られるよう三方弁18を制御する。従ってステップS19に進む場合に実行される流路制御は第2流路制御である(図4(b)参照)。
【0057】
ステップS20において、流路制御部F2は、ガス精製装置17を経由した後における対象ガスが連結路19fを通じて排気口20に送られるよう三方弁18を制御する。従ってステップS20に進む場合に実行される流路制御は第4流路制御である(図4(d)参照)。
【0058】
ステップS21において、流路制御部F2は、対象ガスが流路切替装置16から連結路19cを通じて排気口20に直接送られるよう流路切替装置16を制御する。即ち、ステップS21において、流路制御部F2は第3流路制御を実行する(図4(c)参照)。
【0059】
ステップS15、S19、S20及びS21の何れの後にもステップS13に戻り、ステップS13から始まる一連の処理が再び実行される。ステップS13から始まる一連の処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0060】
このように、流路制御部F2は、濃度CDET1と複数の閾濃度(ここではCTH1及びCTH2)との比較結果に基づき、第1、第2及び第3流路制御を含む複数の流路制御を切り替え実行する。
【0061】
これにより、高すぎる濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがCO分離装置30に流入することを抑制でき、以ってCO分離装置30の劣化が抑制される。CO分離装置30の劣化抑制はCO分離装置30の長寿命化に繋がる。また、濃度CDET1に応じて第2流路制御と第3流路制御とを切り替え実行できる(図4(b)及び図4(c)参照)。このため、高すぎる濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがガス精製装置17に流入することを抑制でき、以ってガス精製装置17の劣化が抑制される。ガス精製装置17の劣化抑制はガス精製装置17の長寿命化に繋がる。
【0062】
具体的には、流路制御部F2は、“CDET1≦CTH1”であるときに第1流路制御を実行し、“CTH1<CDET1≦CTH2”であるときに第2又は第4流路制御を実行し、“CDET1>CTH2”であるときに第3流路制御を実行する。“CTH1<CDET1≦CTH2”の場合において、流路制御部F2は、“CDET2≦CTH3”であれば第2流路制御を実行し、“CDET2>CTH3”であれば第4流路制御を実行する。
【0063】
これにより、閾濃度CTH1又はCTH3より大きな濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがCO分離装置30に流入することを抑制でき、以ってCO分離装置30の劣化が抑制される。CO分離装置30の劣化抑制はCO分離装置30の長寿命化に繋がる。また、閾濃度CTH2より大きな濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがガス精製装置17に流入することを抑制でき、以ってガス精製装置17の劣化が抑制される。ガス精製装置17の劣化抑制はガス精製装置17の長寿命化に繋がる。“CDET1>CTH2”であるときには、排ガスをガス精製装置17に通しても、CO分離膜31にとって必要なレベルまで被毒物質を除去しきれない可能性が高い。このため、“CDET1>CTH2”であるときにはガス精製装置17に対象ガスを通さないことで、ガス精製装置17の劣化を抑制する。
【0064】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。ガス精製装置17による精製の能力が十分に高く、ガス精製装置17を経た後における対象ガスの特定物質の濃度が十分に低くなることが見込まれる場合、車両1にて三方弁18を省略する変形を施しても良い。
【0065】
図6は、三方弁18が省略された場合における車両1の概略的な平面図である。三方弁18を省略する変形を、以下、便宜上、変形EX2と称する。第2実施例では変形EX2が適用される。変形EX2に係る車両1においては、三方弁18の省略に伴って濃度センサCS2が不要となる。加えて変形EX2に係る車両1においては、連結路19d~19f(図1参照)の代わりに、ガス精製装置17とCO分離装置30を直接連結する連結路19hが後段排気管19に設けられる。変形EX2において、ガス精製装置17による精製を経た後の排ガスは連結路19hを通じて常にCO分離装置30(詳細には入力空間32)に送られる。
【0066】
変形EX2に係る流路制御部F2は、濃度情報取得部F1にて取得された情報(CDET1の情報)に基づき、第1~第3流路制御の何れかを選択的に行うことができる。変形EX2が適用されるとき、第4流路制御が実行されることは無い。変形EX2に係る第2流路制御において、流路制御部F2は、対象ガスをガス精製装置17に通してから連結路19hを通じてCO分離装置30(詳細には入力空間32)に送る。変形EX2に係る第2流路制御において、流路制御部F2は対象ガスが連結路19bに送られるよう流路切替装置16を制御すれば足る。
【0067】
図7は第2実施例に係るCO回収システムの動作フローチャートである。第2実施例では、図5に示されるステップS17~S20の処理が存在せず、ステップS16において“CDET1≦CTH2”が成立する場合には図7のステップS22に進む。それ以外の点において又は特に記述無き限り、第2実施例の動作の流れは第1実施例の動作の流れと同様である。
【0068】
ステップS22において、流路制御部F2は、対象ガスが流路切替装置16から連結路19bを通じてガス精製装置17に送られるよう流路切替装置16を制御する。ステップS22において、ガス精製装置17に送られた対象ガスはガス精製装置17を経由してから連結路19hを通じてCO分離装置30に送られる。このため、ステップS22に進む場合に実行される流路制御は第2流路制御(変形EX2に係る第2流路制御)である。ステップS22の後、ステップS13に戻る。
【0069】
変形EX2に係る流路制御部F2は、“CDET1≦CTH1”であるときに第1流路制御を実行し、“CTH1<CDET1≦CTH2”であるときに第2流路制御を実行し、“CTH2<CDET1”であるときに第3流路制御を実行する。
【0070】
“CDET1≦CTH1”であるときに第1流路制御を実行することにより、閾濃度CTH1より大きな濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがCO分離装置30に流入することを抑制でき、以ってCO分離装置30の劣化が抑制される。CO分離装置30の劣化抑制はCO分離装置30の長寿命化に繋がる。“CTH1<CDET1≦CTH2”であるときには、ガス精製装置17を通過した後の排ガスがCO分離装置30に送られるため、CO分離装置30の劣化抑制効果を十分に見込める。更に、閾濃度CTH2より大きな濃度(特定物質の濃度)を有する排ガスがガス精製装置17に流入することを抑制でき、以って、ガス精製装置17の劣化が抑制される。ガス精製装置17の劣化抑制はガス精製装置17の長寿命化に繋がる。また、“CTH2<CDET1”であるときには、排ガスをガス精製装置17に通しても、CO分離膜31にとって必要なレベルまで被毒物質を除去しきれない可能性が高い。この観点からも“CTH2<CDET1”であるときには第3流量制御を実行することで(即ち排ガスをCO分離装置30に送らないことで)、CO分離装置30の保護を図る。
【0071】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。上記の特定物質はSOであっても良い。特定物質としてのSOは、SO及びSOの内、全部又は一部を含む。SOがSO及びSOを含むと解した場合、SOの濃度はSO及びSOの各濃度の合算である。或いは、SOの濃度とは、SO又はSOの濃度を指すと解しても良い。
【0072】
更に、上記の特定物質はNO及びSOを含んでいても良い。特定物質がNO及びSOを含む場合、濃度CDET1は排ガスGc中のNOの濃度と、排ガスGc中のSOの濃度と、の平均、合計又は最小値であって良い。或いは、濃度CDET1は排ガスGb中のNOの濃度と、排ガスGb中のSOの濃度と、の平均、合計又は最小値であっても良い。特定物質がNO及びSOを含む場合、濃度CDET2は連結路19d内における排ガス中のNOの濃度と、連結路19d内における排ガス中のSOの濃度と、の平均、合計又は最小値であって良い。
【0073】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第4実施例では、上述した各事項に対する補足事項、応用技術又は変形技術等を説明する。
【0074】
内燃機関11から送出される排ガスの流路において、流路切替装置16の上流側にマフラ15が配置される構成例を挙げたが(図1参照)、マフラ15の配置位置は任意に変更可能である。例えば、排気口20にマフラ15を配置しても良い。この場合、浄化装置14と流路切替装置16が連結路13bにより直接連結され、連結路13b内の排ガスGbが対象ガスとして流路切替装置16に流れ込む。内燃機関11から送出される排ガスの流路において、流路切替装置16の上流側と下流側の双方にマフラが設置されても良い。
【0075】
CO貯留装置40にて貯留されたCOは、例えば、ガソリンスタンド又は車庫等に設置された回収機器(不図示)に対してCO貯留装置40が接続されたときに、CO貯留装置40から回収機器に放出される。或いは、CO貯留装置40全体又はCO貯留装置40内のカートリッジを車両1から取り外すことで、CO貯留装置40に貯留されたCOが車外に取り出されても良い。
【0076】
排ガスに関わる装置として、上述の各図面に示されない装置(以下、追加装置と称する)が車両1に設けられていても良い。追加装置として排ガス冷却装置が車両1に設置されて良い。排ガス冷却装置は、排ガスの流路においてCO分離装置30の上流側に配置され、CO分離装置30に流入する排ガスの温度を低下させる。排ガス冷却装置の設置により、熱によるCO分離装置30の劣化(特にCO分離膜31の劣化)を抑制することができる。追加装置としてエネルギ変換装置が車両1に設置されて良い。エネルギ変換装置は、排ガスが有する熱エネルギを他のエネルギ(電気エネルギ等)に変換する。変換により得られた他のエネルギ(電気エネルギ等)を車両1にて利用することができる。排ガスをエネルギ変換装置に通すことで排ガスの温度が低下する。このため、エネルギ変換装置は排ガス冷却装置の一種であるともいえる。排ガスの流路においてエネルギ変換装置をCO分離装置30の上流側に配置し、CO分離装置30に流入する排ガスの温度をエネルギ変換装置にて低下させて良い。
【0077】
本実施形態に係るCO回収システムは、少なくとも制御装置100、流路切替装置16、ガス精製装置17、CO分離装置30及びCO貯留装置40を備えて構成される。但し、車両1に搭載されるものとして上述した任意の部品は、CO回収システムの構成要素に含まれ得る。CO回収システムを排ガス処理装置と読み替えても良い。制御装置100は排ガス処理用の制御装置として機能する又は排ガス処理用の制御装置を内包する。
【0078】
車両1は内燃機関11を用いて発生した駆動力にて移動する移動体の例である。本発明において、移動体は車両に分類されないもの(例えばロボット、ドローン)であっても良い。
【0079】
車両1は、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO回収システムが適用される対象機器の例である。本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO回収システムを、車載用途とは異なる任意の用途に適用することも可能である。即ち、対象機器は車両に限定されず、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO回収システムを任意の対象機器に適用及び搭載できる。また、上述の車両1に設けられる熱機関は内燃機関(11)であるが、対象機器に設けられる熱機関は内燃機関及び外燃機関の何れであっても良いし、内燃機関及び外燃機関の組み合わせであっても良い。熱機関の作動により熱機関からCOを含む排ガスが送出される。
【0080】
具体的には、対象機器は化石燃料(石油又はガス等)を燃焼させる装置又は設備であっても良い。化石燃料を燃焼させる装置又は設備の例として、火力発電を行う装置又は設備、溶炉を備えた装置又は設備、コジェネレーションを行う装置又は設備、及び、暖房装置が挙げられる。閉鎖環境の換気システムに対して、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO回収システムを適用及び搭載しても良い。閉鎖環境として、宇宙空間に形成された居住施設(宇宙ステーション等)、及び、深海に形成された居住施設が挙げられる。
【0081】
本発明の実施形態にて述べた任意の方法をコンピュータに実行させるプログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体であって且つコンピュータ読み取り可能な不揮発性の記録媒体は、本発明の実施形態の範囲に含まれる。本発明の実施形態における任意の処理は、半導体集積回路等のハードウェア、上記プログラムに相当するソフトウェア、又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されて良い。ここにおけるソフトウェア及びハードウェアは夫々に複数あっても良い。
【0082】
本発明の一側面に係るプログラムは、熱機関からの排ガスの流路を切り替えるための流路切替装置と、ガス精製装置と、CO分離膜を含むCO分離装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御方法を処理部(110)に実行させるプログラムであって、前記流路切替装置を用いて前記流路を制御する流路制御工程を前記処理部に実行させ、前記流路制御工程において、前記熱機関及び前記流路切替装置間における排ガス中の特定物質の濃度と複数の閾濃度との比較結果に基づき、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく前記CO分離装置に送る第1流路制御と、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通してから前記CO分離装置に送る第2流路制御と、前記熱機関からの排ガスを前記ガス精製装置に通すことなく且つ前記CO分離装置に送ることなく前記対象機器の外部に放出させる第3流路制御と、を含む複数の流路制御を、前記処理部に、切り替えて実行させる。
【0083】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
11 内燃機関
12 排気マニホールド
13 前段排気管
13a~13c 連結路
14 浄化装置
15 マフラ
16 流路切替装置
17 ガス精製装置
18 三方弁
19 後段排気管
19a~19h 連結路
20 排気口
30 CO分離装置
31 CO分離膜
32 入力空間
33 出力空間
40 CO貯留装置
CS1、CS2 濃度センサ
100 制御装置
110 演算処理部
120 メモリ
130 インターフェース
Ga、Gb、Gc 排ガス
F1 濃度情報取得部
F2 流路制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7