(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089951
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/64 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
C07D233/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205517
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】大岡 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】谷中 悟
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ビルディングブロックの一つである、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法を提供することである。
【解決手段】
水中で、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを過酸化水素と反応させる工程(1)と、無機塩基を用いて中和する工程(2)と、残存する過酸化水素を遷移金属化合物を用いて分解する工程(3)と、ニトロキシルラジカル化合物の存在下、ハロゲン酸素酸塩などを反応させる工程(4)を含む、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを過酸化水素と反応させて、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを製造する工程(1)と、
上記の工程(1)で得られた反応液を、無機塩基を用いて中和する工程(2)と、
上記の工程(2)で得られた反応液中に残存する過酸化水素を、遷移金属化合物を用いて分解する工程(3)と、
ニトロキシルラジカル化合物の存在下、超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸、またはハロゲン酸素酸塩と、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを反応させて、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する工程(4)を含む、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する方法。
【請求項2】
工程(4)において、ハロゲン化塩も存在させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
用いる遷移金属化合物が二酸化マンガンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
用いるニトロキシルラジカル化合物が2,2,6,6-テトラメチルピペリジンニトロキシルラジカル化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
用いるハロゲン酸素酸塩が次亜塩素酸ナトリウムである、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素ヘテロ環は医薬及び農薬の原体となる化合物を構成する主要な部分構造(ビルディングブロック)である。近年、イミダゾール環、ピリジン環などを有する有害節足動物防除剤の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献1は、式(A)で表される化合物を示している。
【0003】
【0004】
化合物(A)の製造に用いる化合物として、特許文献2は、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを開示している。
1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法として、非特許文献1は、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを、ハイポクロライドとTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)を用いて酸化することで、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する方法が開示されている。
ほかにも、特許文献3は、4-ヒドロキシメチル-イミダゾール類を、ハイポクロライドとTEMPOを用いて酸化することで、4-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール類を製造する方法が開示されている。
さらに、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールの製造方法として、非特許文献2は、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを、Raney-Niを用いて脱硫還元分解することで、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを製造する方法が開示されている。同一文献においては、硝酸及び亜硝酸塩を用いた脱硫反応も開示されている。
ほかにも、非特許文献3は、1-置換-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール類を、過酸化水素を用いて酸化的に脱硫分解することで、1-置換-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール類を製造する方法が開示されている。
これらの製造方法を参考に、工業レベルで実施可能な製造方法を構築する場合、廃棄物が少なく、効率および収率の良い製造方法で目的物を得ることが望まれる。
廃棄物を少なくするうえでは、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールの脱硫には、過酸化水素を用いた酸化的脱硫分解を採用することが望ましい。その場合、反応は水系で行うことととなるが、得られる1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールが、極めて水溶性の高い化合物であることが問題となる。その溶解度は、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)Software V11.02を用いた計算によると、1000g/L(pH7、25℃)とされている。これほど水溶性が高いと抽出と精製を行うことが困難であり、抽出と精製の回避が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 2020/090585 A
【特許文献2】PCT/JP2022/042473
【特許文献3】特開2002-275162号公報
【非特許文献1】Organic Process Research & Development(2010),14,142-151.
【非特許文献2】European Journal of Organic Chemistry(2017),2017(3),695-703.
【非特許文献3】Organic Process Research & Development(2002),6,674-676.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ビルディングブロックの一つである、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために検討を重ねた結果、以下の態様を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕水中で、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを過酸化水素と反応させて、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを製造する工程(1)と、
上記の工程(1)で得られた反応液を、無機塩基を用いて中和する工程(2)と、
上記の工程(2)で得られた反応液中に残存する過酸化水素を、遷移金属化合物を用いて分解する工程(3)と、
ニトロキシルラジカル化合物の存在下、超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸、またはハロゲン酸素酸塩と、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを反応させて、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する工程(4)を含む、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する方法。
〔2〕工程(4)において、ハロゲン化塩も存在させる、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕用いる遷移金属化合物が二酸化マンガンである、〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕用いるニトロキシルラジカル化合物が2,2,6,6-テトラメチルピペリジンニトロキシルラジカル化合物である、〔1〕に記載の製造方法。
〔5〕用いるハロゲン酸素酸塩が次亜塩素酸ナトリウムである、〔1〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔工程(1)〕
本発明の1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの製造方法は、以下に説明する工程(1)~工程(4)を含むものである。
工程(1)は、水中で、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを過酸化水素と反応させて、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを製造する工程である。すなわち、工程(1)は、酸化的に脱硫分解を行う工程である。
【0010】
本発明に用いられる1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールは、公知の方法で自ら合成したものであってもよいし、他の者が何らかの方法で合成し市販しているものであってもよい。
水の使用量は、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール1重量部に対して、好ましくは2~100重量部である。
反応に用いる過酸化水素は、市販の濃度30w/v%の過酸化水素水でよい。
【0011】
試薬の添加順序および反応条件は、安全性および反応制御の観点から設定することができる。
一つの実施態様は、容器に入れられた水中に1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを加え混合液を得て、撹拌下で過酸化水素水を加えることを含む。過酸化水素水は、少量を徐々に添加することが好ましい。
過酸化水素水の使用量は、過酸化水素の量で算出すると、1モルの1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールに対して、300~350モル%となる量であることが好ましい。
反応における温度は、30℃~70℃程度であることが好ましい。
反応における圧力は、例えば、0.1~1MPaである。
反応時間は、特に限定されず、例えば、0.5時間~24時間である。
反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、本反応は反応溶媒に水のみを用いることを要求するものではなく、本反応および続く酸化反応の障害とならない有機溶媒であれば任意に使用することができる。
【0012】
〔工程(2)〕
工程(2)は、工程(1)で得られた反応液を、無機塩基を用いて中和する工程である。
工程(1)の終了後は、酸化的脱硫分解により生じた亜硫酸または硫酸により、反応液が酸性条件になる。工程(2)は、工程(4)に備えこれを中和する工程である。
【0013】
用いることができる無機塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどを挙げることができる。
中和により、反応液のpHを5~12の範囲とすることが好ましい。さらには、反応液のpHを7~10の範囲とすることが好ましい。無機塩基は、反応液がこの範囲のpHになる量を使用することになる。無機塩基は、安全性および反応制御の観点から、少量を徐々に添加することが好ましい。
反応における温度は、0℃~30℃程度であることが好ましい。
反応における圧力は、例えば、0.1~1MPaである。
反応時間は、特に限定されず、例えば、0.5時間~24時間である。
反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0014】
〔工程(3)〕
工程(3)は、工程(2)で得られた反応液中に残存する過酸化水素を、遷移金属化合物を用いて分解する工程である。
工程(1)の酸化的脱硫分解を完結させるため、過剰量の過酸化水素を使用する。結果、反応液中には過酸化水素が残存することになる。
検討の結果、工程(4)のニトロキシルラジカル化合物の存在下に行う酸化反応は、過酸化水素を分解して除去することで、収率よく行うことができることが判明した。
【0015】
過酸化水素の分解には、遷移金属化合物を用いる。用いることができる遷移金属化合物は、過酸化水素の分解を促進するものであれば特に制限はない。一例として、チタン、マンガン、鉄、銅、モリブデン、セリウム、タングステンなどの遷移金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化チタン(IV)、二酸化マンガン、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化モリブデン(VI)、酸化セリウム(IV)、酸化タングステン(VI)などの遷移金属酸化物を挙げることができる。
さらには、上記の遷移金属酸化物の塩も挙げることができる。これらを単独または混合して使用できる。
本発明に用いられる遷移金属化合物としては、「二酸化マンガン」が好ましい。
【0016】
遷移金属化合物の使用量は、触媒量程度で十分である。具体的には、1モルの1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールに対して、0.1~10モル%であることが好ましい。
遷移金属化合物は、全量を一気にもしくは少量を徐々に添加することが好ましい。
反応における温度は、0℃~60℃程度であることが好ましい。
反応における圧力は、例えば、0.1~1MPaである。
反応時間は、特に限定されず、例えば、0.5時間~24時間である。
反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0017】
〔工程(4)〕
工程(4)は、ニトロキシルラジカル化合物の存在下、超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸、またはハロゲン酸素酸塩と、1-メチル-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールを反応させて、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを製造する工程である。
【0018】
用いることができるニトロキシルラジカル化合物としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシ、4-(ベンゾイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシなどの「2,2,6,6-テトラメチルピペリジンニトロキシルラジカル化合物」の他、ジ-tert-ブチルニトロキシドラジカル; ジフェニルニトロキシド、ビス(4-メトキシフェニル)ニトロキシド; フェニル(tert-ブチル)ニトロキシド、2-ナフチル(tert-ブチル)ニトロキシド; 2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ、3-カルバモイル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ、3-カルボキシ-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-1-オキシ; 3,3,5,5-テトラメチル-4-モルホリニルオキシ; 9-アザビシクロ[3,3,1]ノナン-N-オキシル(ABNO)、2-アザアダマンタン-N-オキシル(AZADO)、1-メチル-2-アザアダマンタン-N-オキシル(1-Me-AZADO)、9-アザノルアダマンタン-N-オキシル(Nor-AZADO)、1,5-ジメチル-9-アザノルアダマンタン-N-オキシル(DMN-AZADO)などが挙げられる。
本発明に用いられるニトロキシルラジカル化合物としては、TEMPOなどの「2,2,6,6-テトラメチルピペリジンニトロキシルラジカル化合物」が好ましい。
【0019】
ニトロキシルラジカル化合物の使用量は、触媒量程度で十分である。具体的には、1モルの1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールに対して、0.5~5モル%であることが好ましい。
ニトロキシルラジカル化合物は、全量を一気にもしくは少量を徐々に添加することが好ましい。
【0020】
本発明の収率を向上させるために、反応をハロゲン化塩の存在下で行うこともできる。使用するハロゲン化塩としては、KBr、NaBr、KI、NaIなどを挙げることができる。その使用量としては、工程(1)で用いた1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール1モルに対して、5~20モル%であることが好ましい。
ハロゲン化塩は、全量を一気にもしくは少量を徐々に添加することが好ましい。
【0021】
工程(4)の反応は、反応溶液中にさらに有機溶媒を加えて、水との混合溶媒中で行うこともできる。酸化反応に対して不活性な有機溶媒であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(製品名:ジグライム)、テトラヒドロフラン(略名:THF)などのエーテル類; ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン(略名:DCE)などのハロゲン化炭化水素類; ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類; トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類; N,N-ジメチルホルムアミド(略名:DMF)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(略名:DMPU)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(略名:HMPA);アセトニトリルなどの非プロトン極性溶媒を挙げることができる。
有機溶媒の使用量は、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール1重量部に対して、好ましくは0.1~100重量部である。
【0022】
工程(4)の酸化反応は、ニトロキシルラジカル(およびヒドロキシルアミン)が、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤(共酸化剤)により酸化されて生じるオキソアンモニウムイオンを酸化活性種とする触媒反応である。
用いることができる酸化剤は、超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸、またはハロゲン酸素酸塩である。
【0023】
例えば、二酢酸ヨードベンゼン、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン、デスマーチン試薬などの超原子価ヨウ素試薬;
次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸などのハロゲン酸素酸;
次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム五水和物、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸カルシウム; 次亜臭素酸アンモニウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム、亜臭酸ナトリウム、臭素酸アンモニウム、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム; 次亜ヨウ素酸カリウム、次亜ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸アンモニウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸三ナトリウム;などのハロゲン酸素酸塩;を挙げることができる。
本発明に用いられる酸化剤としては、ハロゲン酸素酸塩が好ましく、さらには「次亜塩素酸ナトリウム」が好ましい。
【0024】
反応に用いる次亜塩素酸ナトリウムは、市販の有効塩素濃度が6~15%の水溶液でよい。
超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸またはハロゲン酸素酸塩の使用量は、1モルの1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールに対して、100~200モル%であることが好ましい。
超原子価ヨウ素試薬、ハロゲン酸素酸、またはハロゲン酸素酸塩は、安全性および反応制御の観点から、少量を徐々に添加することが好ましい。
反応における温度は、0℃~30℃程度であることが好ましい。
反応における圧力は、例えば、0.1~1MPaである。
反応時間は、特に限定されず、例えば、0.5時間~24時間である。
反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】
反応終了後は、有機溶媒で抽出し、得られる有機層を乾燥、濃縮するなどの後処理をすることができる。さらに、必要に応じて、再結晶、クロマトグラフィーなどの操作により、生成物を精製してもよい。
以下に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0026】
実施例1
水(200ml)に1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾール(57.68g、0.4モル)を加えた。35℃に加熱し、30%過酸化水素(136.04g、300モル%)を内温が50℃以下に収まるよう、1時間かけて断続的に滴下した。30分撹拌した後に室温に冷却し、水酸化ナトリウム(32.00g、200モル%)を30分かけて分割添加した。二酸化マンガン(0.14g、0.4モル%)を加えて30分撹拌した。
不溶物をろ過した後、塩化メチレン(40ml)、ヨウ化ナトリウム(6.00g、10モル%)、TEMPO(0.63g、1モル%)を加えた。反応温度を15℃に保ち10%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(387.1g、130モル%)を220分かけて滴下した後、30分撹拌した。
塩化メチレンで抽出(400mlで1回、200mlで3回)し、抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥、濃縮して、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾール(36.86g、純度83%)を得た。
注)各試薬のモル%は、1-メチル-2-メルカプト-5-ヒドロキシメチル-1H-イミダゾールに対する使用割合を示す。
【0027】
二酸化マンガンを加える工程を実施しない場合、目的とする1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールの収率が安定しないうえ、その収率は低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の製造方法は、農薬の原体となる化合物を構成するビルディングブロックの一つである、1-メチル-5-ホルミル-1H-イミダゾールを、効率的に得ることができる。