(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089958
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】生コンクリートの流動化程度評価方法、計測センサ、生コンクリートの流動化程度の評価装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/08 20060101AFI20240627BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240627BHJP
B28B 1/093 20060101ALI20240627BHJP
E04G 21/02 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
E04G21/08 ESW
G01N33/38
B28B1/093
E04G21/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205531
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真史
(72)【発明者】
【氏名】田中 真史
(72)【発明者】
【氏名】昇 悟志
(72)【発明者】
【氏名】橋田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】市川 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 博規
(72)【発明者】
【氏名】山根 康平
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172BA25
2E172FA12
2E172HA03
(57)【要約】
【解決課題】極めて簡単且つリアルタイムでコンクリートの流動化程度を評価できる生コンクリートの流動化程度評価方法、計測センサ、および生コンクリートの流動化程度の評価装置を提供する。
【解決手段】 生コンクリートの流動化程度評価方法は、第1工程と、第2工程と、を備える。第1工程は、生コンクリート中に錘部よりもフロート部が下に位置する第1姿勢でバイブレータの近傍に計測センサを配置する。第2工程は、前記バイブレータを作動させて前記生コンクリートの流動化を行い、前記生コンクリートが流動化するに従い、前記計測センサが前記第1姿勢から、前記錘部よりも前記フロート部が上に位置する第2姿勢に移動する間、又は前記第1姿勢から前記第2姿勢に至る途中までの間に、評価部で前記計測センサからの前記傾きを取得して、当該傾きの変動に基づいて前記生コンクリートの流動化程度を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘部と、前記錘部よりも大きな浮力が作用するフロート部と、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、を有する計測センサと、前記傾き変化を取得するとともに生コンクリートの流動化程度を評価する評価部と、を有する評価装置を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法において、
前記生コンクリート中に前記錘部よりも前記フロート部が下に位置する第1姿勢で前記計測センサを設置し、前記計測センサの近傍に、作動させた或いは作動前のバイブレータを挿入する第1工程と、
前記バイブレータを作動させて前記生コンクリートに加振するとともに前記生コンクリートの流動化を行い、前記生コンクリートが流動化するに従い、前記計測センサが前記第1姿勢から、前記錘部よりも前記フロート部が上に位置する第2姿勢に移動する間、又は前記第1姿勢から前記第2姿勢に至る途中までの間に、前記評価部で前記計測センサからの前記傾き変化を取得して、当該傾き変化の時系列データに基づいて前記生コンクリートの流動化程度を評価する第2工程と、
を備える生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項2】
前記第2工程の開始後に前記計測センサを前記生コンクリート中から回収する第3工程を備える請求項1に記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項3】
前記計測センサは引き抜き治具に接続されており、前記引き抜き治具の少なくとも一部は、前記生コンクリートの外側に位置することを特徴とし、前記第3工程において、前記引き抜き治具を引き抜くことで前記計測センサを前記生コンクリート中から回収する請求項2に記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記評価部は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフの時系列データから締固め完了を判定する請求項1から請求項3の何れかに記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項5】
前記第2工程において、前記評価部は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフの時系列データから締固め完了までの加振時間を予測する請求項1から請求項3の何れかに記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項6】
前記締固め完了までの加振時間は、前記傾き変化のグラフの所定範囲内において一点および当該一点におけるグラフの平均的な勾配を定め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線が、予め設定した締固め完了と判定される傾き変化に到達するまでの時間とする請求項5に記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記締固め完了よりも前に行われ、前記バイブレータによる前記生コンクリートへの加振は、前記締固め完了の時刻まで行われる請求項2又は請求項3に記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項8】
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分と直交する方向に夫々直交する第1検出軸と第2検出軸を持ち、前記第1検出軸と第2検出軸における第1加速度と第2加速度を検出することを特徴とし、下記式によって、合成加速度を算出し、
合成加速度=(第1加速度2+第2加速度2)1/2
前記合成加速度の下記式によって、傾きを算出する、
傾き=asin(合成加速度)
請求項1から請求項3の何れかに記載の生コンクリートの流動化程度評価方法。
【請求項9】
前記生コンクリート内に挿入される前記生コンクリートの流動化程度の計測センサであって、
錘部と、
前記錘部よりも大きな浮力が作用するフロート部と、
前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、
を備える計測センサ。
【請求項10】
前記センサ部は加速度を検出し、前記傾き変化を前記加速度の変化で検出することを特徴とする、請求項9に記載の計測センサ。
【請求項11】
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分と直交する方向に少なくとも1つの検出軸を有する請求項9又は請求項10に記載の計測センサ。
【請求項12】
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分に平行する方向に検出軸を有する請求項9又は請求項10に記載の計測センサ。
【請求項13】
前記センサ部は蓄電器を有し、前記蓄電器からの電力供給で動作し、前記蓄電器は前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分において前記錘部側に位置することを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の計測センサ。
【請求項14】
前記蓄電器は、前記錘部であることを特徴とする、請求項13に記載の計測センサ。
【請求項15】
前記計測センサは傘部を有し、
前記傘部は、前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分において前記錘部より外側に位置し、
前記傘部は、前記錘部から遠ざかる方向に凸になるアーチ状の断面形状を有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の計測センサ。
【請求項16】
生コンクリートの流動化程度の評価装置であって、前記評価装置は計測センサと、評価部と、を有し、前記計測センサは錘部と、フロート部と、センサ部と、を有し、
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とし、
前記評価部は、前記計測センサが前記生コンクリート内に埋設された状態において、前記計測センサの回転による前記センサ部が検出する前記傾き変化を受信し、前記傾き変化から前記生コンクリートの流動化程度を評価することを特徴とする、評価装置。
【請求項17】
前記評価部は、前記傾き変化の時系列データから前記生コンクリートの前記締固め完了を判定することを特徴とする、請求項16に記載の評価装置。
【請求項18】
前記評価部は、前記傾き変化の時系列データから前記生コンクリートの前記締固め完了までの加振時間を予測することを特徴とする、請求項16に記載の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの流動化程度を評価する方法、計測センサ、およびコンクリートの流動化程度を評価する評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの締固め完了判定方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、浮遊体をコンクリートの打ち込み前に型枠底部に設置し、浮遊体の浮上をもってコンクリートの締固め完了と判定する。
【0003】
コンクリートの締固め度判定方法が知られている(特許文献2参照)。この方法では、コンクリートに放射線を照射することで、コンクリートの締固め度合いを知ることができるとされる。
【0004】
コンクリートの締固めを判定するための測定装置および判定方法が知られている(特許文献3参照)。この測定装置では、棒状の筐体の内側に加速度センサを配置し、加速度センサによってコンクリートに伝わる振動を感知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-183392号公報
【特許文献2】特開2019-143399号公報
【特許文献3】特許第6503260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のコンクリートの締固め完了判定方法では、浮遊体のピッチを50cmとしているが、10m幅の構造物では少なくとも19個の浮遊体が必要となり、準備が大掛かりになる問題がある。また、コンクリートの骨材の影響によって、浮遊体が表面まで浮上しなかった場合には、回収できない問題がある。
【0007】
特許文献2のコンクリートの締固め度判定方法では、測定された放射線のカウント数にばらつきがあり、リアルタイムで締固め程度の判定をすることが難しい問題がある。
【0008】
特許文献3の測定装置および判定方法では、筐体が一定の体積を有するため、筐体の除去後に振動を継続し、その空洞となった箇所に生コンクリートを充填して締固めを行う必要がある。その結果、締固めの終了を判定した周辺のコンクリートに対して過度の締固めを行うこととなる。
【0009】
従って、本発明の目的は、極めて簡単且つリアルタイムでコンクリートの流動化程度を評価できる生コンクリートの流動化程度評価方法、計測センサ、および生コンクリートの流動化程度の評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、
錘部と、前記錘部よりも大きな浮力が作用するフロート部と、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、を有する計測センサと、前記傾き変化を取得するとともに生コンクリートの流動化程度を評価する評価部と、を有する評価装置を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法において、
前記生コンクリート中に前記錘部よりも前記フロート部が下に位置する第1姿勢で前記計測センサを設置し、前記計測センサの近傍に、作動させた或いは作動前のバイブレータを挿入する第1工程と、
前記バイブレータを作動させて前記生コンクリートに加振するとともに前記生コンクリートの流動化を行い、前記生コンクリートが流動化するに従い、前記計測センサが前記第1姿勢から、前記錘部よりも前記フロート部が上に位置する第2姿勢に移動する間、又は前記第1姿勢から前記第2姿勢に至る途中までの間に、前記評価部で前記計測センサからの前記傾き変化を取得して、当該傾き変化の時系列データに基づいて前記生コンクリートの流動化程度を評価する第2工程と、
を備える。
【0011】
また、本発明(2)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(1)記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記第2工程の開始後に前記計測センサを前記生コンクリート中から回収する第3工程を備える。
【0012】
また、本発明(3)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(2)記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記計測センサは引き抜き治具に接続されており、前記引き抜き治具の少なくとも一部は、前記生コンクリートの外側に位置することを特徴とし、前記第3工程において、前記引き抜き治具を引き抜くことで前記計測センサを前記生コンクリート中から回収する。
【0013】
また、本発明(4)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(1)から(3)の何れか記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記第2工程において、前記評価部は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフの時系列データから締固め完了を判定する。
【0014】
また、本発明(5)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(1)から(3)の何れか記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記第2工程において、前記評価部は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフの時系列データから締固め完了までの加振時間を予測する。
【0015】
また、本発明(6)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(5)記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記締固め完了までの加振時間は、前記傾き変化のグラフの所定範囲内において一点および当該一点におけるグラフの平均的な勾配を定め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線が、予め設定した締固め完了と判定される傾き変化に到達するまでの時間とする。
【0016】
また、本発明(7)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(2)又は(3)記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記第3工程は、前記締固め完了よりも前に行われ、前記バイブレータによる前記生コンクリートへの加振は、前記締固め完了の時刻まで行われる。
【0017】
また、本発明(8)の生コンクリートの流動化程度評価方法は、(1)から(3)のいずれか記載の生コンクリートの流動化程度評価方法であって、
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分と直交する方向に夫々直交する第1検出軸と第2検出軸を持ち、前記第1検出軸と第2検出軸における第1加速度と第2加速度を検出することを特徴とし、下記式によって、合成加速度を算出し、
合成加速度=(第1加速度2+第2加速度2)1/2
前記合成加速度の下記式によって、傾きを算出する、
傾き=asin(合成加速度)。
【0018】
また、本発明(9)の計測センサは、前記生コンクリート内に挿入される前記生コンクリートの流動化程度の計測センサであって、
錘部と、
前記錘部よりも大きな浮力が作用するフロート部と、
前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、
を備える。
【0019】
また、本発明(10)の計測センサは、(9)記載の計測センサであって、
前記センサ部は加速度を検出し、前記傾き変化を前記加速度の変化で検出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明(11)の計測センサは、(9)又は(10)に記載の計測センサであって、
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分と直交する方向に少なくとも1つの検出軸を有する。
【0021】
また、本発明(12)の計測センサは、(9)又は(10)に記載の計測センサであって、
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分に平行する方向に検出軸を有する。
【0022】
また、本発明(13)の計測センサは、(9)又は(10)記載の計測センサであって、
前記センサ部は蓄電器を有し、前記蓄電器からの電力供給で動作し、前記蓄電器は前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分において前記錘部側に位置することを特徴とする。
【0023】
また、本発明(14)の計測センサは、(13)記載の計測センサであって、
前記蓄電器は、前記錘部であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明(15)の計測センサは、(9)又は(10)に記載の計測センサであって、
前記計測センサは傘部を有し、
前記傘部は、前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分において前記錘部より外側に位置し、
前記傘部は、前記錘部から遠ざかる方向に凸になるアーチ状の断面形状を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明(16)の生コンクリートの流動化程度の評価装置は、
生コンクリートの流動化程度の評価装置であって、前記評価装置は計測センサと、評価部と、を有し、前記計測センサは錘部と、フロート部と、センサ部と、を有し、
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部を結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とし、
前記評価部は、前記計測センサが前記生コンクリート内に埋設された状態において、前記計測センサの回転による前記センサ部が検出する前記傾き変化を受信し、前記傾き変化から前記生コンクリートの流動化程度を評価することを特徴とする。
【0026】
また、本発明(17)の生コンクリートの流動化程度の評価装置は、(16)記載の生コンクリートの流動化程度の評価装置であって、
前記評価部は、前記傾き変化の時系列データから前記生コンクリートの前記締固め完了を判定することを特徴とする。
【0027】
また、本発明(18)の生コンクリートの流動化程度の評価装置は、(16)記載の生コンクリートの流動化程度の評価装置であって、
前記評価部は、前記傾き変化の時系列データから前記生コンクリートの前記締固め完了までの加振時間を予測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、極めて簡単且つリアルタイムでコンクリートの流動化程度を評価できる生コンクリートの流動化程度評価方法および生コンクリートの流動化程度の評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態の生コンクリートの流動化程度の評価装置を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す生コンクリートの流動化程度の評価装置の計測センサをコンクリート型枠内に設置した状態を示した断面図である。
【
図3】
図1に示す評価装置の計測センサを拡大して示す正面図である。
【
図4】
図3に示す計測センサのF4-F4線の位置に沿った断面図である。
【
図5】
図3に示す計測センサが第1姿勢にある状態から中間姿勢を経て、第2姿勢に移行する過程を模式的に示した模式図である。
【
図6】
図1~
図4に示す生コンクリートの流動化程度の評価装置を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法を用いて測定された生コンクリートの流動化程度を示すグラフである。
【
図7】
図6に示すグラフにおいて、一点におけるグラフの平均的な勾配を持つ延長線が予め設定した締固め完了と予測される合成加速度に到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間とすることを説明するグラフである。
【
図8】第1変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図9】第2変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図10】第3変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図11】第4変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図12】第5変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図13】第6変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図14】第7変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図15】第8変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図16】第9変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図17】第10変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図18】第11変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図19】第12変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図20】第13変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図21】第14変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図22】第15変形例にかかる計測センサの中心軸方向に沿った断面図である。
【
図23】第2実施形態の評価装置を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法を用いて測定された生コンクリートの流動化程度を示すグラフである。
【
図24】
図23に示すグラフにおいて、一点におけるグラフの平均的な勾配を持つ延長線が予め設定した締固め完了と予測される加速度に到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間とすることを説明するグラフである。
【
図25】第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた形態において、一点におけるグラフの平均的な勾配を持つ延長線が予め設定した締固め完了と予測される加速度に到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間とすることを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の生コンクリートの流動化程度評価方法は、
錘部と、前記錘部よりも大きな浮力が作用するフロート部と、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、を有する計測センサと、前記傾き変化を取得するとともに生コンクリートの流動化程度を評価する評価部と、を有する評価装置を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法において、
前記生コンクリート中に前記錘部よりも前記フロート部が下に位置する第1姿勢で前記計測センサを設置し、前記計測センサの近傍に、作動させた或いは作動前のバイブレータを挿入する第1工程と、
前記バイブレータを作動させて前記生コンクリートに加振するとともに前記生コンクリートの流動化を行い、前記生コンクリートが流動化するに従い、前記計測センサが前記第1姿勢から、前記錘部よりも前記フロート部が上に位置する第2姿勢に移動する間、又は前記第1姿勢から前記第2姿勢に至る途中までの間に、前記評価部で前記計測センサからの前記傾き変化を取得して、当該傾き変化の時系列データに基づいて前記生コンクリートの流動化程度を評価する第2工程と、
を備える。
【0031】
第1工程は、計測センサの近傍に生コンクリートの流動化を行うバイブレータを挿入する。
【0032】
図1に示すように、第1工程において、計測センサは、バイブレータから150~250mm、好ましくは170~230mm、より好ましくは190~210mm、の位置に配置される。本実施形態では、バイブレータから例えば200mmの位置に配置されることが最も好ましい。計測センサをバイブレータに対して例えば150mm以下の位置に配置すると、計測センサがバイブレータの振動に巻き込まれてしまう可能性がある。一方、計測センサをバイブレータに対して例えば250mm以上の位置に配置すると、バイブレータによる振動の影響が出にくい領域となる。
【0033】
計測センサは、
図2に示すように、すでに1回目に打たれ、すでに締固められた生コンクリートの下層よりも上側に打たれた生コンクリートの上層の上面から150~250mm、好ましくは170~230mm、より好ましくは190~210mm、の位置に配置される。本実施形態では、上層に打たれた生コンクリートの上層の上面から例えば200mmの位置に配置されることが最も好ましい。なお、評価装置は、1回目に打たれた生コンクリートや、3回目以降に打たれた生コンクリートの評価にも当然に用いることができる。計測センサは、例えば、棒等を利用して作業者が、或いは棒器具等を備える装置を利用して装置の操作者が上記の所定位置に配置する。締固められた下層の生コンクリートの高さは、例えば、50cmである。第1工程において、計測センサは、生コンクリート中に錘部よりもフロート部が下に位置する第1姿勢で設置される。
【0034】
生コンクリートは、各素材を適宜に商業的に入手可能な一般的な生コンクリートである。
生コンクリートのスランプ値は、1~25cmであり、4~20cmであってもよく、5~16cmであってもよく、6~15.5cmであってもよい。
【0035】
例えば、スランプ値を6cmとした場合の生コンクリートの配合は、例えば、18-8-20Nである。
【0036】
例えば、スランプ値を15.5cmとした場合の生コンクリートの配合は、例えば、18-15-20Nである。
【0037】
バイブレータは、生コンクリートの締固め用の一般的なバイブレータで構成されている。バイブレータは、これから締固めがなされる上層を貫通し、その先端付近の100mm程度をすでに締固められた下層に挿入する。なお、評価対象の生コンクリートが1回目に打たれた生コンクリートである場合には、バイブレータが底に接触しないようにする必要がある。バイブレータは、直径や振動の出力強度にもよるが、その直径が50mmであれば、バイブレータを中心とする例えば半径250mm程度の範囲が振動が伝達されて生コンクリートの締固めを行える範囲である。
【0038】
第2工程では、上記の位置関係で計測センサを生コンクリート内に配置した状態で、バイブレータを作動させる。それによって、生コンクリートの締固めを行う。バイブレータが作動すると、振動によって生コンクリートを構成する粒子が粒子間の間隙に落ち込もうとする。これによって、間隙の水圧が上昇する。それによって、粒子間の摩擦力が低下して、生コンクリート中で摩擦力よりも浮力が支配的となる。これによって、生コンクリートが流動化する。
【0039】
生コンクリート内において、流動化が進むと、計測センサ周辺の摩擦力が低下する。そして、第2工程では、フロート部に働く浮力によって、第1姿勢にある計測センサは、フロート部を上方に向けるように(倒立するように)徐々に回転する。これによって、計測センサは、第1姿勢から、錘部よりもフロート部が上に位置する第2姿勢に変化しようとする。
【0040】
センサ部は、錘部とフロート部とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することができる。センサ部は、加速度センサで構成されている。センサ部は、錘部とフロート部とを結ぶ線分と直交する方向に少なくとも1つの検出方向軸を有する加速度センサである。
【0041】
本発明の生コンクリートの流動化程度評価方法は、前記第2工程の開始後に前記計測センサを前記生コンクリート中から回収する第3工程を備える。計測センサは引き抜き治具に接続されており、引き抜き治具の少なくとも一部は、生コンクリートの外側に位置することを特徴とする。第3工程において、引き抜き治具を引き抜くことで計測センサを生コンクリート中から回収する。
【0042】
第3工程は、締固め完了と予測される時刻よりも前に行われる。第3工程は、締固め完了と予測される時刻の数秒~数十秒前、好ましくは1~10秒前、より好ましくは1~5秒前までに行われる。一方、前記第2工程の前記バイブレータの作動は、前記締固め完了と予測される時刻まで行われる。
【0043】
締固め完了と予測される加振時間は、加速度のグラフの1~十数秒までの間に定めた勾配の延長線が、予め設定した締固め完了と予測される合成加速度に到達するまでとする。締固め完了と予測される合成加速度は、合成加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として設定される。
【0044】
以下図面を参照して、本発明の生コンクリートの流動化程度評価方法に用いられる生コンクリートの流動化程度の評価装置の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
【0045】
図1、
図2に示すように、計測センサ14は、生コンクリート中に挿入されて流動化程度を評価できるものである。生コンクリート12は、型枠13内に所定の高さで打ち込まれている。
【0046】
評価装置11は、計測センサ14と、計測センサ14から得られた情報(加速度に関する情報)を取得して評価する評価部15と、を有する。評価部15は、ノートパソコン等の一般的なPC(パーソナルコンピュータ)で構成されている。評価部15は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、SSD、および表示部15A(ディスプレイ)を有する。また、評価部15には、後述するように、センサ部17で得たX軸方向の加速度とY軸方向の加速度とを合成して得られた合成加速度等を算出し、算出された合成加速度等を表示部15Aにグラフとして表示することができるソフトウェアがインストールされている。
【0047】
当該ソフトウェアは、下記式(1)によって合成加速度を算出することができる。
合成加速度=(第1加速度2+第2加速度2)1/2 式(1)
さらに、当該ソフトウェアは、下記式(2)によって、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27の鉛直方向に対する傾きを簡単に求めることができる。
傾き=asin(合成加速度) 式(2)
【0048】
計測センサ14は、
図1に示すように、バイブレータ16から例えば200mmの位置に配置される。また、
図2に示すように、型枠13内に打ち込まれてこれから締固めを行う生コンクリート12の表面(上面)から例えば200mmの深さに配置される。
【0049】
図3、
図4に示すように、計測センサ14は、その一方の端部(上端)寄りに設けられる錘部21と、一方の端部とは反対側の他方の端部(下端)寄りに設けられるフロート部22と、錘部21とフロート部22とを接続する筐体23と、筐体23内に設けられるセンサ部17と、錘部21に接続される接続金具24と、接続金具24に固定される傘部25と、センサ部17と評価部15とを電気的に接続するケーブル部26と、を備える。筐体23とフロート部22とは、固定部31(ボルト)によって固定されている。ケーブル部26は、引き抜き治具の一例である。なお、センサ部17と評価部15とを無線的に接続することで、ケーブル部26を省略することもできる。その場合に、引き抜き治具としては、先端に磁石を有する棒材によって形成されていてもよい。また、計測センサ14は、磁石にくっつく金属部品(例えば傘部25等)を有していてもよい。そのように構成された引き抜き治具は、磁石の磁力によって生コンクリート12中にある計測センサ14を回収することができる。
【0050】
錘部21は、金属材料、例えば、ステンレス鋼などで円筒形に形成されている。フロート部22は、例えば、合成樹脂材料によって中空の円筒形に形成されている。フロート部22の内部には、空気が貯留されている。フロート部22の密度は、錘部21の密度に比して極端に小さくなっている。
【0051】
筐体23は、例えば、合成樹脂材料によって中空の円筒形に形成されている。筐体23の内部に、センサ部17を収納することができる。接続金具24は、金属材料、例えばステンレス鋼などで円筒形に形成されている。傘部25は、例えば、合成樹脂材料によって、中空でアーチ形の断面形状(砲弾形)に形成されている。
【0052】
接続金具24およびケーブル部26は、後述する第3工程の際に、計測センサ14を生コンクリート12中から除去する際に、引張の負荷に耐えるように、十分な強度を有する。ケーブル部26は、金属材料で形成される複数の電線と、複数の電線の外側を被覆するスリーブ状の被覆層と、を有する。ケーブル部26の被覆層は、例えば、接続金具24に対して固定される。
【0053】
センサ部17は、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27の鉛直方向に対する傾き変化を感知可能である。センサ部17は、加速度センサで構成され、特に、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27と直交する方向に、少なくとも1つの検出方向軸を有する加速度センサで構成される。このセンサ部17(加速度センサ)は、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27と直交する方向で、2軸方向に検出方向軸を有する。センサ部17は、2軸方向に関する加速度を取得することで、線分27の鉛直方向に対する傾き変化(傾き情報)を感知できる。
【0054】
すなわち、
図5に示すように、計測センサ14が、錘部21よりもフロート部22が下に位置する第1姿勢P1にあるとき、錘部とフロート部とを結ぶ線分27の方向は、鉛直方向Gと略一致している。このとき、錘部とフロート部とを結ぶ線分27の方向をZ軸とし、このZ軸と直交する方向をX軸、Y軸とする。Y軸は、X軸と直交している。本実施形態の加速度センサは、このX軸方向とY軸方向にそれぞれ検出方向軸(第1検出方向軸:X軸方向、第2検出方向軸:Y軸方向)を有する。また、第1姿勢P1にあるときに、Z軸は鉛直方向Gに略一致している。
【0055】
評価部15は、センサ部17から取得した、第1検出方向軸であるX軸方向で検出した加速度(第1加速度)と、第2検出方向軸であるY軸方向で検出した加速度(第2加速度)と、を合成して得られた合成加速度(傾き)を算出できる。また、この合成加速度をグラフとして表示部15A上に出力することができる。
【0056】
続いて、
図1~
図7を参照して、本実施形態の生コンクリートの流動化程度の評価装置11を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法について説明する。本実施形態の評価方法では、スランプ値の異なる2種類の生コンクリート12(スランプ値6cm、スランプ値15.5cm)を用いた。また、
図6のグラフでは、錘部とフロート部とを結ぶ線分27が鉛直方向に沿った位置にあるとき(第1姿勢P1にあるとき)に、評価部15で算出される合成加速度(X、Y軸方向合成加速度)は、0G付近の値をとる。
【0057】
生コンクリート12の締固めを行いたい作業者は、型枠13内に生コンクリート12を打設する。
図1、
図2に示す状態は、すでに打たれた下層12Aの生コンクリート12の上側に、今回締固めしたい生コンクリート12の上層12Bが新たに打設された状態を示している。
【0058】
作業者は、一般的にはバイブレータ16を作動させた状態で、生コンクリート12の適切な位置にバイブレータ16を配置する。このとき、バイブレータ16の先端は、下層12Aの生コンクリート12にも例えば100mm程度進入した位置まで挿入される。
【0059】
第1工程では、計測センサ14の近傍、すなわち計測センサ14から例えば200mmの位置に、バイブレータ16を配置する。計測センサ14は、上層12Bの生コンクリート12の表面から例えば200mmの位置に差し込み用の棒や棒器具等を備える装置などを用いて配置する。このとき、計測センサ14は、錘部21よりもフロート部22が下に位置する第1姿勢P1で配置する。
【0060】
第2工程において、バイブレータ16の振動によって、バイブレータ16の周辺、特にバイブレータ16の直径が50mmであれば、バイブレータを中心とする例えば半径250mm程度の範囲で流動化(締固め)が徐々に行われる。バイブレータ16の周辺の生コンクリート12が徐々に流動化していくと、計測センサ14に働く摩擦力が徐々に低下する。そして、計測センサ14に働く摩擦力が小さくなっていくと、フロート部22に働く浮力の影響が大きくなり、
図5に示すように、計測センサ14が第1姿勢P1から、錘部21よりもフロート部22が上側に位置する第2姿勢P2に移動していく。
【0061】
このとき、評価部15は、センサ部17から得られたX軸方向で検出した加速度と、Y軸方向で検出した加速度と、を合成して合成加速度を算出する。計測センサ14が第1姿勢P1にあるときに、
図5で示すZ軸方向は鉛直方向Gに略合致しているため、
図6に示すように合成加速度はほとんどゼロとなる。
【0062】
生コンクリート12が流動化していくにつれて、計測センサ14が回転して、計測センサ14は、第1姿勢P1と第2姿勢P2の中間の中間姿勢P0をとる。その際、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27は、略水平面に沿った位置となる。このとき、
図6に示すように、センサ部17で感知された、X軸方向で検出した加速度と、Y軸方向で検出した加速度と、を合成した合成加速度は、重力加速度と同じ軸上にあり、1G付近のピーク値をとる。
【0063】
第2工程において、バイブレータ16の作動を継続すると、生コンクリート12の流動化の程度がさらに進んで、
図5に示すように、計測センサ14は、中間姿勢P0から第2姿勢P2に回転することとなる。
【0064】
ここで、生コンクリートの物性や組成、周辺の環境によって、グラフのピーク値又はその周辺で(
図6に示す領域B)で締固め完了と評価できる場合には、作業者は、合成加速度がピーク値又はその周辺となるタイミングで計測センサ14を除去する(第3工程)。その際、作業者は、ケーブル部26を引き上げることで、計測センサ14を回収する。すなわち、この場合、第2工程では、第1姿勢P1から第2姿勢P2に至る途中までの間に(中間姿勢P0)、評価部15でセンサ部17からの傾き(傾き情報:加速度)を取得する。このとき、アーチ状の傘部25によって除去時に計測センサ14にかかる抵抗力が低減され、計測センサ14の除去性が良好になる。なお、本実施形態では、作業者自らの判断で計測センサ14を除去するタイミングを決めているが、評価部15がグラフの波形に基づいて締固め完了までの残り時間(締固め完了の予測時刻)を表示して作業者に計測センサ14の除去を促してもよい。
【0065】
作業者は、計測センサ14の除去後にさらにバイブレータ16を数秒から数十秒作動させて、目的の程度にまで生コンクリート12の締固めを達成する。このように、計測センサ14を除去した後にもバイブレータ16の作動を継続することで、計測センサ14を除去した箇所の空洞を流動化した生コンクリート12で埋めることができる。これによって、計測センサ14を除去した箇所が欠陥となってしまうことがない。
【0066】
一方、生コンクリート12の物性や組成、周辺の環境によって、グラフのピーク値の前でグラフの山型の裾野付近、又はピーク値を過ぎたグラフの山型の裾野付近(
図6に示す領域A、領域C、すなわち、ピーク値を外れた位置)で締固め完了と評価できる場合には、作業者は、計測センサ14が
図5に示す第2姿勢P2(又はその付近)に至る前の時点(より詳細には、中間姿勢P0に至る前の時点)か、又は、合成加速度がピーク値を過ぎて大きく減少に転じ、計測センサ14が
図5に示す第2姿勢P2(又はその付近)に至った時点で、計測センサ14を除去する(第3工程)。その際、作業者は、ケーブル部26を引き上げることで、計測センサ14を回収する。すなわち、この場合、計測センサ14が第1姿勢P1から第2姿勢P2に移動する間に、評価部15でセンサ部17からの傾き(傾き情報:加速度)を取得する。なお、本実施形態では、作業者自らの判断で計測センサ14を除去するタイミングを決めているが、評価部15がグラフの波形に基づいて締固め完了までの残り時間(締固め完了の予測時刻)を表示して作業者に計測センサ14の除去を促してもよい。
【0067】
或いは、評価部15は、グラフのピーク値を外れた位置の所定範囲内で、任意の一点D、Eを定めてもよい。すなわち
図7に示すように、評価部15は、当該一点におけるグラフの平均的な勾配を求め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線F、Gが、予め設定した締固め完了と予測される合成加速度H、Iに到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間としてもよい。ここで、締固め完了と予測される合成加速度は、合成加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として適宜に設定される。
【0068】
作業者は、計測センサ14の除去後にさらにバイブレータ16を数秒から数十秒作動させて、目的の程度にまで生コンクリート12の締固めを達成する。この場合も同様に、計測センサ14を除去した後にもバイブレータ16の作動を継続することで、計測センサ14を除去した箇所に空洞を流動化した生コンクリート12で埋めることができる。これによって、計測センサ14を除去した箇所が欠陥となってしまうことがない。
【0069】
この位置での締固めが完了した後は、作業者は、バイブレータ16を型枠13内の別の位置の生コンクリート12に対して差し込み、第1工程から第3工程を実施する。このように、型枠13内で順番に、あるいは同時にバイブレータ16と計測センサ14とを移動させることで、型枠13内の生コンクリート12をすべて均一に流動化する。これによって、締固め作業を完了する。
【0070】
なお、
図6から明らかなように、スランプ値が大きい生コンクリート12(スランプ値15.5cm)のほうが元々柔らかいために、流動化もしやすい傾向があることが見て取れる。一方、スランプ値が小さい生コンクリート12(スランプ値6cm)は、元々硬いために、流動化しづらい傾向があることが見て取れる。
【0071】
本実施形態によれば、以下のことがいえる。生コンクリートの流動化程度評価方法は、錘部21と、錘部21よりも大きな浮力が作用するフロート部22と、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部17と、前記傾き変化を取得するとともに生コンクリート12の流動化程度を評価する評価部15と、を有する評価装置11を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法において、生コンクリート12中に錘部21よりもフロート部22が下に位置する第1姿勢P1で計測センサ14を配置し、計測センサ14の近傍に、作動させた或いは作動前のバイブレータ16を挿入する第1工程と、バイブレータ16を作動させて生コンクリート12の流動化を行い、生コンクリート12が流動化するに従い、計測センサ14が第1姿勢P1から、錘部21よりもフロート部22が上に位置する第2姿勢P2に移動する間、又は第1姿勢P1から第2姿勢P2に至る途中までの間に、評価部15で計測センサ14からの前記傾き変化を取得して、当該傾き変化の変動に基づいて生コンクリート12の流動化程度を評価する第2工程と、を備える。
【0072】
生コンクリートの流動化程度の評価装置11は、評価装置11は、計測センサ14と、評価部15と、を有し、計測センサ14は錘部21と、フロート部22と、センサ部17と、を有し、センサ部17は、錘部21とフロート部22を結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とし、評価部15は、計測センサ14が前記生コンクリート内に埋設された状態において、計測センサ14の回転によるセンサ部17が検出する前記傾き変化を受信し、前記傾き変化から前記生コンクリートの流動化程度を評価することを特徴とする。
【0073】
計測センサ14は、前記生コンクリート内に挿入される前記生コンクリートの流動化程度の計測センサであって、錘部21と、錘部21よりも大きな浮力が作用するフロート部22と、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分の鉛直方向に対する傾き変化を検出することを特徴とするセンサ部と、を備える。
【0074】
通常、バイブレータ16の作用によって、生コンクリート12の流動化が進むと、生コンクリート12内に働く摩擦力が低下して、生コンクリート12が流動化(液状化)する。上記の構成によれば、生コンクリート12内の摩擦力低下に伴い計測センサ14が回転するという極めて簡単な原理によって、生コンクリート12の流動化程度をリアルタイムで評価することができる。これによって、習熟度によらず一様な締固め作業を実現し、安定的な品質を確保することができる。
【0075】
前記第2工程の開始後に計測センサ14を前記生コンクリート中から回収する第3工程を備える。
【0076】
この構成によれば、計測センサ14の回収を確実に行うことができる。
【0077】
計測センサ14は引き抜き治具に接続されており、前記引き抜き治具の少なくとも一部は、生コンクリート12の外側に位置することを特徴とし、前記第3工程において、前記引き抜き治具を引き抜くことで計測センサ14を生コンクリート12中から回収する。
【0078】
この構成によれば、計測センサ14の回収を極めて簡単に行うことができるとともに、生コンクリート12中に計測センサ14が残留してしまう危険を防止することができる。
【0079】
第2工程において、評価部15は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフ中の時系列データから締固め完了を判定する。
この構成によれば、作業者から見て直感的に分かりやすい位置(例えば、ピーク位置等)で流動化完了と把握することができる。
【0080】
第2工程において、評価部15は、前記傾き変化のグラフを描くとともに、当該グラフの時系列データから締固め完了までの加振時間を予測する。
これらの構成によれば、作業者から見て直感的に分かりやすい位置(例えば、ピーク位置等)で流動化完了と予測することができる。
【0081】
前記締固め完了と予測される加振時間は、前記加速度のグラフの所定範囲内において一点および当該一点におけるグラフの平均的な勾配を定め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線が、予め設定した締固め完了と予測される傾き変化に到達するまでの時間とする。
この構成によれば、締固め完了と予測される加振時間を極めて簡単に算出することができる。
【0082】
第3工程は、前記締固め完了と予測される時刻よりも前に行われ、第2工程のバイブレータ16の作動は、前記締固め完了と予測される時刻まで行われる。
この構成によれば、第3工程で計測センサ14を除去した際に、除去した箇所が空洞(欠陥)になってしまうことを防止することができる。
【0083】
前記センサ部は、前記錘部と前記フロート部とを結ぶ線分と直交する方向に夫々直交する第1検出軸と第2検出軸を持ち、前記第1検出軸と第2検出軸における第1加速度と第2加速度を検出することを特徴とし、下記式によって、合成加速度を算出し、
合成加速度=(第1加速度2+第2加速度2)1/2
前記合成加速度の下記式によって、傾きを算出する、
傾き=asin(合成加速度)。
【0084】
この構成によれば、上記式に基づいて簡単に合成加速度を求めることができ、この合成加速度を用いた上記式から、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27の鉛直方向に対する傾きを簡単に求めることができる。
【0085】
錘部21に接続された傘部25であって、内側にケーブル部26が通されるとともにセンサ部17から遠ざかる方向に凸になるアーチ状の断面形状を有する。この構成によれば、第3工程において計測センサ14を生コンクリート12内から除去する際に、評価装置11にかかる抵抗力を低減して、接続金具24およびケーブル部26に大きな負荷がかかってしまうことを防止できる。
【0086】
以下の変形例では、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示又は説明を省略する。
【0087】
図8に、第1変形例の計測センサ14を示す。第1変形例において、計測センサ14は、筐体23の外側にセンサ部17を配置している。計測センサ14は、ケーシング32と錘部21とを接続する接続部33を有する。センサ部17は、電子部品で構成される。このため、センサ部17は、その表面が図示しない防水性のある樹脂でコーティング又は防水性のカバーで覆われている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーブル部26(紐)の被覆層は、錘部21の内部に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例では、ケーブル部26(紐)の電線は省略されている。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0088】
図9に、第2変形例の計測センサ14を示す。第2変形例において、計測センサ14は、錘部21の内側にセンサ部17を配置している。本変形例では、錘部21の内部で且つ接続部33の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。ケーブル部26(紐)の電線は、評価部15とセンサ部17とを電気的に接続している。ケーブル部26の被覆層は、錘部21に強固に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリートから取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0089】
図10に、第3変形例の計測センサ14を示す。第3変形例において、計測センサ14は、錘部21の外側にセンサ部17を配置している。センサ部17は、電子部品で構成される。このため、センサ部17は、その表面が図示しない防水性のある樹脂でコーティング又は防水性のカバーで覆われている。ケーブル部26(紐)の被覆層は、錘部21の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0090】
図11に、第4変形例の計測センサ14を示す。第4変形例において、計測センサ14は、フロート部22の内側にセンサ部17を配置している。フロート部22を構成するケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーブル部26(紐)の被覆層は、錘部21の内部に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0091】
図12に、第5変形例の計測センサ14を示す。第5変形例において、計測センサ14は、フロート部22の外側にセンサ部17を配置している。センサ部17は、電子部品で構成される。このため、センサ部17は、その表面が図示しない防水性のある樹脂でコーティング又は防水性のカバーで覆われている。ケーブル部26(紐)の被覆層は、錘部21の内部に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例では、ケーブル部26(紐)の電線は省略されている。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0092】
図13に、第6変形例の計測センサ14を示す。第6変形例において、計測センサ14は、錘部21の外側(下側)にセンサ部17を配置している。本変形例では、中空のケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0093】
図14に、第7変形例の計測センサ14を示す。第7変形例において、計測センサ14は、錘部21の外側(上側)にセンサ部17を配置している。本変形例では、中空のケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0094】
図15に、第8変形例の計測センサ14を示す。第8変形例において、計測センサ14は、ケーシング32の外側かつケーシング32と錘部21とを接続する接続部33の外側にセンサ部17を配置している。センサ部17は、電子部品で構成される。このため、センサ部17は、その表面が図示しない防水性のある樹脂でコーティング又は防水性のカバーで覆われている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例では、ケーブル部26(紐)の電線は省略されている。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0095】
図16に、第9変形例の計測センサ14を示す。第9変形例において、計測センサ14は、ケーシング32の内側で、かつケーシング32と錘部21とを接続する接続部33の内側に、センサ部17を配置している。本変形例では、中空のケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0096】
図17に、第10変形例の計測センサ14を示す。第10変形例において、計測センサ14は、ケーシング32の外側に、センサ部17を配置している。センサ部17は、電子部品で構成される。このため、センサ部17は、その表面が図示しない防水性のある樹脂でコーティング又は防水性のカバーで覆われている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0097】
図18に、第11変形例の計測センサ14を示す。第11変形例において、計測センサ14は、ケーシング32の底部かつケーシング32の内側にセンサ部17を配置している。本変形例では、中空のケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。ケーブル部26(紐)の被覆層は、ケーシング32の外側に固定されており、第3工程で計測センサ14を生コンクリート中から取り出すのに用いることができる。本変形例において、センサ部17と評価部15とを無線的に接続する場合には、ケーブル部26を省略することもできる。
【0098】
図19に、第12変形例の計測センサ14を示す。第12変形例において、計測センサ14は、接続部33の内側にセンサ部17およびセンサ部17に隣接して設けられた図示しない無線回路を配置している。計測センサ14は、接続部33とケーシング32との間に電池41(例えば、ボタン形の電池)を収納している。電池41(蓄電器)は、センサ部17および無線回路に対して電力供給することができる。本変形例では、接続部33の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。本変形例では、センサ部17(無線回路)と評価部15とを無線的に接続するため、ケーブル部26を省略している。本変形例において、錘部21の貫通孔は、図示しないゴム栓等の密閉部材によって密閉される。
【0099】
図20に、第13変形例の計測センサ14を示す。第13変形例において、計測センサ14は、接続部33の内側にセンサ部17およびセンサ部17に隣接して設けられた図示しない無線回路を配置している。計測センサ14は、接続部33とケーシング32との間に電池41(例えば、ボタン形の電池)を収納している。電池41(蓄電器)は、センサ部17および無線回路に対して電力供給することができる。電池41は、有底筒状の接続具42によって接続部33に固定されている。本変形例では、ケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。本変形例では、センサ部17(無線回路)と評価部15とを無線的に接続するため、ケーブル部26を省略している。
【0100】
図21に、第14変形例の計測センサ14を示す。本変形例において、計測センサ14は、接続部33の内側にセンサ部17を配置している。本変形例では、接続部33の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。計測センサ14は、接続部33に固定された電池41(例えば、ボタン形の電池)を有する。電池41(蓄電器)は、センサ部17および無線回路に対して電力供給することができる。本変形例において、電池41は、錘部21を兼ねている。電池41は、接続部33の開口部を塞ぐ蓋を兼ねている。ケーシング32は、合成樹脂材料によって形成されている。ケーシング32の内部の空洞部分は、実質的にフロート部22を構成している。本変形例では、センサ部17(無線回路)と評価部15とを無線的に接続するため、ケーブル部26を省略している。
【0101】
図22に、第15変形例の計測センサ14を示す。本変形例において、計測センサ14は、接続具42の内側にセンサ部17およびセンサ部17に隣接して設けられた図示しない無線回路を配置している。計測センサ14は、接続具42の内側でセンサ部17に隣接する位置に、電池41(例えば、ボタン形の電池)を有する。電池41(蓄電器)は、センサ部17および無線回路に対して電力供給することができる。本変形例において、電池41は、錘部21を兼ねている。電池41は、有底筒状の接続具42によって接続部33に固定されている。本変形例では、ケーシング32の内部にセンサ部17が配置されているため、センサ部17の防水性が確保されている。本変形例では、センサ部17(無線回路)と評価部15とを無線的に接続するため、ケーブル部26を省略している。
【0102】
以下の実施形態では、主として第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と共通する部分については、図示又は説明を省略する。
[第2実施形態]
【0103】
図1~5、
図23、
図24を参照して、第2実施形態の評価装置について説明する。
センサ部17は、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27の鉛直方向に対する傾き変化を感知可能である。センサ部17は、加速度センサで構成され、特に、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27に沿う方向に、検出方向軸を有する加速度センサで構成される。このセンサ部17(加速度センサ)は、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27に沿う方向に検出方向軸を有する。センサ部17は、当該検出方向軸に関して加速度を取得することで、線分27の鉛直方向に対する傾き変化(傾き情報)を感知できる。
【0104】
すなわち、
図5に示すように、評価装置11が、錘部21よりもフロート部22が下に位置する第1姿勢P1にあるとき、錘部とフロート部とを結ぶ線分27の方向は、鉛直方向Gと略一致している。このとき、錘部とフロート部とを結ぶ線分27の方向をZ軸とし、このZ軸と直交する方向をX軸、Y軸とする。Y軸は、X軸と直交している。本実施形態の加速度センサは、このZ軸方向に検出方向軸(検出感度)を有する。また、第1姿勢P1にあるときに、Z軸は鉛直方向Gに略一致している。
【0105】
評価部15は、センサ部17で検出したZ軸方向の加速度をグラフとして表示部15A上に出力することができる。
【0106】
続いて、
図23を参照して、本実施形態の生コンクリートの流動化程度の評価装置11を用いた生コンクリートの流動化程度評価方法について説明する。本実施形態の評価方法では、スランプ値の異なる2種類の生コンクリート12(スランプ値6cm、スランプ値15.5cm)を用いた。また、
図23のグラフでは、錘部とフロート部とを結ぶ線分27が鉛直方向に沿った位置にあるとき(第1姿勢P1にあるとき)に、評価部15の表示部15Aに表示される加速度は、重力加速度そのもの(すなわち、1G)に相当する。
【0107】
生コンクリート12の締固めを行いたい作業者は、型枠13内に生コンクリート12を打設する。なお、
図1、
図2に示す状態は、すでに打たれた下層12Aの生コンクリート12の上側に、今回締固めしたい生コンクリート12の上層12Bが新たに打設された状態を示している。
【0108】
作業者は、一般的にはバイブレータ16を作動させた状態で、生コンクリート12の適切な位置にバイブレータ16を配置する。このとき、バイブレータ16の先端は、下層12Aの生コンクリート12にも例えば100mm程度進入した位置まで挿入される。
【0109】
第1工程では、計測センサ14の近傍、すなわち計測センサ14から例えば200mmの位置に、バイブレータ16を配置する。計測センサ14は、上層12Bの生コンクリート12の表面から例えば200mmの位置に差し込み用の棒や棒器具等を備える装置などを用いて配置する。このとき、計測センサ14は、錘部21よりもフロート部22が下に位置する第1姿勢P1で配置する。
【0110】
第2工程において、バイブレータ16の振動によって、バイブレータ16の周辺、特にバイブレータ16の直径が50mmであれば、バイブレータを中心とする例えば半径250mm程度の範囲で流動化(締固め)が徐々に行われる。バイブレータ16の周辺の生コンクリート12が徐々に流動化していくと、計測センサ14に働く摩擦力が徐々に低下する。そして、計測センサ14に働く摩擦力が小さくなっていくと、フロート部22に働く浮力の影響が大きくなり、
図5に示すように、計測センサ14が第1姿勢P1から、錘部21よりもフロート部22が上側に位置する第2姿勢P2に移動していく。
【0111】
計測センサ14が第1姿勢P1にあるときに、
図5で示すZ軸方向は鉛直方向Gに略合致しているため、
図23に示すように加速度は1付近となる。
【0112】
生コンクリート12が流動化していくにつれて、計測センサ14が回転して、計測センサ14は、第1姿勢P1と第2姿勢P2の中間の中間姿勢P0をとる。その際、錘部21とフロート部22とを結ぶ線分27は、略水平面に沿った位置となる。このとき、
図23に示すように、センサ部17で感知された、Z軸方向で検出した加速度は、0G付近の値をとる。
【0113】
第2工程において、バイブレータ16の作動を継続すると、生コンクリート12の流動化の程度がさらに進んで、
図5に示すように、計測センサ14は、中間姿勢P0から第2姿勢P2に回転することとなる。
【0114】
評価部15は、グラフの任意の一点Jを定めてもよい。すなわち
図24に示すように、評価部15は、当該一点Jにおけるグラフの平均的な勾配を求め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線Kが、予め設定した締固め完了と予測される加速度Lに到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間としてもよい。ここで、締固め完了と予測される加速度は、加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として適宜に設定される。
【0115】
作業者は、計測センサ14の除去後にさらにバイブレータ16を数秒から数十秒作動させて、目的の程度にまで生コンクリート12の締固めを達成する。この場合も同様に、計測センサ14を除去した後にもバイブレータ16の作動を継続することで、計測センサ14を除去した箇所に空洞を流動化した生コンクリート12で埋めることができる。これによって、計測センサ14を除去した箇所が欠陥となってしまうことがない。
【0116】
この位置での締固めが完了した後は、作業者は、バイブレータ16を型枠13内の別の位置の生コンクリート12に対して差し込み、第1工程から第3工程を実施する。このように、型枠13内で順番に、あるいは同時にバイブレータ16と計測センサ14とを移動させることで、型枠13内の生コンクリート12をすべて均一に流動化する。これによって、締固め作業を完了する。
【0117】
なお、
図23から明らかなように、スランプ値が大きい生コンクリート12(スランプ値15.5cm)のほうが元々柔らかいために、流動化もしやすい傾向があることが見て取れる。一方、スランプ値が小さい生コンクリート12(スランプ値6cm)は、元々硬いために、流動化しづらい傾向があることが見て取れる。
【0118】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。例えば、第1実施形態のセンサ部17と第2実施形態のセンサ部17とを組み合わせてもよい。すなわち、計測センサ14が第1姿勢P1にあるときにセンサ部17の検出方向軸は、鉛直方向(Z軸方向)と、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向、Y軸方向)と、の両方であってもよい。また、その場合に、
図25に示すように、評価部15は、計測センサ14の姿勢が中間姿勢P0に至る前後の間には、鉛直方向(Z軸方向)と直交する方向(X軸方向、Y軸方向)の傾き変化(X軸、Y軸方向合成加速度)をグラフ上に表示してもよい。その場合、第1実施形態と同様に、評価部15は、グラフのピーク値を外れた位置の所定範囲内で、任意の一点D、Eを定めてもよい。すなわち
図25に示すように、評価部15は、当該一点におけるグラフの平均的な勾配を求め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線F、Gが、予め設定した締固め完了と予測される合成加速度H、Iに到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間としてもよい。ここで、締固め完了と予測される合成加速度は、合成加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として適宜に設定されてよい。
【0119】
また、計測センサ14の姿勢が中間姿勢P0を取っている場合、あるいは中間姿勢P0に至る前後の場合には、鉛直方向(Z軸方向)の傾き変化(Z軸方向加速度)をグラフ上に表示してもよい。評価部15は、グラフの任意の一点Jを定めてもよい。すなわち
図25に示すように、評価部15は、当該一点Jにおけるグラフの平均的な勾配を求め、当該一点から延ばした前記勾配を持つ延長線Kが、予め設定した締固め完了と予測される加速度Lに到達するまでの時間を、締固め完了と予測される加振時間としてもよい。ここで、締固め完了と予測される加速度は、加速度と硬化後のコンクリートの品質との関係を根拠として適宜に設定されてよい。
【符号の説明】
【0120】
11 評価装置
12 生コンクリート
14 計測センサ
15 評価部
16 バイブレータ
17 センサ部
21 錘部
22 フロート部
23 筐体
25 傘部
26 ケーブル部
27 線分
P1 第1姿勢
P0 中間姿勢
P2 第2姿勢