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  • 特開-静電容量センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089963
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】静電容量センサ
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H01H36/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205539
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀本 海
【テーマコード(参考)】
5G046
【Fターム(参考)】
5G046AA02
5G046AB02
5G046AC24
5G046AD02
5G046AE05
(57)【要約】
【課題】検出電極部における検出感度を安定化することができる静電容量センサを提供する。
【解決手段】静電容量の変化を検出する検出電極部7と、検出電極部7に電力を供給する電力供給部5と、検出電極部7と電力供給部5とを電気的に接続する配線部9とを備えた静電容量センサ1において、検出電極部7と配線部9とを、複数設け、複数の配線部9を、複数の検出電極部7に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値を設定した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化を検出する検出電極部と、
前記検出電極部に電力を供給する電力供給部と、
前記検出電極部と前記電力供給部とを電気的に接続する配線部と、
を備え、
前記検出電極部と前記配線部とは、複数設けられ、
複数の前記配線部は、複数の前記検出電極部に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値が設定されている静電容量センサ。
【請求項2】
複数の前記検出電極部は、第1検出電極部と、前記第1検出電極部より前記電力供給部から遠くに配置された第2検出電極部とを有し、
複数の前記配線部は、前記電力供給部と前記第1検出電極部とを電気的に接続する第1配線部と、前記電力供給部と前記第2検出電極部とを電気的に接続する第2配線部とを有し、
前記第2配線部の抵抗値は、前記第1配線部の抵抗値以下に設定されている請求項1に記載の静電容量センサ。
【請求項3】
複数の前記検出電極部は、同一の厚さを有し、
複数の前記配線部は、前記検出電極部と厚さが同一で、それぞれ断面積が異なる請求項1又は2に記載の静電容量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量センサとしては、静電容量の変化を検出する検出電極部と、検出電極部に電力を供給する電力供給部と、検出電極部と電力供給部とを電気的に接続する配線部とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。この静電容量センサは、例えば、車両のステアリングなどに適用される。このような静電容量センサは、ドライバーがステアリングに触れたときに、検出電極部で静電容量が変化し、ドライバーがステアリングに触れたことを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/066121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のような静電容量センサでは、検出電極部における静電容量の変化が、ノイズを考慮して設定された所定の閾値の範囲内で行うようにされている。検出電極部には、例えば、金属などの低い抵抗値を有する部材が用いられている。低い抵抗値の検出電極部では、電気が流れ易く、電力供給部から遠い位置であっても、所定の閾値の範囲内で静電容量の変化を行うことができる。
【0005】
しかしながら、検出電極部が高い抵抗値を有する部材からなる場合では、電気が流れ難く、電力供給部から遠くなるほど静電容量が小さい領域で、静電容量の変化を行うことになる。静電容量の変化が所定の閾値を下回った領域で行われると、例えば、ステアリングに触れているのに、触れていないと判断するような誤った判断を行う可能性があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、検出電極部における検出感度を安定化することができる静電容量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る静電容量センサは、静電容量の変化を検出する検出電極部と、前記検出電極部に電力を供給する電力供給部と、前記検出電極部と前記電力供給部とを電気的に接続する配線部とを備え、前記検出電極部と前記配線部とは、複数設けられ、複数の前記配線部は、複数の前記検出電極部に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値が設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出電極部における検出感度を安定化することができる静電容量センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る静電容量センサの平面図である。
図2】本実施形態に係る静電容量センサの電力供給部の位置に対する静電容量の変化を示す図である。
図3】従来の静電容量センサの電力供給部の位置に対する静電容量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る静電容量センサについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る静電容量センサ1は、例えば、車両に搭載されたステアリング(不図示)に適用される。静電容量センサ1は、静電容量の変化によって、運転者がステアリングに触れたか否かを検出する。
【0012】
図1に示すように、静電容量センサ1は、絶縁基材3と、電力供給部5と、検出電極部7と、配線部9とを備えている。
【0013】
絶縁基材3は、絶縁性材料からなり、シート状に形成されている。絶縁基材3は、例えば、ステアリングに対して、接着剤などの粘着部を介して取り付けられる。なお、絶縁基材3とステアリングとの間には、ノイズを遮断するために、接地されたシールド部材が配置される。
【0014】
電力供給部5は、導電性材料からなる。電力供給部5は、例えば、車両に搭載された制御部(不図示)の検出回路に電気的に接続されている。電力供給部5は、検出電極部7に電力を供給する。
【0015】
検出電極部7は、例えば、高い抵抗値を有する導電性インクなどの導電性材料からなる。ここで、導電性インクは、高い抵抗値を有しているが、屈曲し易いなど柔軟性に優れ、断線し難い。このため、検出電極部7に導電性インクを用いることによって、ステアリングなどの配置対象に対して、検出機能を保持したまま、静電容量センサ1を組付け易くすることができる。
【0016】
検出電極部7は、絶縁基材3の一面側(ここではシールド部材と反対側の面)に、絶縁基材3と一体に複数設けられている。検出電極部7を複数とすることにより、高い抵抗値を有する検出電極部7の電気が流れる範囲を小さくすることができる。複数の検出電極部7は、並列に配置されている。複数の検出電極部7を並列に配置することにより、電力供給部5に対するそれぞれの検出電極部7の距離(位置)を規定し易くすることができる。なお、検出電極部7は、平面視で四角形状に形成され、複数が並列に配置されているが、これに限るものではない。例えば、検出電極部7を、環状に形成し、中心から径方向の外側に向けて、順次、大径となるように、複数を配置してもよい。複数の検出電極部7は、電力供給部5に対して、最も近くに配置された第1検出電極部11と、次に近くに配置された第2検出電極部13と、最も遠くに配置された第3検出電極部15とを有する。複数の検出電極部7は、それぞれ配線部9を介して電力供給部5に電気的に接続されている。
【0017】
配線部9は、例えば、検出電極部7と同一の部材(ここでは導電性インク)からなる。配線部9は、一端が検出電極部7と電気的に接続され、他端が電力供給部5と電気的に接続されている。このため、検出電極部7には、電力供給部5から配線部9を介して電力が供給される。配線部9は、検出電極部7と同様に、絶縁基材3の一面側(ここではシールド部材と反対側の面)に、絶縁基材3と一体に複数設けられている。複数の配線部9は、電力供給部5と第1検出電極部11とを電気的に接続する第1配線部17と、電力供給部5と第2検出電極部13とを電気的に接続する第2配線部19と、電力供給部5と第3検出電極部15とを電気的に接続する第3配線部21とを有する。複数の検出電極部7に対して、それぞれ配線部9を設けることにより、電力供給部5からそれぞれの検出電極部7に電力を供給することができる。
【0018】
ここで、従来の静電容量センサでは、複数の検出電極部7が配置された範囲に、1つの検出電極部7が配置されていた。1つの検出電極部7は、1つの配線部9を介して電力供給部5が電気的に接続されている。1つの検出電極部7を高い抵抗値を有する部材で形成すると、電力供給部5から遠い、例えば、第3検出電極部15が配置された部分には電気が流れ難くなる。このような従来の静電容量センサにおける電力供給部5からの距離に対する静電容量の変化を図3に示す。なお、図3において、境界線23は、例えば、ステアリングに触れていないときの静電容量を示す。境界線23は、ノイズを考慮して所定の閾値25が設定されている。変化線27は、例えば、ステアリングに触れたときの静電容量の変化を示す。変化線27は、ステアリングに触れているので、境界線23より静電容量が増大するように変化する。
【0019】
図3に示すように、従来の静電容量センサでは、電力供給部5から遠い部分、例えば、第3検出電極部15が配置された部分において、変化線27が閾値25を下回った閾値25の範囲外で変化している。閾値25の範囲外で静電容量が変化すると、例えば、ステアリングに触れているのに、触れていないと判断するような誤った判断を行ってしまう。
【0020】
そこで、複数の配線部9は、複数の検出電極部7に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値が設定されている。抵抗値の設定において、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21との抵抗値がほぼ等しければ、第1検出電極部11と第2検出電極部13と第3検出電極部15とにおける電圧損失がほぼ平滑化される。このため、電力供給部5から最も遠い第3検出電極部15においても、静電容量の変化を所定の閾値の範囲内で行うことができる。そこで、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とは、抵抗値がほぼ等しくなるように、それぞれの厚さ方向に切断したときの断面積がほぼ等しく設定されている。第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21との断面積の設定において、厚さは、変化させることなく、検出電極部7の厚さと同一としている。このように設定することにより、配線部9が検出電極部7より外方に張り出すことがなく、静電容量センサ1の外面を均一化することができる。
【0021】
そこで、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21との断面積の設定では、それぞれの幅W1,W2,W3を異ならせている。ここで、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とは、電力供給部5に対する距離(長さ)がそれぞれ異なる。それぞれの距離(長さ)を、L1,L2,L3とすると、W1=W1、W2=W1×(L1÷L2)、W3=W1×(L1÷L3)の式で関係を表すことができる。この式の関係から第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21との幅W1,W2,W3を決定し、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とを形成させる。このような静電容量センサ1における電力供給部5からの距離に対する静電容量の変化を図2に示す。
【0022】
図2に示すように、複数の配線部9の抵抗値の設定により、第1検出電極部11と第2検出電極部13と第3検出電極部15とにおける静電容量の変化を、所定の閾値25の範囲内で行うことができる。このため、例えば、ステアリングに触れているのに、触れていないというような誤った判断をすることがない。加えて、複数の配線部9の抵抗値をほぼ同等に設定することにより、複数の検出電極部7におけるそれぞれの静電容量の変化を均一化することができる。
【0023】
なお、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とは、抵抗値がほぼ等しくなるように設定されているが、これに限るものではない。例えば、電力供給部5から最も遠い第3配線部21の抵抗値を最も低くなるように、電力供給部5から遠くなるにつれて、順次、配線部9の抵抗値を低くなるように設定してもよい。加えて、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とは、同一の部材からなるが、これに限るものではない。第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とを、異なる抵抗値を有する異なる部材で形成してもよい。この場合には、断面積を異ならせなくてもよい。なお、第1配線部17と第2配線部19と第3配線部21とは、説明の便宜上、誇張して幅が広くされているが、センサとして機能しないような幅に設定されている。
【0024】
このような静電容量センサ1では、静電容量の変化を検出する検出電極部7と、検出電極部7に電力を供給する電力供給部5と、検出電極部7と電力供給部5とを電気的に接続する配線部9とを備えている。また、検出電極部7と配線部9とは、複数設けられている。そして、複数の配線部9は、複数の検出電極部7に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値が設定されている。
【0025】
複数の配線部9は、複数の検出電極部7に対して、所定の閾値の範囲内で静電容量を変化させるように抵抗値が設定されているので、それぞれの検出電極部7において、静電容量が所定の閾値の範囲内で変化する。このため、電力供給部5から遠い位置に配置された高い抵抗値を有する部材からなる検出電極部7であっても、静電容量を所定の閾値の範囲内で変化させることができる。このため、近接する対象に対して、誤った検出を行うことがない。
【0026】
従って、このような静電容量センサ1では、検出電極部7における検出感度を安定化することができる。
【0027】
また、複数の検出電極部7は、第1検出電極部11と、第1検出電極部11より電力供給部5から遠くに配置された第2検出電極部13とを有する。(複数の検出電極部7は、第1検出電極部11及び第2検出電極部13と、第1検出電極部11及び第2検出電極部13より電力供給部5から遠くに配置された第3検出電極部15とを有する。)さらに、複数の配線部9は、電力供給部5と第1検出電極部11とを電気的に接続する第1配線部17と、電力供給部5と第2検出電極部13とを電気的に接続する第2配線部19とを有する。(複数の配線部9は、電力供給部5と第1検出電極部11及び第2検出電極部13とを電気的に接続する第1配線部17及び第2配線部19と、電力供給部5と第3検出電極部15とを電気的に接続する第3配線部21とを有する。)そして、第2配線部19(第3配線部21)の抵抗値は、第1配線部17(第1配線部17及び第2配線部19)の抵抗値以下に設定されている。
【0028】
このため、電力供給部5から遠い位置に配置された第2検出電極部13(第3検出電極部15)に対して、電気を流れ易くすることができ、複数の検出電極部7における検出感度を安定化することができる。
【0029】
また、複数の検出電極部7は、同一の厚さを有する。複数の配線部9は、検出電極部7と厚さが同一で、それぞれ断面積が異なる。このため、配線部9が検出電極部7より外方に張り出すことがなく、静電容量センサ1の外面を均一化することができる。
【0030】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、検出電極部及び配線部は、3つとなっているが、これに限らず、検出電極部及び配線部を、2つ、或いは4つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 静電容量センサ
3 絶縁基材
5 電力供給部
7 検出電極部
9 配線部
11 第1検出電極部
13 第2検出電極部
15 第3検出電極部
17 第1配線部
19 第2配線部
21 第3配線部
図1
図2
図3