(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089971
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240627BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240627BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205559
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄之
(72)【発明者】
【氏名】坂 航
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH02
2C002CH03
2C002LL04
(57)【要約】
【課題】ゴルフクラブヘッドにおける、打音及び打感の向上と、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を実現する。
【解決手段】本ゴルフクラブヘッドは、本体部、フェース部、及びクラウン部を有するゴルフクラブヘッドであって、前記本体部は、クラウン開口部、前記クラウン開口部を分ける梁部、及びソール部を備え、前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を備え、前記クラウン部は、前記クラウン開口部を塞ぐように前記本体部に取り付けられ、前記ソール部は、前記フェース部の背面と接触する突き当て構造を有し、クラウン-ソール方向に視て、フェーストウ端からフェースヒール端までのトウ-ヒール方向の長さをフェース長としたとき、前記梁部のトウ端及びヒール端、並びに前記突き当て構造と前記背面との接触部は、前記フェース長の中心を通りフェース-バック方向に延びる仮想直線に対して、トウ-ヒール方向に、前記フェース長の各々15%の範囲内に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部、フェース部、及びクラウン部を有するゴルフクラブヘッドであって、
前記本体部は、クラウン開口部、前記クラウン開口部を分ける梁部、及びソール部を備え、
前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を備え、
前記クラウン部は、前記クラウン開口部を塞ぐように前記本体部に取り付けられ、
前記ソール部は、前記フェース部の背面と接触する突き当て構造を有し、
クラウン-ソール方向に視て、フェーストウ端からフェースヒール端までのトウ-ヒール方向の長さをフェース長としたとき、前記梁部のトウ端及びヒール端、並びに前記突き当て構造と前記背面との接触部は、前記フェース長の中心を通りフェース-バック方向に延びる仮想直線に対して、トウ-ヒール方向に、前記フェース長の各々15%の範囲内に配置される、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
クラウン-ソール方向に視て、前記梁部のトウ端及びヒール端、並びに前記接触部は、前記フェース長の中心を通りフェース-バック方向に延びる仮想直線に対して、トウ-ヒール方向に、前記フェース長の各々10%の範囲内に配置される、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
クラウン-ソール方向に視て、前記接触部は、前記梁部のトウ端及びヒール端を延長した仮想直線に挟まれた範囲内に配置される、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記梁部のトウ-ヒール方向の幅は、クラウン-ソール方向の厚さよりも大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記梁部は、トウ-ヒール方向の幅が4mm以上10mm以下であり、クラウン-ソール方向の厚さが0.5mm以上2mm以下であり、フェース-バック方向の長さが60mm以上90mm以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記梁部は、前記ソール部の側から前記クラウン部の側に窪む薄肉部を備え、
クラウン-ソール方向に視て、前記薄肉部は、前記梁部のフェース-バック方向の中心を通りトウ-ヒール方向に延びる仮想直線に対して、フェース-バック方向に、前記梁部のフェース-バック方向の長さの各々40%の範囲内に配置される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記梁部において、前記薄肉部の厚さは、前記薄肉部以外の厚さの20%以上70%以下である、請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記クラウン部は、前記梁部の前記クラウン部側の面の全体、及び前記クラウン開口部の周囲に設けられたクラウン取付部に、接着剤により貼り付けられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記突き当て構造は、前記ソール部の外面からのねじ止めと接着により、前記ソール部と締結される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記梁部は、クラウン-ソール方向に視て、フェース-バック方向に対して傾斜して延びており、
クラウン-ソール方向に視て、前記接触部を通ってフェース-バック方向に延びる仮想直線は、前記梁部のトウ端とヒール端との間を通る請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウッドタイプのゴルフクラブヘッドにおいて、例えば、フェース部の補強や剛性分布の調整等のため、フェース部の背面に接する突き当て構造を設けることが提案されている。一方、本体部に開口部を設け、開口部にカーボン製のクラウン部を取り付けたゴルフクラブヘッドも提案されている。
【0003】
このようなゴルフクラブヘッドにおいて、打音及び打感の向上と、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を両立させることは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-002136号公報
【特許文献2】特開2017-023216号公報
【特許文献3】特表2013-520229号公報
【特許文献4】特開2007-275547号公報
【特許文献5】特開2019-141225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴルフクラブヘッドにおける、打音及び打感の向上と、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ゴルフクラブヘッドは、本体部、フェース部、及びクラウン部を有するゴルフクラブヘッドであって、前記本体部は、クラウン開口部、前記クラウン開口部を分ける梁部、及びソール部を備え、前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を備え、前記クラウン部は、前記クラウン開口部を塞ぐように前記本体部に取り付けられ、前記ソール部は、前記フェース部の背面と接触する突き当て構造を有し、クラウン-ソール方向に視て、フェーストウ端からフェースヒール端までのトウ-ヒール方向の長さをフェース長としたとき、前記梁部のトウ端及びヒール端、並びに前記突き当て構造と前記背面との接触部は、前記フェース長の中心を通りフェース-バック方向に延びる仮想直線に対して、トウ-ヒール方向に、前記フェース長の各々15%の範囲内に配置される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ゴルフクラブヘッドにおける、打音及び打感の向上と、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の本体部10を例示する斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図(その1)である。
【
図4】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図(その2)である。
【
図6】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する上面図(その1)である。
【
図7】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する上面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1の本体部10を例示する斜視図である。
図1及び
図2において、矢印d
1はトウ-ヒール方向(左右方向)を、矢印d
2はクラウン-ソール方向(上下方向)を、矢印d
3はフェース-バック方向(前後方向)を示している。以降の図においても、必要に応じて同様の方向を図示する場合がある。
【0011】
クラウン-ソール方向は、ゴルフクラブヘッド1を規定ライ角及び規定ロフト角通りに水平面に設置した場合の鉛直方向である。クラウン-ソール方向は、トウ-ヒール方向及びフェース-バック方向と、およそ直角の関係にある。また、トウ-ヒール方向とフェース-バック方向とは、およそ直角の関係にある。
【0012】
図1及び
図2に示すゴルフクラブヘッド1は、ウッド型のゴルフクラブヘッドであって、例えばドライバーであるが、ユーティリティやフェアウェイウッドであってもよい。ゴルフクラブヘッド1は、本体部10と、フェース部20と、クラウン部30とを有する。より詳細には、ゴルフクラブヘッド1は、本体部10にフェース部20及びクラウン部30が接合されて一体化された中空構造体である。なお、中空構造体の内側の面を内面、外側の面を外面と称する場合がある。
【0013】
本体部10は、ソール部11と、サイド部12と、ホゼル13とを備えている。ソール部11は、ゴルフクラブヘッド1の底部を形成する部分である。サイド部12は、クラウン部30とソール部11との間に位置する部分である。ホゼル13は、シャフトと連結されるスリーブが収容される部分である。
【0014】
本体部10は、さらに、フェース側に開口するフェース開口部19を備えており、フェース開口部19を塞ぐようにフェース部20が接合されている。フェース部20は、ボールを打撃する打撃面となるフェース面20f(前面)を備えている。なお、フェース部20は所定の厚みを有しており、フェース面20fはフェース部20の外面をなしている。
【0015】
本体部10及びフェース部20は、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄系金属、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いて形成できる。本体部10及びフェース部20は、繊維強化樹脂を用いて形成してもよい。本体部10及びフェース部20は、同一材料から形成してもよいし、異なる材料から形成してもよい。
【0016】
なお、繊維強化樹脂とは、補強部材となる繊維と樹脂との複合材料である。繊維強化樹脂を構成する繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。また、繊維強化樹脂を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0017】
本体部10は、さらに、ソール部11とは反対側に開口するクラウン開口部14を備えており、クラウン-ソール方向に視て、クラウン開口部14の周囲にはクラウン取付部15が設けられている。クラウン取付部15は、本体部10の表面よりも一段下がった環状の段差部であり、クラウン部30を位置決めすることができる。
【0018】
本体部10は、さらに、梁部16を備えている。梁部16は、クラウン取付部15のフェース側とバック側とを橋渡しするように設けられている。梁部16の上面とクラウン取付部15の上面との間に段差はない。梁部16は、例えば、クラウン開口部14を、梁部16よりもトウ側に位置する第1開口部14aと、梁部16よりもヒール側に位置する第2開口部14bとに分ける。クラウン取付部15及び梁部16は、クラウン取付部15及び梁部16以外の本体部10と一体に形成することができる。
【0019】
図2において破線で示すように、梁部16の長手方向の両端とクラウン取付部15との接続部は、クラウン-ソール方向に視て、クラウン取付部15に近づくにつれて拡幅する形状である。このような形状により、応力の集中を防ぐことができ、梁構造の強度保持の効果が得られる。拡幅する2か所の接続部を除いて、梁部16のトウ-ヒール方向の幅は、例えば、一定である。
【0020】
梁部16の長手方向は、フェース-バック方向と平行であってもよいし、フェース-バック方向に対して傾斜していてもよい。本体部10の剛性を高めるためには、梁部16の長手方向は、フェース-バック方向と平行に近いことが好ましい。
【0021】
梁部16のトウ-ヒール方向の幅は、例えば、4mm以上10mm以下である。梁部16のクラウン-ソール方向の厚さは、例えば、0.5mm以上2mm以下である。なお、ここでいう梁部16のクラウン-ソール方向の厚さは、梁部16が後述の薄肉部16aを備える場合は、薄肉部16a以外の部分の厚さを指す。梁部16のフェース-バック方向の長さは、例えば、60mm以上90mm以下である。梁部16をこのような寸法範囲にすることにより、ゴルフクラブヘッド1の重量を必要以上に増加させることなく、ゴルフクラブヘッド1全体の剛性を高くすることができる。
【0022】
クラウン部30は、ゴルフクラブヘッド1の上部をなす部分である。クラウン部30は、例えば、繊維強化樹脂を用いて形成されている。これにより、クラウン部30を金属で形成する場合よりも軽量化できるため、余剰重量を生み出すことができ、その余剰重量をゴルフクラブヘッド1の最適な位置に配分することができる。
【0023】
クラウン部30は、クラウン開口部14を塞ぐように本体部10のクラウン取付部15及び梁部16に取り付けられている。クラウン部30は、例えば、梁部16の上面(クラウン部30側の面)の全体、及びクラウン開口部14の周囲に設けられたクラウン取付部15に、接着剤により貼り付けられる。梁部16のトウ-ヒール方向の幅は、クラウン-ソール方向の厚さよりも大きいことが好ましい。このようにすることで、梁部16の重さを変えずに梁部16の上面の面積を大きくできるため、クラウン部30と梁部16との接着面積が増加し、本体部10とクラウン部30との接合強度を向上することができる。
【0024】
また、本体部10とクラウン部30との接合強度を向上することで、クラウン部30の撓みが大きくなったときに、強度不足によりクラウン部30に割れや剥離が発生するおそれを低減できる。特に、クラウン部30が金属ではなく繊維強化樹脂を用いて形成されている場合に有効である。又、クラウン部30をクラウン取付部15と梁部16の両方に接合することで、クラウン部30にかかる応力がクラウン取付部15に集中せず、梁部16にもかかるため、応力を分散させることができる。これにより、クラウン部30に割れが発生するおそれを低減できる。
【0025】
図3及び
図4は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図である。
図1及び
図2に加えて
図3及び
図4を参照しながら、突き当て構造について説明する。
【0026】
図1~
図4に示すように、ソール部11は、フェース部20の背面20bと接触する突き当て構造40を有している。より詳しくは、ソール部11には中空構造体の内側に向かって窪む凹部111が設けられており、凹部111のフェース部20側の壁部に固定部112が形成されている。なお、背面20bは、フェース部20において、フェース面20fの反対側に位置する面である。
【0027】
固定部112は、フェース部20からd3方向に離間した位置に設けられている。固定部112は円筒状であり、中心軸をd4方向に向けて設けられている。固定部112の内壁面には、雌ねじ部113が形成されている。固定部112は、突き当て構造40を本体部10に固定する取付部である。
【0028】
突き当て構造40は、フェース部20の背面20b側に向かってd4方向に延伸する軸状の部材であり、先端部がフェース部20の背面20bに接触する。突き当て構造40の中心軸CLは、d4方向と平行である。なお、d4方向は、d3方向でバック側からフェース部20側へ向かって斜め上方へ向かう方向である。
【0029】
図5は、突き当て構造について説明する図である。
図1~
図4に加えて
図5を参照すると、突き当て構造40は、頭部410と、円筒部420と、先端部430とを有している。円筒部420は、頭部410の一方側に頭部410と同心的に設けられている。先端部430は、円筒部420の一方側に頭部410及び円筒部420と同心的に設けられている。円筒部420は、側面の一部に雄ねじ部を備えている。
【0030】
先端部430は、例えば、中心軸CL(
図4参照)に沿って円筒部420から離れるにしたがって横断面積(中心軸CLと垂直な方向の断面積)が漸減する形状であり、曲面を有する。先端部430は、例えば、半球状である。
【0031】
頭部410、円筒部420、及び先端部430の材料としては、例えば、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステン、タングステン合金、ステンレス、鉄系金属等の金属部材を用いることができる。ボール打撃時の衝撃緩和のために頭部410及び円筒部420の材料として上記の金属部材を用い、先端部430の材料として、樹脂、ゴム、FRP等の非金属部材を用いてもよいし、頭部410及び円筒部420と同様に先端部430も上記金属で形成し、先端部430が非金属部材を介して円筒部420と接触するようにしてもよい。
【0032】
頭部410には、例えば、六角形の溝が設けられている。頭部410の溝に六角レンチ等の先端部を挿入することで突き当て構造40を回転させ、円筒部420の雄ねじ部を固定部112の雌ねじ部113に螺合することができる。
【0033】
突き当て構造40は、固定部112からフェース部20へ向かう方向(d4方向)に、固定位置を調整できる。すなわち、円筒部420を固定部112に螺合する際のねじ込み量により、固定部112に対する突き当て構造40の固定位置がd4方向に沿って変化する。これにより、突き当て構造40の、固定部112のフェース部20側の端面からフェース部20への延出長さ(突出量)を調整できる。すなわち、先端部430のd4方向の位置を調整できる。
【0034】
突き当て構造40と固定部112にそれぞれ個体差があっても、円筒部420を固定部112に螺合する際のねじ込み量の調整によって、突き当て構造40の先端部430を確実にフェース部20の背面20bに接触させることができる。なお、突き当て構造40において、固定部112からの延出長さが最大となる固定位置は、頭部410が固定部112のバック側の端面に接する位置である。
【0035】
突き当て構造40は、ソール部11の外面からのねじ止めと接着により、ソール部11と締結されることが好ましい。ねじ止めに接着を併用することにより、突き当て構造40のねじ込み量の調整が、経時変化でずれることを抑制できる。
【0036】
本実施形態では、固定部112のd1方向の位置は、中央部であるが、固定部112はトウ側に位置していてもよいし、ヒール側に位置していてもよい。また、本実施形態の場合、固定部112及び突き当て構造40の組みは1組であるが、2組以上設けてもよい。
【0037】
また、固定部112と突き当て構造40との固定構造は、ねじ構造に限られず、圧入、接着、溶接、かしめ等、他の固定構造であってもよい。
【0038】
図6は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する上面図(その1)である。
図6では、本体部10にクラウン部30が取り付けられていない状態を図示している。
【0039】
図6において、L
Fは、フェース長を示している。L
F/2は、フェース長の半分の長さを示している。また、20tは、フェース部20のトウ-ヒール方向におけるトウ側の端であるフェーストウ端を示している。また、20hは、フェース部20のトウ-ヒール方向におけるヒール側の端であるフェースヒール端を示している。フェース長L
Fは、クラウン-ソール方向に視て、フェーストウ端20tからフェースヒール端20hまでのトウ-ヒール方向の長さである。
【0040】
また、16tは、梁部16のクラウン取付部15との接続部を除く領域において、クラウン-ソール方向に視て、トウ-ヒール方向のトウ側の端を示している。また、16hは、梁部16のクラウン取付部15との接続部を除く領域において、クラウン-ソール方向に視て、トウ-ヒール方向のヒール側の端を示している。なお、梁部16がフェース-バック方向と平行である場合は、梁部16のトウ端16t及びヒール端16hは、点ではなく線であってもよい。
【0041】
また、430cは、突き当て構造40とフェース部20の背面20bとの接触部を示している。つまり、接触部430cは、
図5に示す先端部430の最先端である。接触部430cは、背面20bと点で接触してもよいし、面で接触してもよい。また、S1は、フェース長L
Fの中心を通りフェース-バック方向に延びる仮想直線を示している。
【0042】
図6に示すように、梁部16のトウ端16t及びヒール端16h、並びに突き当て構造40と背面20bとの接触部430cは、仮想直線S1に対して、トウ-ヒール方向に、フェース長L
Fの各々L
Aの範囲内に配置される。ここで、L
Aは15%である。つまり、L
A=0.15×L
Fである。
【0043】
このように、ゴルフクラブヘッド1では、本体部10に梁部16及び突き当て構造40を設け、梁部16のトウ端16t及びヒール端16h、並びに接触部430cを、仮想直線S1に対して、トウ-ヒール方向に、フェース長LFの各々15%の範囲内に配置している。
【0044】
一般に、クラウン開口部14を設けると、クラウン部全体の剛性が低下し、金属製の心地よい打音や、打感の良さが損なわれるおそれがある。しかし、ゴルフクラブヘッド1では、本体部10に梁部16を設け、梁部16のトウ端16t及びヒール端16hを上記のような範囲に配置することにより、クラウン部全体の剛性を高くすることができるため、打音及び打感の向上を実現できる。
【0045】
また、一般に、本体部10に梁部16を設けると、ゴルフクラブヘッド1においてクラウン部30側の剛性高くなりすぎてしまい、打球の打ち出し角が低くなるおそれがある。しかし、ゴルフクラブヘッド1では、本体部10に突き当て構造40を設け、接触部430cを上記のような範囲に配置することにより、フェース部20の下部の変形が上部よりも拘束されるため、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を実現できる。すなわち、ゴルフクラブヘッド1では、打音及び打感の向上と、打撃時の打球の打ち上げ角の増大を両立することが可能となる。
【0046】
梁部16のトウ端16t及びヒール端16h、並びに接触部430cを、仮想直線S1に対して、トウ-ヒール方向に、フェース長LFの各々10%の範囲内に配置することがより好ましい。これにより、ゴルフクラブヘッド1における、打音及び打感のさらなる向上と、打撃時の打球の打ち上げ角のさらなる増大を両立することが可能となる。
【0047】
また、クラウン-ソール方向に視て、接触部430cは、梁部16のトウ端16t及びヒール端16hを延長した仮想直線に挟まれた範囲内に配置されることがより好ましい。また、クラウン-ソール方向に視て、接触部430cを通ってフェース-バック方向に延びる仮想直線は、梁部16のトウ端16tとヒール端16hとの間を通ることが好ましい。これにより、ゴルフクラブヘッド1における、打音及び打感のさらなる向上と、打撃時の打球の打ち上げ角のさらなる増大を両立することが可能となる。
【0048】
なお、ゴルフクラブヘッド1の要求性能によっては、梁部16のトウ端16t及びヒール端16h、並びに接触部430cを、仮想直線S1のトウ側において、LAよりさらにトウ側に配置してもよい。この場合は、ドロー系の打球を打ちやすいゴルフクラブヘッドを実現できる。
【0049】
また、ゴルフクラブヘッド1の要求性能によっては、梁部16のトウ端16t及びヒール端16h、並びに接触部430cを、仮想直線S1のヒール側において、LAよりさらにヒール側に配置してもよい。この場合は、フェード系の打球を打ちやすいゴルフクラブヘッドを実現できる。
【0050】
図4に示すように、梁部16は、ソール部11の側からクラウン部30の側に窪む薄肉部16aを備えていることが好ましい。梁部16が薄肉部16aを備えることにより、梁部16を軽量化できるため、梁部16はクラウン部30の撓みを大きく阻害しない。また、薄肉部16aは、ソール部11の側からクラウン部30の側に窪む構造であるため、梁部16の上面は窪みのない平坦な平面及び/又は曲面である。そのため、梁部16の上面の全体をクラウン部30との接着に使用できるため、クラウン部30との接着面積を十分に確保できる。その結果、接着強度不足によるクラウン部30の剥離を抑制できる。
【0051】
図7を参照して、薄肉部16aについて、さらに説明する。
図7は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する上面図(その2)である。
図7では、本体部10にクラウン部30が取り付けられていない状態を図示している。
【0052】
図7において、L
Mは、フェース-バック方向における梁部16のフェース側の端とバック側の端との長さ、すなわち、梁部16のフェース-バック方向の長さを示している。L
M/2は、梁部16のフェース-バック方向の長さの半分の長さを示している。また、S2は、梁部16のフェース-バック方向の中心を通りトウ-ヒール方向に延びる仮想直線を示している。
【0053】
クラウン-ソール方向に視て、薄肉部16aは、仮想直線S2に対して、フェース-バック方向に、梁部16のフェース-バック方向の長さLMの各々LBの範囲内に配置されることが好ましい。ここで、LBは40%である。つまり、LB=0.4×LMである。
【0054】
このように、薄肉部16aを、仮想直線S2に対して、フェース-バック方向に、梁部16のフェース-バック方向の長さLMの各々40%の範囲内に配置することにより、クラウン開口部14を設けることによるゴルフクラブヘッド1の剛性の低下を抑制できると共に、余剰重量を確保することが可能となる。
【0055】
また、梁部16において、薄肉部16aの厚さは、薄肉部16a以外の厚さの20%以上70%以下であることが好ましい。薄肉部16aの厚さをこのような範囲とすることにより、クラウン開口部14を設けることによるゴルフクラブヘッド1の剛性の低下を抑制できると共に、余剰重量を確保することが可能となる。なお、薄肉部16aの厚さ及び/又は薄肉部16a以外の厚さが一定でない場合は、各々の平均厚さを比較するものとする。
【0056】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 ゴルフクラブヘッド
10 本体部
11 ソール部
12 サイド部
13 ホゼル
14 クラウン開口部
14a 第1開口部
14b 第2開口部
15 クラウン取付部
16 梁部
16a 薄肉部
16t トウ端
16h ヒール端
19 フェース開口部
20 フェース部
20b 背面
20f フェース面
20t フェーストウ端
20h フェースヒール端
30 クラウン部
40 突き当て構造
111 凹部
112 固定部
113 雌ねじ部
410 頭部
420 円筒部
430 先端部
430c 接触部