(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089984
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】航行船舶監視システム
(51)【国際特許分類】
G08G 3/00 20060101AFI20240627BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20240627BHJP
B63B 79/40 20200101ALI20240627BHJP
【FI】
G08G3/00 A
B63B49/00 Z
B63B79/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205577
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】草刈 成直
(72)【発明者】
【氏名】豊澤 菜々彩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB04
5H181CC14
5H181EE02
5H181FF21
5H181FF32
5H181FF40
(57)【要約】
【課題】海上工事を効率的に実施するための航行船舶監視システムを提供する。
【解決手段】AIS情報に基づき、海上の工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域を通過するか否かを判定し、当該監視対象区域を通過すると判定された船舶を監視対象船舶Sに設定し、さらに、AIS情報に基づき、監視対象船舶が監視対象区域に到達する時刻を予測し、当該監視対象船舶の予測到達時刻情報をWebベースデータ化する。予測到達時刻情報は、ASPが提供する航行船舶監視クラウドサービス1のクラウドサーバ3に集約される。本システムによれば、監視対象船舶が監視対象区域を通過する時刻を早期に把握することが可能となり、海上工事を効率的に実施することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上の工事区域周辺を航行する船舶を監視する航行船舶監視システムであって、
ASPが管理するサーバに格納された制御手段と、工事区域周辺を航行する船舶の監視状況を表示する表示部とを備え、前記制御手段は、AIS情報に基づき、工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域を通過するか否かを判定し、前記監視対象区域を通過すると判定された船舶を監視対象船舶に設定し、前記監視対象船舶が前記監視対象区域に到達する時間を予測することを特徴とする航行船舶監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の航行船舶監視システムであって、
前記監視対象船舶が前記監視対象区域に到達する予測到達時刻情報は、Webベースデータ化され、前記サーバ3に集約されることを特徴とする航行船舶監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の航行船舶監視システムであって、
前記制御手段は、インターネットに接続された端末装置の警報装置を作動させることで前記監視対象船舶が前記監視対象区域に接近していることを警報することを特徴とする航行船舶監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上の工事区域周辺を航行する船舶をAIS情報に基づき監視する航行船舶監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、工事区域等の監視エリアを予め設定し、当該監視エリア周辺における一般航行船舶及び作業船をAIS情報に基づき監視するようにした航行船舶監視システム(以下「従来の航行船舶監視システム」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】NETIS登録番号(CBK-120002-VE)、技術名称(航行船舶監視システム みはりちゃん)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、航路や泊地における海上工事では、施工者は、工事区域周辺を航行する船舶の安全を妨げることが無いように作業船を退避させる必要がある。効率的な作業船の退避計画(以下「退避計画」と称する)を立案するには、工事区域周辺を航行する船舶の中から監視対象となる船舶(以下「監視対象船舶」と称する)を特定し、当該監視対象船舶が監視対象区域を通過する日時を早期に把握する(予測する)ことが必要となる。
【0005】
しかし、従来の航行船舶監視システムは、AISを搭載した船舶の数分後(1、3、5、10分後)の動静をシステムの監視モニタ画像にベクトル表示するものであり、監視対象船舶が監視対象区域を通過する日時を早期に予測するものではない。そこで、海上工事を効率的に実施するため、監視対象船舶が監視対象区域を通過する日時を早期に予測することが可能な航行船舶監視システムが求められる。
【0006】
本発明は、海上工事を効率的に実施するための航行船舶監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の航行船舶監視システムは、海上の工事区域周辺を航行する船舶を監視する航行船舶監視システムであって、ASPが管理するサーバに格納された制御手段と、工事区域周辺を航行する船舶の監視状況を表示する表示部とを備え、前記制御手段は、AIS情報に基づき、工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域を通過するか否かを判定し、前記監視対象区域を通過すると判定された船舶を監視対象船舶に設定し、前記監視対象船舶が前記監視対象区域に到達する時間を予測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、監視対象船舶が監視対象区域を通過する日時を早期に予測することで効率的な作業船の退避計画を立案することが可能となり、海上工事を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る航行船舶監視システムの概念図である。
【
図2】本実施形態に係る航行船舶監視システムの概略的な構成図である。
【
図3】本実施形態に係る航行船舶監視システムのフロー図である。
【
図4】本実施形態に係る航行船舶監視システムの説明図であって、PCのディスプレイに表示される画面の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
本実施形態に係る航行船舶監視システム(以下「本システム」と称する)は、AIS(Automatic Identification System)情報に基づき、海上の工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域を通過するか否かを判定し、監視対象区域を通過すると判定された船舶を監視対象船舶に設定する。さらに、本システムは、AIS情報に基づき、当該監視対象船舶が監視対象区域に到達する時刻を予測する。
図1に本システムの概念図を示す。
【0011】
図1を参照すると、本システムでは、進路方位、速力等のAIS情報に基づき、工事区域周辺を航行する各船舶の現在の船速ベクトルV(
図1において「実線」で示された矢印)が算出される。また、本システムでは、寄港地等のAIS情報に基づき、当該船舶の航路が予測される。便宜上、本システムによって予測された航路を当該船舶の予測航路R(
図1において「破線」で示された矢印)と称する。
【0012】
また、本システムでは、工事区域周辺を航行する各船舶の予測航路が予め設定された監視対象区域Aを通過するか否かを判定し、監視対象区域Aを通過すると判定(推定)された船舶を監視対象船舶Sに設定する。さらに、本システムでは、速力、寄港予定日時等のAIS情報に基づき、監視対象船舶Sが監視対象区域Aに到達する時刻(日時)を予測、すなわち、監視対象船舶Sの予測航路Rが監視対象区域Aに到達する時刻(以下「予測到達時刻」と称する)を算出する。
【0013】
図2は、本システムの概略的構成図である。本システムの制御手段(ソフトウェア機能)は、ASP(Application Service Provider)が提供する航行船舶監視クラウドサービス1が保有するクラウドサーバ3に格納される。クラウドサーバ3には、AIS情報提供サービス5によって提供されるAIS情報がWebベースデータ化されて集約される。制御手段は、AIS情報に基づき算出された監視対象船舶Sの予測到達時刻情報をWebベースデータ化してクラウドサーバ3に集約する。
【0014】
これにより、インターネットに接続されたPC7(Personal Computer)やタブレット端末9等の端末装置を用いてクラウドサーバ3にアクセスすることにより、作業船上や管理事務所又は運航管理局等で監視対象船舶Sの予測到達時刻情報を取得することができる。また、PC7に警報装置11が設置されていれば、当該警報装置11を作動させることにより、監視対象船舶Sが監視対象区域Aに接近していることを作業船や監視対象船舶S又は管理事務所や運航管理局等に警告することができる。なお、本システムは、ID(IDentification)を取得したクライアントのみ使用できるように構成することができる。
【0015】
図3に基づき本システムの処理の流れを説明する。まず、管理事務所等のPC7(
図2参照)から航行船舶監視クラウドサービス1のクラウドサーバ3(
図2参照)にアクセスし、既定事項を設定する(
図3における「ステップ1」)。当該既定事項は、例えば、監視対象船舶設S(
図1参照)の設定及び監視対象区域A(
図1参照)の設定である。監視対象船舶Sの設定は、例えば、PC7のディスプレイに表示されたAISデータ一覧表(図示省略)からパラメータを選択し、選択されたパラメータ(例えば「船舶の全長」)に設定値を入力することによって行われる。また、監視対象区域Aの設定は、例えば、座標を入力して海域を指定することによって行われる。
【0016】
次に、本システムの制御手段(ソフトウェア機能)は、AIS情報提供サービス5によって提供されたAIS情報に基づき工事区域周辺(AIS管制区域内)を航行する船舶の動静を監視する(
図3における「ステップ2」)。そして、制御手段は、予測航路が監視対象区域Aを通過し、かつ
図3のステップ2おいて設定された条件(例えば「船長80m以上」)に一致する船舶を抽出し、当該船舶を監視対象船舶Sに設定する(
図3における「ステップ3」)。さらに、制御手段は、速力等のAIS情報に基づき、監視対象船舶Sの予測到達時刻を算出する(
図3における「ステップ4」)。なお、制御手段は、必要に応じて警報装置11(
図2参照)を作動させる(
図3における「ステップ5」)。
【0017】
ここで、
図4に本システムのクライアント(例えば
図2における「PC7」)のディスプレイ(監視状況を表示する表示部)に表示される画面13の一例を示す。
図4を参照すると、画面13の中央部には、長方形で示された監視対象区域Aが表示される。なお、
図4は、監視対象区域Aを画面13の中央部に表示することを限定するものではない。画面13に表示された海域には、AISの管制区域内を航行する非監視対象船舶(当該海域を航行する全船舶のうち監視対象船舶Sを除いた船舶)の現在位置が〇印で示される。
【0018】
また、画面13に表示された海域には、各監視対象船舶Sの現在位置が●印で示される。ここで、非監視対象船舶を示す〇印及び監視対象船舶Sを示す●には、現在の船速ベクトルV(
図1参照)を示す矢印が付与される。なお、港や泊地等に停泊中の船舶については当該矢印が表示されていない。また、画面13の右下部には、
図3のステップ1において設定された事項が表示される。なお、設定条件は、画面13の右上部に表示された条件設定タブ15を操作することで設定及び変更することができる。また、画面13の右上部に表示された警報設定タブ15を操作することで、警報機能を設定又は変更することができる。
【0019】
また、画面13の左上部には、警戒船舶リスト(監視対象船舶Sの一覧表)が表示される。当該警戒船舶リストには、各監視対象船舶Sの到達日、到達予測、到達時刻、船名、船の全長、及び船種が各々表示される。
【0020】
ところで、海上工事を効率的に実施するには、工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域を通過する時刻を早期に把握(予測)し、効率的な作業船の退避計画を立案する必要がある。しかし、従来の航行船舶監視システムは、AISを搭載した船舶の数分後の動静をレーダー画像にベクトル表示することができるが、当該船舶が監視対象区域を通過する時刻を早期に予測することができない。
【0021】
そこで、本システムは、AIS情報に基づき、海上の工事区域周辺を航行する船舶が監視対象区域Aを通過するか否かを判定し、当該監視対象区域Aを通過すると判定された船舶を監視対象船舶Sに設定する。さらに、本システムは、AIS情報に基づき、監視対象船舶Sが監視対象区域Aに到達する時刻を予測し、当該監視対象船舶Sの予測到達時刻情報をWebベースデータ化し、ASPが提供する航行船舶監視クラウドサービス1が保有するクラウドサーバ3に集約する。
【0022】
本システムによれば、監視対象船舶Sが監視対象区域Aを通過する時刻(日時)を早期に把握(予測)することができる。これにより、効率的な作業船の退避計画を立案することができ、海上工事を効率的に実施することが可能となる。
また、本システムでは、インターネットに接続されたPC7やタブレット端末9等の端末装置(クライアント)があれば、作業船上や管理事務所又は運航管理局等で監視対象船舶Sの予測到達時刻情報を取得することができる。
また、本システムでは、監視対象区域Aを通過する船舶の動静のみを監視するので、制御手段の処理を簡素化することが可能であり、特に、東京湾等の船舶交通が輻輳する海域において有利である。
また、本システムでは、PC7やタブレット端末9等の端末装置に備えた警報装置11を作動させることにより、監視対象船舶Sが監視対象区域Aに接近していることを作業船や監視対象船舶S又は管理事務所や運航管理局等に警告することが可能であり、監視対象船舶Sの見逃しを防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 航行船舶監視クラウドサービス、3 クラウドサーバ、5 AIS情報提供サービス