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特開2024-89993導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089993
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240627BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240627BHJP
   H01B 7/06 20060101ALI20240627BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B5/14 Z
H01B7/06
H05K1/09 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205595
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】城▲崎▼ 梨紗子
【テーマコード(参考)】
4E351
5G301
5G307
5G311
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD10
4E351DD17
4E351DD19
4E351DD20
4E351DD21
4E351EE30
4E351GG03
4E351GG20
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA04
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA09
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA14
5G301DA18
5G301DA19
5G301DA20
5G301DA23
5G301DA29
5G301DA42
5G301DA48
5G301DA53
5G301DA59
5G301DA60
5G301DD02
5G301DE01
5G307GA03
5G307GB02
5G307GC02
5G311BA04
5G311BB06
5G311BC01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、導電性、繰り返し伸縮耐性、耐湿熱性及び密着性に優れた導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】
エラストマー(A)と導電性微粒子(B)とを含む導電性組成物であって、
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた後の、
導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における、ピークトップの粒子径(rtop)が2.0μm以上20.0μm以下であり、
ピークトップの頻度(ftop)が1.5%以上9.0%以下である、導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー(A)と導電性微粒子(B)とを含む導電性組成物であって、
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた後の、
導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における、ピークトップの粒子径(rtop)が2.0μm以上20.0μm以下であり、
ピークトップの頻度(ftop)が1.5%以上9.0%以下である、導電性組成物。
【請求項2】
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際の、導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における、累積95%粒子径(r95)が10.0μm以上であり、
累積10%粒子径(r10)が、0.1μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際の、前記スクリーンマスクの通過前後の粒子径比(通過前の導電性微粒子(B)の、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における累積95%粒子径(R95)/通過後 の導電性微粒子(B)の、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における累積95%粒子径(r95))が、5.0以下である、請求項1又は2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電性組成物を含有する導電体。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の導電性組成物の硬化物を、伸縮性基材上に備えるストレッチャブル導電材。
【請求項6】
請求項4に記載の導電体を備える、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において導電材料が用いられており、これらの材料の更なる高機能化に関して種々の提案がなされている。特に近年は、フレキシブル性や伸縮性を備えるストレッチャブル導電材の開発が進み、アクチュエータ用途やウェアラブルセンサー用途へ向けた提案がなされている。
【0003】
また、生体センシング等のヘルスケア機器、ウェアラブル機器、並びにロボティックス等の分野の進展に伴い、導電材料には、従来求められていた導電性のみならず、加工時及び使用時に曲面部や可動部に追随可能な伸縮性が求められる。
【0004】
一方、曲面部や可動部に導電材料を用いると、繰り返し伸縮に伴う樹脂の構造破壊により、樹脂にクラックが発生しやすいという問題がある。特に、導電材料の場合には導電性微粒子を添加する場合が大半であり、伸長収縮の変形時に樹脂から導電材が剥離して樹脂中に空隙(ボイド)が発生し、そこを起点としてクラックが生じやすい。その結果、伸縮を重ねるごとに導電性が低下するという問題がある。
【0005】
さらに、ストレッチャブル導電材を形成するためには、エラストマー、導電性微粒子、その他の成分を、混錬し作成したペースト状等の導電性組成物を伸縮性基材に塗布し、印刷パターンを形成させる必要がある。しかしながら、使用するエラストマー・導電性組成物・分散方法や印刷パターン形成方法によっては凝集物が発生したり、過分散が起こったり、ペーストの粘弾性挙動が変化したりすることによって、各種伸縮性フィルム基材への(連続)印刷性や(連続)印刷時の伸縮導電性が低下するという問題がある。また、樹脂と導電性微粒子を分散し、得られた導電性組成物を塗工し印刷物にする工程で、導電性組成物中の導電性微粒子の凝集状態・粒子径分布が変化し伸縮導電性が低下するという問題がある。
【0006】
特許文献1には、表面処理が施された特定の平均一次粒子径を有する銀粉を、組成物中で特定の凝集状態とすることにより、伸縮の繰り返しや伸長率を大きくした場合であっても、電気抵抗の安定性に優れることが開示されている。
【0007】
特許文献2には、エラストマーに配合する導電性金属粉として、平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉と、平均一次粒子径がミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉の2種を組み合わせて用いることにより、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電体を得ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許7077316号公報
【特許文献2】特開2020-132756号公報
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された発明では、導電性組成物へ配合する前の銀粉又は導電性組成物中の銀粉の粒子径を規定するものの、導電性組成物を分散・塗工し導電体にする工程(例えばスクリーンマスクを通過させる工程)によって導電材の粒度分布が変化することで、伸縮導電性が低下したり、導電材の粒子径、ひいては比表面積等の変化に応じて導電性組成物のタックが減少し、密着性が低下したりする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、導電性、繰り返し伸縮耐性、耐湿熱性及び密着性に優れた導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記[1]~[6]に関する。
[1]
エラストマー(A)と導電性微粒子(B)とを含む導電性組成物であって、
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた後の、
導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における、ピークトップの粒子径(rtop)が2.0μm以上20.0μm以下であり、

ピークトップの頻度(ftop)が1.5%以上9.0%以下である、導電性組成物。
[2]
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際の、導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線における、累積95%粒子径(r95)が10.0μm以上であり、
累積10%粒子径(r10)が、0.1μm以上5.0μm以下である、[1]に記載の導電性組成物。
[3]
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際の、前記スクリーンマスクの通過前後の粒子径比(通過前の導電性微粒子(B)の粒度分布曲線における累積95%粒子径(R95)/通過後 の導電性微粒子(B)の粒度分布曲線における累積95%粒子径(r95))が、5.0以下である、[1]又は[2]に記載の導電性組成物。
[4]
[1]又は[2]に記載の導電性組成物を含有する導電体。
[5]
[1]又は[2]に記載の導電性組成物の硬化物を、伸縮性基材上に備えるストレッチャブル導電材。
[6]
[4]に記載の導電体を備える、電子デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電性、繰り返し伸縮耐性、耐湿熱性及び密着性に優れた導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスを提供できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る導電性組成物、導電体、ストレッチャブル導電材、及び電子デバイスについて順に詳細に説明する。
なお本発明において、硬化物とは、化学反応により硬化したもののみならず、例えば溶剤の揮発等、化学反応以外の方法で硬化したものを包含する。
本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。また、特に言及しない限り、各種成分は、それぞれ独立に、単独または2種類以上を併用できる。
【0015】
<導電性組成物>
本発明の導電性組成物は、エラストマー(A)と導電性微粒子(B)とを含む導電性組成物であって、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際の、導電性微粒子(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布曲線におけるピークトップの粒子径(rtop)が2.0μm以上20.0μm以下であり、ピークトップの頻度(ftop)が1.5%以上9.0%以下である、導電性組成物である。
【0016】
本発明の導電性組成物は、スクリーンマスクを通過させた後の導電性微粒子(B)の粒度分布を規定することにより、任意の工程を経て印刷物を作製した際に、伸縮時においても導電パス形成が維持され、伸縮導電性の低下が抑制され、密着性が良好であるという効果を奏する。
【0017】
この本発明特有の効果が発現する詳細なメカニズムは明らかではないが、以下のように考えられる。なお、以下のメカニズムは一考察であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
導電性組成物を分散・塗工し印刷物にする工程(手法は限定しないが、例えば400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させる工程)では、導電性組成物中の導電材の粒度分布を変えうる因子が複数ある。例えば、分散方法、印刷時にかかるせん断、導電性組成物の処方、粒子径、それらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
分散方法では混錬手段そのもの、混錬機のスケール、装置の形状、攪拌ばねの形状、混錬の回転速度及び時間、混錬の温度、ビーズ充填率やロール間隔等、種々の条件により導電性微粒子の粒度分布を調整可能である。
【0020】
印刷時には、連続印刷の際等、繰り返しせん断が加わると、導電性組成物中の導電性微粒子の凝集が過剰にほぐれることが予想される。一方、導電性微粒子の凝集の弛緩の程度が最適な範囲(すなわち本発明で規定する範囲)であると、非伸縮時や伸縮時に導電性微粒子同士の接点が十分に形成され、導電性及び繰り返し伸縮耐性が良化する。
【0021】
また、導電性微粒子の粒度分布が本発明で規定する範囲であると、導電性微粒子の比表面積が大きくなりすぎず、粒子間に入り込むエラストマーの量が少なくなるため、導電性組成物の密着性が向上する。
【0022】
<エラストマー(A)>
本発明の導電性組成物は、成膜性、及び伸縮性基材フィルムへの密着性を付与するために、バインダー性のエラストマー(A)を含有する。また、本発明においては、エラストマー(A)を含有することにより、導電層に柔軟性、伸縮性、伸縮性基材フィルムへの密着性、及び印刷性を付与することができる。そのため、延伸又は収縮に際する導電層の断線が抑制される。更には、伸縮性基材フィルムへの密着性が良好になる。
【0023】
前記エラストマー(A)としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等の炭化水素系エラストマーやその水添エラストマー、シリコーンエラストマー、フッ素エラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリイミドエラストマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。または2種以上のエラストマーを化学的に結合した複合エラストマーでもよい。複合エラストマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。複合エラストマーの構造は限定しないが、例えばランダム共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、グラフト共重合体、星形ブロック共重合体が挙げられる。これらのなかでは、伸縮性の点からシリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマー、ポリエステルエラストマーが好ましく、さらに基材との密着性の点から、シリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマーが好ましく、アクリルエラストマーがより好ましい。
なお、ここで言うエラストマーとは、弾性の顕著な高分子物質のことであり、張力を受けるとエネルギーの散逸に伴う発熱等がなく迅速に伸長し、張力を除くと元の長さに戻る材料のことである。
【0024】
前記シリコーンエラストマーとしては、例えば、硬化タイプのシリコーン樹脂、シロキサン結合を有する開始剤又はモノマーを用いて合成した樹脂が挙げられる。硬化タイプのシリコーン樹脂としては、例えばオルガノポリシロキサン組成物を硬化させたシリコーンエラストマーが挙げられる。オルガノポリシロキサン組成物は、オルガノポリシロキサンを主成分(ベースポリマー)とするものであるが、その硬化方式は特に制限されず、例えば、従来公知の縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物による硬化型、放射線硬化型等が挙げられる。本発明の導電性組成物においては、その中でも特に、付加硬化型シリコーン樹脂を用いると、硬化後の収縮が少なく、伸縮導電性の観点から好ましい。
【0025】
前記アクリルエラストマーは、その製造方法は制限されないが、(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤存在下で重合させることにより形成することができ、(メタ)アクリル単量体由来の構成単位を有するものである。なお、本明細書において「エチレン性不飽和単量体」とは、重合性のエチレン性不飽和基を分子内に1つ以上有する単量体をいう。
【0026】
この反応はすべて溶媒を用いて行ってもよいし、溶媒を使用せずに行ってもよい。溶媒を用いる場合は、反応の途中段階又は反応終了後に、減圧下又は常圧下で溶媒を除去してもよい。溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2 種類以上混合して用いてもよいが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
【0027】
<エチレン性不飽和単量体>
アクリルエラストマーを構成するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類;
3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等のオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート類;
スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、又は(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニルエーテル類;
JNC株式会社製の反応性シリコーン(サイラプレーン)FM-0711、FM-0721、FM-0725、TM-0701T等のシロキサン結合を有する(メタ)アクリレート類が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
エチレン性不飽和単量体中のエチレン性不飽和基の具体例としては、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基及びビニルアミド基が例示できる。「エチレン性不飽和単量体」は、(メタ)アクリル基がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの混合物の両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」及びこれらの混合物の両方を包含する。
【0029】
また、本明細書において「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位」には、エチレン性不飽和単量体の残基の他、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分をブロック共重合体の重合時又は重合後に反応性化合物と反応させて得られたエチレン性不飽和単量体の残基の誘導体も含む。例えば、エチレン性不飽和単量体の残基の一部分に、単量体に元々含まれていない官能基及び/又は置換基が導入された構造単位も含まれる。なお、単量体自体に官能基及び/又は置換基が含まれていてもよい。また、ブロック共重合体内の側基同士、側鎖同士、又は側基と側鎖が互いに又は反応性化合物を介して結合して環を形成した構造を含む。
【0030】
また、アクリルエラストマーは、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位を有していてもよい。架橋基を有することで、架橋による凝集が促進され、得られる導電性組成物の強靭性、伸縮特性、耐溶剤性及び耐熱性を高めることができる。また、架橋剤との反応性の観点から、前記架橋基が、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及びそのブロック体、アミノ基、(メタ)アクリレート基、加水分解性シリル基、並びにニトリル基からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、並びにイソシアネート基及びそのブロック体からなる群より選ばれる1種以上であることがさらに好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
【0031】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
アクリルエラストマーの好ましい形態として、(メタ)アクリルブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体ということがある)が挙げられる。またその(メタ)アクリルブロック共重合体は、ソフトセグメント及びハードセグメントを含むことが好ましい。ソフトセグメントは、柔軟で屈曲性の高いポリマー鎖からなるブロック成分であり、ハードセグメントは、結晶化若しくは凝集しやすく、ソフトセグメントより剛性の高いポリマー鎖からなるブロック成分である。そして、本発明形態に係るアクリルブロック共重合体においては、ソフトセグメントがハードセグメントに挟まれた構成(すなわち、「ハードセグメント-ソフトセグメント-ハードセグメント」のトリブロック構造又は後述する星形ブロック構造)を有することが好ましい。
【0033】
ソフトセグメント及びハードセグメントを含むブロック共重合体としては、下記式(3)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
重合体ブロックA-重合体ブロックB・・・(3)
式(3)中、重合体ブロックAはガラス転移点Tgが20℃以上のブロック(ハードセグメント)であり、重合体ブロックBはガラス転移点Tgが20℃未満のブロック(ソフトセグメント)を示す。式(3)で表されるブロック共重合体を用いることにより、本発明形態に係る導電性組成物の硬化物が強靭性を発揮する。なお、ガラス転移点Tgは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定できる。
本明細書では、式(3)を、「A-B」と略記することがある。
【0034】
また、トリブロック構造のブロック共重合体としては、下記式(1)で表されるブロック共重合体が挙げられる。
【0035】
重合体ブロックA-重合体ブロックB-重合体ブロックA・・・(1)
式(1)中、重合体ブロックA及び重合体ブロックBは、式(3)についての記載を援用できる。
本明細書では、式(1)を、「A-B-A」と略記することがある。
【0036】
そして、重合体ブロックAは、Tgが50℃以上のブロックであることが好ましく、重合体ブロックBは、Tgが-20℃以下であるブロックであることが好ましい。
【0037】
また、式(3)及び式(1)に示されるブロック共重合体において、ガラス転移点Tgがより小さい重合体ブロックBがソフトセグメントに対応し、ガラス転移点Tgがより大きい重合体ブロックAがハードセグメントに対応するブロックであることが好ましい。
なお、式(3)及び式(1)を比較すると、引っ張り破断伸度の観点から、式(1)のブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0038】
そして、ブロック共重合体は、少なくとも20℃以上30℃以下の範囲において固形であることが好ましい。この温度範囲において固体であることで、柔軟性基材に塗布した場合、又は塗布後、乾燥させた場合に良好なタック性を確保できる。
【0039】
また、重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量の比率が、15:85~40:60の範囲であることが好ましい。重合体ブロックAと重合体ブロックBの質量比率が上記範囲内にあると、伸長時に基材に追従し、断線が生じにくくなる。より好ましくは、20:80~35:75である。
【0040】
重合体ブロックAの例としては、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)及びポリスチレン(PS)等が挙げられる。重合体ブロックBの例としては、ポリn-ブチルアクリレート(PBA)及びポリブタジエン(PB)等が挙げられる。ブロック共重合体は、ポリメチル(メタ)アクリレート/ポリn-ブチル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であることが好ましい。尚、本願において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0041】
また、ブロック共重合体は、上述した式(3)、(1)で表されるブロック構造以外に、下記式(2)で表される星形ブロック構造であってもよい。
【0042】
[重合体ブロックA-重合体ブロックB]X・・・(2)
式(2)中、qは2以上6以下の整数である。重合体ブロックA及び重合体ブロックBは、式(3)についての記載を援用できる。
「星形ブロック構造」とは重合体ブロックA-重合体ブロックBのジブロック体が、Xを起点として複数(2~6)結合されてなる(Xと重合体ブロックBが結合されてなる)[重合体ブロックA-重合体ブロックB]Xの構造をいう。Xは開始剤残基及び/若しくはカップリング剤残基、又はその誘導体である。
本明細書では、式(2)を、「[A-B]X」と略記することがある。
【0043】
更に、「開始剤残基」とは、開始剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体中の開始剤に由来する残基を意味する。また、「カップリング剤残基」とは、カップリング剤由来の部分構造をいい、ブロック共重合体中のカップリング剤に由来する残基を意味する。また、「その誘導体」とは、開始剤残基及び/又はカップリング剤残基の一部が化学変換された構造をいう。例えば、ブロック共重合体の合成時に、開始剤残基及び/又はカップリング剤残基の一部が置換、付加された構造が含まれる。
【0044】
星形ブロック構造の場合の開始剤残基及び/若しくはカップリング剤残基、又はその誘導体Xの分子量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されない。例えば、50~2,500程度とすることができる。重合体ブロックAの連鎖末端に任意で有していてもよい開始剤残基又はその誘導体の分子量も同様に本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されず、例えば、50~2,500程度とすることができる。
【0045】
本明細書における重合体ブロックAのTgは、ブロック共重合体が得られた段階で示差走査熱量測定(DSC)測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロックA>TotalのTgであり、JISK7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロックA>Totalに由来するTgは、同様の化学構造を有するブロックではない重合体のTgと同一又は近傍の数値となるので、ジブロック構造、トリブロック構造の場合には重合体ブロックBのTg、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロックB]XのTgと容易に区別が付けられる。<重合体ブロックA>Totalの上記Tg、及びそれぞれの重合体ブロックAのTgは、ブロック共重合体の連鎖末端、即ち、重合体ブロックAの連鎖末端の構造によって値は大きく変わらないので、本明細書においては、重合体ブロック(A)の連鎖末端も含めて、それぞれの重合体ブロックAのTg及び<重合体ブロックA>TotalのTgを判断するものとする。
【0046】
但し、各重合体ブロックAの単量体に由来する構造単位がブロック毎に異なるケース等において、DSC測定して得られた曲線において、複数のTgが観測される場合には、<重合体ブロックA>TotalのTgに代えて、それぞれの重合体ブロックAのTgにより判断するものとする。その場合には、各重合体ブロックAの重合が完了した時点でサンプリングしてTgを求める。或いは、それぞれの重合体ブロック(A)と同様の化学構造を有する重合体のTgと相関があるので、それぞれの対応する重合体のTgをFoxの式より求め、Tgが20℃以上であるか否かにより判断してもよい。Foxの式は、下記式(4)から求められる値である。
1/(TgA+273.15)=Σ[Wa/(Tga+273.15)]・・・(4)
式(4)中、TgAは重合体ブロックAのTg(℃)であり、Waは重合体ブロックAを構成する単量体aの質量分率であり、Tgaは単量体aの単独重合体(ホモポリマー)のTg(℃)である。なお、Tgaはホモポリマーの特性値として広く知られており、例えば、「POLYMERHANDBOOK,THIRDEDITION」に記載されている値や、メーカのカタログ値を用いることができる。
【0047】
本明細書における重合体ブロックBのTgは、ブロック共重合体がジブロック構造、トリブロック構造の場合には重合体ブロックBそのもののTgとし、星形ブロック構造の場合には[重合体ブロックB]XのTgとする。ここで、ジブロック構造、トリブロック構造の重合体ブロックB、及び星形ブロック構造の[重合体ブロックB]Xを総称して<重合体ブロックB[X]>と表記する。
<重合体ブロックB[X]>のTgは、ブロック共重合体が得られた段階でDSC測定して得られた曲線において認められる<重合体ブロックB[X]>のTgであり、JISK7121:2012プラスチックの転移温度測定方法に基づき測定を行い、当該JIS9.3記載の補外ガラス転移開始温度(Tig)により求められる値とする。<重合体ブロックB[X]>のTgは、同様の化学構造を有する重合体のTgと同一又は近傍の数値となるので重合体ブロックAに由来するTgと容易に区別が付けられる。
【0048】
ブロック共重合体は、ブロック構造が、A-Bのジブロック構造、A-B-Aのトリブロック構造、又は[A-B]Xの星形ブロック構造であることが好ましく、重合体ブロックAの連鎖末端に開始剤残基又はその誘導体、官能基、不活性基、架橋性基、置換基等を有していてもよい。
【0049】
重合体ブロックAのTgは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。重合体ブロックAのTgの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃又は200℃とすることができる。この重合体ブロックAのTgは、前述したように<重合体ブロックA>TotalのTgに読み替えられる(以降においても同様とする。)。即ち、<重合体ブロックA>Totalは20℃以上であり、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。同様に、<重合体ブロックA>Totalの上限値は特に限定されないが、例えば300℃、250℃又は200℃とすることができる。
【0050】
ジブロック構造、トリブロック構造の場合の重合体ブロックBのTg、並びに星形ブロック構造の場合の[重合体ブロックB]XのTg、即ち、<重合体ブロックB[X]>のTgは、20℃未満であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることが特に好ましい。<重合体ブロック(B)[X]>のTgの下限値は特に限定されないが、例えば-100℃、-90℃又は80℃とすることができる。
【0051】
重合体ブロックAのTgと<重合体ブロックB[X]>のTgの温度差は特に限定されないが、75℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは125℃以上、特に好ましくは150℃以上である。75℃以上とすることにより、ミクロ相分離構造の形成を促進し、物理架橋による効果をより効果的に引き出すことができる。
【0052】
本明細書でいう重量平均分子量(Mw)は、後述する実施例に記載する方法で求められる値である。ブロック共重合体のMwは、20,000以上500,000以下とする。この範囲とすることにより、ブロック共重合体をストレッチャブル導電材用導電性組成物として用いた場合に、伸縮強度と導電安定性を両立することができる。Mwの好ましい範囲は25,000~400,000であり、より好ましい範囲は30,000~300,000である。多分散度(Mw/Mn)は特に限定されないが、1~2.5であることが好ましく、1~2.0であることがより好ましく、1~1.8であることが更に好ましく、伸縮強度に影響を与えるミクロ相分離構造の形成を促進する観点からは多分散度を1~1.5、1~1.3とすることが特に好ましい。
【0053】
各重合体ブロックAのMwはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。同様に、各重合体ブロックBのMwはそれぞれ異なっていてもよいが、伸縮性の観点からは実質的に同一であることが好ましい。
【0054】
各重合体ブロックAの単量体に由来する構造単位は、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。重合体ブロックA同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。同様に、各重合体ブロックBは、ブロック毎に異なる単量体に由来する構造単位から構成されていてもよいし、ブロック間で同一の単量体に由来する構造単位から構成されていてもよい。好ましくは、重合体ブロックB同士は、単量体に由来する構造単位の60質量%以上が互いに共通していることが好ましく、70質量%が共通していることがより好ましく、80質量%以上が共通していることが更に好ましい。なお、ここで共通するとは、単量体の配列までは問わず、成分が共通していることを意味する。
【0055】
ブロック共重合体の結合形式は、ストレッチャブル導電材としての特性である、伸縮性及び伸縮導電性をより効果的に高める観点からは、A-B-A型のトリブロック構造、[A-B]Xのうちのq=2の2分岐構造、q=3の3分岐構造が好ましい。重合体ブロックA及び重合体ブロックBはそれぞれ独立に、1種単独又は2種以上の単量体由来の構造単位を有する。
【0056】
ブロック共重合体におけるエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位の含有量は、ブロック共重合体の合計質量に対して70質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、重合体ブロックA、及び重合体ブロックBのミクロ相分離構造の形成をより効果的に促進する観点からは、X(開始剤残基及び/若しくはカップリング剤残基、又はその誘導体)及びブロック共重合体の末端の構造以外が、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(100質量%)からなるブロック共重合体が好ましい。
【0057】
重合体ブロックAは前述したTgを満たし、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする、ハードセグメントとして機能するブロックである。単量体は1種単独又は2種以上を併用して用いられる。単量体の具体例として、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、スチレン、スチレン誘導体、マレイミド、アクリロニトリルが挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、炭素数が1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を有するものが例示できる。また、スチレン誘導体としては、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンが例示できる。また、次に説明する重合体ブロックBで例示する単量体をその一部に好適に含むことができる。
【0058】
重合体ブロックBは前述したTgを満たし、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を主体とする、ソフトセグメントとして機能するブロックである。単量体は1種単独又は2種以上を併用して用いられる。単量体の具体例として、アクリル酸エステル、オレフィン化合物、ジエン化合物、アルキレンオキシドが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、炭素数が1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルアクリレートが例示できる。オレフィン化合物及びジエン化合物としては、炭素数が1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のオレフィン化合物及びジエン化合物が例示できる。また、アルキレンオキシドとしては、炭素数が1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキレン基を有するアルキレンオキシドが例示できる。また、前述の重合体ブロックA、で例示する単量体をその一部に好適に含むことができる。
【0059】
ブロック共重合体の好適例として、重合体ブロックAがメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、重合体ブロックBがアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むブロック共重合体が挙げられる。重合体ブロックA、中のメタクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上である。また、メタクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。
【0060】
また、重合体ブロックB中のアクリル酸エステル由来の構造単位は、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。また、アクリル酸エステル由来の構造単位を100質量%としてもよい。重合体ブロックA、がメタクリル酸エステル由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロックBがアクリル酸エステル由来の構造単位を70質量%以上含むことによって、より伸縮性に優れ、安定した伸縮導電性を発現することができる。
【0061】
重合体ブロックAのメタクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、イソヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノルマルオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、べへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アリルメタクリレート等の、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルメタクリレート類が例示できる。
また、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基の炭素数が2~4であるヒドロキシアルキルメタクリレート、グリセリンアクリレート、グリセリンメタクリレート等の水酸基を含有するメタクリル酸系モノマー類;メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシプロピルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシプロピルメタクリレート等のアルコキシ基の炭素数が1~4であり、アルキル基の炭素数が1~4であるアルコキシアルキルメタクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレート類;
(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノメタクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシ基、スルホン酸、リン酸)を有するメタクリル酸系モノマー類;酸素原子含有のメタクリル酸系モノマー類;アミノ基を有するメタクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のメタクリル酸系モノマー類等を用いることができる。更に、その他、3個以上の水酸基をもつモノメタクリレート類、ハロゲン原子含有メタクリレート類、ケイ素原子含有のメタクリル酸系モノマー類、紫外線を吸収する基を有するメタクリル酸系モノマー類、α位水酸基メチル置換アクリレート類も例示できる。また、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のメタクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するメタクリル酸系モノマー類を用いてもよい。
【0062】
重合体ブロックAのメタクリル酸エステル由来以外の構造単位を形成する単量体としては、メタクリル酸エステルと重合し得る他の単量体を用いることができる。具体的には、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0063】
重合体ブロックAの好適な例として、メチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはメチルメタクリレート由来の構造単位が60質量%以上であり、80質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロックA、の100質量%がメチルメタクリレート由来の構造単位であってもよい。
【0064】
重合体ブロックBのアクリル酸エステル由来の構造単位を形成する単量体として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ターシャリブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ペンチルアクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、イソヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノルマルオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、べへニルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロデシルアクリレート、シクロデシルメチルアクリレート、ベンジルアクリレート、t-ブチルベンゾトリアゾールフェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、ナフチルアクリレート、アリルアクリレート等の、脂肪族、脂環族、芳香族アルキルアクリレート類が例示できる。
また、水酸基を含有するアクリル酸系モノマー類;グリコール基を有するアクリル酸系モノマー類;(ポリアルキレン)グリコールモノアルキル、アルキレン、アルキンエーテル又はエステルのモノアクリレート類;アクリル酸やアクリル酸二量体を含む酸基(カルボキシ基、スルホン酸、リン酸)を有するアクリル酸系モノマー類;酸素原子含有のアクリル酸系モノマー類;アミノ基を有するアクリル酸系モノマー類;窒素原子含有のアクリル酸系モノマー類等を用いることができる。更に、その他、3個以上の水酸基をもつモノアクリレート類、ハロゲン原子含有アクリレート類、ケイ素原子含有のアクリル酸系モノマー類、紫外線を吸収する基を有するアクリル酸系モノマー類、α位水酸基メチル置換アクリレート類も例示できる。また、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンのポリアルキレングリコール付加物のアクリル酸エステル等の、2個以上の付加重合性基を有するアクリル酸系モノマー類を用いてもよい。
【0065】
重合体ブロックBのアクリル酸エステル由来以外の構造単位としては、アクリル酸エステルと重合し得る他の単量体を用いることができる。例えば、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0066】
重合体ブロックBの好適な例として、ブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が挙げられる。より好ましくはブチルアクリレート由来の構造単位が80質量%以上であり、90質量%以上であることが更に好ましい。また、重合体ブロックBの100質量%がブチルアクリレート由来の構造単位であってもよい。
【0067】
ブロック共重合体の好適な例として、重合体ブロックA中にメチルメタクリレート由来の構造単位を50質量%以上含み、且つ重合体ブロックB中にブチルアクリレート由来の構造単位を70質量%以上含む態様が例示できる。このようなブロック共重合体をブロック共重合体に用いれば、優れたストレッチャブル導電材を提供できる。重合体ブロックA中のメチルメタクリレート由来の構造単位は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%以上としてもよい。重合体ブロックB中のブチルアクリレート由来の構造単位は、80質量%以上、90質量%以上としてもよく、100質量%としてもよい。
【0068】
ブロック共重合体を用いることによって、重合体ブロックAと重合体ブロックBが海島構造(体心立方)、シリンダー(ヘキサゴナル)、ジャイロイド、ラメラ相等の分子レベルでの相分離構造(ミクロ相分離構造)を形成することができる。ミクロ相分離構造を形成することによって、優れた伸縮性を付与し、伸縮に伴うクラック発生(断線)を効果的に抑制できる導電性組成物を提供できる。伸縮性をより効果的に高める観点からは、重合体ブロックAが島、重合体ブロックBが海に相当する海島構造であることがより好ましい。なお、ミクロ相分離構造は、原子間力顕微鏡(AtomicForceMicroscope、AFM)を用いて観察することにより確認できる。
【0069】
ブロック共重合体の重合体ブロックAと重合体ブロックBに対する重合体ブロックAの含有率は特に限定されないが、海島構造のミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、1~50質量%であることが好ましく、15~30質量%であることがより好ましい。また、粘着性を効果的に引き出す観点からは、ブロック共重合体中の重合体ブロックAと重合体ブロックBに対する重合体ブロックA全体の含有率が1~35質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体における重合体ブロックA、と重合体ブロックBの含有比率は特に限定されないが、ミクロ相分離構造を容易に得る観点からは、ブロック共重合体の全質量に対して、重合体ブロックA、と重合体ブロックBの含有率が90.0~99.9質量%であることが好ましく、98.0~99.9質量%であることがより好ましい。
【0070】
ブロック共重合体は、導電性を良好に保つ観点から、ブロック共重合体のエチレン性不飽和単量体の90質量%以上が疎水性のエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。ここで「疎水性のエチレン性不飽和単量体」とは、20℃での水中への溶解性が6.5g/100mL以下の単量体をいう。疎水性のエチレン性不飽和単量体としては、上述したアルキル(メタ)アクリレート類、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル類、スチレン等の芳香族類等が例示できる。
【0071】
[官能基]
ブロック共重合体は官能基を有していてもよい。官能基としては、例えば、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリル基、加水分解性シリル基、ニトリル基、イソシアネート基が挙げられる。
【0072】
[反応性官能基]
ブロック共重合体は、上記官能基の中でも、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される一種以上の反応性官能基を有することが好ましい。当該官能基を反応性官能基として、後述する架橋剤と組み合わせ、化学架橋させることにより、ブロック共重合体を3次元架橋させることができ、導電層に硬度が求められる用途において好適に用いることができる。
【0073】
[硫黄原子]
ブロック共重合体は、金属フィラー等の導電性フィラーを含有した際にクラックの発生を効果的に抑制する観点から、硫黄原子を含有することが好ましく、その硫黄原子がスルフィド基、ジスルフィド基、メルカプト基等に由来することがより好ましい。
【0074】
ブロック共重合体が、分子内に硫黄原子を含有することにより、ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAと重合体ブロックBがミクロ相分離構造を形成し、応力緩和点を含む構造を形成し得る物理架橋を形成することができる。ブロック共重合体が、ミクロ相分離構造を有し、且つ物理架橋を形成することによって、ブロック共重合体の伸縮性を優れたものとすることができる。また、自己組織化(セグメントの集合)によって硫黄原子を互いに接近させることができる。そのような硫黄原子の分布によって凝集力と応力緩和を更に付与し、ブロック共重合体により優れた伸縮特性と耐熱性、耐湿熱性を付与することができる。
【0075】
ブロック共重合体に硫黄原子を含有させる方法としては、例えば、硫黄原子を有する単量体を用いて直接導入する方法、また、硫黄原子を有する重合開始剤を用いて単量体を共重合する方法、硫黄原子を有するカップリング剤を用いてブロック共重合体を製造する方法、変性(化学変換)により硫黄原子を導入する方法が挙げられる。硫黄原子を有する重合開始剤としては、例えば、市販されている硫黄系のRAFT開始剤が挙げられる。
また、メルカプトヘキサノール等のメルカプト基を有する連鎖移動剤を用いて重合体を得る方法も挙げられる。更には、重合後に得られたブロック共重合体に1,2-エタンジチオール等を付加させることでメルカプト基等の硫黄原子を直接導入する方法も挙げられる。
【0076】
[ブロック共重合体の製造方法]
以下、ブロック共重合体の製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0077】
ブロック共重合体の製造方法は特に限定されないが、ラジカル重合及びイオン重合により製造する方法が好適である。イオン重合はアニオン重合、カチオン重合がある。ラジカル重合の種類は特に限定されないが、リビングラジカル重合が好適である。また、反応性末端ジブロック構造を得た後に、カップリング剤を用いてブロック共重合体を得ることもできる。
【0078】
アニオン重合の例としては、無機酸塩の存在下で重合開始剤として有機希土類金属複合体又は有機アルカリ金属化合物を用いて重合する方法、有機アルミニウム化合物の存在下で重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて重合する方法がある。
リビングラジカル重合の例としては、ニトロキシド系の触媒を用いた重合/NMP法、遷移金属錯体系の触媒を用いた原子移動ラジカル重合/ATRP法、可逆的付加開裂連鎖移動剤を使用する可逆的付加-開裂連鎖移動重合/RAFT法、有機テルル系の触媒を用いた重合/TERP法、ヨウ素系化合物を触媒に用いたヨウ素移動重合/RCMP法(可逆配位媒介重合)又はRTCP法(可逆移動触媒重合)が例示できる。
【0079】
別の方法として、重合起点を2~6有するいずれかの重合開始剤を用いて重合体ブロックB及び重合体ブロックA、をこの順に逐次重合により得る工程を含む[重合体ブロックA-重合体ブロックB]Xで表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0080】
別の方法として、重合開始剤を起点として、重合体ブロックA、重合体ブロックB、重合体ブロックAをこの順に逐次重合により得る工程を含む、重合体ブロックA-重合体ブロックB-重合体ブロックA型のトリブロック構造で表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0081】
また、重合体ブロックB、重合体ブロックAを任意の順に逐次重合することによりA-B型のジブロック構造を得、A-B型のジブロック構造の分子末端に必要に応じて反応性末端を導入し、この反応性末端と反応性を示す連結ユニットを3~6有するいずれかのカップリング剤を用いてカップリング反応を行う工程を含む、[重合体ブロックA-重合体ブロックB]Xで表されるブロック共重合体の製造方法がある。
【0082】
また、ブロック共重合体は、市販品であってよい。市販品の例は、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーである。具体的には、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート-ポリブチルアクリレート-ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、及びカルボン酸変性処理又は親水基変性処理されたMAMNタイプ又はMAMAタイプを使用することができる。市販品の別の例は、クラレ社製の、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルから誘導されるブロック共重合体である。
【0083】
ブロック共重合体は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
エラストマー(A)は、樹脂成分以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0085】
<導電性微粒子(B)>
導電性微粒子(B)は、導電層内で複数の導電性微粒子が接触して導電性を発現するものであり、本発明においては、高温で加熱することなく導電性が得られるものの中から適宜選択して用いられる。本発明に用いられる導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボン微粒子、導電性酸化物微粒子等が挙げられる。
【0086】
金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属単体粉のほか、銅-ニッケル合金、銀-パラジウム合金、銅-スズ合金、銀-銅合金、銅-マンガン合金等の合金粉、前記金属単体粉又は合金粉の表面を、銀等で被覆した金属コート粉等が挙げられる。また、カーボン微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等が挙げられる。また、導電性酸化物微粒子としては、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。
【0087】
本発明においては、中でも、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、及びカーボン微粒子からなる群より選択される一種以上の導電性微粒子を含むことが好ましい。これらの導電性微粒子(B)を用いることにより、焼結を経ることなく、導電性に優れた導電層を形成することができる。
【0088】
導電性微粒子(B)の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状、デンドライト状等を適宜用いることができる。成形時の導電性維持の観点や導体パターンの基材への密着性の観点から、凝集状、鱗片状、フレーク状、ワイヤー状、デンドライト状のものが好ましい。
【0089】
(平均粒子径)
導電性組成物として調製される前の導電性微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、導電性組成物中での分散性や、導電層としたときの導電性の点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましい。
【0090】
なお本発明において、導電性組成物として調製される前の導電性微粒子(B)の平均粒子径は以下のように算出する。JISM8511(2014)記載のレーザ回折・散乱法に準拠し、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック9220FRA)を用い、分散剤として市販の界面活性剤ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製:トリトンX-100)を0.5体積%含有する水溶液に導電性微粒子(B)を適量投入し、撹拌しながら40Wの超音波を180秒照射した後、測定を行った。求められたメディアン径(D50)の値を、導電性組成物として調製される前の導電性微粒子(B)の平均粒子径とした。
【0091】
(粒度分布)
導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布は、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際に、ピークトップの粒子径(rtop)が2.0μm以上20.0μm以下であり、ピークトップの頻度(ftop)が1.5%以上9.0%以下である。これにより、前述の通り、任意の工程を経て印刷物を作製した際に、伸縮時においても導電パス形成が維持され、伸縮導電性の低下が抑制され、密着性が良好であるという効果を奏する導電性組成物が得られる。
【0092】
上記、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスク通過後の、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布におけるピークトップの粒子径(rtop)は、2.75μm以上18.5μm以下であることが好ましく、7.5μm以上17.0μm以下であることがより好ましい。
上記、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスク通過後の、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布におけるークトップの頻度(ftop) は、2.0%以上7.0%以下であることが好ましく、2.2%以上4.0%以下であることがより好ましい。
【0093】
また、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布は、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際に、累積95%粒子径(r95)が10.0μm以上であり、累積10%粒子径(r10)が、0.1μm以上5.0μm以下であることが好ましい。累積95%粒子径(r95)及び累積10%粒子径(r10)がこの範囲を満たすとき、銀の凝集の程度が適切なものとなり、非伸長時や伸長時に銀粒子同士の接点の数が充分に多く、導電性や繰り返し伸縮耐性に優れる。また、銀紛間に入り込むエラストマーの量、基材界面部に露出するエラストマーの量がともに適当であり、密着性に優れる。
【0094】
上記、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスク通過後の、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布における累積95%粒子径(r95)は、12.0μm以上42.0μm以下であることがより好ましく、15.0μm以上40.0μm以下であることが更に好ましい。
上記、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスク通過後の、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布における累積10%粒子径(r10)は、0.13μm以上4.0μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上2.0μm以下であることが更に好ましい。
【0095】
また、導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布は、400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンマスクを通過させた際に、前記スクリーンマスクの通過前後の粒子径比(通過前の導電性微粒子(B)の粒度分布における累積95%粒子径(R95)/通過後 の導電性微粒子(B)の粒度分布における累積95%粒子径(r95))が、5.0以下であることが好ましく、0.85以上4.0以下であることがより好ましく、0.9以上2.0以下であることが更に好ましい。印刷時にはせん断が加わったり、メッシュの開口径と同等や大きい導電材がろ過されたりすることで非伸長時や伸長時の銀粒子同士の接点の数が減少する場合があるが、上記範囲内では接点の数が充分に多く、導電性や繰り返し伸縮耐性に優れる。
【0096】
導電性組成物中の導電性微粒子(B)の粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した。具体的な測定条件は以下の通りである。
装置:日機装株式会社 マイクロトラック MT3000II
測定溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SetZero時間:20
測定時間:60
透過性:透過
粒子屈折率:1.33
形状:非球形
溶媒屈折率:1.40
導電性組成物をスパチュラ等で銀粉の二次粒子が崩壊しないよう適度に撹拌した後速やかに、濃度指数DV値を0.015-0.020の範囲内、透過率TRを0.90-0.95の範囲内となるようにしたのち、2回のスキャンでの粒度分布形状が安定したことを確認したのち、粒度分布を測定し、粒度分布曲線を求めた。当該粒度分布曲線の累積10%、95%の粒子径として算出された値をそれぞれr10、r95又はR95粒子径として定義する。また、データ解析ビューより読み取った、粒度分布曲線における頻度(%)の最大値をftop、その点での粒子径(μm)をrtopとする。
【0097】
本発明において導電性微粒子(B)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の導電性組成物中の導電性微粒子(B)の含有割合は、用途等に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し、40~99質量%であることが好ましく、60~95質量%であることが好ましい。導電性微粒子(B)の含有割合が上記下限値以上であれば、導電性に優れた導電層を形成することができる。また、導電性微粒子(B)の含有割合が上記上限値以下であれば、樹脂(A)の含有割合を高めることができ、成膜性や、ベースフィルムへの密着性が向上し、また、導電層に柔軟性や伸縮性を付与することができる
【0098】
<その他成分>
本発明における導電性組成物は、導電性微粒子以外のフィラー成分を含んでいてもよい。例えば、塩化銀等からなる金属塩化物フィラー、シリカ等からなる無機物フィラー、樹脂等からなる有機物フィラーが挙げられる。
本発明の導電性組成物は、必要に応じてさらに、架橋剤、分散剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤等のその他成分を含有してもよい。
【0099】
<導電性組成物の製造方法>
本発明の導電性組成物の製造方法は、エラストマー(A)と、導電性微粒子(B)と必要により用いられるその他の成分とを、溶剤中に溶解又は分散する方法であればよく、公知の混錬手段を用いて混合することにより製造することができる。
公知の混錬手段としては、ディゾルバー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、自公転型混合機、アトライター、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等が挙げられる。導電性組成物中における導電性微粒子の粒子径は、混錬手段そのもの、混錬機のスケール、装置の形状、攪拌ばねの形状、混錬の回転速度及び時間、混錬の温度、ビーズ充填率やロール間隔等、種々の条件により調整することができる。
【0100】
<導電体>
本発明の導電性組成物は、印刷等により硬化物を形成することにより、導電体として使用することができる。導電体は、本発明の導電性組成物の硬化物を、導電層として備えることが好ましい。
【0101】
導電層の形成方法は特に限定されないが、本発明においては、スクリーン印刷法、パッド印刷法、ステンシル印刷法、スクリーンオフセット印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビアオフセット印刷法、反転オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法により形成することが好ましく、スクリーン印刷法により形成することがより好ましい。
【0102】
スクリーン印刷法においては、導電回路パターンの高精細化や、繰り返し伸縮導電性向上のための厚膜化の観点から、80~650メッシュ程度のメッシュのスクリーンを用いることが好ましい。この時のスクリーンの開放面積は約20~50%が好ましい。スクリーン線径は約10~120μmが好ましい。
【0103】
スクリーン版の種類としては、ポリエステルスクリーン、コンビネーションスクリーン、メタルスクリーン、ナイロンスクリーン等が挙げられる。また、高粘度なペースト状態のものを印刷する場合は、高張力ステンレススクリーンを使用することができる。
スクリーン印刷のスキージは丸形、長方形、正方形いずれの形状であってもよく、またアタック角度(印刷時の版とスキージの角度)を小さくするために研磨スキージも使用することができる。その他の印刷条件等は従来公知の条件を適宜設計すればよい。
【0104】
導電性組成物の硬化方法は特に限定されないが、例えば、本発明の導電性組成物をスクリーン印刷により印刷後、加熱して乾燥することにより硬化することができる。
また、導電性組成物が架橋剤を含有する場合は、更に、加熱により架橋反応を行い硬化する。架橋剤を含有しない場合は、溶剤の十分な揮発のため、また、架橋剤を含有する場合は、溶剤の十分な揮発及び架橋反応のために、加熱温度は80~230℃、加熱時間としては10~120分とすることが好ましい。これにより、パターン状の導電層を得ることができる。パターン状導電層は、必要に応じて、導電パターンを被覆するように、絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては、特に限定されず、公知の絶縁層を適用することができる。
【0105】
導電層の膜厚は、求められる導電性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上100μm以下とすることができ、1μm以上50μm以下とすることが好ましい。
【0106】
<ストレッチャブル導電材>
本発明の導電性組成物の硬化物を、導電層として伸縮性基材上に備えることで、本発明ストレッチャブル導電材として使用することができる。ストレッチャブル導電材は導電性材料であり、導電層に本発明の導電性組成物の硬化物を用いることにより、製造時及び製品の使用時において伸縮性及び導電性を兼ね備える。
また、当該導電性組成物によれば、繰り返しの伸縮に伴う導電性の低下が抑制され、導電体の伸縮性基材への印刷性が向上し、前記導電体からなる導電層と、後述する伸縮性基材との密着性に優れたストレッチャブル導電材の製造が可能となる。
そして、当該導電性組成物を用いて製造されたストレッチャブル導電材は、平坦でない曲面部や可動部に追随可能な基材表面に用いた場合であっても、導電性の低下が抑制される。
【0107】
<伸縮性基材>
伸縮性基材は、伸縮時の破損又はひび割れに対する耐性を有する、天然材料又は合成材料からなり、伸縮性フィルム基材であることが好ましい。
【0108】
伸縮性基材は、23℃で100MPa未満のヤング率を有する基材であることが好ましい。23℃におけるヤング率は、50MPa未満であることが好ましく、10MPa未満であることがより好ましく、1MPa未満であることが更に好ましい。更に、伸縮性フィルム基材は、23℃で150%以上の引張破断伸度を有する基材が好ましい。23℃における引張破断伸度は、200%以上であることが好ましく、400%以上であることがより好ましい。伸縮性基材が23℃で100MPa未満のヤング率及び150%以上の引張破断伸度を有すると、伸縮時の破損又はひび割れが起こりにくく、ストレッチャブル導電材に適した基材として用いることが可能となる。
【0109】
伸縮性基材は、例えば、熱可塑性エラストマー、プラスチック、繊維、不織布、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロピレンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、エチレンゴム、プロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エポキシゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴムから選択でき、これら材料の2種以上からなる積層フィルムであってもよい。また、基材の形状は、板状、フィルム状等の平面状の他、曲面形状又は複雑な形状であってもよい。
【0110】
前記熱可塑性エラストマーは、例えばポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、塩化ビニル系、スチレン系ブロックポリマー、アクリル系ブロックポリマーが挙げられる。
【0111】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、及びポリイミドが挙げられる。
【0112】
伸縮性基材は、伸縮性の観点から、中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴム、アクリルゴム、エポキシゴムが特に好ましく、本発明の導電性組成物との密着性の観点から、シリコーンゴムが更に好ましい。
【0113】
伸縮性基材の厚みは特に制限されないが、例えば1~500μmとすることができる。また、10~100μm、20~50μmとしてもよい。伸縮性基材の厚みが上記範囲であると、基材の巻き取り性、加工性の点で優れる。一方、伸縮性基材が薄いと強度が不足する傾向がある。また、基材が厚すぎると柔軟性が悪く、基材が被着体の形状に追随しなくなる虞がある。
【0114】
また、必要に応じ、導電性組成物の印刷性を向上させる等の目的で、伸縮性基材にアンカーコート層を設け、当該アンカーコート層上に導電性組成物を印刷してもよい。アンカーコート層は、基材との密着性、更には導電性組成物との密着性が良好で成型時に伸縮性基材に追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーを必要に応じて添加してもよい。アンカーコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
【0115】
また更に必要に応じて、成形体表面の傷つき防止のため、伸縮性基材にハードコート層を設け、その反対の面に導電性組成物及び必要に応じて加飾層を印刷してもよい。ハードコート層は、伸縮性基材との密着性、更には表面硬度が良好で成型時に伸縮性基材に追従するものであれば、特に限定されず、また樹脂ビーズ等の有機フィラーや金属酸化物等の無機フィラーも必要に応じて添加してもよい。ハードコート層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の塗工方法にて塗布、乾燥、硬化して得ることができる。
【0116】
ストレッチャブル導電材は、支持体上に積層して積層体として用いてもよい。支持体は特に限定されないが、伸縮性基材の伸縮性を生かすために伸縮性材料であることが好ましい。具体例としては、伸縮性プラスチックフィルム、伸縮性繊維が例示できる。伸縮性繊維はテキスタイル生地でもよい。また、支持体に凹部を設け、この凹部に伸縮性導体を埋設してもよい。
【0117】
ストレッチャブル導電材と支持体の接合は、ストレッチャブル導電材の粘着性を利用して接合してもよいし、ラミネートにより接合してもよい。また、接着層、易接着層を介して接合することもできる。
【0118】
このようにして得られたストレッチャブル導電材は、それ自体が製品であってもよいし、部材として用いてもよい。ストレッチャブル導電材は、例えば、伸縮性配線、伸縮性電極として好適である。また、ストレッチャブル導電材は伸縮性電磁波シールド層、伸縮性放熱層等のフィルムとして利用できる。また、所望の形状の導電性を有する成形体としても用いることができる。
【0119】
<電子デバイス>
ストレッチャブル導電材は、電子デバイス中に備えることも好適である。ストレッチャブル導電材を備える電子デバイスとしては、身体やロボットに貼付するセンサー、衣服に内装するウエアラブルセンサー、生体情報取得デバイス、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル配線板、柔軟なトランスデューサ、屈曲性のあるモバイル機器、モータやアクチュエータ、スピーカ、バイブレータ、超音波発生装置等が挙げられる。
【実施例0120】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以降の説明において特に断りが無い場合には、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味するものとする。また、溶剤以外は不揮発分換算値である。
【0121】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びMw/Mnの測定]
GPC(商品名:GPCV-2000、日本ウォーターズ社製、カラム:TSKgel、α-3000、移動相:10mMトリエチルアミン/ジメチルホルムアミド溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から多分散度(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0122】
<エラストマー(A)の製造>
[アクリルトリブロック共重合体(a1)]
・後述する樹脂製造例1を用いた。
[アクリルトリブロック共重合体(a2)]
・後述する樹脂製造例2を用いた。
[アクリルランダム共重合体(a3)]
・後述する樹脂製造例3を用いた。
[シリコーン樹脂(a4)]
・信越化学工業(株)製の「KE―1800T-A/B」を用いた。
【0123】
(単量体)
MMA:メチルメタクリレート
nBA:n-ブチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0124】
(重合開始剤)
・BM1448:4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタンサンメチル(BORONMOLECULAR社製)(RAFT重合用)
・AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬社製)
【0125】
<樹脂製造例1:アクリルトリブロック共重合体(a1)の合成>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、RAFT開始剤としてメチル4-シアノ-4-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)ペンタノエートを2.0部と、AIBNを1部と、MMAを60部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)41部とを仕込み、80℃にて5時間反応させた。その後、50℃まで冷却した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)253部、BAを454部と、2-イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)を19部と、AIBNを0.1部とを仕込み、80℃で12時間反応させた。その後、50℃まで冷却した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部と、MMA60部と、AIBNを0.1部と、を仕込み、80℃にて5時間反応させた。その後50℃まで冷却した後、ブチルアミン28部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート300部を添加し、50℃にて1時間反応させ、IRにてイソシアナト基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認した。固形分が30%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加することにより、数平均分子量が100,000のアクリルトリブロック共重合体(a1)を得た。
【0126】
<樹脂製造例2:アクリルトリブロック共重合体(a2)の合成>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、RAFT開始剤としてメチル4-シアノ-4-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)ペンタノエートを2.0部と、AIBNを1部と、MMAを60部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)41部とを仕込み、80℃にて5時間反応させた。その後、50℃まで冷却した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)253部、BAを454部と、MOIを19部と、AIBNを0.1部とを仕込み、80℃で12時間反応させた。その後、50℃まで冷却した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部と、MMA60部と、AIBNを0.1部と、を仕込み、80℃にて5時間反応させた。その後、50℃まで冷却し、システアミン10部を添加し、50℃にて1時間反応させ、IRにてイソシアナト基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認した。固形分が30%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加することにより、数平均分子量が100,000のアクリルトリブロック共重合体(a2)を得た。
【0127】
<樹脂製造例3:アクリルランダム共重合体(a3)の合成>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコに、アセトン(沸点56℃)2000部を仕込み、徐々に昇温し56℃にて還流が開始した。そこに、ブチルアクリレート(BA)813部と、メチルメタクリレート(MMA)127部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)15部と、アゾイソブチロニトリル(AIBN)2部の混合液を約3時間かけて滴下した。滴下終了後1時間にAIBNを1部添加し、その後1時間ごとにAIBNを1部、を3回添加し、アセトンの還流温度でさらに3時間反応を行った。その後50℃まで冷却した後、洗浄、及び乾燥した。固形分が30%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加することにより、数平均分子量が146,000のアクリルランダム共重合体(a3)を得た。
【0128】
<導電性組成物の製造>
導電性微粒子、溶剤、伸縮性基材として以下のものを用いた。
<導電性微粒子(B)>
b1:タップ密度1.4g/cmの連鎖球状銀
b2: 50%平均粒子径が21.6μmの凝集銀
b3: 50%平均粒子径が6.0μmのフレーク状銀
b4: 50%平均粒子径が8.5μmのフレーク状銀
b5: 50%平均粒子径が7.7μmのフレーク状銀
<溶剤>
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル、沸点231℃
<伸縮性フィルム基材>
株式会社武田産業製 TG88-I 70/50 を使用した。
[分散条件]
d1:あわとり錬太郎 大気圧タイプ ARE-310 攪拌2000rpm 1min、脱泡2200rpm 0.5min
d2:あわとり錬太郎 大気圧タイプ ARE-310 攪拌2000rpm 15min、脱泡2200rpm 1.5min
d3:あわとり錬太郎 大気圧タイプ ARE-310 攪拌2000rpm 3minのプリ撹拌ののち、アイメックス社製 小型3本ロール 1Pass
d4:あわとり錬太郎 大気圧タイプ ARE-310 攪拌2000rpm 3minのプリ撹拌ののち、アイメックス社製 小型3本ロール 3Pass
d5:あわとり錬太郎 大気圧タイプ ARE-310 攪拌2000rpm 3minのプリ撹拌ののち、アイメックス社製 小型3本ロール 6Pass
d6:PRIMIX社製 T.K.ハイビスミックス 2P-03/1型
自転121rpm 公転50rpm 30min
【0129】
[実施例1:導電性組成物(C1)]
固形分30%の樹脂(a2)の溶液2.25部と、導電性フィラー(b1)2.295部と導電性フィラー(b3)0.405部とを上記の分散方法d2で混合することにより、導電ペーストを得た。
【0130】
[実施例2~8及び比較例1~6:導電性組成物(C2~C8、c1~c6)]
表1に示された導電ペースト処方、分散方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0131】
<ストレッチャブル導電材の製造>
続いて、上記基材に、実施例1~8、比較例1~6で製造した導電性組成物(C1)~(C8)、(c1)~(c6)を、以下に示す印刷条件によって印刷及び乾燥することで、幅20mm、長さ60mm、厚み10μmの四角形ベタ状及び線幅3mm、長さ60mm、厚み10μmの直線状のパターンを有する導電層を備えたストレッチャブル導電材をそれぞれ得た。
【0132】
[印刷条件]
・印刷機:SERIA SSA-PC250-IPP-L-08t12
・版: 線径23μmステンレス400mesh、開口率41%、枠サイズ550×650mm、乳剤厚10μm
・スキージ:硬度 80° 角度75° 印圧 15kgf 押し込み 1.5mm 速度 100mm/sec
・スクレッパ:角度 90°印圧 8kgf 押し込み 0.5mm 速度 100mm/sec
・クリアランス:2.5mm
・乾燥条件: 熱風乾燥オーブン 80℃、30分
【0133】
[粒子径測定条件]
400メッシュ・線径23μm・開口率41%のスクリーンメッシュ通過前・通過後の導電性組成物それぞれについて、導電性微粒子(B)の粒度分布はレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した。具体的な測定条件は以下の通りである。
なお、上記スクリーンメッシュ通過後の導電性組成物については、上記スクリーンメッシュを使用して印刷した後の印刷物パターンからすみやかにスパチュラ等を用いて導電性組成物を掻き取り、測定した。
装置:日機装株式会社 マイクロトラック MT3000II
測定溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SetZero時間:20
測定時間:60
透過性:透過
粒子屈折率:1.33
形状:非球形
溶媒屈折率:1.40
導電性組成物をスパチュラ等で銀粉の二次粒子が崩壊しないよう適度に撹拌した後速やかに、濃度指数DV値を0.015-0.020の範囲内、透過率TRを0.90-0.95の範囲内となるようにしたのち、2回のスキャンでの粒度分布形状が安定したことを確認したのち、粒度分布を測定し、粒度分布曲線を求めた。
当該粒度分布曲線の累積10%、95%の粒子径として算出された値をそれぞれr10、r95又はR95粒子径とした。
また、データ解析ビューより読み取った粒度分布曲線における頻度(%)の最大値をftop、その点での粒子径(μm)をrtopとした。
【0134】
<評価>
(体積抵抗値)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材の体積抵抗値を測定した。具体的には、上記実施例及び比較例で作製した、幅20mm、長さ60mm、厚み10μmの四角形ベタ状のストレッチャブル導電材を試験片として用いた。表面抵抗測定器(品番:ロレスタ(登録商標)AP MCP-T400、プローブ:ASPプローブ(4探針プローブ、三菱化学社製)を用い、温度が25℃及び相対湿度が50%の雰囲気中で、JIS K7194に準拠して得られた試験片の体積抵抗率を測定した。
初期状態について以下の基準により評価した。
+++:2.0×10-4Ω・cm未満
++:2.0×10-4Ω・cm以上、9.9×10-3Ω・cm未満
+:9.9×10-3Ω・cm以上、9.9×10-1Ω・cm未満
NG:9.9×10-1Ω・cm以上
【0135】
(繰り返し伸縮耐性)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材の20mm×60mmサイズのサンプルについて、その端部をテンシロン引張試験装置に固定して、25℃、相対湿度50%、速度4mm/sの速さで50%まで伸長し、その後2s保持し、そしてその後4mm/sの速さで除荷し、2s保持する伸縮サイクルを1,000回繰り返し、1,000回後の変化率を以下の式により算出した。
[変化率(%)]
=[(R1,000)-(R0)]÷[(R0)]×100
ここで、R1,000は1,000回繰り返した伸縮サイクル直後の抵抗値、R0は測定開始前の同フィルムを用いた抵抗値を示す。以下の基準により評価した。
+++:変化率が20%以下
++:変化率が20%を超えて、50%以下
+:変化率が50%を超えて、100%以下
NG:変化率が100%を超える
【0136】
(基材密着性)
各実施例及び比較例に係るストレッチャブル導電材に形成された、幅20mm、長さ60mmの四角形ベタ状の導電層に対し、ガードナー社製1mm間隔クロスカットガイドを使用してカッターナイフで当該導電層を貫通するように10x10マスの碁盤目状の切れ込みを入れ、ニチバン社製セロハンテープを貼り付け噛み込んだ空気を抜いてよく密着させたのち、垂直に引きはがした。塗膜の剥離度合いをASTM-D3519規格に従って下記の基準で評価した。
+++:評価5B~4B、かつ密着性が良い
++:評価上は5B~4Bであるが、塗膜の表面側の一部が凝集破壊する。
+:評価3B、塗膜の一部が切り込み線に沿って界面剥離する。
NG:評価2B以下、密着性が悪い
【0137】
【表1】
【0138】
本発明の実施例1~8の結果から、本発明により、導電性組成物を分散・塗工し印刷物にする工程を経て印刷物を作製した際にも、伸縮時にクラックの発生や導電パスの断線を効果的に抑制することにより、導電性、繰り返し伸縮耐性及び密着性に優れた導電性組成物及びストレッチャブル導電材が得られた。これらは上記特性により、電子デバイス用途での利用に好適である。