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特開2024-89997熱応答性液晶エラストマー用組成物および熱応答性液晶エラストマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024089997
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱応答性液晶エラストマー用組成物および熱応答性液晶エラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20240627BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08F299/06
C08G18/08 038
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205604
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正本 大明
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 裕希
【テーマコード(参考)】
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG04
4J034DG16
4J034FA01
4J034FA04
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB07
4J034HB12
4J034HB15
4J034HB20
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC26
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034MA26
4J034QB14
4J034QB15
4J127AA03
4J127AA07
4J127BA031
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD441
4J127BD471
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF271
4J127BF27X
4J127BF621
4J127BF62Y
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG131
4J127BG13X
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127CA01
4J127DA38
4J127DA66
4J127DA68
4J127FA00
4J127FA01
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマーの原料となる熱応答性液晶エラストマー用組成物、および優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマーを提供すること。
【解決手段】活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物である光架橋性液晶ポリマー、光反応開始剤およびセルロースナノファイバーを含有する熱応答性液晶エラストマー用組成物、および該組成物を原料として製造された、優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマー。組成物の全量を100質量%としたとき、前記セルロースナノファイバーの含有量が0.1~3.0質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物である光架橋性液晶ポリマー、光反応開始剤およびセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする熱応答性液晶エラストマー用組成物。
【請求項2】
組成物の全量を100質量%としたとき、前記セルロースナノファイバーの含有量が0.1~3.0質量%である請求項1に記載の熱応答性液晶エラストマー用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の熱応答性液晶エラストマー用組成物中の光架橋性液晶ポリマーを架橋してなる熱応答性液晶エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応答性液晶エラストマー用組成物および熱応答性液晶エラストマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子構造内にメソゲン基を有する液晶ポリマーは、液晶(メソゲン基)の配向度の変化に伴って物性が変化する。このような性質に着目し、液晶ポリマーをエラストマーとして様々な用途で利用する試みがなされている。
【0003】
例えば、液晶ポリマーとして、ジイソシアネート成分と、高分子量ポリオール成分と、メソゲンジオールとの反応によって得られる液晶ポリウレタンエラストマーがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-115036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の液晶ポリウレタンエラストマーは、本出願人が開発したものであり、液晶性発現温度領域でゴム弾性を有するものである。この液晶ポリウレタンエラストマーは、従来の液晶ポリウレタンと比べて、液晶性発現温度を低下させたものである。
【0006】
液晶エラストマーを得るためには、液晶性発現温度領域で液晶エラストマーの原材料を架橋(硬化)させる必要がある。この点に関し、特許文献1の液晶エラストマーは、上述のとおり、液晶性発現温度を低下させるように設計されたものであり、そのための手段として、イソシアネート成分として3官能以上のイソシアネートを使用するとともに、高分子量ポリオール成分として水酸基数が3以上の高分子量ポリオール成分を使用している。このように、架橋可能な官能基を多く含む原材料を使用することで、熱成形加工時に液晶相が発現した状態を維持したまま原材料間で架橋反応が進行し、ゴム弾性を備えた液晶エラストマーを得ることができる。
【0007】
ところが、熱成形加工時に架橋反応を進行させる方法(すなわち、熱硬化法)では、架橋の進行に伴ってポリマーの溶融粘度が上昇するため、反応の制御が困難であった。また、成形機の内部で液晶ポリマーの原材料が早期に硬化してしまう虞もあった。このため、液晶ポリマーの工業的生産を行うにあたっては、ポリマーの溶融粘度の上昇や原材料の早期の硬化によって連続生産が妨げられないような改善策が求められている。
【0008】
また、液晶エラストマーの用途展開を考えた場合、近年では特に多少の伸びにも対応し得る強度(例えば100%モジュラス)を高めることが重要になってきているが、これまでの液晶エラストマーでは、この点で改善の余地があることが判明した。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマーの原料となる熱応答性液晶エラストマー用組成物、および優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物である光架橋性液晶ポリマー、光反応開始剤およびセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする熱応答性液晶エラストマー用組成物(1)に関する。
【0011】
本発明に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物は、少なくとも光架橋性液晶ポリマー、光反応開始剤およびセルロースナノファイバーを含有する。光架橋性液晶ポリマーは、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物であり、かかる光架橋性液晶ポリマーは未架橋である。しかしながら、光架橋性液晶ポリマーに組み込まれた、活性水素基を有する光重合性基含有化合物は、光反応開始剤存在下、光照射により架橋し得る。本発明に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物は、光架橋性液晶ポリマーに加えて、さらにセルロースナノファイバーを含有する。したがって、例えば熱応答性液晶エラストマー用組成物を所望の形状に延伸成形した後、光照射した場合、光架橋性液晶ポリマーおよびセルロースナノファイバーが配向した状態で、セルロースナノファイバーと絡み合いながら光架橋性液晶ポリマーが架橋(硬化)する。したがって、本発明に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物を原料として製造された熱応答性液晶エラストマーは、優れた強度を示す。
【0012】
上記熱応答性液晶エラストマー用組成物(1)において、組成物の全量を100質量%としたとき、前記セルロースナノファイバーの含有量が0.1~3.0質量%である熱応答性液晶エラストマー用組成物(2)が好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記範囲内であると、熱応答性液晶エラストマー用組成物の加工性を維持しつつ、得られる熱応答性液晶エラストマーの強度が特に優れるため好ましい。
【0013】
また、本発明は前記(1)または(2)の熱応答性液晶ポリマー用組成物中の光架橋性液晶ポリマーを架橋してなる熱応答性液晶エラストマーに関する。前記のとおり、本発明に係る熱応答性液晶エラストマーは、液晶性とゴム弾性とを示しつつ、優れた強度を示す。なお、本発明に係る熱応答性液晶エラストマーは、融点が存在せず、また、液晶性を発現している温度域では、固体状態を維持している。一方、所謂スーパーエンジニアリングプラスチックとして知られる液晶ポリマーは、液晶性を発現する温度では液体状態である。したがって、Tg以下の温度でないと固体にはならない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物は、少なくとも光架橋性液晶ポリマーおよびセルロースナノファイバーを含有する。かかる光架橋性液晶ポリマーは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物である。以下、各構成について説明する。
【0015】
[セルロースナノファイバー]
セルロースナノファイバーは木材から得られる木材繊維(パルプ)をナノオーダーにまで高度にナノ化(微細化)したものであり、植物繊維由来であることから、生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、軽量であり、弾性率は高強度繊維で知られるアラミド繊維並に高い。セルロースナノファイバーはグルコースの重合体であるため、多くのヒドロキシ基が繊維表面に存在するため、一般的には親水性を示す。本発明において使用するセルロースナノファイバーについては、必要に応じて、セルロースナノファイバー中のグルコース単位が有するヒドロキシル基を親油基に変換することにより、疎水性を示すセルロースナノファイバーを使用してもよい。
【0016】
熱応答性液晶エラストマーの強度をより高めるために、本発明において使用するセルロースナノファイバーのメジアン径は、例えば5~20μmのものが好ましく、繊維長は、例えば5~50μmのものが好ましく、繊維径は、例えば5~50nmのものが好ましい。また、セルロースナノファイバーのアスペクト比は、例えば100~1000倍のものが好ましい。
【0017】
熱応答性液晶エラストマー用組成物の加工性を維持しつつ、得られる熱応答性液晶エラストマーの強度を向上するために、熱応答性液晶エラストマー用組成物中のセルロースナノファイバーの含有量は、組成物の全量を100質量%としたとき、0.1~3.0質量%であることが好ましく、0.5~2.5質量%であることがより好ましい。
【0018】
[メソゲン基含有化合物]
メソゲン基含有化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用可能である。
【化1】
【0019】
上記一般式(1)において、Xは活性水素基であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、-N=N-、-CO-、-CO-O-、または-CH=N-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または-O-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または炭素数1~20のアルキレン基である。ただし、Rが-O-であり、且つRが隣接する結合基の一部をなす単結合であるものを除く。)なお、「隣接する結合基の一部をなす単結合」とは、当該単結合が隣接する結合基の一部と共有されている状態を意味する。例えば、上記一般式(1)において、Rが隣接する結合基の一部をなす単結合である場合、単結合であるRは両側のベンゼン環と共有された状態となり、当該両側のベンゼン環とともにビフェニル構造を形成する。Xとしては、例えば、OH、SH、NH、COOH、二級アミンなどが挙げられる。メソゲン基含有化合物の配合量は、光架橋性液晶ポリマーの原材料全体の中で、20~80質量%、好ましくは40~70質量%となるように調整される。メソゲン基含有化合物の配合量が20質量%未満の場合、生成したポリマーに液晶性が発現し難くなる。メソゲン基含有化合物の配合量が80質量%を超える場合、液晶相-等方相間の相転移温度(Ti)が高くなり、常温を含む低温領域でポリマーを成形することが困難となる。
【0020】
メソゲン基含有化合物には、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用することが好ましい。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドは、光架橋性液晶ポリマーにおける液晶相の発現温度を低下させるように機能するため、メソゲン基含有化合物にアルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを併用して生成した光架橋性液晶ポリマーは、常温での実用性に優れた製品となり得る。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドを使用することができる。上掲のアルキレンオキシドは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。スチレンオキシドについては、ベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有するものでもよい。アルキレンオキシドは、上掲のアルキレンオキシドと、上掲のスチレンオキシドとを混合したものを使用することも可能である。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの配合量は、メソゲン基含有化合物1モルに対して、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドが1~10モル、好ましくは2~6モル付加されるように調整される。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの付加モル数が1モル未満の場合、光架橋性液晶ポリマーの液晶相が発現する温度範囲を十分に低下させることが困難となり、そのため、無溶媒で且つ液晶相が発現した状態で液晶ポリマー(液晶ポリウレタン)を連続成形することが困難となる。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの付加モル数が10モルを超える場合、光架橋性液晶ポリマーの液晶相が発現し難くなる虞がある。
【0021】
[イソシアネート化合物]
イソシアネート化合物は、例えば下記に示すジイソシアネート化合物を使用することができる。ジイソシアネート化合物を例示すると、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、およびm-キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、および1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;並びに1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。例示したジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。なお、本発明ではイソシアネート化合物として3官能以上のイソシアネート化合物を併用しても良いが、得られる液晶ポリマーの光架橋性を確保するため、使用するイソシアネート化合物の全量を100質量%としたとき、ジイソシアネート化合物の割合は98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、略100質量%であることがさらに好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物を例示すると、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリイソシアネート、およびテトライソシアネートシランなどのテトライソシアネートが挙げられる。また、多量化ジイソシアネートを用いてもよい。多量化ジイソシアネートとは、3つ以上のジイソシアネートが付加することにより多量化したイソシアネート変性体又はそれらの混合物である。イソシアネート変性体としては、例えば、1)トリメチロールプロパンアダクトタイプ、2)ビュレットタイプ、3)イソシアヌレートタイプなどが挙げられる。これらのうち、特にイソシアヌレートタイプを用いることが好ましい。
【0022】
光架橋性液晶ポリマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、イソシアネート化合物の割合は20~70質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。イソシアネート化合物の配合量が20質量部未満である場合、ウレタン反応による高分子化が不十分となるため、光架橋性液晶ポリマーを連続成形することが困難となる。一方、イソシアネート化合物の割合が70質量部を超える場合、光架橋性液晶ポリマーの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、光架橋性液晶ポリマーの液晶性が低下する。
【0023】
なお、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、メソゲン基含有化合物が有する水酸基などの活性水素基、および光重合性基含有化合物(A)が有する水酸基などの活性水素基と反応し得る。メソゲン基含有化合物および光重合性基含有化合物が有する活性水素基の理論量に対するイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の理論量であるNCO INDEX(NCO/OH)は、0.95~1.20であることが好ましく、1.00~1.10であることがより好ましい。
【0024】
[光重合性基含有化合物]
活性水素基を有する光重合性基含有化合物は、例えば、アクリロイル基含有化合物、メタクリロイル基含有化合物、アリル化合物を使用することができる。
【0025】
活性水素基を有する光重合性基含有化合物として、アクリロイル基含有化合物を例示すると、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、β-カルボキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。メタクリロイル基含有化合物を例示すると、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンジメタクリレート、ビスフェノールA PO2mol付加物ジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネートなどが挙げられる。アリル基含有化合物を例示すると、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどが挙げられる。
【0026】
光架橋性液晶ポリマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、活性水素基を有する光重合性基含有化合物の割合は0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~7質量部であることがより好ましい。光重合性基含有化合物の割合が0.1質量部未満の場合、原材料に光照射を行っても十分に硬化しないため、生成したポリマーは熱応答性を発現し難くなる。光重合性基含有化合物の割合が10質量部を超える場合、光照射後のポリマー中の架橋密度が高くなり過ぎるため、この場合も生成したポリマーは熱応答性を発現し難くなる。
【0027】
[その他の原材料]
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物とに加え、光架橋性液晶ポリマーの原材料として、活性水素基含有化合物を使用してもよい。活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオール化合物、アミン化合物が挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、meso-エリトリトール、ペンタエリスリトール、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース、2,2,6,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどが挙げられる。アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジエチレントリアミン、モノエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、およびモノプロパノールアミンなどが挙げられる。上掲の各活性水素基含有化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0028】
また、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物とを反応させる場合、当業者に公知のウレタン重合触媒を使用してもよい。かかる重合触媒としては、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ―2-エチルへキソキシド、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタン触媒、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどの有機ジルコニウム触媒、ナフテン酸亜鉛などの有機亜鉛触媒、ジブチル錫ジラウレートやオクチル酸錫などの有機錫系触媒、トリエチレンジアミンおよびその誘導体、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第3級アミン系触媒、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカルボン酸金属塩触媒、イミダゾール系触媒などが挙げられる。これらの中でも、トリエチレンジアミンおよびその誘導体の使用が好ましい。
【0029】
本発明に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物は、少なくとも光架橋性液晶ポリマーおよびセルロースナノファイバーに加え、光反応開始剤を含有する。
【0030】
[光反応開始剤]
光反応開始剤は、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフォンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン/ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル/オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェート(1-)/プロピレンカーボネート、トリアリールスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オキシムスルホネート系光酸発生剤を使用することができる。光反応開始剤の割合は、光架橋性液晶ポリマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましい。光反応開始剤の配合量が0.1質量部未満の場合、光照射時に均一に重合反応が進行しないため、あるいは硬化が不十分となるため、生成したエラストマーは熱応答性を発現し難くなる。光反応開始剤の配合量が10質量部を超える場合、生成したエラストマー中のメソゲン基の含有量が減少するため、液晶相が発現し難くなる。光反応開始剤は、200~600nmに吸収波長を有するものが好ましい。光反応開始剤が上記範囲の吸収波長を有していれば、光架橋性液晶ポリマーまたはその原材料の透明度(可視光の透過率)が低いものであっても、光反応開始剤が光を吸収し、確実に光架橋反応を進行させることができる。
【0031】
光架橋性液晶ポリマーは、好適には光反応開始剤存在下、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物とを反応させることにより製造することができる。本発明では、光反応開始剤存在下で光架橋性液晶ポリマーを製造することにより得た製造物に、セルロースナノファイバーを添加、混合することにより得られたものを熱応答性液晶エラストマー用組成物として使用することができる。
【0032】
光架橋性液晶ポリマーを製造する際の製造条件としては、例えば光反応開始剤と共に、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との3者を押出成形機に投入し、例えば60~150℃に加熱した状態で加熱溶融しつつ、前記3者を反応させる方法が挙げられる。
【0033】
反応物である光架橋性液晶ポリマーおよびセルロースナノファイバー、さらに好適には光反応開始剤を含む、加熱溶融された製造物(熱応答性液晶エラストマー用組成物)は、冷却後、粉砕してペレット状に成形しておき、ペレット化した原材料を押出成形機を用いて所定の形状に成形した後、液晶相を発現する温度領域(すなわち、ガラス転移温度(Tg)以上かつ相転移温度(Ti)以下)で延伸しながら押出成形してもよい。あるいは、好適には光反応開始剤存在下、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物とを加熱下で反応させることにより得られた組成物にセルロースナノファイバーを添加・混合して熱応答性液晶エラストマー用組成物とし、つぎに液晶相を発現する温度領域(すなわち、ガラス転移温度(Tg)以上かつ相転移温度(Ti)以下の温度領域)で延伸しながら押出成形してもよい。いずれにせよ、メソゲン基含有化合物に含まれるメソゲン基が延伸方向に沿うように動くため、高度な配向性を有する熱応答性液晶エラストマー用組成物の成形体を製造することができる。
【0034】
前記で得られた、高度な配向性を有する熱応答性液晶エラストマー用組成物の成形体を適切な形状に成形して冷却し、延伸状態を保ったまま波長200~600nm光を照射すると、配向性を維持したまま原材料間で架橋反応が進行し、かつセルロースナノファイバーが同方向に配向した状態で分散することにより、低温での液晶相の発現性と弾性とを兼ね備え、さらに優れた強度を示す熱応答性液晶エラストマーが完成する。このようにして製造された熱応答性液晶エラストマーは、低温領域ではメソゲン基が延伸方向に配向しているが、加熱して相転移温度(Ti)を上回るとメソゲン基の配向が崩れて(不規則となって)延伸方向に収縮し、冷却して相転移温度(Ti)を下回るとメソゲン基の配向が復活して延伸方向に伸張するという特異的な熱応答性挙動を示す。
【0035】
ちなみに、熱応答性液晶エラストマーの配向性は、メソゲン基の配向度によって評価することができる。配向度の値が大きいものは、メソゲン基が一軸方向に高度に配向している。配向度は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いた1回全反射測定法(ATR)により、芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度(0°、90°)、およびメチル基の対称変角振動の吸光度(0°、90°)を測定し、これらの吸光度をパラメータとする以下の計算式に基づいて算出される。
配向度=(A-B)/(A+2B)
A:0°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/0°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
B:90°で測定したときの芳香族エーテルの逆対称伸縮振動の吸光度/90°で測定したときのメチル基の対称変角振動の吸光度
【0036】
熱応答性液晶エラストマーが有意な伸縮性を発現するためには、メソゲン基の配向度が0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
【0037】
前記熱応答性液晶エラストマーは、アクチュエータ、フィルターなどの分野において利用できる可能性がある。
【実施例0038】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0039】
<熱応答性液晶エラストマーの強度>
熱応答性液晶エラストマー用組成物の樹脂ペレットを、80℃に設定した圧縮成型機(品名:NSF-37、株式会社神藤金属工業所製)を用い、0.5mmの樹脂シートに成形した。このシートをダンベル状8号形(JIS K 6251)に打ち抜き、7倍延伸したものに光照射を行い光架橋反応させ、熱応答性液晶エラストマーを作製した。作製した熱応答性液晶エラストマー(幅:1.5mm、厚さ:0.2mm)を、オートグラフ(品名:AG-X、株式会社島津製作所製)で引張速度を135mm/min、標線間距離70mmとし、その他JIS K 6251に従って引張試験を行う)ことで、熱応答性液晶エラストマーの50%モジュラス(M50)、100%モジュラス(M100)および弾性率を測定した。評価は、比較例1のM50、M100、および弾性率の値を100として指数評価により行った。数値が大きいほど、のM50、M100、および弾性率が高く、熱応答性液晶エラストマーの強度に優れることを意味する。
【0040】
(光架橋性液晶ポリマーの製造例および熱応答性液晶エラストマー用組成物の製造例)
実施例1
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物として式(1)のRが単結合であるBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、および溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを2モルのBH6に対して5当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N-ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの合成スキームを式(3)に示す。なお、式(3)中に示したメソゲンジオールAは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。
【0041】
【化2】
【0042】
次に、メソゲンジオールA、イソシアネート化合物として1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(三井化学社製)、活性水素基を有する光重合性基含有化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製)、光反応開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(TPO)(IGM resins社製)を表1に記載の割合で混合した。これらを撹拌しながら80℃で加熱溶融し、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、光重合性基含有化合物とを反応させることにより、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物と、活性水素基を有する光重合性基含有化合物との反応物(以下、単に「反応物」ともいう)を製造した。得られた反応物と親水性のセルロースナノファイバーであるセルロースナノファイバー(スギノマシン社製、メジアン径7~12μm)とを、ラボプラストミル(品名:4C150、株式会社東洋精機製作所製)で70℃、回転速度7rpm、攪拌時間15分間の条件で混合することにより、熱応答性液晶エラストマー用組成物を製造し、次いで冷却後、プラスチック粉砕機(品名:ZI-420、株式会社ホーライ製)で粉砕して、実施例1に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物の樹脂ペレットを製造した。
【0043】
実施例2~5、比較例1
セルロースナノファイバーの種類ならびに配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5および比較例1に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物の樹脂ペレットを製造した。
【0044】
(熱応答性液晶エラストマーの製造例)
実施例1~5および比較例1に係る熱応答性液晶エラストマー用組成物の樹脂ペレットを、80~120℃に設定した単軸押出機(品名:SZW25GT-24MG-STD、株式会社テクノベル製)に投入し、厚み1.0mmの樹脂シートに成形した。この樹脂シートを15℃に設定した冷却ロールに通してガラス転移温度(Tg)以上且つ相転移温度(Ti)以下に冷却し、引取りロールで巻き取った。このとき、冷却ロールと引取りロールとの間に回転差を付けることにより、樹脂シートを1.5~10倍に延伸した。さらに、冷却ロールと引取りロールとの間に卓上型UV硬化装置(品名:アイminiグランテージ(ESC-1511U)、アイグラフィックス株式会社製)を設置し、延伸された樹脂シートに高圧水銀ランプまたはメタルハライドランプを光源とした光を照射し、光架橋(硬化)された実施例1~5および比較例1の熱応答性液晶エラストマーを得た。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から、実施例1~5に係る熱応答性液晶エラストマーは強度に優れることがわかる。