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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090006
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20240627BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B60C5/00 G
B60C5/14 Z
B60C11/01 A
B60C11/03 300D
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205621
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB12
3D131BC05
3D131BC23
3D131BC25
3D131BC31
3D131CB11
3D131DA09
3D131DA33
3D131DA34
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB48U
3D131EC01Y
3D131EC12V
3D131EC12X
3D131GA03
(57)【要約】
【課題】タイヤ寿命が向上した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例である空気入りタイヤ1は、トレッドと、一対のサイドウォールと、一対のビードと、を備え、トレッドのタイヤ径方向内側で一対のビードの間に掛け渡されたカーカスと、カーカスのタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナーゴムとを備え、インナーライナーゴムは、トレッドからサイドウォールにかけてのバットレス部に、他の部分よりも厚みが大きい肉厚部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドと、一対のサイドウォールと、一対のビードと、を備える空気入りタイヤであって、
前記トレッドのタイヤ径方向内側で前記一対のビードの間に掛け渡されたカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナーゴムとを備え、
前記インナーライナーゴムは、前記トレッドから前記サイドウォールにかけてのバットレス部に、他の部分よりも厚みが大きい肉厚部を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記肉厚部の厚みT1と前記他の部分の厚みT2は、2≦T1/T2≦3の関係を満たす、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
さらに、前記トレッドと前記カーカスとの間にベルトを備え、
前記ベルトに含まれ、前記カーカスに最も近い第1ベルトと、前記肉厚部との重なり代が10mm以上30mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記肉厚部の下端は、タイヤ最大幅位置からタイヤ径方向内側に10mm以上30mm以下の範囲に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記カーカスは、3枚のカーカスプライから構成される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
さらに、前記バットレス部の外表面にサイドリブを備える、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドは、タイヤ軸方向に延びる主溝と、接地端において、前記主溝同士を連結する副溝と備える、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特にタイヤ寿命が向上した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荒れた路面を走行するなどにより、外表面に傷が生じてバーストに至る場合がある。特許文献1には、バットレス部とビード部に該当する部位において、カーカスの内側に補強コードを有する空気入りタイヤが開示されている。特許文献1には、バットレス部とビード部に該当する部位を補強コードで補強することにより、乗り心地性能や騒音・振動性能の悪化を抑制しつつ、ショックバースト性能の向上を図ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5011869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空気入りタイヤの損傷は、外表面からだけでなく、内表面からも発生することがある。本発明者らが鋭意検討した結果、釘踏み等によりタイヤの内圧が低下した状態で車両を走行させると、タイヤの内表面で発生した損傷が外表面まで進展し、バースト発生に至る恐れがあることが判明した。内圧が低下することで、荷重がかかった際にトレッド面がタイヤ内側につぶれるように折れ曲がり、サイドウォールとトレッドに位置するインナーライナー同士が接触し擦れあって損傷が発生すると推察される。近年、環境意識の高まりにより、タイヤ寿命の向上が益々求められており、特許文献1に開示された技術は、タイヤの長寿命化について未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、タイヤ寿命が向上した空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドと、一対のサイドウォールと、一対のビードと、を備え、トレッドのタイヤ径方向内側で一対のビードの間に掛け渡されたカーカスと、カーカスのタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナーゴムとを備え、インナーライナーゴムは、トレッドからサイドウォールにかけてのバットレス部に、他の部分よりも厚みが大きい肉厚部を有することを特徴とする。
【0007】
内圧低下によるインナーライナー同士の接触はバットレス部で発生するため、インナーライナーゴムのバットレス部に対応する部位を肉厚にすることで、タイヤの内表面で発生した損傷がタイヤの外表面に到達するまでの時間を長くして、タイヤ寿命を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ寿命に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの一部を示す斜視図である。
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の一部を示す斜視図であって、タイヤの内部構造を併せて図示している。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール11と、ホイールのリムと接触される一対のビード12とを備える。トレッド10、サイドウォール11、及びビード12は、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドウォール11、及びビード12は、空気入りタイヤ1の左右の側面を形成している。
【0012】
空気入りタイヤ1は、カーカス13、ベルト14、キャッププライ15、及びインナーライナーゴム16を備える。カーカス13は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐える空気入りタイヤ1の骨格を形成する。カーカス13は、トレッド10のタイヤ径方向内側で一対のビード12の間に掛け渡され、ビード12でタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。ベルト14は、カーカス13のタイヤ径方向外側に配置される補強帯であり、カーカス13を強く締めつけて空気入りタイヤ1の剛性を高める。ベルト14は、例えば、ゴムで被覆されたスチールコードにより構成されている。キャッププライ15は、トレッド10を構成するトレッドゴムとベルト14の間に配置されている。キャッププライ15は、ベルト14を補強する機能を有し、例えば、有機繊維コードにより構成されている。インナーライナーゴム16は、カーカス13のタイヤ径方向内側に配置されたゴム層であって、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する。
【0013】
空気入りタイヤ1は、ビードコア12aと、ビードフィラー12bとを備える。ビードコア12a及びビードフィラー12bは、左右両側のビード12にそれぞれ設けられている。ビードコア12aは、束ねられた鋼線をゴムで被覆したリング状の部材である。ビードフィラー12bは、硬質のゴムで構成され、ビード12の剛性を高める機能を有する。ビードフィラー12bは、ビードコア12aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0014】
空気入りタイヤ1は、さらに、トレッド10からサイドウォール11にかけてのバットレス部18の外表面に形成されたサイドリブ19を備える。サイドリブ19は、タイヤ軸方向外側に向かって突出し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドリブ19は、障害物等からサイドウォール11を保護する機能を有する。
【0015】
トレッド10には、接地端Eが存在する。本実施形態では、接地端Eは、トレッド10のタイヤ軸方向両端に位置する。本明細書において、接地端Eとは、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重(最大負荷能力)の88%の負荷を加えたときに、平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端を意味する。
【0016】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0017】
トレッド10は、タイヤ赤道CLを挟むように形成され、タイヤ周方向に延びる3本の周方向主溝20と、タイヤ軸方向に延びる複数の軸方向主溝21とを有する。なお、周方向主溝20の本数は、この例に限定されない。また、軸方向主溝の本数は、例えば、40本~70本である。タイヤ赤道CLとは、タイヤ軸方向中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。主溝20,21は、トレッド10と路面の間に存在する雨水等を除去する排水路として機能する。
【0018】
3本の周方向主溝20は、例えば、互いに略同じ深さを有する。ここで、周方向主溝20の深さとは、トレッド10の上面から溝底面までの距離を意味する。周方向主溝20の深さは、例えば、タイヤ周方向全周において、略同じである。
【0019】
複数の軸方向主溝21は、例えば、後述するストーンエジェクタ35が形成された部位を除き、互いに略同じ深さを有する。軸方向主溝21の深さとは、周方向主溝20の深さと同様に、トレッド10の上面から溝底面までの距離を意味する。周方向主溝20の深さは、例えば、2つの接地端Eの間において、略同じである。また、周方向主溝20の深さと周方向主溝20の深さは、互いに略同じであってもよい。周方向主溝20及び軸方向主溝21の断面形状は、特に限定されないが、例えば、略矩形である。
【0020】
トレッド10は、周方向主溝20及び軸方向主溝21により区画された複数の陸部を有する。陸部は、タイヤ径方向外側に向かって突出した突出部である。本実施形態では、トレッド10は、陸部として、2本の周方向主溝20の内側に形成されたセンターブロック30と、2本の周方向主溝20の外側に形成されショルダーブロック31を有する。トレッド10は、平面視において、タイヤ赤道CLに対して右側と左側に分けた場合に、右側と左側が、互いに点対称の形状を有している。また、センターブロック30とショルダーブロック31の幅は、略同じである。
【0021】
センターブロック30は、トレッド10の軸方向中央部において、タイヤ周方向に略等間隔に形成されている。センターブロック30は、タイヤ赤道CL近傍を周方向に延びる1本の周方向主溝20によって、タイヤ軸方向で2つのブロック30a,30bに分割されている。この一対のブロック30a,30bは、軸方向主溝21に沿って形成されており、平面視において、タイヤ周方向に対して約45°傾斜して並んでいる。
【0022】
ショルダーブロック31は、トレッド10の軸方向両側において、タイヤ周方向に略等間隔に形成されている。ショルダーブロック31は、軸方向主溝21に沿って形成されており、平面視において、タイヤ軸方向に対して約5°傾斜している。
【0023】
トレッド10は、ショルダーブロック31の接地端Eにおいて、軸方向主溝21同士を連結する副溝25を備える。これにより、タイヤの排水性が向上する。副溝25は、タイヤ周方向に並ぶショルダーブロック31の1つおきに、タイヤ周方向に略平行に形成されている。副溝25の幅は、主溝20,21と同程度であり、副溝25の深さは、主溝20,21よりも浅い。
【0024】
トレッド10は、ショルダーブロック31の間にストーンエジェクタ35を有する。ストーンエジェクタ35は、軸方向主溝21の底面の幅方向略中央から略垂直に立ち上がった薄板形状を有する。ストーンエジェクタ35は、路面の石等の障害物から軸方向主溝21の底面を保護する機能を有する。ストーンエジェクタ35の高さは、軸方向主溝21の深さよりも小さい。即ち、ストーンエジェクタ35は、トレッド10の上面まで到達しない。
【0025】
ストーンエジェクタ35は、切り込みを有し、2つの部位に分割される。この2つの部位は、いずれも、平面視において、略矩形形状を有する。なお、ストーンエジェクタ35の形状は、この例に限定されず、例えば、切り込みを有しなくてもよい。
【0026】
図1に示すトレッド10は、例えば、レース用タイヤのトレッドとして好適である。レース用タイヤは、路面とのトラクションを高めるために、故意に空気圧が低く設定される場合がある。
【0027】
センターブロック30及びショルダーブロック31には、細溝及びサイプの少なくとも一方が形成されていてもよい。ここで、細溝とは、主溝20,21よりも幅が細い溝であり、サイプとは、細溝よりもさらに幅が細い細線状の溝である。一般的には、溝幅が1.0mm以下の溝がサイプと定義される。細溝及びサイプは、トラクション性能及び操縦安定性の向上に寄与する。
【0028】
トレッド10の構成は図1に示す例に限定されない。トレッド10は、例えば、センターブロックとショルダーブロックの間にメディエイトブロックを有してもよい。また、センターブロック30及びショルダーブロック31の代わりに、タイヤ周方向に陸部が連続したセンターリブ及びショルダーリブが設けられていてもよい。
【0029】
次に、図2を参照しつつ、インナーライナーゴム16の構成、及び、バットレス部18におけるインナーライナーゴム16と空気入りタイヤ1の他の部材との位置関係について詳説する。図2は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の断面図である。なお、図2において、主溝20,21の記載は省略している。また、タイヤ最大幅位置Wは、空気入りタイヤ1の外表面において最もタイヤ幅方向外側の端の位置を意味する。タイヤ最大幅位置Wは、空気入りタイヤ1を正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態のときに、空気入りタイヤ1の外表面のプロファイルラインでタイヤ幅方向最大となる位置である。プロファイルラインは、サイドウォール11のうち、リムプロテクター52などの突起を除いたサイドウォール本体の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0030】
カーカス13は、3枚のカーカスプライから構成される。図2において、3枚のカーカスプライは、ビード12での折り返しにおける内側から順に、第1カーカスプライ13a、第2カーカスプライ13b、及び第3カーカスプライ13cで表される。第1カーカスプライ13aは、ビード12で折り返され、第1カーカスプライ13aの端が、タイヤ最大幅位置Wよりもタイヤ径方向外側に位置する。第2カーカスプライ13bは、第1カーカスプライ13aに重ねて配置され、ビード12で折り返されず、第2カーカスプライ13bの端が、タイヤ最大幅位置Wよりもタイヤ径方向内側に位置する。第3カーカスプライ13cは、第2カーカスプライ13bに重ねて配置され、ビード12で折り返され、第3カーカスプライ13cの端が第1カーカスプライ13aの端よりもタイヤ径方向外側に位置する。
【0031】
ベルト14は、カーカス13側から順に、第1ベルト14a、及び第2ベルト14bを含む。タイヤ軸方向において、第2ベルト14bの両端は、第1ベルト14aの両端よりもタイヤ軸方向内側に位置し、第1ベルト14a及びキャッププライ15に挟まれている。
【0032】
キャッププライ15は2枚のプライから構成されている。キャッププライ15を構成する2枚のプライの両端は略揃っており、バットレス部18まで延びている。キャッププライ15の両端は、第1ベルト14aの両端よりもタイヤ軸方向外側に位置する。
【0033】
図2に示すカーカス13、ベルト14、及びキャッププライ15の構成は、例えば、レース用タイヤの構成として好適である。なお、カーカス13、ベルト14、及びキャッププライ15の構成は図2に示す例に限定されない。例えば、カーカスプライの枚数は、3枚よりも多くてもよいし、3枚よりも少なくてもよい。ベルト14の枚数は、4枚よりも多くてもよいし、4枚よりも少なくてもよい。キャッププライ15を構成するプライの枚数は、2枚よりも多くてもよいし、1枚であってもよい。
【0034】
インナーライナーゴム16は、トレッド10からサイドウォール11にかけてのバットレス部18に、他の部分よりも厚みが大きい肉厚部40を有する。これにより、タイヤ寿命を向上させることができる。ここで、他の部分とは、インナーライナーゴム16における肉厚部40以外の部分を意味する。肉厚部40の材質は、他の部分の材質と異なってもよいが、製造の観点から、他の部分の材質と同じであることが好ましい。また、バットレス部とは、サイドウォール11の上部に位置する領域であって、より詳しくは、トレッド10の端からタイヤ最大幅位置Wまでの範囲に位置する領域である。
【0035】
肉厚部40の厚みT1と他の部分の厚みT2は、例えば、2≦T1/T2≦3の関係を満たす。T1/T2≧2を満たすことで、タイヤ寿命をより顕著に向上させることができる。T1/T2>3の場合は、カーカス13の形状に影響を与え、タイヤの剛性が低下することがある。厚みT1は、肉厚部40の最大厚みを意味する。厚みT2としては、例えば、タイヤ赤道CLにおけるインナーライナーゴム16の厚みを採用できる。
【0036】
肉厚部40の両端には、肉厚部40からその他の部分に向けて厚みが薄くなる傾斜部が存在してもよい。傾斜部の傾きは、一定であってもよく、変化してもよい。肉厚部40の両端には、例えば、同じ角度を有する傾斜部が形成される。肉厚部40の両端は、他の部分の厚みと同じになる位置として特定される。
【0037】
肉厚部40の下端40Lは、タイヤ最大幅位置Wからタイヤ径方向内側に10mm以上30mm以下の範囲に位置する。即ち、図2において、タイヤ最大幅位置Wから下端40Lまでタイヤ径方向に下した垂線の長さL1は、10mm以上30mm以下である。L1≧10mmを満たすことで、タイヤ寿命をより顕著に向上させることができる。L1>30mmの場合は、タイヤ重量の増加により、転がり抵抗が増加して燃費性能が低下することがある。
【0038】
ベルト14の内カーカス13に最も近い第1ベルト14aと、肉厚部40との重なり代が10mm以上30mm以下である。即ち、図2において、第1ベルト14aの先端と、肉厚部40の上端40Hの間の距離L2は、10mm以上30mm以下である。L2≧10mmを満たすことで、タイヤ寿命をより顕著に向上させることができる。L2>30mmの場合は、タイヤ重量の増加により、転がり抵抗が増加して燃費性能が低下することがある。
【0039】
上記のように、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ寿命に優れる。従来の空気入りタイヤは、釘踏み等によりタイヤの内圧が低下した状態で車両を走行させると、トレッド面がタイヤ内側につぶれるように折れ曲がり、バットレス部においてインナーライナー同士が接触し擦れあって損傷が発生する場合がある。タイヤの内表面で発生した損傷が外表面まで進展することでバースト発生に至る恐れがあるため、タイヤ寿命の向上のためには、バットレス部のタイヤ内表面を保護することが適当である。
【0040】
本発明では、バットレス部に該当する部位のインナーライナーゴムの厚みを大きくすることで、タイヤの内表面で発生した損傷がタイヤの外表面に到達するまでの時間を長くして、タイヤ寿命を向上させることができる。インナーライナーゴム全体の厚みを大きくせず、バットレス部周辺にのみ肉厚部を設けることで、タイヤ重量の増加による燃費性能の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、12a ビードコア、12b ビードフィラー、13 カーカス、14 ベルト、14a 第1ベルト、14b 第2ベルト、15 キャッププライ、16 インナーライナーゴム、18 バットレス部、19 サイドリブ、20 周方向主溝、21 軸方向主溝、25 副溝、30 センターブロック、31 ショルダーブロック、35 ストーンエジェクタ、40 肉厚部、40H 上端、40L 下端、52 リムプロテクター、CL タイヤ赤道、E 接地端、W タイヤ最大幅位置
図1
図2