(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090021
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】伝統木造建築物の耐震補強方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240627BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240627BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240627BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04G23/02 F
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205643
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓己
(72)【発明者】
【氏名】青木 和雄
(72)【発明者】
【氏名】増田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】倭 昂司
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC22
2E139AD04
2E139BA05
2E139BD03
2E176AA09
2E176BB28
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BD07
3J066BF01
(57)【要約】
【課題】柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、伝統木造建築物の文化財的価値を低下させる虞を低くしながら、伝統木造建築物の耐震性を向上させる。
【解決手段】伝統木造建築物の柱2に、柱2の端部と取り合う水平材4の延在方向に張り出す張出部B1aを有する耐震補強部材B1を取り付けることにより、柱2の延在方向への傾斜時に、水平材4に対する柱2側の支点位置を柱2の外周よりも柱2の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、柱2の傾斜復元力を向上させる伝統木造建築物の耐震補強方法において、水平材4は、隣り合う柱2の柱頭部2Aにわたる横架材4であり、耐震補強部材B1は、張出部B1aが横架材4の底部に下方から当接する状態で柱頭部2Aに備えられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝統木造建築物の柱に、当該柱の端部と取り合う水平材の延在方向に張り出す張出部を有する耐震補強部材を取り付けることにより、前記柱の前記延在方向への傾斜時に、前記水平材に対する前記柱側の支点位置を前記柱の外周よりも当該柱の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、当該柱の傾斜復元力を向上させる伝統木造建築物の耐震補強方法であって、
前記水平材は、隣り合う前記柱の柱頭部にわたる横架材であり、
前記耐震補強部材は、前記張出部が前記横架材の底部に下方から当接する状態で前記柱頭部に備えられている伝統木造建築物の耐震補強方法。
【請求項2】
前記耐震補強部材には、上方に延出して、その延出端部が前記柱の上端に受け止め支持されることにより、前記張出部を前記横架材の底部に対する当接高さに保持する複数の保持部が備えられている請求項1に記載の伝統木造建築物の耐震補強方法。
【請求項3】
前記延在方向が梁間方向となる横架材と、前記延在方向が桁行方向となる横架材とが、上下に積み重ねられた状態で前記柱頭部に備えられ、
前記耐震補強部材は、前記張出部が前記上下の横架材のうちの下側の横架材の底部に下方から当接し、かつ、上側の横架材には、その延在方向での当該横架材と前記柱との相対変位を吸収する鋼材ダンパーを介して繋がれている請求項1又は2に記載の伝統木造建築物の耐震補強方法。
【請求項4】
前記耐震補強部材と前記上側の横架材とを一対の前記鋼材ダンパーを介して繋ぐにあたり、前記上側の横架材と、当該横架材の延在方向で隣り合う前記柱のいずれか一方の前記柱頭部に備えられた前記耐震補強部材とが、前記上側の横架材の一端側に集約配備された一対の前記鋼材ダンパーを介して繋がれている請求項3に記載の伝統木造建築物の耐震補強方法。
【請求項5】
前記耐震補強部材と、前記柱頭部上で前記上側の横架材を支持する大斗とが、前記上側の横架材の一端側に集約配備された一対の前記鋼材ダンパーにて接続されている請求項4に記載の伝統木造建築物の耐震補強方法。
【請求項6】
前記耐震補強部材と前記上側の横架材とを一対の前記鋼材ダンパーを介して繋ぐにあたり、前記上側の横架材と、当該横架材の延在方向で隣り合う前記柱の前記柱頭部に備えられた前記耐震補強部材のそれぞれとが、前記上側の横架材の両端側に分散配備された一対の前記鋼材ダンパーにて繋がれている請求項3に記載の伝統木造建築物の耐震補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝統木造建築物の柱に、当該柱の端部と取り合う水平材の延在方向に張り出す張出部を有する耐震補強部材を取り付けることにより、前記柱の前記延在方向への傾斜時に、前記水平材に対する前記柱側の支点位置を前記柱の外周よりも当該柱の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、当該柱の傾斜復元力を向上させる伝統木造建築物の耐震補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寺社の本堂や本殿あるいは廻廊などの伝統木造建築物は、礎石のそれぞれに載せられた状態で支持されている複数の柱が、それらにわたる貫や梁などの横架材を介して連結されるとともに、各柱の柱頭部上に配置された斗拱などを介して屋根部を支持するように構成されている。この構成により、伝統木造建築物の各柱は、それらの柱幅やそれらにかかる軸力(屋根荷重など)に比例する傾斜復元力を有しており、この傾斜復元力が、強風時や地震時に各柱にかかる水平力に対する抵抗力となって、伝統木造建築物の耐震性に寄与するようになっている。
【0003】
本発明の背景技術としては、例えば、礎石(水平材)に載せられた状態で支持されている柱(木質柱)の柱脚部に、水平方向に張り出す張出部を有する補強金物を、その張出部の下面が礎石に当接するように取り付けることで、柱脚部の礎石に対する実質的な接触幅(柱幅)を大きくして、柱の傾斜復元力を大きくし、これにより、強風時や地震時に柱にかかる水平力に対する抵抗力を大きくして、伝統木造建築物の耐震性を向上させる技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、補強金物が、人が接近し易く、かつ、人目に付き易い柱の柱脚部に取り付けられることにより、その柱脚部付近を往来する人が、補強金物の張出部に躓く虞や、補強金物を目の当たりにして印象を悪くする虞などが高くなる。
つまり、補強金物が、柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、伝統木造建築物の文化財的価値を低下させる虞が高くなることから、これらの面において改善の余地がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、伝統木造建築物の文化財的価値を低下させる虞を低くしながら、伝統木造建築物の耐震性を向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、伝統木造建築物の柱に、当該柱の端部と取り合う水平材の延在方向に張り出す張出部を有する耐震補強部材を取り付けることにより、前記柱の前記延在方向への傾斜時に、前記水平材に対する前記柱側の支点位置を前記柱の外周よりも当該柱の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、当該柱の傾斜復元力を向上させる伝統木造建築物の耐震補強方法であって、
前記水平材は、隣り合う前記柱の柱頭部にわたる横架材であり、
前記耐震補強部材は、前記張出部が前記横架材の底部に下方から当接する状態で前記柱頭部に備えられている点にある。
【0008】
本構成によると、耐震補強部材の張出部が横架材の底部に下方から当接していることにより、強風時や地震時の水平力を受けて伝統木造建築物の柱が横架材の延在方向に傾斜する場合には、耐震補強部材における張出部の張出端が横架材に対する柱側の支点位置となって、当該支点位置を柱の外周よりも柱の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせることから、横架材の延在方向での柱の傾斜復元力を向上させることができ、柱にかかる横架材延在方向の水平力に対する抵抗力を大きくすることができる。
そして、柱の柱頭部は、柱脚部などよりも人が接近し難く、かつ、人目に付き難い部位であることから、この柱頭部に、柱の傾斜復元力を向上させるための耐震補強部材を備えることにより、柱の柱脚部付近を往来する人が、耐震補強部材の張出部に躓く虞などを回避し、かつ、耐震補強部材を目の当たりにして印象を悪くする虞などを低くしながら、耐震補強部材を備えて柱の傾斜復元力を向上させることによる伝統木造建築物における耐震性の向上を図ることができる。
その結果、耐震補強部材が、柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、伝統木造建築物の文化財的価値を低下させる虞を低くしながら、伝統木造建築物の耐震性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記耐震補強部材には、上方に延出して、その延出端部が前記柱の上端に受け止め支持されることにより、前記張出部を前記横架材の底部に対する当接高さに保持する複数の保持部が備えられている点にある。
【0010】
本構成によると、前述した複数の保持部が耐震補強部材に備えられていることにより、柱の柱頭部を傷付けることなく、耐震補強部材の張出部を横架材の底部に対する当接高さに確実に保持することができる。これにより、張出部が横架材の底部に対する当接高さから下方に位置ずれして横架材から離れることに起因した柱の傾斜復元力の低下を回避することができ、傾斜復元力の低下に起因した伝統木造建築物における耐震性の低下を防止することができる。
その結果、耐震補強部材にて伝統木造建築物の耐震性を向上させた状態を安定的に維持することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記延在方向が梁間方向となる横架材と、前記延在方向が桁行方向となる横架材とが、上下に積み重ねられた状態で前記柱頭部に備えられ、
前記耐震補強部材は、前記張出部が前記上下の横架材のうちの下側の横架材の底部に下方から当接し、かつ、上側の横架材には、その延在方向での当該横架材と前記柱との相対変位を吸収する鋼材ダンパーを介して繋がれている点にある。
【0012】
本構成によると、耐震補強部材の張出部が下側の横架材の底部に下方から当接していることにより、強風時や地震時の水平力を受けて伝統木造建築物の柱が下側横架材の延在方向に傾斜する場合は、耐震補強部材における張出部の張出端が下側の横架材に対する柱側の支点位置となって、当該支点位置を柱の外周よりも柱の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせることから、下側横架材の延在方向での柱の傾斜復元力を向上させることができ、柱にかかる下側横架材延在方向の水平力に対する抵抗力を大きくすることができる。
又、耐震補強部材が上側の横架材に前述した鋼材ダンパーを介して繋がれていることにより、強風時や地震時の水平力を受けて伝統木造建築物の柱が上側横架材の延在方向に傾斜する場合は、その延在方向での上側の横架材と柱との相対変位を鋼材ダンパーにて吸収させることができる。
その結果、梁間方向に延びる横架材と桁行方向に延びる横架材とが上下に積み重ねられた状態で柱頭部に備えられている伝統木造建築物においても、上下の各横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記耐震補強部材と前記上側の横架材とを一対の前記鋼材ダンパーを介して繋ぐにあたり、前記上側の横架材と、当該横架材の延在方向で隣り合う前記柱のいずれか一方の前記柱頭部に備えられた前記耐震補強部材とが、前記上側の横架材の一端側に集約配備された一対の前記鋼材ダンパーを介して繋がれている点にある。
【0014】
本構成によると、上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させるための一対の鋼材ダンパーによる耐震補強箇所を、上側横架材の一端側に集約することができる。これにより、柱と上側の横架材とを一対の鋼材ダンパーにて繋ぐ伝統木造建築物の耐震補強作業を合理的に行うことができる。
その結果、一対の鋼材ダンパーにて上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させる場合の施工性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記耐震補強部材と、前記柱頭部上で前記上側の横架材を支持する大斗とが、前記上側の横架材の一端側に集約配備された一対の前記鋼材ダンパーにて接続されている点にある。
【0016】
本構成によると、上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させるための一対の鋼材ダンパーによる耐震補強箇所を、上側横架材の一端側に集約するにあたり、耐震補強部材を一対の鋼材ダンパーにて上側の横架材に接続するのではなく、上側の横架材よりも強度の高い大斗に接続することにより、上側の横架材に接続した場合に生じる虞のある上側横架材の破損を回避することができる。
その結果、上側横架材の破損を回避しながら、一対の鋼材ダンパーにて上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させる場合の施工性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、前記耐震補強部材と前記上側の横架材とを一対の前記鋼材ダンパーを介して繋ぐにあたり、前記上側の横架材と、当該横架材の延在方向で隣り合う前記柱の前記柱頭部に備えられた前記耐震補強部材のそれぞれとが、前記上側の横架材の両端側に分散配備された一対の前記鋼材ダンパーにて繋がれている点にある。
【0018】
本構成によると、上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させるための一対の鋼材ダンパーによる耐震補強箇所を、上側横架材の両端側に分散させることができ、これにより、一対の鋼材ダンパーによる各耐震補強箇所を小さくして、より人目に付き難くすることができる。
その結果、伝統木造建築物の文化財的価値を低下させる虞を更に低くしながら、上側横架材の延在方向での伝統木造建築物の耐震性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】第1実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面側面図
【
図4】第1実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面正面図(a)と要部の垂直断面正面図(b)
【
図5】第1実施形態での耐震補強部材の作用を示す垂直断面側面図
【
図6】第1実施形態での鋼材ダンパーの作用を示す垂直断面正面図
【
図7】第1実施形態での耐震補強部材の構成を示す水平断面図
【
図8】第2実施形態での内部柱側と外部柱側の耐震補強部材の構成を示す垂直断面正面図
【
図9】第2実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面側面図
【
図10】第2実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面正面図
【
図11】第2実施形態での耐震補強部材の構成を示す水平断面図
【
図12】第3実施形態での内部柱側と外部柱側の耐震補強部材の構成を示す垂直断面正面図
【
図13】第3実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面側面図
【
図14】第3実施形態での耐震補強部材の構成を示す垂直断面正面図
【
図15】第3実施形態での耐震補強部材の構成を示す水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る伝統木造建築物の耐震補強方法を、伝統木造建築物の一例である寺社の廻廊に適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係る伝統木造建築物の耐震補強方法は、寺社の廻廊に限らず、寺社の本堂や本殿などに適用することができる。
【0021】
図1~2に示すように、本第1実施形態で例示する寺社の廻廊Aにおいては、複数の礎石1が、廻廊Aの長さ方向となる桁行方向Xに所定間隔を置いた配置で、廻廊Aの幅方向となる梁間方向Yに2列で並ぶように据えられており、これらの礎石1のそれぞれに、廻廊Aの内周側に配備される内部柱2と廻廊Aの外周側に配備される外部柱3とが緊結されずに載せられた状態で支持されている。内部柱2と外部柱3のそれぞれは、水平断面形状が円形の木製柱である。
尚、本第1実施形態では、内部柱2及び外部柱3として水平断面形状が円形の木製柱を例示しているが、これに限らず、内部柱2及び外部柱3は、水平断面形状が四角形などの木製柱であってもよい。
【0022】
廻廊Aには、内部柱2や外部柱3の端部と取り合う水平材として、桁行方向Xで隣り合う内部柱2同士又は外部柱3同士にわたる横架材の一例である頭貫4と、梁間方向Yで隣り合う内部柱2と外部柱3とにわたる横架材の一例である虹梁5とが備えられている。外部柱3間には板壁6や連子窓7などが備えられている。
【0023】
図2、
図4に示すように、各内部柱2及び外部柱3の柱頭部2A,3A上には、軒桁8を介して屋根部9を支持する斗拱10が備えられている。
図3~6に示すように、各斗拱10は、柱頭部2A,3Aに載置される大斗11と、虹梁5とともに大斗11に支持される肘木12と、肘木12に支持される3つの巻斗13とを組み合わせて構成されている。
図1に示すように、各頭貫4上には、桁行方向Xで隣り合う斗拱10間において軒桁8を介して屋根部9を支持する疎組14が備えられている。
【0024】
図3~4に示すように、各頭貫4は、それらの端部が桁行方向Xで隣り合う内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aに形成された桁行方向Xの溝部2B,3Bに嵌め込まれることで、桁行方向Xで隣り合う内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aに架設されて、桁行方向Xで隣り合う内部柱2同士又は外部柱3同士を連結している。各虹梁5は、梁間方向Yで隣り合う斗拱10に架設されることで、梁間方向Yで隣り合う内部柱2と外部柱3とを連結している。
【0025】
つまり、本第1実施形態で例示する寺社の廻廊Aは、礎石1のそれぞれに載せられた状態で支持されている複数の内部柱2や外部柱3が、それらにわたる頭貫4や虹梁5などを介して連結されるとともに、各内部柱2及び外部柱3の柱頭部2A,3A上に配置された斗拱10や軒桁8などを介して屋根部9を支持するように構成されている。そして、この構成により、廻廊Aの各内部柱2及び外部柱3は、それらの柱幅やそれらにかかる軸力(屋根荷重など)に比例する傾斜復元力を有しており、この傾斜復元力が、強風時や地震時に各内部柱2及び外部柱3にかかる水平力に対する抵抗力となって、廻廊Aの耐震性に寄与するようになっている。
【0026】
図1、
図3に示すように、各内部柱2の柱頭部2Aには、頭貫4の延在方向に張り出す一対の張出部B1aを有する耐震補強部材B1が取り付けられている。各耐震補強部材B1は、それらの各張出部B1aが高さ調整用を兼ねる保護用の当て木21を介して頭貫4の底部に下方から当接する状態で各内部柱2の柱頭部2Aに備えられている。これにより、各内部柱2が頭貫4の延在方向のいずれか一方に傾斜する際には、その傾斜方向の反対側に存在する張出部B1aの張出端が、頭貫4に対する内部柱2側の支点位置を各内部柱2の外周よりも内部柱2の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、各内部柱2における頭貫4の延在方向での傾斜復元力を向上させるようになっている(
図5参照)。
【0027】
図3~4、
図7に示すように、各耐震補強部材B1は、内部柱2の柱頭部2Aを梁間方向Yから囲むようにボルト接合される鋼板製で一対の半割部材15などから構成されている。一対の半割部材15は、各耐震補強部材B1を梁間方向Yで二等分した同じ形状に形成されている。各半割部材15は、保護用の4枚の当て木22を介して内部柱2の柱頭部2Aに嵌合する嵌合部15Aと、その上端に溶接接合されるフランジ部15Bなどを有している。嵌合部15Aには、柱頭部2Aの外周面に沿って湾曲する半筒形の湾曲部位15Aaと、湾曲部位15Aaの湾曲端から横外方に延出する一対のボルト接合部位15Abとが一体形成されている。フランジ部15Bには、各張出部B1aの片側半部を形成する突出辺15Baが一体形成されている。各突出辺15Baは、嵌合部15Aの各ボルト接合部位15Abに溶接接合されることで補強されている。各耐震補強部材B1には、一対の半割部材15をボルト接合する際に、それらのボルト接合部位15Abの間に介在して共締めされることで一対の半割部材15のボルト接合箇所を補強する一対の補強プレート16が備えられている。
【0028】
各耐震補強部材B1には、それらのフランジ部15Bから上方に延出して、その延出端部15Caが内部柱2の上端に受け止め支持されることにより、耐震補強部材B1の各張出部B1aを頭貫4の底部に対する当接高さに保持する保持部15Cが備えられている。保持部15Cは、各半割部材15に一対ずつ備えられており、それらの延出端部15Caが内部柱2の中心に向けて水平に延びるように屈曲形成されている。
【0029】
上記の構成により、各耐震補強部材B1を対応する内部柱2の柱頭部2Aに取り付ける場合には、例えば、先ず、各内部柱2の柱頭部2Aに対して、一対の半割部材15を梁間方向Yから挟み込むように配置しながら、各半割部材15における各保持部15Cの延出端部15Caを内部柱2の上端に受け止め支持させた後、各半割部材15のボルト接合部位15Ab同士を、それらの間に補強プレート16を介在させた状態で仮止めする。そして、この仮止め状態で、耐震補強部材B1の各張出部B1aを形成する各半割部材15の突出辺15Baと頭貫4との間に適切な厚さの当て木21を介在させるとともに、各半割部材15の嵌合部15Aと内部柱2の柱頭部2Aとの間に適切な厚さの当て木22を介在させた後、仮止め状態のボルト接合部位15Ab同士を、それらの間に補強プレート16を介在させた状態で本締めする。
【0030】
これにより、各内部柱2の柱頭部2Aに対する耐震補強部材B1の取り付けを、廻廊Aを解体する手間を要することなく、耐震補強部材B1の各張出部B1aを頭貫4の底部に対する適切な当接高さに位置させた状態で、内部柱2の柱頭部2Aを傷付けることなく好適に行うことができる。又、各耐震補強部材B1においては、各半割部材15の各ボルト接合部位15Abと、当該ボルト接合部位15Abに共締めされる各補強プレート16とが、各半割部材15の各突出辺15Baからなる耐震補強部材B1の各張出部B1aを補強する補強部材として機能する。
【0031】
図1~6に示すように、本第1実施形態で例示する寺社の廻廊Aにおいては、延在方向が桁行方向Xとなる各頭貫4が、桁行方向Xで隣り合う内部柱2の柱頭部2A同士又は外部柱3の柱頭部3A同士に架設され、かつ、延在方向が梁間方向Yとなる各虹梁5が、梁間方向Yで隣り合う斗拱10に架設されることにより、頭貫4と虹梁5とが、内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに斗拱10を介して上下に積み重ねられた状態で備えられている。
【0032】
図1~4に示すように、各耐震補強部材B1は、それらの張出部B1aが下側の頭貫4の底部に下方から当接し、かつ、上側の虹梁5には、虹梁5の延在方向である梁間方向Yでの内部柱2と虹梁5との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDを介して繋がれている。
【0033】
具体的には、
図3~4に示すように、耐震補強部材B1と上側の虹梁5とを一対の鋼材ダンパーDを介して繋ぐにあたり、各内部柱2の柱頭部2A上で虹梁5の一端部を支持する大斗11と、各内部柱2の柱頭部2Aに備えられた耐震補強部材B1とが、廻廊Aの内周側に位置する虹梁5の一端側に集約配備された一対の鋼材ダンパーDにて接続されている。
【0034】
詳述すると、
図1~6に示すように、各内部柱2の柱頭部2Aに載置された大斗11にはダンパー接続部材C1が取り付けられている。
図3~6に示すように、各ダンパー接続部材C1は、大斗11を梁間方向Yから挟むようにボルト接合される鋼材製で一対の半割部材18などから構成されており、各半割部材18における虹梁5の直下位置に、鋼材ダンパーDの上端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部18Aが溶接接合されている。
【0035】
一方、
図3~7に示すように、各内部柱2の柱頭部2Aに取り付けられた耐震補強部材B1の各半割部材15には、ダンパー接続部材C1に備えた各ダンパー接続部18Aの直下位置に配置されて、鋼材ダンパーDの下端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部15Dが、フランジ部15Bから上方に突出する状態で溶接接合されている。各半割部材15における各ダンパー接続部15Dの直下位置には、当該ダンパー接続部15Dを補強する一対のリブプレート15Eが、嵌合部15Aとフランジ部15Bとにわたって溶接接合されている。
【0036】
上記の構成により、各鋼材ダンパーDの上端部を、各ダンパー接続部材C1における半割部材18のそれぞれに一対ずつ備えられたダンパー接続部18Aにボルト接合するとともに、各鋼材ダンパーDの下端部を、各耐震補強部材B1における半割部材15のそれぞれに一対ずつ備えられたダンパー接続部15Dにボルト接合することにより、各内部柱2の柱頭部2A上で虹梁5の一端部を支持する大斗11と、各内部柱2の柱頭部2Aに備えられた耐震補強部材B1とを、虹梁5における廻廊Aの内周端側に集約配備した状態の一対の鋼材ダンパーDにて接続することができる。
【0037】
図3~6に示すように、各ダンパー接続部材C1において、一対の半割部材18は、各ダンパー接続部材C1を梁間方向Yで二等分した同じ形状に形成されている。各半割部材18は、前述したダンパー接続部18Aとともに、高さ調整用を兼ねる保護用の当て木23を介して虹梁5の底部に下方から当接する水平プレート18Bと、保護用の当て木24を介して大斗11における梁間方向Yの一側面に当接する垂直プレート18Cと、水平プレート18Bにおける桁行方向Xの両端部に配備される一対のボルト接合部18Dとを溶接接合して構成されている。各ボルト接合部18Dは丸形鋼管からなり、水平プレート18Bにおける桁行方向Xの両端部に梁間方向Yに沿う水平姿勢で溶接接合されている。
【0038】
各半割部材18の垂直プレート18Cには、水平プレート18Bから上方に延出する状態となる一対の延出部18Eが一体形成されており、当該延出部18Eは、それらの延出端部18Eaが保護用の当て木25を介して大斗11の上端に受け止め支持されることで、ダンパー接続部材C1の各水平プレート18Bを虹梁5の底部に対する当接高さに保持する保持部として機能する。各保持部18Fは、それらの延出端部18Eaが大斗11上の肘木12に向けて水平に延びるように屈曲形成されている。
【0039】
上記の構成により、各ダンパー接続部材C1を対応する大斗11に取り付ける場合には、例えば、先ず、各大斗11に対して、一対の半割部材18を梁間方向Yから挟み込むように配置しながら、各半割部材18における各保持部18Fの延出端部18Eaを、当て木25を介して大斗11の上端に受け止め支持させた後、各半割部材18のボルト接合部18D同士を、それらに刺し通されるボルト19などを使用して仮止めする。そして、この仮止め状態で、各ダンパー接続部材C1の水平プレート18Bと虹梁5との間に適切な厚さの当て木23を介在させるとともに、各半割部材18の垂直プレート18Cと大斗11との間に適切な厚さの当て木24を介在させた後、仮止め状態のボルト接合部18D同士を本締めする。
【0040】
これにより、廻廊A内周側の各大斗11に対するダンパー接続部材C1の取り付けを、廻廊Aを解体する手間を要することなく、各ダンパー接続部材C1の水平プレート18Bを虹梁5の底部に対する適切な当接高さに位置させた状態で、大斗11を傷付けることなく好適に行うことができる。
【0041】
以上の通り、本第1実施形態で例示する廻廊Aの耐震補強方法においては、廻廊Aの桁行方向Xが延在方向となる頭貫4と、廻廊Aの梁間方向Yが延在方向となる虹梁5とが、内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに斗拱10を介して上下に積み重ねられた状態で備えられているのに対して、各耐震補強部材B1の張出部B1aが下側の頭貫4の底部に下方から当接していることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aにおける内部柱2と外部柱3とのそれぞれが頭貫4の延在方向に傾斜する場合には、各耐震補強部材B1における張出部B1aの張出端が頭貫4に対する内部柱2側の支点位置となって、当該支点位置を内部柱2の外周よりも内部柱2の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせることから、頭貫4の延在方向での各内部柱2の傾斜復元力を向上させることができ、各内部柱2にかかる頭貫延在方向の水平力に対する抵抗力を大きくすることができる(
図5参照)。
【0042】
又、各耐震補強部材B1が、上側の虹梁5にその延在方向での虹梁5と内部柱2との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDを介して繋がれていることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aにおける内部柱2と外部柱3とのそれぞれが虹梁5の延在方向に傾斜する場合は、その延在方向での虹梁5と各内部柱2との相対変位を一対の鋼材ダンパーDにて吸収させることができる(
図6参照)。
【0043】
そして、内部柱2の柱頭部2Aは、柱脚部などよりも人が接近し難く、かつ、人目に付き難い部位であることから、各内部柱2の柱頭部2A側に、内部柱2の傾斜復元力を向上させるための耐震補強部材B1と、内部柱2と虹梁5との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDとを備えることにより、各内部柱2の柱脚部付近を往来する人が、耐震補強部材B1の張出部B1aや一対の鋼材ダンパーDに躓く虞などを回避し、かつ、耐震補強部材B1や一対の鋼材ダンパーDを目の当たりにして印象を悪くする虞などを低くしながら、耐震補強部材B1を備えて内部柱2の傾斜復元力を向上させることや、一対の鋼材ダンパーDを備えて内部柱2と虹梁5との相対変位を吸収することによる寺社の廻廊Aにおける耐震性の向上を図ることができる。
【0044】
その結果、桁行方向Xに延びる頭貫4と梁間方向Yに延びる虹梁5とが上下に積み重ねられた状態で内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに備えられている寺社の廻廊Aにおいて、耐震補強部材B1や一対の鋼材ダンパーDが、柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、廻廊Aの文化財的価値を低下させる虞を低くしながら、頭貫4と虹梁5の各延在方向での廻廊Aの耐震性を向上させることができる。
【0045】
更に、前述した各保持部15C,18Aが耐震補強部材B1とダンパー接続部材C1のそれぞれに備えられていることにより、各内部柱2の柱頭部2Aや大斗11を傷付けることなく、各耐震補強部材B1における張出部B1aのそれぞれを頭貫4の底部に対する当接高さに確実に保持することができるとともに、各ダンパー接続部材C1における水平プレート18Bのそれぞれを虹梁5の底部に対する当接高さに確実に保持することができる。
【0046】
これにより、耐震補強部材B1の各張出部B1aが頭貫4の底部に対する当接高さから下方に位置ずれして頭貫4から離れることに起因した各内部柱2の傾斜復元力の低下や、ダンパー接続部材C1の各水平プレート18Bが虹梁5の底部に対する当接高さから下方に位置ずれして虹梁5から離れることに起因した各鋼材ダンパーDのダンパー機能の低下を回避することができ、傾斜復元力の低下やダンパー機能の低下に起因した寺社の廻廊Aにおける耐震性の低下を防止することができる。
【0047】
その結果、耐震補強部材B1や一対の鋼材ダンパーDにて廻廊Aの耐震性を向上させた状態を安定的に維持することができる。
【0048】
しかも、虹梁5の延在方向での廻廊Aの耐震性を向上させるための一対の鋼材ダンパーDによる耐震補強箇所を、虹梁5における廻廊Aの内周端側に集約することができ、これにより、各内部柱2と虹梁5とをそれぞれ一対の鋼材ダンパーDにて繋ぐ廻廊Aの耐震補強作業を合理的に行うことができる。
【0049】
又、一対の鋼材ダンパーDによる耐震補強箇所を虹梁5における廻廊Aの内周端側に集約するにあたり、耐震補強部材B1を一対の鋼材ダンパーDにて虹梁5に接続するのではなく、虹梁5よりも強度の高い大斗11に接続することにより、虹梁5に接続した場合に生じる虞のある虹梁5の破損を回避することができる。
【0050】
その結果、虹梁5の破損を回避しながら、一対の鋼材ダンパーDにて虹梁5の延在方向での廻廊Aの耐震性を向上させる場合の施工性を向上させることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る伝統木造建築物の耐震補強方法を、伝統木造建築物の一例である寺社の廻廊に適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本第2実施形態で例示する伝統木造建築物の耐震補強方法は、板壁や連子窓が備えられていない寺社の廻廊に適用したものであり、上記の第1実施形態で例示した伝統木造建築物の耐震補強方法とは、耐震補強部材の構成や配置及び一対の鋼材ダンパーの配置や支持構造が異なることから、以下においては、耐震補強部材の構成や配置及び一対の鋼材ダンパーの配置や支持構造についてのみ説明する。
【0052】
図8~11に示すように、本第2実施形態で例示する廻廊Aにおいては、各内部柱2の柱頭部2Aと各外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに、頭貫4の延在方向に張り出す一対の張出部B2aを有する耐震補強部材B2が取り付けられている。各耐震補強部材B2は、それらの各張出部B2aが高さ調整用を兼ねる保護用の当て木41を介して頭貫4の底部に下方から当接する状態で各内部柱2の柱頭部2Aと各外部柱3の柱頭部3Aとに備えられている。これにより、各内部柱2及び外部柱3が頭貫4の延在方向のいずれか一方に傾斜する際には、それらの傾斜方向の反対側に存在する張出部B2aの張出端が、頭貫4に対する内部柱2側又は外部柱3側の支点位置を各内部柱2又は外部柱3の外周よりも内部柱2又は外部柱3の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、各内部柱2及び外部柱3における頭貫4の延在方向での傾斜復元力を向上させるようになっている。
【0053】
各耐震補強部材B2は、内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aを桁行方向Xから囲む半輪形に形成された一対の半割部材31と、一対の半割部材31をボルト接合させる一対の接合部材32とを有している。各半割部材31及び接合部材32は、板厚の厚い鋼板製で、保護用の2枚の当て木42を介して内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aを挟み込むように形成されている。各半割部材31には、張出部B2aを形成する突出部31Aが一体形成されている。各接合部材32には、上方に延出して、その延出端部32aが保護用の当て木43を介して内部柱2又は外部柱3の上端に受け止め支持されることにより、耐震補強部材B2の各張出部B2aを頭貫4の底部に対する当接高さに保持する保持部32Aが備えられている。各保持部32Aは、内部柱2の外周面に沿って湾曲し、それらの上端に溶接接合された延出端部32aが内部柱2又は外部柱3の上面に沿って水平に延びるように形成されている。
【0054】
上記の構成により、各耐震補強部材B2を対応する内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aに取り付ける場合には、例えば、先ず、一対の接合部材32における保持部32Aの延出端部32aを、当て木43を介して内部柱2又は外部柱3の上端に受け止め支持させた後、一対の半割部材31を、各内部柱2の柱頭部2A又は各外部柱3の柱頭部3Aに対して桁行方向Xから挟み込むように配置しながら、一対の接合部材32を介したボルト接合で半割部材31同士を仮止めする。そして、この仮止め状態で、耐震補強部材B2の各張出部B2aを形成する各半割部材31の突出部31Aと頭貫4との間に適切な厚さの当て木41を介在させるとともに、各半割部材31及び接合部材32と内部柱2の柱頭部2A又は外部柱3の柱頭部3Aとの間に適切な厚さの当て木42を介在させた後、仮止め状態の半割部材31同士を、一対の接合部材32を介したボルト接合で本締めする。
【0055】
つまり、本第2実施形態で例示する耐震補強部材B2においては、その構成の簡素化を図りながら、各内部柱2の柱頭部2A及び各外部柱3の柱頭部3Aに対する耐震補強部材B2の取り付けを、廻廊Aを解体する手間を要することなく、耐震補強部材B2の各張出部B2aを頭貫4の底部に対する適切な当接高さに位置させた状態で、内部柱2の柱頭部2A及び外部柱3の柱頭部3Aを傷付けることなく好適に行うことができる。
【0056】
各耐震補強部材B2は、それらの張出部B2aが下側の頭貫4の底部に下方から当接し、かつ、上側の虹梁5には、虹梁5の延在方向である梁間方向Yでの内部柱2と虹梁5との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDを介して繋がれている。
【0057】
具体的には、
図8に示すように、耐震補強部材B2と上側の虹梁5とを一対の鋼材ダンパーDを介して繋ぐにあたり、虹梁5と、当該虹梁5の延在方向で隣り合う内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとに備えられた耐震補強部材B2のそれぞれとが、虹梁5の両端側に分散配備された一対の鋼材ダンパーDにて繋がれている。
【0058】
詳述すると、
図8~10に示すように、各虹梁5の両端側における斗拱10との取り合い位置よりも虹梁5の中央側の位置にはダンパー接続部材C2が取り付けられている。各ダンパー接続部材C2は鋼板製で、保護用の当て木44を介して虹梁5に巻き付けられるバンド部33と、鋼材ダンパーDの上端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部34とから構成されている。一対のダンパー接続部34は、バンド部33における虹梁5の直下位置に溶接接合されている。
【0059】
一方、
図8~11に示すように、各内部柱2の柱頭部2A及び各外部柱3の柱頭部3Aに取り付けられた耐震補強部材B2において、虹梁5の中央側に配置される接合部材32には、ダンパー接続部材C2に備えた各ダンパー接続部34の直下位置に配置されて、鋼材ダンパーDの下端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部32Bが、接合部材32から上方に突出する状態で溶接接合されている。
【0060】
上記の構成により、各鋼材ダンパーDの上端部を、各ダンパー接続部材C2に備えられた一対のダンパー接続部34にボルト接合するとともに、各鋼材ダンパーDの下端部を、各耐震補強部材B2における虹梁5中央側の接合部材32に備えられた一対のダンパー接続部32Bにボルト接合することにより、各虹梁5の両端側と、各内部柱2の柱頭部2Aと各外部柱3の柱頭部3Aとに備えられた耐震補強部材B2とを、虹梁5における廻廊Aの内周端側と外周端側とに分散配備した状態の一対の鋼材ダンパーDを介して繋ぐことができる。
【0061】
以上の通り、本第2実施形態で例示する廻廊Aの耐震補強方法においては、廻廊Aの桁行方向Xが延在方向となる頭貫4と、廻廊Aの梁間方向Yが延在方向となる虹梁5とが、内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに斗拱10を介して上下に積み重ねられた状態で備えられているのに対して、各耐震補強部材B2の張出部B2aが下側の頭貫4の底部に下方から当接していることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aにおける内部柱2と外部柱3とのそれぞれが頭貫4の延在方向に傾斜する場合には、各耐震補強部材B2における張出部B2aの張出端が頭貫4に対する内部柱2側又は外部柱3側の支点位置となって、当該支点位置を内部柱2又は外部柱3の外周よりも内部柱2又は外部柱3の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせることから、頭貫4の延在方向での各内部柱2及び外部柱3の傾斜復元力を向上させることができ、各内部柱2及び外部柱3にかかる頭貫延在方向の水平力に対する抵抗力を大きくすることができる。
【0062】
又、各耐震補強部材B2が、上側の虹梁5にその延在方向での虹梁5と内部柱2との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDを介して繋がれていることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aにおける内部柱2と外部柱3とのそれぞれが虹梁5の延在方向に傾斜する場合には、その延在方向での虹梁5と各内部柱2又は外部柱3との相対変位を一対の鋼材ダンパーDにて吸収させることができる。
【0063】
そして、内部柱2及び外部柱3の柱頭部2A,3Aは、柱脚部などよりも人が接近し難く、かつ、人目に付き難い部位であることから、各内部柱2及び外部柱3の柱頭部2A,3A側に、内部柱2又は外部柱3の傾斜復元力を向上させるための耐震補強部材B2と、内部柱2又は外部柱3と虹梁5との相対変位を吸収する一対の鋼材ダンパーDとを備えることにより、各内部柱2又は外部柱3の柱脚部付近を往来する人が、耐震補強部材B2の張出部B2aや一対の鋼材ダンパーDに躓く虞などを回避し、かつ、耐震補強部材B2や一対の鋼材ダンパーDを目の当たりにして印象を悪くする虞などを低くしながら、耐震補強部材B2を備えて内部柱2及び外部柱3の傾斜復元力を向上させることや、一対の鋼材ダンパーDを備えて内部柱2又は外部柱3と虹梁5との相対変位を吸収することによる寺社の廻廊Aにおける耐震性の向上を図ることができる。
【0064】
しかも、虹梁5の延在方向での廻廊Aの耐震性を向上させるための一対の鋼材ダンパーDによる耐震補強箇所を、虹梁5における廻廊Aの内周端側と外周端側とに分散させることができ、これにより、一対の鋼材ダンパーDによる各耐震補強箇所を小さくして、より人目に付き難くすることができる。
【0065】
その結果、桁行方向Xに延びる頭貫4と梁間方向Yに延びる虹梁5とが上下に積み重ねられた状態で内部柱2の柱頭部2Aと外部柱3の柱頭部3Aとのそれぞれに備えられている寺社の廻廊Aにおいて、耐震補強部材B2や一対の鋼材ダンパーDが、柱脚部付近での人の往来に支障を来す虞や、廻廊Aの文化財的価値を低下させる虞を低くしながら、頭貫4と虹梁5の各延在方向での廻廊Aの耐震性を向上させることができる。
【0066】
更に、前述した各保持部32Aが各耐震補強部材B2に備えられていることにより、各内部柱2及び外部柱3の柱頭部2A,3Aを傷付けることなく、各耐震補強部材B2における張出部B2aのそれぞれを頭貫4の底部に対する当接高さに確実に保持することができる。
【0067】
これにより、耐震補強部材B2の各張出部B2aが頭貫4の底部に対する当接高さから下方に位置ずれして頭貫4から離れることに起因した各内部柱2及び外部柱3の傾斜復元力の低下を回避することができ、傾斜復元力の低下に起因した寺社の廻廊Aにおける耐震性の低下を防止することができる。
【0068】
その結果、耐震補強部材B2にて廻廊Aの耐震性を向上させた状態を安定的に維持することができる。
【0069】
〔第3実施形態〕
以下、本発明に係る伝統木造建築物の耐震補強方法を、伝統木造建築物の一例である寺社の廻廊に適用した第3実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本第3実施形態で例示する伝統木造建築物の耐震補強方法は、上記の第1実施形態で例示した外部柱間に板壁や連子窓などが備えられた寺社の廻廊において、上記の第2実施形態で例示した伝統木造建築物の耐震補強方法のように、各内部柱及び外部柱の柱頭部に耐震補強部材を取り付けた上で、一対の鋼材ダンパーが虹梁における廻廊の内周端側と外周端側とに分散配備されるものである。そのため、上記の第2実施形態で例示した伝統木造建築物の耐震補強方法とは、外部柱の柱頭部に取り付けられる耐震補強部材の構成や、廻廊の外周端側に配置される鋼材ダンパーの支持構造が異なることから、以下においては、外部柱の柱頭部に取り付けられる耐震補強部材の構成や、廻廊の外周端側に配置される鋼材ダンパーの支持構造についてのみ説明する。
【0070】
図12に示すように、本第3実施形態で例示する廻廊Aにおいては、各内部柱2の柱頭部2Aに本第2実施形態で例示した耐震補強部材B2が取り付けられ、各外部柱3の柱頭部3Aに、頭貫4の延在方向に張り出す一対の張出部B3aを有する耐震補強部材B3が取り付けられている。
図12~15に示すように、各耐震補強部材B3は、それらの各張出部B3aが高さ調整用を兼ねる保護用の当て木61を介して頭貫4の底部に下方から当接する状態で各外部柱3の柱頭部3Aに備えられている。これにより、各外部柱3が頭貫4の延在方向のいずれか一方に傾斜する際には、それらの傾斜方向の反対側に存在する張出部B3aの張出端が、頭貫4に対する外部柱3側の支点位置を各外部柱3の外周よりも外部柱3の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせて、各外部柱3における頭貫4の延在方向での傾斜復元力を向上させるようになっている。
【0071】
詳述すると、
図12~15に示すように、各耐震補強部材B3は、外部柱3の柱頭部3Aに支持された頭貫4を梁間方向Yから挟み込む状態でボルト接合される第1部材51と一対の第2部材52とから構成されている。
【0072】
図13~15に示すように、第1部材51は、外部柱3の外周に沿って湾曲する湾曲プレート51Aと、湾曲プレート51の両端部から上方に延びる一対の垂直プレート51Bと、各垂直プレート51Bの下端から板壁6に向けて水平に延びる一対の下側水平プレート51Cと、各垂直プレート51Bの上端から下側水平プレート51Cと平行に水平に延びる一対の上側水平プレート51Dなどを溶接接合して構成されている。
【0073】
各第2部材52は、第1部材51の各上側水平プレート51Eにボルト接合される上側水平プレート52Aと、上側水平プレート52Aの一端部から下方に延びる垂直プレート52Bと、垂直プレート52Bの下端から板壁6に向けて水平に延びる下側水平プレート52Cとを溶接接合して構成されている。
【0074】
そして、第1部材51の各垂直プレート51Bと各第2部材52の垂直プレート52Bとが保護用の当て木62を介して頭貫4の両側面に当接し、第1部材51の各上側水平プレート51Dが保護用の当て木63を介して頭貫4の上面に当接し、第1部材51の各下側水平プレート51Cと各第2部材52の下側水平プレート52Cとが当て木61を介して頭貫4の底部に当接している。
【0075】
つまり、本第3実施形態で例示する各耐震補強部材B3においては、板壁6に向けて水平に延びる第1部材51の各下側水平プレート51Cと各第2部材52の下側水平プレート52Cとから、高さ調整用の当て木63を介して頭貫4の底部に下方から当接する一対の張出部B3aが形成されている。
【0076】
第1部材51には、上方に延出して、その延出端部51aが保護用の当て木64を介して外部柱3の上端に受け止め支持されることにより、耐震補強部材B3の各張出部B3aを頭貫4の底部に対する当接高さに保持する保持部51Eが備えられている。各保持部51Eは、外部柱3の外周面に沿って湾曲し、それらの上端に溶接接合された延出端部51aが外部柱3の上面に沿って水平に延びるように形成されている。
【0077】
上記の構成により、各耐震補強部材B3を対応する外部柱3の柱頭部3Aに取り付ける場合には、例えば、先ず、第1部材51における保持部51Eの延出端部51aを、当て木64を介して外部柱3の上端に受け止め支持させるようにしながら、第1部材51と一対の第2部材52とを、外部柱3の柱頭部3Aに支持された頭貫4を梁間方向Yから挟み込むように配置した後、それらの上側水平プレート51E,52A同士のボルト接合で、外部柱3の柱頭部3Aに対する適切な高さ位置に仮止めする。そして、この仮止め状態で、耐震補強部材B3の各張出部B3aを形成する第1部材51及び各第2部材52の下側水平プレート51C,52Cと頭貫4との間に適切な厚さの当て木61を介在させるとともに、第1部材51及び各第2部材52の垂直プレート51B,52B又は第1部材51の上側水平プレート51Dと頭貫4との間に適切な厚さの当て木62,63を介在させた後、仮止め状態の第1部材51と一対の第2部材52とを、それらの上側水平プレート51E,52A同士のボルト接合で本締めする。
【0078】
つまり、本第3実施形態で例示する耐震補強部材B3は、外部柱3の柱頭部3Aに支持された頭貫4を介して外部柱3の柱頭部3Aに取り付けられている。そして、このような取り付けを、廻廊Aを解体する手間を要することなく、耐震補強部材B3の各張出部B3aを頭貫4の底部に対する適切な当接高さに位置させた状態で、頭貫4や板壁6などを傷付けることなく好適に行うことができる。
【0079】
図12~14に示すように、本第3実施形態で例示する耐震補強部材B3においては、耐震補強部材B3と上側の虹梁5における廻廊Aの外周端側とを鋼材ダンパーDを介して繋ぐにあたり、耐震補強部材B3の第1部材51には、鋼材ダンパーDの下端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部51Fが備えられている。各虹梁5における廻廊Aの外周端側には、上記の第2実施形態で例示したダンパー接続部材C2が取り付けられている。
【0080】
各ダンパー接続部材C2は、各虹梁5の廻廊A外周端側における斗拱10との取り合い位置よりも虹梁5の中央側の位置に取り付けられている。各ダンパー接続部材C2は鋼板製で、保護用の当て木66を介して虹梁5に巻き付けられるバンド部53と、鋼材ダンパーDの上端部が回動自在にボルト接合される一対のダンパー接続部54とから構成されている。一対のダンパー接続部54は、バンド部53における虹梁5の直下位置に溶接接合されている。
【0081】
一方、耐震補強部材B3の第1部材51に備えた一対のダンパー接続部51Fは、ダンパー接続部材C2に備えた各ダンパー接続部54の直下位置に位置するように、湾曲プレート51Aの中央部に溶接接合されている。
【0082】
上記の構成により、各鋼材ダンパーDの上端部を、各ダンパー接続部材C2に備えられた一対のダンパー接続部54にボルト接合するとともに、各鋼材ダンパーDの下端部を、各耐震補強部材B3の第1部材51に備えられた一対のダンパー接続部51Fにボルト接合することにより、各虹梁5における廻廊Aの外周端側と、各外部柱3の柱頭部3Aに備えられた耐震補強部材B3とを、鋼材ダンパーDを介して繋ぐことができる。
【0083】
以上の通り、本第3実施形態で例示する廻廊Aの耐震補強方法においては、廻廊Aの外部柱3間に板壁6や連子窓7などが備えられている場合に、板壁6や連子窓7などを傷付けることなく、各耐震補強部材B3を、それらの張出部B3aが当て木61を介して頭貫4の底部に下方から当接する状態で外部柱3の柱頭部3Aに取り付けることができるとともに、耐震補強部材B3と虹梁5における廻廊Aの外周端側とを鋼材ダンパーDを介して繋ぐことができる。
【0084】
そして、廻廊Aの桁行方向Xが延在方向となる頭貫4と、廻廊Aの梁間方向Yが延在方向となる虹梁5とが、各外部柱3の柱頭部3Aに斗拱10を介して上下に積み重ねられた状態で備えられているのに対して、各耐震補強部材B3の張出部B3aが下側の頭貫4の底部に下方から当接していることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aの各外部柱3が頭貫4の延在方向に傾斜する場合には、各耐震補強部材B3における張出部B3aの張出端が頭貫4に対する外部柱3側の支点位置となって、当該支点位置を外部柱3の外周よりも外部柱3の傾斜復元方向の外側に位置ずれさせることから、頭貫4の延在方向での各外部柱3の傾斜復元力を向上させることができ、各外部柱3にかかる頭貫延在方向の水平力に対する抵抗力を大きくすることができる。
【0085】
又、各耐震補強部材B3が、上側の虹梁5にその延在方向での虹梁5と外部柱2との相対変位を吸収する鋼材ダンパーDを介して繋がれていることにより、強風時や地震時の水平力を受けて廻廊Aの各外部柱3が虹梁5の延在方向に傾斜する場合には、その延在方向での虹梁5と外部柱3との相対変位を鋼材ダンパーDにて吸収させることができる。
【0086】
更に、前述した各保持部51Eが各耐震補強部材B3に備えられていることにより、各外部柱3の柱頭部3Aを傷付けることなく、各耐震補強部材B3における張出部B3aのそれぞれを頭貫4の底部に対する当接高さに確実に保持することができる。
【0087】
これにより、耐震補強部材B3の各張出部B3aが頭貫4の底部に対する当接高さから下方に位置ずれして頭貫4から離れることに起因した各外部柱3の傾斜復元力の低下を回避することができ、傾斜復元力の低下に起因した寺社の廻廊Aにおける耐震性の低下を防止することができる。
【0088】
その結果、耐震補強部材B3にて廻廊Aの耐震性を向上させた状態を安定的に維持することができる。
【0089】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0090】
(1)上記の各実施形態で例示した伝統木造建築物(寺社の廻廊)Aの耐震補強方法においては、例えば、少なくとも耐震補強部材B1~B3の底部側を覆う木製のカバーを備えることで、耐震補強部材B1~B3などを目の当たりにして印象を悪くする虞を更に低くして、伝統木造建築物(寺社の廻廊)Aの文化財的価値を低下させる虞をより好適に抑制できるようにしたものであってもよい。
【0091】
(2)上記の各実施形態においては、伝統木造建築物(寺社の廻廊)Aとして、延在方向が桁行方向Xとなる横架材(頭貫)4と延在方向が梁間方向Yとなる横架材(虹梁)5とが上下に積み重ねられた状態で各柱2,3の柱頭部2A,3Aに備えられるものを例示したが、これに限らず、例えば、延在方向が桁行方向Xとなる横架材4と延在方向が梁間方向Yとなる横架材5とが同じ高さで各柱2,3の柱頭部2A,3Aに備えられるものであってもよい。
この場合、耐震補強部材B1~B3として、桁行方向Xに張り出す張出部B1a~B3aと梁間方向Yに張り出す張出部とを有するように構成されたものや、耐震補強部材B1~B3の全周から横外方に張り出す環状の張出部を有するように構成されたものなどを各柱2,3の柱頭部2A,3Aに取り付けることが考えられる。
【符号の説明】
【0092】
2 内部柱(柱)
2A 柱頭部
3 外部柱(柱)
3A 柱頭部
4 頭貫(水平材、横架材)
5 虹梁(水平材、横架材)
11 大斗
15C 保持部
15Ca 延出端部
32A 保持部
32a 延出端部
51E 保持部
51a 延出端部
A 回廊(伝統木造建築物)
B1 耐震補強部材
B1a 張出部
B2 耐震補強部材
B2a 張出部
B3 耐震補強部材
B3a 張出部
D 鋼材ダンパー
X 桁行方向
Y 梁間方向