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特開2024-90023片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造
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  • 特開-片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造 図1
  • 特開-片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造 図2
  • 特開-片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090023
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20240627BHJP
   E02D 27/28 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D27/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205645
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘臣
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA18
(57)【要約】
【課題】杭を採用することなく、片土圧に対する水平抵抗力を効果的に得ることができ、斜面地や狭小地などでも容易に施工できるようにする。
【解決手段】片土圧による水平荷重を受ける建物Bの基礎構造b1であって、直接基礎として構築される基礎本体1と、基礎本体1の直下に構築され、重量により水平荷重に対する滑り摩擦抵抗を増大させる硬化性重量部2と、硬化性重量部2の片土圧作用側の端部において、基礎本体1の底面から壁状に立ち下げて平面視で片土圧作用方向に交差する方向に延在し、その片土圧作用側とは反対側の壁面3Bが硬化性重量部2の片土圧作用側の端面2Aに当接される基礎下壁3と、が備えられている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造であって、
直接基礎として構築される基礎本体と、
前記基礎本体の直下に構築され、重量により前記水平荷重に対する滑り摩擦抵抗を増大させる硬化性重量部と、
前記硬化性重量部の片土圧作用側の端部において、前記基礎本体の底面から壁状に立ち下げて平面視で片土圧作用方向に交差する方向に延在し、その片土圧作用側とは反対側の壁面が前記硬化性重量部の片土圧作用側の端面に当接される基礎下壁と、が備えられている片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造。
【請求項2】
前記基礎下壁の片土圧作用側とは反対側の壁面に連接され、前記基礎下壁を片土圧作用側とは反対側から引張支持自在な控え壁が備えられている請求項1記載の片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高低差又は傾斜を有する敷地などに構築される建物などの長期荷重として片土圧(偏土圧)による水平荷重を受ける建物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造では、建物の基礎本体の底面と地盤との間の許容摩擦力が片土圧による水平荷重を下回る場合に、建物自体の鉛直荷重に対して直接基礎のみで対応できる建物であっても、片土圧対策として杭を採用して杭により水平抵抗力を得るようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-233666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、片土圧による水平荷重を受ける敷地は、斜面地や狭小地であることが多い。そのため、大型の重機を配置して杭を施工するための施工ヤードの確保が非常に難しいという問題がある。このような斜面地や狭小地において施工ヤードを確保するのに森林を伐採することも考えられるが、その場合は森林伐採による環境負荷が大きいという問題が生じる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、杭を採用することなく、片土圧に対する水平抵抗力を効果的に得ることができ、斜面地や狭小地などでも容易に施工することのできる片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、片土圧による水平荷重を受ける建物の基礎構造であって、
直接基礎として構築される基礎本体と、
前記基礎本体の直下に構築され、重量により前記水平荷重に対する滑り摩擦抵抗を増大させる硬化性重量部と、
前記硬化性重量部の片土圧作用側の端部において、前記基礎本体の底面から壁状に立ち下げて平面視で片土圧作用方向に交差する方向に延在し、その片土圧作用側とは反対側の壁面が前記硬化性重量部の片土圧作用側の端面に当接される基礎下壁と、が備えられている点にある。
【0007】
本構成によれば、直接基礎として構築される基礎本体の直下に硬化性重量部を有するので、その硬化性重量部の重量が建物の重量に加算されて、硬化性重量部とその直下の地盤との滑り摩擦抵抗(許容摩擦力)を増大することができ、片土圧による水平荷重によって硬化性重量部が直下の地盤に対して滑り移動するのを適切に抑止することができる。
更に、基礎本体の底面から壁状に立ち下げて硬化性重量部の片土圧作用側の端面に片土圧作用側の壁面が当接される上記の基礎下壁を有するので、片土圧による水平荷重によって滑り移動するのを適切に抑止された硬化性重量部に対して基礎下壁を片土圧作用側から引っ掛ける形態で、基礎本体を有する建物が片土圧による水平荷重によって硬化性重量部に対して滑り移動するのを効果的に抑止することができる。
しかも、基礎下壁は、硬化性重量部の片土圧作用側の端面に片土圧作用側の壁面が当接されるので、例えば、基礎下壁が、硬化性重量部の片土圧作用方向の中間部に埋設されている場合のように、基礎下壁から伝達される片土圧による水平荷重によって硬化性重量部が中間部(基礎下壁の埋設部分)を境に分断されることで、硬化性重量部の重量による水平抵抗力が不測に低下することも確実に回避することができる。
したがって、杭を採用することなく、片土圧に対する水平抵抗力を効果的に得ることができ、斜面地や狭小地などでも容易に施工することが可能となる。
できる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記基礎下壁の片土圧作用側とは反対側の壁面に連接され、前記基礎下壁を片土圧作用側とは反対側から引張支持自在な控え壁が備えられている点にある。
【0009】
本構成によれば、硬化性重量部に対して片土圧作用側から引っ掛ける形態で、基礎本体を有する建物が片土圧による水平荷重によって硬化性重量部に対して滑り移動するのを抑止する基礎下壁を、基礎下壁の片土圧作用側の壁面に連接される控え壁により片土圧作用側とは反対側から引張支持することができる。よって、片土圧による水平荷重によって基礎下壁が破損するのを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の基礎構造を適用した建物の縦断面を模式的に示す図
図2図1のII-II線断面を模式的に示す図
図3】本発明の基礎構造の要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の建物の基礎構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この建物Bは、河川R側(図中の右側)の地盤面が低くて河川Rとは反対側(図中の左側)の地盤面が高くなっている高低差を有する敷地(地盤G)に建てられている。
そのため、建物Bは、長期荷重として高地側から片土圧(偏土圧)による水平荷重(図中の白抜き矢印を参照)を受けるものとなっている。
【0012】
建物Bの基礎構造b1には、直接基礎として構築される基礎本体1と、基礎本体1の直下に構築されて重量により水平荷重に対する滑り摩擦抵抗を増大させる硬化性重量部2と、が備えられている。
【0013】
基礎本体1は、本実施形態では、複数のRC造の地中梁11、及び、それら地中梁11の下端レベルに構築されるRC造の基礎スラブ(又は土間コンクリート)12等を備えており、建物Bの鉛直荷重を直接的に下方の地盤Gに伝達するように構成されている。なお、地中梁11の上端レベルには、RC造の1階の床スラブ13が構築されている。
【0014】
硬化性重量部2は、セメント系の固化剤と地盤とを原位置(現位置)で攪拌して混合してなる浅層地盤改良体にて構成されている。この硬化性重量部2は、基礎本体1の直下の略全域(略全面)に亘って設定深さまで地盤改良を行って浅層地盤改良体を構築することで、地盤Gを構成する土よりも重量を大きくして設定重量を有するように構成されている。
【0015】
このように、基礎本体1の直下に硬化性重量部2を有するので、その硬化性重量部2の重量が建物Bの重量に加算されて、硬化性重量部2の底面とその直下の地盤Gとの間での滑り摩擦抵抗(許容摩擦力)を増大することができ、片土圧による水平荷重によって硬化性重量部2が直下の地盤Gに対して滑り移動するのを適切に抑止することができる。
【0016】
ちなみに、硬化性重量部2の設定深さは、河川R側の擁壁5に対して建物B及び硬化性重量部2により側圧を与えないように、設定重量に加えて、硬化性重量部2の下端レベルからの影響線Lを考慮して設定されており、本実施形態では、擁壁5が影響線Lにかからない河川Rの川底レベルの深さに硬化性重量部2の設定深さが設定されている。
【0017】
そして、図2図3に示すように、当該基礎構造b1には、硬化性重量部2の片土圧作用側の端部(図中の左側の端部)において、基礎本体1の底面から壁状に立ち下げて平面視で片土圧作用方向(図1図3中のX方向)に直交(交差の一例)する方向(図2中のY方向)に延在し、その片土圧作用側とは反対側の壁面3Bが硬化性重量部2の片土圧作用側の端面2Aに当接される基礎下壁3が備えられている。
【0018】
基礎下壁3は、図2図3に示すように、RC造の基礎本体1と一体のRC造の構造体として構築されており、図示は省略するが、本実施形態では、基礎本体1の片土圧作用方向に直交する方向(Y方向)の全長に亘って延在する状態で構築されている。また、本実施形態では、基礎下壁3の深さは、硬化性重量部2の深さの半分程度に設定されている。
【0019】
図3に示すように、基礎下壁3は、壁表側及び壁裏側の両側において、RC造の基礎本体1の地中梁11の下端部に上端側が定着される状態で壁延在方向(図3中紙面の垂直方向、図2中のY方向)に所定ピッチで配置されるダブルの縦筋3a、及び、上下方向に所定ピッチで配置されるダブルの横筋3bが配筋されている。また、基礎下壁3の下端側には、壁表側及び壁裏側の最下端の両横筋3bを囲う状態で壁延在方向(図3中紙面の垂直方向、図2中のY方向)に所定ピッチで配置される側面視略U字状の被せ筋3cが配筋されている。このように縦筋3a、横筋3b、被せ筋3cが配筋されることで、基礎下壁3は基礎本体1と一体の頑強な構造体として構築されている。
【0020】
更に、この基礎構造b1には、図2図3に示すように、基礎下壁3の片土圧作用側とは反対側の壁面3Bに連接され、基礎下壁3を片土圧作用側とは反対側(図2図3中の右側)から引張支持自在な控え壁(バットレス)4が備えられている。
【0021】
控え壁4は、図2図3に示すように、基礎本体1及び基礎下壁3と一体のRC造の構造体として構築されており、本実施形態では、図3に示すように、基礎本体1の底面の中央側から基礎下壁3側に向かって基礎下壁3と同じ深さまで徐々に下方に延出する側面視直角三角形状の壁構造体として構成されている。本実施形態では、図2に示すように、複数の控え壁4が、基礎本体1の片土圧作用方向に直交する壁延在方向(Y方向)に所定ピッチで配置され、硬化性重量部2に埋設させる状態で備えられている。
【0022】
図3に示すように、控え壁4は、壁表側及び壁裏側の両側において、RC造の基礎本体1の基礎スラブ(又は土間コンクリート)12に上端部が定着される状態で壁延在方向(図3中紙面の垂直方向、図2中のY方向)に所定ピッチで配置されるダブルの縦筋4a、及び、RC造の基礎下壁3に一端部が定着される状態で上下方向に所定ピッチで配置されるダブルの横筋4bが配筋されている。更に、控え壁4の斜辺側には、壁表側及び壁裏側の両側において、一端部がRC造の基礎下壁3に定着され、他端部がRC造の基礎本体1の地中梁11に定着されるダブルの斜め筋4cが配筋されている。このように縦筋4a、横筋4b、斜め筋4cが配筋されることで、控え壁4は、基礎本体1及び基礎下壁3と一体の頑強な構造体として構築されている。
【0023】
上述の如く構成された基礎構造b1は、片土圧による水平荷重によって滑り移動するのを適切に抑止された硬化性重量部2に対して、基礎本体1と一体の頑強な基礎下壁3を片土圧作用側(図中の左側)から引っ掛ける形態で、基礎本体1を有する建物Bが片土圧による水平荷重によって硬化性重量部2に対して滑り移動するのを効果的に抑止することができる。
しかも、その硬化性重量部2に対して片土圧作用側(図中の左側)から引っ掛ける基礎下壁3を、基礎本体1及び基礎下壁3と一体の頑強な控え壁4により片土圧作用側とは反対側から引張支持することができ、片土圧による水平荷重によって基礎下壁3が破損するのを効果的に抑制することができる。
このように、本基礎構造b1は、施工ヤードの確保が非常に難しい敷地であっても、杭を採用することなく、片土圧に対する水平抵抗力を効果的に得ることができ、斜面地や狭小地などでも容易に施工することができる。
【0024】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0025】
(1)前述の実施形態では、硬化性重量部2が、基礎本体1の直下の略全域(略全面)に亘って構築されている場合を例に示したが、略全域ではなく一部領域であってもよく、例えば、一部領域として、片土圧作用方向(図1中のX方向)における片土圧作用側の領域やその反対側の領域或いは中間の領域などに構築されていてもよい。
【0026】
(2)前述の実施形態では、硬化性重量部2が、セメント系の固化剤と原位置土とを攪拌して混合してなる浅層地盤改良体にて構成されている場合を例に示したが、例えば、コンクリートを土と置換してなるラブルコンクリートなどにて構成されていてもよい。
【0027】
(3)前述の実施形態では、図2に示すように、基礎下壁3が、基礎本体1の片土圧作用方向に直交する方向(Y方向)の全長に亘って延在する状態で構築されている場合を例に示したが、全長の一部に亘って延在する状態で構築されていてもよく、例えば、比較的短い延在長さの基礎下壁3の複数を基礎本体1の片土圧作用方向に直交する方向(Y方向)で分散配置する状態で構築されていてもよい。その場合、夫々の基礎下壁1に対して控え壁4を個別に連接するようにしてもよい。
【0028】
(4)前述の実施形態では、基礎下壁3に控え壁4が連接される場合を例に示したが、基礎下壁3の壁厚等を十分確保できる場合等には控え壁4を省略することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 基礎本体
2 硬化性重量部
2A 片土圧作用側の端面
3 基礎下壁
3B 片土圧作用側とは反対側の壁面
4 控え壁
B 建物
b1 基礎構造

図1
図2
図3