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特開2024-90024プロセスオイル組成物、ゴム組成物、ゴム製品およびタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090024
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プロセスオイル組成物、ゴム組成物、ゴム製品およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20240627BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 5/3432 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 5/526 20060101ALI20240627BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L91/00
C08L21/00
C08K5/01
C08K5/3432
C08K5/526
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205650
(22)【出願日】2022-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 祐司
(72)【発明者】
【氏名】船木 亮佑
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC35
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC031
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AE052
4J002BB151
4J002BB181
4J002BG041
4J002CP031
4J002EA006
4J002EA016
4J002EA026
4J002EU068
4J002EW067
4J002FD022
4J002FD026
4J002FD077
4J002FD078
4J002GM00
4J002GN00
4J002GN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴム製品を長期間使用することにより生ずる劣化が抑制できるプロセスオイル組成物を提供すること。
【解決手段】プロセスオイル組成物は、オイル成分として40℃における動粘度が30cSt以下である水素化処理したナフサ(A1)、40℃における動粘度が30cSt以下であるナフテン系鉱油(A2)およびリモネン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、添加剤として下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体とを含む。式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル成分として40℃における動粘度が30cSt以下である水素化処理したナフサ(A1)、40℃における動粘度が30cSt以下であるナフテン系鉱油(A2)およびリモネン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、
添加剤として下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体とを含む、
プロセスオイル組成物。
【化1】
(上記式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。)
【請求項2】
添加剤として、さらに、下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物を含む、
請求項1に記載のプロセスオイル組成物。
【化2】

(上記式(D)中、Rd21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、Rd23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記オイル成分100質量部に対して、前記中性亜リン酸エステル誘導体を0.1質量部以上5質量部以下の量で含む、
請求項1または2に記載のプロセスオイル組成物。
【請求項4】
前記オイル成分100質量部に対して、前記ヒンダードアミン化合物を0.1質量部以上5質量部以下の量で含む、
請求項2に記載のプロセスオイル組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプロセスオイル組成物と、ゴム成分とを含む、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物から得られる、ゴム製品。
【請求項7】
請求項5に記載のゴム組成物から得られる、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスオイル組成物、ゴム組成物、ゴム製品およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スチレンブタジエンゴムを含むジエン系ゴムと、低温可塑剤、プロセスオイル、および軟化点160℃以下の樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の軟化剤と、ジチオリン酸亜鉛と、硫黄とを含み、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、上記軟化剤の含有量が40質量部以上、上記ジチオリン酸亜鉛の含有量が0.2~15質量部であり、かつ、酸化亜鉛の含有量が2.5質量部未満であるトレッド用ゴム組成物が記載されている。また、特許文献1には、上記トレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/002506号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、長期間の使用によりひび割れ等の劣化が生ずる問題がある。また、タイヤ以外のゴム製品においても、同様の問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ゴム製品を長期間使用することにより生ずる劣化が抑制できるプロセスオイル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロセスオイル組成物は、オイル成分として40℃における動粘度が30cSt以下である水素化処理したナフサ(A1)、40℃における動粘度が30cSt以下であるナフテン系鉱油(A2)およびリモネン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、添加剤として下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体とを含む。
【0007】
【化1】
【0008】
上記式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプロセスオイル組成物によれば、ゴム製品を長期間使用することにより生ずる劣化が抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
[プロセスオイル組成物]
実施形態のプロセスオイル組成物は、オイル成分と添加剤とを含む。
【0012】
従来、タイヤを製造するためのゴム組成物には、通常、粘度調整のため、ゴム成分と相溶性のあるプロセスオイル(鉱油など)が添加される。次いで、硬化剤を均一になるように混ぜ、成形、加硫により、タイヤが得られる。プロセスオイルは、タイヤに対して柔軟性を付与し、劣化防止の役割も果たす。しかしながら、タイヤを長期間使用すると、トレッド部におけるひび割れ等の劣化がみられる。これは、プロセスオイルの分子が変質し、劣化防止の役割を果たせなくなるためと考えられる。一方、プロセスオイルの変質防止のため、ゴム組成物に、通常の酸化防止剤等の劣化防止剤を配合すると、加硫の際に架橋反応を阻害することが多い。
【0013】
これに対して、実施形態のプロセスオイル組成物では、オイル成分に、添加剤として下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体を配合することにより、上記問題を解決している。すなわち、中性亜リン酸エステル誘導体は、実施形態のプロセスオイル組成物を添加したゴム組成物を加硫する際にも、架橋反応を阻害しない。さらに、タイヤを長期間使用しても、中性亜リン酸エステル誘導体は、プロセスオイルの変質を防止できる。したがって、プロセスオイルは、タイヤの劣化を防止する機能を長期間にわたって果たすことができる。特に、実施形態のプロセスオイル組成物は、タイヤのトレッド部を成形するためのゴム組成物に配合されることが好ましい。これにより、トレッド部におけるひび割れ等の劣化を好適に抑制できる。
【0014】
なお、本明細書中、「加硫」とは、硫黄または硫黄と加硫促進剤とを使用してゴムのポリマー分子を化学的に結合して三次元化すること、または、該三次元化された状態の他、さらに、有機過酸化物などの硫黄以外の架橋剤を使用してゴムのポリマー分子を化学的に結合して三次元化すること、または、該三次元化された状態も意味する。
【0015】
オイル成分は、40℃における動粘度(JIS K 2283)が30cSt以下である水素化処理したナフサ(A1)、40℃における動粘度(JIS K 2283)が30cSt以下であるナフテン系鉱油(A2)またはリモネン(A3)である。ナフサ(A1)およびナフテン系鉱油(A2)は、40℃における動粘度が1cSt以上であることが好ましい。オイル成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記ナフサ(A1)は、低分子であり、高分子材料等の有機物を溶解しやすい特徴がある。具体的には、上記ナフサ(A1)としては、水素化パラフィンが好適に用いられる。また、上記ナフサ(A1)は、水素化処理を行っているため、タイヤ中で、2次反応による劣化を抑制できる利点もある。上記ナフテン系鉱油(A2)は、分子が環化しており、高分子材料を溶解しやすい特徴がある。また、水素化処理や精製を行って、不要な構造が除かれていると、タイヤ中で、2次反応による劣化を抑制できる利点もある。リモネン(A3)は植物由来であるため、環境負荷の点からも好ましい。
【0016】
添加剤は、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体を含む。中性亜リン酸エステル誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中性亜リン酸エステル誘導体は、タイヤ製造時における架橋の際に、ラジカル種を積極的に失活させないため、架橋反応を阻害しない。また、中性亜リン酸エステル誘導体は、タイヤ中で、効率よく酸化防止性能を発揮できる。具体的には、中性亜リン酸エステル誘導体は3価であり、劣化を誘発する酸素を取り込み5価のリン酸エステルに変化する。5価に変化したリン酸エステルは酸素を放出することなく不可逆的に酸化劣化を防止できる。したがって、プロセスオイルの変質を防止できる。また、屋外においてタイヤが使用される場合も長期間にわたって劣化を抑制できる。
【0017】
【化2】
【0018】
式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0019】
炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0020】
b25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0021】
炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0022】
中性亜リン酸エステルは、Rb25~Rb28に特定の置換基を有しているため、酸化防止性能に優れる。
【0023】
特に、Rb25およびRb27が炭素原子数1~6、好ましくは1~3の直鎖状のアルキル基であり、Rb26およびRb28が炭素原子数3~6、好ましくは3~4の分枝状のアルキル基であると、酸化防止性能がより高まる。
【0024】
b291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0025】
炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0026】
ただし、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。したがって、たとえばRb291が水素原子のときは、Rb292は炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、Rb291がメチル基のときは、Rb292は炭素原子数1~4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、Rb291がエチル基のときは、Rb292は炭素原子数2~3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0027】
酸化防止性能の観点から、Rb291が水素原子であり、Rb292が炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0028】
添加剤は、さらに、下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物を含むことが好ましい。ヒンダードアミン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。ヒンダードアミン化合物は、タイヤ製造時における架橋の際に、ラジカル種を積極的に失活させないため、架橋反応を阻害しない。また、ヒンダードアミン化合物は、タイヤ中で、効率よく酸化防止性能を発揮できる。また、屋外においてタイヤが使用される場合も、より長期間にわたって劣化を抑制できる。このため、中性亜リン酸エステル誘導体とともに、ヒンダードアミン化合物を用いることはより好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
d21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。
【0031】
炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0032】
炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基などの直鎖もしくは分枝状のアルキル基が好適に用いられる。これらのうちで、酸化防止性能の観点から炭素原子数5~10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基がより好ましい。
【0033】
d23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0034】
炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,7-ヘプチレン基、1,8-オクチレン基、1,9-ノニレン基、1,10-デシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基などの2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基が好適に用いられる。これらのうちで、酸化防止性能の観点から炭素原子数5~10の2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基がより好ましい。
【0035】
酸化防止性能の観点から、上記の内でRd21、Rd22およびRd23の炭素原子数の和が16~30であることがより好ましい。
【0036】
オイル成分100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体を0.1質量部以上5質量部以下の量で含むことが好ましい。なお、上記の量は、オイル成分を2種以上用いるときはその合計量であり、中性亜リン酸エステル誘導体を2種以上用いるときはその合計量である。
【0037】
プロセスオイル組成物において、ヒンダードアミン化合物を用いる場合は、オイル成分100質量部に対して、ヒンダードアミン化合物を0.1質量部以上5質量部以下の量で含むことが好ましい。なお、上記の量は、オイル成分を2種以上用いるときはその合計量であり、ヒンダードアミン化合物を2種以上用いるときはその合計量である。
【0038】
[ゴム組成物]
実施形態のゴム組成物は、上述したプロセスオイル組成物と、ゴム成分とを含む。上記ゴム組成物を用いると、長期間使用しても、劣化が起こりにくいゴム製品が得られる。
【0039】
ゴム成分としては、天然ゴムを用いても、合成ゴムを用いてもよい。合成ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、ブロモ化ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン-イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、アクリレートブタジエンゴムが挙げられる。合成ゴムは、分子鎖末端が変性されていてもよい。ゴム成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、実施形態のゴム組成物は、さらに、架橋剤(加硫剤)を含むことが好ましい。架橋剤としては、硫黄または有機過酸化物が挙げられる。硫黄としては、具体的には、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などが挙げられる。有機過酸化物としては、具体的には、ジt-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキシン-3,1,3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートなどが挙げられる。架橋剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、実施形態のゴム組成物は、さらに、架橋促進剤を含んでいてもよい。架橋促進剤としては、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。架橋促進剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
さらに、実施形態のゴム組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、ゴム工業(特にタイヤ工業)において一般的に用いられている、その他の配合剤が含まれていてもよい。配合剤としては、架橋促進助剤、充填剤、老化防止剤などが挙げられる。架橋促進助剤としては、鉛華、ステアリン酸などが挙げられる。充填剤としては、カーボンブラック、シリカなどが挙げられる。老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などが挙げられる。その他の配合剤は、それぞれ、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
実施形態のゴム組成物は、通常の方法によって、上述したプロセスオイル組成物およびゴム成分のほか、必要に応じて架橋剤、架橋促進剤およびその他の配合剤を混合して作製する。
【0044】
[タイヤ]
実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物から得られる。具体的には、実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物から得られるトレッド用部材を含むことが好ましい。このようなタイヤは、通常の方法によって製造される。すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階で、トレッド用部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて成形し、さらに他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製する。次いで、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧し加硫して、タイヤ(空気入りタイヤ)が得られる。なお、タイヤ内に充填する気体としては、通常の空気、酸素分圧を変えた空気、または窒素などの不活性ガスが挙げられる。
【0045】
実施形態のタイヤは、たとえば、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に用いられる。
【0046】
タイヤの製造時には、上記プロセスオイル組成物を添加したゴム組成物を用いているため、加硫の際にも、架橋反応は阻害されない。このため、得られたタイヤの性能に悪い影響を及ぼすこともない。さらに、得られたタイヤでは、長期間使用しても、プロセスオイルの変質が起こりにくいため、トレッド部におけるひび割れ等の劣化も抑えられる。
【0047】
[その他のゴム製品]
実施形態のゴム製品は、上述したゴム組成物から得られ、タイヤ以外のゴム製品である。上記ゴム製品としては、ワイパー、鉄道用枕木、カメラのレンズに用いられるズームリングまたはフォーカスリングが挙げられる。
【0048】
ゴム製品の製造時には、上記プロセスオイル組成物を添加したゴム組成物を用いているため、加硫の際にも、架橋反応は阻害されない。このため、得られたゴム製品の性能に悪い影響を及ぼすこともない。さらに、得られたゴム製品では、長期間使用しても、プロセスオイルの変質が起こりにくいため、ひび割れ等の劣化も抑えられる。
【0049】
さらに、上述したプロセスオイル組成物は、タイヤの艶出しスプレーに配合することも好ましい。このようなスプレーをタイヤに付着させると、タイヤの劣化を抑えられる。
【0050】
以上より、本発明は以下に関する。
〔1〕 オイル成分として40℃における動粘度が30cSt以下である水素化処理したナフサ(A1)、40℃における動粘度が30cSt以下であるナフテン系鉱油(A2)およびリモネン(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種と、添加剤として下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体とを含む、プロセスオイル組成物。上記プロセスオイル組成物によれば、ゴム製品を長期間使用することにより生ずる劣化が抑制できる。
【0051】
【化4】
【0052】
(上記式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。)
【0053】
〔2〕 添加剤として、さらに、下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物を含む、〔1〕に記載のプロセスオイル組成物。上記プロセスオイル組成物によれば、ゴム製品を長期間使用することにより生ずる劣化がより抑制できる。
【0054】
【化5】
【0055】
(上記式(D)中、Rd21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、Rd23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0056】
〔3〕 上記オイル成分100質量部に対して、上記中性亜リン酸エステル誘導体を0.1質量部以上5質量部以下の量で含む、〔1〕または〔2〕に記載のプロセスオイル組成物。
〔4〕 上記オイル成分100質量部に対して、上記ヒンダードアミン化合物を0.1質量部以上5質量部以下の量で含む、〔2〕に記載のプロセスオイル組成物。中性亜リン酸エステル誘導体またはヒンダードアミン化合物が上記の範囲の量で含まれていると、酸化防止性能をより発揮できる。
〔5〕 〔1〕または〔2〕に記載のプロセスオイル組成物と、ゴム成分とを含む、ゴム組成物。上記ゴム組成物を用いると、長期間使用しても、劣化が起こりにくいゴム製品が得られる。
〔6〕 〔5〕に記載のゴム組成物から得られる、ゴム製品。
〔7〕 〔5〕に記載のゴム組成物から得られる、タイヤ。上記ゴム製品、特にタイヤは、長期間使用しても、劣化が起こりにくい。
【0057】
[実施例]
以下実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1-1]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)と、添加剤として中性亜リン酸エステル誘導体、すなわち4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)およびヒンダードアミン化合物、すなわちデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)とを用いた。
ここで、ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.1質量部と、ヒンダードアミン化合物0.1質量部とを混合して、プロセスオイル組成物(1-1)を得た。
カーボンブラックおよび加硫剤を含む未加硫ゴムシート(市販品)に、プロセスオイル組成物(1-1)を加えてロールで混錬し、ゴム組成物(1-1)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)を成形機に入れて加硫し、ゴム製品(1-1)(厚さ:1mm、5cm角のシート)を得た。なお、3個のゴム製品(1-1)を作製した。
【0058】
[実施例1-2]
ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体1質量部と、ヒンダードアミン化合物1質量部とを混合した以外は、実施例1-1と同様にして、プロセスオイル組成物(1-2)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(1-2)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(1-2)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(1-2)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(1-2)を得た。なお、3個のゴム製品(1-2)を作製した。
【0059】
[実施例1-3]
ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体5質量部と、ヒンダードアミン化合物5質量部とを混合した以外は、実施例1-1と同様にして、プロセスオイル組成物(1-3)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(1-3)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(1-3)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(1-3)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(1-3)を得た。なお、3個のゴム製品(1-3)を作製した。
【0060】
[実施例1-4]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)の代わりに、ナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.26cSt、商品名:アイソパー(登録商標)L、エクソンモービル社製)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(1-4)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(1-4)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(1-4)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(1-4)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(1-4)を得た。なお、3個のゴム製品(1-4)を作製した。
【0061】
[実施例1-5]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)の代わりに、ナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):3.0cSt、商品名:アイソパー(登録商標)M、エクソンモービル社製)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(1-5)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(1-5)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(1-5)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(1-5)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(1-5)を得た。なお、3個のゴム製品(1-5)を作製した。
【0062】
[実施例2-1]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)の代わりに、ナフテン系鉱油(A2)(40℃における動粘度(JIS K 2283):2.946cSt、商品名:SNH3、三共油化工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(2-1)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(2-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(2-1)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(2-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(2-1)を得た。なお、3個のゴム製品(2-1)を作製した。
【0063】
[実施例3-1]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)の代わりに、リモネン(A3)(D-リモネン、日本テルペン化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(3-1)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(3-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(3-1)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(3-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(3-1)を得た。なお、3個のゴム製品(3-1)を作製した。
【0064】
[実施例4-1~4-6]
中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(上記式(B)においてRb21~Rb24=トリデシル基、Rb25、Rb27=メチル基、Rb26、Rb28=t-ブチル基、Rb291=水素原子、Rb292=n-プロピル基)の代わりに、表1の化合物を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(4-1)~(4-6)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(4-1)~(4-6)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(4-1)~(4-6)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(4-1)~(4-6)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(4-1)~(4-6)を得た。なお、それぞれ、3個のゴム製品(4-1)~(4-6)を作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例5-1~5-6]
ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)(上記式(D)においてRd21、Rd22=n-オクチル基、Rd23=1,8-オクチレン基)の代わりに、表2の化合物を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、プロセスオイル組成物(5-1)~(5-6)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(5-1)~(5-6)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(5-1)~(5-6)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(5-1)~(5-6)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(5-1)~(5-6)を得た。なお、それぞれ、3個のゴム製品(5-1)~(5-6)を作製した。
【0067】
【表2】
【0068】
[実施例6-1]
オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)と、添加剤として中性亜リン酸エステル誘導体、すなわち4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)とを用いた。
ここで、ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.1質量部を混合して、プロセスオイル組成物(6-1)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(6-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(6-1)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(6-1)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(6-1)を得た。なお、3個のゴム製品(6-1)を作製した。
【0069】
[実施例6-2]
ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体1質量部を混合した以外は、実施例6-1と同様にして、プロセスオイル組成物(6-2)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(6-2)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(6-2)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(6-2)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(6-2)を得た。なお、3個のゴム製品(6-2)を作製した。
【0070】
[実施例6-3]
ナフサ(A1)100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体5質量部を混合した以外は、実施例6-1と同様にして、プロセスオイル組成物(6-3)を得た。
また、プロセスオイル組成物(1-1)の代わりに、プロセスオイル組成物(6-3)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム組成物(6-3)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1)の代わりに、ゴム組成物(6-3)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ゴム製品(6-3)を得た。なお、3個のゴム製品(6-3)を作製した。
【0071】
[比較例1-1]
カーボンブラックおよび加硫剤を含む未加硫ゴムシートに、オイル成分としてナフサ(A1)(水素化パラフィン、40℃における動粘度(JIS K 2283):1.19cSt、商品名:アイソパー(登録商標)G、エクソンモービル社製)を加えてロールで混錬し、ゴム組成物(1-1’)を得た。
次いで、ゴム組成物(1-1’)を成形機に入れて加硫し、ゴム製品(1-1’)(厚さ:1mm、5cm角のシート)を得た。なお、3個のゴム製品(1-1’)を作製した。
【0072】
[比較例2-1]
カーボンブラックおよび加硫剤を含む未加硫ゴムシートに、ナフテン系鉱油(A2)(40℃における動粘度(JIS K 2283):2.946cSt、商品名:SNH3、三共油化工業株式会社製)を加えてロールで混錬し、ゴム組成物(2-1’)を得た。
次いで、ゴム組成物(2-1’)を成形機に入れて加硫し、ゴム製品(2-1’)(厚さ:1mm、5cm角のシート)を得た。なお、3個のゴム製品(2-1’)を作製した。
【0073】
[比較例3-1]
カーボンブラックおよび加硫剤を含む未加硫ゴムシートに、リモネン(A3)(D-リモネン、日本テルペン化学株式会社製)を加えてロールで混錬し、ゴム組成物(3-1’)を得た。
次いで、ゴム組成物(3-1’)を成形機に入れて加硫し、ゴム製品(3-1’)(厚さ:1mm、5cm角のシート)を得た。なお、3個のゴム製品(3-1’)を作製した。
【0074】
[評価方法および評価結果]
実施例1-1で作製した3個のゴム製品(1-1)について、1個目を下記の加温試験1に用い、2個目を加温試験2に用い、3個目を下記の加温試験3に用いた。他の実施例、比較例で作製したゴム製品についても、同様に、下記の加温試験1~3を行った。
(加温試験1)
作製したゴム製品を、恒温器内に入れ、80℃で30日間保持した。
(加温試験2)
作製したゴム製品を、恒温器内に入れ、紫外線照射下、80℃で30日間保持した。
(加温試験3)
作製したゴム製品を、恒温器内に入れ、紫外線照射下、80℃で45日間保持した。
(引張試験)
加温試験1~3を行ったゴム製品それぞれについて、引張試験を行った。具体的には、ゴム製品を恒温器から取り出し、室温まで冷えてから、ゴム製品の両端を引張試験機に取り付け、5kgf/cm2の荷重をかけた。上記荷重をかけた際、ゴム製品が切れなかった場合を〇、ゴム製品が切れた場合を×とした。この試験結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
すべての実施例において、加温試験1、2を行った後も、引張試験でゴム製品は切れなかった。実施形態のプロセスオイル組成物を用いたゴム製品は、長期間使用しても劣化が起こりにくいことが分かる。中性亜リン酸エステル誘導体およびヒンダードアミン化合物を含むプロセスオイル組成物を用いた実施例では、加温試験3を行った後も、引張試験でゴム製品は切れなかった。中性亜リン酸エステル誘導体およびヒンダードアミン化合物を併用すると、ゴム製品を屋外で長期間使用しても劣化がより起こりにくいことが分かる。